北欧の若者が熱狂するスタートアップイベント「SLUSH」、アジア版は金曜日に東京で開催

フィンランド発のスタートアップ向けイベント「SLUSH」のアジア版となる「SLUSH ASIA」がいよいよ今週金曜日、4月24日に東京で開催される。

本家のSLUSHは、2014年実績で参加者は約80カ国・1万4000人以上、出展企業1300社、欧州各国の首相なども訪れるという大規模なイベントだ。

このイベントの特徴は「ライブ感」。よくあるカンファレンスとは異なり、起業家や投資家などの登壇者が音楽ライブのさながらのステージでプレゼンテーションやディスカッションを繰り広げる。より詳しい説明はこのスライドが参考になると思う。グローバルを意識したこのイベントでは、すべてのセッションは英語で行われる。

日本ではRovio Entertainmentの元日本代表であるAntti Sonninen(アンティ・ソンニネン)を中心にしたTEAM SLUSHがイベントを牽引する。この発起人チームには、Mistletoe CEOの孫泰蔵氏やAmano Creative Studioの天野舞子氏らも含まれている。ちなみに孫泰蔵氏は本家のSLUSHにも登壇しており、その話を日本で発起人チームと話したことが今回のSLUSH ASIA開催のきっかけになっているとか。

ではなんで日本でSLUSHを開催するのか? 孫氏は自身が参加した経験を振り返り「世界中にカンファレンスがある中で、SLUSHは他とは違うユニークなモノだったから」だと語る。

冒頭のとおり、ショーアップされたステージに登壇する起業家の姿はまるで音楽アーティストだ。そこで繰り広げられるセッショを見た若者たちが、彼らを尊敬し、賞賛することで、「起業はカッコいい、自分もやってみようとなることは大事」だと孫氏は説く。

同氏はこれまで「バンドのように起業をすべき」といろいろな場所で語っているのだけれど、これはバンド活動が最初はコピーから初めて、オリジナル曲を作って——となっているように、最初からすごいビジネスモデルやテクノロジーを持ってスタートするのではなくても、少しずつ事業を作り、それでダメだったら解散するくらいのカジュアルさであってもいいので、何よりもまずは「最初の一歩「を踏み出して欲しい」ということなんだそう。そんな考え方がSLUSHのテーマともマッチしたのだろう。

フィンランドの若者の多くもこのイベントに共感しており、1万7000人という参加者に加えて、2014年実績で1700人の学生ボランティアが関わっているそうだ。基本的には非営利で、今後は社団法人化も進めるとか。

フィンランドのSLUSHコミュニティにも参加していたSonninen氏いわく、SLUSHが若い世代に起業という選択肢を提示してきた影響度はかなりのものだそう。「今となっては『グローバル思考』は当たり前だが、8年前のフィンランドではほとんどそんなものがなかった。だが、SLUSHというイベントも起業という選択肢も認知されてきた。SLUSHは数年前からは首相が参加するまでになっている」

イベントの開催開催場所は東京の臨海地区にある青海。特設のドーム型ステージを5つ並べている。設営中の様子はTwitterにもアップされている。

最近は「上場ゴール」と揶揄される一連の新規上場企業の業績不振等でスタートアップやその支援者に対する風当たりは厳しいものになっている。僕も市場関係者から起業家までいろんな意見を聞いたし、そのあたりの話をの一部は記事としても書いている。

ただそういう時期だからこそ、起業について今までよりもちょっと身近な選択肢として考える場所があってもいいと思っている。僕たちがやっているTechCrunch Tokyoもそんな1つだと思っているし、SLUSHは日本で初開催だけれども、北欧ではそういった点でも非常に意味のあるイベントになっているそうだ。

僕自身は正直「誰でも彼でも起業しちゃえ」とまでは言えないのだけれども、まずは起業の意味をちゃんと理解している人が増えて欲しいし(同時に悪い大人にそそのかされない知恵も付けて欲しい)、人生の選択肢の1つとして考える人は増えていいと思っている。さらにそういう人の中から、世の中を変えるような起業家が生まれて欲しいとも。そういう意味でSLUSH ASIAは、起業についてあらためて考えたい人にとっても価値のあるイベントになるのではないだろうか。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。