中国深圳のDJIといえば、消費者向けドローンの高級品で有名だが、しかし同社の最新モデルを見るとドローンメーカーたちの今後の競合は、一般消費者市場ではないところで戦われる、という気がしてくる。
ローターが8つあるドローンAgras MG-1は、より安全な農薬散布の方法を提供することがねらいだ。これまではヘリや小型飛行機、何らかの陸上車、あるいは化学薬品を背負った人間が手に噴霧器を持って散布していた。
DJIによるとこのドローンは、一時間で7から10エーカーの農地に散布できる。
Wall Street Journalの記事によると、Agras MG-1の価格は約15000ドルで、中国と韓国で発売され、その後ほかの国向けの予約販売を開始する。数か月前Accelから7500万ドルを調達したDJIは、さまざまな業界に専門的に取り組むドローンソフトウェアのデベロッパの、エコシステムを作る気だ。ライバルのYuneecとEHANGも、それぞれ6000万ドル、4200万ドルという大きな資金を獲得して、商用ドローンの開発に注力しようとしている。
農家以外の人は、Agras MG-1にそれほど関心を持てないかもしれない。これまでドローンの商用利用といえば、航空写真(やビデオ)の撮影とか、eコマースのデリバリが主に話題になっていた。でも農業は、今後最大のドローン市場になると予想されている。
Association for Unmanned Vehicle Systems International(国際無人機協会, AUVSI)によると、将来的に農業用ドローンは商用ドローン市場の80%を占める。Agras MG-1のような殺虫剤を散布する機種は、ドローンの農業利用のひとつの例にすぎない。ほかにもたとえば、高解像度のカメラを搭載した機種は作物の生育状態をモニタし、病害や干ばつの兆候を早期に教えてくれるだろう。
ただし農業経営は今どこの国でも厳しいから、今後はドローンがもたらす利益を具体的にかつ数字を上げて、農家に訴求していく必要がある。Agras MG-1は確かに、農業労働者が化学物質にさらされる時間を減らしてくれるが、現在の農薬散布方式に比べると、農地の単位面積あたりの費用が高い。しかも、一回の飛行でカバーできる農地面積も小さい。