法人向け電力リバースオークション「エネオク」のエナーバンクが約5000万円の資金調達

エナーバンク エネオク 電力リバースオークション 競り下げ方式入札

法人向け電力リバースオークション(競り下げ方式入札)「エネオク」運営のエナーバンクは7月27日、第三者割当増資による約5000万円の資金調達を発表した。引受先はジェネシア・ベンチャーズ。

調達した資金により、サービスの開発運営・販売体制を強化し、全国の民間施設、官公庁・自治体が最適・最安の電力調達ができるようサービスを拡充するとしている。

エナーバンクは「エネルギーをもっとシンプルに」というビジョンのもと、2018年7月に創業。電力需要家である法人事業者が日本全国の小売電気事業者から最適・最安の電力契約に切り替え可能な仲介サービスとして、リバースオークションの仕組みを活用した業界初の法人向けエネルギー調達プラットフォーム「エネオク」を提供している。

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2018年10月のサービス開始以来、数ある小売電気事業者の中から需要家が最適な電力調達を行う際の難易度の高まりや、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済活動減速・コスト削減ニーズを背景に、オークション実績を伸ばしているという。

また2019年11月には、環境省の「RE100(再生可能エネルギー100%)」の調達選定システムとして採用された。RE100は、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す国際的なイニシアティブ。

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中国政府による香港への国安法適用に対するテクノロジー企業たちのそれぞれの対応

中国ラウンドアップでは中国のテクノロジー関連ニュースと世界への影響を紹介してきたが、今回は中国政府が香港に国家安全法を適用するという事態が香港の人々の生活とジネスに与えている影響を紹介する。

国家安全法の香港への適用はシリコンバレーのテクノロジー企業にとって中国に対する態度を決めるリトマス試験紙のような役割を果たしている。Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Telegram、Zoom、Redditを含め多数の企業が明確に態度を表明した。

抗議、遵守、離脱

中国政府が7月1日に香港に国家安全法を施行したのは、香港に対する統制を大きく強化するためだった。国安法の条項にはすでに私が書いたように(未訳記事)、インターネット接続プロバイダーに情報を削除しあるいは警察に情報を提供することを直接要求するものが含まれている。 これに対して米国、中国の主要テクノロジー企業の態度は以下のとおりだ。

Facebook:国安法の条項をさらに検討する間、香港当局からの情報提供の要求に応じることを停止したことを確認した。この検討には「人権に関する正規のデューデリジェンス及び人権専門家との協議が含まれる」という。広報担当者は「表現の自由は基本的な人権であり、人々が身の安全その他の有害な影響を恐れることなく表現を行う権利をフェイスブックは支持する」と述べた。

データ引渡しの停止はフェイスブック本体に加えてグループ企業のWhatsAppにも及ぶ。

Twitter:国安法施行と同時に香港当局の要求の応じてユーザーデータを転送することを停止したと述べた。 同社では「特にこの法律の一部は意味があいまいで明確な定義がなされていないため」だとしている。また「この法の適用決定の過程とその意図に関して重大な懸念がある」と述べている。

Google:香港当局からのデータ要求の処理を一時停止したと述べた。またユーザー作成コンテンツをサービスから削除することを求める政府の要求に対しては引き続き個別に検討すると付け加えた。

Zoom:香港当局のデータ引渡し要求に応じることを停止したと発表。「Zoomは自由でオープンな思想、意見の交換を支持する。我々は米国政府が今後発する可能性があるガイドラインを含め、香港の特別行政区(SAR)としての現状を注意深くモニターしている。Zoomは香港の特別行政区からの、またこれに関連するデータ引渡要求の処理を一時停止した」と述べている。

LinkedIn:Microsoft(マイクロソフト)が所有する同社は、中国本土に中国法に従う法人を運営しているが「現地当局のデータ引渡要求について、新法の内容の検討を終えるまで一時停止した」と発表。

Telegram:メッセージアプリであるテレグラムの広報担当者は「香港のユーザーに関連する当局からのデータ要求は、香港の政治的地位の改変に関して国際的なコンセンサスが得られるまで一切処理しない」と述べた。また過去にも香港当局にいかなるデータも開示したことはないとしている。

Signal:データ暗号化でテレグラムと競争しているシグナルは「我々も(Telegramと同様に)データ引渡しを停止したといいたいところだが、そもそも我々は香港警察にデータを引渡したことがない。また、そもそも我々は引き渡すべきユーザーデータを保持していない」と皮肉を込めて述べている。

TikTok:中国企業によって運営されている同社はジレンマに陥っている。中国企業である以上、中国当局の要求を無視することはできない。一方で同社が中国の巨大な検閲システムの一環をなすという主張にさらに根拠を与えたくない。当初、他の外国企業同様、データ引渡要求を拒否する姿勢を見せたものの、これは北京の指示に反する姿勢となる。同社は香港におけるショートビデオサービスを中止し撤退した。香港はTikTokのビジネスのごく小さい部分を占めるだけなのでこの決定は容易なものだったはずだ。運営会社のByteDanceがTikTokの検閲済みバージョンであるDouyin(抖音)を導入するか、人口700万の香港を完全に見捨てるかは不明だ。

Apple:中国本土で大規模なビジネスを展開しており、政府との親密な関係についても長年にわたって批判されてきたApple(アップル)は、2019年に香港で民主主義を支持する抗議活動が行われている場所を示すアプリを削除した

国安法の導入に伴ってアップルは「新法について詳細を評価中だ。ユーザー生成コンテンツについて香港当局から直接(引渡)要求を受けていない」とした。同時に米国と香港の法律共助協定に基づき企業は(香港当局に)協力の義務があると述べた。

【Japan編集部追記:トランプ大統領は7月15日に香港への各種優遇措置を撤廃する大統領令に署名している】

Reddit大手中国テクノロジー企業のTencentが出資している(未訳記事)ものの、「ユーザーデータの取り扱いに関する方針は株主とは別だとして、「ユーザーのプライバシーはRedditが本質的に重視している価値だ。我々は香港当局からユーザー情報引渡の要求を受けていない。しかし当社の方針としてRedditは基本的人権を損なうおそれがある場合、政府からの要求に従わない。この方針は新法の適用によっても変わるものではない。ユーザー情報を守るというRedditの方針は我が社に対する投資家によっていささかも影響されない。(影響を受けるとする)示唆はすべて誤りだ」と発表した。

上のリストはいかなる意味でも網羅的なものではないし、国安法の内容、適用の詳細に関してもまだ充分な説明されていない。TechCrunchは他のテクノロジー企業の動向にも注意を払い、報道を続ける。

関連記事:The tech industry comes to grips with Hong Kong’s national security law(未訳記事)

中国外務省のZhao Lijian(趙立堅)副報道局長は香港の警察当局へのデータ引渡の停止について次のような声明を発表し、懸念に理由がないと主張した。

1982年に香港が祖国に返還されたときMargaret Thatcher(マーガレット・サッチャー)首相と会見したDeng Xiaoping(鄧小平)が次のように述べたことを想起される。「競馬は続く。株式も盛んに取引される。ダンサーはダンスを続ける。法律が定めるとおり、一国二制度は確固たる基盤に上にあり、さらに強化されると我々は強く信じる。香港の住民の基本的な利益と繁栄は適切に保護され、社会の安定と調和がいっそう確実なものになる。馬はさらに速く速く走り、株価はさらに上昇し、ダンサーの踊りはさらに魅力的になる」。我々は香港の将来に確たる自信がある。

さらに世界では……

画像クレジット: DuKai photographer / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Dear Sophie:新しいオンライン授業の規則は、F-1学生にとって何を意味するのか?

編集部注:ソフィー・アルコーンは、シリコンバレーにあるAlcorn Immigration Lawの創立者であり、2019年Global Law Expertsアワードの「カリフォルニア州アントレプレナー移民サービス年間最優秀法律事務所」を受賞している。彼女は、人々をビジネスおよび機会と結びつけ、彼らの人生を広げている。

テクノロジー企業での仕事に関連する出入国関連の質問に答える相談室「Dear Sophie」を再びお届けする。

シリコンバレーの移民弁護士であるSophie Alcorn(ソフィー・アルコーン)はこう言っている。「世界中の人々が国境を越えて夢を追い求めることを可能にする知識の普及に、あなたの質問は欠かせないものです。人事部に属する人や会社の創立者、またはシリコンバレーで仕事を探している人を問わず、次回のコラムであなたの質問にお答えしたいと思います」。

「Dear Sophie」コラムはExtra Crunchの購読者の方向けに配信されている。プロモーションコード「ALCORN」のご利用で、1年または2年の定期購読が半額になる。

Dear Sophie:

会社の創立者の一人が現在、F-1 STEM OPTで米国に滞在している。会社が彼女のH-1Bビザのスポンサーとなっているが、先日RFE(追加書類依頼)を受け取った。

昨日のF-1ビザ留学生に関する移民局の発表は、彼女にとって何を意味するのか?H-1Bが却下されるのか?支援が必要か?どうすればいい?

—クパチーノの憂慮者

Dear 憂慮者さん:

F-1学生がトランプ政権の留学生入国禁止令の影響を受けるかどうかは、私の最新のYouTubeライブをご覧になればお分かりになる。H-1Bビザの禁止については、先週のDear Sophieコラムを読んでいただければと思う。

留学生は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機的状況により、春と夏の間はオンライン授業を受けることが許可されていたが、それはこの秋に終了する。この新しい命令によって、リモートのオンライン授業のみを提供している学校の多くの留学生は、強制送還を避けるために「次善の移民計画」を見つけるか、秋学期の前に米国を出国しなければならなくなる。

多くの一流大学では、留学生が学生の20%以上を占めている。NAFSAによると、留学生は2018~2019学年度に米国経済へ410億ドルの貢献をしており、45万8000人の雇用を支援または創出したとされている。現政権は移民問題に関して、「細事にこだわり大事を逸する」ことを継続しているようだ。

大学は、この最近できたどうにもならない縛りに苦戦している。大学は、学生の安全を守るだけのためにオンライン授業を続け、留学生をこの国で暮らす彼らの家から追い出すのか?それとも、地域社会の健康を危険にさらしても、学生を強制送還から救うために学校を再開することになるか?

学生にとって、これは別の学校を探したり、アメリカを出国する方法を懸命に考えたり(母国が帰国を許可していない場合もある)、「次善の移民計画」を考えたりすることを意味している。昨日の動画では、F-1ビザの代替案を探っている

幸い、その共同創立者の方はOPTを利用しているので、昨日米国移民・関税執行局(ICE)から出された非常に限られた情報と、学校向けにSEVISが発表した若干広範なメッセージガイダンス(「2020年秋学期については、すでに米国に滞在している継続のFおよびMの学生は、学習プログラムを正常に進めている場合、または学習プログラムの一部として、あるいは学習プログラムの修了後に、承認された実習に従事している場合、SEVISでアクティブのステータスを維持することができます」)を最初に読んだ限りでは、最新のF-1規制が彼女に影響するとは思えない。

RFEに関しては、これが安心材料になるかどうかは分からないが、決してあなたたちだけ受け取ったわけではない。H-1B申請者のうち、追加書類依頼(RFE)を受け取る割合は、2016年以降2倍近くになっている。2016会計年度には申請者の約21%がRFEを受け取ったが、2019年度にはこれが40%以上になっている。今会計年度の最初の2四半期では、H-1B全申請者のうち41%がRFEを受け取っている。近日中に私のポッドキャストで、追加書類依頼(RFE)、初回書類依頼(RFIE)、却下予定通知書(NOID)について取り上げる予定なので、ぜひチェックしていただければと思う。

ここで、最初の質問に対する答えを明確にしておく。RFEを受け取ったからといって、H-1B申請が却下される可能性が高くなるわけではない。実際のところ、RFEは承認を受けるために申請を強化する最後の機会を提供している。大きい問題であるため、RFEへの回答を作成する際には、経験豊富な移民弁護士に相談することをお勧めする。

米国市民権・移民局(USCIS)がRFEに記載されている期限までにRFEに対する回答を受け取るよう確約してください。先週、USCISは期限を延長した。新型コロナウイルス感染症の危機的状況とUSCISが直面している予算不足のため、3月1日から9月11日までの間に発行されたRFEの期限が、期限から60暦日後に自動的に延長される。あなたの会社が期限までにUSCISに回答を送付しなかった場合、そのH-1B申請は却下される。

USCISがどのような追加書類を要求しているのかを常に正確に理解しておく必要がある。申請パッケージの原本をチェックして、要求された書類や証拠が含まれていなかったかを確認してください。USCISはすでに提出された情報を誤って見落としていることがある。その場合は、回答パッケージで要求された書類を再提出してください。要求された書類を提供できない場合、その理由を説明し、可能であれば代替書類を提出してください。それ以外の場合は、要求された書類または証拠を提出してください。

USCISがRFEを発行する理由の中で最も多いのは、その職種が専門的な職業として適格であること、または有効な雇用主と従業員の関係が存在することを示していない場合だ。受け取ったRFEがこれらの理由のいずれかである場合、USCISがそれぞれの要件に対して何を求めているのかを簡単にご説明する。

H-1Bビザの申請資格を得るためには、申請でその外国人が就こうとしている職種が専門的な職業であることをUSCISに証明する必要がある。その仕事には高度で専門的な知識の理解と応用が必要であり、通常は特定の専門分野で少なくとも学士号(または同等の経験)が必要であることの証明を提供する必要がある。近年、USCISは何が専門的な職業に該当するかについて、その解釈を狭めている。例えば、コンピュータープログラミングは専門的な職業とは見なされなくなった。またUSCISは、学士号を必要としない職種や、コンピューターシステムアナリスト、財務アナリスト、市場調査アナリスト、人事マネージャーなどの肩書きが付く職種にも説明を求めている。

創立者が自分の作った会社のために働く場合、雇用主と従業員の関係が存在することを証明するのが困難になる。雇用主がH-1B受益者の仕事を管理していることを証明する必要がある。創立者の場合、会社の誰か(取締役会または共同創立者)がH-1B受益者を監督し、その個人を解雇する権限を持っている必要があることを意味する。これを適切に設定する方法はたくさんある。

RFEへの回答に必要なすべての証拠や書類の準備ができたら、RFEの原本を最初のページとして1つの回答パッケージにまとめ、提出してください。記録用に回答パッケージのコピーを保存し、追跡と配達証明のオプションを使用して正確な場所に回答を送付してください。

4月22日と6月22日に発令された行政布告の下、米国大使館と領事館はビザおよびグリーンカードの発給を停止しており、また新型コロナウイルス感染症に関連する渡航制限が続いていることを踏まえると、その創立者の方は当面米国に留まるべきだ。

彼女の長期的な移民を保障するためには、あなたの会社が次のいずれかのグリーンカードのスポンサーになることを検討する必要がある(彼女が資格を持っている場合)。

トランプ政権は、合法的な移民をさらに制限するための取り組みをまだ完了していないようだ。彼らは現在H-1Bビザ、EB-2グリーンカードまたはEB-3グリーンカードで米国に滞在している人が、米国人労働者の機会を制限していないかを調べている。さらなる制限や停止の拡大が実施される可能性がある。もしそうなった場合、当然ここですべてをご説明する。

RFEについてより具体的な質問があれば、お聞かせください。幸運を祈る!

—ソフィーより

ソフィーに対して質問がある方は、ここで質問できる。当方は、内容の明確化および(または)スペースを確保するため、提出された内容を編集する権利を留保する。「Dear Sophie」で提供される情報は一般情報であり、法的助言ではない。「Dear Sophie」の制限に関する詳細については、こちらの完全な免責事項をご覧ください。Alcorn Immigration Lawでソフィーに直接問い合わせることができる。

関連記事:米国務省は入国ビザ申請にSNSアカウントまで求めはじめた

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タグ:コラム ビザ

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(翻訳:Dragonfly)

コロンビアから学ぶ、テック業界と輸送産業の発展を阻む古い規制

編集部注:Daniel Rodriguez(ダニエル・ロドリゲス)氏はPicapのCEO兼共同創業者で、同社の設立時にベンチャーキャピタルから700万ドル(約7億5000万円)以上を調達した。パイキャップは現在、中南米8カ国に事業展開している。

「この道は通っちゃだめだぞ」と父は言った。

その道がビーチへ行くのに一番の近道なのになぜ通らないのかと、私は父に尋ねた。当時8歳だった私は地図を見るのが大好きで、父が選んだ道に納得がいかなかったのだ。後に、私が最短経路として勧めた道は、私たちや他のコロンビア人家庭に敵対するさまざまな武装グループが問題を起こしていた地区だったことを知った。

数十年にわたりコロンビアを疲弊させてきた紛争について知っている人は多いだろうが、コロンビアのさまざまな機関、権利保護団体および政府が、武力紛争によって制約されない移動手段を確保できる未来の実現を目指し、遂げてきた進歩について聞いたことがある人はあまりいないかもしれない。

実際、コロンビアは世界銀行が発表する「ビジネス環境」ランキングで少しずつ順位を上げてきている。ビジネスチャンスを国内の隅々まで行きわたらせるためにコロンビアの政府機関やリーダーたちがすべきことはまだ山のようにある。新型コロナウイルス感染症のせいで、根深く存在する格差がさらに拡大していることも逆風になっている。しかし、確実に言えることがひとつある。コロンビアがもっと積極的にイノベーションに取り組むなら、繁栄への道筋がさらにはっきりと見えてくるということだ。

筆者はこの10年をコロンビアの繁栄への道を切り開くことにささげてきた。コロンビアで最も権威のあるUniversidad de Los Andes(アンデス大学)で研究しつつ、ベンチャーキャピタルから1000万ドル(約10億7000万円)以上を調達し、2つの会社を立ち上げて、7万人以上のコロンビア人が直接的または間接的に賃金収入を得るのを助けてきた。また、専門職を求めて海外へ移住しなくても自国で十分に良い暮らしができることを若いコロンビア人たちに示して、数百人のコンピュータエンジニアを直接雇用してきた。すでに海外に移住していたコロンビア人数人に声をかけ、母国に戻ってPicap(パイキャップ)で働くように説得したことさえある。

このように筆者は、コロンビアの繁栄と同国のテック業界を築いてきた数千人の有能なエンジニアたちに少なからず手を貸してきたつもりだが、今、その努力が台無しになりかねない状況になっている。というのは、コロンビアでは社会的イノベーションは10年単位で進んでいくと考えられていて、輸送およびテクノロジー関連の規制もその速度に合わせて策定されているため、コロンビアの政府当局と立法部門によるそれらの規制の改訂が遅々として進まないからだ。

コロンビアのテクノロジーと輸送に関する規制は刷新する必要がある。Uber(ウーバー)やパイキャップは、コロンビア政府と規制当局が課す脅威に絶えず悩まれされてきた。それは、あたかも瓶から一度出てしまったテクノロジーという魔神を瓶に戻そうとするような無駄な試みであるだけでなく、双方の成功に欠かせない長期的なパートナー関係を築くための重要な対話を遅らせる行動である。

公共の利益と技術革新を同時に推進する規制の枠組みを策定することは、コロンビアだけでなく世界中の国々にとって緊急の課題だ。新しい輸送モデルとテクノロジーを導入することが有益であることはすでに証明されている。パイキャップと同じように2輪車の配車サービスプラットフォームとしてスタートしたGoJek(ゴージェック)やGrab(グラブ)が良い例だ。両社とも評価額数十億ドル規模の企業に成長しており、商業や金融に関係する各種サービスを促進し、それらがすべて社会に利益として還元されて、消費が伸び、経済活動が明確な形を持ち、新しい形のイノベーションが生まれている。規制の刷新が進めば、パイキャップも他の企業もこれと同じことをコロンビアだけでなく広く中南米全体で実現できる。

コロンビア議会にはテクノロジープラットフォームに対する理解を推進するために大変な努力を重ねているリーダーたちがいる。彼らの努力は称賛に値するが、決して実を結んでいるとは言えない。コロンビアのリーダーたちは今こそ、例えば、民間の輸送サービスが新しい移動手段を推進する市民のための規制を必要としていることを認識する必要がある。医療、輸送、経済活動に関するあらゆるシステムが官民の区別なく新型コロナウイルスによっていとも簡単に弱体化してしまう現実に、世界中の国々が直面している。テクノロジーは、すべての国において、医療、輸送、経済活動を強化するために不可欠な要素になるだろう。我々は、パイキャップが提供しているPibox(パイボックス)などの宅配プラットフォームがソーシャルディスタンスを維持するために各国でますます重要な役割を果たすようになっていることを目の当たりにしている。各国が、パンデミック時の防御策についてだけでなく、今後に向けて自分たちの暮らしを変えていく方法についても、それぞれ独自の方法を考えるべきだ。今ならまだ遅くない。

コロンビアは韓国の例から学ぶことができる。韓国は何年にもわたり、増え続ける世界のシリコンチップ需要に応えてきた。その結果、そうしたチップを製造するLGやSamsung(サムスン)は誰もが知る有名企業となった。韓国政府は、技術進歩を阻害することなく、ノウハウの開発の推進、技術教育への投資、およびテック企業との提携によって、これを実現した。我々のような科学技術者としては、コロンビアという国を長期的に強化するような経済活動の発展に手を貸すことができれば、これほど誇らしいことはない。筆者は未来をこの目で見て、日々その未来を実践している。そして、中南米諸国、とりわけコロンビアは、テック系人材をつなぎ止め、技術投資を引きつける規制の枠組み策定を推進する必要があると思う。さもないと、コロナ禍からの回復期になるであろう今後数年間で、経済状況はますます悪化することになるだろう。

最近コロンビアで、移動プラットフォームの業界団体Alianza IN(アリアンツァ・イン)が設立された。目的は、投資を引きつけ、人材をつなぎ止め、輸送プラットフォームとテクノロジープラットフォームが国の経済の未来に不可欠なパートナーとなる将来に備えるために、コロンビアのMinTIC (情報技術通信省)が取り入れることができる指針について、コロンビアの国会議員や規制当局との対話を進めることだ。テクノロジープラットフォームはすでに存在しているため、アリアンツァ・インの活動は、数百万のコロンビア市民が刷新された規制枠組みの恩恵を受け、輸送およびテクノロジープラットフォームを活用して収入、移動手段を確保し、生活の質を高めるための大きな一歩となる。

昨年、コロンビアのテック系企業は全体で12億ドル(約1287億円)の資金を調達した。筆者と同世代の仲間たちとコロンビアの同胞たちがテック業界のさまざまな場所で働き、わずか20年で成し遂げたこの成果に筆者は感服している。しかし、コロンビアの政治家と当局が、テクノロジーおよびパイキャップなどの新しい移動手段を導入するために規制を刷新する必要性に応えなければ、21世紀のコロンビアの成長は間違いなく妨げられることになるだろう。我々には成長の余地がある。粘り強さと立ち直る力があれば、コロンビアや中南米諸国だけでなく、世界が抱える課題も克服できることを示そうではないか。

筆者は、20年後、いや3年後には、数億人の人たちに利用される再生可能エネルギーや疾病予防関連イノベーションが若いコロンビア人の女性によって開発されるのではないかと期待している。取り除くべき障害はある。そうした障害を取り除く動きがコロンビア全体ですでに始まっている分野もあり、これをテクノロジー分野でも継続する必要がある。筆者は同世代の仲間たちと協力して、引き続き資金を集め、人材をつなぎ止めて、コロンビアが21世紀をリードする国へと発展していくための競争力をさらに強化していくつもりだ。

コロンビア政府と規制当局およびイバン・ドゥケ政権も同じ目標を目指して欲しいと思う。

関連記事:Z世代からシリコンバレーへのメッセージ「 」が意味するものとは

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(翻訳:Dragonfly)

ハーバード、MITなどの訴えを受け米移民税関捜査局が留学ビザの規則変更を撤回

トランプ政権は、米国で学ぶ海外留学生の通う大学が新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのために今秋から授業を完全オンライン化した場合に、留学ビザを取り消す計画を撤回した。

この変更は、数十校に上る大学が政権の命令に対して法的手段に訴えることを示唆した結果だ。この多面的な行動は、ワシントンDCを含む17の州の司法長官が支持しており、マサチューセッツ州のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)司法長官が主導いている。

米国時間7月14日のリモート公聴会で、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)はICE(移民税関捜査局)の規則変更への反対を訴えた。その変更は数百万人の海外留学生の生活を脅かすものだった。そして公聴会の開始から数分後、国土安全保障省は教室で授業を受けている学生のみが国に滞在できるとした当初の計画を撤回することに合意した(Twitter投稿)。

新たなガイドラインは、2020年3月9日のガイドラインに基づくもので、現在在学中の学生のみが恩恵を受ける。このため新入学生や秋に米国にやってくる人たちは取り残されてしまう。

7月6日に発表されたこの規則は、学界で大きな批判を呼んだ。Yale Law School(イェール・ロースクール)のHeather Gerken(ヘザー・ガーケン)学部長は新しい規則に反対する声明を発表した。ある教授は「必要なら雪の降る屋外でも教えるつもりだ」、それで学生が国内に留まれるのなら、と語った。

関連記事:トランプ大統領の突然の留学ビザ制限は米国社会に広く影響する

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヘイトに満ちた投稿で停止されていたトランプ大統領のTwitchアカウントが復活

RedditとTwitchが利用約款に違反する政治的投稿だとしていくつかのアカウントを停止してから2週間が経った。この重要な決定ではトランプ大統領のTwitchの公式アカウントも対象となっていた。ただし同社は「(停止は)一時的なもの」だと述べていた。

すでに報道されている(The Verge記事)が、我々の取材に対してTwitchは「大統領のアカウントが復活した」ことを認めた。

同社の広報担当者はこの問題に対する最初の声明を繰り返し「Twitchではヘイトスピーチは禁止されている。利用約款に基づき、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領のチャンネルからのストリーミングは一時的に停止されたが、当該の問題あるコンテンツは削除された」と述べた。

アカウント停止の原因となったのは2つのコンテンツで、1つは大統領選キャンペーンの開幕を告げるコンテンツに含まれていた「メキシコは一番優れた人々は送ってよこさない。……連中はドラッグを持ちこむ。犯罪を引き起こす。強姦魔もいる」という悪名高い部分だ。

もう1つはその後のタルサのキャンペーン集会における発言で「おい、今は明け方の1時で非常に嫌な時間だ(と想像してくれ)。ときどきこの『hombre(スペイン語で男)』という言葉を使うのだが、非常にタチの悪いヤツが夫がセールスマンか何かで出張中の若い女性の家の窓を破って入りこんでいる」というものだ。

Twitchは当時「政治家も他のユーザー同様に、我々の利用規約とコミュニティガイドラインを守る必要がある。政治的価値または報道価値があっても例外は認められない。違反が報告されたコンテンツに対しては(規約に基づく)措置を取る」と述べていた。

Twitterその他のソーシャルメディアと政権の激しい対立の中でこの問題が発生した。逆に共和党議員らは ユーザーコンテンツに関する訴訟からプラットフォーム運営者を免責する通信品位法230条を無効化することを要求している。これについては大統領行政命令も出ている。

選挙集会とオンラインメディアの双方でトランプ陣営の主張がヒートアップしているため、2020年11月の選挙に向けてこうしたトラブルが繰り返される可能性は高い。

画像クレジット:Brian Heater

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Z世代からシリコンバレーへのメッセージ「 👁👄👁」が意味するものとは

編集部注:本稿を執筆したRavi Mehta(ラヴィ・メータ)は、消費者向けテック企業のリーダーで最近までTinder(ティンダー)の最高製品責任者を務めていた。その前は、Facebook(フェイスブック)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)、Xbox(ゼロックス)で製品担当リーダーを務めた経験を持つ。

多様性に富む若い起業家や技術者で構成されるあるグループが、有色人種やLGBTQコミュニティを支援する3つの慈善団体―Okra Project(オクラ・プロジェクト)Innocence Project(イノセンス・プロジェクト)Loveland Foundation(ラブランド・ファウンデーション)―への寄付金として20万ドル(約2151万円)をわずか36時間で調達した。

どうやって、そして何の目的で、そんなことができたのだろうか。

この質問に対する答えは、テック業界の未来を理解する上で重要である。今回の出来事はZ世代が起業する方法とその理由を示す最初の実例だからだ。「 .fm」とその仕掛け人たちは、今の若者文化に広く見られるトレンドを反映している。

VCは注目すべきだ。なぜなら、この若者たちこそ次のFacebook(フェイスブック)を創り出す者たちだからだ。

VCでなくとも、誰もがこうした動きを喜ぶべきだろう。若い技術者たちが、新しい価値観のもとに新しい未来を創り出そうとしているのだ。彼らの価値観は、過去のソーシャルメディアにあふれる屈折した動機とオンラインでもオフラインでもより良い世界を作りたいという純粋な欲求が交錯する中で成長してきた経験によって培われたものだ。

今回の一連の出来事は米国時間6月25日木曜日の夜、あるグループが仲間内でとあるTikTok(ティックトック)ミーム動画を繰り返したところから始まった。今の世界では、言葉は常に変化している。「 」は「これが現実(It is what it is)」というフレーズの特殊な解釈として出現した。 「 は自分たちの周りに広がる混沌した現実の中で何もできず、逃げ道もない状況を表している」とJosh Constine(ジョッシュ・コンスティン)氏は説明する。

このグループは次に、「 」をTwitter(ツイッター)のハンドルに追加して、架空の招待制ソーシャルアプリ「 .fm」についてツイートし始めた。これが意外にもどんどん拡散し、内輪ネタのジョークが次々と投稿されて制御不能の状態となった。さらに、グループのDiscordサーバーでは次に何をやるかという話題で盛り上がった。そこで、瞬発的に生み出されたこのエネルギーを社会貢献につながる方向に向かわせることはできないだろうか、と皆が考え始めたのだ。

同期型ソーシャルアプリRealtime(リアルタイム)の創設者で「 .fm」の「筆頭仕掛け人」でもあるVernon Coleman(バーノン・コールマン)氏は次のように話してくれた。「ミームとして始まったことが、あっという間に盛り上がった。これはチャンスだと思った。この勢いを社会貢献に変えていく責任があると感じたんだ。スキルのある創造的な人たちが集まって、リアルタイムにコラボレーションしたときのパワーは本当にすごいと思う」。

何にフォーカスすべきか、という問いに対する答えは明白だった。6月26日金曜日にこのグループは次のように投稿した。「難しく考える必要はなかった。今、ようやく多くの人たちが構造的な人種差別主義や黒人差別主義に気づき始めている。この火を消さないようにもっと大きなうねりを起こしていく必要がある」。

6月25日木曜日以来、このグループは2万件のメール登録と1万を超えるツイッターのフォロワーを獲得し、20万ドル(約2151万円)の寄付金を集めた。

これを「うまく考えられたマーケティングキャンペーンだ」と皮肉る者もいる。悪意のあるいたずらだという意見もある。すべてが完璧に運んだわけではないし、失敗した部分もあったことはチームも認めている。しかし、彼らが行ったこととその理由を矮小化したり過小評価したりすべきではない。

このチームは、排他性をマーケティング戦略として使うシリコンバレーのやり方を非難し、次の新しい波にいつも一番乗りしようとしているVCをうまく釣り上げ、ツイッターが持つ爆発的な拡散力を巧みに利用して世間の意識を高め、それを、しばしば見過ごされがちな慈善団体に本当の意味で役立つ寄付金という形に変えたのだ。しかも、これらすべてを一瞬で成し遂げてみせた。

60人の若いテックだ系リーダーで構成されるこのグループは、自分たちのメッセージを伝える際に大手プラットフォームのツールを巧みに使って大きなインパクトを残した。

彼らは決してツイッターのヘビーユーザーではない。大半のメンバーはフォロワー数も数百人程度で、フォロワー数が数十万人の有名アカウントの所有者ではない。しかし、テックエリートと同じくらいこれらのツールを熟知している。

今回の動きはZ世代のリーダーや活動家たちによる一連の動きの中で最新のものだ。Z世代は、ミレニアル世代やX世代の生息領域と考えられているツイッターやフェイスブックといったプラットフォーム上でも、自分たちの発言を増幅させることができる。

このような動きが最初に目撃されたのは、フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件が発生したときだった。高校の生徒がツイッターやフェイスブック、さらにはケーブルニュースさえも乗っ取って銃規制に関する理性的な意見を発信したのだ。そしてそれが、銃規制を求める動きへと発展していった。

この3年間、筆者は若いユーザーや製品開発者との対話に何十時間も費やしたが、これはTinder(ティンダー)の最高製品責任者、フェイスブックのユース・チーム製品ディレクターを務め、エンジェル投資家でもある筆者の仕事の重要な部分となってきた。 .fmチームによって表現される感情の多くは、Z世代全般が持つ感情を反映していると思う。

Z世代は、より良い形で次世代に渡すことなど考えもせずに現世界から最後の1滴まで利益を搾り取ることばかり考えているように見えるベビーブーム世代にうんざりしている。

Z世代は、排他的な集団や仮想的な立ち入り禁止ロープに嫌気が差している。最近の例では、招待制のソーシャルアプリClubhouse(クラブハウス)がある。クラブハウスは創業からわずか数か月で評価額1億ドル(約107億円)で資金を調達し、黒人の著名人であるOprah(オプラ・ウィンフリー)氏やKevin Hart(ケヴィン・ハート)氏をはじめとする数千人の限られたユーザーにのみサービスを提供している。

テック業界内部の人間から見ると、クラブハウスはまさに最高の場所である。しかし、部外者であるZ世代から見ると、白人ばかりの創業者や投資家たちを金持ちにするために黒人の著名人が利用された最新の例にすぎない。

Z世代の起業家やテック業界のリーダーたちは、テック業界がインクルーシブ(包含的)であることの重要性を主張しながら、その実、それをマーケティングの策略として使っている事実にうんざりしている。このやり方を最初に行ったのはGmail(Gメール)だ。Gメールは招待制を大規模に利用した最初のアプリで、その後、招待制は戦略として広く利用されるようになっていった。

今、シリコンバレー内部の人間は、2文字か3文字のメールアドレスを法外な料金(2文字のアドレスは年間999ドル、3文字のアドレスは375ドル)で提供するHEY(ヘイ)という最近リリースされたメールアプリからの招待を受けたくて仕方がないらしい 。テクノロジーに対してより公平で共感を呼ぶアプローチを取ると主張しているJason Fried(ジェイソン・フリード)氏とDavid Heinemeier Hansson(デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)氏が創業した会社が、このような短い名前で高い料金を取るという収益スキームを採用しているのは皮肉なことだ。同社のビジネスは、意図的ではないにせよ短い名前をつける伝統を持つ民族をターゲットにした不公平なものだという批判的な声もある。

最後に、Z世代はダイバーシティを説きながらそれを実践しないテック業界にも嫌気が差している。黒人やヒスパニック系の社員は相変わらず大手テック企業(とりわけリーダーレベル)で過小評価されている。こうした過小評価は起業家になるとさらにひどくなる、ベンチャーの支援を受けた創業者のうち黒人が占める割合はわずか1%にすぎない。

シリコンバレーは努力が足りない。

「テック業界のVCと雇用者数には、パイプライン問題があるという話をよく聞くが、まったくのでたらめだ。我々はプロフィールにミームを入れた人からまったくランダムに選択するという方法で、年齢、文化的背景、スキル、性別、居住地区などが異なる人たちを集めることができた。シリコンバレーの企業は、まったくランダムに採用すればそれでダイバーシティは実現できることを理解すべきだ。テック業界がアクションを起こす気なら、我々が力を合わせたら実現できるであろう魔法のような変化について想像してみてほしい」とコールマン氏は語る。

.fmのストーリーは重要な真実を語っている。たとえZ世代が望むような未来を創造する気がテック業界になくても、Z世代が自分たちで創っていくだろうから心配には及ばないということだ。

彼らに支援を。

Make the hire. Send the wire.(もっと雇用を。もっと投資を。)- The Human Utility(ザ・ヒューマン・ユティリティ)創業者兼エグゼクティブディレクター、Tiffani Ashley Bell(ティファニー・アシュレイ・ベル)氏

「 .fm」を仕掛けたチームが支援している団体:

  • Okra Project – 黒人のトランジェンダーが直面している世界的な危機に対処することを目的とする慈善団体。黒人トランスポートジェンダーの人たちにその文化独自の健康的な家庭料理と支援金を提供している。
  • Innocence Project – 無実の罪で収監されたままでいる驚くほど多くの人たち(黒人が圧倒的に多い)を解放し、そうした不当な収監の原因となっている制度を改革することをミッションとする慈善団体。
  • Loveland Foundation – 黒人の女性と少女が米国全体でセラピー療法を受けられるようにすることを目的とする慈善団体。黒人の女性と少女はセラピー治療を受ける資格があり、その治療はすべての世代にインパクトを与える。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

新型コロナの感染拡大で深刻化するカリフォルニアのデジタル格差

もし十分なインターネット接続環境にないカリフォルニアの学生を集めて州をつくるとしたら、住民の数はアイダホ州やハワイ州よりも多くなる。

カリフォルニアの幼稚園生から高校生まで、計152万9000人(Common Sense MediaのPDF)が遠隔教育を十分受けるのに必要なネット接続を持たない。

非営利団体Common Sense Media(コモン・センス・メディア)はまた、ネットに十分に接続できる環境にない学生は一般に、デバイスも十分に持たないと指摘している。ネットに十分接続できる学生と、デジタル格差で反対の側にいる学生を隔てるホームワーク・ギャップ(学生が自宅でネットに接続できず宿題をできないこと)は、大胆で早急な介入がなければ深い淵となる。

いまものすごいスピードで広がっているデジタル格差に対する注意を喚起するために、筆者はサンフランシスコでNo One Left Offline(NOLO)を始めた。スタッフ全員がボランティアの非営利団体で、学生や高齢者、身障者に高速で手ごろ料金のインターネットアクセスを提供することに取り組んでいるベイエリアの組織の協力体制を作っている。

7月27日の週に、NOLO連合はデジタル格差の隅にいる家庭のブロードバンド料金を直接カバーするのに使われる資金5万ドル(約534万円)を調達するためのBridge the Divideキャンペーンを立ち上げる。

新型コロナウイルス(COVID-19)への対応として、現時点では緊急策はホームワーク・ギャップがさらに深刻になるのを阻止しただけだ。これこそが、学生の十分なインターネット接続とデバイスの欠如を解決する新たな方法が必要な理由だ。デジタルを「使える状況にあること」は、ブロードバンド費用をカバーし、そして「使えない状況にある人」が必要とするアップグレードに対応できることであるべきだ。直接提供するこの形は、インターネット接続を最大限利用するためにあらゆる学生に高速インターネットとデバイスを提供する最も効果的で効率的な方法だ。

しかしデジタル格差の間違った側の暮らしがいかに悲惨なものかを認識している人はあまりにも少ない。だからこそ筆者は、デジタルを「持てる者」である読者に、筆者と共に7月17日にオフ(ライン)を取ることを希望する。より多くの米国市民が安定したインターネット、デバイス、十分なレベルのデジタルリテラシーなしに成功するのはもちろん、生き残ることすらいかに難しいかを認識するのに、デジタルなしで1日過ごすことが必要だと確信している。

このデイオフ(ライン)で引き出すデジタル格差への注意の高まりは、ホームワーク・キャズム(宿題の隔たり)の形成阻止に向けて、より全体的で目覚ましい対応に駆り立てるはずだ。

ホームワーク・ギャップを埋めるためのこのところの取り組みは称賛すべきものだったが、限定的だった。たとえば、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)による料金の抑制や、延滞料金の免除、データ上限の撤廃などは称賛に値する。しかしそうした取り組みは、学校が始まる数カ月前、そして経済的危機が増大する最中の6月末で終了した。

多くのISPが助けを必要としている人々をサポートしようとこれまで以上に取り組んでいる。Verizon(ベライゾン)が、ホームレスとなっている人が愛する人と連絡を取れるよう非営利団体のMiracle Messagesに電話を寄付しているのがいい例だ。しかし、こうした一時的な取り組みは、何十万ものカリフォルニア州民がかつてない経済不安を体験しているという事実に十分に対応するものではない。人々は、パンデミックの最中に終わるような任意の貢献ではなく、デジタル面のニーズに対する長期的なソリューションを必要としている。

同じように、ベイエリアの多くの教育委員会が、助けを必要としている学生や家庭に無線インターネットやデバイスをすぐさま貸与した。実際、新型コロナの前ですらオークランド統一学区と1Million Projectは必要とする学生に無線インターネットを提供していた。ただ、こうした種の取り組みは、ホームワーク・ギャップの間違った側にいる学生に、反対側の学生に与えられているものと同じデジタル・リテラシーを高めるための機会を与えられるものではない。反対側の学生は自分のデバイスを所有し、宿題をやる以上のことができるだけの十分なインターネット接続を有している。

全ての学生が自分のデバイス、そして安全かつスムーズにインターネットを使用する点においてエキスパートとなれるようなネット接続を手にする権利がある。

直接の提供はソリューションとなる。ベイエリアの経済的ゆとりのある個人は、助けが必要な家庭のためにインターネット契約とデバイスを「支援」することができるし、そうすべきだ。家庭の高速インターネット契約を1年もしくはそれ以上支援することで、支援者はパンデミック中の暮らしに伴う他の困難に注意を振り向ける必要のある学生や保護者に安全のようなものを提供することになる。しかも、提供されるデバイスは縛りや「お古」のラベルなしだ。

学生は自分のものにできるフル装備の主要機能を備えたラップトップを手にすることになる。これは寄付デバイスでは一般的なことだ。

インターネットへのアクセスは人権であり、政府はホームワーク・ギャップを解決すべきだ。これまでのところ、この課題に十分に向き合っていない。そのため、民間でのソリューションが当面必要となる。我々が全体としてこのタスクに向き合っているというのは素晴らしいことだ。Fidelityによると、ほとんどの慈悲深い支援者は今年、そうした取り組みを維持するか増やす計画だ。

ミレニアル世代の46%が慈善行為を増やすつもりであることを考えて欲しい。残念ながら、慈善行為を阻害する要因は、新型コロナによる惨禍を解決するための取り組みを効果的にサポートするのに必要な情報を持っているというふうに多くの提供者が感じていないという事実だ。

だからこそ、NOLOや他の組織がこの問題に取り組み、注意喚起している。行政はホームワーク・ギャップを埋めていない。子供たちが成功するのに必要なネット接続とデバイスを確保できるかどうかは我々にかかっている。NOLOはまた、Bridge the Divideキャンペーン中にこの問題に取り組む手段を提供している。支援者は、サンフランシスコ・テック・カウンシル、BMAGIC、そしてMission Merchants Associationの組織がサービスを提供しているコミュニティのブロードバンド費用を肩代わりすることができる。

全体的な課題としてはホームワーク・ギャップが最優先事項だ。期日が迫っている。最初のタスクは7月17日にオフ(ライン)を取ること。そして7月27日の週に Bridge the Divideキャンペーンに寄付することだ。

共に取り組もう。

【編集部注】筆者Kevin Frazier(ケビン・フレイザー)氏はハーバード・ケネディ・スクールで公共政策を学ぶ大学院生。カリフォルニア大学バークレー校法科大学院にも在籍し、より良い行政について考えている)

画像クレジット: Catherine Delahaye / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

米国は政府契約業者によるファーウェイ製品の使用禁止を正式決定する方向へ

今週トランプ政権は、米国政府がHuawei(ファーウェイ)、Hikvision(ハイクビジョン)、Dahua(ダーファ)、Hytera Communications(ハイトラ)など中国企業のテクノロジーを使っている業者と契約することを禁止する規制を正式決定する方向だ。Reuters(ロイター)が報じた

最初に禁止が規定されたのは2019年の国防授権法(NDAA)で、国家安全の懸念から政府機関がHuawei、ZTE、Hikvision、Dahuaおよびその関連企業の機器、サービス、システムを使用する企業と契約することを禁止した。

契約業者は2020年8月13日までに規制に従う必要があるが、規則の曖昧さについて直ちに異論を唱えることができる(Nextgov記事)。

また最近、業界団体の国防産業協会は、多くの契約業者が現在新型コロナウイルス(COVID-19)の経済的影響に対応していることを理由に、期限の延長を政府に要求したとDefense Newsが伝えている

連邦契約業者にとってもう1つ問題なのは、ブラックリストに載っている企業がそれぞれの分野における世界的なリーダーであり、代わりを見つけるのが困難なことだ。例えばHuaweiとZTEは世界最大の通信機器メーカーの2社であり、DahuaとHikvisionは監視機器とカメラの2大メーカー、Hyteraは双方向無線の市場リーダーだ。

今回の禁止措置は、2012年の議会報告でHuaweiとZTEが国家安全の脅威であると認定されて以来(The NewYork Times記事)、Huaweiと米国政府の間に起きているさまざまなもつれのひとつだ。

2019年5月にHuaweiは、国防授権法の条項に対して意義を申し立て、同社の法務責任者は「米国の政治家は国全体の力を利用して一民間企業を追及している」と語った。

しかし、Huaweiに対して国家安全の懸念をもっている国は米国だけではない。7月9日にReuters(ロイター)は、Telecom Italia (TIM)(テレコム・イタリア)がイタリアとブラジルの5G機器の入札から排除すると決定したことを報じた。イタリア政府は同国の5GネットワークでHuaweiの技術を禁止する検討を進めていた。HuaweiはReutersに「イタリアのデジタル開発のセキュリティーは、根拠のない疑惑ではなく事実に基づく方法で決められるべきだ」と語った。

英国も同国の5Gネットワークで同様の禁止を検討していると報道されている(CNBC記事)。

画像クレジット:DANIEL LEAL-OLIVAS/AFP / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプ大統領の突然の留学ビザ制限は米国社会に広く影響する

フィリピンで育ったAndreia Carrillo(アンドリア・カリージョ)はいつも星が好きだった。そのため彼女は天文学を勉強しようと米国にやって来た。そうしたことから彼女は他の人にも自分と同じ道をたどって天文を研究してほしいと考えている。
「ただ、今はそれができるかどうかはわからない」とカリージョは話した。

カリージョは、米移民・関税執行局(ICE)がこのほど発表した、大学での授業が完全にオンラインに移行した場合、留学生の滞在を認めないとする規則変更で影響を受ける数十万もの学生の1人だ。

7月6日に発表された規則変更は、新型コロナウイルスパンデミックの脅威が全米に広がり、一部の大学が秋からオンライン授業に完全移行することを余儀なくされた中でのものだ。

規則変更のニュースは移民弁護士にとって不意を突くものだった。トランプ政権は、「SCHOOLS MUST OPEN IN THE FALL!!!(学校は秋に再開しなければならない!!!)」との大統領のツイート以外に、この政策について説明しなかった。この決定は政府がほとんど権限を持たないものであり、3月の政権の方針から急な反転となる。米国で新型コロナ感染が深刻だった3月、政権は対面式の授業が一時中止になっても学生は合法的に米国に滞在できるとしていた。

急な規則変更は大学を難しい状況に陥れている。大学は、留学生を米国にとどまらせるためにキャンパスを開けることもできるがウイルス拡散のリスクを負う。もしくはキャンパスを閉ざし、ソーシャル・ディスタンシングを維持して留学生を追い出すかだ。

しかしこの影響は、学生だけに及ぶものではなく米国中に連鎖する。大学の収入は主に留学生が払う高額な授業料に頼っていて、大学を擁する街の経済は学校が門戸を開いていることで回っている。規則変更はまたこうした学生が追究している主にエンジニアリング、数学、コンピューターサイエンスといった分野、そして米国のイノベーションの進度にも影響を及ぼす。イノベーションは往々にして目につかない人材によって支えられる。留学生にとって最も人気のある留学先の1つはシリコンバレーの中心地、カリフォルニア州だ。

Contrary Capitalの創業者Eric Tarczynski(エリック・タルチュンスキ)氏は「『大学に入るのが米国での企業設立の玄関口になるために、海外から大学にやってくる多くの起業家』を目にしてきた」と話した。

「ある意味では、米国は彼らのエリス島であり、我々はこのようにして会社を設立してきた」と同氏は述べた。そして、才能のある学生がオンラインにシフトするのをサポートするLambda Schoolのような代替のプログラムの存在を指摘した。

ニューヨーク大学(NYU)学長の Andrew Hamilton(アンドリュー・ハミルトン)氏は米政府の規則変更を受けて「健康問題、そしてを政府が命令したニューヨーク市のシャットダウンを無視して、留学生に対面式授業を続けるか、米国から出ていくかを求めることは、純粋に間違っているし、不必要に厳しいものだ」と述べた。「教育の提供で今求められているのはフレキシビリティだ」と同氏は書いた。

NYUは他の学校と共に政府に規則変更を撤回するよう求めることにしている。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学は規則変更の実施を阻止しようと、さらに踏み込んでICEを提訴した。

「新型コロナは政権が反移民政策をさらに進めるための手段として活用されている」と移民専門弁護士のTahmina Watson(タミナ・ワトソン)氏はTechCrunchに述べた。「数カ月後に選挙を控え、政権は移民を阻止するあらゆる手段を探している」。「見えない壁は本物で、壁は日々高くなっている」とワトソン氏は述べた。

学校にとって1つの選択肢は、一部の授業を対面で行い、他の授業をオンラインで行うというハイブリッド方式だ。たとえば、ハーバード大学は今秋、学生の40%のみをキャンパスに入れると明らかにしている。オンラインで授業を行う大学は、従来かなりの額になる授業料を正当化するのに苦労するかもしれない。

規則変更は、パンデミック中に議論となっていた痛い所を突いている。リモート教育が学べるものであるということをいかに形成するか、さらに重要なことには、誰が学ぶ機会を持つことができるか、だ。一部の人は、リモート教育へのシフトは他国と関係のある留学生に特に大きく影響するかもしれないと指摘した。また別の人は、米国において高学歴を持つ魅力は主にそれに伴うネットワークだと言う。

カリージョの場合、フィリピンでは天文学を学ぶ機会がなかった。理想のキャリアを追求するには彼女は米国に来なければならなかった。規則変更は訴訟をおこされる可能性がある。ワトソン氏は、6日に発表されたポリシーが合法かどうか疑わしいと述べた。トランプ政権は「一時的な最終規定」と言及した。ワトソン氏が言うには、この規定は通常あるパブリックコメント期間を設けることを避けている。

「中でも学校はこのポリシーについてたくさん言いたいことがあるはずだ」とワトソン氏は話した。「トランプ政権が長年のポリシーを変えたければ、各ステップで連邦行政手続法を経なければならない」。

このようにルールについては政権からの方向性と説明を待たなければならない。それまでは、この抜本的な変化をどう処理するかは大学や学生次第ということになる。

ビザのステータスを恐れて匿名を条件に語ったワシントン大学に通っているとある留学生は、規則変更で母国に戻ることを余儀なくされた場合、留学生の研究や奨学金を危うくすることになると話した。そしてもし留学生が通っている大学がハイブリッドモデルを取れば、留学生は健康について心配することになる。

「米国でこんなにも無礼を感じたことはない」と留学生は語った。「留学生が対面式の授業に戻ることを求められればウイルスを拾う可能性があり、新型コロナに感染するリスクを負う」と話した。

カリージョが規則変更を聞いたとき、彼女はパニックに陥り、所属する学部に電子メールを送った、と話した。幸いにも、彼女が通うオースティンにあるテキサス大学は今秋からハイブリッドモデルを取るとのことだった。当面、彼女は米国に滞在できる。

しかし安心することはできない。カリージョのような留学生はトランプ政権下では偽りの安心感に慣れている。「ハイブリッドになってほしいと願うのは不愉快だ。道徳的には、私は安全に過ごしたいし、オンラインで済ませたい。しかしそうすると米国滞在が危ぶまれる」。

画像クレジット: Alex Wong / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

コロナ禍でダイバーシティを後退させないために経営者がすべきこと

本稿を執筆したRachel Sheppard(レイチェル・シェパード)氏は、世界中でプレシード・アクセラレータ投資を行うFounder Institute(ファウンダー・インスティテュート)のグローバルマーケティング部門ディレクターだ。

どんな災厄でも、一番悲惨な影響を受けるのはすでに社会の主流から取り残された人々だ。だから、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)の中で、雇用や事業経営に関して、女性や民族的少数派の市民が他の誰よりも深刻な影響を受けていることも驚くにはあたらない。

今年4月、米国の女性失業率は15.5%に跳ね上がった。これは、男性に比べて2.5%も多い数字である。また、アフリカ系市民とラテンアメリカ系市民の失業率は白人よりも高く、ラテンアメリカ系市民の失業率は過去最高の18.9%に達した

女性たち―特に社会的に不利な条件下で生活する女性たち―はコロナ禍の中、自宅で介護や看護など家族を世話する責任を一手に担うことになる。そのため、職場では解雇の対象になりやすい。同時に、雇用の確保が危機に瀕している今、過小評価されている従業員の多くはこれまでよりさらに会社から軽視されていると感じることになるかもしれない。

ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包含性)が現在の状態まで推進されるに至るには、多くの苦労があった。ゆっくりと、だが確実に、ダイバーシティとインクルージョンがどの企業でも目に見えて重視されるようになってきたのだ。しかしコロナ禍により世界中の企業が窮地に立たされ、ダイバーシティとインクルージョン(D&I)推進の取り組みが後回しにされた結果、これまでの成果が危うく台無しになりそうになった。ジョージ・フロイド氏殺人事件とそれに続く抗議活動がD&Iの取り組みを大々的に再燃させたが、この勢いと決意を今後も長い期間にわたって確実に維持していくために、我々スタートアップ経営者はどうしたらよいのだろうか。

今回の衝撃的な出来事によって、ダイバーシティ推進がお飾りや企業アピールの手段ではなく、従業員1人ひとりが送る毎日の生活と切り離せない重要な要素であることをビジネス界全体が認識するようになるだろう。昨今は、消費者も、あなたと同じ職場で働く従業員たちも、社会的課題に対する意識の高い会社を求めている。だからこそスタートアップとしてバランスの取れた企業になるには、D&I推進に取り組むことが絶対に必要なのである。これは、より大規模に経済を復興させるためにも欠かせない。新型コロナウイルスとの戦いに際してD&Iの維持と改善をなおざりにすると、平等性の実現を目指す取り組みにおいて何年分も後退するばかりでなく、社会全体として力を合わせてこの動乱の時代を無事に乗り切る可能性を低下させてしまう。

D&I推進なくしてビジネス存続なし

今後、ほとんどのスタートアップが存続していくだけで精いっぱいになるのは仕方がないことだと思う。しかし、D&I推進を自社にとって不要不急の課題として脇に押しやるべきではない。不要不急どころか、その正反対の位置づけとすべきだ。ダイバーシティが優れていることは、業績も優れていることを示す指標となることが知られており、不景気の中でも成長していく可能性を高めることにもつながる。

ダイバーシティにより社内でイノベーションが促進されるという話はよく聞く。今、それがいかに重要であるかを考えてみてほしい。前代未聞の危機に直面している今、賢明なロックダウン戦略を見つけ出すには、さまざまな知見や解決策を比較検討することが欠かせない。我々ビジネスリーダーは、世界の現状がどうなっているのかを知る必要がある。そして、それを知るには、あらゆる背景の人々が何を経験しているかを理解しなければならない。

また、現在の行動が長期的に及ぼす影響も無視するわけにはいかない。存続のために会社の理念を犠牲にしてはならないのである。今、ダイバーシティを犠牲にするとどうなるのだろうか。当面の間は従業員をつなぎ留めることができるかもしれないが、それは単に彼らが失業を恐れているからにすぎない。実際は、経営者に対する従業員の信頼が損なわれ、労働市場が改善した暁には、彼らはいとも簡単に会社を辞めていくだろう。同じことは顧客にも当てはまる。今回の危機により、世間はパーパス・ドリブン型(社会課題解決を志向した経営を実践している)かつダイバーシティを実践している企業をこれまで以上にサポートするようになっている。そのため、これらの価値観を実践しない企業は取り残されていくことだろう。

雇用を増やせなくてもD&Iは推進できる

では、まだ慣れないこの新しい日常の中で、スタートアップはどのようにダイバーシティ推進に優先的に取り組み続けることができるのだろうか。確かに、これ以上雇用を増やすことはできないかもしれない。しかし、ダイバーシティを推進するには他にも方法がある。よい機会なので、ここで少し時間を取って社内の文化について見直してみよう。同僚の自宅の様子が垣間見えたり、仕事に影響する個人的な問題や、逆にプライベートに影響を及ぼす仕事上の問題について耳にしたりなど、コロナ禍により我々は自社のビジネスを違う角度から見ることを余儀なくされている。まずは、会社の文化が従業員の問題の原因にならないようにしよう。

経営者は近づきやすい存在でなければならない。中には自分が抱える問題について経営者に話すのを恐れる従業員もいる。あなたは経営者として、従業員の士気が大幅に下がっているのに何の改善策も実行できずにいるだろうか。もしそうなら、職場の雰囲気をより開放的で、誰もが参加しやすいフレンドリーなものにする必要がある。これは単にZoomで朝のコーヒータイムを一緒に過ごして楽しく会話するとか、終業後にお互い知り合う時間を設けるとかいうことではない。自分の心配事を意見として表明する従業員が何らかの煽りを食うような仕組みを社内から一掃する、意見を遠慮なく言うよう従業員に促す、上級管理職だけではなく、チーム内のどのメンバーについても、ミーティングに出席しているどの参加者についても、その貢献度を認めるという意味だ。

ロックダウンが実施された結果、多くの人がリモートで効果的に働けるということが証明された。これを今後、自宅がオフィスから遠い従業員や、子どもや高齢の親族を世話しなければならない従業員が成功するチャンスを広げるために活用できないだろうか。多くの企業の人事部では今、新規雇用を見送っていることだろう。その代わり人事部には、個々の従業員が成功できるよう、各スタッフが抱える独特の問題を見きわめて解決することに注力してもらうのはどうだろうか(こうした仕事にフルタイム社員を1人、担当者として割り当てることも検討できるかもしれない)。

このような取り組みは、過小評価されている従業員(多くの場合、職場環境について同僚よりも気苦労が多い)にとって今も、これからも居心地のよい会社を作るのに欠かせない。また、そのような従業員が成長しても、ずっと働き続けたいと思うような会社にするのにも役立つ。さらに、将来的により多様性のある従業員プールを確保することにもつながる。

雇用を増やせる場合は、より多様性のある求職者を引きつけるのに革新的なソリューションがある。Joonko(ジューンコ)が提供するテクノロジーは、募集企業側の応募者トラッキングシステムに統合でき、過小評価されている人材の中から候補者を見つけやすいようにしてくれる。Pitch.Me(ピッチミー)では、偏見を防ぐため、経験とスキルに関する情報のみが記載された匿名プロフィールが提供される。このプロフィールには、性別、年齢、民族的な背景に関する情報は掲載されていない。DiTal(ディタル)などのように、テック企業と多様性に富んだ候補者とのマッチングを行うサービスを提供している企業もある。

社内における成功の尺度を見直す

コロナ以前、あなたの会社のKPI(主要業績評価指標)は営業担当1人あたりの売上や週あたりのリード獲得件数だったかもしれない。現在、そのようなノルマは今、非現実的であるばかりでなく、より重要なこととして、同僚と比べて手持ちの時間が少ない従業員―家族を世話する責任を担う人(多くの場合は女性)や可処分所得が少ない人―にとっては、達成することが非常に困難になる。また、統計によると、民族的少数派に属する人の方がコロナウイルスの影響を受ける可能性が高い

経営者は、他の人より時間や資金が少ない従業員でも仕事で目標を達成できるような労働環境を整えなければならない。最も価値のある仕事のうち80%に、チームが持つ時間の20%が費やされているという話をよく聞く。であれば、スタッフが自分の持つ力のほぼすべてをその貴重な20%のエネルギーとして費やせるようにしよう。また、会社としての短期的な目標を見直す新たなビジネスプランを作成し、その目標を絶対に達成するための新しいメトリクスを設定しよう。そのことが、共に働く仲間1人ひとりが困難に直面しても目標の達成に向けてやる気を日々維持していくためにどれだけ重要か考えてみてほしい。さらに、従業員の福祉に配慮して柔軟性を示すことは称賛に値する特質であり、簡単に忘れ去られることはない。

ここで重要なことが1つある。各従業員が成功できるよう助けるということは、そうするために必要なリソースを各々に支給するということである。例えば相応の性能を備えたノートパソコンや他のデバイス、高速インターネット接続など、この「ニューノーマル(新たな常態)」に適応するのに必要なツールを全従業員に支給すべきである。このようなものを必要とする従業員のために投資することをためらってはならない。

キャリア開発に力を入れる

過小評価されている従業員にとって昇進は他の同僚より難しいのが常である。そのため、彼らにとってキャリア開発は非常に重要だ。マイノリティに属する人は、そうではない人に比べて、他ならぬ「ビジネス界でマイノリティだから」という理由で、ビジネス上の人脈が弱い。この悪循環と戦うことを決してやめてはならない。

あなたのチームを見渡して、キャリアアップを手助けできる人がいないか考えてみよう。今は特に過小評価されているグループを中心にそのような人材を探そう。なぜなら、過小評価されている人たちは、ロックダウンによってより深刻な影響を受ける可能性が高く、立ち直ることもより困難になりがちだからだ。彼らを利他的な動機で見ることができなくても、過小評価されている従業員を今からリーダー職に抜てきすれば地元経済の回復に貢献でき、さらには会社の業績も改善することになるだろう

もう1つの方法として、スポンサーシップ制度を設け、経営者であるあなたや他の上級管理職が選抜した従業員を直接指導し、そのキャリアアップを後押しすることができる。これは、ビジネスリーダーたちが積み上げてきた人脈や影響力をより多様な人材プールの中で均等に分け合うようなものだと考えるとよい。

自社のブランドにダイバーシティを組み込む

これまでは社内に目を向けてきたが、次に対外的な側面について考えてみよう。あなたの業界に対して人々が抱くイメージを、危機に面しているこの時期であっても好転させるにはどのようにしたらよいのだろうか。例えばファッション業界におけるブランディングのように、これまで我々が目撃してきた目に見える大きな変化は、強い影響力を持つ人たちが業界において権威のある場で決断することによって実現してきた。しかし皮肉なことにその方法は、物事をより不均衡な状態へと簡単に傾ける可能性も秘めている。

それを防ぐには、そのような重大な決断を経営者であるあなた自身が下すこと、そして他の人の賛同を集めることで団結を促すことが必要である。自社のブランドを活用して、社内で推進したダイバーシティを―例えばスタートアップ企業にアドバイスするメンターからオンラインイベントで登壇させる講演者に至るまで―対外的に行うすべてのことにおいて前面に押し出そう。対外的なマーケティングに可能な限りダイバーシティを反映させるよう意識的に取り組む必要がある。コロナ禍のせいで広告におけるダイバーシティ基準が低下するのではないかと危惧されている今は特にそうすべきだ。

過小評価されている創業者を支援する

資金に余裕がある場合、苦戦する創業者がロックダウンを乗り切れるように支援しよう。女性やマイノリティ市民によってあなたのコミュニティで経営される中小企業が支援を必要としているかもしれない。自社の従業員に支援物資やギフトを贈る計画があれば、そのための物品を、過小評価されている市民が経営する地元企業から調達するために余分の手間をかけることを惜しまないでほしい。何も難しいことではない。米国各地にあるそのような企業を見つけるのを助けてくれるWomen Owned’s business directory(ウィメン・オウンズ・ビジネス・ディレクトリ)Help Main Street(ヘルプ・メイン・ストリート)などの組織を活用すれば簡単だ。

大企業はHello Alice(ハロー・アリス)と協力して、退役軍人からLGBTQ+まであらゆるタイプの過小評価グループに属する創業者が経営する小企業へ直接資金を提供できる。IFundWomen(アイファンドウィメン)は女性が創業した事業が多数登録されているネットワークで、どの企業に出資または参画するかを利用者が自分で選ぶことができ、有色人種の女性が経営する会社だけを集めた部門もある。あなたはビジネスリーダーとして、常に多様な創業者とのコラボレーション機会を探すことができる。例えば、米国の巨大なラテンアメリカ系市場をカバーするラテンアメリカ系創業者をまとめたこちらの優れたリストをチェックしてみてほしい。こうした創業者はまた、ビジネスにおいてダイバーシティを向上させる方法も知っている。

NAACP(全米黒人地位向上協会)は1世紀以上にわたり有色人種の市民に平等の権利が与えられるよう戦ってきた。重要な改革の実現を目指す運動に参加する、頭角を現している黒人経営企業に注目する等の方法でNAACPとその取り組みを支援することもできる。

今はダイバーシティ推進の手を緩めるべき時ではない。単なるお飾りだと考えたい誘惑にかられるのはわかる。しかし、コロナ禍を乗り切るだけなく、業界全体がより平等な社会を目指して何十年もかけて苦労して築き上げてきたものを台無しにしないためにも、今こそダイバーシティを推進することが絶対に必要である。

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(翻訳:Dragonfly)

「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」のソースコードが公開

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ ソースコード オープンソースソフトウェア OSS

アスコエパートナーズは7月9日、東京都の委託を受け構築した「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」について、デジタル・ガバメントやスマートシティなど新しい取り組みにチャレンジしたい自治体職員が活用できるよう、ソースコードの一部が公開されたと発表した。

東京都とアスコエは、各自治体が同様のサイトを構築できるよう支援することを目的に、ソースコードの一部をMITライセンスとして公開。MITライセンスは、オープンソースソフトウェア関連ライセンスのひとつ。ソースコードは同サイトの「このサイトについて」ページより入手できる(ソースコードは、同サイトのすべての機能を実装するものではない)。

またこのソースコードは、特別なプログラミング技術や知識を有していない方でも、支援制度情報のデータを追加することでサイトを構築可能。必要なツールはテキストエディターとWebブラウザーのみで、データをWebサーバーにアップロードするだけで公開できる。

合わせて、ナビに掲載する支援制度情報のデータ構造についても、一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会が作成を支援。一般社団法人コード・フォー・ジャパンが公開した「新型コロナウイルス感染症対策に関する支援制度情報標準フォーマット」との互換性を高めたオープンデータフォーマットとして再公開した。両方ともに、「CC-BY 4.0 東京都およびアスコエ」として利用できる。配布は、東京都オープンデータカタログサイト東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報で行っている。

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により問題を抱えている住民や事業者が、東京都および一部省庁が提供する支援制度情報を一元的に検索でき、またそれぞれの状況に応じて利用できる支援を絞り込めるナビゲーションシステム。

東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ ソースコード オープンソースソフトウェア OSS

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新型コロナ給与保護プログラムの融資を受けた米テック企業のリストを中小企業庁が公開

米国時間7月6日、米国財務省は給与保護プログラム(PPP)で15万ドル(約1600万円)以上の融資を受けた企業を列挙したリストを公表した。この中にはBolt Mobility、Getaround、Luminar、Stackin、TuSimple、Velodyneといった話題のテック系スタートアップの名前も入っている。

15万ドル以上の融資を受けた中小企業の社名を掲載したこのリストは、同プログラムの透明性を求める圧力の結果生まれた。リストには、会社が受け取った資金で維持する予定の従業員数も載っている。

PPP融資は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックにより、政府や自治体が発令した自宅待機と不要不急ビジネスの閉鎖指示の影響を受けた企業を支えるために提供された。議会を通過しトランプ大統領が署名した2兆ドル(約215兆円)のCARES Act(コロナウイルス救済法)には、中小企業が社員の給与を維持するための直接的インセンティブを与えるPPP融資が盛り込まれた。申請受付を担当した米国中小企業庁は、社員維持の条件を満たしていれば融資を認めた。

今回発表されたデータからわかるように、情報には不正確なものが含まれていた。BirdとIndex Venturesの2社は当局が提供した情報に反論する声明を発表した。

「BirdはPPP融資を申請した企業として誤ってリストに掲載された」とBirdが提供したメールの声明に書かれている。「当社は申請もしていないしPPP融資を受けてもいない。我々は中小企業や地域ビジネスから大切な資金を奪いたくなかったので、会社として申請しないことを決めた」。

6日にBirdのCEOでファウンダーのTravis VanderZanden(トラビス・ヴァンダーザンデン)氏は、Citi(シティ銀行)は同社が正式に申請するかどうかを検討している間に手続きを開始した。Birdは申請しないと決定したことをCitiに伝え、同行は仮申請を取り消したと同社に伝えた。

Index Venturesは、融資を申請も受け取ってもいないことを確認した。Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)もPPPデータに掲載されたが、申請も受取もしていないことをTecnCrunch宛の声明で確認した。

以下のスタートアップと企業のリストには、プログラムの資金を自社のため、あるいは投資先企業のために受け取ったベンチャー企業も掲載されている。本稿は今後融資を受けた企業を確認でき次第追記する予定だ。

融資額15万~35万ドル(約1600万〜約3800万円)

  • Stackin(スタッキン)はミレニアル世代とフィンテックスタートアップを結びつける企業であり、融資を申請した。注目すべきなのは、このフィンテック企業が1260万ドル(約13億5000万円)のシリーズBラウンドを2020年5月に完了していながら、リストに載っていることだ。CEOのScott Grimes(スコット・グライムス)氏はコメント要求にまだ応じていない。
  • OpenResearchは、かつての社名をY Combinator Researchといい、維持する予定の社員数はゼロだった。非営利の同組織は2020年5月に再ブランドを果たし、Y Combinatorから独立して運用し、財政的に関連がなくなることを発表した。社名変更の発表は、同社がPPP融資に申請した後だった。

融資額35万~100万ドル(約3800万〜約1億700万円)

  • Bolt Mobilityは都市内マイクロモビリティーの先進的スタートアップ。18人の社員を維持予定。

融資額100万~200万ドル(約1億700万〜約2億1500万円)

  • SquareFootはニューヨーク拠点の不動産スタートアップで、融資を受けた。The Informationによると、CEOのJonathan Wasserstrum(ジョナサン・ヴァッサーストラム)氏は、新型コロナウイルスによって不動産売買が減速する中、社員の解雇を避けるために100万ドル(約1億700万円)を受け取った。

融資額200万~500万ドル(約2億1500万〜約5億3700万円)

融資額500万~1000万ドル(約5億3700万〜約10億7400万円)

  • Getaroundは、ピアツーピアのカーシェアリングサービスで、448人の社員を維持する予定。TechCrunch宛の声明でGetaroundは融資を受けたことを認め、同プログラムのおかげでロックダウンと新型コロナウイルスによる制限のために「会社が受けた深刻な影響を軽減するために役立った」という。
  • LuminarはLiDARセンサーの企業で341人の社員を維持する予定。
  • Turoはピアツーピアカーシェアリングサービスで、維持する予定の社員数は未公表。
  • Velodyneは、ライダーセンサーの企業で450人の社員を維持する予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人種的偏見と闘うAIの新分野が求められている

人種間の不平等に関する抗議活動が拡大してから、IBMは警察権行使の際の人種的平等を推進するため、顔認識技術の提供を中止すると発表した。  Amazon(アマゾン)はRekognitionソフトウェアの警察への提供を1年間停止し、「顔認識技術の倫理的使用に関するルールを定める強力な内規を導入した」。

だが内規の変更以上のものが必要だ。人工知能(AI)業界全体がコンピューターサイエンスの研究所を超えて成熟し、コミュニティ全体を受け入れる包容力が必要とされている。

偏見を広く排除しながら社会で機能する素晴らしいAIを開発することは可能だ。だが、現在のようにAIがコンピューターサイエンス(CS)やコンピューターエンジニアリング(CE)の単なる一分野にとどまるなら、それは実現できない。人間の振る舞いの複雑さを考慮してAIという学問分野を形成する必要がある。コンピューターサイエンスが支配するAIからコンピューターサイエンスによって何かが実現するAIに移行しなければならない。AIに伴う問題は研究所で発生するわけではない。科学者がテクノロジーを現実世界に移すときに発生するのだ。CSラボのトレーニングデータには多くの場合、あなたや私が住む世界の文脈と複雑さが欠けている。この欠陥が偏見を永続させる。

AIを利用したアルゴリズムは有色人種や女性に不利なバイアスを示すことがわかっている。たとえば2014年にAmazonは、ヘッドハンティングを自動化するために開発したAIアルゴリズムが(Slate記事)が女性の候補者に不利なバイアスがかかるような学習をすることを発見した。MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者らは2019年1月、顔認識ソフトウェアの方が色素が暗い人を識別する精度が低いと報告した。最近では、昨年末に米国立標準技術研究所(NIST)が実施した調査(NISTリポート)で、研究者らは約200の顔認識アルゴリズムに人種的バイアスの証拠を発見した。

AIの間違いに数え切れないほどの例があるにもかかわらず、熱意は続いている。IBMとAmazonの発表が多くの肯定的な報道を生み出した理由はそれだ。2015~2019年にかけて、世界における人工知能の利用量は270%増加(Venture Beat記事)し、市場は2025年までに1186億ドル(約1兆3000億円)の収益を生み出すと予想(OMDIA記事)されている。米国人の90%近くがすでにAI製品を日常生活で使用している(Gallup記事)、多くの場合それとは気づかずに。

AI開発は技術的な課題だが、AIを使用するには、社会科学、法律、政治などのソフトウェア開発以外の重要な学問分野の知識体系が必要となることを認めなければならない。だが、AIの利用がますますユビキタスになっているにもかかわらず、研究対象としてのAIはCSおよびCEの分野にまだ集中している。たとえば、ノースカロライナ州立大学では、アルゴリズムとAIはCSプログラムで教えられている。MITはCSとCEの両方でAIの研究を行っている。AIは人文科学プログラム、人種およびジェンダー研究のカリキュラム、ビジネススクールに取り入れなければならない。政治学科でAIのコースを開発しよう。筆者はジョージタウン大学のプログラムで、セキュリティ研究の学生にAIと機械学習の概念を教えている。これが普通のことになる必要がある。

AIの専門化に対し包括的にアプローチしなければ、我々はほぼ確実に今日存在する偏見と差別的慣行を永続させることになる。より低いコストで差別するようになるだけなのかもしれない。テクノロジーの高邁な目標を達成するのではなく。ニューラルネットワークの開発とテクノロジーが適用される社会的文脈の両方を理解することを目的としたAIの分野を意識的に確立する必要がある。

コンピュータエンジニアリングで学生はプログラミングとコンピュータの基礎を学ぶ。コンピュータサイエンスでは、アルゴリズム学習の基礎を含む計算理論とプログラム理論を研究する。これらはAI研究の強固な基盤だが、あくまで一部分として考えるべきだ。そうした基礎はAIの理解に必要だが、それだけでは十分ではない。

AIの普及によって快適な社会が実現するなら、AmazonやIBMなどのハイテク企業、そして数え切れないほどの他の企業はイノベーションを広めることはできる。それにはAIという専門分野全体がCSの研究所を飛び出す必要がある。心理学、社会学、人類学、神経科学(The Conversation記事)などの分野で働く人々が必要だ。人間の行動パターンとデータ生成プロセスのバイアスを理解することが求められる。筆者は行動科学のバックグラウンドがなければ、人身売買、マネーロンダリング、その他の不正行為を特定するソフトウェアを開発することはできなかった。

機械学習プロセスを責任を持って管理することは、もはや進歩のステップとして望ましいものではなく、必要なものだ。人間がもつ偏見の危険性と未来の機械が誤って偏見を再生産してしまう可能性を理解しなければならない。社会科学と人文科学が鍵となる。これを成し遂げるには、すべての学問分野を包括するAIの新しいフィールドを立ち上げる必要がある。

【編集部注】Gary M. Shiffman(ゲーリー・M・シフマン)博士は、「暴力の経済学:行動科学は犯罪、反乱、テロリズムに対する我々の見方を変え得るか」(邦訳未刊)の著者。同氏はジョージタウン大学で経済科学と国家安全保障を教えている。Giant Oak Search Technologyを作ったGiant Oakの創業者兼CEOでもある。

画像クレジット:Henrik Sorensen / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

デートアプリS’Moreのビデオチャットは最初の2分間相手の顔をぼかして人柄をわかりやすくする

パンデミックはデートアプリS’Moreの足を引っ張っていない。少なくともCEOのAdam Cohen-Aslatei(アダム・コーエン・アスラテイ)氏はそう語っている。同氏によると3月のDAU(1日のアクティブユーザー)は倍増し、その後も減っていない。

「家で仕事をしていれば、人との関わりに費やす時間も多くなるからね」とコーエン・アスラテイ氏はいう。

S’Moreという名称は「Something More」の短縮形で、2019年秋にローンチしたこのアプリ(未訳記事)は、これまでに5万近いユーザーを集めた。「Something More(それ以上のもの)」という名称はアプリの目標を表現していて、それはその他多くのデートアプリのように相手のルックスだけを重視する薄っぺらさを止めようという意味だ。

コーエン・アスラテイ氏によると、チームは、人種の多様性と性的指向性の多様性の両方に対するマーケティングに相当な時間を費やすことによって、多様なユーザーを集めることができた。S’Moreでは相手を人種でフィルターすることができず、ユーザーの15%はLGBTQを名乗っている。

健康のリスクがあるときに初めての人とデートするのはかなり難しいものだが、同氏によるとS’Moreのユーザーはとてもクリエイティブで、例えばお互いに気に入っているレストランのテイクアウトを利用するリモートディナーというデートのやり方もある。そして一部の州では再び閉鎖が進んでいるが(未訳記事)、店舗などが再開したら「このバーチャルな関係をリアルなものにするのはどうすればいい?」と尋ねればいいのだ。

画像クレジット:S’More

S’Moreは最近ビデオ通話機能を追加し、ユーザーの対話方法を増やした。しかしコーエン・アスラテイ氏によると、女性は相手は良い感じかどうかわからなければ、その男性に会いたいとは思わないため、S’Moreのビデオ通話では最初の2分間、相手の顔などがボケた状態で表示される。最初はほとんど会話だけを交わし、相手がどのような人物なのかを把握できるようになっている。相手の容姿が確認できるのはその後になる。このやり方はNetflixのデート番組「Love is Blind」に似ている(未訳記事)。

さらにS’Moreは先週からボストン、ワシントンD.C.、ニューヨーク、シカゴに加えてロサンゼルスでも利用できるようになった。そして同社のビデオシリーズをInstagramのIGTV、S’More Happy Hourで見られるようになっている。そこではセレブたちがデートのアドバイスをしてくれる。

「デートアプリには、否定的な行為や偽の画像、なりすましといったネガティブな歴史がある。しかし我々はそろそろ、本人であることを軸とする新しい時代へ進むべきだ。S’Moreは、ユーザーをその方向へ誘う新しいデートアプリの1つだ」とコーエン・アスラテイ氏は語る。

関連記事:S’More is a new dating app that looks to suspend physical attraction for something more(未訳記事)

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ビッグデータ解析のPalantirが約590億円を調達、最終調達額は1000億円超に

ときおり議論の的になるが常に秘密主義のビッグデータ・アナリティクス企業であるPalantirは政府機関や大企業を顧客として、安全保障情報(未訳記事)、ヘルス情報(未訳記事)、そのほか機密性の高い情報処理を事業としている。ビジネスとしてはこの秋にも株式上場を目指していると報じられている(Bloomberg記事)。しかし当面は非公開企業としての資金調達にも力を入れているようだ。

Palatirはこのほど4年ぶりとにSEC(米証券取引委員会)にフォームD(登録義務の免除規定のための書類)を提出した。この報告書によれば、同社は10億ドル(約1075億円)近く、正確には9億6109万9010ドル(約1030億円)を調達中であり、このうち5億4972万7437ドル(約590億円)をすでに調達したという。つまり今後4億1137万1573ドル(約442億円)を集める計画だという。

6月のReuters(ロイター)の記事によれば、Palantirは提携先2社からの戦略的投資を受けている。ひとつは日本の保険会社であるSOMPOホールディングスからの5億ドル(約537億円)、もう1件は日本のテクノロジー企業である富士通からの5000万ドル(約53億円)だ。これは合計5億5000万ドル(約591億円)となるため、フォームDで調達済みとされている5.5億ドルがこれに当たるようだ。

フォームDによれば投資家からすでに58件のオファーを受けており、Palantirは調達予定の10億ドルのうちすでに調達した5.5億ドル以外の部分に対しても投資コミットメントを確保しているわけだ。ただし資金調達ラウンドはまだ締め切られていない。

Palantirに今回のフォームDに関してコメントを求めたが「これは当社が直接売却する予定の株式であり、既発行株の二次的取引ではない」と述べるに留まった。今回の資金調達ラウンドはフォームDの説明では上場計画に遅延が生じているためなのか単に上場を補完するだけなのか明らかではない。

また報告書はPalantirが4年ぶりに10億ドル以上30億ドル以下の資金調達を図っているというCNBCの2019年9月の報道を裏付けるものらしい。その報道ではPalantirは会社評価額として4年前の200億ドルを260億ドルにアップすることを目標としていると指摘していた。 6月のロイターの報道では二次市場の取引に基づく会社評価は100億ドルから140億ドルの間だとしていた。

PitchBook調べでは、Palantirは現在までに108以上の投資家から少なくとも33億ドルの資金を調達している。PitchBookのデータ(一部は有料記事)ではPalantirはこれ以前に金額は不明だが非公開で何度か資金調達ラウンドを実行しているという。

Palantirの評価額は4年前の200億ドルが最後だが、その後、さらに高い評価額に向かうことを示唆するいくつかのポイントがあった。新型コロナウイルスによるパンデミックで株式の新規上場はほぼ停止したものの、再び動きが見られるようになっている。またPalantir自身の事業活動も活発化の兆候を示している。

Bloombergによれば、同社は4月に投資家向けブリーフィングを発表し「今年の収入予想は10億ドルに達し、2019年から38%増加して損益分岐点に達する」と予想している。これはPeter Thiel(ピーター・ティール)氏などが16年前に同社を設立して以来初めてのことだ。他の共同創業者には Nathan Gettings(ネイサン・ゲッティングス)氏、Joe Lonsdale(ジョー・ロンズデール)氏、Stephen Cohen(スティーブン・コーエン)氏、現在のCEOを務めるAlex Karp(アレックス・カープ)氏だ。

なお、Bloombergの記事にはPalantirがなぜ投資家にブリーフィングを行ったかは説明されていないので、上場を控えての広報だったのか、今回の資金調達あるいは別の理由だったのか不明だ。またPalantirはは新型コロナウイルスによるパンデミックに関するニュースにもたびたび登場している。

具体的には、英国ではコンソーシアムの一部としてNHSと共同(未訳記事)で新型コロナウイルスデータベースの開発)、米国では連邦政府の新型コロナウイル追跡システム(Daily Beast記事)やCDCとの共同プロジェクト(Forbes記事)など、主要市場で大規模なビジネスを獲得していることが報じられている。こうしたプロジェクトはPalantirのほかのビジネス(未訳記事)同様、準備と実施に多額の先行投資を必要とすることが予想される。 こうした事情が現在資金を調達している理由の1つかもしれない。

画像:Jason Alden/Bloomberg / Getty Images 画像編集済

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インド政府の禁止命令を受けアップルとグーグルが数十の中国企業のアプリを削除

インド政府が中国企業開発の59のアプリを禁止した2日後、Google(グーグル)とApple(アップル)はインド政府の命令に従い、世界第2位のインターネット市場のユーザーがそうしたアプリを利用できないようにし始めた。

インド政府が禁止したUC BrowserやShareit、Club FactoryといったアプリはアップルのApp StoreとGoogle Play Storeから姿を消した。グーグルの広報担当は、同社がインド政府の暫定命令をレビューし、Google Play Storeで「(対象となる)アプリへのアクセスを一時的にブロックした」と声明文で述べた。

アップルもインド政府の命令に対しグーグルと同様の措置を取ったが、コメントの求めに応じなかった。

この件に詳しい人物は「ByteDance(バイトダンス)を含むいくつかのデバロッパーは自発的にアプリをインドでアクセス不可にした」とTechCrunchに語った。

インドの通信省は今週初め、通信ネットワークやインターネットサービスプロバイダーに「すぐさま」59のアプリへのアクセスをブロックするよう命じた。こうしたアプリの多くのウェブサイトがインドでアクセス不能になった。

両社のソフトウェアは地球上のほぼ全部のスマートフォンを動かしているが、これら2社の6月2日の動きは、このところ中国とインドの間でこれまでになく緊張が高まっている中でのものだ。

論争が展開されているヒマラヤ国境地帯で、国境を接する2国の間で先月あった小競り合いではインド兵20人が殺害され、緊張が一気に高まった。今週初め、インドは国家のセキュリティの懸念を理由にByteDanceのTikTokを含む59本のアプリを禁止した。一部の人は報復とみている。

禁止命令の中でインドの電子情報技術大臣は「これらのアプリがユーザーのデータを収集してマイニング・プロファイリングしていて『インドの安全保障と国防』にとって脅威となる」と主張した。

インド政府は一部の企業の役員を招いて懸念に応える機会を提供した。TikTokのCEOであるKevin Mayer(ケビン・メイヤー)氏は7月1日「TikTokがインドのプライバシーやセキュリティに関する必要条件を満たしていて、今後さまざまな利害関係者と会うことを楽しみにしている」と述べた。

7月2日、中国のソーシャルネットワークWeiboは、インド大使館の要望でインドのNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相のアカウントを削除したと明らかにした。アカウントが削除される前、モディ首相は20万人超のフォロワーを抱えていた。

インドは近年、シリコンバレーと中国の企業にとって最大の「戦場」となっていた。グーグルやFacebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)といった米国のテックグループのように、Tencent(テンセント)やByteDance、Alibaba Group(アリババ・グループ)を含むいくつかの中国企業も過去10年、アグレッシブにインドで存在感を高めてきた。インドにユーザー2億人を抱えるTikTok(未訳記事)は、アジア第3位の経済であるインドを中国外における最大のマーケットとしてとらえている。

アプリ調査会社App Annieの幹部がTechCrunchと共有したデータによると、LikeeやXiaomi(シャオミ)のMi Community、TencentのWeChatなどが含まれる59本のアプリの先月の月間アクティブユーザーベースは合計で5億人超だった(インドのスマホユーザーのかなりの割合がこうしたアプリのいくつかを使用していて、オーバーラップも多数ある)。

画像クレジット: PRAKASH SINGH / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

グーグルが新型コロナ禍で米国オフィスの閉鎖を少なくとも9月まで延長

数カ月前Google(グーグル)は、7月4日独立記念日の休暇後に米国オフィスの一部を再開する計画を発表した。よく練られた計画だが、それだけだった。米国の新型コロナウイルとの戦いの中、物事がうまくいかないのは明らかであり、グーグルは安全側に舵を取り直した。

Bloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じたように、グーグルは事業の再開を9月7日以降に延期した。米国ではレイバーデー休日の後だ。Facebookなどのテック巨人と同じく、同社は社員に対して、今年いっぱい在宅勤務を続ける選択肢が与えられていることを伝えた。

関連記事:グーグルが一部の従業員をオフィスに戻す計画を発表

多くの人たちが今の状態のオフィスに戻ることを安心できない今、これは賢明な選択であり、通勤のための公共交通機関のこともある。ちなみにTwitterは5月に、社員が永久にリモートワークすることを認めると発表して話題を呼んだ。

米国時間6月30日、米国では4万7000人の新型コロナウイルス感染者が報告され、パンデミックが始まって以来最大の1日あたりの感染者数を記録した。

アリゾナ州、フロリダ州、テキサス州は感染の中心地となり、他の多くの州でもここ数週間感染者の増加を見ている。ウイルス蔓延への懸念がふたたび高まる中、多くの地域で事業再開が中止あるいは延期された。他の大手テック企業も再開計画を遅らせる可能性が高い。ほとんど場合、オフィスに戻るという選択肢にはリスクを冒す価値がない。

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

資金調達した黒人起業家と支援した投資家のリストが入ったスプレッドシートが公開

何人の黒人起業家がベンチャー資金の調達に成功したのか、どのベンチャーキャピタルがスタートアップに投資したのかを知ることは、歴史的にも容易な作業ではない。ベンチャーキャピタルのデータが、ステージ別やスタートアップのタイプ別に分類されることはよくある。しかし、特定のベンチャーキャピタル会社が何人の黒人起業家に投資したかを知ろうとするのは、これまで非常に困難だった。

今年、Yonas Beshawred(ヨナス・ベシャワード)氏、Sefanit Tades(セファニット・タデス)氏、およびJames Norman(ジェームズ・ノーマン)氏の3人がTransparent Collectiveと協力して、米国ベンチャーキャピタルの支援を受けた黒人創業者の最も包括的なリスト(Medium記事)を作った。データはこちらで見ることができる。

これは、有用性においても、勇敢さにおいても、類まれな記録だ。米国時間7月1日現在、リストには283人の名前が載っているが時間とともに増えているようだ。

最近、同じグループがさらにデータを追加(Medium記事)した。このほどこの公開データベースに、どのベンチャーキャピタル会社が黒人起業家のスタートアップに投資したかの詳細が加わった(起業家のリストは黒人歴史月間に公開され、VCのリストはジュンティーンス(奴隷解放記念日)頃につくられた。テック業界の最近のジュンティーンスに関する行動について以下の記事を参照してほしい。

関連記事:奴隷解放の6月19日を記念する動きが米テック企業の間で続出

黒人起業家に投資したVC会社のほうが、VCから資金調達した黒人起業家よりも多い。これは、ひとつのラウンドに1社以上のVC会社が参加するのが普通であることを踏まえると当然だ。しかし、出てくるVC会社の数は心強いものの、このデータには微妙な部分がある。

TechCrunchが、Pilot.lyのCEOで、Transparent Collectiveのパートナーでもあるノーマン氏と話をしたところ、同氏は当初「570社が行った投資に数に驚かされた」が「よく見るとそのうちの75%は投資した黒人起業家が1人だけだった」。

さらにノーマン氏はデータを見て「リストにあるVCの大部分は、調達ラウンドへの後追い投資である可能性が高い」、ほとんどのVCが1社のみの黒人起業家のスタートアップに投資しているという事実は「黒人起業家全般に渡る資金の不足を浮き彫りにしている」と語った。

とはいえ、起業家とVCのデータがまとまったリストはそれ自身有用である。ノーマン氏は、このデータベースは他の企業が情報を取り込んで分析するのに役立つので、これまで閉ざされていた有用な知識が利用できるようになることを期待している。

同じくリスト作成に参加したTades氏は、データベースへの反応は「驚くほど肯定的であり、リストの拡張や追加データの提供への協力を申し出た人もいた」とTechCrunchに伝えた。さらにTades氏は、「フィードバックによって黒人起業家のリストやデータベースの改訂も早まる」と語った。これも楽しみだ。

シリコンバレーは「measure what matters」(重要なものを測れ)というような言葉が大好きだ。ちなみに、いまここに黒人起業家と、彼らのスタートアップに1枚か2枚か3枚小切手を書いたことのあるVCのリストがある。両方のリストが長くなることは重要であり、私達は今その進捗を測ることができる。

画像クレジット:slobo / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FCCがファーウェイとZTEを「安全保障上の脅威」に指定した背景

米国のFCC(連邦通信委員会)は中国のテレコム企業であるHuawei(ファーウェイ)を「国家安全保障上の脅威」に指定した。これにより米政府の補助金を受けているテレコム企業によるファーウェイとZTEの機器購入の禁止が公式化された。

FCCのAjit Pai(アジット・パイ)委員長は「証拠の重みがこの決定を支えている」と述べた。 パイ委員長によれば、政府諸機関と上院、下院の議員は以前から「これら中国のテクノロジー大企業は中国法の下にあるため、中国の情報機関に対する協力義務というリスクを抱えている」と主張してきたという。ファーウェイとZTEはこうした指摘をその都度否定している。

共和党任命のパイ委員長は別の声明で「我々は中国共産党が米国のネットワークの脆弱性を悪用して重要な通信インフラ侵入することを許すことはできないし、許すつもりもない」と述べている。

FCCの「国家安全保障上の脅威」という指定は発表と同時に発効したが、TechCrunchでも報じてきたように、ファーウェイ、ZTEの締め出しはすでに実施されているため、今回の指定が具体的に現状をどう変えるかはまだ明らかでなない。

昨年11月、FCCは「安全保障上の脅威と見なされる企業は政府のユニバーサルサービス資金を受け取る資格が一切ない」と発表している。 米国の通信インフラの接続性を改善するための機器およびサービスの購入を助成するためのFCCの施策の最も重要な部分が85億ドル(約9100億円)にのぼるこの資金の給付だ。

この際すでにファーウェイとZTEは「安全保障上の脅威」とに指定されたが、2社の不服申し立てもあり、この指定の根拠を数カ月以内に正式化することが必要となっていた。これが今回の発表の背景だ。

FCCの幹部は「11月の裁定はユニバーサルサービス資金の支出にのみ適用されるの」と説明している。

民主党推薦のFCC委員であるGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)氏は公式声明で「ファーウェイ、ZTEに対する安全保障上の脅威指定は第一歩ではあるが、両者製のコミュニケーション機器がすでに大量に使用中であり、これらを特定して交換する必要がある」と説明した。

スタークス委員は次のような文書も出している(FCCの公式文書)。「米国の通信システムにリスクをもたらす機器を特定するために当委員会は重要な措置を講じた。しかしなすべきことはまだ多数ある。最大の問題は資金だ。議会は2019年に「安全で信頼できる通信ネットワーク法(Secure and Trusted Communications Networks Act)」を制定し、通信事業者が信頼できない機器から移行するために政府の支援を必要とすることを認めている。しかしまだ機器交換用のための資金の具体的な割り当てに至っていない」。

今回のFCCの指定は中国のテクノロジー企業を締め出すため動きの最新のものだ。 しかし、それは5Gのカバレッジを拡大するために取り組んでいる通信会社を窮地に置きます。しかしファーウェイとZTEは5Gテクノロジーで米国のライバル企業をはるかに上回っていると見られため5Gネットワークのカバー地域を拡大しようと努力中の米国のテレコム企業は難しい立場に置かれる。

ファーウェイとZTEはこれについてまだコメントを発表していない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook