パーソルキャリアとNECがブロックチェーン技術を用いた外国人ITエンジニア採用サービスの実証実験

パーソルキャリアとNECがブロックチェーン技術を用いた外国人ITエンジニア採用サービスの実証実験

パーソルキャリア日本電気は8月13日、国をまたぐ新しいダイレクトリクルーティングサービスの実証実験を実施すると発表した。NECが独自に開発したブロックチェーン技術と、AONT(All-or-Nothing Transform)方式秘密分散技術を用いたアプリを使用する。

実証実験の対象はインド在住のITエンジニアと、外国人ITエンジニアの採用を検討する日本企業。GMOインターネット、ワイヤードビーンズなど計6社の日本企業が参画し、採用活動を行う。

実証実験のコンセプトは、Self-Sovereign Identity(自己主権型アイデンティティ)をベースとしたもの。これは、特定の管理主体が介在することなく、個人が自分自身のアイデンティティを自ら保有・コントロールできるべきという考え方。ダイレクトリクルーティングとは、企業が自社の求人要件にマッチする求職者に対して直接採用アプローチを行うリクルーティング方法。

検証内容は、日本で就労希望があるインド在住のITエンジニアのニーズ調査、日本の求人企業の採用負担削減効果、プログラミングスキルチェックの妥当性となっている。

同実証実験で両社は2020年8~10月の3ヵ月間の実証実験を通じて、転職希望者個人の経験や知識、実績を基にインド・日本の国をまたぎ、公平に仕事を得る機会を創出。その結果を踏まえ、NECは2020年度中のダイレクトリクルーティングサービス開始を目指す。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、今後のインドおよび日本の採用、就労環境の変化に対応するサービスのあり方についても検討する。

参画するインド在住のITエンジニアは、現地でITスキルテストを行い、公平に自分の経験・スキル・実績を証明し、自身の履歴書やスキル情報の真正性を担保する。求人企業はそれらの情報によって、採用後の人材ミスマッチを防ぐことが期待できるという。

スキルチェックは、オンライン受験が可能となっており、結果はスマホアプリに自動連携される。今回の実証実験では、NECが独自に開発したブロックチェーン技術とAONT(All-or-Nothing Transform)方式秘密分散技術を用いたアプリを使用。転職希望者は、自身のパーソナルデータなどの秘匿性の高い情報をセキュアかつ簡単に管理(追加・編集・削除)したり、アクセスコントロールを行いデータの開示可否を設定したり、情報の改ざんを防ぎ真正性を高く担保することが可能。

AONTは、任意のデータから複数の新しい断片データを生成するデータ変換技術。断片データからは、全ての断片を集めて結合しないかぎり、元データについて何も知ることができないことを保証する。これを用いて、断片データをそれぞれ異なるクラウドサーバーに分散配置すれば、元のデータに関して高い機密性が実現できる。

これにより、転職希望者は自らのスキル証明書を信頼性の高い情報として保管可能という。またこの証明書は、転職希望者がアクセスを許可した企業が閲覧できるため、企業ごとに異なるスキルチェックテストを受ける手間が省け、転職希望者の選択肢の幅を広げることにつながるという。

パーソルキャリアとNECがブロックチェーン技術を用いた外国人ITエンジニア採用サービスの実証実験

このほか今回の実証実験では、インドでITスキルテストの開発・提供を行うHackerEarthと協力して実施する。同社は、オンラインでのコーディング評価やリモートインタビューを通じて開発者のスキルを測定できる開発者評価サービスを提供。世界中で450万人以上の開発者コミュニティをもち、開発者はコーディングスキルを習得し、就職に備えられる。

パーソルキャリアによると、国内でIT人材の獲得競争が激化する中、競争力を高めていくためには、優秀な人材を海外から呼び込み、定着させることが重要という。一方、新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、採用活動や就労形態もオンライン化が加速しているとした。

そのような中、転職希望者は職務経歴書や面接だけでは測れない経験・スキル・実績について、リモートやデジタル上でどのように証明し信頼を得るか、また求人企業側は転職希望者の能力の見極めがより重要になっているという。さらには転職希望者自らが自身の個人データを管理し、アクセスコントロールする必要も高まっており、データ利活用のあり方が問われているとした。

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パーソルキャリアが仕事や転職の匿名相談サービス「JobQ」を子会社化

左からパーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏、ライボ代表取締役CEO 小谷匠氏、パーソルキャリア代表取締役社長 峯尾氏太郎氏、同社執行役員 岩田亮氏

転職サービス「doda」やアルバイト求人情報サービス「an」などを展開するパーソルキャリアは3月14日、キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ」を手がけるライボの発行済株式を全て取得し、完全子会社化したことを明らかにした。株式の取得価格は非公開だ。

直近では両社のサービス間で連携を進めるほか、将来的には両社の持つナレッジやHRデータを統合しながらキャリア選択を支援する新サービスの開発なども見据えていく計画。ライボに関しては創業者で代表取締役CEOの小谷匠氏が引き続き代表を務め、独立的に運営していく

現場のリアルな情報が得られる就職・転職版の「Yahoo!知恵袋」

ライボは2015年2月の創業。代表の小谷氏は新卒で入社したソーシャルリクルーティング(現ポート)にて営業やエンジニアとして働いた後、ライボを立ち上げた。

当初は友人間で転職をサポートし合うようなプロダクトからスタートし、そこから少し方向性を変える形で同年4月にJobQのβ版をローンチしている。

2015年6月にはサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)から最初の資金調達を実施。その後も同社や約10人のエンジェルから資金を集めつつ、時には「共同創業者と別れたり、キャッシュアウトを経験したり」しながらも約4年に渡ってJobQを育ててきた。

そんなJobQは、匿名のQ&Aコンテンツを軸に個人のキャリア選び・企業選びをサポートするユーザー投稿型のメディア(CGM)だ。

求職者が匿名で質問をすると、その内容に精通する個人から回答を得られる仕組みを採用。CGM型にすることで、現場を知る人からリアルな情報を低コストで入手できるのがウリだ。

個人的には「人材領域に特化したYahoo!知恵袋」と「『転職会議』や『Vorkers』のような企業クチコミサイト」が合体したようなサービスという印象で、実際キャリアや転職に関する投稿と特定の企業に紐づく投稿(クチコミ)が、それぞれ半分ずつくらいなのだという。

「(企業のクチコミサイトは複数ある一方で)他社が狙っていないような、働く悩みに関する投稿を蓄積しているのがひとつの特徴。これまでキャリアについて考える際、リアルな情報を手に入れるのが難しかった。たとえば転職エージェントに聞いてみても、エージェントとしては収益に直結しない部分でもあり、サポートできることに限りがある。JobQはそこを民主化するようなサービスだ」(小谷氏)

JobQのコンテンツは「●●社の研修制度について教えて欲しい」のように特定の企業に関するQ&Aから、「円満に退職する秘訣を知りたい」「面倒な飲み会の断り方」など働くことに関連する多様な相談まで幅広い。ちなみに小谷氏によると日曜日の夜間にトラフィックが伸びるそうだ

始めは転職ユーザー向けのサービスとして作っていたが「CGMの特性上、情報の非対称性が大きいとこで使われやすい」こともあり、次第に就職(新卒)ユーザー向けのQ&Aコンテンツも増加。今では3〜4割が就職関連の投稿となっている。

コンテンツが蓄積されていくことでサイトのトラフィックも増え、2019年2月時点では前年同期比で270%の成長を記録まさに数年間温めてきた事業が徐々に形になってきたフェーズで、成長をより加速するべく次の一手を考えていたそうだ。

決め手はJobQの持つ「働く悩み」全般に関するコンテンツ

一方のパーソルキャリア側では、転職活動中のユーザーだけに留まらず、転職前後や転職を明確に意識していない層までサービスの対象を拡大する方向にシフトしつつある。

転職先が決定した個人の内定から入社後までをケアする「dodaキャリアライフサポート」を2017年11月よりスタート。2018年10月には転職活動中のユーザー以外もサポートすることを目指しdodaのブランドを刷新した。

つい先日にはハイクラス人材を対象にした新たなサービス「iX(アイエックス)」を発表。今夏を目処に複数のサービスを順次展開する計画だ。

そんな流れがあったからこそ、JobQ上に投稿されているコンテンツに関心があったという。

「dodaを活用して転職するユーザーにとって企業のクチコミはすごく重要な情報になるので、その点で魅力を感じたのがひとつ。加えて、会社としてこれから転職活動の前後まで領域を広げていく中で、そこに対するコンテンツもJobQが保有していたことが大きな決め手だ。自分たちでこれらの情報をゼロから集めるのは難しく、非常に価値が高いと判断した」(パーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏)

もちろんdodaにもキャリアアドザイザーがいてキャリア全般の相談に乗ってはいるが、やはりメインは転職活動のコアの部分に寄ってしまう。過去には自社でJobQのようなサービスの立ち上げも検討したそうだが、サイクルを回すのが大変で時間もかかるため、ライボとタッグを組んだ方がいいと考えたという。

特にこの領域では昨年リクルートがGlassdoorを子会社化したり、ヴォーカーズがリンクアンドモチベーションから大型の資金調達を実施したりと、大きな動きが続きスピード感も増してきている。小谷氏も「最短距離で走るために最適な選択をする」ことを重視した結果、今回の意思決定に至ったと話す。

「自分たちのサービスがまだまだ小さい中で『この領域で1番のサービスにしたい』という思いが強かった。もともとは増資も含めて検討していたが、(パーソルキャリアと組めば)データや営業リソースなどを持ち寄ってサービスの成長速度を加速することができる。合わせて、自分たちは当初からtoC向けにプロダクトを作り続けたいと考えていて、そこを尊重してもらえたことも大きい」(小谷氏)

データ連携を通じて、より発展的なプラットフォームの構築も

冒頭でも触れた通り、まずは両社のサービス間で連携を進める。具体的には「JobQの企業クチコミをdoda上に表示したり、反対にdodaからJobQへ送客する導線を作るなど、双方がグロースできる取り組みから着手する」(村澤氏)計画だ。

また中長期的には「転職活動に限らず、さまざまな働く悩みに答えられるプラットフォーム」を開発する構想もある。

「そこに行きさえすれば、キャリアに関するどんな悩みでも解決する、そんな場所を作りたい。その時にCGMだけでなく、キャリアアドバザイザーのような専門家や企業の人事部スタッフから回答を得られる仕組みがあってもいい。今のJobQは定性的な情報が多いが、そこにパーソルが持つ定量的な情報を加えることもできる。双方のサービスに溜まったHRデータを統合することで、やれることはたくさんある」(村澤氏)

なおパーソルキャリアとしては、今後もHR Techに関わる企業との協業を積極的に進めていく方針とのこと。国内でもこの領域のスタートアップはかなり増えてきたように感じるし、これから人材系の大手企業とHR Techスタートアップのタッグを紹介する機会が増えていくかもしれない。