フードロスと戦うToo Good To Goが32億円を調達、米国市場への拡大を狙う

廃棄物になる直前の、まだ十分販売できる食品を消費者が購入できるようにするスタートアップToo Good To Goが、3110万ドル(約32億3000万円)の資金を調達した。このラウンドをリードしたblisce/は、1540万ドル(約16億円)を投資した。既存の投資家や従業員たちも参加した。創業からすでに4年あまり経つが、同社がVCから資金を調達するのはこれが初めてだ。

Too Good To Goは、数年前からヨーロッパ数カ国で事業を展開している。食品廃棄物に焦点を当てたマーケットプレースを運営している。一方ではレストラン、食料品店、ベーカリー、その他の食品会社が余剰食材を提供しているが、まだ十分販売できる状態の食品を消費者に提供するという事業も行っている。

食材ビジネスは余剰食品から多少の売上を得ることができ、顧客は魅力的な価格で食品を購入可能で、十分口にすることができる食品を破棄する量が減るため、三者ともwin-win-winな事業だ。もちろんわずかながら手数料を得るToo Good To Goにとってもwinなものだ。

CEOのMette Lykke(メット・リッケ)氏が2020年9月の本誌記事(未訳記事)で本誌記者のIngrid Lunden(イングリッド・ランデン)に、今日では生産される食品の1 / 3が無駄に捨てられている、と語っている。だからこそそこには、大きな市場機会がある。同社は順調に成長してきたが、パンデミックで売上は落ち込んだ。レストランの多くが店を閉め、多くの消費者が在宅を選んだ。

9月の本誌記事でリッケ氏は、新型コロナウイルス感染症で(COVID-19)でToo Good To Goの売上は62%落ちたが、会社をたたむほどではないと述べている。

Too Good To Goは現在、15カ国で事業を展開しており、これまでに5000万食分の食品を節約し、6万5000社がToo Good To Goに何かを販売し、登録ユーザーは3000万名いる。

Too Good To Goすでに、米国進出というこれまでで最大の拡大に取り組んでいる。ヨーロッパと同じように、米農務省の経済調査サービスによると、毎年数千万トンもの食品が無駄に捨てられており、それは食品の総供給量の30〜40%に相当する。

同社の操業は極めてローカルであるため、米国では特定の大都市圏で事業を開始する。2020年9月にはニューヨークとボストンの両市で操業をスタートした。その後、ニュージャージー州の一部にも拡大している。

同社は米国だけでも15万名のユーザーを惹きつけ、600社の事業者が協力している。これまでの販売量は、5万食分に相当する。まだ小さな数字だが、この四半期は米国のレストランや食料品店にとって、通常の四半期ではなかった。

同社の進化は今後、どうなるだろうか。今回の新たな資金調達で米国の市場を拡大できるため、長期計画も立てやすくなっている。

カテゴリー:フードテック
タグ:Too Good To Go資金調達フードロス

画像クレジット:Too Good To Go

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

フードロスを減らすApeelがシンガポール政府やケイティー・ペリーから約270億円調達

食品廃棄と新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによるグローバルな食品サプライチェーンが圧迫が世界中の大きな関心事になっているが、カリフォルニア州の海辺の街、サンタバーバラの小さなスタートアップが、2億5000万ドル(約270億円)を調達して、その解決法を提供することになった。

Apeel Sciences (アピール・サイエンセズ)というその企業は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成金10万ドル(約1070万円)からスタートし、この8年間で成長を続けてきた。それが、トーク番組司会者であるOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)氏や歌手のKaty Perry(ケイティー・ペリー)氏といった著名人を始め、シンガポールが所有する投資会社Sovereign Wealth Fund(ソブリン・ウェルス・ファンド)などの大手投資会社の支援を受け、今では10億ドル(約1070億円)規模の世界的企業となった。

こうした投資家や有名人を投資に導いたのは、Apeelが開発した食品を新鮮な状態で長期間、店の棚に陳列できるテクノロジーだ。これにより食品廃棄が減り、(気持ちとして抵抗はあるだろうが)店舗にもっと多くの野菜を仕入れさせることができる。

少なくともそれがこの8年間、Apeel Sciencesの創設者で最高責任者のJames Rogers(ジェームズ・ロジャーズ)氏が主張してきたことだ。これにより同社はトータルでおよそ3億6000万ドル(約390億円)の投資を集め、Upfront Ventures、S2G Ventures、Andreessen Horowitz、Powerplant Venturesといった投資会社を引き寄せてきた。

「(フード)システムの負荷は限界を超えています」とロジャーズ氏。「私たちはApeelの仕事を、フードシステムを築き、地球上のあと20億人ほどの人たちの体重を支えることだと考えています」。

ロジャーズ氏は、Apeelの主要製品となるこのテクノロジーの開発を、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で博士号取得を目指していたときに開始している。初めて会社を興すことになる彼にひらめきが降りてきたのは、インターンとして働いていたローレンス・リバーモア研究所からの帰り道だった。

カリフォルニアの穀倉地帯をしばらく車で走っていたロジャーズ氏は、現在の食糧供給ネットワークは食糧生産能力が低いわけではなく、収穫した場所と供給する場所との間で発生する食品の劣化と廃棄に問題があるのではないかと気がついた。

かつて農業生産者は、作物を枯らす病害虫を防ぐための農薬に、保存方法としての使い捨てプラスティック包装や化学薬品処理に依存してきたが、それがまた別の深刻な環境問題の原因になっている。

「もう近道はありません。使い捨てのプラスティックも農薬も、それぞれの役割を終えました」とロジャーズ氏はいう。ロジャーズ氏は、今こそApeelの食糧保存テクノロジーがその役割を担うときだと考える。

ロジャーズ氏によれば、新たにApeelの金庫に入った資金すべて投じて事業の拡大を開始しアフリカ、中央アメリカ、南アメリカの大手農業系企業や生産者と連携するという。「店の棚に52週間、供給を維持するためには、北半球と南半球とで事業を行う必要があります」とロジャーズ氏は話している。

その壮大な目標に比べると、取り扱う生産物はアボカド、アスパラガス、レモン、ライムと限定的だが、同社のうたい文句とロジャーズ氏の展望は、もっとずっと広大だ。「オレンジが知っていることをキュウリに教えてやれば、プラスティックで包まなくてもよくなります」とロジャーズ氏。「その廃棄物を減らすだけで、膨大な経済的価値が世に現れるのです」。

現在のところ、この事業を進めるためには、今まさに出番を待っている経済的価値について小売業者にわかってもらう必要がある。

具体的にはApeelのテクノロジーを試してみようと同意した企業には、すべての野菜が届き、そこから各地に出荷されるサプライチェーンのバックエンドにApeelの処理システムを設置することになるとロジャーズ氏は話す。

Apeelのシステムは、1回運転するだけで10トンの食品を1時間で処理できるという。2020年は、現在までに果物200万個をコーティング処理する予定になっていると同社は話している。

Apeel Sciencesは、すでにアメリカとヨーロッパの食品小売業者で食品処理を行っている。平均してApeelを利用している業者はシュリンクラップの使用量が50%減り、売り上げは5〜10%増加、店内のマーケティングキャンペーンと組み合わせて販売することで、売り上げが2%ずつ増大していると同社はいう。

「食品廃棄は、食糧システムの中の人たち全員に課せられた目に見えない税金です。世界の食品廃棄をなくせば、年間2兆6000億ドル(約280兆円)が浮き生産者、流通業者、小売り業者、消費者そしてこの地球のための、よりよいフードエコシシテムを構築できます」とロジャーズ氏は声明の中で述べている。「私たちはともにこの業界に時間を取り戻し、食糧廃棄危機や食品業界を苦しめる数々の問題に対処して参ります」。

画像クレジット:Valeriya Tikhonova / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

農産物を長持ちさせるApeel Sciencesはフードロス問題に一役買う

自動運転車ロボティックパーソナルアシスタントがありふれたものになりつつある時代にあって、持続可能な食物供給や流通といった基本的需要を満たす必然性は過去のものと考えているかもしれない。しかし実際はそうではない。

国連食糧農業機関(FAO)によると、毎年、食糧用に栽培された食物の3分の1にあたる13億トンが失われたり廃棄されたりしている。米国のような工業化された国々では、結果として毎年6800億ドルの経済損失となっている。冷却システムのような標準インフラが整っていない国々でも同様に3100億ドルの損失となっている。

毎年何十億トンもの食糧が廃棄されているが、その大多数を占めるのが必須かつ栄養も豊富な果物や野菜、根菜類(ジャガイモやニンジンなど)で、毎年45%が廃棄されている。

フードロスの要因はいくつかあるが、米国においては“賞味期限”や“販売期限”がしっかり規則化されず、結果として気まぐれな消費者がまだ食べらるものを廃棄するようなことになっている。また、十分に工業化されていないような国々では冷蔵・冷凍の物流が十分でなかったり、あるいはそもそも存在していなかったりする。

こうした問題の要因は食品が簡単に腐ってしまうということにあり、これは陳列棚に置く期間と直に関わってくる。だからこそ、Apeel Sciences はこの分野に参入した。

カリフォルニア拠点のこのスタートアップは、農産物の鮮度を保ち、腐敗を遅らせる植物由来の物質を使って食品ロス問題に取り組んでいる。この物質では農産物に第二の皮をつくることになるのだが、使うにはApeelの保存パウダーを水で溶いて、それを生産物にスプレーするだけだ。

創立者でCEOのJames RogersがApeel Sciencesの設立をひらめいたとき、彼はカリフォルニア大学サンタバーバラ校で材料工学での博士号を取得しようとしていた。錆という、すでに科学の力で解決された問題を分析することで食品腐敗の解決策を見いだすことができると確信した。

「食品をダメにする要因は水分の減少と酸化だ」。RogersはTechCrunchに対しこう説明した。「この事実は、カーネギーメロン大学で冶金研究者として鉄について研究していたころのことを思い出させる」。鉄もまた腐敗しやすい。というのも、鉄は錆びるからだ。大気中の酸素に反応しやすく、それゆえに用途に制限がある。しかし冶金学者が鉄の表面を物理的に守るためにほんの少しの酸化バリアを施した。それがステンレススチールだ。

Rogersは、同様の手法で農産物の腐敗を遅らせることができないだろうか考えるようになった、と話す。

「新鮮な農産品の表面に薄いバリアをつくることで腐敗を遅らせ、これにより食糧飢饉に対応できないだろうか」。

Apeelは、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ夫妻の基金から10万ドルの支援を得て2012年に正式に設立された。保冷インフラが整っていない発展途上国での収穫後の農産物のフードロスを削減するのが目的だった。この問題に取り組むために、Apeelはケニアやウガンダといった国の農家が、保冷することなしに鮮度を維持したまま農産物を消費者に届けられるよう、セルフまたはハイブリッドの物流システムを構築した。

Apeelにとってはアフリカや南アジアが基盤だが、その一方で米国の農家ともパートナーシップを結び始めた。今年の5月と6月には、初めてApeelを活用した農産物のアボカドが米国小売のCostcoとHarps Food Storeの店頭に並んだ。

Apeelの農産物は遺伝子組み換えではないため(その代わり植物由来)、店頭で商品に特別な表示をする必要はなが、Rogersによると、Apeel農産物の入れ物にはそうしたことを表示しているという。

「我々はDNAレベルで操作をしているわけでもなく、遺伝子組み換えを行なっているわけでもない。しかし、消費者に対して真摯でありたいし、消費者にそのラベルに気づいてほしい。というのも、消費者がそのラベルに気づくことで、購入する農産物が高品質で長持ちし、廃棄することが少なくなるものであることを認識してもらえるからだ」。

Apeelによると、Harps Food StoreにApeelのアボカドが並ぶようになってから、Harps Food Storeのアボカド分野の利ざやは65%増加し、売上も10%アップした。

こうした成功例を経て、ApeelはViking Global Investorsが主導し、Andreessen HorowitzやUpfront Ventures、S2G Venturesが参加したラウンドで7000万ドルを調達した、と7月に発表した。

RogersはTechCrunchに対し、調達したこの資金をフードロス撲滅のための新たな手法の開発や研究に使う、と明らかにしている。モモやウメ、アンズといった核果類やアスパラガスに使用するスプレイもその中に入っていて、これまで同様に自然由来のものを模索する。「フードロスを解決するためにどんな物質を使えばいいのか特定し、そうした物質をどう抽出して人の役に立つようなものにするのかということを、自然のエコシステムから学ぶというのが我々の使命だ」と語っている。

イメージクレジット: Apeel Sciences

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(翻訳:Mizoguchi)