消化器系の健康をサポートする機能性炭酸飲料Olipopが34億円調達、カミラ・カベロやグウィネス・パルトロウらが出資

Olipopの共同創業者ベン・グッドウィン氏とデイビッド・レスター氏(画像クレジット:Olipop)

健康に良い、あるいは機能的であるといった目的がある炭酸飲料は、380億ドル(約4兆3300億円)規模の米国のソフトドリンク業界を破壊する新しい波となっている。

3年の歴史を持つOlipop(オリポップ)というブランドの場合、消化器系の健康をサポートする炭酸飲料のラインナップで機能性を追求している。同社は、共同創業者のBen Goodwin(ベン・グッドウィン)氏とDavid Lester(デイビッド・レスター)氏にとって「機能性炭酸飲料」の分野で2番目のベンチャー企業だ。2人は10年近く一緒に仕事をしてきた。

レスター氏はTechCrunchに電子メールで、グッドウィン氏とともに機能性炭酸飲料のカテゴリーを築き上げ、Olipopが現在、このニッチな分野の売上高の3分の2を占めるに至ったと語った。同社の炭酸飲料は、植物由来の食物繊維、プレバイオティクス、その他の植物性原料を使っている。

Olipopが北カリフォルニアの45店舗で発売されて以来、この3年間で同ブランドの人気は高まっている。現在では、Kroger、Target、Whole Foods、Sprouts、Safeway、Wegmansなど、全米1万店以上の食料品店で販売されている。レスター氏は、同社の成功を「1981年にCoca-Cola(コカ・コーラ)がダイエットコークを発売して以来40年以上ぶりに、炭酸飲料カテゴリーに大きな破壊的イノベーションをもたらしました」とアピールする。

「機能性炭酸飲料の基本は2つです。消費者が楽しむカテゴリーで、妥協することなく、おいしい飲み物を提供すること、厳密な科学に裏付けられた最先端の健康効果が2つはあることです」とレスター氏は付け加えた。

画像クレジット:Olipop

チェリーバニラ、オレンジスクイーズ、ジンジャーレモンなど、競合他社もOlipopの味を真似しているが、CEOのグッドウィン氏は、過去16年間にわたるマイクロバイオームと発酵の知識を駆使して同氏が調合したOlipopの味にはかなわない、という。

「厳密な科学に裏打ち」されているという側面は、マイクロバイオームと消化器系の健康分野の研究者が率いる科学諮問委員会を導入したことに由来する。いずれ他の健康の問題にも拡大する予定だ。Olipopは2021年、ベイラー大学およびパデュー大学と試験管内での試験を成功させ、今はヒト臨床を行っている。2022年から2023年にかけて、研究や提携も増えていくとグッドウィン氏は語る。

Crunchbaseのデータによると、Olipopは2018年以降、約1350万ドル(約15億4000万円)を調達した後、2億ドル(約228億円)のバリュエーションに基づく3000万ドル(約34億円)のシリーズBを発表した。このラウンドはMonogram Capital Partnersがリードし、Camila Cabello(カミラ・カベロ)氏、Priyanka Chopra Jonas(プリヤンカー・チョープラー・ジョナス)氏、Nick Jonas(ニック・ジョナス)氏、Joe Jonas(ジョー・ジョナス)氏、Kevin Jonas(ケビン・ジョナス)氏、Mindy Kaling(ミンディ・カリング)氏、Logic(ロジック)氏、Gwyneth Paltrow(グウィネス・パルトロウ)氏といった豪華な投資家が名を連ねた。また、既存投資家からRocana Venture Partners、Raj Nooyi(ラジ・ヌーイ)氏、Pepsi(ペプシ)元CEOのIndra Nooyi(インドラ・ヌーイ)氏、A-Series Management & Investmentsの創業者であるAnjula Acharia(アンジュラ・アチャリア)氏、ClassPassの創業者であるPayal Kadakia(パヤル・カダキア)氏、Beautyconの共同創業者であるMoj Mahdara(モージ・マーダラ)氏、LANYのリードボーカルであるPaul Klein(ポール・クライン)氏が参加した。

Olipopは、2022年末までに1億ドル(約114億円)のランレート(年換算売上高)の達成を見込む。レスター氏によると、同社は2021年の成長目標を上回り、トップラインの売上高を3倍に伸ばした。同社はまだ黒字ではないが、そこに向かっているという。そのため、新たな資金調達は、同社が流通を迅速に拡大する際の新規雇用、マーケティング投資、製品在庫に充てられるとグッドウィン氏は付け加えた。現在、従業員数は約60人で、前年の30人から増加した。

パンデミックは同社にとって、一定程度追い風となった。消費者の消化器系の健康に対する関心が高まり、また、砂糖の摂取や、従業員と国の両方が緊張下におかれる中、会社がどう運営されるかについての懸念もあり、パンデミック初年度の3000%の成長につながった。

「パンデミックは、大きな挑戦であると同時にチャンスでもあると考えました」とグッドウィン氏は話す。「パンデミックは、顧客によりよいサービスを提供するための強固な消費者直結型プラットフォームを構築するという課題を私たちに与えました。リモート環境下で優れた文化を構築することに力を注がざるを得なかったのです。また、顧客との関係について良いデータを得ることができました。Olipopは、ストレスの多い時代に、健康を維持しながら喜びと安らぎを得ることができる製品であることがわかりました」。

次のステップとして、2021年テストしたメインストリームの流通とマーケティング戦略を拡大し、その急成長を支えるために必要なサプライチェーン構造も構築するとグッドウィン氏は付け加えた。加えて、新しいフレーバーの研究開発にも力を注ぐ予定だ。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

オフィス勤務再開需要に向けて、室内に新型コロナ感染者がいたかどうかを調べられるPhylagenが全力疾走

パンデミック開始から2年が経った今、世の中の企業は安全な対面業務の再開に向けて奮闘中だ。Apple(アップル)はオフィス勤務再開の計画を延期し、Google(グーグル)は2022年中には週3回のオフィス勤務を義務づける予定だが、ワクチン未接種者は最終的には職を失うことになると先日の発表で明言している。「従業員を守り、業務を進めるためには、ワクチン接種の義務化が最も効果的な方法となります」と同社は CNBCへの声明で伝えている。

しかし、ワクチンを接種した人でも感染力の強い新型コロナウイルスに感染する可能性はある。サンフランシスコを拠点とする設立7年目の企業、Phylagen(フィラゲン)は、微生物ゲノミクスとデータ分析を組み合わせて、物理的な空間に新型コロナウイルスの感染者がいたかどうかを調べることができるという。

その方法は次の通りだ。Phylagenは、センサー、スワブ、サンプルコレクターを活用し、これらを週に2回パッケージに入れて研究所に発送する。そして感染者が建物内(トラッキングのためにフロアやゾーンに分けられている)に細菌を持ち込んだかどうか、あるいは建物内の空気が安全かどうかを72時間以内にデータとして提供するという仕組みである。

同社はこれを「サービスとしての企業病原体モニタリング」と呼んでいるが、元生物学教授で、土木技師とマイクロバイオーム科学者の両方で正式な訓練を受けた創業者兼CEOのJessica Green(ジェシカ・グリーン)氏は、その実現可能性に長い間魅了され続けてきた。

しかしグリーン氏いわく、これまでの道のりは孤独なものだったという。「私たちは90%の時間を室内で過ごしていますが、自分が口から何を吸い込んでいるかについては何も知りません。この会話の間にも、私たちは何百万もの微生物を放出し、健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性のある何百何千ものウイルス、バクテリア、カビを吸い込んでいるのです」。これは「何十年も前から分かっていた」ことだが、一般の人々の理解が「今回のパンデミックで結実した」のだと同氏は話している。

Phylagenは当初から我々が呼吸している空気に焦点を当てていたわけではなく、創業当初から2020年の春まで、同社はサプライチェーントラック&トレースと呼ばれる市場で事業を展開していた。これは企業が自社の製品が最終目的地に向かって予定通りの経路をたどっているかどうかを確認するためのセグメントである(迂回した場合、製品に手が加えられた可能性も出てくるため、企業の評判を落としたり、特に医薬品に関しては致命的な結果を招いたりすることもある)。

グリーン氏によると、パンデミックの発生にともない、新型コロナウイルスを追跡する手段として同社の製品にも関心が寄せられたという。しかし、ウイルスが表面ではなく空気を介して広がっていることが明らかになると、同社は同社の技術を別の用途に使用するため完全シフトすることにした。これまでに得た知見や増え続ける微生物のデータベースを、トレーサビリティーのためではなく、建物の中にいる微生物を捕獲し、その情報をデジタル化して顧客に提供するというのがその考えである。

顧客数も増え続けているようだ。グリーン氏は具体的な顧客名を明かしておらず、多数の大手テック企業や商業用不動産会社と密接に連携しているとだけ伝えているが、産業用バイオテック企業Solazyme(ソラザイム)を共同設立したHarrison Dillon(ハリソン・ディロン)氏とともに共同設立された同社の事業は2022年に向けて大繁盛しているという。

収入は前年比10倍、従業員も20人から40人へと増加した同社。Phylagenはこの夏、ヨーロッパの上場企業で、ビルの防火・空調・セキュリティ機器を製造しているJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)から戦略的資金をひそかに調達したこともあり、人員をさらに倍増させる計画だという。

Phylagenはこれまでに3M(スリーエム)、Breakout Ventures(ブレークアウト・ベンチャーズ)、Cultivian Sandbox(カルティビアン・サンドボックス)などから合計3000万ドル(約34億円)を調達している。

しかし当然、次々と現れるライバルたちを出し抜けるかどうかという疑問も残る。

「これがニューノーマルだからこそ、新たな競争相手が現れたのです」とグリーン氏は話す。「誰もが安全な室内空気を求めるようになるでしょう。現在、室内空気の質を測定できる方法は非常に古く、空気に関連する生物学的要素を検査する、手頃で信頼性の高い方法もありません」。

Phylagenが所有するサンフランシスコとマンハッタンの研究所や、提携研究所からの結果を72時間も待つと聞くと、Phylagen独自のプロセスも時代遅れだと感じる人もいるかもしれない。新型コロナウイルスがいまだに急速に広がっていることを考えれば、2~3日というのは決して迅速な提供とは言えない(更新:この記事の掲載後、Phylagenから連絡があり、グリーン氏の発言は誤りであり、Phylagenは24時間以内に顧客に結果を返すことができるとのことであった)。

この速度は近い未来に短縮されるだろうとグリーン氏は考えている。「次世代のテストではすべてが自動化され、現場で行われるようになるでしょう。CO2センサーや、温度と相対湿度の情報を提供するサーモスタット のNest(ネスト) を想像してみてください。これと同じように空気中のDNAやRNAを検出できるようになるのは確実で、私たちは今それを目指して取り組んでいます」。

確かにPhylagenがその潜在能力を発揮すれば、同社のチャンスは絶大なものになるだろう。新型コロナウイルス以外にも多くのものを検査することができ、アレルギー誘発物質も計画に含まれているという。

商業利用のみならず、家庭での使用にも可能性はある。初期投資家である3Mはすでにデータ駆動型の消費者向け製品の開発に取り組んでいるようだ。9月にはPhylagenの技術を使った家庭用清浄度キットの販売を開始しているが、Amazon(アマゾン)で約180ドル(約2万円)という価格はほとんどの家庭にとっては高価すぎるため、現時点では試験的なものなのだろう。

一方でグリーン氏は、今はまだ企業顧客に集中していると主張している。これには他の製品を検討する時間がないという理由もあるようだ。

「3Mの製品から得られる最大のポイントは、検査したい有機体の一覧を自由に作ることができるということです。しかし、現在最も重要で、最大の市場機会と市場ニーズがあるのは商業ビルの分野です」。

「私たちがどんな機能を提供できるかということにかかっています。今、私たちは需要に追いつくために全速力で走っています」。

画像クレジット:Phylagen

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

腸内細菌バイオスタートアップのメタジェンセラピューティクスが9000万円の資金調達

腸内細菌バイオスタートアップのメタジェンセラピューティクスが9000万円の資金調達

マイクロバイオームサイエンスを活用した創薬・医療事業を推進するメタジェンセラピューティクス(MGTx。Metagen Therapeutics)は3月17日、第三者割当増資による総額9000万円の資金調達を発表した。引受先はファストトラックイニシアティブおよび慶應イノベーション・イニシアティブが運営するファンド。

マイクロバイオームとは、微生物の集合(微生物叢。びせいぶつそう)、その遺伝情報の全体、微生物叢が存在する環境を含めた言葉。腸内細菌をはじめ人間の体にも共生的に存在しており、健康状態と密接に関連している。細菌(バクテリア)集団の場合は、バクテリオーム(細菌叢)と呼ばれることもある。

MGTxは、腸内細菌叢研究において国内有数の実績を有するチームからなるマイクロバイオームスタートアップで、腸内細菌移植療法(FMT)に用いる製剤を開発している。

現在FMTは、偽膜性腸炎を対象とした先進医療や炎症性腸疾患に対する臨床研究にて実施されているものの、FMT製剤の品質基準設計やそのサプライチェーン構築など、普及に向けた課題が存在するという。

MGTxはグローバルスタンダードに準じた安全なFMT製剤の安定的なサプライチェーンを構築し、国内におけるFMTの普及を促進するとしている。また、腸内細菌叢データを活用することで、マイクロバイオーム創薬へと事業分野を拡大する。

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カテゴリー:バイオテック
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