オフィス勤務再開需要に向けて、室内に新型コロナ感染者がいたかどうかを調べられるPhylagenが全力疾走

パンデミック開始から2年が経った今、世の中の企業は安全な対面業務の再開に向けて奮闘中だ。Apple(アップル)はオフィス勤務再開の計画を延期し、Google(グーグル)は2022年中には週3回のオフィス勤務を義務づける予定だが、ワクチン未接種者は最終的には職を失うことになると先日の発表で明言している。「従業員を守り、業務を進めるためには、ワクチン接種の義務化が最も効果的な方法となります」と同社は CNBCへの声明で伝えている。

しかし、ワクチンを接種した人でも感染力の強い新型コロナウイルスに感染する可能性はある。サンフランシスコを拠点とする設立7年目の企業、Phylagen(フィラゲン)は、微生物ゲノミクスとデータ分析を組み合わせて、物理的な空間に新型コロナウイルスの感染者がいたかどうかを調べることができるという。

その方法は次の通りだ。Phylagenは、センサー、スワブ、サンプルコレクターを活用し、これらを週に2回パッケージに入れて研究所に発送する。そして感染者が建物内(トラッキングのためにフロアやゾーンに分けられている)に細菌を持ち込んだかどうか、あるいは建物内の空気が安全かどうかを72時間以内にデータとして提供するという仕組みである。

同社はこれを「サービスとしての企業病原体モニタリング」と呼んでいるが、元生物学教授で、土木技師とマイクロバイオーム科学者の両方で正式な訓練を受けた創業者兼CEOのJessica Green(ジェシカ・グリーン)氏は、その実現可能性に長い間魅了され続けてきた。

しかしグリーン氏いわく、これまでの道のりは孤独なものだったという。「私たちは90%の時間を室内で過ごしていますが、自分が口から何を吸い込んでいるかについては何も知りません。この会話の間にも、私たちは何百万もの微生物を放出し、健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性のある何百何千ものウイルス、バクテリア、カビを吸い込んでいるのです」。これは「何十年も前から分かっていた」ことだが、一般の人々の理解が「今回のパンデミックで結実した」のだと同氏は話している。

Phylagenは当初から我々が呼吸している空気に焦点を当てていたわけではなく、創業当初から2020年の春まで、同社はサプライチェーントラック&トレースと呼ばれる市場で事業を展開していた。これは企業が自社の製品が最終目的地に向かって予定通りの経路をたどっているかどうかを確認するためのセグメントである(迂回した場合、製品に手が加えられた可能性も出てくるため、企業の評判を落としたり、特に医薬品に関しては致命的な結果を招いたりすることもある)。

グリーン氏によると、パンデミックの発生にともない、新型コロナウイルスを追跡する手段として同社の製品にも関心が寄せられたという。しかし、ウイルスが表面ではなく空気を介して広がっていることが明らかになると、同社は同社の技術を別の用途に使用するため完全シフトすることにした。これまでに得た知見や増え続ける微生物のデータベースを、トレーサビリティーのためではなく、建物の中にいる微生物を捕獲し、その情報をデジタル化して顧客に提供するというのがその考えである。

顧客数も増え続けているようだ。グリーン氏は具体的な顧客名を明かしておらず、多数の大手テック企業や商業用不動産会社と密接に連携しているとだけ伝えているが、産業用バイオテック企業Solazyme(ソラザイム)を共同設立したHarrison Dillon(ハリソン・ディロン)氏とともに共同設立された同社の事業は2022年に向けて大繁盛しているという。

収入は前年比10倍、従業員も20人から40人へと増加した同社。Phylagenはこの夏、ヨーロッパの上場企業で、ビルの防火・空調・セキュリティ機器を製造しているJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)から戦略的資金をひそかに調達したこともあり、人員をさらに倍増させる計画だという。

Phylagenはこれまでに3M(スリーエム)、Breakout Ventures(ブレークアウト・ベンチャーズ)、Cultivian Sandbox(カルティビアン・サンドボックス)などから合計3000万ドル(約34億円)を調達している。

しかし当然、次々と現れるライバルたちを出し抜けるかどうかという疑問も残る。

「これがニューノーマルだからこそ、新たな競争相手が現れたのです」とグリーン氏は話す。「誰もが安全な室内空気を求めるようになるでしょう。現在、室内空気の質を測定できる方法は非常に古く、空気に関連する生物学的要素を検査する、手頃で信頼性の高い方法もありません」。

Phylagenが所有するサンフランシスコとマンハッタンの研究所や、提携研究所からの結果を72時間も待つと聞くと、Phylagen独自のプロセスも時代遅れだと感じる人もいるかもしれない。新型コロナウイルスがいまだに急速に広がっていることを考えれば、2~3日というのは決して迅速な提供とは言えない(更新:この記事の掲載後、Phylagenから連絡があり、グリーン氏の発言は誤りであり、Phylagenは24時間以内に顧客に結果を返すことができるとのことであった)。

この速度は近い未来に短縮されるだろうとグリーン氏は考えている。「次世代のテストではすべてが自動化され、現場で行われるようになるでしょう。CO2センサーや、温度と相対湿度の情報を提供するサーモスタット のNest(ネスト) を想像してみてください。これと同じように空気中のDNAやRNAを検出できるようになるのは確実で、私たちは今それを目指して取り組んでいます」。

確かにPhylagenがその潜在能力を発揮すれば、同社のチャンスは絶大なものになるだろう。新型コロナウイルス以外にも多くのものを検査することができ、アレルギー誘発物質も計画に含まれているという。

商業利用のみならず、家庭での使用にも可能性はある。初期投資家である3Mはすでにデータ駆動型の消費者向け製品の開発に取り組んでいるようだ。9月にはPhylagenの技術を使った家庭用清浄度キットの販売を開始しているが、Amazon(アマゾン)で約180ドル(約2万円)という価格はほとんどの家庭にとっては高価すぎるため、現時点では試験的なものなのだろう。

一方でグリーン氏は、今はまだ企業顧客に集中していると主張している。これには他の製品を検討する時間がないという理由もあるようだ。

「3Mの製品から得られる最大のポイントは、検査したい有機体の一覧を自由に作ることができるということです。しかし、現在最も重要で、最大の市場機会と市場ニーズがあるのは商業ビルの分野です」。

「私たちがどんな機能を提供できるかということにかかっています。今、私たちは需要に追いつくために全速力で走っています」。

画像クレジット:Phylagen

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

アマゾンがAlexa用スマート空気質モニターを12月に米国で発売、約7980円

Amazon(アマゾン)は2021年9月下旬にスマートホーム機器の新製品を次々と発表したが、ホリデーシーズンを前にして、まだ製品を続々と登場させている。確かに、Smart Air Quality Monitor(スマート空気質モニター)は、巨大なEcho Showやホームロボット、あるいはサーモスタットのようにエキサイティングな製品ではないが、少なくともこのような製品に内在する価値は明らかだ。

このデバイスは、一酸化炭素を含む粒子状物質、ほこり、揮発性有機化合物(空気中の化学物質で体に害を及ぼす可能性があるもの)を測定するように設計されている。また、温度と湿度の検知機能もビルトインされている。製品ページに記載されているように、このデバイスにはマイクやスピーカーが内蔵されていない。つまり、何かがおかしい状態になったときの警告は、接続されたEchoデバイスやAlexaアプリに頼ることになる。なので、家の中のマイクの数が1つ減るわけだ。これはプラスだ。

同社によると、このデバイスはテスト期間中のユーザーのフィードバックから生まれたものだという。同社は次のように説明している。

部屋の換気を頻繁に行う、料理中に窓を開ける、空気清浄機や加湿器をつけるなど、小さな工夫をすることで、テスト参加者は空気の質が目に見えて向上したことを実感しました。また、これらの細かな調整により、家の中での呼吸が楽になり、夜もぐっすり眠れるようになったとテスト参加者は教えてくれました。

アラート機能に加えて、モニターするレベルの経時変化も測定できるので、ユーザーはさまざまな活動がこれらの問題にどのように影響するかを知ることができる。Smart Air Quality Monitorは11月3日から予約受付を開始し、12月に出荷が始まる。

画像クレジット:Amazon

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

オフィスでの新型コロナ感染リスク率を表示するATMOの空気モニタリングデバイス

2015年、TechCrunchは電子機器の見本市であるCESで発表されたのち、数々の賞を受賞した小型で革新的なポータブル大気質モニター「Atmotube(アトモチューブ)」を紹介した

Vera Kozyr(ヴェラ・コザー)氏が共同で設立したATMOは、企業向けの室内空気環境モニタリングシステム「Atmocube(アトモキューブ)」を発表した。Atmocubeは、オフィス内の空気環境が極めて重要となるポストCOVID時代に向けられており、小型で持ち運びができる以前の製品(この製品もまだ販売されてはいる)と異なり、目立つことでオフィスワーカーに良い空気環境であると安心感が与えられるようにもなっている。

その鍵となるのが、さまざまな指標とともに「Atmocube」の画面に表示される二酸化炭素レベルの測定値だ。

このデバイスには最大14個のセンサーが搭載されており、CO2、ホルムアルデヒド、PM1(空気中の小さな粒子)、PM2.5、オゾンなどの各種環境パラメータや相対湿度、温度、気圧、環境騒音、光量、色温度などを測定する。

ATMOによると、この新デバイスは、粒子状物質、湿度、CO2のレベルに基づいて、ウイルスの空気感染スコアを計算し、閉ざされた空間でウイルス疾患が感染する確率を推定する「スコア」を導き出すという。もちろん、これを検証するには独立したテストが必要だが、WHOが新型コロナウイルスは換気の悪い、あるいは混雑した室内環境で感染する可能性があると勧告しているのは事実だ。

「大気汚染は、気づかないうちに自分自身や健康に影響を及ぼすので危険です。私たちは、人々が自分の吸い込んでいるものを知り、その結果として変化を起こす助けになることを目指しています。企業がオフィスに戻る際には、室内の空気環境に関する情報を透明化し、従業員がその情報にアクセスできるようにするツールが必要です。多くの空気環境モニターは隠されることを前提に設計されています。そこで私たちは暖房、換気、および空調のパフォーマンス(HVAC)の安全性を強調する、より透明性の高いインターフェースを備えたデバイスを作り、オフィスにいる人々とビルのオーナーの間に信頼関係を築くことを目指しました」とコザー氏はいう。

この分野には、AirThingsAwair OmniKaiterraなどが参入しており、ATMOだけが唯一のプレイヤーではない。

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画像クレジット:Atmocube

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

アップルの天気アプリに空気質指数を提供するBreezoMeterが「山火事トラッカー」発表

BreezoMeter(ブリゾメーター)は、環境汚染による健康ハザードをできるだけ多くの人に知ってもらうことを使命としている。イスラエルを拠点とする同社は、空気質指数(Air Quality Index、AQI)の計算を通じて、今では数十カ国で数メートル単位の大気質を識別できるようになった。また、Apple(アップル)との提携により、同社のデータをiOSの「天気」アプリや自社の人気アプリに組み込み、さらに他企業が独自の目的でデータセットを利用できるAPI製品を通じ、数億人のユーザーにこれらの指標を提供している。

数週間前に3000万ドル(約33億円)のシリーズCラウンドを調達したのに続いて、同社は新製品「Wildfire Tracker(森林火災トラッカー)」を発表し、大気の質から山火事の周辺地域のリアルタイム検知へと製品を放射状に拡大した。

関連記事:iPhoneの「天気」アプリで大気の質を表示するBreezoMeterが約33.2億円を調達

この新製品は、同社のセンサーデータ、衛星画像、現地の目撃情報を融合して、山火事の範囲をリアルタイムに把握することができる。共同設立者兼CEOのRan Korber(ラン・コーバー)氏はこう語った。「人々は、正確な天気や湿度のデータを期待するのと同じように、正確な山火事情報を求めています。彼らの生活に、直接影響する情報だからです」。同氏はさらに、BreezoMeterは「気候テックと人の健康をつなぐ橋渡し役になっていきたい」と付け加えた。

火災危険区域はポリゴンの境界線で赤く表示され、従来通り、これらの区域とその周辺地域の大気質データを見ることができる。

BreezoMeterの大気質マップは、山火事の汚染の広がりを簡単に示すことができる(画像クレジット:BreezoMeter)

コーバー氏は、そうした境界線を数十カ国にわたって正確に把握するのは、簡単なことではないと強調した。特に山火事が発生するような森林では、センサーの数が少ないこともある。また、熱画像を中心とした衛星データは惑わされることがあり得る。同氏は「私たちは異常を探しているわけですが、多くの場合、誤検出が起こります」という。例えば、大規模なソーラーパネルアレイは、熱センサーでは非常に熱く見えるが、明らかに火災ではない。

このようにして特定された火災の周辺地域は、BreezoMeterの大気質マップウェブサイトで消費者に無料で提供され、まもなく同社のアプリにも導入される予定だ。また、2021年後半には、これらの境界線を同社のAPIから商業顧客向けに提供する予定だという。コーバー氏は、APIエンドポイントを利用することで自動車メーカーなどの企業が、ドライバーに火事が近づいていることを警告できるようになると期待している。

今回の新機能は、BreezoMeterが長年にわたって行ってきた製品の拡張の延長線上にあるものだ。「設立当初は、大気質のみ……それもイスラエル国内の大気汚染を予測するだけのものでした」とコーバー氏はいう。「それ以来、ほぼ毎年、新しい環境ハザードに製品ポートフォリオを拡大してきました」。2018年には花粉情報が追加され、アプリのグローバル化が進んでいることを同氏は指摘した。

山火事の検知は、VC投資家にとって最近ホットな分野だ(失礼)。例えば、Corneaは消防士が火災を検知して軽減することに焦点を当てたスタートアップであり、Perimeterは山火事の境界範囲を識別して、地図付きの明確な避難指示を出すことを目指している。シリコンバレーのあるカリフォルニア州をはじめ、世界中の多くの地域で森林火災が多発するようになってきている中、この分野への投資や製品の投入が増えることが予想される。

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画像クレジット:David Odisho/Bloomberg / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Aya Nakazato)

iPhoneの「天気」アプリで大気の質を表示するBreezoMeterが約33.2億円を調達

Ran Korber(ラン・コーバー)氏は、喘息持ちで妊娠中の妻と一緒に、イスラエルに家を買おうとしていた。環境エンジニアである同氏は、大気汚染が早死の最大の原因であること、早産の原因になること、その他の呼吸器系の病気の原因になることを知っていた。コーバー氏はイスラエルで最も汚染の少ない都市を探し始めたが、そのような情報は存在しないことに気づいた。そこで感じた不満から、花粉、大気汚染、山火事、天候のカテゴリーで40種類の汚染物質を予測するツール、現在の「BreezoMeter(ブリゾメーター)」を作った。

同社は米国時間6月28日、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)が主導するシリーズCラウンドで、3000万ドル(約33億2000万円)を調達したと発表。これまでに同社が調達した資金の総額は4500万ドル(約49億8000万円)に達した。イスラエルに拠点を置くこの会社は、コーバー氏が妻と家を探していた時から約2年後の2014年に設立された。

BreezoMeterの共同創業者で、現在CEOを務めるコーバー氏は「多くの国では、人々は自分の周りの空気について何も知りません」と、TechCrunchに語った。

BreezoMeterは、AIと機械学習を活用して、世界中に設置されている4万7000基以上のセンサーを含む複数のソースからデータを収集・把握し、100カ国以上の街頭レベルの大気質データ(5メートル間隔)と、花粉、汚染物質、火災のデータを提供している。

Apple WatchやiPhoneを持っている人でも知らなかったかもしれないが、どちらもApple(アップル)の「天気」アプリにBreezoMeterが組み込まれている。どこの都市の天気でも、下にスクロールすると、BreezoMeterによる大気質の指標が表示される。米国のAQI(大気汚染指数)は、0から500のスケールで表示され、0が最もクリーンな状態。ここマイアミの空気の質は、昨日は36(良い)、今日は51(中程度)だった。それに比べてニューヨークの空気は、今日は34(良い)で、マイアミよりも良好だ。

BreezoMeterは、現在の空気の質を測定するだけでなく、予測することも可能なので、自分の感受性に合わせて準備しておくことができる。

コーバー氏は「花粉の飛散時期がいつから始まるのかを予測し、2つの異なる場所の間で花粉がどのように移動するのかを予測することができます」と語っている。

自分の感受性がよくわからなくても、自分がいる場所の空気の質を知っていれば、少なくとも症状に用心することができるだろう。

「空気中の汚染物質の種類によって、BreezoMeterはそれが引き起こす症状を教えてくれます」と、コーバー氏はいう。

問題は、汚染そのものだけでなく、大気質について大きな情報格差があることだ。環境保護庁(EPA)によると、米国では約1億2000万人の人々が、大気汚染のモニタリングが行われていない地域に住んでいるという。

「BreezoMeterが作られる以前は、誰もが同じセンサーのデータを使用していましたが、今ではそれらのセンサーに加えて、交通量、山火事、衛星、ローカルセンサーなどのデータを収集し、花粉については土地利用も考慮しています」と、コーバー氏は語る。

センサーが簡単に破壊されてしまうのは、山火事の時だ。「センサーは文字通り燃えてしまうのです」と、コーバー氏はいう。この問題を回避するために、BreezoMeterは衛星からのデータを含む、他の多数のセンサーを頼っている。

「毎日3億人以上の人々が当社のプラットフォームを利用して、環境上の危険を回避するための情報に基づいた意思決定を行っています」とコーバー氏は述べているが、誰もがアップルの天気アプリのみを利用しているわけではない。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息を持つ人であれば、Resmed(レスメド)傘下のPropeller製品に組み込まれたBreezoMeterの恩恵を受けているかもしれない。Propellerは、空気質に応じて、窓を閉めたり、吸入器を使用したりなど、健康状態を改善するために何をすべきかを患者に伝えるデバイスを製造している。

BreezoMeterによると、PropellerがBreezoMeterを製品に組み込んで以来、Propellerの患者は、喘息発作が約50%減少し、ER訪問も減ったという。

BreezoMeterは今回調達した資金を、より多くの製品カテゴリーの開発や、チームを3倍の約120人に増やすことに充てる予定だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:BreezoMeter空気監視iPhone資金調達イスラエルアプリ

画像クレジット:BreezoMeter

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

米国時間12月16日、2013年2月に小学校女子学童に起きた喘息発作は大気汚染が原因であったと英国の裁判所が裁定した(The Guardian記事)。これはこの種の裁定として世界初だと思われる。Ella Kissi-Debrah(エラ・キッシ-デブラ)さんが亡くなったわずか1年後、別の母親も自分の娘の喘息に対する空気汚染の影響を心配し、何か行動すべきだと決断した。

そして本日、Yodit Stanton(ヨディット・スタントン)氏は彼女の空気品質監視のスタートアップであるOpenSensorsのシード資金400万ドル(約4億1000万円)を、Crane Venture Partnersほか匿名投資家によるシードラウンドで調達した。当初このスタートアップは、顧客から得た売上による自己資金で設立された。

OpenSensorsは、センサーを使って空気品質と光強度を監視する。しかしそのデータプラットフォームは特別だ。同社のテクノロジーは職場と労働者の環境とパターンを明らかにすることを目的としている。競合にはCondeccoやWorkplace Fabricらがいるが、同社のアプローチの方が「全方位」だ。

現在複合施設をもつ30社以上の顧客が北米、アイルランド、英国およびヨーロッパにいる。業界は保険、金融、テクノロジーなどだ。

画像クレジット:OpenSensors

建物の費用は企業にとって2番目に大きい出費であり、英国の事務所コストは年間200億ポンド(約2兆8000億円)に上るが、スペースの半分は、通常のパンデミック以前の時期でさえ、一日中使われることがなく、利用率はピーク時でも55%にすぎない。また建物は全世界エネルギー利用の36%、二酸化炭素排出量の39%を占めている。OpenSensorsは湿度、二酸化炭素濃度なども測定してウイルス感染を減少させる最適環境へと導くことで、企業が社員と職場の安全を取り戻す手助けをする。

「私たちの仕事や生活のやり方は、誰もが想像できなかった速さで変わっています。いまは持続可能性を考えながら実世界をどのように使っていくのかを考え直し、職場をそこで働く人たちにとってよりよくするための、人類最大のチャンスが訪れています」とスタントン氏は語る。

Crane Venture PartnersのパートナーであるScott Sage(スコット・セージ)氏は「データに基づく予測、実世界における利用状況、および既存顧客の実績をもつOpenSensorshは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)環境下の信頼できるアドバイザーとソリューション提供者であるとともに、新型コロナの蔓延が加速した柔軟な働き方への転換を支援する会社です」と語っている。

スタントン氏は英国の Women In Dataイベントの設立と運営も行なっており、TechCrunchだけにこう話した。「当初は楽しい趣味のプロジェクトとして始まりました。私はIoTをいじっていて、娘が喘息なので近隣の大気品質を測定して、特定の変化が娘の発作と相関があるかどうかを調べてました。しかし、ビルディングを管理できるかとみんなから聞かれるようになった時、本物になったと思いました」。

彼女は、湿度の低下はウイルス伝染を促すという。「だから室内環境では湿度40%前後を保つべきであり、乾燥した空気は人間の免疫システムにも悪影響を与えます」。

これは、空気品質の管理が企業にとって重大問題になったことを意味している。だから、VCがOpenSensorsのような空気品質スタートアップを支援し始めたことは驚きではない。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:OpenSensors資金調達空気監視

画像クレジット:OpenSensors

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook