香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

香港のイベントプラットフォームEventXがシリーズBで約2.8億円調達、HTCとVRで協力も視野に

EventXのCEOであるSum Wong(サムウォン)氏(画像クレジット:EventX)

各国が新型コロナ規制を緩和するにつれ、人々の活動は対面式に戻りつつある。しかし、バーチャルイベント分野は、少なくともアジアにおいては、投資家を魅了し続けている。香港を拠点とするイベント管理プラットフォームEventXは、香港時間2月16日、シリーズBでさらに800万ドル(約9億2000万円)を調達し、このラウンドで確保した総額を1800万ドル(約20億8000万円)に引き上げた。

今回の資金調達は、Hillhouse Capital(高瓴資本)のアーリーステージ投資部門であるGL Ventures(高瓴創投)が主導した。これまでの投資家には、Hillhouse Capitalの元パートナーが設立した投資会社Gaocheng Capital(高成资本)や、近年VRに力を入れている台湾の大手電機メーカーHTCなどが含まれている。EventXは、ポストマネー評価額を公表していない。

今回のシリーズBは、EventXが設立されてから8年後に実施された。これは、中国本土のバーンレートが高いインターネット企業に比べて、異例の忍耐強い資金調達ペースだ。同社は、ユーザー登録のサポートから参加者のバーチャル名刺交換まで、現実のイベントを管理することからスタートした。2020年に新型コロナウイルスが出現したとき、デジタル化のチャンスだと考え、ウェビナーやバーチャル展示会などのライブイベントをサポートするHopin(ホピン)のような新サービスを開発した。現在では、主催者がイベントを通じて新たな顧客やパートナーを開拓するリード生成機能も備えている。

対面式イベントを封じるパンデミック規制のおかげで、Hopinは最近の記憶では最も急速に成長した企業の1つとなった。しかし先週、ロンドンを拠点とする同スタートアップは、ポストコロナにバーチャルイベントへの需要が鈍化すると判断し、スタッフの12%を解雇したと報じられた。パンデミックはEventXにも恩恵をもたらし、同社プラットフォームの2021年第4四半期のオンライン参加者数は120%増加した。また、ライブイベントが元通りになったとしても、同社は長年続いてきたオフラインビジネスを維持することができると考えています。

これまでに、同社はアジアを中心に100以上の都市でイベントの開催を支援し、そのプラットフォームには500万人以上の参加者が訪れている。同社の100人のチームは、香港、シンガポール、日本、韓国、台湾に分散している。

同社は今回の資金を、買収、製品開発、人材採用、アジア(特に台湾と東南アジア)での事業拡大に充てる予定だ。また、投資家であるHTCと協力して、イベント体験にVRソリューションを導入することも視野に入れている。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

副業の約8割がリモート前提に―副業マッチングのシューマツワーカーが「副業系サービスカオスマップ 2022年版」公開

  1. 副業の約8割がリモート前提に―副業マッチングのシューマツワーカーが「副業系サービスカオスマップ 2022年版」公開

副業したい人と企業をつなげる副業マッチングサービス「シューマツワーカー」を運営するシューマツワーカーは2月2日、副業系サービスカオスマップの2022年版を公開した。同調査では、225の副業系サービスを、リモート・現場型・単発・継続という軸で整理した上で、その特徴ごとに9つのグループに分類し、マッピングを行っている。

シューマツワーカーによると、同調査により、副業系のサービス数は前年版の調査比で約1.2倍、2017年の調査版からは約4.2倍(54社→225社。何を副業マッチングサービスとして数えるかの厳密な掲載の定義は2017年版と2022年版では異なる)と、働き方改革・副業解禁という時流の中で、スキルシェア・副業系サービスが急増したことがわかったという。また、そのうち約82%のサービスがリモート副業を前提としている。コロナ禍でニューノーマルな生活様式が浸透しつつ「副業」のあり方も変わってきているとした。

カオスマップの読み方と各グループの説明

カオスマップのうち、縦の軸は場所を選ばない「リモート型」の副業と、その場に行くことが必須の「現場型」としている。また、横の軸は「単発型」と「継続型」と設定。この2種類の軸に対し、左上をAゾーン(リモート×単発)、右上をBゾーン(リモート×継続)、左下をCゾーン(現場型×単発)、右下をDゾーン(現場型×継続)という4種類のゾーンに分け、225個の副業マッチングサービスのロゴをマッピングした。さらに、副業の特徴により、9グループに分類した。

4つのゾーン

  • Aゾーン(左上):リモート×単発
  • Bゾーン(右上):リモート×継続
  • Cゾーン(左下):現場型×単発
  • Dゾーン(右下):現場型×継続

副業の特徴による9グループの内訳

  1. 総合型スキルマーケット型:クラウドソーシングやスポットコンサルのように、様々なスキル・知見を提供・購入し合うもの
  2. 特化型スキルマーケット型:何らかのスキルに特化。スキルのジャンルは大きく13のサブグループにわかれており、「家事代行」「DIY」のように現場必須のものから、「翻訳」「ライティング」などリモートでできるものまで、縦長の幅広いグループとなっている
  3. ポイ活型:アンケートに答えたり、商品のレビューを書くなどの、比較的隙間時間に作業しやすい「リモート×単発」グループ。誰でも始めやすい副業
  4. シェアリングエコノミー型:家・車・場所といった所有しているものを貸し出すなど、遊休資産の運用を副業収入につなげるグループ。カオスマップ上、このグループ以外の副業は基本的に労働に対する報酬を得るものといえるため、特色のあるグループとなっている
  5. ギグワーク・すきまバイト型:「現場型×単発」のグループ。Uber Eatsのようなフードデリバリーや、「旅×副業」といった移動を前提としている
  6. 企業で一定期間副業型:ビジネススキルを活かし、所属企業とは別の企業で、プロジェクト的に(あるいは継続的に)副業をするというケース。マーケティングや営業・人事などの職域特化、女性特化・地方特化など、多様な切り口のサービスが存在する
  7. 表現・発信型:ライバーやSNSなどが含まれる。「表現・発信型の副業」は、費やす時間に対しての金銭的な収入が確約されるとは限らないものの、フォロワーが多くなれば企業のPR案件をインフルエンサーとして宣伝することや、投げ銭・有料コンテンツの販売という機能により、収益を得ることも可能な仕組みがある
  8. EC関連:家の不用品やハンドメイド品の物販を売買するグループ。自らネットショップを構築するものと、プラットフォーム上に出品するもののサブジャンルがある。CtoCマーケットの隆盛に伴い、出品代行といった関連サービスも見受けられる
  9. オンサイトで継続型:治験ボランティア、牛乳配達・新聞配達・販売・飲食の接客系などの仕事が含まれる(ロゴではなくカテゴリーの名前で記載)

コロナ禍・ニューノーマルの生活様式により、約82%近くの副業がリモート可能なものに

副業市場全体でサービスが増加する中で、特にサービス数が増加したのは、グループ2の「特化型スキルマーケット」とグループ6の「企業で一定期間副業」。

グループ2「特化型スキルマーケット」には、DIYや出張シェフ、ペットケアなどの個人の特技やスキルを活かしたバラエティ豊かなマッチングサービスが並ぶ。一方、グループ6「企業で一定期間副業」には、マーケティング・営業・人事など職域に特化したサービスや、女性特化・地方特化サービスなど、多様な切り口のサービスが見受けられる。

グループ6「企業で一定期間副業」につながる背景としては、有名企業・地方自治体の副業人材が相次いで「副業人材を活用したイノベーション」に取り組んでおり、需要側である企業サイドに「副業人材の活用」という意識が浸透しつつあることが1つの要因と考えられるという。

また、コロナ禍およびニューノーマルの生活様式の中で、リモートワーク・テレワークの浸透により浮いた「通勤・支度時間分」を活かして副業を探す人が増えたこと、また「リモート副業」という方法で居住圏外での副業にチャレンジする人も増えたことが、これらサービスへの登録者の増加やのマッチング創出の追い風となっているとしている。

2022年のカオスマップに掲載したサービスのうち、約82%近くの副業がリモート可能なものであり、現場型の副業(配達デリバリー、介護、治験ボランティアなど)は全体の約18%となった。コロナ禍のニューノーマルの生活様式の中では、「新しい仕事」が誕生し、従来型の働き方を前提とする仕事の数は相対的に激減しているといえるという。

従業員のウェルビーイングを管理、ポストコロナ期の燃え尽き症候群を防ぐQuan

新型コロナウイルス流行収束後のバーンアウト(燃え尽き症候群)の増加、リモートワークへの移行、そして「大量退職時代」が辞書に載るようになった今、企業は人材を確保するのに苦労している。

Culture Amp(カルチャー・アンプ)やGlint(グリント)のようなカルチャープラットフォームは、別の時代に構築されたものであり、人事部にインサイトやレポートを提供するが、それらの多くは2022年に適合しているとは言えない。また、従業員のウェルビーイングは、依然としてますます重要な課題になっている。

新たなスタートアップ企業のQuan(クアン)は、エンゲージメント調査とウェルビーイング手当の間にあるギャップに対処するために、Y Combinator(ワイコンビネーター)をはじめ、オランダのインパクトファンドや複数の匿名のエンジェル投資家たちから、プレシード資金として115万ドル(約1億3000万円)を調達した。

女性が主導するオランダのスタートアップとして初めてY Combinatorに採用された創業者のArosha Brouwer(アロシャ・ブラウワー)氏とLucy Howie(ルーシー・ハウイー)氏は、医師、心理学者、セラピストと一緒にこの問題を研究し、200以上の予測因子に裏打ちされた20以上のウェルビーイングの下位次元を特定したと述べている。

Quanは、2021年3月にベータ版製品を発表し、現在は12の組織と提携を結び、1000人以上の有料ユーザーを獲得しており、プラットフォームのエンゲージメント率は88%に達しているという。

ブラウワー氏は筆者に次のように語った。「あまりにも長い間、人材・行動様式プラットフォームのプレイヤーたちは、ウェルビーイングを効果的に管理する方法を提供せずに『従業員エンゲージメント』や『従業員エクスペリエンス』を測定し、それをビジネス指標に直接結び付けてきました。そのため、バーンアウトや有害な企業文化といった問題が誤った方向に進んでしまう傾向にあるのです。Quanは、社会的な問題を効果的に解決するためには、それを経済的な問題(またはインセンティブ)にもしなければならないと考えています。冷厳な事実ですが、企業に従業員を大事にさせるためには、それが企業の利益にどのように影響するかを直接測定する必要があるのです」。

Quan社は現在、企業のリーダー向けに無料のアクセストライアルを提供している。

画像クレジット:Quan founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジョニ・ミッチェもニール・ヤングに続き、新型コロナワクチン誤報問題でSpotifyから楽曲を削除

Spotify(スポティファイ)の、Joe Rogan(ジョー・ローガン)氏による頭痛の種が、さらに悪化することになりそうだ。

先週ミュージシャンのNeil Young(ニール・ヤング)氏は、2年前に1億ドルの独占契約を結んだジョー・ローガン氏とSpotify(スポティファイ)の関係に抗議するために、ストリーミングサービスから楽曲を削除することを発表していた。それに続きJoni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)氏も、米国時間1月28日に自身のウェブサイトに投稿し「ニール・ヤング氏に味方する」として、Spotifyから楽曲を削除することを発表した。

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「Spotifyから自分の音楽をすべて削除することにしました。無責任な人たちが他者の命を奪う嘘を広めています」とミッチェル氏は書く。「私はこの問題に関して、ニール・ヤング氏ならびに世界の科学 / 医学界と連帯します」。

世界で最も有名で、最も尊敬されている現役ミュージシャンの1人であるミッチェル氏が、ローガン氏の件でSpotifyから撤退したことで、驚く人はいるだろう。ヤング氏とは異なり、彼女はストリームの質に関しては不満を持っていなかった。

ローガン氏のポッドキャストである「Joe Rogan Experience」(JRE、ジョー・ローガン・エクスペリエンス)は、物議を醸すことで知られている。最近では、ローガン氏や彼のゲスト出演者の多くはトランスフォビアを公然と表明し、マスクは「ビッチのためのもの」なので新型コロナウイルスの感染を減らすためにはマスクを着用しないようにリスナーに呼びかけ、彼の大勢の聴衆にワクチンに対する疑念を広く伝えている

ローガン氏の番組は、世界で最も人気のあるポッドキャストでもある。1回のエピソードに推定で1100万人以上のリスナーが集まり、毎週複数のエピソードがSpotifyにアップされている。

ローガンは、間違った情報を流すゲストを定期的に呼ぶが、その主張が事実であるかどうか確認する努力はしていない。また、新型コロナに関する誤った情報を広めたことでTwitterから追放されたウイルス学者、Robert Malone(ロバート・マローン)博士をゲストに呼んだことで、何百人もの医療関係者が公開書簡に署名し、Spotifyは、パンデミックが続く中、人命を危険にさらすことで利益を得ていると非難している。この公開書簡に触発されたヤング氏は、今週Spotifyを去り、ミッチェル氏も自分のメッセージの中でこの書簡に触れている。

その書簡には「マローン博士は、JREプラットフォームを利用して、新型コロナワクチンに関するデマや、社会的リーダーが国民を『催眠にかけている』という根拠のない説など、裏付けのない主張を大量に広めました」と書かれている。

「これらの発言の多くは、すでに信用に値しないとされています。さらに注目すべきは、マローン博士は、パンデミック政策をホロコーストにたとえた最近のJREの2人のゲストのうちの1人だということです。これらの行為は、不快で攻撃的であるだけでなく、医学的にも文化的にも危険な行為なのです」。

画像クレジット:Vivien Killilea / Stringer / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

需要減退の中、Pelotonがバイクとトレッドミルの生産を一時停止との報道

ここ数年はPeloton(ペロトン)にとってアップダウンの激しい日々だった、というのは控えめな表現だ。パンデミックによる爆発的な需要に支えられていた同社は、今度はトレッドミルやエクササイズバイクなどのコネクテッドフィットネス製品市場の「大幅な縮小」という問題に直面している。

米国時間1月20日にCNBCがニュース報道の中で指摘した内部資料によると、エントリーモデルの「Bike」は、2月から3月にかけて2カ月間生産が停止される予定だという。プレミアムモデルの「Bike+」はすでに生産を停止しており、資料によると生産を再開するのは6月になるとのこと。同社のトレッドミル「Tread」の生産は2月から6週間停止し、2022年度は「Tread+」の生産をまったく見込んでいないとのこと。

Pelotonは当初、パンデミックの影響で世界中のジムが閉鎖される中、最大のテック勝者の1つだった。実際、同社は最初、逆の問題に直面していた。つまり、一夜にして急増した製品需要に供給システムが対応しきれなかったのだ。2021年5月、同社はオハイオ州の工場に4億ドル(約456億円)を投じ、拡大する製品ラインを生産すると発表した。

長年コネクテッドホームフィットネスのリーダーとして存在してきた同社は、大方の見方では、コロナ禍は人々のワークアウト方法の一時的な変化というよりも、パラダイムシフトであると考えていた。そして、パンデミックが長引いている間にジムが再開され、他のスタートアップやSamsung(サムスン)、Apple(アップル)などの大企業によって競争が激化したことで、売り上げが低迷している。今週初めには、同社が財務状況の悪化を食い止めるために、コンサルティング企業のマッキンゼーと契約したというニュースが流れたが、これにはリストラと解雇がともなうと予想されている。前年の天文学的な上昇を経て、2021年末には、Pelotonの株価は76%も下落した。

初期の成功にもかかわらず、ここ数年は問題が多発していた。最も顕著な例は、安全性への懸念から同社のトレッドミル製品をリコールしたことだ。同社は当初、幼い子どもの死亡を含む70件の安全事故を受けて、米国消費者製品安全委員会と協力してリコールを行うことを躊躇していた

「創業者の1人である私の視点では、このカテゴリーの枠組みは十分ではありませんでした。カテゴリーとして考えていた安全性も十分ではありませんでした」と、John Foley(ジョン・フォーリー)CEOは2021年末のDisruptで筆者に語った。「私たちは、トレッドミルを市場に投入しようと考えました。ハードウェアの観点から見ると、最高のデザインのトレッドです。何十年にもわたってこのカテゴリーに存在する安全性を見て、私たちが学んだことは、さらに改善しなければならないということでした。当社はほとんどすべての分野で優れていますが、今度は安全性の面で改善する必要があります。

同社はパンデミック以前にも、人気のインストラクターやコンテンツプレイにより、カルト的な人気を集めていたことで知られている。しかし、その継続的な成長を過大評価し、継続的な支出で太陽に近づきすぎたといっても過言ではない(少なくとも短期的には)。同社は2021年末に「Peloton Guide」を発表した。Peloton Guideは、ホームフィットネスのエコシステムへの参入障壁を低くするために設計された、495ドル(約5万6500円)のコネクテッド筋力トレーニングシステムだ。また、ローイングマシンなどの追加製品の開発も進めていると報じられている。

20日のニュースがこれらの製品の発売にどのような影響を与えるかについては不明だが、大幅なリストラが行われた場合、支出を抑えるためにあらゆる手段を講じることは間違いない。同社の主な競合他社のいくつかも、最近、それぞれ変換期をむかえている。1月初めLululemon(ルルレモン)は、2021年9月に創業者が突然退社した後、Mirror(ミラー)に新しいCEOを任命したと発表した。

TechCrunchはPelotonに連絡し、今回の報道内容について確認を求めている。

画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

オフィス勤務再開需要に向けて、室内に新型コロナ感染者がいたかどうかを調べられるPhylagenが全力疾走

パンデミック開始から2年が経った今、世の中の企業は安全な対面業務の再開に向けて奮闘中だ。Apple(アップル)はオフィス勤務再開の計画を延期し、Google(グーグル)は2022年中には週3回のオフィス勤務を義務づける予定だが、ワクチン未接種者は最終的には職を失うことになると先日の発表で明言している。「従業員を守り、業務を進めるためには、ワクチン接種の義務化が最も効果的な方法となります」と同社は CNBCへの声明で伝えている。

しかし、ワクチンを接種した人でも感染力の強い新型コロナウイルスに感染する可能性はある。サンフランシスコを拠点とする設立7年目の企業、Phylagen(フィラゲン)は、微生物ゲノミクスとデータ分析を組み合わせて、物理的な空間に新型コロナウイルスの感染者がいたかどうかを調べることができるという。

その方法は次の通りだ。Phylagenは、センサー、スワブ、サンプルコレクターを活用し、これらを週に2回パッケージに入れて研究所に発送する。そして感染者が建物内(トラッキングのためにフロアやゾーンに分けられている)に細菌を持ち込んだかどうか、あるいは建物内の空気が安全かどうかを72時間以内にデータとして提供するという仕組みである。

同社はこれを「サービスとしての企業病原体モニタリング」と呼んでいるが、元生物学教授で、土木技師とマイクロバイオーム科学者の両方で正式な訓練を受けた創業者兼CEOのJessica Green(ジェシカ・グリーン)氏は、その実現可能性に長い間魅了され続けてきた。

しかしグリーン氏いわく、これまでの道のりは孤独なものだったという。「私たちは90%の時間を室内で過ごしていますが、自分が口から何を吸い込んでいるかについては何も知りません。この会話の間にも、私たちは何百万もの微生物を放出し、健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性のある何百何千ものウイルス、バクテリア、カビを吸い込んでいるのです」。これは「何十年も前から分かっていた」ことだが、一般の人々の理解が「今回のパンデミックで結実した」のだと同氏は話している。

Phylagenは当初から我々が呼吸している空気に焦点を当てていたわけではなく、創業当初から2020年の春まで、同社はサプライチェーントラック&トレースと呼ばれる市場で事業を展開していた。これは企業が自社の製品が最終目的地に向かって予定通りの経路をたどっているかどうかを確認するためのセグメントである(迂回した場合、製品に手が加えられた可能性も出てくるため、企業の評判を落としたり、特に医薬品に関しては致命的な結果を招いたりすることもある)。

グリーン氏によると、パンデミックの発生にともない、新型コロナウイルスを追跡する手段として同社の製品にも関心が寄せられたという。しかし、ウイルスが表面ではなく空気を介して広がっていることが明らかになると、同社は同社の技術を別の用途に使用するため完全シフトすることにした。これまでに得た知見や増え続ける微生物のデータベースを、トレーサビリティーのためではなく、建物の中にいる微生物を捕獲し、その情報をデジタル化して顧客に提供するというのがその考えである。

顧客数も増え続けているようだ。グリーン氏は具体的な顧客名を明かしておらず、多数の大手テック企業や商業用不動産会社と密接に連携しているとだけ伝えているが、産業用バイオテック企業Solazyme(ソラザイム)を共同設立したHarrison Dillon(ハリソン・ディロン)氏とともに共同設立された同社の事業は2022年に向けて大繁盛しているという。

収入は前年比10倍、従業員も20人から40人へと増加した同社。Phylagenはこの夏、ヨーロッパの上場企業で、ビルの防火・空調・セキュリティ機器を製造しているJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)から戦略的資金をひそかに調達したこともあり、人員をさらに倍増させる計画だという。

Phylagenはこれまでに3M(スリーエム)、Breakout Ventures(ブレークアウト・ベンチャーズ)、Cultivian Sandbox(カルティビアン・サンドボックス)などから合計3000万ドル(約34億円)を調達している。

しかし当然、次々と現れるライバルたちを出し抜けるかどうかという疑問も残る。

「これがニューノーマルだからこそ、新たな競争相手が現れたのです」とグリーン氏は話す。「誰もが安全な室内空気を求めるようになるでしょう。現在、室内空気の質を測定できる方法は非常に古く、空気に関連する生物学的要素を検査する、手頃で信頼性の高い方法もありません」。

Phylagenが所有するサンフランシスコとマンハッタンの研究所や、提携研究所からの結果を72時間も待つと聞くと、Phylagen独自のプロセスも時代遅れだと感じる人もいるかもしれない。新型コロナウイルスがいまだに急速に広がっていることを考えれば、2~3日というのは決して迅速な提供とは言えない(更新:この記事の掲載後、Phylagenから連絡があり、グリーン氏の発言は誤りであり、Phylagenは24時間以内に顧客に結果を返すことができるとのことであった)。

この速度は近い未来に短縮されるだろうとグリーン氏は考えている。「次世代のテストではすべてが自動化され、現場で行われるようになるでしょう。CO2センサーや、温度と相対湿度の情報を提供するサーモスタット のNest(ネスト) を想像してみてください。これと同じように空気中のDNAやRNAを検出できるようになるのは確実で、私たちは今それを目指して取り組んでいます」。

確かにPhylagenがその潜在能力を発揮すれば、同社のチャンスは絶大なものになるだろう。新型コロナウイルス以外にも多くのものを検査することができ、アレルギー誘発物質も計画に含まれているという。

商業利用のみならず、家庭での使用にも可能性はある。初期投資家である3Mはすでにデータ駆動型の消費者向け製品の開発に取り組んでいるようだ。9月にはPhylagenの技術を使った家庭用清浄度キットの販売を開始しているが、Amazon(アマゾン)で約180ドル(約2万円)という価格はほとんどの家庭にとっては高価すぎるため、現時点では試験的なものなのだろう。

一方でグリーン氏は、今はまだ企業顧客に集中していると主張している。これには他の製品を検討する時間がないという理由もあるようだ。

「3Mの製品から得られる最大のポイントは、検査したい有機体の一覧を自由に作ることができるということです。しかし、現在最も重要で、最大の市場機会と市場ニーズがあるのは商業ビルの分野です」。

「私たちがどんな機能を提供できるかということにかかっています。今、私たちは需要に追いつくために全速力で走っています」。

画像クレジット:Phylagen

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)