国内9000社、Fintech、Healthtechなど32のジャンル別「ベンチャーマップ」をJVRが公開

ベンチャー情報のentrepediaなどを提供するジャパンベンチャーリサーチ(JVR)が日本のスタートアップ企業9000社をFintech、Healthtechなど32の領域に分類して視覚化する「ベンチャーマップ」を公開した。「Healthtech→医療情報→医師検索」などとドリルダウンしていけるクラスターツリーとして表示できるほか、企業数や従業員数、調達金額などに応じて面積で視覚化する、いわゆるツリーマップとしても表示できる。

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© 2016 Japan Venture Research Co., LTD.

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© 2016 Japan Venture Research Co., LTD.

ベンチャーマップは経産省からの委託によってJVRが作成したもの。JVR代表取締役の北村彰氏によれば、これは事業会社のCVCやR&D部門がスタートアップ企業発掘のための「地図」として提供するもので、経産省では施策の欠落部分を探ろうという意図もあるのだという。

マップ作成にあたっては、ネット上にあるテキストを分析して動的にマップやツリーを生成するシステムを新たに開発した。検索エンジンのBingや、Wikipedia、当該企業のWebサイトなどからテキストを収集し、これをJVRがメンテナンスしてきた約9000社のスタートアップ企業データベースと組み合わせたそうだ。

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まったく人手を不要とするほどの自動化はさすがにできていないものの、クラスターツリーのトップレベルに入るべきキーワードを指定して「種まき」をすると、それ以後のツリーはシステムを3日ほど回すだけで自動生成するという。マニュアルによる重複やノイズ除去の必要性があるものの、「スタートアップらしさ」などをシステムが学習していくことで、今後も常に情報を最新の状態を保っていけるという。

スタートアップ情報の可視化だと、この業界では「カオスマップ」というフォーマットが使われることが多い。領域ごとにロゴをグルーピングするもので、ロゴが数多くひしめいていること自体がホットな領域であるという情報を示しているとはいえ、なかなかアップデートが追いつかないとか、実際の規模感を捨象しているというマイナス面があるのも事実。動的に更新される今回のようなベンチャーマップは便利かもしれない。今回の可視化では、キーワードのクラスタリングによって企業ごとに5個程度のキーワードを付けて分類するということをしている。このキーワードを動的に変えながら企業を探す「連想検索」も実装されている。

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今回開発したシステムはベンチャーマップということだが、クラスターツリーを作るシステム自体は汎用性がある。なので、JVRとしては今後は特定領域の研究論文を分類するとか、特定産業領域への適用で、大企業のR&D部門とシステム開発をする可能性も模索していくそうだ。「われわれが全てを作るのではなく、各企業と一緒に作っていってシステムサービサーになるイメージです。化粧品なら化粧品のクラスタツリーができるでしょうし、自動車なら自動車となります」(JVR北村氏)。文献のクラスタリングはずいぶん長く研究されていて、システムがある気もするが、R&Dの現場では案外ググっているそうでイノベーションの発掘に時間がかかっているという課題があるという。

念の為に付け加えておくと、われわれTechCrunchにもCrunchBaseというグローバルなスタートアップデータベースがある。日々取材する中で随時情報を追加していっているが、CrunchBaseは誰でも編集が可能なWikipediaモデルなので、日本のスタートアップ関係者の方々には企業概要や人物、資金調達状況などを英語でどんどん入力していってほしい。

未公開ベンチャーの大型資金調達が顕著にー2015年上半期調査レポートをJVRが発表

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このところ、大型の資金調達リリースが増えていると感じる方も多いのではないだろうか。ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)が3日に発表したレポートによると、2015年上半期の資金調達総額が624億円に達した。これは資金調達総額が6年ぶりに1000億円を超えた昨年下半期と同額だった。

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調達総額は2014年下半期と並んだが、調達企業数は23%減で326社となり、2014年上半期以降は大幅な減少傾向にある。つまり資金調達の大型化が顕著になったといえる。今回のレポートには含まれいないが、2014のレポートにあるように、引き続きシード・アーリーステージでの投資からシリーズA、シリーズBでの投資に成功するスタートアップが増加しているのが要因だろうか。

投資家別の比率を見ると、事業法人が全調達金額の624億円のうち439.7億円を占めている。このことからも、事業シナジーのある企業へのシリーズA、シリーズBでの投資が増えていること、また最近言われ続けているが、スタートアップのバリエーションの高騰も関係していると考えられる。

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1社あたりの調達額(中央値)はこのように、2014年下半期からほぼ2倍ともいえる1億3000万円となり、過去最高額となった。投資領域としては近年好調のITに加え、ヘルスケア、バイオ、医療が多くを占めており、これらは多額の投資が必要なドメインといえる。投資金額の割合としては、全体の投資額のうち、IT領域が28.6%、ヘルスケア、バイオ、医療領域が19.8%を占めた。

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また注目すべき点は、会社法改正以前の使い勝手の悪さから日本では優先株はほとんど使われないと言われてきたが、ついに76.9%に達したことだ(この比率は、ジャフコ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、日本ベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、グローバル・ブレイン、産業革新機構、グロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタル、サンブリッジ グローバルベンチャーズ、大和企業投資の10社を調査対象としたものだ)。

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優先株とは、普通株式に優先的な条件が付いた種類株式のこと。普通株式での投資は、投資家のリスクが経営者よりも大きかったが、優先株の条件によって緩和される。それゆえ投資家はよりリスクをとって、高いバリエーションで、多額の投資を行うというリスクをとりやすくなる。つまり大型の資金調達は、優先株の使用と表裏一体の関係なので、これらによってシリコンバレーではほぼ全てが優先株というように、日本でもさらに普及する可能性はあるだろう。

IPO企業数増加、公開時パフォーマンスも好調―、JVRが2014年の調査結果を公表

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「上場ゴール」という本末転倒な上場案件を憂う声が各方面から聞こえてくる昨今だが、ジャパン・ベンチャー・リサーチ(JVR)が今日発表したレポートによれば、gumiのような一部の事例をのぞくと、2013年、2014年と、IPO企業は数の点でもパフォーマンスの点でも上向きのトレンドにあるようだ。

国内新興市場での2014年のIPO企業の社数は80社と、2013年の58社から37.9%増加。2007年のライブドア事件後に続いた新興企業の不祥事により投資家離れが始まり、2009年のリーマン・ショック時にIPO件数は底を打った。しかし、まだ2004〜2006年の半数のレベルとはいえ過去5年は一貫してIPO件数は増加傾向にある。

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2009年の谷の前後にあたる2007年から2012年の6年間では、公募による資金調達額がIPO前の資金調達額を下回っている。つまりIPOするメリットが出にくかったが、この傾向も2013年からは逆転。2013年には1.37倍、2014年には1.44倍と資本市場からの調達額が上回り、IPOすることにメリットが出る傾向が続いている。

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IPO時のパフォーマンスということでいえば、初値PER、初値時価総額とも2006年以降で最高値となっていて、2013年でPERは約50倍、2014年で約63倍となっている。

スタートアップ界隈にとって朗報といえるのが、公開後の株価の推移を示す初値騰落率が、一昨年、昨年と高水準にあること。2006年から2012年までは50〜60%と100%割っていたものが、2013年、2014年と125%、126%と推移している。IPO前の時価総額と初値時価総額の比は、4.77倍(2013年)、4.58倍(2014年)となっていて、これは最終ラウンドの資金調達で投資ができていれば、IPOによってVCが4倍や5倍のリターンを得られることを示している。

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良い意味で、VCが儲かる構図に

甘い売上予測や上場審査で株価が一時だけ過剰に上がり、結局はその瞬間に売り抜けたVCや証券会社だけが得をして個人投資家が損をするという資本市場の信頼性を損なう動きがあったのだとしたら、「VCが儲かる構図」というのも否定的なニュアンスを帯びてくる。しかし、スタートアップ企業にリスクマネーを投資する主体であるVCが儲からないようでは、エコシステムとして活性化しないのだから、これは歓迎すべき傾向だと言えるだろう。2008年や2009年だとせいぜいIPO前の2倍程度の時価総額にしかならない上に、ロックアップ期間の3カ月を抜けたときにはリターンが残らない状況だった。そういう状況に比べれば、IPO市況は良いと言えそうだ。

ところで、新興市場の浮沈を見てきた証券市場関係者や投資家、経営者に話を聞いていると、その多くが口を揃えるのが上場審査厳格化の必要性だ。といっても上場ハードルを上げろという話ではない。むしろ取引所の審査体制の「正常化」という意見であることが多い。スタートアップ企業や経営者が背伸びをするのはある意味では当然だし、証券会社に新規上場数を増やすインセンティブがあるのも自明だ。となれば、いつでも黒字化できる体制にあるなり、安定したビジネスモデルを築くなりしている企業かどうか、それをゲートキーパーとしていちばん注意して見るべきなのは、上場審査をする取引所ではないのか。いくつか問題が連続して発覚したからといって証券会社や監査法人、まして経営者に注意喚起をするだけでは困る。これでは部下のミスを叱りつけるだけで自分では重たい仕事をやろうしないイケてない上司みたいではないか、ということだ。

ともあれ、一部の企業の業績の「盛りすぎ」や、情報開示方法の問題によってIPO市場や新興市場が冷え込まなければ、と心配するのは、ほとんどの関係者の声であるのは事実。こうした中で考えると、今回のJVRの調査は明るい材料と言える。資本市場、特に新興市場が健全に機能して、社会に必要な変革の力が日本に満ちることをメディアの立場からも願ってやまない。

国内未公開ベンチャー投資が拡大傾向、平均調達額は2.5倍の5000万円に

2008年のリーマン・ショック以降、下降線をたどっていた国内の未公開企業の資金調達額が増加に転じた。ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)の調べによれば、2013年には315社が合計584億円を調達し、前年の522億円から増加。1社あたりの調達額(中央値)は5000万円で、前年の2000万円から2.5倍に拡大した。大型の資金調達が相次いだことに加えて、2013年に設立されたファンドが本数、規模ともに大幅に増えたことも下支えした。これらのファンドは2014年から投資を本格的に実行することから、引き続き未公開企業ベンチャーへの投資拡大が継続されると推測している。

資金調達を行った企業数・資金調達の推移

資金調達を行った315社(調達金額が不明な企業を含めれば472社)のうち、設立3年未満のシード・アーリー期の企業が66%と半数を超えたのも特徴で、これらの企業の資金調達額は全体の43%を占めていたという。

調達金額が増えた一方で、資金調達社数は2012年の425社から315社減少している。その理由についてJVRは、「2011年~2012年に数多く生まれたシードアクセラレーターによるシード投資が2013年に入って一巡し沈静化したこと、そして、投資の大型化傾向から選別が厳しくなったことなどが原因」と指摘。2014年についてはファンドの充実、シードアクセラレータ支援先の成長による資金調達など、社数の増大に期待ができるとしている。

1社あたりの資金調達額の推移

2013年に資金調達を実施した企業のうち、インターネットを利用したビジネスモデルを持つ企業の社数は2013年に83.7%と、前年の78.5%から増加。資金調達額は全体の65.2%と、2007年以降増加傾向が続いている。

資金調達を行ったインターネットビジネスモデル企業数・資金調達額の割合の推移

地域別に資金調達を行った企業を見ると、関東が80%で東京に一極集中している様子が伺える。名古屋や大阪は合計しても1割に満たなかった。また、海外で起業したベンチャーの割合は2012年の2%から10%に増大している。

資金調達のランキングでは環境関連のエリパワーが36億円でトップ、2位はバイオテクノロジーのヘリオスで24億円。IT関連では、コンテンツを雑誌のようなデザインで閲覧できるサービス「Antenna」を手がけるグライダーアソシエイツが20億円で3位、ソーシャルゲームのgumiが19億円で4位、ネットワーク仮想化技術のMidokuraが16億円で5位にランクインしている。

資金調達ランキング

ベンチャーキャピタル(VC)の投資金額ランキングでは、事業会社自らがベンチャー企業への出資・投資活動を行うCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や外資系VCの健闘が目立ち、上位30社中、CVCが7社、外資VCが6社ランクインした。投資金額ランキングの1位は産業革新機構で108億円、2位はジャフコで34億円、3位はニッセイ・キャピタルで29億円。

投資金額ランキング (ベンチャーキャピタル)