今回メドレーに出資したMRTは、外勤紹介サービスの「Gaikin」、転職紹介サービスの「career」(いずれもMRTのコーポレートサイトで提供)、医局向けサービス「ネット医局」、ヘルスケア情報サイト「GoodDoctors」など、医療従事者向けのサービスを展開している。今後は、ジョブメドレーとGaikinのサービス連携、医師や医療従事者のネットワーク拡大、新サービスの共同開発を進めるとしている。
メドレーは2009年の設立。代表取締役の瀧口浩平氏は家族のがん治療の経験から、医療現場の効率化、情報の非対称性といった課題に気付き、それを改善すべく医療領域で起業した(同士は学生時代にも一度起業しており、これが二度目の起業となる)。
同年11月には医療・介護業界専門求人サイトの「ジョブメドレー」の提供を開始。2015年2月には瀧口氏と小、中学校時代からの友人である医師の豊田剛一郎氏を代表取締役医師として招聘。あわせてオンライン病気事典「MEDLEY」を公開した。また、2015年にはグリー傘下で介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を提供していたプラチナファクトリーを株式交換により子会社化している。
同社にはこれまでにウノウ創業者でメルカリ代表取締役の山田進太郎氏やアトランティス創業者の木村新司氏といった個人投資家のほか、East Ventures、インキュベイトファンドなどが出資している。
社員数は現在約60人。役員を中心に、東大医学部卒業生も4人在席している。「2009年に創業した時は、医療分野をやりたいエンジニアなんかいなかった。だここ最近はApple Watchでヘルスケア情報が取得できるようになったりして、医療領域に注目が集まってきている」(瀧口氏)
医療情報の提供、「生半可な気持ちでやっていくつもりはない」
今回の増資を受け、メドレーでは前述のMRTとの協業に加えて、オンライン病気事典MEDLEYおよび医療系人材の求人サイトジョブメドレーのサービス開発を加速するとしている。
MEDLEYでは、医師や医療従事者が執筆する情報を、220人の専門医が校正。一度掲載された情報についても逐次アップデートするという体制を取っているそうだ。「病気を調べるときにパッと思い浮かぶ病気のサイトにしたい。将来的には疾患の基礎情報からQ&Aまでを網羅する。医者1人1人も時間が限られている。診断したあと、(MEDLEYの)URLや印刷物を渡して『聞きそびれ』をなくすようなものにしたい」(豊田氏)。
ここ最近では医療情報サイトもいくつか出ているが、その一部は、情報の信頼性に不安をおぼえるものも少なくない。例えば、ある医療情報サイトで「子宮肉腫」という項目が「良性の腫瘍」と説明されているのだが、実際は「良性の子宮筋腫と間違いやすい、悪性の腫瘍」なのだそう。競合サイトでこういった生死に関わる情報が正しく扱われていない背景を踏まえて豊田氏は前述のコンテンツチェック体制を強調。「サービスを生半可な気持ちでやっていくつもりはない」と語る。
またジョブメドレーも売上は伸びており(グラフを見せてもらったが、金額自体は非公開とのこと)、「採用決定数も競合比較で多くなっている」(瀧口氏)のだそう。
将来的には、遠隔医療分野を支援、効率化するサービスの提供も予定しているという。こちらも具体的な話は非公開ということだったが>、豊田氏いわく「医療は『サイエンスとアート』なんて言われることがある。そのサイエンスの部分をシステムに置き換えて、アート、つまりコミュニケーションなどのために医師が時間を使えるようにしたい」とのこと。