なしくずし的に進む企業の脱PC→モバイル化: スプレッドシートコラボレーションのSmartsheetもAndroidアプリを

SaaSを提供しているサイトがAndroidアプリも出す、という例が増えている。モバイルアプリは依然としてiPhoneが支配的だが、モバイルへのシフトという世の中の流れはSmartsheetのような企業にも、モバイル化の拡大努力を否応なく強いている。

Smartsheetはエンタプライズ向けのコラボレーション型スプレッドシートをSaaSとして提供している。その同社が今日(米国時間9/17)、二つの理由により、初のAndroidアプリをローンチした。顧客の半数以上が同社のサービスにモバイルデバイスからアクセスしていることと、今ではアプリが重要な経営資源だからだ。

SmartsheetのCEOで社長のMark Maderによると、今では新規顧客の約50%がiPhoneやiPadで30日間無料の試用サービスをトライしたあとに登録している。そのコンバージョンレート(顧客化率)は、Webサイトの試用サービスでSmartsheetを知った人たちの3倍である。

SmartsheetのAndroidアプリは、リードオンリーではなく実際に仕事ができる。スプレッドシートのルック&フィールやコラボレーション機能はWebと同じで、ガントチャートやカレンダーなどの管理ツールもある。

しかし、ビジネスアプリケーションのモバイル化は、Smartsheetが初めてではない。2010年以降は、Zendeskなどの企業数社がAndroidアプリを提供している。ユーザが十分納得するような豊富な機能性を盛り込んでAndroidアプリを提供しても、もはやその一社だけの強力な差別化要因にはならない。

Mhelpdeskも、協同ファウンダのRyan ShankがTwitterで言ってるところによれば、ユーザの半分はAndroidからだ。彼によると、Mhelpdeskは修理や機器据え付けなど現場の技術者を支援するサービスなので、安いAndroidタブレットの利用が好まれているそうだ。このような、企業におけるAndroidの浸透はStrategy Analytics社の調査結果も示している。とくにAndroidタブレットは、安いことに加えてセキュリティが良くなっているので企業の採用が増えているという。また、個人でAndroidタブレットを買う人も増えていて、その多くが職場にも持ち込まれている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


デベロッパがクラウドを生かす; その逆ではない–Oracle/Salesforce批判

今週(米国時間6/23-29)はOracle/Salesforceの連携を契機にクラウドの話題が盛り上がったが、でもそれは、クラウドの実態から見ると、かなりずれた話ばかりだった。クラウドを支えているのはデベロッパであり、その逆ではない。

大物たちが手を組むのも、今やそうせざるを得ないからだ。それは既存の顧客にサービスを提供していくための、守りの姿勢だ。それは、老いたる王たちが新しいソフトウェアのライセンスで稼ぎを増やす、という前向きの話ではない。合従連衡してクラウドからレガシー技術を提供していくのは、まあそんなクラウドの使い方もあるね、という程度の話にすぎない。

彼ら独特のクラウドの定義によると、大きなITを抱える大企業が旧タイプのデータベースの新しいバージョンを手に入れて、10年も15年も前にインストールしたソフトを動かす、という筋書きになる。デスクトップやクライアント/サーバの時代に作られたオペレーティングシステム*を、クラウドサービスとして新たに鋳込むことはたしかにできる。古手のSaaS企業(ここではSalesforce)がオンプレミスの旧敵(ここではOracle)と組んで、過去14年間順調に動いていたものが次の二世代およびそれ以降もそのまま良好に使える、と嬉々として語るのもよい。何かをしなければならない会社は、牛がいればカウベルをつけたくなるものだ、それにはきりがない。〔*: operating system, ここではコンピュータのOSではなく、ITオペレーション(DevOpsのOps側に相当)のベースとなるシステム。具体的にはRDBMSを軸とする業務系システムのインフラ。〕

しかし、このような、レガシーデータベースによるオペレーティングシステム(業務系)とCRMが手を組む動きは、イノベーションではない。それは単にステータスクォーを保全し、彼らがこれまで数十億ドルを稼いできた源泉であるパンとバター(ご飯と味噌汁)的な定番的事業を提供するにすぎない。真のイノベーションは、新しいジャンルのデータベースにあり、デベロッパフレームワークに、ソーシャルなコーディングサービスに、データ分析によりコンテキスト対応力を持ったAPIに、などなどにある。クラウドに価値がない、と言っているのではない。価値なら、たくさんある。クラウドは、その価値ゆえに買われる。計算処理とストレージの費用低減、という価値だ。Joyentの料金は、今や月でも年でもない、秒単位だ。

しかしそのインフラストラクチャの底の方を見ると、そこにすらデベロッパの仕事のきざしがある。たとえば、ソフトウェア定義データセンターの話題が盛り上がっている。それは、金属製のスイッチではなくソフトウェアがデータセンターを構成し、そのAPIがすべての要素を結びつける、というコンセプトだ。APIが、ネットワークと、データストアと、ありとあらゆる形のクライアントやデータベースや等々を結びつける。今や、ネットワークの働きでアプリケーションが構成され機能する。昔とは逆だ。

そうやって巨大なマシンもパイプも抽象化され、その変化をデベロッパが引っ張る。あの小さなスマートフォンが、今やサーバだ。JoyentのProject Mantaが示しているように、大きなストレージとネットワークマシンがオペレーティングシステム*の一部になりつつある。計算処理とストレージが一体となり、インメモリデータベースが分析を瞬時に行う。〔*: operating system, 前記訳注参照。〕

Just.meのファウンダKeith Teare(本誌TechCrunchのファウンダの一人)が、今週のGillmor Gangで、クラウドは定数だが、やることは毎回同じとはかぎらない、と言っている。たしかに、最近のクラウドの使い方は変わりつつある。クラウドの消費のされ方が、変わってきた。クラウドを使うアプリケーション、デバイス、クラウドにプッシュされ〜〜からプルされるデータが。クラウドはデータのインテグレータ(メッセージバス)でありデータストアだが、今ではブラウザだけから消費されるものではなくなっている。

Andreessen HorowitzのパートナーPeter Levineが先週のインタビューで、15〜20年前にはMicrosoftとWinAPIがすべてだった、あらゆるプログラムやAPI呼び出しがWindows詣でをした、と言った。しかし今では、APIはおびただしく多様化している。今は、何をするにもそのためのAPIがある、と期待する。そしてそのことが、開発を加速する。

今年は、デベロッパの年だ。GitHubの会員が一日に約1万ずつ増えている。Levineの説では、クラウドという雲を高みに押し上げたのは、この、噴火して盛り上がるようなデベロッパたちの軍勢だ。クラウドのプロバイダたちは、その価値を提供してデベロッパの関心に沿い、するとデベロッパはますます多くのアプリケーションを作る。アプリケーションが増えれば、ますます多くのクラウドサービスが必要になる。スマートフォンのメーカーやキャリアも、充実したデベロッパコミュニティを育てることに関心がある。デベロッパの作品が増えれば、彼らのデバイスや時間の売上も増えるからだ。Levineは、上流がデベロッパ、下流がアプリケーション等のユーザ/ユーザ企業だ、と言う。

だから、今度また、レガシーのプレイヤーたちが嬉々としてクラウドはすばらしいと宣(のたま)う記事を見たら、よく考えてみよう。レガシーのクラウド化もそれなりにすごいことではあるけど、でもそこに、新しいクールなものを作るデベロッパがいなければ、無意味だ。ポケットにあるスーパーコンピュータが、われわれを世界につなぐのは、デベロッパが作りだすイノベーションがあるからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))