電動スクーターの歩道走行といった危険運転を自動で禁じるテクノロジーをSuperpedestrianがまもなく実装

電動スクーターシェアリングのSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)が、「Pedestrian Defense」(「歩行者を守る」の意)という安全システムを大規模に導入する準備を進めている。このシステムは、歩道走行や一方通行を逆方向に走っているといった危険な走行を電動スクーターがリアルタイムで検知し、修正できるようにするものだ。SuperpedestrianはPedestrian Defenseを装備した新しいスクーターを開発し、2022年中に米国とヨーロッパの25都市に展開することを目指している。同社によれば、春の早い時期までに米国と英国の歩行者の多い都市に最初に導入するとしている。

Superpedestrianは2021年7月に、精密なGPS位置情報を使ってマイクロモビリティ事業者が車両の位置を特定しリアルタイムで動きを修正するスタートアップのNavmatic(ナヴマティック)を買収した。その買収以降、Superpedestrianがこの新しいテクノロジーを市場に展開するのは、この計画が初となる。買収によりSuperpedestrianはNavmaticのソフトウェアを自社の安全システムであるVehicle Intelligence(「車両インテリジェンス」の意)に統合することができた。Vehicle Intelligenceは、危険運転の多くを制御して安全を守る機能を提供するためにAI、センサー、マイクロプロセッサを組み合わせたシステムで、危険運転の中には都市で最も嫌われる乗り方が含まれている。それは歩道の走行だ。

Superpedestrianの公共担当シニアディレクターのPaul White(ポール・ホワイト)氏はTechCrunchに対し「ニューヨークやシカゴと違ってもともと歩行者が多くない都市であっても、今は誰もが歩行者の優位性を理解しています。そのため、都市では歩道の走行をまったく認めないゼロ・トレランスのアプローチが望まれています。スクーターが歩道にあることが比較的確実にわかるというだけでは不十分です。我々はスクーターが常に適切な場所に存在するように介入し、制御したいのです」と述べた。

ホワイト氏によれば、Superpedestrianが新しい安全システムを導入する都市の多くはすでにパートナーになっているところだが、同社が獲得した、または獲得する予定の新たなパートナーもある。都市が提案を受ける際に、路上の歩行者を守るテクノロジーを実装するように企業に対して求める動きが始まっている。ホワイト氏は、例えばSuperpedestrianが現在獲得を目指しているサンディエゴとシカゴは制限が厳しくて事業者が少なく、両都市とも歩道走行禁止機能を重要な安全基準にしていると説明する。

SuperpedestrianはシリーズCで株式と債券によって1億2500万ドル(約143億2500万円)を調達しており、この資金で現在の車両の更新と新たな市場への拡大を実現する。このラウンドではJefferies、Antara Capital、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーイノベーションファンド)、FM Capitalの他、これまでに支援してきたSpark Capital、General Catalyst、Citi(Citi Impact Fundを通じて)も投資した。Superpedestrianは債券の条件も、どの投資家が株式または債券に投資したかも明らかにしていない。

Superpedestrianは2020年12月に6000万ドル(約68億7600万円)を調達した。シリーズCはそれ以来の調達で、同社にとってこれまでで最大のラウンドだ。今回の資金は、Vehicle Intelligenceソフトウェアスタックの幅広い応用に関する研究開発にも使われる。ホワイト氏によれば、このソフトウェアスタックには小型の配達車両を運営するような輸送関連企業から関心が寄せられているという。

ホワイト氏は次のように述べた。「この機能は実際に都市と連携するスクーター事業を運営する上で極めて関心が高いというだけでなく、歩行者が多く密集している環境で運用されるあらゆる小型車両に関係するものです。歩行者の多い環境で人間のスケールに合わせたきめ細かい制御をすれば、歩行者のエクスペリエンスが損なわれることはありません。私は、このことが今回のラウンドで多くの参加と関心を集めたもう1つの理由であると考えています。このテクノロジーは我々のコアであるスクーター事業に寄与しますが、それだけではなく、同様の課題に取り組んでいる、あるいは自転車用レーンをふさいだり貴重な歩行者用スペースに侵入したりしないようにしたいというあらゆる小型車両にも関連するものだからです」。

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画像クレジット:Superpedestrian

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

電動キックスクーターの安全性をモニターするSuperpedestrianが危険運転を検知・制御のためNavmatic買収

電動キックスクーターの運営会社Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、マイクロモビリティ運営会社による車両の位置特定と、その動きのリアルタイム補正を助けるスタートアップNavmatic(ナヴマティック)を買収した。

両社とも、2021年6月に成立した買収の詳細を明かしていない。取引の関係者によると、買収価格はNavmaticによる2020年6月の400万ドル(約4億4100万円)の設立資金調達の、最後の資金調達ラウンドとそう変わらない。

Navmaticの買収は、Superpedestrianにとって車両の安全システムを強化するために当該スタートアップのスーパーフュージョン技術を採用できることを意味する。新しいシステムはPedestrian Defense(ペデストリアン・ディフェンス)と呼ばれ、安全でない乗り方(一方通行の道路を逆走、無茶な進路変更、歩道の走行、急ブレーキの繰り返しなど)を検知する。また、スクーターを減速または停止させてリアルタイムで利用者に知らせるか、その行動を正す。利用者は利用終了時に、カスタマイズされた安全トレーニングに使用する安全評価を受け取る。上手な乗り方をしていれば割引を受けられるが、常習的に安全でない乗り方をする利用者はブラックリストに載ってしまう。

スクーター関連の事故が増える中、クルマが関与する交通事故の大半の場面で活躍するであろう新たなテクノロジー企業を紹介する。Spin(スピン)Voi(ヴォイ)は、同様に利用者を見張り、歩行者を守るためにさらなる技術手段を導入した。といっても、Navmaticのように位置特定ソフトウェアに注力したのではなく、コンピュータビジョンのスタートアップであるDrover AI(ドローヴァーAI)とLuna(ルナ)に目を向けた。非妨害性カメラを搭載したSpinとVoiの車両は、Superpedestrianのものとは違って、ある程度の精度を伴って歩行者を検知する。Superpedestrianの良さは、スクーターの細かい動きに関するデータを通じて利用者の行動を精確に理解するところだ。

「現在の課題はスクーターに関連する弱者、つまり歩行者、障害者、ベビーカーを押す人を守ることです」と、SuperpedestrianのCEOであるAssaf Biderman(アサフ・ビダーマン)氏はTechCrunchに語る。「そのため、非常に正確な位置、利用者の行動の特徴付け、コンテキストアウェアネスが必要です。利用者が他者の通行権を邪魔していないか?利用者がデータを正しくトレーニングすれば、カメラは必要ありません」。

ビダーマン氏は、SuperpedestrianがマイクロプロセッサとNavmaticのソフトウェアをLINKスクーターのオペレーティングシステム上で実行しており、Superpedestrianのすべてのマップがそこで機能していると話す。そのソフトウェアはグラウンドトゥルースで高精度なマップの視界を含め、さまざまなセンサーでトレーニングされている。乗車中、スクーターから取得されたデータを分析するリアルタイム計算がマイクロプロセッサのエッジで行われ、GPS生データ、多次元の慣性感知、車両の動力学を組み合わせて、車両の位置と動きを非常に精確に計算する。

「Navmaticのソフトウェアがあれば、位置検知が著しく向上し、スクーター運転者や小型車両のわずかな動きでさえすぐに分析できるようになります」とビダーマン氏は語る。「現在、その反応時間は0.7秒です」。

Superpedestrianのディベロップメント&パブリックアフェア部門ディレクター、Paul White(ポール・ホワイト)氏によると、車両の位置の正確性向上は局地的な条件に応じて70~90%である。

両社は、そのような精確な位置データを車両動作の制御機能と組み合わせると、視界に関する潜在的に安価で確実に拡張可能な優れた解決策となると話す。

「1台のスクーターに1000ドル(約11万円)や2000ドル(約22万円)のLiDARを搭載するわけにはいきませんよね?」とビダーマン氏はいう。「センサーフュージョンがあれば、夜に視界が悪くなったり、カメラが汚れたり、何度も故障したりするなどの制限や、反射や影の影響を受けるGPSの制限を克服できます。できるだけ多くのセンサーを組み合わせることで、それぞれの良いところを享受し、学習と改善を続けることができるのです」。

参考に、ドローバーAIとルナの技術により、スクーター運営会社はデータに基づき利用者の動きを制御することもできる。しかしこの能力はまだSpinとVoiがコンピュータビジョンを使用しているすべての都市で利用されているわけではない。Navmaticのチップはスクーターとオペレーティングシステムを共有しているが、例えばドローバーAIのものはスクーターのOSと直接通信する個別の車載IoTユニットで稼働する。この機能は現在サンタモニカでSpinにより試験的に利用されている。Voiは警報音を用いて歩道の歩行者に知らせるルナの技術をケンブリッジで試験利用したばかりだが、今度はスクーターを減速する方法を模索している。

Superpedestrianはオペレーティングシステムからハードウェアまでフルスタックを所有することにより、オフザシェルフのオペレーティングシステムを購入する他の運営会社と比べて優れた車両の制御性を誇る。

「当社の技術を他社のものと統合する上で、たくさんの課題がありました。他社はコード行を変える必要があるたびに、製造業者に連絡しなければならなかったのです。変更まで1週間もかかります」。NavmaticのCEOで共同設立者のBoaz Mamo(ボアズ・マモ)氏はTechCrunchに語る。

この買収へのSuperpedestrianのソフトウェアファーストのアプローチは、現在会社への投資者の1人であるEdison Partners(エディソン・パートナーズ)のパートナー、Dan Herscovici(ダニエル・エルスコビッチ)氏にとっても魅力的だった。

「スクーター企業による他の買収のほとんどは、市場シェアにとって遊びのようなものです」と彼はいう。「マイクロモビリティ企業が車両を強化するためにIPとテクノロジーに頼ることは滅多にありません」。

エルスコビッチ氏は、Superpedestrianが歩行者の安全と都市の法令遵守の問題を解決するため市場で多くのソリューションを吟味し、自らも技術を開発することを検討していたと話す。製品化までの時間と速く行動する必要性のバランスを取ると、都市の許可を失う恐怖が絶えず頭をよぎる。Navmaticの買収は正しい判断のように見えた。

「マイクロモビリティ分野については3つの大きな顧客層がいると考えています」とエルスコビッチ氏はいう。「まずは利用者。マイクロモビリティ企業は一番に利用者のことを考えますね。彼らをどうやって惹きつけ、乗り続けてもらうか?次に都市や自治体。最後に忘れられがちなのは利用者以外。道路を共有している人達です。業界は安全規則に基づいて利用者の行動を修正する道を模索していて、この買収はその力を解き放つと思います」。

マモ氏は、都市が利用者の移動方法や、優れたインフラ上の決断を下す方法について見識を得る可能性を、ペデストリアン・ディフェンスが切り開くことも指摘している。

ビダーマン氏は、Superpedestrianが2021年約5万台のスクーターを製造しており、12月からすべての新車に新しいテクノロジーを搭載すると述べた。2022年はアップグレードした車両を新規開拓する都市に展開し、同社がすでに営業活動を行う都市の旧モデルと入れ替え始める。

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その求人情報からNYCとロンドンの電動キックスクーターパイロット参加企業が見えてきた
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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

その求人情報からNYCとロンドンの電動キックスクーターパイロット参加企業が見えてきた

Twitterでのつぶやき、そして求人情報からLime(ライム)やSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)といった企業が、スクーターシェアリングサービスにとって最後のフロンティアであるロンドンとニューヨーク市でのサービス展開の準備を進めていることがうかがえる。

求人情報をチェックすると、企業のウェブサイトやLinkedInでLimeやDott(ドット)がロンドンでのサービス開始を準備していて、一方でLimeとSuperpedestrian、そしておそらくSpin(スピン)もニューヨークでの立ち上げを準備している。求人情報はこうした企業が切望している事業許可を与えられたという決定的な証拠ではないが、どの企業が許可を勝ち取りそうかは示している。

都市居住者が社会的距離が取れる移動手段を模索していた2020年夏に、ロンドンの交通当局とニューヨーク市議会はそれぞれ電動スクーターのパイロット事業を承認した。ロンドンのパイロット事業は2021年初めに開始するはずだった。そしてNYCはもともと3月1日に立ち上げられる予定だった。しかしいずれの都市もどの企業に許可を与えるかまだ決まっていない。情報筋によると、ロンドンは5月6日の市長選が終わるまで発表しないようだ。NYCの交通当局はコメントを却下した。

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ロンドンではDott、Tier、Lime?

ロンドンのパイロット事業では、Dott(ドット)とLime、そしておそらくTier(ティア)が展開することになるとの憶測がある。DottとLimeのウェブサイトにある情報、LinkedInプロフィール、そして採用ページでロンドンのポジションで募集をかけている。業界情報筋はTechCrunchに、すでになくなっているが、Tierのホームページにはロンドンでの求人が掲載されていたと話した。

英国でまだ事業を展開していないDottは「英国でゼロから事業を立ち上げる」ための英国居住のオペレーションマネジャーを募集している。同社はまた「Dottの英国マーケットのための声」となる公共政策マネジャーも募集している。

Dottのウェブサイトにあるサービスエリアを示すマップでは、ロンドンのところに小さな黄色い旗が立っている。旗をクリックすると「ページが見つかりません」のエラーメッセージが表示される。

世界をあっという間に席巻しているようにみえるモビリティ企業Limeは、すでにJumpの電動自転車という形態で昨夏からロンドンで事業を展開している。LinkedInの新たな求人からするに、Limeは事業拡大の準備をしているようだ。

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同社のLinkedInページではロンドン拠点のゼネラルマネジャーを募集していて、業務には「英国のマーケット成長を支える運用インフラ」の構築・実行がある。この求人は1週間前に投稿され、同社は積極的にLinkedInで人材募集をかけている。

約1カ月前に、Limeはロンドン拠点のオペレーション・マネジャーの職の募集をかけ、まだリクルート中のようだ。

LinkedInでの求人からするに、Voiもまだパイロット事業のレースに残っているかもしれない。4月8日に同社はロンドンで6カ月限定のアンバサダーとスーパーバイザーの募集を追加した。これは現場での役割のようで、その職務が一時的であるというのはロンドンでの1年間のパイロット事業と関係があるかもしれない。同社が展開している英国の他の都市を管理するためにロンドンに置く人材を探しているだけ、ということもあり得る。

Birdはすでにロンドンのオリンピック公園で夏からサービスを展開しており、道路や歩道でのスクーター使用に関するロンドンの規制を変更するためのロビー活動を積極的に行った。オリンピック公園で展開しているためにBirdのサービス展開マップはロンドンを目立たせているのかもしれないが、同社がロンドンでのオペレーションと英国全体のオペレーションを管理するオペレーションアソシエートを募集していることがことをややこしくしている。

ニューヨークはLime、Superpedestrian、その他

画像クレジット:Lime

LimeはNYCにすでに馴染みがある。同社jは電動自転車をクイーンズのロックアウェイで展開してきた。そして現在、メカニックオペレーションスペシャリストの2つの職種で求人をかけている。Lime電動スクーターのマネジメント、メンテナンス、展開・回収と業務説明にはある。

マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のSuperpedestrianは自社ウェブサイトとLinkedInで4件の求人をかけている。NYC居住を理想とするCEO補佐役を探している。また、ゼネラルマネージャーの職も募集していて、この職には「ニューヨークとニュージャージーにおけるスクーターシェアリングを成長・成功させること」が求められている。

LinkedInでSuperpedestrianはNYCでの2つの職種で求人を出している。まず1つが1週間ほど前に投稿された、スクーター充電や安全点検、スクーターの展開、スクーターの修理・組み立てを管理するオペレーションアソシエートだ。もう1つが1カ月前に投稿されたスクーターメカニックだ。しかし公平を期していうとこの求人には「当社がNYCでのオペレーションを許可された場合」という注意書きが含まれる。

Spinもまた(1週間ほど前)ニューヨーク拠点のオペレーション人材の求人を出した。職務は「Spinの日々のオペレーション、ドライバーとメカニクスの管理、高効率なオペレーションチームの構築」だ。Ford傘下のSpinがNYCのパイロット事業の認可を得たことを正確に示してはいないが、募集をかけている職は立ち上げ業務に関わっているようにみえる。求人情報はまた、新規採用がSpin車両の構築・展開につながっていることをにおわせている。

欧州では大規模に展開しているが米国では今からというVoi(ボイ)はNYCが米国参入の足がかりとなることを望んでいる。同社はNYCの業務の求人を一切出していないが、求人情報にある勤務地のドロップダウンメニューにはNYCが含まれている。

最後にBirdだが、同社はニューヨーク勤務の求人2件をLinkedInに出し、推測の混乱に輪をかけている。4週間前に投稿され、今も積極的採用をかけているゼネラルマネジャーの職はかなりニューヨークに関われる人物を求めているようだ。4月7日に投稿されたオペレーションアソシエートの職務がNYCでの勤務になるのかどうかについては、やや曖昧なものとなっている。

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タグ:電動キックスクーターロンドンニューヨークLimeSuperpedestrianLinkedIn

画像クレジット:Photo by TOBIAS SCHWARZ/AFP via Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIで電動キックスクーターを安全性をリアルタイムでモニターするSuperpedestrianが米国内で事業拡大

自己診断ソフトウェアを搭載した電動キックスクーターを製造しているスタートアップSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)は、今後2週間で新たに10都市へと大幅に事業を拡大するのに備えてプロダクトをアップグレードしている。

Superpedestrianは安全性の問題をどのように処理しているかという点でマイクロモビリティ分野における新進気鋭のプレイヤーとだと考えられている。同社は車両に搭載されるAIを開発した。このAIはスクーターの安全問題をリアルタイムでモニターして正す。そうしたアップグレードを提供するコードネーム「Briggs」という次世代のオペレーティングシステムはLINK電動スクーターの世界中の車両にアップロードされる。アップグレードにはジオフェンス能力や電池寿命の改善が含まれ、安全や信頼性を保証できるパートナーを探している自治体にとってSuperpedestrianをより魅力的なものにしている。

「スクーターマーケットは短い期間に多くの点でB2CからB2G(business-to-government)にシフトしました」とハーバード大学ケネディ政治大学院タウブマン公共政策センターの客員研究員であるDavid Zipper(デイビッド・ジッパー)氏は述べた。「自治体はスクーター事業者に認める許可の件数を減らす傾向にあります。これは、減りつつある利用可能な認可の1つを獲得しようと、スクーター事業者にこれまで以上にプレッシャーをかけています。テクノロジーが栄枯盛衰する中で、企業が自らをどう位置付けるかということが重要です」。

Superpedestrianは、ニューヨーク市などの都市との提携を獲得しようと争っている勝ち目の薄そうな電動スクーター企業の1社だ。ニューヨーク市はブロンクスでの電動スクーターパイロットプログラムの詳細を間もなく発表する。BirdやLime、Voiといった大手マイクロモビリティ企業も応札した。

Superpedestrianは現在、シアトル、オークランド、サンノゼ、サンディエゴといった米国の都市、そしてマドリッドやローマなどの欧州の都市で事業を展開している。

「自治体は、当社の100%のコンプライアンスに好感を抱いています」とSuperpedestrianのコミュニケーション担当EMEAディレクターRoss Ringham(ロス・リングハム)氏はTechCrunchに語った。「当社はこれまでに一度もマーケットから批判されたり、一時停止措置を受けたり、追放されたりしたことはありません。いいサービスを提供するために当局と協力することが重要だと確信しています」。

市当局は現在、スクーターが歩道に散乱しているという苦情を最も憂慮している。なので、歩道を空けたり、壊れたスクーターをすぐに診断し、誰かを派遣して回収させることはSuperpedestrianにとってアピールポイントとなる、とジッパー氏は話した。

LINKスクーターは Vehicle Intelligent Safety (VIS)システムで駆動している。車両1000台のヘルスチェックを乗車中ずっと行うために、VISはAIと73のセンサー、5つのマイクロプロセッサを組み合わせている。ソフトウェアは常に自己診断と自己修正をし、ブレーキ問題、電池温度の不均衡、内部ワイヤーの切断、透水といったものがないか目を光らせている。

「シートベルトがかつてクルマにとってそうだったように、VISはスクーターの安全性において大きな変化です。2013年以来、400万マイル(約643万km)超のテストとサービスを洗練しました」とリングハム氏は話した。「その結果、当社の車両のリコールや製造欠陥は世界中でゼロです」。

新たなアップデートではジオフェンスリアクションが22%早くなり、オンボードジオフェンスのキャパシティが3倍に、そしてジオフェンスの精度が7倍アップしている。これは、スクーターが乗車禁止ゾーンをこれまで以上に認識でき、速度を落としたり特定のエリアでの乗車や駐車を禁止したりすることでライダーコンプライアンスを改善することを意味する。

LINKのシステムのスピードと精度は、こうしたコンピューテーションがスクーターそのものでリアルタイムに行われている結果だ。LINKのシステムはジオフェンス関連の問題が感知されてからわずか0.7秒、最初の感知場所から4.6mで反応する。他のスクーター会社はジオフェンスを計算して遂行するのにクラウドコンピューティングに頼る傾向にある。これだと歩行者エリアや交通量の多いエリアでライダーがスピードを出して走行するのをやめさせるには遅すぎるかもしれない。

「当社の競合相手は通常、既製品を購入してホワイトラベルのアプリを使います」とリングハム氏は話した。「当社はそうしたやり方で安全性を他社に任せたりはしていません。つまり、当社のオペレーションや世界中の車両からの情報は、絶えず改善するために当社のエンジニアリングチームによって使われます」。

Bird、Atom、Joyrideといった企業は、独立したオペレーターが自前のライドシェアを立ち上げたり、車両を管理したりできるホワイトラベルのOSを提供しているが、LINKでみられるような安全性に特化したテックを提供している同業他社は多くない。

創業者でCEOのAssaf Biderman(アサフ・バイダーマン)氏によると、パフォーマンスを高めるためにエンジニアリングのチームがアップデートの度に詳細なログを引き出すため、スクーターは時間を追うごとにスマートになる。LINKのオンボードソフトウェアから集められる集合化・匿名化されたデータは、この新たな交通手段をサポートするためにより良いインフラをデザインできるよう市当局とも共有される。

「もし提携する当局が新たなアイデアを持っていれば、VISのおかげで当社は簡単にそれを追加できます」とバイダーマン氏は声明で述べた。「これはライダーのために車両を常に改善し、歩行者保護を強化し、都市に堅牢な安全性能を提供します。当局は市民に何も要求しないでしょう」。

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タグ:Superpedestrian電動キックスクーター

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi