Facebookはポリシー違反の「報道価値のある」政治発言にラベル添付を約束、広告主の離反受け

Facebook(フェイスブック)の偽情報やヘイトスピーチを容認する態度に業を煮やした広告主たちが、そのソーシャルネットワークの巨人から離反してゆく中、同社は彼らをなんとか引き留めようと、強力なポリシーをまとめて導入することを決めた。

Facebookが毎週開催している全員参加会議において、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はライブストリーミング配信を使い、それまでFacebookがとってきた対策を部分的に振り返りつつ、有権者弾圧や偽情報と戦うための新対策を示した。もっともこれは、すでにTwitter(ツイッター)などのソーシャルメディア・プラットフォームが重視し、より積極的に実施している対策とそう変わらない。

今回のポリシー変更は、政治家や公人が今もFacebookのガイドラインに違反し、ヘイトスピーチの拡散を続けている事実を実質的に認めるものでもある。しかし、「報道価値がある」ものはその旨を示すラベルを添付した上で、同プラットフォーム上での表示を続けるという。

これは、ヘイトスピーチや暴力を煽る言動を増幅させるネットワークの力を抑制したTwitterの断固とした態度を水で薄めたようなものだ。

ザッカーバーグ氏は以下のように話している(Facebook投稿)。

年に数回、私たちは、それが及ぼす被害のリスクに比べて公共的価値が高い場合に、通常ならば私たちのポリシーに違反するコンテンツを容認してきました。それは、報道機関が政治家の言葉を伝えるのと同じことです。我々のプラットフォームでも、人々がそれを普通に閲覧できるようにすべきだと私たちは考えています。

私たちは間もなく、人々がその投稿を、そうした類のものであると識別できるよう、掲載が容認されているコンテンツの一部にラベルを添付します。私たちはそれらのコンテンツを、その他の問題のあるコンテンツに関して容認しているように、批判を目的としたシェアを認めます。なぜならそれは、この社会で何が容認されるべきかを議論する上での大切な要素となるからです。ただし、シェアしようとしているそのコンテンツは私たちのポリシーに違反する恐れがあるという警告が追加されます。

このアプローチには無数の問題がある。結論としてこれは、ヘイトスピーチや、その他の誇張表現やプロパガンダの類に関してFacebookが持ち続ける、いつものこだわりの一例に過ぎない。つまり、責任はユーザーに負わせるというものだ。

ザッカーバーグ氏は、暴力の脅威や有権者弾圧は、たとえ報道価値があると認められたとしても、同プラットフォームでの配信を認めないと強調した。さらに「すべてのポリシーにおいて、政治家を例外としないことを、ここに明言しておきます」とも付け加えた。

だが、Facebookがそうした脅威の本質をどのように定義しているのか、さらに彼が声明で語った「報道価値」とのバランスはどうなのかは、いまだ不明だ。

大統領選挙の年、選挙にまつわる暴力に対する同社のこうした取り組みは、投票権に関連して同プラットフォームで拡散される偽情報に対処しようと同社が実施しきたその他の対策を補完する。

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ザッカーバーグ氏が発表した新対策には、各地の選挙当局と協力し、情報の正確さと、その潜在的な危険を判断するという取り組みも含まれていた。同氏はさらに、虚偽情報(投票所で米国移民税関捜査局の捜査官が移民証明書を確認するなど)の、または投票干渉で脅しをかける(「私は友人たちと独自の投票調査を行います」といった)投稿を禁止するとも話した。

Facebookは、広告でのヘイトスピーチを制限するための追加措置も実施する予定だ。「特に、私たちは広告ポリシーを拡大して、特定の人種、民族、国籍、宗教、社会的身分、性的指向、性自認、在留資格によって他者の身体的安全、健康、生存を脅かすような主張を禁止します」とザッカーバーグ氏。「また、移民、移住者、難民、亡命希望者を、彼らが劣等であるかのような暗示、侮辱、追放の訴え、直接的な嫌悪表現から、しっかりと守れるようポリシーを拡大します」。

同氏のこの発表は、人権擁護団体が主導する「#StopHateforProfit」(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンに賛同した広告主、つい最近ではUnilever(ユニリーバ)とVerizon(ベライゾン)(未訳)などがFacebookから資金を引き揚げると言い出したこの時期と重なった。

これは、あらゆる方面から(とは言えこれまでは、Facebookにとっていちばん重要な広告主は含まれなかったが)の批判を正面から向き合うことを避けてきたソーシャルネットワークのトップから出た、小さいながらも喜ばしい一歩だ。だが、Facebookの公的なメッセージ、ミーム(面白ネタ)、評論の表面には顔を出さず、プライベートチャンネルで今にも爆発しそうに煮えたぎっている大量の偽情報には、まだまったく手が付けられていない。

画像クレジット:Chip Somodevilla / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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