あらゆるウェブサイトを多言語化する仏WeglotがシリーズAで約60.6億円を調達

フランスを拠点とするスタートアップWeglotは、Partechを引受先とする4500万ユーロ(約60億5500万円)のシリーズA資金調達ラウンドをクローズした。同社は、ウェブサイト向けの翻訳ソリューションを構築している。この製品により、手間のかかる微調整をすることなく、また別のCMSやECプラットフォームに切り替えることなく、サイトに多くの言語を追加することができる。

そして、これがWeglotのポジショニングを理解する鍵になる。WordPress(ワードプレス)やShopify(ショッピファイ)の翻訳プラグインは、以前から存在していた。だがWeglotは、あらゆる種類のウェブ体験に対応するユニバーサルな製品を作りたいと考えている。

Weglotを活用するには、2通りの方法がある。1つ目の方法は、プラグインを使って既存のウェブサイトに追加するやり方だ。これはWordPress、Shopify、Wix、WooCommerceでWeglotが機能する方法だ。小規模の会社を経営していて、専任のウェブ開発者がいない場合は、コードを一行も書かずにWeglotをインストールすることができる。

もう1つの方法は、ウェブサイトのタグに数行のJavascriptを追加する方法だ。Weglotでは、Webflow、Squarespace、BigCommerceでこのアプローチを使用している。それに加えて、新しい言語用のサブドメインやサブディレクトリを作成するために、DNSレコードを調整する必要がある。

Weglotのサーバー上で、同社はサイトからコンテンツを自動的に検出し、取り込む。Weglotの顧客は、自動翻訳を利用して、新しい言語への対応を開始することができる。

また、同社が提供しているダッシュボードを利用することで、コンテンツを掘り下げ、よりよい翻訳を作成することもできる。プロの翻訳者にアクセスを許可し、そのインターフェースから翻訳を管理することができる。

これで、多言語サイトの完成だ。訪問者があなたのサイトをロードするときはいつでも、ウェブサイトはデフォルトでユーザーの優先言語でロードされる。また、複数のオプションを提供したい場合は、ウェブサイトの隅に言語スイッチャーを追加することができる。

翻訳はWeglotのサーバーに保存されるが、Weglotは各言語専用のサブディレクトリまたはサブドメインを作成する。こうすることで、Google(グーグル)やその他の検索エンジンは、顧客のウェブサイトの各言語版をインデックスすることができる。メタデータとキーワードも、Weglotで翻訳することができる。

このスタートアップは、必要な言語と単語の数に応じて、毎月のサブスクリプションを課金している。2021年、Weglotは年間経常収益1000万ユーロ(約13億4600万円)を達成した。2017年のシードラウンド以来、外部資本を調達していなかったスタートアップとしては悪くない。

画像クレジット:Joshua Fuller / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

The.comがローコードでコラボレーション可能なウェブサイトビルダーを発表、テンプレートではなくカスタマイズ可能な「ブロック」を使用

The.comという覚えやすい名前のスタートアップ企業が、ウェブサイト構築を刷新すると同時に、ウェブクリエイターが自分の作品の功績を認められるようにする取り組みを行っている。440万ドル(約5億1000万円)のシード資金を携えてひっそりと登場した同社は、業界標準であるテンプレートベースのアプローチを捨てた「ローコードのウェブサイト構築プラットフォーム」と呼ばれるものを開発した。The.comのサイトビルダーは、テンプレートの代わりにコミュニティが作成したコンポーネントを使用している。コンポーネントは、サイトにドロップして他のユーザーと共有できる。サイト作成者は、サイト構築の過程で互いに協力し合い、直接チャットすることも可能だ。

同社は、NFXが主導し、Sound Ventures、VSC Ventures、Village Global、Harry Stebbingsが参加する440万ドルのシード資金をクローズした。

The.comのアイデアは、共同創業者であり兄弟でもあるJeff McKinnon(ジェフ・マッキノン)Clarke McKinnon(クラーク・マッキノン)から生まれた。この創業者らは、The.comを設立する前の2012年から2019年まで、ボルダーで自らウェブ開発会社を経営し、ウェブサイトの開発とデザインに携わってきた経歴の持ち主だ。この間、彼らは従来のウェブ開発で生じるフラストレーションを身をもって体験したと、クラークは語る。

「私たちは、誰かが私たちのニーズをすべて解決してくれる完璧なプラットフォームを作ってくれるのを待っていました。でも、そんなことは起きなかった」とクラークはTechCrunchに語った。「だから、自分たちで作り始めたんです」。

共同創業者、ジェフ&クラーク・マッキノン氏(画像クレジット:The.com)

当初、彼らのプラットフォームは社内ツールとなる予定だったが、現在の顧客が関心を持ち、兄弟にこの製品をもっと広く利用できるようにしてビジネスにすることを勧めた。そこで兄弟は、2019年5月に代理店事業を停止し、現在のThe.comに取り組み始めた。

クラークの説明によると、従来のウェブ開発や古いプラットフォームには速度とセキュリティの問題がある。しかし顧客からより細かいカスタマイズを求められると、ハードコーディングが必要になり、更新のための継続的な作業が必要になるという葛藤も常にある。さらに現在のウェブ構築プラットフォームの多くは、すでにサイトデザイナーである人たちを対象にしている。しかしクラークら共同設立者たちは、自分たちの経験から、ウェブサイトに貢献する人の中にはデザイナーではない人が大勢いることを理解していた。

「誰もが同じ土俵に立てるウェブサイト構築プラットフォームが必要だっただけなのです」とクラークはいう。

The.comでは「サイトを作成」ボタンを押すだけで簡単に新しいウェブサイトを立ち上げることができ、すぐにサイトのインフラを導入できる。ユーザーは他の人を共同制作者として招待でき、ボタンをクリックするとサイトの編集を開始できる。一から作ったり、テンプレートを選んだりするのではなく、クリエイターは使いたいパーツやコンポーネントを個別に選べる。つまり、The.comの1人のクリエイターからナビゲーションを、そして別のクリエイターからはフッターを、そしてヒーロー画像、ヘッダー、バナー、ボディ要素など、さまざまな要素をコミュニティのメンバーから選ぶことができる。要素を選ぶと、画面上に紙吹雪が舞い上がり、元のコンポーネントの制作者に称賛としてクレジットが与えられる。The.comは、今後クリエイターに金銭的な報酬を与える方法を展開する予定だ。

画像クレジット:The.com

クラークは「目標は、要素を使ってサイト構築している人たちが、要素を最大限に活用できるようにすることです」という。再利用可能な要素を作る動機について「私たちが代理店だった頃、すばらしいサイトをたくさん作りましたが、それらは一度使われただけで、それっきりでした。お客様にあまり気に入らないと言われたもの、合わなかったものなど、実際のサイトには登場しなかったものがたくさんあります。そのようなものから繰り返し収入を得ることができれば最高だと思います」と語った。

サイトビルダー自体もおもしろいデザインになっている。作成するウェブサイトの前面に、フローティングウィンドウが表示される。だが他のWYSIWYGデザイナーより少し高度な作りになっており、サイトのページ、ブロック、シート(基本的には自由形式のデータベース)を管理するセクションがある。個々のウェブサイト要素を追加した後、ウェブサイトのコードを書いたり編集したりするのと同じように、フォント、色、画像、テキストなどを変更して細かくカスタマイズすることができる。また、生のJavaScriptを追加したり、一から新しい要素を作成することによっても変更を加えることができる。

サイト上での作業が進むにつれて、変更した内容は画面上にライブで反映されるため、実際の見た目を確認するために「プレビュー」をクリックする必要はない。また、カスタマイズした要素は、必要に応じてコミュニティのマーケットプレイスで再度共有することもできる。

画像クレジット:The.com

The.comはこのマーケットプレイスで、クリエイターが自分の作品に対して直接報酬を得るという、クリエイターエコノミーのトレンドを利用している。創業者たちの考えでは、自分のツールを使ったサイトのカスタマイズを勧める「ウェブサイトのインフルエンサー」になるトップクリエイターもいるかもしれないということだ。

クラークは「マーケットプレイスでは、品質、優れたデザイン、印象的な構築があれば、クリエイターはどんどん人気になっていくでしょう」と指摘する。「これから人々は、自分の仕事への評判を期待するようになります」。要素が繰り返し利用されると、The.comは、コミュニティやウェブサイトを含め、元のクリエイターが称賛を得られるようにする予定だ。

The.comによると、現在のコミュニティ規模は、顧客数で数千人、日々のアクティブユーザー数で数百人であるという。

The.comのウェブサイトビルダーでもう1つ注目すべきなのは、共同作業の要素である。The.comの顧客の多くは、個人ユーザーではなく、代理店や中小企業だ。つまり、複数の人が一緒にサイトを更新することができるようになる。現在は、それぞれの人が編集しているパーツの横にプロフィールアイコンが表示されるが、将来的には、ユーザーが並んで編集できるようになる。また、チャット機能も内蔵しているので、他のサイト協力者と構築について直接話すこともできる。

画像クレジット:The.com

ひっそりと登場したこのスタートアップ企業は、最初の料金プランも発表している。まずは試してみたいという人のためのベーシックプランは無料。他の階層は、機能セット、サポートの必要性、サイズに応じて、月額36ドル(約4160円)、199ドル(約2万2990円)、1499ドル(約17万31080円)となっている。The.comの顧客は、中小企業やスタートアップ企業から大企業に至るまで幅広い。高性能なサイトでは、Shopifyの上にThe.comをヘッドレスオプションとして使用し、ウェブサイトの速度を上げ、直帰率を減少させているものもあるとのことだ。

The.comは、表向きはサンフランシスコに本社があるが、11人のフルタイム従業員から成る分散型チームを抱え、合計15人のチームで事業に取り組んでいる。今回発表されたシード資金を使ってエンジニアとコミュニティ分野で雇用し、さらなる製品開発に取り組む予定だ。

The.comという憧れのURLを獲得したことについては、創業者たちによると、彼らの親友がこの取引の力になってくれたらしい。

クラークは、このメンターが誰であるかは明かさなかったが「家族・友人割引です。この人は長い間ドメインの世界に関わっていて、たくさんのいいものにアクセスができたので、私たちは幸運でした」と述べた。

NFXのジェネラルパートナーのJames Currier(ジェームス・カリアー)は「The.comのプラットフォームには、Web1.0や2.0のウェブサイト構築システムとは異なり、ネットワーク効果とコンポーザビリティがあります」と語る。「クリエーターにオーナーシップが与えられ、クリエーターは新しいプリミティブを使ってウェブを再構築できるようになります。私たちは、このようなカテゴリー革命を待ち望んでいたのです。もしあなたがまだWordPressを使ってウェブサイトを作成しているなら、The.comに乗り換えたくなるでしょう」。

画像クレジット:The.com

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

スマホからノーコードでウェブサイトを作るUniverseがテーマやブロックの新機能を公開

モバイルでウェブサイトを構築できるプラットフォームのUniverseがアップデートを公開し、同社のグリッドベースのウェブビルダーに高度な制作用コントロール、便利なテーマ、ブロック機能などが追加された。Universeを使うとスマートフォンから直接、コーディングをすることなくシンプルなグリッドシステムでオリジナルのサイトを作ったりeコマースのストアを開設したりすることができる。新たなアップデートであるGRID System IIは、これまでの複雑なコーディングのプロセスを直感的なジェスチャーにして、ウェブサイトをもっと簡単に作れるようにすることを目指している。

Universeの創業者でCEOのJoseph Cohen(ジョセフ・コーエン)氏はTechCrunchのインタビューで「Universeの特徴はグリッドシステムで、今回はそのグリッドシステムの大幅なアップデートを発表しました。これにより、専門知識がなくてもこれまで以上に多くのことができるようになります」と語った。

コンテンツをドロップできる広いグリッドが用意されたプラットフォームで、シンプルなブロックをベースにしてウェブサイトを作っていく。今回のアップデートでは制作用のコントロールが再設計されてグラフィカルインターフェイスが改善し、グリッド内のブロックのパディングやテキストの細かな間隔をコントロールできるようになった。コーエン氏は、グリッドを詰めて最大7列にすることができるようになったと述べた。新しいインターフェイスではカラー選択ツールも強化されている。

さらに、30種類の新しいテーマから好みのものを選んだり、オリジナルのテーマを作ったりすることもできるようになった。テーマが登場する前は、ブロックの1つ1つにその都度スタイルを設定していた。今回のアップデートでテーマが導入され、フォントやページの背景、ボタンの色といったデザイン要素に一貫性を持たせることができる。テーマを使うと、テキスト、背景、見出し、カラーなどがサイト全体の外観に適用される。

コーエン氏は「我々はサイト全体に適用できる、30種類の魅力的なテーマを作りました。ユーザーがオリジナルのテーマをゼロから作ってもかまいません。我々が提供するテーマの中のいずれかを適用したりカスタマイズしたりすることができます。変更を加えると、サイト全体に反映します。テーマは基本的に、サイト全体にわたってすべてのスタイルを美しく、使いやすく変更する手段です」と説明した。

新しいテキストスタイルを利用して、テキストをタイトル、サブタイトル、キャプションなどに分類することもできる。タイトルのインジケータを使うとサイトのSEOが向上し、アクセシビリティも拡張されるとUniverseは説明している。

新しいレイヤー機能も追加され、ブロックの上にブロックを重ねられるようになった。これまでは画像のブロックとテキストのブロックというように2つのブロックを重ねることはできなかった。今回の新しいレイヤー機能を使うと、ウェブサイトのデザインに関する制作の自由度がずっと高くなる。

さらにUniverseは、1つのサブグリッド内で複数のブロックを組み合わせて集合体を作る、新しいグリッドブロック機能も公開した。サイトにブロックを追加するとそのブロック内に別のグリッドが作られるもので、フォトギャラリーなどを追加するのに使える。グリッドブロックでブロックをグリッド上に正確に配置した後、サブグリッドをページ上の任意の場所にドラッグできる。

UniverseはShopifyやWixといった人気ウェブサイト構築ツールの競合だと思う人もいるかもしれないが、コーエン氏はまったく違うものだという。

画像クレジット:Universe

同氏はこう説明する。「我々はグリッドと呼ばれる新しいインターフェイスを開発しました。これは基本的には、テック系でない人、あるいはプロのデザイナーではない人が完全にオリジナルのウェブサイトを構築できるようにするものです。Squarespace、Shopify、Weebly、 Wixなどのシステムがありますが、これらはデスクトップベースでテンプレートベースのウェブサイトビルダーです。Universeで利用できるテンプレートはありますが、テンプレートベースではありません。テンプレートで制限されないため、グリッドそのものが制作のためのインターフェイスです」。

利用状況についてコーエン氏は、コロナ禍で多くの人がビジネスや副業を始めてウェブサイトを作ろうとしたことからUniverseのユーザーが増えたと語る。同社はコロナ禍の初期に、サイトで製品を販売し出荷できるようにした。そのためユーザーは、Shopifyなど他社のeコマースツールに登録する必要がなかった。

同氏は「コロナ禍が始まってからの1年半、当社は急速に成長しました。全体としては、作成されたアクティブなサイトの数が10倍ほどになりました」と述べた。

またコーエン氏は「リンクインバイオ」サイトを求めるインフルエンサーのユーザーが増えていると語る。「リンクインバイオ」サイトとは、Instagramのプロフィールの最後に書いておいてInstagram外のウェブサイトに誘導するURLのことだ。誘導先のサイトは、製品を販売したり、他のソーシャルメディアアカウントにリンクしたり、ポートフォリオを紹介したりするのに使われることが多い。同氏によれば、Universeで作られるサイトの40%が「リンクインバイオ」で、このようなサイトがコマースと並んでUniverseで最も大きく成長している領域だという。

Universeには現在数十万のアクティブなサイトがあり、同社は今後もプラットフォームの成長に合わせてコンシューマにとって使いやすいアップデートをリリースしていく予定だという。

コーエン氏は「今回のアップデートで我々は飛躍を遂げましたが、今後もこのグリッドシステムの改良を長く続け、いずれはインターネット上で可能なことはすべて我々のグリッドシステムで実現できるようになるでしょう。中心となっている制作の機能だけでなく、ビジネス構築に関わるコマースの機能も充実させていきます」と語った。

画像クレジット:Universe

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)