インド政府による禁止措置を受けてTikTokがインドでアクセス不可に

インド政府がセキュリティとプライバシーの懸念を理由に、人気のショートビデオアプリTikTokやその他の58のアプリを世界で2番目に大きいインドのインターネットマーケットで禁止したことを受け、ユーザーがTikTokにアクセスするのをブロックするインターネットサービスプロバイダーが増えている。

AirtelやVodafone、その他のサービスプロバイダーの多くのユーザーが、インド時間6月30日午後に「スマホからTikTokアプリにアクセスできない」と報告した。ユーザーがいうには、TikTokアプリを開くと「インターネットにつながっていない」と表示された。(アップデート:インターネットサービスプロバイダーは、自分たちがTikTokをブロックしているのではなく、アプリそのものがインドでアクセスできなくなっていると述べた。インドの電気通信局はインターネットサービスプロバイダーに「すぐさま」TikTokをブロックするよう命じていた[ETTelecom.com記事])。

TikTokアプリを開くと、このアプリはインド政府の命令に従ってサービスを提供できないというメッセージが表示される。インドでTikTokのウェブサイトを開くと、同様のメッセージが出てくる。

6月30日にインドのApple(アップル)のApp StoreとGoogle(グーグル)のPlay StoreでTikTokアプリをダウンロードできなくなった。この件に詳しい2人の人物がTechCrunchに語ったところによると、TikTokを開発したByteDanceが自らアプリをストアから引っ込めたという。

Alibaba GroupのUC BrowserとUC News、eコマースサービスのClub Factoryなどを含め、インド政府が6月29日夜に禁止した他のアプリのほとんどがまだアプリストアでダウンロードできる。これはグーグルとアップルがまだインド政府の決定に従っていないことをうかがわせる。

インドに2億人超のユーザーを抱えるTikTokは、アジアで3番目に大きな経済のインドを、同社にとって最大の海外マーケットととらえている。インドにおけるTikTokのオペレーションを監督するNikhil Gandhi(ニクヒル・ガンディー)氏は、同社がインド政府の命令に従っている「最中」であり、インド政府の懸念を和らげるために議員たちに協力したいと話した。

モバイル調査会社のSensor Towerによると、TikTokアプリはグローバルで約20億回インストールされ、そのうちインドでのダウンロードは6億1100万回だ。2020年6月末までの四半期でインド政府が禁止を命じた59アプリは計3億3000万回インストールされた。これらのアプリの2020年5月におけるマンスリーアクティブユーザーベースは、App Annieの幹部がTechCrunchに示したデータによると計5億500万人だった。

人口13億人の半分近くがネットを使用する世界第2位のインターネットマーケットであるインドがこれほど多くの外国アプリの禁止を命じたのは初めてのことだ。インド政府は「多くの『治安問題に影響を与えるデータセキュリティとプライバシーの流出について市民からの抗議』がコンピューター緊急対応チームに寄せられていた。こうしたデータの編集では、インドの国家安全と防衛にとって敵対的な要素を持ってマイニングとプロファイリングが行われている」と述べた。

今回の驚くべき発表は、インド政府がこれらのサービスをどのように「禁止」するのか混乱を生じさせた。しかしそれは現在、明らかになりつつある。

TikTokは2019年にインドで1週間禁止されたが、すでにアプリをダウンロードしていたユーザーは利用できた。その際、裁判所に提出した書類の中で、1日あたり50万ドル(約5400万円)失っていると述べた。ロイターは6月30日、ByteDanceがTikTokをさらに浸透させるためにインドに10億ドル(約1080億円)を投資する計画だったと報じたが、今となってはその計画は立ち消えたようだ。

中国外務省の報道官であるZhao Lijian(趙立堅)氏は6月30日の記者会見で、中国はインドの動きを懸念しており、インドは「中国の投資家を含め海外の投資家の法律上の権利を維持する責任を負う」と述べた。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

YouTubeが極右の著名人たちのチャンネルを停止

YouTubeが月曜日(米国時間6/29)に、人種差別的なヘイトスピーチで知られ、問題視されている人びとに対抗措置を取り、彼らの主なチャンネルを取り去った。

削除したのは6つのチャンネルで、それらは、Richard Spencerの自身のチャンネルと、関連のNational Policy Institute/Radix Journalのチャンネル、極右的で人種差別的な似非科学の唱道者Stefan Molyneux、白人至上主義の発表媒体American Renaissanceとその関連チャンネルAmRenPodcasts、そして白人至上主義者で元Ku Klux Klan(クークラックスクラン)のリーダーDavid Dukeだ。

YouTubeのスポークスパーソンはTechCrunchに提供した声明でこう述べている: 「YouTube上のヘイトスピーチを禁ずる厳しいポリシーがあり、そのポリシーに何度もひどく違反していれば、いかなるチャンネルでも終わらせている。ガイドラインをアップデートして、至上主義的コンテンツへの対応を改善した結果、ビデオの削除は従来の5倍に急増し、25000あまりのチャンネルを弊社のヘイトスピーチポリシーへの違反で終了させた」。

同社によると、それらのチャンネルは、外部のヘイトコンテンツへのリンクや、法で保護されている集団に関して劣等性を主張することを禁じているルールに違反した。

極右や白人ナショナリストたちに対するYouTubeの最近の大掃除の前には、今月初めの、Proud Boyの創業者Gavin McInnesのアカウント停止がある。最近アカウントを停止された者の一部は、まだ生きているTwitterアカウントを使って月曜日の午後にYouTubeのチャンネルを失ったことに文句を言っている。

関連記事: Facebookがナチのシンボルを使ったトランプ大統領の選挙運動広告を削除

YouTubeが極右アカウントを持つ著名人たちに対して同社のルールを強制したその同じ日に、TwitchとRedditも、ヘイトに関する自分たちのルールに違反したコンテンツに対抗措置を取った。Amazonが所有するゲームストリーミングサービス(Twitch)は、月曜日(米国時間6/29)にトランプ大統領のアカウントを停止し、1年前と最近のトゥルサにおける集会での彼の発言を問題視した。また、何年間もハラスメントや人種差別の抑止の失敗を批判されてきたRedditは、r/The_Donaldをはじめ2000のサブレッディトを一掃すると発表した。r/The_Donaldはヘイトで充満していることで悪名高く、トランプはそこで、自分の立候補を発表した。

関連記事: Twitchがトランプ大統領のアカウントを停止、Redditも「The_Donald」と関連サブレディットを追放

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ユニリーバとベライゾンがFacebookから広告を引き揚げ

Facebook(フェイスブック)のコンテンツと収益化ポリシーに対する広告主の反発が拡大を続けている。

米国時間6月25日、TechCrunchの親会社であるVerizon (ベライゾン)は、「『我々の納得がいく、さらにTwitter(ツイッター)などのほかのパートナーとの我々の同意内容と一貫性のある解決策をFacebookが提示するまで』、FacebookとInstagram(インスタグラム)に出している広告を一時差し止める」と話した(The Verge記事)。

そして6月26日、一般消費財の大手Unilever(ユニリーバ)もこれに加わり、米国内のFacebookおよびInstagram、さらにはTwitterに出しているすべての広告を、少なくとも今年いっぱい停止すると話した。

「現在米国が抱えている二極化問題と、今年の大統領選挙を踏まえ、ヘイトスピーチの領域には極めて厳重な取り組みが必要です」とユニリーバのグローバルメディア担当上級副社長Luis Di Como(ルイス・ディ・コモ)氏はWall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)に語った

Facebookに対して広告主から圧力をかける取り組みは「#StopHateforProfit」(営利目的のヘイトを阻止しよう)キャンペーンから始まった。これは、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、NAACP(全米黒人地位向上協会)、Color of Change(カラー・オブ・チェンジ、公民権擁護団体)、Free Press(フリープレス、メディアの民主主義を擁護する団体)、 Sleeping Giants(スリーピング・ジャイアンツ、リベラル派のソーシャルメディア活動団体)によって推進されている。このキャンペーンは、人種差別、反ユダヤ主義、ヘイトの犠牲者への支援を改善し、偽情報やヘイトに満ちた広告で利益を上げることを阻止するための変革を促すのが狙いだ。

Facebookから広告を引き揚げることに同意した企業には、アウトドアブランドのREI(アールイーアイ)、The North Face(ノースフェイス)、Patagonia(パタゴニア)も含まれる。ただし、Gizmodeによれば、これらの広告主がFacebook Audience Networkからも広告費を引き揚げたかどうかは定かではない。

Unilever:#StaySafe 私たちは米国内のFacebook、Instagram、Twitterの広告を停止する決断を下しました。

二極化の空気により、各ブランドには信頼できる安全なデジタル・エコシステムを構築する責任が増しています。私たちの行動は今から2020年末まで継続されます。

Facebookは、Unileverの発表を受けて次の声明を公開した。

私たちは、年間数十億ドルを投資し、私たちのコミュニティーの安全を守り、外部の専門家と協力して継続的に弊社ポリシーの評価と改善を行う努力を重ねています。私たちは公民権の監査を受け入れ、250の白人至上主義者団体をFacebookとInstagramから追放しました。私たちはAIに投資を行うことで、ヘイトスピーチの90%近くを検出し、利用者からの報告を受ける以前に行動を起こせるようになりました。最新のEUの報告には、Facebookは24時間に受け取ったヘイトスピーチの報告を、TwitterやYouTubeよりも多く処理できていると示されています。これで十分だとは思っていません。今後も公民権擁護団体、GARM(責任あるメディアのための国際連合)、その他の専門家と共に、この戦いを継続するためのさらなるツール、テクノロジー、ポリシーの開発を進めて参ります。

Twitterは、グローバル顧客ソリューション部門副社長Sarah Personette(サラ・パーソネット)氏を通じて次の声明を発表した。

私たちの使命は、Twitterを、公の会話を促し、人間同士のつながりの構築、正しい信頼できる情報の検索と収集、自由で安全な発言が行える確かな場にすることです。私たちは、公の会話を守り支援するためのポリシーとプラットフォーム機能を開発しました。そして常に変わらず、少数派コミュニティーや、社会から取り残された人々からの声を増幅することを責務としてきました。私たちは、パートナー企業の判断を尊重し、この期間も、彼らと密接に協力し対話を続ける所存です。

米国東部夏時間6月26日午後1時57分(日本時間で6月27日午前3時57分)の時点で、Facebookの株価は取引開始時よりも7%下落した。CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国東部夏時間6月27日午後2時よりタウンホール・ミーティングを開催し、これらの問題について話し合う予定だと語った

関連記事:Big outdoor brands join #StopHateForProfit campaign, boycott Facebook and Instagram ads(未訳)

画像クレジット:Alexander Koerner/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

米ベストセラー作家が語る、テック業界における人種差別

「多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています」。そう話すのは『So You Want to Talk About Race』の著者、イジェオマ・オルオ氏である。この本は、2018年1月の初版発行から2年半で、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストのペーパーバック・ノンフィクション部門でトップに躍り出た。「人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います」と同氏は続けた。

オルオ氏と私がOne Cup Coffeeで話をしたのは、世界的パンデミックが発生する直前の1月のことだ。教会と店先を共有するこのOne Cup Coffeeは、メタドンクリニックのすぐそばにあり、余分なサービスを提供せずに「単なる利益以上のもの」を追求するコーヒーショップである。このカフェは、ワシントン州シアトルのすぐ北に位置するショアラインにあるオルオ氏の自宅からほど近い場所にある。

「私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました」とオルオ氏は続ける。「私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。(インターネットは)対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がインターネットによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります」

私はシアトルの高級住宅地で、拡張を続けるAmazon(アマゾン)本社キャンパスについて調査してきた。同社のキャンパスは、建物の豪華さという点で、私が牧師として勤務するハーバード大学とMITの2つのキャンパスを凌駕している。その高級住宅地からショアラインまで車で移動するには、おそらく今まで見た中で一番大きなホームレスの野営地のすぐ近くを通らなければならなかった。私は、宗教がそれぞれ異なる学生たちで構成されるグループを率いて、ホームレスの大規模な野営地で勉強やボランティアを行ったことがある。

宗教と信仰についていえば、オルオ氏との90分間にわたる会話は、無神論者、不可知論者、および信仰心を持たずに善を行い有意義に生きようとする人たちによる半組織化された運動である「ヒューマニズム」への共通の関心をきっかけとして始まった(主な内容は以下に記載している)。私はハーバード大学とMITでヒューマニズムに基づく牧師として勤務しており、宗教に代わる一種の世俗的な選択肢としてヒューマニスト哲学について執筆している。

オルオ氏は、2018年にアメリカのヒューマニスト協会からフェミニストヒューマニズム賞を受賞した。同氏は、観衆のほとんどが自らを聡明で寛大だと考えがちな白人リベラル派という中で受賞スピーチを行った。彼らは黒いテーブルクロスの上の白い皿に盛りつけられた鶏の胸肉を食べながら、ロールパンとバターを忙しく回し、誤って水飲みグラスをカチンと鳴らしていたとき、同氏が「腰を下ろしてください」と言ってスピーチを始めてもうまく受け流していた。しかし、オルオ氏が「私が皆さんに求めるのは、他人がもたらす害をいつも探すことではなく、自分がもたらす害を探すことです」と話したとき、私の友人Ryan Bell(ライアン・ベル)が当時ツイートしたように、「そこは水を打ったように静まりかえった」。

ここで今年の1月に話を戻そう。コーヒーと紅茶を飲みながら、私はTechCrunchの「Ethicist in Residence(倫理学者・イン・レジデンス)」として1年余りにわたって執筆してきた論文についてオルオ氏に話した。その内容は、私たちが「テクノロジー」と呼ぶ世界はどの業界よりも大きく成長し、単一の文化よりも大きな影響力がある。テクノロジーは世俗的な宗教となった。おそらく人間がこれまでに作った最大かつ最も影響力のある宗教である、というものだ。

以下に続く内容からわかるように、オルオ氏は親切にもこのアイデアを大目に見て楽しんでくれたようだ。そしてとっさに、考えられるいくつかのテクノロジーと宗教の比較について話してくれた。このような話だ。

テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだ。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしている。

私は自分自身をこのテクノロジーという新しい宗教に対して不可知論者(必ずしも無神論者ではない)であると考えている。なぜなら伝統的信仰を見ようとしていた方法で(状況に応じて善と悪の両方を行えるものが入り混じったものとして)テクノロジーも見たいからである。しかし、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のような超億万長者の起業家がますます権力を強めるとき、ソーシャルメディアの誤った情報が民主主義の運命を左右する一方で人工知能が司法制度に介入するとき、そして現在のパンデミックによって私たちの生活がますますオンライン化するとき、私自身が「予言」と言っているものを見直さざるを得なくなるのではないかと思うことがある。注意を怠れば、テクノロジーは史上最も危険なカルトになるかもしれない。

以下のインタビューの前にもう少し詳しく状況を説明すると、オルオ氏と私はこの記事(原文)のタイトルを同氏の著書と同じタイトルである「So You Want to Talk About Race in Tech」にすることで合意した。同書はすでにヒットしていたが、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の死を受け、今では全米で象徴的な地位を獲得している。

この記事は、私がTechCrunchのために執筆してきた約1年におよぶシリーズの最終回であり、テクノロジーの倫理における人と課題について詳細に分析する。これまで編集者と私は文字数15万にもおよぶ38の記事を作成してきたが、そのほとんどが、期せずしてテクノロジーの新たな世界の倫理を改革し再考するための取り組みを主導している女性と有色人種を紹介したものだ。

このシリーズでは、Anand Giridharadas(アナンド・ギリダラダス)氏とのインタビュー「Silicon Valley’s inequality machine」、Taylor Lorenz(テイラー・ローレンツ)氏とのインタビュー「the ethics of internet culture」、James Williams(ジェームズ・ウィリアムズ)氏とのインタビュー「the adversarial persuasion machine」を取り上げている。とりわけ、ジェームズ氏とのインタビューは、同氏の前雇用主Googleによる取り組みを取り上げたもので、これは私たちをひどく混乱させた。

シリーズの特集では、CEOと投資家が幼少期のトラウマを話したうえで、自らが生み出したものの道徳的価値について議論する。また、従業員ギグワーカーが、権力を握る雇用主について痛ましい真実を語る。さらにテクノロジーフェミニズム交差性社会主義に関する知見に加えて、業界における虐待荒々しい入国管理政策に立ち向かう勇敢な取り組みについても深く踏み込んでいる。

それではオルオ氏とのインタビューを紹介しよう。前述のとおり、このインタビューは現在の危機が発生する数週間前に行われたものだが、その内容は今こそ重要なものとなっている。自称「億万長者」の投資家であり、オルオ氏と同じ週に会ったもう一人のシアトル在住者、Nick Hanauer(ニック・ハナウアー)氏の言葉を借りれば、不満の矛先がいよいよアメリカの富豪に向けられた。端的にいえば、この国で白人の仲間や私が人種や人種差別について話すのは、人種差別に対して敏感だからでなく、この世界を「より良い場所」にするために行えるすべてのことをやりたいからでもなく、どうしてもそうしなければならないからである。Kim Latrice Jones(キム・ラトリス・ジョーンズ)氏が今の時代を象徴する自身の拡散動画で言っているように、「幸いにも、黒人が求めているのは復讐ではなく平等である」。

テクノロジーの世界ではおそらくいっそう、そう言えるだろう。今のところ私たちの近隣やオフィスがすべて文字通り炎上しているわけではないかもしれない。しかし炎上する可能性があるテクノロジーの世界は、失うものが最も多いのだ。テクノロジーは、新型コロナウイルス感染症やそうした不満による影響も受けることはない。もし黒人が今後数年間のうちに、テクノロジー業界でさらに持続可能な形の平等を実現できなければ、復讐が次のゴールポストになるかもしれない。そして復讐は正当化され得るのだ。

しかし私は、そこに向かいたい人は誰もいないと信じている。かつてMalcolm X(マルコムX)氏は、Martin Luther King, Jr(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)氏がバーミンガムの刑務所に収監されていたとき、Coretta Scott King (コレッタ・スコット・キング)氏を訪ねて次のように言った

キング婦人、キング牧師に話してくれませんか… 私は彼の仕事をもっと困難にするために来たのではありません。白人が別の選択肢は何かを理解すれば、キング牧師の話に耳を傾けてくれると思うのです。

現在では、MLKはほぼ文字通りの公民権運動の神になっているが、それは当然のことである。しかし私たちはいつか、願わくばこれから長く平和な時代の中で、少なくともキング牧師に匹敵するほどの影響力とインスピレーションを持つイジェオマ・オルオ氏の人生と仕事を、同氏の幾人かの仲間(その多くが黒人女性)と併せて振り返ることができるかもしれない。

一部の読者は、オルオ氏が伝えることを心ならず受け入れる必要があるかもしれないが、同氏のビジョンは今後数年間の成り行きに関するさらに楽観的な選択肢であることを覚えておいていただきたい。

では、オルオ氏に話を聞いてみよう。

編集者注:このインタビューは読者の理解を助けるための編集がなされている。

Greg Epstein(グレッグ・エプスタイン):これまで仕事においてどの程度テクノロジー業界に関わってきましたか。特に著書『So You Want to Talk About Race』が出版されてからはいかがですか。

イジェオマ・オルオ氏:私はテクノロジー産業の中心都市、シアトルで育った黒人女性として本書を執筆しました。執筆活動をする前は、テクノロジー業界で10年以上働いていました。つまり私の本は、人種や人種差別を超越したと考えられていながら明らかにそうではない環境、さらに有色人種、特に有色人種の女性が極めて少数派である環境によって大きく形付けられています。

そのため、テクノロジーについて語っていないときでも、本書の中ではテクノロジー業界が大きな存在感を放っています。なぜならテクノロジー業界の多くの人が、本書で使われている例の中に自分自身や同僚がいることを認識したからです。

私が行った講演の中で最も再生回数が多かった動画の1つは、おそらくGoogleで行ったものでしょう。テクノロジー業界の多くの人、特にここシアトル在住の人は、「ああ、彼女はここに住んでいるんだ。これを読んでみよう。人種や人種差別についていえば、今年はこの本を読むことにしよう」というように、すぐにこの本を読みました。

しかし私はテクノロジー分野に足を踏み入れるとき、この分野をリベラル派の白人優位の分野と同じように考えます。つまり私がその分野においてできることは非常に限られています。私ができる最大限のことは、その業界にいる最も少数派の有色人種が感じ、経験していることを補強することです。なぜなら私は、他の講演者では経験し得ないほどの少数派としての人生を生きてきたからです。

[テクノロジーに関連する本というアイデア]についても同様です。なぜなら私は黒人女性として、作家として、もしソーシャルメディアがなかったら、ソーシャルメディアにアクセスできなかったら、今の私はいなかったからです。

一方で、[ソーシャルメディアがもたらす]代償と、まさに同じこのソーシャルメディアで、テクノロジーを通じて、大きな場ではないにせよ、特に有色人種、有色人種の女性、LGBTQコミュニティを憎み、差別し、虐待する場が提供される方法については、議論する必要があります。

多くの人がテクノロジーの分野における人種と人種差別について話すことの価値を過小評価しています。私は人種や人種差別について話すのに、テクノロジーほど重要な分野はないと思います。私はWeb上で、アメリカにおける人種と人種差別に関する最高と最悪を見てきました。私と私が愛する人たちは、Web上で実際に影響を受けてきました。Webは対面の空間と同じくらいリアルな空間です。私たちは、互いの見方や付き合い方がWebによってどのように影響を受けるか、そして不平等と不公正の問題にどう対処するかについて、必ず政治的、社会的に考えてみる必要があります。

エプスタイン:非常にうまくまとめてくれました。テクノロジーは最高でも最悪でもあります。と言うのは、私はBlack Twitter(黒人ユーザーで構成されているTwitter)から非常に多くのことを学び、大きな力をもらいました。それからWhite Supremacist Twitter(白人至上主義のTwitter)もあります。またWhite Supremacist Lite Twitter(白人至上主義のライト版Twitter)のようなものもありますね。

オルオ氏:[テクノロジーを]宗教のように見るという[エプスタン氏の]話は興味深いですね。テクノロジーと多くの宗教の根本的な共通点の1つは、少なくともアメリカでは、テクノロジーは白人男性が考えるユートピアであるということだと思います。テクノロジーにおいては特に、白人男性のユートピアビジョンに対するカルト的な支持があり、根本的に女性や有色人種の権限を奪い、脅かしています。

エプスタイン:そのイメージが気に入りました。私とブレインストーミングをしていただけませんか。 テクノロジー業界の文化で見られる白人男性のユートピアビジョンには、どのような特徴があるのでしょうか。

オルオ氏:ユートピアはテクノロジー業界の文化の中心にいる白人男性の戦いの神話化から始まります。この考えでは、こうした男性はゼロからモノを築き上げた落ちこぼれで、孤立した存在です。また、行く手を阻む問題を解決しようとします。これが彼らのサクセスストーリー、エリートコースの驀進です。では、彼らの行く手を阻むものは何でしょうか。有色人種、彼らとベッドを共にしない女性、自動的に手に入らない人気と富、白人男性が持つスキルを誰が持っているかという判断基準で新しい階級構造から白人男性を遠ざけている古い階級構造でしょうか。

こうした考えを中心に作られた神話は非常にカルト的で非常に宗教的であるように感じます。この起源を伝える物語の一部始終は真実ではありません。

テクノロジーにおける最も大きな進歩の誕生に目を向けるなら、過剰な多くの権限があること、ルールがあるという考え、純粋に優れたメリットもあること、物事を変革するこの分野において出世するために行えることが見えてきます。そしてテクノロジーの分野で「採用基準はコーディングの腕前です」と言っているのは、実はこうした人たちです。このような人よりもうまく議論することができるでしょうか。

テクノロジー業界でまず行うことは、白人男性を根本的に中心に据えることです。そして目標は白人男性の昇進です。有色人種はそれをサポートすることも、模倣することもできます。あるいは彼らが克服すべき障害になることもできます。テクノロジー業界では誰もが成功できるという議論があります。そう言う人たちは成功への境界線をすべて取り払いました。しかし実際は自分たちの個人的な境界線を動かしただけで、有色人種と女性の境界線はすべて残したままにしています。起源を伝えるこの物語では、有色人種と女性は道具として存在しているに過ぎないからです。

私が笑ってしまうのは、教義の中でテクノロジーと同じくらいよく語られるのは変化と適応であるということ、彼らが実際の変化、特にイデオロギー的な変化に対してどれほど徹底して閉鎖的かということ、室内を見渡して自分と同じような人がいないことをどれほど恐れるか、そして物事を徹底的に突き止めて、これはうまくいっただろうかと尋ねることをどれほど怖がっているかという点です。

現在テクノロジー業界の多くの人が革新的と呼んでいるものに、革新的なものはありません。そして「私たちは、2000年前のルールにまだ固執しているのか。変化と進歩をまだ恐れているのか」といった、人々が組織化された宗教に対して抱く多くの不満は、すでにテクノロジー業界でも見られています。そして[テクノロジーのリーダーが]「いえいえ。これは従来どおりの方法です」と言っているのを目にすると心配になり、この業界はどれほど新しいのだろうかと考えます。

それでは変化が入り込む余地はどこにあるのでしょうか。私たちは試作段階を続けながら、「これは従来どおりの方法です」と言っているのでしょうか。この20年~30年間は何だったのでしょう。おかしな話ですよね。

しかし、白人男性が[ここ20~30年間の現状を]擁護するときの情熱、また変化に対する脅威を語る様子は、宗教的な情熱、インターネットを立ち上げた同じ情熱があることを目にしてきました。宗教を超えた人々についてもそう言えます。

エプスタイン:テクノロジー業界における自身の仕事について、どの程度まで公に話したり書いたりしていますか。

オルオ氏:私は[テクノロジー業界での自分の経験については]あまり書きません。私の著書には、仕事についての逸話が多少含まれています。仕事について書くときは、テクノロジー業界について書いている可能性がありますが、具体的ではありません。

間違いなく言えることは、私はこれまでの人生で、テクノロジー業界で働いていたときほどセクシャルハラスメントを受けたことがないということです。テクノロジー業界にいたときほど、自分の人種について、そしてそれが自分のキャリアに役立つか妨げとなるかについて、あからさまな非難を受けたことはありません。私は「黒人だから昇進したと思っているのか」と面と向かって言われたことがあります。

私はテクノロジー業界にいたときほど部外者であると感じたことはありません。テクノロジー業界は、すべてを理解しているように見せかけるのが好きなので、ガスライティングがひどく横行している環境なのです。

私は人種や性別に厳しい職場で働いたことがあります。そうした職場において、習得する内容を知っていることは、明らかにいらだたせる行為です。私は自動車業界で働いていました。私はそこで習得したことを知っていました。しかしテクノロジー業界では、「いや。そんなことはここでは重要ではない。それはここでは問題ない」ということになります。そしてそれが間違いなく問題なのです。多くの人は、テクノロジー業界に入る人はすべてテクノロジー好きで、それが皆を1つにまとめると思っているのではないでしょうか。この大きな情熱が、性別もセクシャリティも人種も問題とはならないということを気付かせてくれると思っていないでしょうか。

それは絶対に間違っています。なぜなら、テクノロジーが陥る落とし穴は他のあらゆる企業や、実際のところアメリカの他のあらゆる団体が陥る落とし穴と同じだからです。つまり、真の多様性と人種間の平等は白人にとって痛みを伴うものではなく、まったく調整は生じないという考え、有色人種は白人とまったく同じものを必要とし、白人と同じものに価値を置くという考え、そして最後には、有色人種は何らかの点で白人は優れていると見なす、という考えに陥るのです。真の多様性、人種間の真の平等、男女平等において、この考えはどれも誤っています。

私たちはこの問題について話す必要があります。これは単なる作業環境の問題ではないからです。私は世界最大規模のテクノロジー企業やテクノロジー関連企業の数社と話をしたことがあります。そうした企業では、スタッフが実際に毎日オフィスに出社し、人種差別と性差別の問題を認めようとしない場で現実に向き合うだけでなく、人種差別と性差別の問題を再現するような形で、私たちが世界で互いにどのように関わり合うかを方向付ける製品を作っています。

何よりもまずオフィス内のスタッフの環境を整えなければ、提供する製品をうまく扱うことはできないでしょう。白人男性しかいない環境や、白人男性が多数派を占める環境を作ることはできません。また自分が持つ製品で偏見と悪意が再現されないと考えることもできません。

そして製品を作っているスタッフの作業環境に極度の脅迫、排除、悪意に対する苦悩があるのに、偏見と悪意を根絶すると考えられる製品を作ることはできません。どちらも一度に取り組まなければなりません。そして多くの場合、どちらか一方に取り組むと、うまくいかず失敗します。そしてテクノロジー業界でこうした問題に取り組んでいない結果、小さな作業スペースで仕事をしている人以外にも、多くの人を傷つけています。あらゆる人々を心底傷つけているのです。

エプスタイン:「あらゆる人々を心底傷つける」と言うのは、真の平等に対する責任が欠如しているということですか。

オルオ氏:そのとおりです。そして社会的弱者に対する尊重も欠如しているということです。「隣人が好きか」という観点からだけでなく、利益水準の観点から見る場合も同じです。

人種間の平等には、将来的に利益があると思いますか。人種間の平等に関する製品と目標を構築できると思いますか。有色人種は白人の顧客であると思っていますか。そうした顧客が製品に適応するのではなく、製品が顧客に適応すべきだと考えていますか。顧客の子どもたちや孫たちにも製品を使って欲しいと思いますか。歓迎されている、十分なサービスを受けていると顧客に感じてもらいたいですか。

もし私たちが資本主義に目を向けているなら、そして資本主義企業であるなら、私たちは資本主義とは無縁であるように振る舞うことはできません。これは重要な点です。

もっと言えば、資本主義と無関係のプラットフォームであればモノを販売することはないはずです。そんなことはでたらめです。すべては資本主義世界に属しています。資本主義は私たちが尊重している世界です。有色人種の声は重要だと思いますか。もしそうなら、ハラスメントや虐待の問題に取り組む方法が、白人男性の声を重視する場合とはまったく違ってきます。

エプスタイン:倫理に関するこのTechCrunchシリーズでインタビューしたすべての方に尋ねる最後の質問です。人類共通の未来の見通しについて、どれほど楽観的に考えていますか。

オルオ氏:見通しは変わっていません。心配しています。テクノロジーを利用している欧米の人々が、テクノロジーを使うことによって、実際に人と対面することも、人との深いつながりを形成することも、本当の同盟関係を構築しようとすることも、そして自分の未来、安心感と共同体意識、他者への帰属意識を結び付けることも不要ではないかと、いかに感じやすくなっているかについて懸念しています。

間違いなく言えることは、驚くほど欧米中心のテクノロジー観があるということです。私はナイジェリア系アメリカ人です。ナイジェリアでテクノロジーを利用する方法は、ここでの方法とはまったく違います。ナイジェリアでは、まず第1に実用性を重視します。またアフリカのビジネスをより円滑に運用するため、物理的インフラを奪ってきた植民地政策の遺産を取り払うため、そしてそのインフラをオンラインで構築してどこかで存在できるようにするために、人々が1つにまとまり直接集うことも重視します。

ナイジェリア人がインターネットを使い、離散を越えてつながっている様子を見るとき、インターネットに対するナイジェリア人の考え方は、インターネットの存在理由、その使用方法の点で欧米の考え方とは根本的に異なっています。そして私はそこから学ぶべきことは多くあると感じています。真の開拓がどこで行われているかを調べたいのであれば、中米、南米、アフリカ諸国、多くのアジア諸国でテクノロジーやインターネットがどのように使用されているかを見るとよいでしょう。有色人種のコミュニティが、「白人至上主義構造の制限下で私たちが抱える問題を解決するテクノロジーを構築するつもりだ」と言うとき、インターネットはどのようになるかについて考えてみてください。

個人よりも集団を尊重する社会で、インターネットを構築するときどのようになるかについて考えてください。その時インターネットはどうなっているでしょうか。ナイジェリアでは徹底的な独立が夢ではないので、独立はインターネットが構築される目的でも、目標でも、子どもや家族のために手に入れたいものでも、目指しているものでもありません。では社会構造が違うと、インターネットはどのようになるのでしょうか。私たちは自らを自力で引っ張り上げているのではなく、もしかしてコミュニティを引っ張り上げているのかもしれないと考える場合、プラットフォームを構築しているとしたら、インターネットはどのようになるでしょうか。すべてのプラットフォームはインターネットのために構築されるのでしょうか。インターネットこそが、テクノロジーでできることに希望を持ちたいと思う場所であり、私たちがいるべき場所なのです。

エプスタイン:すばらしい答えです。ありがとうございます。私は多くの優秀な方々にこの質問をしてきましたが、いろいろな意味でこの質問に対する最高の答えを受け取りました。

オルオ氏:ありがとうございます。

エプスタイン:お時間を頂きありがとうございました。TechCrunchを代表してお礼申し上げます。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

インタビュー:多様性促進のために企業が取るべきアクションとは

BLCK VCは2024年までに黒人のベンチャーキャピタリストを現在の2倍に増やすという目標の実現に取り組んでいる。その理由は説明するまでもない。パートナーレベルのベンチャーキャピタリストのうち黒人が占める割合はわずか2%にすぎない。黒人のパートナーが全くいないVC企業も全体の81%に上る。この数字を踏まえると、VCコミュニティの下に構築されたスタートアップエコシステムが、非常に多様性に欠けるものであるのも驚くにあたらない。

私たちは、Extra Crunch LiveのエピソードでBLCK VCの共同創業者兼共同議長のSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏と共に、現在進行中の抗議運動、VC業界の多様性や開放性に関する現状、また我々がテックエコシステムのあらゆる面でより非排他的になるための実践可能な洞察と戦略について話し合った。

これは非常に重要な会話であるため、我々はこのエピソードとQ&Aすべてを無料で公開することとした。

下記に、かわされた会話の中から重要な部分を文字起こしし、それに簡単な編集を加えたものをまとめた。また会話全体はYouTubeでご確認いただける。また、BLCK VCの「We Won’t Wait(私たちは待たない)」 アクションデーの動画もそこでご覧いただける。

現在テック企業に充溢するエネルギーが持続し、継続的な変化をもたらすことができるかどうかについて:

これらのテック企業すべてが「Black Lives Matter(黒人の命は重要である)」と言い、そして寄付をしているのをご存知だと思います。寄付をし声明を発表しても、企業のあり方は変わらない、というのが私の考えです。そのような方法では、業界のあり方を変えることはできません。ですから、そうした声明を聞くと、うんざりして悲観的になり、状況は今後も変わらないと感じてしまいます。私が本当に楽観な気分になれるのは、これらのテック企業の従業員、そして市民が「ただ Black Lives Matterというだけでは足りない。それを実現させなければ」と発言するのを聞く時です。

現在、ボトムアップの、本当の意味での草の根レベルで「今までのやり方で問題が解決しないのなら、現状を変える必要がある」という声が上がっています。私はこれらの企業は今後とも従業員や顧客の声に対応していく必要があると思います。ですから、私は今までにないほど楽観的です。そうは言っても、私は依然としてアメリカに暮らす1人の黒人女性ですし、今起こっていることが人種差別を是正するとは考えていません。しかし、将来的には事態が改善すると楽観的に考えています。今から1ヶ月前と1ヶ月後を比較して、どれだけ事態が改善されているかを知るには、もうしばらく待つ必要があります。でもどのような変化が起きるのだろうかと、わくわくしています。

企業の内側と外側から変化を引き出し促進することについて:

私が初めてベンチャーに興味をもったのは大学の後半でした。あらゆるVC企業の様々なページを閲覧しましたが、白人男性投資家の白黒写真ばかりでした。この業界に属し、黒人女性の投資家としてベンチャー企業で働くだけで変化をもたらし違いを生み出せると感じました。個人的には、行動を起こし変化をもたらすには、内側から働きかけるのが最良の方法だと感じました。しかしそれが誰にとっても正しい選択だとは思いません。また、有色人種たちが彼らが内側にいてこそこれらの業界や企業を変えられると考えているからといって、常に彼らに現状を変えるという重荷を背負わせ、不快な立場にいるようにすべきだとも思いません。ですから、そこはバランスだと思います。

一方で、過去にはボイコットが変化をもたらしたことがありました。これは完全な断絶です。不正なシステムから完全に離れることです。一方、企業には内部に従業員がいて、彼らがその環境内で変化を促進しています。

どのように変化を促進するかについて、正しい答えはないと思います。耳を傾けてもらえる立場にいて、意見があるならば、可能な限り最も強力な形で発信する必要があります。Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏の場合、辞任することで意見を伝えたわけですが、これは大変強力なやり方だと思います。内側から声を挙げるのも有効なやり方だと思います。しかし同時に、彼がずっと発言していたにもかかわらず何も変わらないのであれば、彼が辞任することでより強く意思を伝えることができます。おそらくそれも1つの方法です。内側から変化を起こす事ができないのなら、なぜいつまでもそこにとどまって時間を無駄にする必要があるでしょう?変化を推進できる別の場所へ行くべきではないでしょうか。

VC企業の多様性を示す数字をトラッキングする重要性について:

企業内の人々、既存のGPや投資家がどれほど問題が大きいかを認識するためには、数字をトラッキングすることが非常に重要です。書き出してみなければ、何が足りていないか、何が欠落しているかを認識する必要に迫られません。数年後企業がデータを書き出すようになるか、企業の従業員比が突然米国の人口比を反映したものになるか、多様性の価値を認識するか、と言われれば私は楽観視していません。しかし、雪だるま式に変化が起こる効果もあると思います。すぐには変化は起きないでしょうが、より多様性のある人材を社内またはネットワーク内に確保できていれば、あるいは最低でもどこにいるか把握できていれば、投資を行うとき、イベントを主催するとき、エコシステムを拡大するとき、多様性についてより考慮するようになります。

率直に言って、当社にコンタクトを取ってくる多くの企業は、制度化した人種差別を既にある程度認識し理解しています。彼らは暗黙の偏見を理解し、人材に欠落があることを理解しています。これらの企業が最も支援を必要としている人々や企業でないのは確かです。

しかし、当社と積極的に関与する意思のある企業と出会ったとき、あるいは多様性に欠ける企業や、雇用している投資家に人種的多様性のない企業と接触することになったときこそ、多様性がもたらす価値について話し合うチャンスです。多くの研究で、多様性があるほどビジネス、投資家、企業は優れた業績をあげており、彼らがその多様性を保持できれば企業はさらに業績を上げていけることがわかっています。このことは、繰り返し示されています。

ですから、自社のポートフォリオや投資家について、これ以上望めないほど優れていると思っていても、おそらくそれは正しくないでしょう。また、多様性を持つということは情報に基づいた視点を持つことである、という事実強調したいと思います。

自社の投資家、話をする周囲の人々、共に投資の決定を行う人々、これらの人々に多様性があるほど、視点にもその分の多様な情報がもたらされます。ですから、投資委員会に多様性がなければ、資金の投入について決定を下す際、視点が欠け、情報が不足します。

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)のトラッキングに関するベストプラクティスについて:
VC企業については、トップレベルの従業員をトラッキングすることをお勧めします。地位の高い従業員について、そのうちの何パーセントが少数派に属するバックグラウンドを持っているかや、性別、LGBTQなど、すべての種類のデータをトラッキングします。そして、シニオリティレベル、つまりアソシエイト、コントローラー、GPについてトラッキングすることもおすすめします。これらの人々のうち何人が、少数派に属しているでしょうか。そして、それに加えて、パイプラインをトラッキングすることも重要だと思います。採用候補者のうちどれくらいが少数派に属しているか、または異なる学校の出身であるか。これらの指標もやはりすべて重要です。パイプラインの不足している箇所を見出すことができるからです。イベントを主催する際、登壇者の顔ぶれはどんな感じでしょう?パネリスト全員が、あなたと同じ人種ということはないでしょうか?

また、起業家側としては、どれだけの費用を費やしたかを確認するのが非常に重要です。何人の少数派に属する創業者に投資したかよりも、彼らにいくら投資したかが重要です。

また最後に、これはやや掴みどころのない部分なのですが、投資する起業家をどこで見つけるかです。他の投資家から薦められた起業家でしょうか?電話やeメールであなたにコンタクトを取ってきた起業家でしょうか?様々なカレッジや大学へ行き、そこの学生を説明会に招待す予定はありますか?そこでもパイプラインのトラッキングを少なからずすることができ、これは非常に重要です。

伝統的に白人が大多数を占めるVC企業で黒人のパートナーの数を増やすことvs黒人のVCに自らの企業を起こすことを薦めることについて:

これには、2つのアプローチがあります。

1つ目は、白人が大多数を占める非常に大規模なこれらの企業が、ベンチャーキャピタルに分配される資産のうち極めて多くの部分を管理しているという考えです。年間800億ドル(約8兆6000億円)を超える資産の大部分は、上位10社からのものです。ですから、新しいファンドを立ち上げても、大手企業による投資額と同等にすることは非常に困難です。

また黒人が率いるこれらのVC企業が上位のGPに気兼ねせず、投資することが非常に重要だと思います。彼らは大変貴重な視点を持っています。どちらも必要なのです。

黒人の投資家は自らのファンドや企業を立ち上げ、また肌の色に関係なく、自らが信じる創業者に投資する必要があります。また私たちは最大規模のファンドを扱う人々に、彼らの行う大規模な富の創造と雇用の創出が、我が国の多様性と黒人の投資家の視点を反映した形で行われるようにしてもらうべきだと思います。

ソフトバンクa16zが行っているような、少数派の起業家への投資に特化した個別のファンドについて:

かつてよく「パイプラインの問題」という言葉を聞いたものです。今でもこの言葉を聞くことがあります。これは、過去によく使われた、黒人の人材が十分いないという意味の婉曲表現ですが、これは真実ではありません。パイプラインの問題は確かに存在しますが、それは企業側が多様性に富んだパイプラインを持たないために発生する問題です。企業が多様性に富んだパーソナルネットワークを持たず、またそうしたネットワークを築こうとしてこなかったことが原因です。彼らは投資をするにしても、話をするにしても、彼らの同種の人々を対象に選ぶ傾向があります。これこそがパイプラインの問題です。これらの企業がどのように変わるか、私にはわかりません。

先程ソフトバンクについて言及されましたね。現在、少数派の起業家への投資に特化したファンドがいくつかあります。黒人の創業者に資金が流れるのはどんな形であれ良いことだと思います。私は、少数派の創業者に投資するための個別のファンドの必要性が理解できないでいます。少数派に属する創業者へ投資した経験がない場合、個別のファンドがなんらかの変化をもたらすでしょうか?私にはわかりません。そこで、それについて調べ、なにが問題なのかを尋ねる必要があります。なぜ、あなたは少数派に属する創業者に投資してこなかったのでしょう?

投資に値する企業ではないからでしょうか?優秀な人材が十分に揃っていないからでしょうか?彼らの経験が十分でないからでしょうか?どれもが真実ではありません。私がお薦めするアプローチは、なによりも、パイプラインを変化させることです。パイプラインが上手く機能していなければ、機能するように変えて下さい。創業者に会いに行き、また、あなたとは異なる方法で少数派の企業に投資をしている投資家に会って下さい。このように行動している企業が実際に存在します。すぐにこのようにできないと感じる場合は、少数派に属するスカウトを連れてきて、投資のための資金を与えてはどうでしょう?企業に代わって投資し、それらの資金を実際に投入することができる、スカウトとして素晴らしい能力を発揮するであろう優れた黒人創業者、CEO、投資家、エンジェル投資家が大勢います。これで瞬時に状況が変わるでしょう。

自分にはできないと感じているなら、現在そうした活動を実践しているファンドに資金を投入してください。Precursor(プリカーサー)が良い例です。すばらしい多様性に富んだ人材を見出すことのできるファンドが他にもたくさんあります。Backstage Capita(バックステージキャピタル)もそうです。たくさんのファンドがあります。これらのうちのどれもできないという場合は、そうですね、それは、やってみようとしていないのだと思います

VCコミュニティに幻滅を感じている、あるいは締め出されていると感じている、志ある黒人投資家へのアドバイス:

諦めないで挑戦を続けて欲しいと思います。常に返事があるとは限りませんが、売り込みのeメールを送り、自分のネットワークの中に友達の友達といったつながりを見出すよう心がけ、ベンチャー企業の中にネットワークを築くよう努めます。大変だとは思いますが、挑戦を続けてください。また、起業家と協力し、その仕事がどのようなものかを学び、スキルの構築にどういったことが役立つかを学んでください。あなたの周囲に起業家がいたら、彼らと共にプロジェクトに取り組むにはどうしたらよいか尋ねたり、彼らにインタビューをしてください。現場を見学したり実際にインターンをする機会をあなたに提供してくれるアクセラレーターやインキュベーターは大勢います。 これは大変良いアプローチで、そちら側により多くの仕事があるはずです。

正直に言うと、ベンチャーの仕事の多くは投資銀行の担当者が扱います。これが唯一のアプローチではありませんが、投資銀行システムあるいはスタートアップエコシステムの中にいると、ベンチャー業界そのものよりもややアクセスしやすいベンチャーキャピタリストとつながりを持つのに役立ちます。大変な道のりですが、一番良い方法は、自分のネットワークを拡大し地に足を付け
積極的に取り組むことです。

この問題を認識し現状を変えたいと考えているが、日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスになってしまうことを恐れている企業について:

見せかけのパフォーマンスは問題です。

言っていることに行動が伴っていません。これがすべての問題です。行動が伴っているなら、それは見せかけのパフォーマンスではありません。あなたが自分の言っていること、ソーシャルメディアに投稿していること、語っていることを本当に信じているのなら、その行動は本物です。少数派を取り込む形で採用を始めること、これは日和見主義、あるいは単なる見せかけのパフォーマンスには見えません。見識のある啓蒙された行動に見えるでしょう。それは劇的な変化かもしれませんが、あなたがついにこの問題を理解したように見えるでしょう。私はどの企業も行動を起こすこと、特にネットワークを多様性に富んだものにすることに関して、恐れるべきではないと思います。

ここで問題となるのは、あなたが投資した資金やあなたの行った採用について、良いPRになるとか、慈善事業である、と考えるようになる場合です。大勢の黒人の起業家がいますが、彼らがあなたのポートフォリオを向上させてくれるから、という理由で彼らに投資をすべきです。彼らがきっとあなたにより条件の良い投資家を紹介してくれるからという理由や、彼らがあなたの資金をより良いものに改善する機会を与えてくれるからという理由。彼らがあなたのネットワークを広げ、問題について、別の視点から考える機会を提供してくれるから、という理由で黒人投資家の雇用に資金を投入すべきです。彼らは異なる視点、意見をもたらし、あなたにとって最も優れた投資家そして投資対象の一部となるでしょう。彼らを雇用したのに投資を行う権限を与えず、発言し意見を共有する機会を与えないのであれば、それは見せかけのパフォーマンスです。これでは現状を変化させる力にはなりません。見せかけのパフォーマンスでは、生活、人種差別、企業のあり方を変えることはできませんし、ポートフォリオや企業の改善につながりません。

過去数年で見られた前進について:

素晴らしい例の1つがElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏です。彼は私たちの創設したBLCK VCの取締役会の役員で、現在はBessemer(ベッセマー)のGPです。彼は意見は、黒人のVCコミュニティだけでなく、VCコミュニティで尊重されています。これは前進の印だと私は思います。彼は資金を動かす権限を持っています。

また白人の同志が取締役から降りて、黒人のアドバイザーが独立した取締役会のメンバーとなれるよう議席を空けるという動きがあるといいと思います。これは非常に重要です。これは継続していくべき重要な動きです。取締役会の議席というのは大変な影響力とリソースがあり、多様性を取り入れていくために非常に重要です。

また、私はテック企業につとめる白人従業員の同志からのサポートのうねりをみて興奮しています。彼らは「私たちはあなた方の方針を支持します。私たちは黒人の投資家や黒人の従業員を白人と同じ割合で昇進させない方針を支持しません。私たちは制度的人種差別を促進する動きをサポートする方針を支持しません」と声をあげてくれています。私はこれらは大きな力になると思います。本当に、この運動が今後どうなっていくのか興味があります。とても期待しています。現在緊張感が溢れ行動が起こされ、そして今までにない興奮が沸き起こっていると感じています。今後もこの運動を頑張って前進させていく必要があります。

Image Credits: Courtesy of Sydney Sykes

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タグ:差別 インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

VCを真に21世紀らしい姿へと導く方法

TechCrunchは過去の記事で、真に多様性のあるベンチャー業界を築くためには、VCに投資資本を出資するリミテッドパートナー(大学や病院などの機関)自体に多様性の義務を徹底する必要があるということに言及した。あるベンチャーファームがテキサス大学からの投資を確保したいとする。この場合、資本の一定割合を、女性や人種的マイノリティなどの過小評価グループによって設立されたスタートアップに投入するということに、あらかじめ書面にて同意を得ることが求められる。

機関投資の世界がいかに細分化されているかを考えると、この考えは非現実的に聞こえるかもしれない。しかし、シリコンバレーで少数派ながら増え続けている黒人VCの1人であるLo Toney(ロー・トニー)氏は、これが必然となる可能性は十分にあると提唱している。例えば、カリフォルニア州職員退職年金基金は160万人の職員の資産を管理しているが、この160万人の多くが「私のような見た目の人々」だとトニー氏は言う。こうした職員たちが、彼らの資産を誰が管理しているのか知ろうとするとどうなるだろうか。

トニー氏はこの進展をただ待っているわけではない。その必要がないのだ。Comcast Ventures、GVでパートナーを歴任したトニー氏は、ベンチャーチームへの資金提供とスタートアップへの直接投資を実施してきた自身の投資会社であるPlexo Capitalのアンカー投資家として、Alphabetを確保している。

そして、スタートアップ業界全体において有色人種が少ないという事実が新たに関心を集めている今、LPらは再びPlexoに関心を寄せ始めている。Plexoの2つ目のファンドでは、ファンドマネージャーをサポートするだけでなく、彼ら自身のベンチャーファームを形成する有色人種の投資家を支援することも計画に含まれている。

これはすでに行っている事業の延長線上にある。Ford Foundation、Intel、Cisco Systems、Royal Bank of Canada、HamptonUniversityなどから2018年に4250万ドル(約46億円)のデビューファンドを調達してクローズしたPlexoは、Precursor VenturesIngressive CapitalKindred VenturesEqual VenturesBoldstart VenturesWork-Benchなどすでに20のファンドに出資している。

出資先のほとんどが、完全または部分的に有色人種によって運営されているものだ。「ハーバードやマッキンゼーによる研究でも、すべてのレベルで多様性がいかに重要であるかが証明されています。多様な取締役会を持つ企業や多様な経営チームを持つ上場企業など、マネジメント層が多様な組織の方が優れたパフォーマンスを発揮しているのです」とトニー氏は説明する。

2つ目のファンドでは、さらに多様性を重視した方向へ進みたいと同氏は考えている。具体的に言うと、Plexoは「優れた投資家」を「優れたファンドマネージャー」に変える、「ある種のYコンビネーターの開発」を目指していると言う。

そのアイデアの一環は、マネージャーがマーケティング資料の準備をするのを手伝い、富裕層や機関などに戦略を売り込み、投資家の基盤が整った後にLPとのコミュニケーションを管理するという、Plexoがすでに臨時的に行っている作業を制度化することだ。そしてこの3点はPlexoが手助けすることのできるほんの一部であると同氏は言う。

Plexoはまた「ファンドを開始するためには平均して100万ドル(約1億7000万円)かかるという事実を前提に、若いGPの多くを運転資金の面で支援し、必要な費用を負担できるようするための戦略を検討している」という。これは、資金調達プロセス中の無給期間、旅費、サービスプロバイダー、GPが通常資金に投入しなければならない金額など、すべてを考慮した上でのことだ。

これは個々の企業に投資するよりも、この方法の方が物事を迅速に進めることができるだろうと考えるPlexoのビジネスモデルである。しかしこれはPlexo単体で実現できるものではない。Bessemer Venture PartnersのElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏、Storm VenturesのFrederik Groce(フレデリック・グロース)氏、小売スタートアップであるDolls KillのSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏など、黒人ベンチャー投資家を結び付け、前進させることを目的としたBLCK VCと呼ばれる若い組織を率いるPlexoの友人や協力者においても同様のことが言える。

トニー氏は特に大規模で後期ステージにあるベンチャーファームにいる少数の有色人種に関して懸念し続けている。スタートアップが成熟するにつれ、黒人の起業家をサポートするためのネットワークとノウハウを保有しているであろう投資家たちである。

これは当然の懸念である。デジタルメディアThe Informationの2018年の報告によると、運用資産2億5000万ドル(約270億円)以上のベンチャーファーム102社において、黒人の意思決定者はわずか7名しか存在せず、この数字は現在もほぼ変わっていない。女性の黒人投資家にとってはより深刻なものである。

この業界も時間の経過とともに徐々に、過小評価グループをより受け入れて行くことになるだろう。しかし、連邦政府の資金を得ている機関や公務員の資産を管理している機関がこの問題により注力することを決めれば、はるかに早く解決へと向かうはずだ。実際に、こういった機関の構成要素(年金基金拠出を通じての援助資金供与者や職員を含む)が最終的にはそれを主張するはずである。

「団体として資産クラス内で実際に変化をもたらすような力と影響力を実現している例はあまり見られません。私自身はいかなる取り組みにも参加していませんし、想像でしかありませんが、今後より多くの年金基金が明確な姿勢を示し、職員から発生するボトムアップによるシフトが訪れると思います」とトニー氏は言う。

ことが進むまでにはそれほど時間がかからないかもしれない。「例えば『黒人のパートナーは何人いますか?』『女性は何人?』『ポートフォリオの構成はどういったものですか?』など、単に質問するだけでも私たちの業界に圧力をかけることができるでしょう。」

「最初のステップとして、こういった質問をするだけでも状況を変えるよう影響を与えることができます。なぜなら、このような質問に答えるときには誰も悪者になりたくないからです」とトニー氏は語る。

関連記事:テック企業よ、今こそ黒人の命が本当に重要だと示すときだ

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タグ:差別 インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

テック企業よ、今こそ黒人の命が本当に重要だと示すときだ

編集部注:本稿を執筆したCatherine Bracy(キャサリン・ブレイシー)氏はTechEquity Collaborativeの共同創業者だ。

不当な黒人の殺害に対する抗議運動を受け、テック企業は人種的差別撤廃を求める団体に対し数千万ドルの支援を公約している。

こうした公約は、抗議運動の道徳的な重さを示す強力なメッセージとなり、このような団体が変化を推進する上で重要な支えとなるのは間違いない。ただ、テクノロジー業界をより公平な場所にするために自分のキャリアをささげている、バイレイシャルの黒人女性として、私はこうした公約の真意はどこにあるのかと皮肉な目で見てしまう。

4年前にTechEquity(テックエクイティ)を創設したとき、支援活動を通じてテックコミュニティに関与し、制度化された不平等を解決することを目指した。テクノロジー業界ではさまざまな機会が与えられるというより、不平等が促されていた部分があるのだ。テック業界で働く技術者たちがそれぞれの特権を使ってその目標を推進するという点では、想像を上回る成功を収めてきた。たとえば去年、彼らは自らの市民としての力を用いて、アメリカにおけるテナント保護を最大限拡張する法案を通すことができたのだ

だが、テック企業にさらに力を入れるよう説得することは容易ではない。ほとんどが傍観者にとどまることを選んだのだ。そうした例をいくつか挙げてみよう。

固定資産税の改正

TechEquity(テックエクイティ)では2年以上、法人が固定資産税の支払いを免れるカリフォルニア州税法の大きな抜け穴を失くすために連携してきた。この抜け穴によって、カリフォルニア州の学校制度と地方自治体は、過去40年間に渡って多額の資金不足に悩まされ、結果として公教育の質や社会事業が急激に落ち込み、黒人や有色人種のコミュニティが過度の影響を受けているのだ。また古くから存在している企業に税務上のメリットが与えられることで、テクノロジー業界などにおける先進的な新企業は不利な立場に置かれてしまっている。

この抜け穴をふさぐための住民投票を支持することは、テクノロジー業界にとっては非常に簡単なことに思えた。私はこれがなぜテクノロジー業界に関わる問題であるのか、その理由を明確にした論説まで書いた。だが現時点で支持を表明したテック企業は、Postmates(ポストメイツ)だけでなのである。

住居におけるうわべだけの約束

昨年、Google(グーグル)、 Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)は、合わせて45憶ドル(約4817憶円)をベイエリアの住居問題の解決に充てると大々的に発表した。細則を読むと、寄付のほとんどは、住宅建設区域に分類されていない土地であることが分かった。カリフォルニア州の住居について少し見識がある人なら、市街化調整区域法を変更することはもちろん、その法律で認められた土地に住居を建てることがどんなに大変かは知っている。都市計画法を変更する政治戦略に補完的な投資をしないのであれば、この多額の寄付のほとんどは実質的に意味がない。

しかし、自宅を追われ路上生活を強いられる人は後を絶たず、とりわけ黒人社会にその傾向が偏っている中、こうした企業は、住居問題を実際に解決するために必要な政治活動や権限の確立活動への投資には消極的だ。45憶ドル(約4817憶円)もの大金を必要としないというのに。Stripe(ストライプ)は、住居建設を支援する団体California YIMBY(カリフォルニアYIMBY)に100万ドル(約1億700万円)を寄付したが、これが住宅政策支援活動における唯一の財源となっているのだ。

ホームレス向けの住宅とサービスに対する継続可能な財政支援

2018年、サンフランシスコの有権者は、ホームレス向けのサービスと低価格の住宅のために、市内に拠点を置く高収益の企業の税金を上げる政策を承認した。先ほど話した固定資産税の抜け穴を作り出したものと同じ、難解な法律のため、裁判が結審するまで、市は収集したお金が使えない。これは最大で7年間かかる可能性がある。

その間、悪化し続けるホームレスの問題を解決するために、すでに支払済みの税金を市が使えるよう企業が許可を与えられるようになっている。Salesforce(セールスフォース)とPostmates(ポストメイツ)の2社は、市がその資金を活用できるように許可を与えているが、他の多くは後に続くことを選んでいない。

これらはいくつかの例に過ぎない。私はテック企業における慢性的な多様性の欠如や、この件について業界が本腰を入れて解決する気がない点についてはまだ触れてもいない。

提唱者が、不平等の問題において目立った変化を起こすことをテック企業に提案しても、大抵の場合は参加を拒否されてしまう。企業は政治に関与するのは適切でないためという理由で。ネガティブな注目を集めてしまうかもしれないことを恐れているのだ。企業はそのスタンスに異を唱える政策立案者や有権者を敵に回したくはないのである。関与しないことは簡単だ。

だが、黙っているのは共謀していることになる。私がこの5年間で学んだのは、テック企業が行うほとんどすべては、否が応でも政治がらみであるということだ。現実を直視し、その力を使って本当の人種的平等や経済的平等を支援するときだと思う。

テック企業はこんなことをしてみてはどうだろうか:

その地位を利用して衡平法を支援する

私たちは、平等を実現するための政策に対する支援を、テック業界で働く技術者たちが行動で示すことがどんなにパワフルなものかを目の当たりにした。テック企業は、十分な資金のないコミュニティの経済的弾力性を改善する法律への支持を公言し、それが可決されるかどうかに影響を及ぼすことができる。

支援活動の資金援助をする

変化の推進に尽力する組織の多くは、資金調達における制限によって支援活動を行うのが困難なため、思うように活動できていない。その点テック企業には、他の多くの制度化した慈善団体とは違って支援活動の金銭的支援を縛る法規制がない。テック企業は、金銭的支援を受ける者が、政策による権利擁護を通じて構造変革を進めるためにお金を使うようにできるし、またそうすべきだ。

重役レベルにおける多様性に重点を当ててみよう。テック企業を代表して意思決定を行う者は、重役室にいるわけだが、圧倒的に白人が多い。重役レベルに多様なバックグラウンドを持つ人を入れることで、さまざまな見方ができるようになり、平等問題でより有意義な取り組みが行えるようになる。また政治的な姿勢を取る企業の前提条件として、重役のバイイン(送り込み)があることが分かっている。

重役チームに多様性があれば、こうした問題について企業として取るべき態度を明確にできるようになるだろう。人種的平等に投資するためテック企業ができることについてはっきりさせるときがきている。そして企業がこれを行わない場合には、釈明の義務を持たせるときが来ているのである。

関連記事:ビデオゲームにおける人種的偏見に立ち向かう

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

ビデオゲームにおける人種的偏見に立ち向かう

黒人系アメリカ人に対する警察の暴力と系統的な人種差別に対する米国全域での抗議は、Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)、Epic Games(エピックゲームズ)、Sony Interactive Entertainment/PlayStation(ソニー・インタラクティブエンタテインメント/プレイステーション)などのゲーム会社が、サポート声明を発表し関連する擁護団体に寄付をするきっかけとなった。

これらは前向きな動きではあるものの、ゲーム会社ができる最も影響力ある取り組みは、内部で実際に行動を起こすということである。人種的偏見はゲームを開発する人々によって通常無意識的にゲームに組み込まれている。その結果、偏見に満ちた黒人やラテン系のキャラクターが繰り返し使用されたり、その逆にこれらの人種のキャラクターが全く存在しなかったりと、不健全で屈辱的な事態が起きている。

世界には25億人のゲーマーが存在し、このグループにはあらゆる人種と年齢の消費者が含まれている。特にモバイルゲームは最大の市場セグメントである。ニュースサイトのQuartzによると「米国における6歳から29歳までのビデオゲームプレーヤーの57%が、今後10年未満で有色人種になる」とのことだ。モバイルゲームとコンソールゲームの両方において、米国の黒人とラテン系の若者は白人の若者よりも平均して多くの時間をゲームに費やしている。同業界の急速な成長を特に牽引しているこのような層がいる中、世界中の数十億人のゲーマーのために用意されたゲームの中に、彼らのような人種が主要キャラクターとなっているゲームはほとんど用意されていない。これは、絶好のビジネスチャンスを逃しているということにもなる。

「こういった話は人々が思うほどニッチなものではありません。マーベル・スタジオ製作の映画、ブラックパンサーが良い例です」とBrass Lion Entertainment(ブラスライオン・エンターテイメント)の共同創設者兼最高クリエイティブ責任者のRashad Redic(ラシァド・レディック)氏は説明する。「コンテンツが面白いか否かのみが重要なのです。」

キャラクターの肌の色を超えて、ゲーム開発には不公平性や誤りにつながる微妙な側面がある。著者がこの記事のためにインタビューしたゲーム会社の幹部とリサーチャーにおける一貫した見解は、主要なゲーム会社の従業員の多様性の欠如であり、その結果、上層部がこの問題に対して無関心のままであるという点である。

こういった単純な批判の提起がいつも歓迎されるわけではない。例えばゲーム業界のジャーナリスト、Gita Jackson(ジータ・ジャクソン)氏はゲーム内のキャラクターの人種について言及するたびに彼女が受ける批判について説明している。「有色人種の女性キャラクターがゲームにもっと登場したら良いと思います。これは物議を醸す発言とみなされるべきではありませんし、私は自分が良いと思ったことを述べ、自分に関わることを発言しただけなのです。しかし読者は、私がまるで足の小指を切断するべきだと提案したかのような反応を見せるのです」。

キャラクターの描写

ゲームの人種的描写に関する最も広範な研究の1つとして、150の人気タイトルを分析した2009年の研究が挙げられる。全体における黒人のキャラクターは10.7%と、アメリカ人の12.3%が黒人であるという当時最新の国勢調査データとほぼ比例した結果に。一方でわずか2.7%がラテン系(米国の人口の12.5%に相当)となっていた。しかし南カリフォルニア大学の教授であり、この研究の筆頭著者でもあるDmitri Williams(ディミトリー・ウィリアムズ)氏によると、主人公だけを見ると黒人の描写率はさらに低くなり、いずれの場合も「黒人キャラクターが登場するのは、ほとんどの場合スポーツゲームのアスリートとしてである」とのことだ。

イリノイ大学シカゴ校の教授であるKishonna Gray(キショナ・グレイ)氏は、ゲームに登場する黒人キャラクターの数を追跡するだけでは、それらがどのように表現されているかという点を見落としていると強調。「歴史的に映画の世界では、黒人の登場人物は3つの役割を果たしてきました。暴力的な黒人、相棒としての黒人、助っ人としての黒人です。ビデオゲームの世界でも同様のことが起きています。」

さらに「スポーツゲームに関しては、現実の世界の実際の選手をそのまま登場させているだけなので、これらの分析から削除する必要がある」とグレイ氏。ほとんどのゲームスタジオにおいて、クリエイティブなプロセスから黒人キャラクターが誕生する確率がどれほどまでに低いかを示す統計が、スポーツゲームによって包み隠されていると述べている。

どのようなメディアにおいても、特定の人種が起用されることによってその人種に対する現実の世界での消費者の認識が大きな影響を受けることとなる。少なくとも1つの学術研究によると、白人の参加者らが黒人キャラクターとして暴力的なビデオゲームをプレイした後の方が、白人キャラクターとしてプレイした後よりも、黒人の顔を否定的な言葉に関連付ける可能性が高いことが分かっている。

ファンタジーの世界をゲームで体験するためには、白人キャラクターとして体験するしか選択肢がないとなると、こういったファンタジーの世界が有色人種のためにデザインされたものではないということが多くのゲーマーに内面化されてしまう。「ゲームの世界では何でも可能なのです」とグレイ氏は業界に対する彼女の情熱を込めて続ける。「しかし、何でも可能なのは白人のキャラクターのみで、黒人がゲームに追加されると、現実の内容に基づいたものにしかなりません…。黒人がドラゴンに乗ることができないのは何故なのでしょうか?」

ゲーム開発者の人種層

ゲーム内のさまざまな人種の存在比率がゲーム開発コミュニティの人種的構成と相関していることがデータによって明らかになっている。ウィリアムズ氏によると「ほぼ同じ割合になっています」とのことだ。

国際ゲーム開発者協会(IGDA)の2019年版年次調査によると、世界中のゲーム開発者の:

  • 81%が白人/ヨーロッパ系と認識している
  • 7%がヒスパニック/ラテン系と認識している
  • 2%が黒人/アフリカ系アメリカ人/アフリカ人/アフリカ系カリブ人と認識している

「人々は自身の経験からインスピレーションを得ています」とグレイ氏は説明する。「そのため描写に問題が生じるのです。」レディック氏はBethesda(ベセスダ・ソフトワークス)やCrytek(クライテック)などのトップゲーム会社での経験を含むキャリアの中で、同氏がほとんどの場合「企業にいる何百人ものゲーム開発者の中で唯一、または非常に少数の黒人」であったと伝えている。

非営利団体I Need Diverse Games(アイニードダイバースゲームズ)の創設者であるTanya DePass(ターニャ・デパス)氏は、コンテンツの多様性を改善したいと望む企業にとって「最も重要なことは職員の多様性、そして管理職レベルのリーダーたちの多様性」だと指摘する。さらに、ゲームスタジオの開発計画をレビューし、特定の民族グループを偏見的な見方で描いたコンテンツに対してフィードバックを提供できる外部の専門家を雇うことが賢明であると述べている。「発売の1か月前ではなく、始めからダイバーシティコンサルタントを雇い、それを真剣にとらえるべきです。」

「Pokémon GO」や「ハリー・ポッター:魔法同盟」を手がけるスタジオNiantic(ナイアンティック)は、コンサルタントを起用している唯一の企業である。同社のダイバーシティ&インクルージョン部門長のTrinidad Hermida(トリニダード・エルミダ)氏によると、同社はまた「ゲームのコンセプト、プリプロダクション、ポストプロダクション段階におけるダイバーシティ&インクルージョンチェック」も実施しているとのことだ。「このチェックではキャラクターデザインから、作品に取り組んでいる社内チームの多様性まで、あらゆる項目を網羅しています。弊社が発表するすべての新ゲームはこのプロセスを経なければなりません。」

善良な意図、遅い進歩

IGDAが2019年に実施した調査でも、ゲーム開発者の87%がゲームコンテンツの多様性は「非常に重要」または「やや重要」であると回答している。ゲーム開発者は抽象的な方法ではなく、実際に出来上がるゲームに直接的に多様性を反映させることができるため、描写の改善の観点からするとこの回答は前向きなものである。

ゲームコミュニティの人口構成が多様化するペースと比較すると、進歩のスピードは非常に遅れているものの、人気ゲーム全体における黒人やラテン系のキャラクターの数は確かに増加し続けている。これは、Moby Games(モビー・ゲームズ)が発表している2017年までの黒人キャラクターリストや、ウィキペディアにある黒人のビデオゲームキャラクターリストなどで確認することができる。

あらゆる見た目のアバターにカスタムできるというオプションをユーザーに提供することで、さまざまな人種のゲーマーに安心感を与え、ゲームに愛着を持ってもらえるようになる。このオプションはより一般的になってきているものの、黒人のアバターはそれでも限られている。例えば自然なヘアスタイルを選択できないことなどが挙げられる。デパス氏によると「ゲーマーが自分自身のアバターを作りたいと感じる場合もあるということをゲーム開発者たちは忘れがちです」。忘れていない場合でも、多様性に欠けた制作チームの性質のせいでありがちな過ちを犯すと言う。例えば「黒人のヘアスタイルの選択肢があったとしてもブレイズの間が5インチほどあいていたり、アフロヘアがたわしのようになっていたりと、最悪な見た目です。彼らは黒人に会った事や、黒人のヘアスタイルの写真を見た事がないのでしょうか?」とデパス氏。

ネットいじめ

ネットいじめはゲーム、特にMMOにおいて大きな問題となっている。女性や黒人、ラテン系ゲーマーが特にいじめの標的にされており、しばしば中傷的で人種差別的なジョークが用いられているという事実を、この問題に打ち勝つためにゲーム会社は認識すべきである。

開発者ができるわずかながらも重要なステップとして、他のユーザーに対して苦情をつける際の理由として人種差別的な行動であるという選択肢を選べるようにするべきだとグレイ氏は説明する。多くのゲームではすでに性差別に関する苦情を知らせる機能があるものの、人種差別に関する同様のオプションがないため、ゲームスタジオはプラットフォームで人種差別が発生する頻度について分からないままとなっている。問題に関するデータを収集することで、その問題をより詳細に測定し、それに対処するためのより効果的なアクションを実行できるようになる。

見過ごされた市場への取り組み

デパス氏が我々との通話中に述べたとおり「黒人のゲームクリエイターは少ないものの、黒人のゲーム購入者は大勢いる。」見過ごされがちなゲーマーコミュニティのセグメントを魅了するコンテンツの制作は、大きなビジネスチャンスと言えるだろう。

黒人やラテン系のキャラクターを中心とした物語のゲームを制作することが魅力的なビジネスチャンスにつながるのであれば、なぜそれがすでに採用されていないのか?HBOのドラマ「Insecure」のIPを利用してモバイルゲームを開発するGlow Up Games(グローアップゲームズ)のCEO、Mitu Khandaker(ミツ・カンダカー)氏によると、実績をもつゲーム会社のリーダーたちは「誰がゲーマーであり、誰がそうでないかという勝手な感覚を持っています。非常に古風な考え方です。」とのことだ。

同様に、このアイデアと共に起業家が自身のスタジオを創設しても、彼らの主要な資金源(パブリッシャーやベンチャーキャピタリスト)のチームが多様性に欠けた人種構成であるため、こういったゲームがニッチなものとして見なされてしまうとカンダカー氏は説明する。

その結果、黒人やラテン系ゲーマーに向けたゲーム制作に注力するゲーム開発者らは、AAAタイトルを開発するための資金や業界での信頼性が欠け、インディーゲームという領域に追いやられてしまう。

ゲーム業界に入り、業界で主導的な役割を担う黒人のソフトウェアエンジニアの人数は極端に少なく、これには多くの社会的原因がある。幼稚園から高校までの質の高いSTEM教育へのアクセスの欠如、歴史的黒人大学の学位を正しく評価しない雇用主白人らしい名前を持つ個人の方がはるかに多くの面接機会を与えられるという事実などが原因として挙げられる。

カンダカー氏は、黒人の起用やロールモデルの欠如は、ゲーム業界を目指している黒人エンジニアにとってこの分野を避ける原因となってしまい、また業界に入ったとしても不満を抱えてしまうことになると指摘する。

責任を持った行動

我々との最近の電話でウィリアムズ氏は、ゲームエグゼクティブ向けのDICEカンファレンスで、ゲームにおける人種的偏見についてパネルで話し合った際の事を話してくれた。「前セッションと私のパネルの間の数分間で、オーディエンスの約90%が席を立ちました」。

私がこの記事のためにインタビューした人々が繰り返し訴えた言葉は、問題は悪意を持ったゲームエグゼクティブではなく、多様性に関する問題を個人的に時間を割くべきものとしてとらえていない無関心さであるというものだ。カンファレンスでもそれ以外でも、多様性に関する議論は政治的正しさを目的としたトピックとして扱われることが多く、解決しなければならない差し迫ったビジネスの問題として扱われていないのが現状だ。

現在ニュースを賑わせている話題が、企業のこの姿勢や業界の流れを変えるための活性剤となっているのであれば、彼らが取るべき最も影響力のある行動は、PR的な行動ではなく、多様性を取り入れた製品開発に実際に取り組むという事である。

関連記事:VC業界のダイバーシティ推進は不況に負けてしまうのか

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

Image Credits: Igor Karimov / Unsplash

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(5)ーートンネルの出口に見える光

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トンネルの出口に見える光

大手テック企業が抱える問題はあまりにも根が深いが、スタートアップにはまだ望みがある。社員数がある一定数に達すると、根本的な変化を起こすことは難しい。しかし、創業初日から始めれば、首尾よく遂行できる可能性は十分にある。

パオ氏、クライン氏、Baker(ベイカー)氏、Tracy Chou(トレイシー・チョウ)氏が中心となって設立したプロジェクト・インクルードは、一度に数社と連携して、インクルーシブで包括的、かつ説明責任を果たせる方法でダイバーシティを推進する支援を提供している。

「より進歩的で成功を収める人が十分な数に達すれば、テック業界の本質が変わる可能性がある」とパオ氏は言う。

非営利団体であるプロジェクト・インクルードは、テック業界でダイバーシティとインクルージョンを実現しようとする人たちにとって頼りになる存在だ。このプロジェクトは小~中規模のスタートアップを対象としている。社員数にして25~1000人の規模だ。

「プロジェクト・インクルードを通して、本当に変わろうとしているスタートアップを何社か見てきたが、この新しい世代のスタートアップには、会社をインクルーシブにすることに全力を注いでいるCEOが何人もいると思う。彼らは、将来のことを真剣に考えていて、世界が変わりつつあり、従業員も本当に多種多様であることに気づいている。白人男性社員だけに目を向けていると、残りの4分の3の社員を失うこともわかっており、それが持続可能ではないこと、そのような状況を許せば自分が極めて不利な立場に置かれることを理解していると思う」とパオ氏は語る。

「Asana(アサナ)のDustin Moskovitz(ダスティン・モスコビツ)CEOやTwilio(トゥイリオ)のJeff Lawson(ジェフ・ローソン)CEOなど、ダイバーシティとインクルージョンを会社にとって必須の課題として扱おうとしている人たちを見ると安心する」とパオ氏は言う。

「彼らがこの問題に全力で時間とエネルギーを注いでいるのを見ると心強い。偏見のないインクルーシブな文化を持つ企業は業績も良好であることが数字にも表れている。変化は確かに起きている。ゼロから始める人たちは変わることができる」」とパオ氏は語る。

米国では今、白人多数の時代が終わりつつある。

ケイパー・クライン氏によると、「人口動態の変化は止まらない」という。

アメリカ国勢調査によると、米国では、2044年までには白人が全人口の半分を下回り、マイノリティーの合計が過半数を占める国になると思われる。

こうして人口動態がシフトしてクリティカルマスに達すれば、労働力の多様化は避けて通れない。

「クリティカルマスは社会科学では昔からある概念だが、最近その真実さを身にしみて感じるようになってきた。我々は皆、クリティカルマスを感じたことがある。自分と同じ意見を持つ人が部屋の中に誰もいない場合、自分ひとりだけで意見を言うことには不安を感じる。しかし、自分と同じ考えの人が(それが誰であれ)十分にいれば随分と楽に声を上げることができる、ということは誰もが理解できると思う」ケイパー・クライン氏は語る。

クリティカルマスは、人によって解釈が異なるが、おおむね10~30%の範囲だと思われる。これをテック業界に当てはめると、ダイバーシティとインクルージョンが自律的に実践されるようになるには、業界の30%が多様化している必要があるということになる。

「クリティカルマスに達すると、それが部門内のチームであれ、特に会社内あるいはエコシステム内のチームであれ、文化のシフトが急速に進む。そこに達成するまでの長い道のりを、一歩ずつ前に進んでいると信じたい。ときに希望に満ち、ときに失望させられることもあるが、クリティカルマスに至るまで確実に前進し続けたいと思う」とケイパー・クライン氏は語る。

目の前の課題

クリティカルマスへと歩みを進める一方で、緊急に取り組むべき課題もある。具体的には次のとおりだ。

  • 多様性を反映させたレプリゼンテーションとインクルージョンに関する明確な目標を設定し、それを実現するための包括的なアプローチを実施する
  • 有色人種および女性の創業者への出資を増やす
  • 従業員はテック企業による差別に対し、組織的な方法で非難の声を上げ続ける
  • 会社を超えて経営陣が協力し合う

極めて明解な課題だが、取り組むには意思、組織的な取り組み、実務的な努力が必要だ。

「簡単に実現できることはすべてやり切ってしまい、ここからはすべてが困難な作業になるのではないかと思う。なぜかというと、特定のプログラムを支援するとか、実習プログラムを用意するとか、パイプラインの対象とする人のタイプを増やすとかいう問題ではないからだ。これは、他人が提示する価値が自分の意向と一致しない場合もあることを理解できるよう従業員を変革するという、難しい仕事だからだ。ハードルを下げるとか、文化を保持したいとか、従業員が思い込みで発する言葉にじっくり耳を傾けて検討する必要がある。彼らは便秘でもしているかのように古いものにしがみついている。私には理解できない」とマイリー氏は語った。

(完)

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(4)ーー1歩進んで、2歩下がる

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1歩進んで、2歩下がる

テック業界におけるD&Iの問題は、多少改善されてきてはいるが、後退した部分もあることは否めない。改善された点として、人々は何が起きているのかをよく理解するようになり、進んで発言するようにもなった。また、人口動態から見たレプリゼンテーションという点でもいくらか進展はあった。

「こうした変化のペースは本当にゆっくりだが、性別、人種、民族性の点で改善が見られている組織があることは確かだ」とParadigm(パラダイム)のJoelle Emerson(ジョエル・エマーソン)CEOは言う。

「もう1つ変わったのは、ある種のニュアンスが会話に加味されるようになったことだ。単に前年と比較するのではなく、従業員のライフサイクルの段階ごとに明確な目標を設定する企業が増えている。こうした企業は、給与、採用、昇進、社員の感情について、より具体的な細かい質問をしている」とエマーソン氏は語る。

ここ数年、スラックやピンタレストなどのテック企業で、ダイバーシティ・インクルージョン関連の職に就いていたエマーソン氏は、こんなことは4年前には見られなかった、と話す。同氏によると、4年前は、エンゲージメント、帰属意識、意見の表明、リソースの利用などについて従業員が実際にどう感じているかを比較検討することはなかったという。

「今ここにいるのはどんな人間なのかという点ばかりに注目して、そこに至るまでの過程について考えることはなかった。社員の内面を見ていなかった」とエマーソン氏は語る。

「3つ目は、ダイバーシティとインクルージョンのニュアンスを加味した会話が行われるようになった点だ。注目すべきグループ、交差性、年齢、障害、経済状態などに関する会話が行われるようになった。非常に率直で遠慮のない会話さえ行われている。そうしたことの多くを推進しているのは、従業員アクティビズムだ」とエマーソン氏はいう。

Photo by AP Photo/Bebeto Matthews

従業員アクティビズムは、会社が間違った方向に歩を進めることでさらに活発化する。2019年11月、セクハラ疑惑で告発されていた2人の幹部に会社が1億500万ドル(約112億2000万円)を支払ったことに抗議するために2万人のグーグル社員がストライキを行った。社員たちは5つの要求を出したが、グーグルが対応したのはそのうち1つだけだった。

2019年2月、グーグルは、差別に関するいかなる事案についても社員に仲裁を強制することをやめるという決定を下した。これで厳密には社員側が勝利したのだが、この取り決めはグーグルの一時契約社員には適用されなかった。一方、グーグルは他の4つの要求には応じなかった。具体的には、給与や機会の不平等の撤廃の確約、セクシャルハラスメントに関する事実に即したレポートの公開、匿名で性的不品行を報告するためのプロセスの策定、ダイバーシティ最高責任者をCEO直属とすることの4つだ。

しかしその後、事態は悪化する一方だった。グーグルの社員は5月に再び決起せざを得なかった。今度は、社員が上司から受けたとされる職場報復に座り込みで抗議した。

2019年5月、ストライキを計画したために職場で報復を受けたとして2人のグーグル社員が会社を告訴した。グーグルのオープンリサーチ部門のリーダーでストライキ主催者の1人であるMeredith Whittaker(メレディス・ウィテカー)氏は、自分の役職が大きく変わったと話している。同じくストライキ主催者であるClaire Stapleton(クレア・ステープルトン)氏は上司から、降格処分と、部下を半分に減らすことを言い渡されたという。

当時、グーグルの広報担当者は次のように語った。

「グーグルは職場での報復を禁止し、明確なポリシーを公開する。申し立てられた苦情が無視されることのないよう、匿名で行う場合も含め、社員が懸念事項を会社に報告する経路を複数用意し、報復があったというすべての申し立てを調査する。」

その後、グーグルの社員はAlphabet(アルファベット)のLarry Page(ラリー・ペイジ)CEOの介入と、グーグル側が社員の要求に応じることを強く要請した。

しかしマイリー氏は、グーグルが当時からほとんど変わっていないことに驚いていない。社員の約20%がストライキに参加したが、もし50~60%の社員が参加していたらもっと強いインパクトがあっただろうとマイリー氏は考えている。

「ストライキとその目的には賛同する。社員たちが提示した問題と彼らの要求も支持する。ただ、やり方が間違っていたと思う」とマイリー氏はいう。

マイリー氏が言っているのは、ストライキ主催者がストライキの計画を事前に公表してしまったことだ。

「私だったら、ただストライキを決行し、会社に戻ってこちらの要求を突きつける。グーグルが正しいことをしたいと思っていると信じたいのだろうが、そうはいかない。グーグルも企業だ。企業は社員の力を制限する方法を知っている」とマイリー氏は語る。

ハラスメントが報告された後に社内で混乱が発生したのは何もグーグルだけではない。Riot Games(ライアットゲームズ)でも2019年5月に、やはりハラスメント問題をめぐって社員がストライキを起こしている

ハラスメントで問題なのは、残念なことだが、告発された側には、非を認めた後でも復帰する道があるという点だ。さらに、数百万ドルもの退職金が支払われることもある。こうしたことはすべてオールド・ボーイズ・クラブと関係している。

オールド・ボーイズ・クラブに属する多くの人たちは、自分が犯した過ちの報いを受けるということがほとんどない、とパオ氏は言う。Dave McClure(デイブ・マクルーア)氏は、後に自身でも認めた性的不品行の後、500 Startups(500スタートアップス)の経営から身を引いたものの、のちに新しいファンドの設立に向けて資金を集めている。本記事の執筆にあたりマクルーア氏にコメントを求めたが回答はなかった。

「我々は、こうした人たちが問題を起こしたコミュニティに復帰するのを許している。そのまま居続けるのを許すことさえあり、復帰するためにいったん身を引く必要すらない」とパオ氏はいう。

SoFi(ソーフィ)の前CEO、Mike Cagney(マイク・キャグニー)氏は、性的不祥事のために会社を追われたが、新たに会社を設立しようと動き始め、2018年にはそのために5000万ドル(約53億4000万円)を調達した。キャグニー氏は2019年初めに、さらに6500万ドル(約69億5000万円)を集めている。

「ハリウッドでMe Tooハッシュタグ問題が起き、ベンチャーキャピタルやテック企業でも同様の事件が起きたのに、ハラスメント事件は相変わらず後を絶たない。ハラスメント加害者は、被害者よりも簡単に窮地を脱してしまう。それが大きな問題だ」とケイパー・クライン氏はいう。

ケイパー・クライン氏は例として、Chris Sacca(クリス・サッカ)氏、Steve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏、Justin Caldbeck(ジャスティン・カルドベック)氏といった投資家の名前を挙げた。

「いくらでも白人の名前を挙げることができる」と同氏は言う。

ジャーベンソン氏とカルドベック氏は、本記事へのコメントを拒否した。サッカ氏にもコメントを求めたが回答はなかった。

このようなセクシャルハラスメント事件と、その後に加害者が復帰するという現状について考えると、人が本当に変化して名誉を回復することは可能なのか、という疑問にぶち当たる。最も大きな疑問は、こうした人たちがテック業界に残ることを許すべきなのか、それとも永久にブラックリストに載せるべきなのかという点だ。

「私は、人は変わることができると信じている。ただし、半年とか1年半で変わるとは思えない。彼らの新しい雇用契約にそうした条項が記載されたという話を聞いたことがない。ぜひそうすべきだと思う」とケイパー・クライン氏は語る。

2018年以降はっきりしてきたのは、労働者はもうだまっていないということだ。多くの労働者が、自分たちの力で会社は収益を出すことができるのだから、自分たちは会社に対して大きな影響力を行使できることに気づいている。ただし、本当の変化を起こすにはもっと組織的な取り組みが必要だとマイリー氏は指摘する。

「ごくわずかな人が握る並外れた影響力に対抗できるだけの組織的な構造、支持体制および機動力がなければ、変化は起こらないと思う。従業員が一致団結することが必要になるだろう。現行の体制から恩恵を受けている人たちが、それを変えようとするはずがないことは明らかなのだから」とマイリー氏は語る。

>>「最終部:トンネルの出口に見える光」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(3)ーー多様な人材に投資する

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多様な人材に投資する

テック業界全般でダイバーシティが欠如しているもう1つの原因として、レプリゼンテーションが不足している創業者に提供される資金の不足という問題がある。2018年、米国のベンチャーキャピタル資金のうち女性の創業者に提供されたのはわずか2.2%にすぎない。米国のVC企業の意思決定者のうち女性が占める割合は10%に満たないことは、何の説明にもならない。

「資金が不足しているだけではない。女性は扱いが異なることも問題なのだという点も指摘しておきたい」とWomen Who Tech(ウィメン・フー・テック)の創業者Allyson Kapin(アリソン・カピン)氏はTechCrunchに語っている。

カピン氏は、ウィメン・フー・テックが2017年に実施したアンケート調査で、嫌がらせを受けたと報告した44%の女性のうち、77%が創業者としてセクシャルハラスメントを経験したと答えた、という事実を指摘する。さらに、そのうちの65%が出資の見返りとして性的な誘いを受けたと回答したという。

「公平な競争の場は存在すらしていない。他の創業者は驚くほどの注目を集められるかもしれないが、女性創業者によるスタートアップは、さまざまな批判を受けるという点で障害に直面している。そして今は、まったく別次元の性差別、性的嫌がらせ、出資の見返りとしてのあからさまな性的誘いにも直面している」とカピン氏は言う。

残念なことに、黒人女性創業者にとって、現実はさらに厳しい。100万ドル(約1億734万円)を超える資金調達を達成した黒人女性の数は、増えているとはいえ依然として少ない。digitalundivided(デジタルアンディバイディッド)の新しいProjectDianeレポートによると、2015年に100万ドルを超える資金を集めた黒人女性はわずか12人だったという。ちなみに2017年は34人だった。

それでも、黒人女性が調達した資金の平均額は0ドルだと言える。なぜなら、黒人女性によって創業されたスタートアップの大半はまったく資金を調達できていないからだ。ファンドから調達した資金が100万ドル(約1億734万円)未満だった黒人女性の平均調達額は4万2000ドル(約450万円)である。デジタルアンディバイディッドによると、2009年に黒人女性が調達した出資額は、同年にテック企業が調達したベンチャー出資合計額のうち、わずか0.0006%にすぎなかった。

「黒人創業者はVCに見切りをつけ始めている。何度もトライし、頼み込み、丁重に出資をお願いしたのにVCは乗ってこない。私はまだやる気が残っていて、このような機関投資家やLPの扉を叩き続ける気持ちがあるが、まもなく彼らに見切りをつけるだろう。そうしたら彼らは天を仰いで『なぜこの投資話に入れてくれなかったんだ』などというのだろう。私は4年前も、『黒人も起業するんですよ』と叫んでいたが、今も同じことをすることになるだろう。もうたくさんだ」と、Backstage Capital Founding(バックステージ・キャピタル・ファンディング)のパートナーArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏はTechCrunchに語る。

(カリフォルニア州サンフランシスコ-2018年9月5日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disrupt SF 2018の初日に登壇したBackstage Capital(バックステージ・キャピタル)の創業者でマネージングパートナーのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏。(画像クレジット:Kimberly White/Getty Images for TechCrunch))

黒人創業者限定で出資するために設立されたバックステージ・キャピタルは、2016年末頃に500万ドル(約5億3000万円)の初回資金調達を完了した。ハミルトン氏は現在、有色人種への投資を続けるために3600万ドル(約38億5000万円)の第2回資金調達を完了しようとしている。同氏は有色人種への投資をあきらめたという報道もあったが、それは誤報だったようだ。

「資金の調達を止めたことは一度もない。止めようと考えたことも一度もない。今でも資金を募っている真っ最中だ。思ったよりも時間がかかっている。問題は、大海の一滴のようなわずかな資金を調達するのになぜこんなに時間がかかるのかという点だ。なぜ皆、あきらめてしまうのか。なぜ進歩しようとしないのか」とハミルトン氏は言う。

バックステージ・キャピタルは創業当時から、過小評価されている創業者が率いるスタートアップに投資してきた。その数は60社を超える。同氏を最初に駆り立てたのは、「ばかげた理由で見過ごされている人たちがいる。他の人が見過ごしているところにこそビジネスチャンスがある」という事実だった。

「何か破壊的な力がなくては、このようなやり方を続けていくことはできなかったと思う。そして実際に破壊が起きた。良い意味での破壊、いわば良き破壊だ。黒や茶色の肌の創業者や性的マイノリティーの人たちがこれまでの通例を覆したというニュースを毎日のように目にする」と同氏は言う。

ハミルトン氏は例として、自分の会社Partpic(パートピック)アマゾンに売却したJewel Burks(ジュエル・バークス)氏や、客観的に見ても非常に成功しているメディア企業Blavity(ブラビティ)の創業者Morgan DeBaun(モーガン・デボーン)氏などのサクセスストーリーを挙げる。

「まさに論より証拠で、こうした事例は私の直感が正しいこと、私の言ったことが現実になっていることを示している。ここ数年の出来事を見れば、私が今言っていることが今後もある程度は現実になると信じざるを得ないだろう」とハミルトン氏と語る。

ハミルトン氏は、バックステージ・キャピタルのポートフォリオの中から、今後18か月ほどの間に驚くべき収益を達成し、巨額の資金調達に成功する創業者が出てくるだろう、と予測する。機関投資家からの支援がなくても、ハミルトン氏が成功を大いに期待できる理由はたくさんある。

National Venture Capital Association(全米ベンチャーキャピタル協会)によると、黒人とラテン系の投資家は非常に少ない。VC企業の投資チームのメンバーのうち、黒人はわずか2%、ラテン系は1%にすぎない。

しかし、黒人や有色人種の女性が運営するファンドがいくつか登場している、とハミルトン氏は言う。また、GVでパートナーだったことがあるLo Toney(ロー・トニー)氏は最近、Plexo Capital(プレクソ・キャピタル)を介して多様な投資家に出資するために3500万ドル(約37億4000万円)を調達した

それでも、業界には多様なバックグランドを持つ人たちに必ず出資する投資家がまだまだ不足している。

「機関投資家(VC)がこの点で迅速に行動するとは思えない」とハミルトン氏は言う。

また、これには生まれつき持つ経済的特権も関わっている。民族間の貧富の格差は巨大で、それが起業を目指す有色人種の創業者に確実に影響を与えている。Institute for Policy Studies(政策研究所)によると、米国の白人中流世帯が持つ財産は、黒人中流世帯の41倍、ラテン系中流世帯の22倍にもなる。

白人の創業者は、創業初期に裕福な両親や祖父母から支援を受けることが可能だが、有色人種の創業者は同じ方法で親を当てにできるとは限らない。それでも、望みはある。米大統領選の民主党候補指名争いに名を連ねるElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員だ。ウォーレン氏は2019年6月、多様な人種の創業者を破綻させたとしてベンチャーキャピタルを非難し、有色人種の創業者を支援する計画を発表した。

この計画は、白人の創業者のように親や祖父母の財産を当てにできない有色人種の創業者に資金を提供するというものだ。

>>「第四部:1歩進んで、2歩下がる」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(2)ーー口先だけのリップサービス

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口先だけのリップサービス

Google(グーグル)が2014年、業界初のダイバーシティレポートを発表したとき、テック業界におけるダイバーシティ・インクルージョン戦略が勢いよく始まったが、それが実践をともなって定着することはなかった。現在、多くの人が、あの現象はリップサービスだったと考えている。話しはするが実行がともなわないからだ。

2014年のグーグルのレポートでは、同社の従業員に占める白人の割合は61.3%、男性は69.4%だった。記事執筆現在の割合は、白人54.4%、男性68.4%だ。数年たっても数字はほとんど変わっていない。FAANG(Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Netflix(ネットフリックス)、Google(グーグル))とA-PLUS(Airbnb(エアービーアンドビー)、Pinterest(ピンタレスト)、Lyft(リフト)、Uber(ウーバー)、Slack(スラック))の各社でも、テック系社員は依然として白人とアジア系が圧倒的多数を占めている。

フェイスブック全体の社員構成を見ると、少数派人種が占める割合はほとんど変わっていない。これに対し、フェイスブックのCDO(チーフ・ダイバーシティ・オフィサー)Maxine Williams(マクシン・ウィリアムズ)氏は、個々のグループ内では大きな変化があったと指摘する。例えば、この5年間で、黒人女性の数は25倍、黒人男性の数は10倍になっていると同氏はいう。

「大きな変化があった。ただ、望みどおりの十分な変化だったかといえば、決してそうではない。当社はD&Iの問題に本格的に取り組み始めた時期が遅く、慎重になりすぎて取り組みのスピードも遅かったことは私も認識している。当社は当時すでに創業9年で、数千人の社員が働いていた。この経験から学んだ最大の教訓は、取り組みを始めるのが遅くなるほど実行が難しくなるということだ」とウィリアムズ氏はいう。

これはテック業界全体に当てはまる。前述のテック企業の社員構成は多少改善されてきているものの、十分というにはほど遠い。

「ダイバーシティレポートがあることでテック企業がある程度の説明責任を意識するようになっていると思う。前回のレポートから後退すれば会社のイメージダウンになるからだ。それを避けるために、テック企業はダイバーシティに関する数字を社内で検討するようになる。その意味で、レポートは重要な役割を果たしている。しかし残念なのは、社内に目を向けるのではなく、マスコミの反応に目を向けて自社の戦略や課題吟味のかじ取りをしている点だ」とパオ氏は指摘する。

パオ氏によると、米国の人種構成を考えると、テック企業の人種構成は本来、黒人社員が13%、ラテン系社員が17%になるべきだという

パオ氏は、プロジェクト・インクルードでスタートアップを支援する際には「10-10-5-45」という構成を目標にするようアドバイスするという。最初の2つの数字は、黒人社員10%、ラテン系社員10%を目指すという意味だ。それを達成した後、最終的に黒人社員13%、ラテン系社員17%を目標とする。

「この目標に近い数字を達成している企業は存在しない。つまり、あるべき姿を実現しているスタートアップは存在せず、すべてのスタートアップはダイバーシティの問題を抱えているということだ」とパオ氏は指摘する。

アップルとアマゾンの数字は、小売店舗と倉庫の社員数も含まれているため実際より多くカウントされており、割り引いて考える必要がある(この点について両社にコメントを求めたが回答はなかった)。そうなると、黒人社員とラテン系社員の構成割合の最終目標に最も近いのはリフトだ。リフトのダイバーシティレポート2018年版によると、ラテン系社員が9%、黒人社員が10.2%となっている。

性別は男女どちらかの二択ではないので、少なくとも全社員の5%がノンバイナリーで、残りの45%を女性としてカウントする必要がある、とパオ氏はいう。

ダイバーシティに関するスキャンダルが次々に発覚しているという事実は、いくつかのことを証明している。1つは、レプリゼンテーション(自分が社会の構成員として認識されている状態や感覚)が依然として十分に得られていないということ。2つ目は、構造的な問題が残っており、そのためにインクルーシブではない職場環境が構築され、それがインポスター症候群を増やす原因となっているという点だ。このような構造的な問題の結果として、一貫性のない業績評価プロセス、不明確で恣意的な昇進、不正行為を報告するための不明瞭なプロセス、バックチャネリングとして知られる秘密の会話などが生じている。こうしたプライベートなバックチャネルによって排他的な環境が作られ、オープンで生産的な会話が阻害される。

このような状況で役に立つのがインクルージョンの取り組みだ。CEOの支持を得て行うのが理想的である。本当の意味でインクルージョンが実現されていなければ、ダイバーシティを目指すどんな取り組みも長続きしない。

「ダイバーシティを目指して多様な人材を採用したとしても、インクルージョンと文化の問題を是正しなければ何の進歩も遂げることはできない」とケイパー・クライン氏はいう。

一部の企業では無意識の偏見をなくすトレーニングを実施しているが、こうした活動だけで、偏見や不公正の発生率の減少や定着率の増加などの点で統計的に顕著な改善を実現することはできないとケイパー・クライン氏はいう。

(ミネソタ州デトロイト-5月5日:2015年5月5日にミシガン州デトロイトの Max Fischer Music Centerで開催された第17回Annual Ford Freedom Awardsでスピーチする、Lotus 1-2-3の開発者で受賞者のMitchell Kapor(ミッチェル・ケイパー)氏と、同氏の妻でCenter for Social Impact(センター・フォー・ソーシャル・インパクト)の創業者およびKapor Capital(ケイパー・キャピタル)のパートナーでもあるFreada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏。(画像クレジット: Monica Morgan/WireImage))

「最近増えてきた本格的な研究では、無意識の偏見をなくすトレーニング、とりわけ1回限りのトレーニングは、効果がないだけでなく、逆効果であることが指摘されている。そのようなトレーニングを受講した人は『トレーニング内容は理解した。無意識の偏見をなくす1時間のトレーニングを修了したから、これまで29年間毎日見聞きしてきた偏見を自分の中から取り除くことができたはずだ』と考える。何が非効果的かという点だけでなく、どんな反動が生じたり、何が逆効果になったりするのか、といった点も考慮する必要があると思う」とケイパー・クライン氏は語る。

理論上はここでダイバーシティとインクルージョン(D&I)責任者が登場する。しかし、このような役職がうまく機能できるような環境が組織内で必ずしも整えられているわけではなく、企業のリップサービスのための手段に終わることもある。

「D&I責任者としてCEO直下に配置され、他の幹部がダイバーシティとインクルージョンに関してひどい決定を下すのを阻止する権限を与えられて、本当に影響力のあるやり方でD&I責任者の職を全うできた人の話を聞いたことがない。D&I責任者は人事部または法務部の直属となることが多い。D&I責任者には強い権限はなく、チームも決裁権も与えられない。また、D&Iに取り組むよう社員を促したり、社員に説明責任を負わせたりするための基準もない。D&I責任者と呼ばれるこの奇妙な役職の大半はお飾りにすぎない」とパオ氏は指摘する。

例えばグーグルでは、今のダイバーシティ責任者は2016年から数えて3人目になるが、グーグルの文化にうんざりして率直にモノをいう社員が増えている。

ツイッター、グーグル、アップルで技術管理者を務めたことがあるLeslie Miley(レスリー・マイリー)氏は「ズバリ言おう。グーグルでD&I責任者を長く続けることは不可能だ」とTechCrunchに語った。

2019年4月にグーグルのチーフ・ダイバーシティ・オフィサーDanielle Brown(ダニエル・ブラウン)氏が辞職し、給与・福利厚生スタートアップのGusto(ガスト)に移った。グーグルは、2016年に辞職したNancy Lee(ナンシー・リー)氏の後任者としてブラウン氏を迎え入れた。当時、リー氏は退職するものと思われていたが、その後、電気スクータースタートアップLime(ライム)に最高人事責任者として入社した。「当時、本当に退職するかどうかは自分でも決めていなかった」とリー氏は話している。

「割に合わない仕事だよ。どの会社でもそうだと思う。ダニエル・ブラウン氏が良い例だ。十分に取り組んでいないと非難されたかと思うと、今度はやり過ぎだと非難される。人事と説明責任をめぐる争いに常にさらされる。性別、民族性、性的指向のぶつかる場所にいると、ほとんどの人は心底、不快な気分になる。精神的に消耗していく仕事なんだ」とマイリー氏は語る。

D&I責任者のもう1つの問題は、CEOの直属ではなく、人事部直属になることが多い点だ。人事部は、会社が負う法的責任を制限することがD&I責任者の役目だと考えている、とマイリー氏はいう。D&I責任者がそのような部門の直下で働くのであれば、社員の利益に資するような変化をもたらすのは困難だ。

現在、人事部で働くリー氏は、「人事部直属のダイバーシティ責任者が効果的に機能するかどうかは、人事部と他の経営陣との関係によって決まる」という。

「ただし、ダイバーシティが大きく欠如している会社では、CEO直属のD&I責任者が必要になるだろう」とリー氏は付け加える。

リフトのダイバーシティ・インクルージョン責任者に新しく任命されたMonica Poindexter(モニカ・ポインデクスター)氏は、人材・インクルージョン担当副社長の直属だが、リフトの共同創業者John Zimmer(ジョン・ジマー)氏とLogan Green(ローガン・グリーン)氏からも全面的なサポートが得られているという。ポインデクスター氏は、リフトや他のいくつかの企業によるダイバーシティとインクルージョン問題への取り組み方は正しいものだと確信してるが、各社がさまざまな異なる方法でこの問題に取り組もうとしているという事実には首をかしげる。

「1つか2つの優れた取り組みをテック業界全体で一斉に実行できれば、業界全体に大きな影響を及ぼすことができるだろう。テック企業の面接プロセスを改革し、採用プロセスを吟味するにはそのような取り組みが必要だ。そうすれば、多様な人種に対してより良い進路を創り出す方法と、それを実行するより的確なタイミングを見きわめることができる」とポインデクスター氏はTechCrunchに語った。

ここ数年の間にD&I責任者の団体が結成されたが、どれも長続きしていない。

「正直にいうと、D&I責任者を取り巻く環境は頻繁に変化する。ある時点でいくらかの推進力を得るかもしれないが、それもそのD&I責任者がどれだけのサポートを得られるかにかかっている。各社のD&I責任者が集まって互いに協力するというアイデアはすでに実行に移されている。しかし、本当に大きな影響を及ぼしたいなら、テック企業のトップが集まってこの難題について話し合うべきだ」とポインデクスター氏はいう。

ピンタレストのD&I責任者Candice Morgan(キャンディス・モーガン)氏は、すべてのテック企業の中でD&I部門の在職期間が最も長い人物の1人だ。同氏は、2016年1月から現職に就いている。「テック業界の在職期間としても、D&I部門の在職期間としてもかなり長いほうだろう」とモーガン氏はTechCrunchに語った。

「ここ3年間で、テック業界の中でもより広い範囲でいくつか大きな変化があり、当社のアプローチにも同じように大きな変化があった」とモーガン氏はいう。

2016年はピンタレストが最初に公式採用者数を設定した年であり、当時は採用活動に力を入れていた、とモーガン氏は語る。翌年、同社はインクルージョンにさらに注力し、インクルージョン専門職を採用した。また、従業員リソースグループの数も増やし、従業員エンゲージメントスコアに基づいてマネージャを評価するようになった。

「インクルーシブ(包含的)な考え方が特に強いマネージャに注目した。その一方で、インクルージョンに関して平均的なスコアを出しているマネージャにも目を向けた。そして、インクルーシブな考え方のマネージャが他のマネージャとどう違うのかを観察してみた。インクルーシブな考え方を持つマネージャは、成長へのポテンシャルに注目するマインドセットを持ち、どちらかといえば謙虚で、ためらいなくミスを認め、失敗を成長の機会と捉えていたことがわかった」とモーガン氏はいう。

この観察結果を基に、ピンタレストはインクルーシブ型マネジメントハンドブックを作成し、トレーニングを開発した。そして2017年には、無意識な偏見をなくすトレーニングを自社のオリエンテーションに組み込んだ。

一般に、D&I責任者は主体性に乏しいと言われるが、モーガン氏は他のD&I責任者に比べて強い影響力を持っているように見える。モーガン氏によると、それは彼女がピンタレストでの在職中に構築した人間関係のおかげだという。例えば、ピンタレストは2019年1月、同社のプラットフォームのビューティー関連検索に、よりインクルーシブな機能を追加した。公開時のピンタレストの説明によると、この機能は同社の技術チームとD&Iチームのコラボレーションの結果であるという。

「社員全員がD&Iの仕事に携わっている。「当社のD&I部門はさまざまな方法で影響力を獲得している。リーダーのコーチングを常に行っているので、彼らとの関係が構築できるようになると、まさにビジネスパートナーとして彼らに影響を与えることができる。インクルーシブなビューティー検索のスキントーン(肌の色合い)に関する仕事も、会合を重ねることが必要だった別の案件が発端になって実現したものだ」とモーガン氏はいう。

モーガン氏によると、今年はマイクロアグレッション、すなわち、排除されていると感じさせる何気ない言動に特に注目しているという。マイクロアグレッションは、黒人の髪型への言及から性差別的言語の使用まで多岐にわたる。また、ウーバーのエンジニアだったSusan Fowler Rigetti(スーザン・ファウラー・リゲッティ)氏がウーバーに関する彼女の投稿で指摘したように、展示会などで配布する景品を男性サイズでしか準備しないことも、マイクロアグレッションの一例だという。

モーガン氏はこのテーマに取り組む中で、「途中で阻止してマイクロアファメーションを作り出すことができる行為」を発見している。マイクロアファメーションとはちょっとしたインクルーシブな行為で、「励まされた、理解してもらえた」という感情を相手に与えるものだ。

「私はインクルージョン・プログラム・スペシャリストのクラスで教える際、マイクロアグレッションに注目し、何気ない行為が人の気持ちに与える影響に対する意識を高めることを心がけている。会社でも個人でも自画自賛する傾向があるが、実はそうすることで、誰かが微妙に疎外感を持ったり仲間意識を感じたりする。私はリーダーたちが集まってこのようなことを考える機会を作るのに多くの時間を費やしてきた」とモーガン氏は語る。

例えば、モーガン氏はピンタレストの技術部長および軽視されていると感じているエンジニアと話し合い、技術チームにおける帰属意識とはどのようなものかについて議論した。すべての上級エンジニアに、こうしたセッションを経験してもらっている、と同氏はいう。

もちろん、D&I責任者を設置することで効果が得られる場合もある。D&I責任者に変化をもたらす能力があり、なおかつ上級職(できればCEO)と直接協力できる場合は、最も高い効果が期待できるだろう。しかし、単独で変化をもたらすことができるD&Iイニシアチブは2つだけだとケイパー・クライン氏はいう。すなわち、ダイバーシティに関する具体的な目標を設定すること、および多様な人材の縁故紹介に対する特別ボーナスの支給だ。

「私が素晴らしいと思うのは、この2つのイシニアチブにはCEOのサポートと事情に通じた上級管理職のサポートが必要だということだ。どちらのイニシアチブも反感を買うのは必至だからだ。

どちらのイニシアチブも、成果を出すには問題のニュアンスを理解していて、エンジニアリング担当のCTOやVPが『ちょっと待ってくれ。それは逆差別だ』とか『フェアじゃない』とか言ってきたときに反論できる賢明な上級管理チームが必要である。公平な競争の場を作り上げることの意味について話をするには、ある程度の知識を備え、問題のニュアンスを理解しているCEOが必要だ」とケイパー・クライン氏はいう。

「どれだけいろいろな仕組みを用意周到に導入したとしても、トップの明確なコミットメントに代わるものはない。話し合いの席についた者は誰であれ、ビジネス上の問題について話すときはダイバーシティというレンズを通して物事を見る必要がある」とケイパー・クライン氏は続けた。

それでも、主要なイニシアチブを5つ導入すれば、大きな変化が生まれる可能性がある、とケイパー・クライン氏は言う。そのため、ケイパー・クライン氏は、10年以上前に自身が「Giving Notice」で初めて概説した包括的なアプローチを採用するようになった。

>>「第三部:多様な人材に投資する」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(1)ーー白人版オールド・ボーイズ・クラブ

INDEX

シリコンバレーでは、テック業界におけるダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包含性)を推進する活動が新たな局面を迎えている。Code2040(コード2040)のKarla Monterroso(カーラ・モンテローソ)CEOがTechCrunchに語ったところによると、この活動の支持者の中には、この局面を「初期段階の終わり」と呼んでいる人もいるという。

支持者たちは当初、テック系コンファレンスでダイバーシティの欠如を声高に非難することや、ダイバーシティ関連のデータを公開するよう企業に要求すること、また、パイプライン問題が偽りであることを暴くことに集中していた。その後、ダイバーシティ担当職の設置や無意識の偏見をなくすトレーニングの実施へと論点がシフトしていった(これについてはTechCrunchの「Diversityand inclusion playbook(未訳:ダイバーシティとインクルージョンに関する戦略)」を参照していただきたい。ただし、こうした戦略だけで結果が出るわけではないことは指摘しておきたい)。

「うわべだけを飾る段階は過ぎ、今は、説明責任、結果、昇進、定着率について議論すべきときだ。つまり、テック業界から反感や敵意を排除するためにどのアクションから実行すべきか、その優先順位を決めるべきときである」モンテローソ氏はいう。

ダイバーシティとインクルージョンを推進する動きは、ここ数年である程度の成果を上げてきたが、同時に著しく後退した部分もある。テック系社員は、自分たちが声を上げて組織的に何かに取り組むことが非常に大きな影響力を持つことを知っているが、セクシャルハラスメントや不適切な行為の加害者になっても相応の責任を取らされることはほとんどない。一方、有色人種や女性がベンチャーキャピタルから出資を受けられるケースは今でも非常に少なく、テック業界におけるダイバーシティとインクルージョンの推進は、まるで氷河のように、遅々として進んでいない。

Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)とKapor Center for Social Impact(ケイパー・センター・フォー・ソーシャル・インパクト)の共同創業者Freada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏は「現在の状態に至るまでの10年間で、大きく前進したこともあれば、少し遠回りしたり、後退したりした部分もある。ポジティブな方向に進んだかと思うと、必ずネガティブな方向への反動がある。同様に、非難の声を上げるようなときでも必ず、誰かが望みはあると唱える」とTechCrunchに語った。

テック業界におけるダイバーシティとインクルージョン(D&I)に関する問題についてはこれまで多くの記事が執筆されてきた。D&Iの問題を是正しようと数々の誠実な取り組みが行われているが、この問題が全面的に是正されることは決してないだろう。なぜならテック業界というのは、社会と、社会が抱える人種、性別、階層、能力、年齢、性的指向に関するすべての問題を反映する鏡だからだ。

だからといって、希望がないわけではない。テック業界の未来は、そこで日々働くテック系社員、新しくスタートアップを始める創業者や新鮮な視点を持つ投資家の手にかかっている。そして、痛切に思い知らされたのは、経営幹部がこの問題に真剣に取り組む以外に方法はないということだ。

トンネルの出口に見える光にたどり着くには、今日のような状況に至った経緯をテック業界が理解して受け入れる必要がある。そして、D&I責任者を置く、無意識な偏見をなくす単発のトレーニングを取り入れるといった一時的な方法がいかに非効率であるか、また、本来の目的を達成するには何が必要なのかを認識する必要がある。

白人版オールド・ボーイズ・クラブ

シリコンバレーは圧倒的に白人男性優位の世界であり、さまざまな背景を持つ人たちを歓迎することが本当に不得手な業界であることはよく知られている。このオールド・ボーイズ・クラブは、業界の初期の頃から有色人種や女性を不利な立場に置いてきたし、それは今でも変わっていない。

ダイバーシティとインクルージョンを求める現在の動きが始まったのは10年以上前だ。当時、テック系のコンファレンスやオールド・ボーイズ・クラブでも女性の発言権の弱さについて議論されることはあった。

現在はGlitch(グリッチ)のCEOで、当時はThinkUp(シンクアップ)の共同創業者だったAnil Dash(アニール・ダッシュ) 氏は、2007年に発表したエッセイ「The Old Boys Club is for Losers(仮訳:敗者たちのオールド・ボーイズ・クラブ)」で、テック業界で白人男性優位の現状を擁護している人たちは、実は失敗の文化を擁護している、と書いた。「自分のコミュニティ内のすべてのメンバーに手を差し伸べて平等な機会を与え、新しいアイデアや声に耳を傾ける人たちは、単に勝利するだけでなく、勝利し続ける。白人男性以外お断り、という文化を擁護して成功できるかもしれない。しかしそれは、自分自身をお払い箱にしてしまうことと同じだ」とダッシュ氏はいう。

2019年なら多くの人がダッシュ氏の考えを歓迎しただろう。だが、2007年当時のテック業界人の大半はダイバーシティについて今とはまったく異なる考えを持っていた。そのあまりの違いにダッシュ氏は、「記事を公開したらもうテック業界にはいられなくなると確信していた」とTechCrunchに語った。

「私には幸運にもプラットフォームがあり、自分の主張を発表できるだけの経歴もあった。しかし私は、あのエッセイで自分のキャリアが終わったと確信した。『もうどうでもいい、これで終わりだ。どうせサンフランシスコを離れるんだから、この業界に戻れなくてもかまわないさ』と思っていた。今考えると笑える話だ。シリコンバレーにはオールド・ボーイズ・クラブがあるんだと誰もが言ったと思う。それは非常に排他的なものであり、それこそまさに我々が取り組むべき問題だ」とダッシュ氏はいう。

ダッシュ氏は、上記のエッセイを投稿したときに自分がどこに座っていたかをはっきりと覚えているという。なぜなら、もう誰も自分が業界に戻ることを許してはくれないと思ったからだ。

「幸運にも、そうはならなかった。オーバートンの窓が興味深く有意義な方向に少しシフトしていたのだと思う。しかし、問題はそのままだった。問題について話せるようにはなったものの、問題を解決しているわけではなかった」とダッシュ氏は指摘する。

Project Include(プロジェクト・インクルード)の共同創業者でKleiner Perkins Caufield & Byer(クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤー)に対する訴訟で注目を浴びたEllen Pao(エレン・パオ)氏も、ダッシュ氏の言葉に同意する。2012年、パオ氏は、職場で性差別と報復があったとして、当時の雇用主を訴えた。2015年、陪審は、差別があったというパオ氏の主張を退けた。

「私が訴訟を起こした当時、まったく正気じゃないと言われ、嘘つきのような扱いを受けた。あの訴訟は、こうした差別が明るみに出た最初のケースだったので、人々もどう反応してよいかわからなかったのだと思う。今は、多くの人たちが自らの差別体験を語り、この問題に関心を持つよう呼び掛けているので、人々も差別が問題であることを認めるようになっている」とパオ氏はTechCrunchに話してくれた。

今と当時の違いは、問題に対する態度が「見ぬふりをしよう」ではなく「どうにかしよう」に変わったことだ、パオ氏はいう。

(マサチューセッツ州ボストン-12月10日:起業家、投資家で作家でもあるエレン・パオ氏が、2015年12月10日、マサチューセッツ州ボストンのBoston Convention & Exhibition Centerで開催されたMassachusetts Conference For Womenで登壇している。(画像クレジット:Marla Aufmuth/Getty Images for Massachusetts Conference for Women))

パオ氏はまた、「問題は、ほとんど何も対応策がとられなかったことだ。企業はこの問題を、会社イメージの低下とそれに対応するための広報戦略という観点で捉えている。経営上の死活問題だと考えてはいないため、大きな変化が生まれることはない。だから何度でも同じ問題が起きる」と語る。

Uber(ウーバー)では、エンジニアのSusan Fowler(スーザン・ファウラー)氏が同社のセクシャルハラスメント疑惑について同社に極めて不利な主張をした後、共同創業者のTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏がCEOの座を追われたが、パオ氏はこの件に関して、新しいCEO(Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏)に変わったところで大きな変化は望めないと考えている。

「前と同じようなひどい問題は起こらないとしても、ダイバーシティが同社で全面的に実践されているわけではない」とパオ氏は語った。

そしてTesla(テスラ)問題である。パオ氏はこの問題を「ごみ箱の火事」と呼んでいる。

2018年、テスラの黒人工場労働者が、同社のカリフォルニア州Fremont(フレモント)工場における人種的偏見と差別の文化について口を開いたのだ。

「やるべきことはまだ山ほどあると思う。人々の態度が変わったこと、差別の経験談に人々が反応するようになったことは確かに大きな変化だが、十分というにはほど遠い」とパオ氏はいう。

>>「第二部:口先だけのリップサービス」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

VC業界のダイバーシティ推進は不況に負けてしまうのか

ベンチャーキャピタル(VC)企業による投資パートナーの採用は、本質的に排他的なものである。投資家がパートナーとしてファンドに参加するには自分の資本を投資することが法律で定められており、その額は数十万ドルのこともあれば、数億ドルのこともある。つまり、シニアパートナーになるには通常、それなりの額の個人資産が必要ということだ。投資業界の男女比は極めて偏っており、シニア投資家の84.6%が男性だというデータがある。VC業界も投資業界と非常に似ていて、Harvard(ハーバード大)やStanford(スタンフォード大)などの有名大学を卒業した特権階級の出身者が圧倒的多数を占める。そして、図らずも彼らは皆、白人だ

ここ数年は、VC企業に入る女性や自らVCを立ち上げる女性が増えたため、男女比の偏りは改善してきた。女性起業家の支援団体All Raise(オール・レイズ)が2月に発表したデータによると、2019年に米国企業が新たに採用した女性のパートナーまたはジェネラルパートナーの数は52人だった。ちなみに前年度は38人だった。有色人種の採用も徐々に増えてきているが、まだ十分ではない、という声が多い。Equal Venture(イコール・ベンチャー)のパートナーであるRichard Kerby(リチャード・カービー)氏によると、VCパートナー総数に占める黒人の割合はわずか2%だという。

最近、数々のVCが投資見込み企業のダイバーシティを向上させようとBlack Lives Matter(ブラック・ライヴス・マター)運動に寄付したり他の方法で参加したりして、ダイバーシティを推進する動きが再び活発になっている。非黒人VCがダイバーシティを向上させるには、黒人パートナーを雇用する、あるいは黒人創業者に投資するなどの方法があることを訴える、「Make the hire. Send the wire.(もっと雇用を。もっと投資を。)」というフレーズが生まれ、スローガンとして広く使われるようになっている。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされる恐れがある経済不況のせいで、女性や黒人、過小評価されている他のグループのVC業界における地位向上を推進する動きが、ただでさえ遅々としていたのに、さらに鈍化する危険がある。ここ数年で遂げた進歩を台無しにせずにさらに発展させていくには、VC業界全体が意識的かつ意欲的に黒人の雇用を進めていく必要がある。

新世代VCが直面する新たな課題

設立して間もないVC企業は、ダイバーシティの面では名の通ったVCよりも進んでいる。VC企業に入るために「生涯資本家」である必要はない、とKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)に入ったばかりの投資家Monica Desai Weiss(モニカ・デサイ・ワイス)氏はいう。デサイ・ワイス氏のように前職がオペレーターでも、場合によってはジャーナリストでもVCパートナーになることは可能だ。

しかし、長引く不景気のせいで、ベンチャー業界は比較的新しいVCが数多く失われるリスクに直面している。有名VCとは異なり、新しいVCには知識や勘を裏付けできる数十年にわたる実績がない。また、機関投資家との関係も確立されていない。機関投資家は密な関係を築くが同じような背景を持つ者どうしで固まることが多い。つまり、多様性を持つ企業に投資するために設立されたVCをはじめ、ここ10年ほどの間に出現してきた、より優れたダイバーシティを持つ新世代のVCが、やっとの思いで参入したVC業界というエコシステムから消滅する危機に瀕しているのだ。

ボストンを拠点とするAccomplice(アコンプリス)の元パートナーであるChris Lynch(クリス・リンチ)氏は、景気が早い時期に持ち直さなければVC業界内の「権力交代」は進まないと懸念し、「新しいボスも前のボスと何も変わらないことになる」という。

ベンチャー投資家として何らかの形で投資先を現金化し優れた手腕を持つことを証明するには8年から10年かかるため、新しいVCは難しい状況に直面する、とリンチ氏は指摘する。もし市場が今より保守的になったら、リミテッドパートナー(LP)は実績のない新しいファンドよりも、名の知れた老舗ファンドに戻っていくからだ。

そのような投資家(年金基金、大学、同族経営事業などの資産を運用している場合が多く、どの投資家や企業が資金を調達できるかは彼らによって決まる)はすでに、現在の景気では新しいファンドマネージャーに出資する可能性は通常より低くなると警告している。初心者プレーヤーに運用を任せずに、老舗VCなど、確実なリターン実績を持つVCに運用を託すことで資産を守ろうとしているのである。

そのようなリミテッドパートナーにとって、今のところダイバーシティはそれほど喫緊の問題ではないかもしれない。その理由の1つは、筆者の同僚であるConnie Loizos(コニー・ロイゾス)が最近指摘したように、公的資金を運用するLPには、出資金のうち一定の割合を多様性のあるスタートアップに投資するよう出資先のベンチャーマネージャーに要請する法的義務が課されているためだ。

そのような法的義務がなければ、LPが経済不況の中で革新的に動くことはないのではないか、とアコンプリスの元パートナーであるリンチ氏は考えている。「LPが運用するのは、従来型の組織から委託された資産だ。これまでの出資ポートフォリオが体に染みついている。そして変化を嫌う」とリンチ氏は語る。

テック業界のCEOやVC企業向けの人材を長年ヘッドハンティングしてきたJon Holman(ジョン・ホルマン)氏も、もし不景気が長引けば、新興ベンチャー投資家は苦闘を強いられることになり、VC業界への社会経済的な影響が最低でも5年間は続いた2000年の不況のときと同じような状況になると懸念している。

2000年の不況時、リミテッドパートナー(機関、年金基金、大学、生命保険会社)は、VCは投資リターンが少な過ぎて運用先の選択肢にはならないと考えていた。そのため、運用資金はVCから引き揚げられて不動産や金相場などに再投資された、とホルマン氏は回顧する。

「その頃、設立したばかりで足場が固まっていないベンチャーファンドで、まだリターンを出したことがないとなれば、2回目の資金調達は不可能だった。ベンチャー資本家の人数が劇的に減少した」とホルマン氏は語る。

そのため、もし不景気あるいは不況が長引いて米国経済が打撃を受けたら、ベンチャー企業による雇用そのものが停止する可能性がある。停止して動かないということは、前に進むこともできないということだ。

「Sequoia(セコイア)が、Accel(アクセル)が、あるいはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が廃業することはない」とホルマン氏はいう。

最悪の場合、黒人や過小評価されている人材に確実に投資しつつ、自社の人材のダイバーシティ化も継続するという責任がすべて有名VCの肩に置かれてしまう。VC企業はこれを言い訳にすることはできない。仮に強者だけが生き残るのであれば、その強者こそが使命を確実に果たすことを決意すべきだ。

Human Utility(ヒューマン・ユーティリティ)の創業者兼エグセクティブディレクターであるTiffani Ashley Bell(ティファニ・アシュリ・ベル)氏は6月5日にMediumに投稿した「It’s Time We Dealt With White Supremacy in Tech(仮訳:今こそテック業界から白人至上主義をなくすとき)」と題する記事の中で、VCが黒人投資家をサポートするためのさまざまな方法を紹介している。

「もしあなたが経営するVC企業に黒人のパートナーがいないのなら、2022年までに最低でも1人の黒人パートナーを必ず採用することを決意するだろうか。もし決意しないのなら、それはなぜだろうか。黒人パートナーは、あなたの知らない場所や分野に眠っている投資チャンスを発掘してくることだろう。ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。VC企業に現在在籍しているパートナーは、白人であれアジア系であれ、はじめからずば抜けた運用能力を持っていただろうか、あるいはエグジットさせる能力をはじめから持っていただろうか。高い即戦力の有無は採用しない理由にはならない。もしあなたが非黒人投資家で、よりよい経営を続けていくことを決意しているのであれば、同僚たちにも説明責任を求めるだろうか。言うだけで行動がともなっていない同僚たちに、そのことを指摘できるだろうか。」

ベル氏はまた、黒人が経営するVCファンドのリミテッドパートナーになるよう投資家たちに勧めた。GVからスピンアウトしたPlexo Capital(プレクソ・キャピタル)は、多様な投資家が経営する企業とアーリーステージの創業者の両方に投資するハイブリッド型のVC企業として、この課題に取り組んでいる。

Cleo Capital(クレオ・キャピタル)の創立パートナーであるSarah Kunst(サラ・クンスト)氏は、「黒人の人材に投資することは、難しい問題でも、解決不能な問題でもない。ファンド側に、この問題を解決したいという意志が必要なだけだ」と指摘する。

「テック業界で黒人の人材を発掘し、雇用し、出資する方法は、他のグループの人材を発掘し、雇用し、出資する方法と何ら変わらない。そのグループに属する人たちと関係を築き、コミュニティの中でそれぞれの分野の第一人者を探し、そこから学んでいく。『このファンドには、これこれの分野の専門知識が足りない』と雇用担当チームと投資担当チームに話して、その足りない部分を埋めるだけだ」とクンスト氏は続けた。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ 

タグ:差別 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

グーグル社員が警察への同社技術の提供に抗議

TechCrunchの情報筋によると、テクノロジーを警察に売るなと要求するGoogle(グーグル)社員グループの人数が、1666名を超えてまだ増え続けている。

社員は、Alphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏に宛てた書簡で次のように主張している。「グーグルが警察への販売をまだ続けていること、そして警察との結びつきを何か進歩的なことのように広告して、警察との関係を断ってその力を弱めることを願っている多くの人びとの側につくことなく、むしろ販売の拡大を求めていることに失望している。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の首をヒザで抑えつけた者のいる機関がさらに強力な組織になることを、なぜ支援しなければならないのか?それだけではなく、グーグルがサクセスストーリーとして広告しているその同じクラークスタウンの警察は、Black Lives Matterの組織者たちを不法に監視して何度も訴えられている」。

例えばグーグルは、クラークスタウンの警察がG Suiteを使って情報とデジタルの証拠を共有していることをリリースで採り上げている。一方でグーグルはシアトルの警察財団に寄付をしたり(The Guardian記事)、同社のベンチャーキャピタル部門GVが警察が使用する人工知能技術を開発しているスタートアップに投資したりしている(The Intercept記事)。

一方、グーグルのスポークスパーソンはTechCrunchに次のように語っている。「私たちは、構造的な人種差別との戦いに変化をもたらす事業に力を入れており、弊社の社員は最近数週間だけでも500あまりのプロダクトの提案を行なっており、それを検討している。今回の件に関して、弊社は何年も前に大企業として初めて顔認識を商用利用には提供しないと決めている。また弊社のAI原則は、技術の監視への利用と販売を明確に禁止している。GmailやG Suite、そしてGoogle Cloud Platformのような一般的なコンピューティングプラットフォームに関しては長年の利用規約があり、今でも国や地方の行政機関に提供されており、その中には警察も含まれている」。

書簡で社員たちは、自分たちが働いている会社に誇りを持ちたいと語っている。そしてその気持ちにグーグルが応えることを望んでいる。

「米国全土に浸透している警察の人種差別主義の伝統は、奴隷制とジェノサイドから得られた富を守るために警察力が必要とされたことにその起源がある。人種差別の遺産を一掃する努力はまだ先が長いが、まずその第一歩として、私たちは人種差別的な取り締まりで利益を得ているビジネスをすべきではありません。私たちは、Black Lives Matterを唱和しながら黒人を犯罪者扱いするビジネスをすべきではありません。私たちは、私たちはグーグル社員は、私たちの技術の警察への提供を止めるよう呼びかける」と書簡にある。

グーグルが社員たちの圧力で契約を取り下げた例が過去にある。国防総省の軍用ドローン計画Project Mavenは、社員たちの請願によりグーグルが契約の更新を行わないことになった。そして2018年10月にグーグルは、国防総省の大規模なクラウドコンピューティング契約であるJEDIの入札から下りた(未訳記事)。

警察などの法執行機関と契約しているテクノロジー企業は、グーグルだけではない。例えば、Salesforce(セールスフォース)は社員などからの抗議にもかかわらず長年、税関・国境取締局と契約している(未訳記事)。

最近では、ポジティブな変化もある。2020年6月初めには、IBMが警察と監視社会のツールになっている顔認識技術を販売しないと発表したMicrosoft(マイクロソフト)も最近、国の規制がない現状では顔認識技術を警察に売らないと発表し、Amazon(アマゾン)は同社の顔認識技術の警察による利用を1年間停止した。これらは、警察が丸腰の黒人であるジョージ・フロイド氏を殺害したことへの、直接的な反応だった。

フロイド氏の死に関してピチャイ氏は、社員宛てのメール(Googleブログ)で「米国の黒人コミュニティが傷ついている。私たちの多くが、自分たちの信念のために立ち上がり、愛する人びとに連帯を示す方法を探している」と述べている。

彼はまた、グーグルが反人種差別団体に1200万ドル(約13億円)を寄付するやり方を述べている。その後ピチャイ氏は、社内的には、2025年までに管理職レベルのダイバーシティを30%アップするなど反人種差別に対する同社の取り組みを詳しく述べた(Googleブログ)。

「私たちは、グーグルに人種差別をなくすための実効的な手段を講じて欲しいと願っています。私たちの社会は、Black Lives Matterを唱えてれば十分だった時代を、過去のものにしてしまった。黒人の命が他と同等に重要であることを、私たちの思想と言葉と行動で示していく必要がある」と同社社員は記している。

関連記事:テック業界はジョージ・フロイドの死をどう受け止めたのか

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

グーグル社員が警察への同社技術の提供に抗議

TechCrunchの情報筋によると、テクノロジーを警察に売るなと要求するGoogle(グーグル)社員グループの人数が、1666名を超えてまだ増え続けている。

社員は、Alphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏に宛てた書簡で次のように主張している。「グーグルが警察への販売をまだ続けていること、そして警察との結びつきを何か進歩的なことのように広告して、警察との関係を断ってその力を弱めることを願っている多くの人びとの側につくことなく、むしろ販売の拡大を求めていることに失望している。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の首をヒザで抑えつけた者のいる機関がさらに強力な組織になることを、なぜ支援しなければならないのか?それだけではなく、グーグルがサクセスストーリーとして広告しているその同じクラークスタウンの警察は、Black Lives Matterの組織者たちを不法に監視して何度も訴えられている」。

例えばグーグルは、クラークスタウンの警察がG Suiteを使って情報とデジタルの証拠を共有していることをリリースで採り上げている。一方でグーグルはシアトルの警察財団に寄付をしたり(The Guardian記事)、同社のベンチャーキャピタル部門GVが警察が使用する人工知能技術を開発しているスタートアップに投資したりしている(The Intercept記事)。

一方、グーグルのスポークスパーソンはTechCrunchに次のように語っている。「私たちは、構造的な人種差別との戦いに変化をもたらす事業に力を入れており、弊社の社員は最近数週間だけでも500あまりのプロダクトの提案を行なっており、それを検討している。今回の件に関して、弊社は何年も前に大企業として初めて顔認識を商用利用には提供しないと決めている。また弊社のAI原則は、技術の監視への利用と販売を明確に禁止している。GmailやG Suite、そしてGoogle Cloud Platformのような一般的なコンピューティングプラットフォームに関しては長年の利用規約があり、今でも国や地方の行政機関に提供されており、その中には警察も含まれている」。

書簡で社員たちは、自分たちが働いている会社に誇りを持ちたいと語っている。そしてその気持ちにグーグルが応えることを望んでいる。

「米国全土に浸透している警察の人種差別主義の伝統は、奴隷制とジェノサイドから得られた富を守るために警察力が必要とされたことにその起源がある。人種差別の遺産を一掃する努力はまだ先が長いが、まずその第一歩として、私たちは人種差別的な取り締まりで利益を得ているビジネスをすべきではありません。私たちは、Black Lives Matterを唱和しながら黒人を犯罪者扱いするビジネスをすべきではありません。私たちは、私たちはグーグル社員は、私たちの技術の警察への提供を止めるよう呼びかける」と書簡にある。

グーグルが社員たちの圧力で契約を取り下げた例が過去にある。国防総省の軍用ドローン計画Project Mavenは、社員たちの請願によりグーグルが契約の更新を行わないことになった。そして2018年10月にグーグルは、国防総省の大規模なクラウドコンピューティング契約であるJEDIの入札から下りた(未訳記事)。

警察などの法執行機関と契約しているテクノロジー企業は、グーグルだけではない。例えば、Salesforce(セールスフォース)は社員などからの抗議にもかかわらず長年、税関・国境取締局と契約している(未訳記事)。

最近では、ポジティブな変化もある。2020年6月初めには、IBMが警察と監視社会のツールになっている顔認識技術を販売しないと発表したMicrosoft(マイクロソフト)も最近、国の規制がない現状では顔認識技術を警察に売らないと発表し、Amazon(アマゾン)は同社の顔認識技術の警察による利用を1年間停止した。これらは、警察が丸腰の黒人であるジョージ・フロイド氏を殺害したことへの、直接的な反応だった。

フロイド氏の死に関してピチャイ氏は、社員宛てのメール(Googleブログ)で「米国の黒人コミュニティが傷ついている。私たちの多くが、自分たちの信念のために立ち上がり、愛する人びとに連帯を示す方法を探している」と述べている。

彼はまた、グーグルが反人種差別団体に1200万ドル(約13億円)を寄付するやり方を述べている。その後ピチャイ氏は、社内的には、2025年までに管理職レベルのダイバーシティを30%アップするなど反人種差別に対する同社の取り組みを詳しく述べた(Googleブログ)。

「私たちは、グーグルに人種差別をなくすための実効的な手段を講じて欲しいと願っています。私たちの社会は、Black Lives Matterを唱えてれば十分だった時代を、過去のものにしてしまった。黒人の命が他と同等に重要であることを、私たちの思想と言葉と行動で示していく必要がある」と同社社員は記している。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

テスラが奴隷解放記念日に無給休暇を取得可能と社員に通知

米国時間6月19日金曜日午後8時のわずか前、Tesla(テスラ)の人事部門は米国の従業員にメールを送り、米国で奴隷制度が終了した記念日である6月19日を祝うために休暇を取得できることを伝えた。

そのすぐ後、人事担当責任者のValerie Capers Workman(バレリー・ケーパーズ・ワークマン)氏は、その日に休暇を取った社員は無休扱いになると明言したことがTechCrunchが見たメールでわかった。CNBCが今朝のメールを最初に報じた。そのメールは西海岸の社員の始業時間に送られた。ニューヨーク州バッファロー工場など、その他の時間帯で働く人びとにとって、メールは大きく就業時間に食い込んでから届いた。

テスラはコメント要求に答えていない。

祝日当日というメールのタイミングに批判が集まった。6月19日に計画されていた同社のカリフォルニア州フリーモント工場のデモへの影響も問題となった。同工場では1万人以上が働いている。

その日の午前中に、おそらく批判への回答として、Tesla CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、今後TeslaとSpaceX(スペースX)では6月19日を国民の祝日として扱うとツイートした。

その後のツイートでMusk氏は、社員はPTO(有給休暇)を取得する必要があることを確認した。社員は勤続年数と職位に応じて年間決められた日数の有給休暇を与えられる。メディアに話す了解を得ていないという理由で匿名を希望した社員数名は、新型コロナウイルスのパンデミック期間中、予防のために有給休暇を使い果たしたとTechCrunchに語った。

Juneteenth(ジューンティーンス)は1865年6月19日、南軍将軍ロバート・E・リーがバージニアで降伏してから2カ月後、テキサス州ガルベストンの奴隷たちが、ある北軍将軍が当地を訪れたときに自分たちの自由を知ったことの記念日である。エイブラハム・リンカーン大統領が奴隷解放宣言に署名してから2年以上後のことだった。

今年、警察の暴力と黒人に対する構造的人種差別に対する全国的な抗議活動を受け、Square(スクエア)、Twitter(ツイッター)を始めとする多くのテック企業がジュンティーンスを認め、有給休暇として扱う計画を発表した。他の企業もそれぞれの方法でこの日の認知を表明した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テック業界はジョージ・フロイドの死をどう受け止めたのか

ミネソタ州ミネアポリスで丸腰の黒人男性George Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警察による残忍な仕打ちによって殺された事件は、現代史の中でも最大規模のデモ活動へと発展した。フロイド氏が死亡してからこれまで数週間、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)に関する議論や、テック業界が白人至上主義擁護の一端を担ってきた実態に関する議論が再発し、大きな注目を集めている。

しかし、大切なのは言葉ではなく、行動である。テック業界を真の意味で変えるには行動あるのみだ。そうでなければ、テック業界の企業や経営者によって表明された幾百もの声明は何の意味も持たなくなる。これから数週間、数か月、あるいは数年後に社会の注目が別のものに移ったら、今発せられている言葉は忘れ去られることだろう。だからこそ、テック業界はフロイド氏の痛ましい死を統計の中に埋没させるのではなく、テック業界において人種構成のシフト、ひいては力関係のシフトを実現するための推進力とすることが重要だ。

この悲劇をうけて、多くのテック企業やその経営者たちが人種差別に抗議する声明を発表した。例えば、LinkedIn(リンクトイン)は「私たちの同僚と黒人コミュニティを支持する」、Salesforce(セールスフォース)は「私たちは黒人コミュニティと共に人種差別、暴力、憎しみと戦う」といったコメントを発表している。Facebook(フェイスブック)も「変化を起こす責任は私たちすべてにある」とコメントしたが、同社は実際には、デモ鎮圧のために派遣された米税関国境警備局と契約していたり、ドナルド・トランプ大統領が暴力をあおる投稿をしてもそれを放置したりと、社員が人種差別を擁護する環境を助長している。これらは数多くの声明のうちの一部にすぎないが、どれにも共通しているのが「自分も共犯だという罪悪感」だ。

リンクトインのRyan Roslansky(ライアン・ロスランスキー)CEOは前述のコメントを発表した後、社員との対話集会の際に、人種差別を擁護する社員が参加する中で次のように語った。

「私たちが愛し、高い基準を守ろうと努力しているこの会社でも、本当の意味で人種差別のない文化を創るには、自分自身も同僚たちも努力すべきことがまだたくさんあるという現実を認めることが最も難しいと感じた人が多いと思う。しかし、私たちはそれを必ず成し遂げる」(ロスランスキー氏)。

共犯感情とは別に、多様性、包括性、平等性の領域で長年問題視されてきたのは、口先だけで行動が伴わないリップサービスだ。考えてみてほしい。テック企業の経営者たちは以前にも、丸腰の黒人が警察によって殺された事件について声明を出したことがある。それでも、テック業界の従業員数に占める黒人および有色人種の割合は相変わらず低いし、人々をインターネット上での人種差別その他のハラスメントから守るためのポリシー策定状況もほとんど変化していない。

例えば、Thumbtack(サムタック)は、同社が黒人たちの声に寄り添いD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)プログラムを成功させるために投資する意向であることを説明した記事の中で、ダイバーシティ&インクルージョン推進担当者を新たに雇用することを発表した。というのも、同社はつい最近、ダイバーシティ&インクルージョン推進担当者を4年間務めたAlex Lahmeyer(アレックス・ラーマイヤー)氏を4月に解雇したばかりだったからだ。ラーマイヤー氏のLinkedInによると、同氏は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で250人のチームメイトとともに解雇されたという

ラーマイヤー氏はLinkedInへの投稿の中で、「驚きはしなかったが、サムタックがDEI(ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包括性)・エクイティ(平等性))プログラムをPR戦略として使っていただけで、この部署をまるで重荷であるかのように切り捨てたことに腹が立った。確かに、財政的に困難な状況に直面している会社もあるが、過小評価されている従業員に注意を向けてその声を聴く部署を廃止するのにこれ以上悪いタイミングはなかったと思う」と書いた。

サムタックはTechCrunchに対し、「ビジネスが新型コロナウイルスの影響から持ち直した」、そして現在はもっぱら新しいDEI推進担当者の求人を行っている、と回答した。

サムタックの広報担当者によると、「当社はDEI推進担当者の採用を最優先にすることで、より優れた多様性、平等性、包括性を備えたチームを築きたいと考えている」とのことだ。

ラーマイヤー氏はその後、テッククランチに対し、サムタックがDEI推進担当者を探していることは知っているが「戻るつもりはない」と語った。

Google(グーグル)も同じく、ここ数年間にダイバーシティを推進する数々の取り組みを廃止したことが報道されているAlphabet(アルファベット)のSundar Pichai(スンダル・ピチャイ)CEOはフロイド氏の死亡事件をうけて、一致団結を求めるコメントを発表し、GoogleとYouTubeのホームページを、人種間平等を訴える仕様に変えた。しかし、重要なのは言葉より行動だ。

長年にわたりこの点で何も行動を起こさず後退していたテック業界だが、今こそ一歩踏み出して、人種間平等を実現するために意義ある変化を遂げることができるかもしれない。しかし、テック企業が今こそ変化を遂げるには、ダイバーシティ・インクルージョン推進の取り組みを縮小するのではなく、強化する必要がある。つまり、黒人やブラウン人種の社員を増やし、平等で一貫性のある人事考課プロセスを導入し、性別だけでなく人種に関係する賃金格差もなくして、昇給や昇進に関する明確な制度を設けることだ。繰り返すが、重要なのは行動である。

フロイド氏死亡事件をうけて、すでにいくつかのテック企業は今後の発展につながりそうな第一歩を踏み出した。例えば、投資家のJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏は、6月は黒人の創業者との面談だけを受け付ける意向だ。また、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、テック業界の黒人創業者やその他の過小評価されている創業者に対する財政支援を行う新しいプログラムを用意している。

Backstage Capital(バックステージ・キャピタル)の創業者兼マネージングパートナーのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏は、筆者がCommonwealth Club(コモンウェルス・クラブ)で行ったインタビューの中で、「完璧な方法というものはありませんが、他よりも優れた方法でこの課題に取り組んでいる人々が確かに存在すると思います。そして、一部の人によるうんざりするほどの沈黙は、それだけで何を考えているかわかります」と語った。

投資家ができる最善のことは、投資家としての仕事を全うすることだとハミルトン氏はいう。

「多様性を持つ創業者に注目することが投資家の仕事です。これまでは上司が見回ってなかったので、陰に隠れて仕事をしないでいることができました。でも今は、すべての出資者が目を光らせています。ふさわしい投資候補先が見つからないからといって簡単にあきらめないでください」(ハミルトン氏)。

現時点で最も思い切った行動は、Reddit(レディット)の創業者Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏が取締役から退いたことだろう。長い間、人種差別や性差別をはじめとする問題あるコンテンツがあふれていたレディットのプラットフォームはオハニアン氏が2005年に立ち上げたものだ。そのオハニアン氏が今、自分が創業した会社に対して、後任の取締役には黒人を選任するように求めている。加えて、同氏は自身が所有するレディットの株式から今後得られる利益を黒人コミュニティに投資することも明らかにした。

テック企業の取締役会にはこれまで長い間、黒人役員が非常に少なかった。これこそJesse Jackson(ジェシー・ジャクソン)牧師が少なくとも2014年から求めてきたことであり、Congressional Black Caucus(連邦議会黒人幹部会、CBC)が2015年から要求してきたことである。テック企業はこの点で、何年もかけて多少の進歩を遂げた。例えば、2015年にCBCが取締役会の多様化向上を提唱してからわずか数か月後に、Apple(アップル)は取締役として、Boeing(ボーイング)の前CFO兼プレジデントのJames Bell(ジェームズ・ベル)氏を選任した。また、2018年には、Airbnb(エアービーアンドビー)、フェイスブック、Slack(スラック)をはじめとする一部のテック企業が黒人の取締役を選任した。しかしテック企業の取締役は依然として白人男性が圧倒的に多い。

だからこそオハニアン氏の取締役退任と黒人選任の要求に重要な意味がある。事実上、自分を権力の座から外し、自分の代わりに黒人取締役がその座に就けるようにしているからだ。オハニアン氏は現在、取締役会に推薦するために後任の最終候補者を絞っているところだという

The Human Utility(ザ・ヒューマン・ユティリティ)の創業者Tiffani Ashley Bell(ティファニー・アシュリー・ベル)氏は、オハニアン氏の後任取締役に立候補している人の1人だ。ベル氏は自身がTwitterでつぶやいているように「文字通り、白人至上主義を取り除くためのソースコードをテック業界全体に(読者からのメッセージによると他の業界にも)公開した」という。

そのソースコードとは、この記事のことだ。秀逸な記事なのでぜひ一読してみてほしい。この記事の中でベル氏は、白人至上主義を排除できるかどうかは詰まるところ各人の意欲の問題だとし、内省を促して、白人至上主義を擁護しているかどうか吟味するために考案された質問をいくつか紹介している。そしてベル氏もまた、行動が重要であることを強調している。

以下、記事の一部を引用する:

黒人社員のために進んで場所を確保するだろうか。現在のチームに、特にリーダー的なポジションに、黒人の社員がいるだろうか。もしいないなら黒人社員の採用を他の成長戦略と同じように重要だとみなして、それをやり遂げるだろうか。歴史的黒人大学(HBCU)の学生を、歴史的白人大学の学生と同じほど熱心に採用するだろうか。あなたの会社は全米黒人技術者会の就職フェアに出展したことがあるだろうか。

前述したように、黒人への残忍な暴行殺人事件についてテック業界が声をあげるのはこれが初めてではない。しかし、今回はこれまでとは何かが違うと感じる。ハミルトン氏によると、それはほとんどの人が新型コロナウイルス感染症の影響で長期にわたり在宅しているせいではないか、という。

「今、世界も米国も一日中、黒人が直面している現実をまるで目の前で起きている出来事のように目撃して理解し、感情移入しているんです。これまでも、人々はそのような出来事の一部を確かに見てはいましたが、それでもやはり私たちが何となく保護フィルターをかけてしまっていたように思います。全部を見せてはいなかった。それが今は、新型コロナウイルスの影響で、米国民はあたかもVRデバイスをかぶせられたかのように、現実を目の前で直視せざるを得ない状況に置かれているんです」と、ハミルトン氏は筆者に語った。

どれが単なるパフォーマンス行為で、どれが実質的な変化につながる行為なのかを、現時点で判断することは難しい。テック業界のCEOや投資家が今回の事件をうけて発した耳当たりのよい言葉の数々の中で(あるとすれば)どれが本当に行動を伴って具体的な成果をあげるのか、テッククランチは今後も注目していく。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム 差別

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(翻訳:Dragonfly)

ドイツがオンラインヘイトスピーチを取り締まる法律を厳格化

オンラインヘイトスピーチに関する法律は表現の自由の観点から違憲だとフランスの憲法評議会が判断した一方で、ドイツはヘイトスピーチに関する法律を強化する。ユーザーから指摘があった時点で犯罪が疑われるコンテンツを直接連邦警察に届けることをプラットフォームに義務付ける条項を盛り込む。

この動きは、右翼過激主義の高まりとヘイト犯罪に対するドイツ政府の幅広い取り組みの一環だ。ヘイト犯罪はオンライン上でのヘイトスピーチの拡散と関係している。

ドイツの既存の法律「Network Enforcement Act」(別名NetzDG法)は2017年に発効し、ソーシャルネットワークプラットフォームに明白に違法と分かるヘイトスピーチを24時間以内に削除することを義務付けた。違反した場合の罰金は最大5000万ユーロ(約60億円)だ。

6月19日にドイツの議会はプラットフォームに特定の種の「犯罪的なコンテンツ」を連邦刑事庁に報告することを義務付けることを加えた改正案を可決した。

NetzDG法の幅広い改正が並行して進行中で、これはユーザーの権利と透明性をさらに確固たるものにするのが狙いだ。ここには、ユーザーノーティフィケーションを簡素化したり、人々がコンテンツ削除に異議を唱えやすくしたり、主張が認められたコンテンツを復活させられるようにしたりといったことが含まれる。必須事項の報告に関するさらなる透明性もプラットフォームに求めている。

NetzDG法は常に議論の的になってきた。罰金のリスクを取るよりコンテンツを削除する方向にプラットフォームを誘導することで表現の自由を制限することになるのでは、との批判もある(言い換えると、過度の表現制限のリスクだ)。2018年に人権NGOのHuman Rights Watchは欠陥のある法律、と指摘した。「不明瞭で過度だ。そして高額な罰金を避けようとする民間企業による検閲が行き過ぎになるものであり、ユーザーは司法の監視ができず、主張する権利も失われる」と批判した。

ヘイトスピーチ法律への最新の変更もまた議論を巻き起こしている。現在の懸念は、国が市民に関する膨大なデータベースを構築するのをソーシャルメディア大企業が確たる法的正当化なしに手伝っているということだ。

最新の法改正に関する多くの変更案が却下された。ここには、指摘されたソーシャルメディアへの投稿の作者の個人データが自動的に警察に送られないようにする、という緑の党が提出したものも含まれる。

緑の党は、新たな報告義務が乱用され、実際に犯罪的なコンテンツを投稿していない市民のデータが警察に送られることになるリスクを懸念している。

また、多々ある批判の中でも、すでにデータが警察に送られた要注意の投稿をした作者にその旨を伝える必要性が確保されていないことも議論の的となっている。

緑の党は、警察に直接送られることになる投稿コンテンツは、真に調査する必要があるものだけにすべき、と提案した。警察はこれまでプラットフォームに個人データを要求できていた。

ドイツ政府のヘイトスピーチ法の改正は、難民受け入れ賛成の政治家Walter Lübcke(ヴァルター・リュブケ)氏が2019年にネオナチ過激派によって殺害された事件を受けてのものだ。殺害に先立ってオンライン上で標的型攻撃とヘイトスピーチがあったとされている。

ドイツのメディアによると、今月初め警察はリュブケ氏に関する「犯罪的なコメント」を投稿したとして多くの州にまたがるヘイトスピーチ疑い犯40人を検挙した。

政府はまた、オンライン上でのヘイトスピーチは言論の自由に萎縮効果をもたらし、標的を脅すことでデモクラシーに有害な影響を及ぼすと主張する。つまり人々が恐怖心なしに自由に表現したり社会に参画したりできなくなることを意味する。

EU全体では、テック企業がEU Code of Conduct on hate speech(欧州ヘイトスピーチ行動規範)に自発的に同意した後、欧州委員会はヘイトスピーチをなくそうと何年もの間プラットフォームに報告の改善を強制してきた。

扱うコンテンツにテック企業がどれくらいの責任を負うのかを示すことになる今後導入される予定のデジタルサービス法のもとで、欧州委員会はプラットフォームの規則とガバナンスについて幅広い変更を加えることを検討している。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

どういうわけかTwitterにはアクセシビリティ専門チームがない

Twitterにはアクセシビリティを専門とするチームがない。ある開発者がそうほのめかした後、同社はこれを認めた。約4000人を雇用し、CEOが「正しいことをする」とよく言っている企業にアクセシビリティのチームがないとは不可解だ。

ほかの主要プラットフォームと同様に改善の余地はまだまだあるものの、Twitterにアクセシビリティ機能がまったく欠けているわけではない。しかし画面読み上げや字幕を利用する人だけでなく、誰にとっても操作しやすいサイトにするには、気にかけている従業員がときどき対応するだけでは不十分だ。

Twitterの開発者で、障がい者に役立つ機能を多く手がけてきたAndrew Hayward(アンドリュー・ヘイワード)氏のツイートから、Twitterにアクセシビリティのチームがないことに広く関心が集まった。

Twitterの新しい音声ツイートに字幕機能がないと批判された際、公式のTwitter Supportアカウントは、これは「この機能の初期バージョン」であり、この機能をより使いやすくする方法を「これから探る」と述べたが、解決になっていない。

ヘイワード氏はこのやり取りに関し、同氏をはじめとする「Twitterのアクセシビリティを支えるボランティア」は障がい者に対する配慮が欠けていることに「不満と失望」を感じていると述べ、専門のチームがないという驚きの状況を示唆した。同氏が明らかにしたところによると、携わっているスタッフは完全なボランティアではなく有給の従業員ではあるが、「我々がやっている仕事は通常の役割にさらに追加されたものと考えられる」という。つまり同氏らは、基本的には空き時間にアクセシビリティに関する作業をしてきた。

専任のアクセシビリティチームは、規模の小さい企業では贅沢であるように感じられるかもしれないが、Twitterは小さいとも新しいとも、その機能の重要性が知られていないとも主張できるような会社ではない。従って、たとえ数人であってもアクセシビリティに責任を持つ専任チームがないのはなぜか、理解に苦しむ。

筆者はTwitterに、専任のアクセシビリティチームがないのかどうか確認を求めた。同社はコメントの代わりに、以下の3つのツイートへのリンクを知らせてきた。その内容は、誤りを認めたうえでの謝罪、基本的な問題の応急処置、そしてTwitterが「全製品にわたるアクセシビリティ、ツール、アドボカシーに専念するグループをどう構築するか検討している」という表明だった。

視覚障がい、ろう、聴覚障がいの方々へのサポートをせずに音声ツイートのテストをしていることをお詫びします。こうしたサポートがないままのテストの開始は誤りでした。
アクセシビリティは、決して後回しにしてはいけないことです。(1/3)

つまり、専任のチームはなく、チームを作る計画を始めたばかりにすぎないという返答だ。我々は近いうちに進捗状況をTwitterにまた確認するつもりだ。

画像クレジット:TC/Bryce Durbin

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(翻訳:Kaori Koyama)