日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

東京に本社を置くispace(アイスペース)は、カナダと日本のローバー(探査車)を月面まで届ける任務に選ばれた。2022年と2023年に予定されているミッションでは、最近公開された同社の月着陸船が使用され、SpaceX(スペースX)のロケットで打ち上げられる予定だ。

カナダ宇宙庁(CSA)は、それぞれ別の科学的ミッションを担当するカナダの民間企業3社を選定した。Mission Control Space Services(ミッション・コントロール・スペース・サービス)、Canadensys(カナデンシス)、NGCの3社は、いずれもCSAによるLunar Exploration Accelerator Program(LEAP、月探査促進プログラム)の一環であるCapability Demonstration(能力実証)プログラムで受賞した最初の企業だ。2020年2月にカナダ政府が発表したLEAPは、5年間で1億5千万ドル(約165億円)を計上し、カナダの民間企業が宇宙空間で行うデモンストレーションや科学ミッションを支援する。

ispaceは、2022年に予定されている「ミッション1」で、アラブ首長国連邦のThe Mohammed Bin Rashid Space Centre(ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター、MBRSC)が開発した重量約10キログラムの月面探査ローバー「Rashid(ラシッド)」を月に届ける予定だ。このローバーには、宇宙ロボティクス企業であるMission Control Space Servicesの人工知能フライトコンピューターが搭載される。同社の人工知能は、深層学習アルゴリズムを用いて、Rashidが月面を走行する際に取得する画像から月の地質を認識することができる。

また、ispaceはCanadensysのために「ミッション中の重要な事柄を撮影する」カメラを月面へ輸送し、さらにNGCが開発する自律航行システムのデモンストレーションのために、月面の画像データを取得する。

「CSAに選ばれた3社すべてが、それぞれ月面での活動を実現するための役割を、ispaceのサービスに託してくれたことを光栄に思います」と、ispaceの創業者でCEOである袴田武史氏は声明で述べている。「これは、ispaceがCSAとの間に築いてきた過去数年間の信頼の証であり、北米市場においてispaceが認められたものと考えています」。

ispaceはまた、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、変形型月面ロボットの「月面輸送・運用・データ取得」契約も締結したと発表。2023年に予定されている月面探査ミッション「ミッション2」で収集されるデータは、JAXAが研究している有人与圧ローバーの設計に活用される。

JAXAの月面ロボットは、展開形状に変形する前は直径が約80ミリメートル、重さは約250グラムしかない。ispaceは、競争入札で獲得したこの契約の金銭的条件を明らかにしていない。

画像クレジット:JAXA

JAXAは、このロボットを月面で走行させ「レゴリス(月の表面を覆う砂)の挙動や月面での画像データ等を月着陸船経由で地上に送信します。取得したデータを用いて、有人与圧ローバの自己位置推定アルゴリズムの評価や走行性能へのレゴリスの影響評価等に反映する予定です」と、ニュースリリースで述べている。

ispaceは2020年7月に、この月探査プログラム「Hakuto-R(ハクトアール)」で使用するランダー(着陸船)のデザインを公開した。Hakuto-Rは、人類初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」から生まれたプロジェクトだ。このレースは、探査機を月に送り、500メートル以上の距離を走行させ、写真や動画を地球に送り返すことを競うというものだったが、Hakutoを含む5つのファイナリストがいずれも期日内に打ち上げを完了させることができず、優勝者がないまま2018年に終了した

MBRSCとJAXAのローバーは、それぞれ異なる展開機構を持つはずだが、米国時間5月26日に行われたメディア発表会で、袴田氏は詳細を明らかにしなかった。

袴田氏によると、ランダーはドイツで組み立てられており、組み立ての段階は始まったばかりだという。「だからこそ、私たちはこのスケジュールを達成できると確信しています」と、袴田氏は付け加えた。

ispaceの長期的な目標の1つは、月面における水資源の活用だ。それによって将来的には持続性のある活動を実現するための能力を高めていきたいと袴田氏は語る。

ispaceのHakuto-Rプログラムは、SpaceXのロケットで打ち上げられるいくつかの月面ミッションのうちの1つに過ぎない。2021年4月、米航空宇宙局(NASA)は、そのArtemis(アルテミス)計画の一環で、月面に人間を送る有人着陸システムの開発企業に、SpaceXを選んだと発表。その受注総額は28.9億ドル(約3175億円)に上る。SpaceXはFirefly Aerosapce(ファイアフライ・エアロスペース)からもペイロード輸送を受注しており、2023年に同社の月面着陸船を運ぶ予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ispace日本探索車カナダJAXA

画像クレジット:ispace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

次世代の月面探査車をGMとロッキード・マーティンが共同で開発中

人類が前回(1972年)、月を訪れたときには、比較的シンプルなバッテリー駆動の乗り物で移動した。NASAは次の有人月探査に向けて、月面探査車のアップグレードを検討している。

Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)とGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間5月26日、次世代の月面車を共同で開発していると発表した。これは以前の月面探査車よりも、より速いスピードで、より長い距離を走れるように設計されているという。このプロジェクトがNASAに採用されれば、この月面車は今後のアルテミス計画で使用されることになる。その最初のミッションは、無人で地球から月まで往来する飛行試験で、2021年11月に予定されている。

5月26日のメディア向け発表会で幹部が語ったところによると、提案申請書は2021年の第3四半期か第4四半期に発行されるだろうとのこと。NASAは提出された提案書を評価した後、契約を締結することになる。

前回のアポロ計画で使用された月面車は、着陸地点から約8キロメートル以内しか移動できなかったため、宇宙飛行士が月の北極や南極などの遠く離れた地点で重要なデータを収集することはできなかった。ちなみに月の円周は1万921キロメートルだ。2社はこれらの性能の大幅な向上を目指していると、ロッキードで月探査を担当するバイスプレジデントのKirk Shireman(カーク・シャイアマン)氏は語ったが、新型月面車に使用される素材や航続距離などの性能は、まだ正確に確定しているわけではないと言及した。

GMはこの月面車用の自律走行システムも開発する予定で、これにより安全性が向上し、宇宙飛行士がサンプルを収集したり、その他の科学的研究を行う能力が高まると、幹部は水曜日に語った。

GMは電気自動車や自律走行車の技術に、2025年までに270億ドル(約3兆円)以上を投資しており、その研究を月面車プロジェクトに活かすことを目指していると、GM Defense(GMディフェンス、GMの軍事製品部門)の成長戦略担当バイスプレジデントであるJeffrey Ryder(ジェフリー・ライダー)氏は語っている。「私たちは現在、これらの能力をどのようにアルテミス計画に関わる特定のミッションやオペレーションに適用するかについての調査を始めたところです」。

GMは地球上で行っているバッテリーや駆動システムの研究も、月面車の開発に活かしていくという。ライダー氏は、この月面車プログラムが他の市場機会につながることを期待している。

両社はこれまでにも、月面探査を含むNASAのミッションに技術を提供してきた。自動車メーカーのGMは、アポロ時代に使用された月面車のシャシーや車輪などの開発に協力。アポロ計画全般における誘導・航法システムの製造と統合も担当した。大手航空宇宙企業のロッキード・マーティンは、すべての火星探査を含むNASAのミッションで、宇宙船や動力システムの製造に携わっている。

両社は、今回の協業を「いくつかの取り組みの1つ」としており、今後も他のプロジェクトについて、さらなる発表が予定されているという。

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タグ:GMロッキード・マーティン探査車NASAアルテミス計画

画像クレジット:Chris Jackson / Staff / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASAが初めて火星の大気からの酸素生成に成功、将来の有人探査に向けた実証実験

NASA/JPL-Caltech

2月18日に赤い大地に降り立ってから60日が経過した最新の探査ローバーPerseveranseが、火星の大気から酸素を生成することに成功したと、NASAが発表しました。

酸素を生成するのは、トースターほどの大きさであるMOXIE(Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experiment)と称する機器。96%がCO2という火星大気を酸素と一酸化炭素に分離します。

将来的にこれを改良した装置が、火星にやってきた飛行士が現地で酸素を手に入れる手段を提供するために重要な役割を果たすことになるかもしれません。

「これは火星の二酸化炭素を酸素に変換するための重要な第一歩です。MOXIEにはまだ課題がありますが、今回の技術実証の結果には、人類が火星に降り立つという将来の目標に向け、大きな期待が寄せられます。酸素はわれわれが呼吸するためだけのものではなく、ロケット推進用燃料の燃焼にも必要です。将来の探査機は火星で生成した酸素を使用して地球へ帰還することになるでしょう」とNASA宇宙技術ミッション局の副局長ジム・ロイター氏は述べています。

NASAによると、ロケット推進のためには推進剤に対して重量比で5倍の酸素が必要になります。一方で、飛行士が火星で生活するだけならそれほどまでに大量の酸素は必要ではなく、年間1トンほどで済むとのこと。

ただし、CO2から酸素を取り出すには約800℃という高い温度が必要となります。そのためMOXIEは非常に高度な耐熱構造になっています。

MOXIEは1時間に最大10gの酸素を生成可能で、これは飛行士が20分程度呼吸できる量とのこと。Perseveranseは火星における1年(地球の時間では約2年)の間に、少なくともあと9回は酸素生成を実施する予定です。

NASAはMOXIEの技術によって火星の大気からロケットの推進剤や飛行士の呼吸用酸素を作るだけでなく、できあがった酸素と水素を反応させて水に変換することもできるとしています。

なお、NASAは今週、火星での初の航空機(回転翼機)であるIngenuityの飛行に成功しています。IngenuityもMOXIEもいまは概念実証的な段階ですが、いずれもいつか飛行士が火星を歩くときには必要な技術です。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:炭素 / 二酸化炭素(用語)NASA(組織)惑星探査車 / ローバー(用語)

NASAが火星に降下するパーセベランス探査機の高精細度動画を公開

NASAは、火星探査機Perseverance(パーセベランス)とその着陸モジュールローバーが撮影した動画を公表した。これは火星大気圏突入から着陸までの「恐怖の7分間」をPOV(一人称視点)で記録している。先週公開された画像はごく一部の予告編だった。こちらが完全な記録であり、史上初めて撮影された火星着陸動画だ。

関連記事:火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

ローバーの降下と任務についてはこちらで随時ツイートされているが、ここではまず概要を説明しておこう。

惑星間を高速で航行してきた探査機は、ヒートシールドを前方に向けて火星の大気に突入する。大気で減速され高温になったヒートシールドは投棄され、超音速パラシュートが展開される。ヒートシールドが外れると内部のカメラなどのセンサーが観測を始め、着陸に適したフラットな地点を探す。さらに減速され所定の高度に達したところで、パラシュートの切り離しが行われる。ローバー着陸モジュールを覆っている「ジェットパック」が、前進速度と降下を速度を殺す。地表70フィート(約21.3メートル)でローバーを減速させるロケットエンジンを組み込んだ「スカイクレーン」からローバーはぶらさがるかたちになる。ローバーはスカイクレーンから切り離され、スカイクレーンはローバーを妨害しないよう退避する。ローバーは静かに着陸する。

この過程には7分間かかり、特に最後の数秒は完全な綱渡りとなる(下図)。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

以前の初代ローバー探査機は画像やテレメトリ情報を送り返してきたが、今回のような臨場感あふれる動画は史上初だ。2018年のInSight火星着陸機もこのレベルの映像を送り返すことはできなかった。

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JPL(NASAジェット推進研究所)の責任者、Mike Watkins(マイク・ワトキンス)氏は記者会見でこう語った。

火星への宇宙船着陸のようなビッグイベントを実際にキャプチャーできたのはこれが初めてです。アメージングなビデオです。我々はこの週末、パーセベランスからの動画を一気に見てしまいました。まあ数分間の動画を一気見するとは言わないかもしれませんが。もちろん、探査機が設計どおりの性能を発揮したことを見るのも楽しいのですが、多くの視聴者に火星への旅を体感してもらうことも同じくらい重要です。

NASAのチームによれば、こうした動画はそれ自体の科学的価値に加えて、チームが経験した絶大な恐怖と無力感をともに体験してもらいたいものだという。JPLのパーセベランスプロジェクトマネージャー補佐であるMatt Wallace(マット・ウォレス)氏はこういう。

この分野に長い私でさえ、いつか火星への着陸機を操縦するようになるとは想像できません。しかしこの映像を見れば、パーセベランスを操縦して火星のジェゼロ・クレーターに着陸するのがどのようなものであるか、非常に詳しく体験できます。

ローバーを囲むジェットパック・カプセルには上向きのカメラが、ローバー自体にも2台の下向きのカメラがあり、実質的に全周パノラマが記録できる仕組みだった。ヒートシールドが投棄される画像は印象的だ。そこに広がる火星の砂漠の風景はアポロが月に着陸するところを描写した映画のようだ。

火星に向かって下降する際、ヒートシールドを投棄するパーセベランス(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

フルビデオはこちら

この下降中に30GB以上の画像データが取得された。パラシュートの展開時にカメラの1台が不調となったが、それにしても巨大なサイズの画像だ。火星を周回する衛星の2Mbpsの回線を経由して映像を送るには時間がかかる(もちろん昔の数kbpsの回線に比べれば驚くべき高速化だ)。

すべての映像フレームが、火星着陸プロセスに関する新たな情報を提供してくれる。たとえばヒートシールドを投棄する使用されたスプリングの1つが外れたように見えるが、プロセスには影響しなかった。他のフレームと合わせて、今後精査されるだろう。

こうした驚くべき着陸プロセスの動画に加えて、パーセベランスはナビゲーションカメラによって撮影された多数のフルカラー画像を送り返してきた。まだすべてのシステムが稼働しているわけではないというが、チームはパーセベランスが撮影した画像をつなぎ合わせてこのパノラマ画像を作成した。

 

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのチームは、画像を処理する度にアップロードしているので、今後さらに多くの画像が見られるだろう。

NASAからの最後のプレゼントは火星の表面からの録音だ。これ自身が新しい洞察に結びつく情報であると同時に、さまざまな理由で視覚的情報に接することができない人たちにも着陸を体験してもらいたいというのがNASAの願いだ。

着陸に必要な突入(Entry )、降下(Descent)、着陸(Landing Phase)の頭文字をとったEDLシステムにはマイクも含まれていた。残念ながら降下中に起動することができなかったが、着陸後は完全に作動して環境音を記録している。かすかながさごそという風ノイズは聞き慣れた音だが、この風が光の速さで11分間もかかる別の惑星の上を吹いているのだと思うと信じられない気がする。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」は日本時間2月19日朝、無事に火星に着陸したが、その直前には火星の大気圏に高速で突入し、NASAのチームが「恐怖の7分間」と呼ぶ着陸に向けた一連の複雑な操作が行われた。NASAはその時に撮影されたゾクゾクする写真を公開している。火星の大地の上に、ジェットパックから細いワイヤーでぶら下がっている探査車を見れば、チームの「恐怖」を容易く理解することができるだろう。

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パーセベランスのTwitter(ツイッター)アカウントが、他の画像とともに投稿した(いつものように、一人称で)この写真は、探査車から最初に送られてきたものだ。ナビゲーション用カメラによって撮影されたモノクロの写真は、ほぼ着陸した瞬間を捉えたものと思われる。我々がこの視点から探査車(に限らないが)を見るのは初めてのことだ。

この写真を撮影したカメラは、「ジェットパック」と呼ばれるロケット動力の降下モジュールに搭載されている。火星の大気圏摩擦とパラシュートの両方を使って十分に減速した後、熱シールドが取り外され、パーセベランスは安全な着陸場所を探して大地をスキャンする。着陸場所が見つかったら、そこに探査車を運んで着陸させることがジェットパックの役目だ。

冒頭の画像は、Descent Stage(降下ステージ)の「Down-Look Cameras(見下ろしカメラ)」で撮影されたもの(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

着陸地点から約20メートルの上空に達すると、ジェットパックは「スカイクレーン」と呼ばれる一連のケーブルを展開し、安全な距離から探査車を地上に降ろす。それによってジェットパック自身はロケットで離れた場所に不時着できるようになっている。

記事のトップに掲載した写真は、着陸の直前に撮影されたもので、火星の土壌の渦巻きが数百メートル下にあるのか、数十メートル下にあるのか、それとも数メートル下にあるのかは少し分かりにくいが、その後に撮影された画像を見ると、地面に見えるのが岩ではなく石であることが明らかになる。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

これらの画像は、火星から何万キロメートルもの距離を、HQトラッキングテレメトリデータとして送られて来たもので、我々は間接的にしか見ることができないが、そこに至るまでの過程が、実際には非常に物理的で、高速で、時には残酷なものであることを思い出させてくれる。数百の物事が正しく行われなければ、単に火星のクレーターを1つ増やすだけで終わってしまうのだ。そんな時間と情熱を費やしたものが、秒速5キロメートルという速度から始まった降下の後、遠く離れた惑星の上空でぶら下がっているのを目の当たりにするのは……感動で胸が締めつけられる思いがする。

とはいえ、この一人称的視点は、今回の火星着陸で最も印象的な写真ではないかもしれない。これが公開された直後、NASAは火星探査機「Mars Reconnaissance Orbiter(マーズ・リコネッサンス・オービター)」から送られた驚くべき画像を公開した。それはパーセベランスがパラシュートで降下している瞬間を捉えたものだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

この写真が撮影された時点で、MROは700キロメートルも離れた位置にあり、秒速3キロメートル以上で移動中であったことに留意してほしい。「2つの宇宙船の非常に離れた距離と高い速度から、正確なタイミングを必要とする難しい状況でした。マーズ・リコネッサンス・オービターは上向きに傾斜するともに大きく左側に傾かせ、ちょうど良い瞬間にパーセベランスがHiRISEカメラの視野に入るようにしました」と、NASAは写真に付記した

今後、NASAがパーセベランスから十分な画像を収集すれば、さらに完全な「恐怖の7分」を捉えた写真を我々が目にするチャンスもあるだろう。だが、今のところ公開された数枚の画像は、そこにいるチームの創意と技術を思い出させ、人類の科学と工学の凄さに驚きと畏敬の念を感じさせるに違いない。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)