Apple、iOS 12でiPhoneの位置情報を緊急センターに通知(米国のみ)

今日(米国時間6/18)午前Appleは、iOS 12の新機能を発表し、米国ユーザーがiPhoneで911通報した際、自動的に位置情報が初期対応者に送られるようになる。この動きは携帯電話から緊急電話をかけたときの問題に対処するものであり、旧来のシステムでは携帯電話の発信者の位置情報を迅速正確に取得することが困難だった。

911呼び出しの約80%が携帯電話からであることから、システムの改善は急務である。

2015年にAppleは、GPSおよびWi-Fiアクセスポイントを利用して発信者の位置情報を推定するHELO(Hybridized Emergency Location)と呼ばれるシステムを提供した。本日のAppleの発表によると、同社はさらにRapidSOSのインターネットプロトコルベースのデータパイプラインを利用して、このHELO位置情報を911センターに安全に送信することで、応答時間の短縮を目指している。

RapidSOSの技術は、多くの911センターにインストール済みのソフトウェアに統合される。

またAppleは、FCC(連邦通信委員会)は携帯通信業者に対して、2021年までに発信者の80%の位置を50メートル以内の精度で特定することを要求していることを指摘した。現在同社の位置情報サービスの精度はこの要求を満たしており、今後911センターは同じ精度のデータをアクセス可能になる。

いつものAppleらしく、同社は新機能のデータプライバシーを強調した。ユーザーの位置データは緊急目的以外に共有することは不可能であり、911センターのみが通話中に位置情報を利用できる。

この911対応は、今月行われたAppleのソフトウェア中心のカンファレンスであるWWDCのキーノートでは発表されなかった。そこでは、プライバシー、セキュリティーやAI利用など今年iOS 12に導入される数々の機能が紹介された。例年通りであればiOS 12は9月に一般公開される。

「社会は緊急時に911センターを頼りにしており、そこでは利用可能な最高の技術を利用できるべきだとわれわれは信じている」とApple CEOのTim Cookが新機能発表の声明で言った。「一瞬一瞬が重要な場面で、これらのツールは顧客がいちばん助けを必要としているときに初期対応者が手を差し伸べるのに役立つだろう」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

1度は退場した犯罪報告アプリVigilanteがCitizenとして復活、「事件報告」ボタンは削除予定

Vigilante(自警団員)アプリを覚えているだろうか?この論争を呼んだ犯罪報告アプリは、リリース後間もない昨年の11月にAppleStoreから追い出された。Appleが、このアプリは一般市民を所謂…自警主義(vigilantism)に巻き込むと判断したからだ。そのアプリが、異なるブランドとして戻ってきた。ニューヨークで運営が始まった新しい”Citizen”アプリは、リアルタイム犯罪レポートを911コールに基いて送ってくるだけでなく、利用者に犯罪現場のライブストリーム配信とコメントを行う手段を提供する。

Vigilanteアプリは、そのローンチに際しブログ上で、「平均的でごく普通の」市民たちが「集団で」犯罪の問題に取り組むべきだという元警察官の言葉を引用していた。「自警団員」というアプリの名前は、そのユーザーたちに、自分たちを非常に危険な状況に晒したり、あるいは警察 抜きに事態に直接対処することを後押しをするかのような響きがあった。

新しいCitizenアプリでは、ユーザーによる事件への直接の関与のトーンは薄まっている。Citizenはその代わりに、ユーザーが犯罪や事件のライブストリーミングを行い、他の人びとがそれ視たりコメントを書くことを促している。またアプリの説明のために、「決して犯罪現場に近付かないこと、事件に干渉しないこと、警察の邪魔をしないこと」を「強く指導する」ウィンドウがポップアップされる。

しかし、911コール(日本の110番に相当する緊急通話)からキュレーションされるアプリのコンテンツは、いまひとつ基準がはっきりしない。

「ニューヨークでは1日あたり1万件の911コールがありますが、私たちは平均して300から400件を通知します」と語るのはsp0nのCEOであるAndrew Frameだ(sp0nはアプリの開発メーカー)。

同社によれば、アプリによってリストされるのは、「公共の安全」に対する脅威に限られるということだ。

まだ作業途中であるからという理由で、使われている審査基準は公開されていない。Frameは「不審な人物」、「不審なバッグ」あるいはスーツケース、および薬物事件に関するコールは、現時点ではアプリには示されていないと述べている。

しかし、アプリでは、地図上の赤い点として事件の発生を知ることが可能なので、特定のエリアを回避するための、ある程度の役割を果たすことができる。これは仕様によるものだ。

この犯罪マッピングへの取り組みは、公開データを用いて白人たちが、「危険」と想定される隣人である非白人たちを避けることを助ける恐るべきアプリ “GhettoTracker”や“SketchFactor”とは少々異なったアプローチだ。しかしCitizenは911に通報される現在の事件を表示し、それが継続している間プッシュ通知で警告を送り続ける。

こうして、もし「Applebeeで喧嘩が発生」(これは今日(米国時間12日)起きた実際の事件だ)したなら、その店へ食事に行くことを控えることができる。

しかし The Outlineの記事が、ユーザーが犯罪や事件をその場で報告できる機能は生きたままであることを指摘している。そして実際に、新しいアプリには「事件報告」ボタンが備わっているのだ。

報告される全ての事件が、アプリで再通知される基準を満たすわけではなく、この機能は殆ど使用されることはない、とFrameは述べている。しかし、それは事実存在していて、アプリの意図は不明瞭だ(それはユーザー生成コンテンツを欲しているのか、いないのか?)。 課題は残る。

Frameによれば、このアプリの次期バージョンではこのボタンは削除されるという。

「誤解が多いようです。うまく説明できるようにする必要がありますね」と彼は言う。「私たちはとても慎重に事を運んでいます。それが通報ボタンがアプリの奥に埋め込まれている理由です。もし『事件報告』ボタンがアプリの中心に陣取っていたなら、アプリを開けた瞬間にそれを押したくなる誘惑に駆られる、強調ポイントとなるでしょう」。

外部から見ている人には明らかだが、人びとが「不正投票」をスマートフォンで通報するが奨励されているトランプのアメリカでは、ユーザーが各自の判断で犯罪を通報する機能をもったアプリの提供は危険な領域に向かいかねない状況だ。Nextdoorで起こったことを見てみるが良い、アプリ内での人種プロファイリングが蔓延してしまったために、同SNSはそれを防ぐために大幅な作り直しを余儀なくされたのだ。

「このボタンを削除することは約束しますよ」ユーザー報告ボタンがアプリのコアミッションを損なうことを認めながら、Frameは言った。アプリの使命は「犯罪を減らすことで、人びとをつつきまわすことではありません」と彼は主張します。

しかし The Outlineは他にも利用者に事件のライブストリーミングを促すことは、別の問題に繋がる可能性があることを指摘している。記事では、WITNESS(証人)のプログラムディレクターであるSam Gregoryの言葉を引用しながら、重要な証人の身元が判明してしまう可能性について指摘した。WITNESSは、人権侵害に繋がる可能性のある動画を倫理的に正しく用いる方法を訓練する非営利団体だ。彼はまた、Citizenが「誰かが暴行されている、信じれなはいほど屈辱的な動画」や、「誰かを、本当は無罪なのにあたかも有罪であるかのように写した動画」の共有に使われかねない、という懸念を表明している。

Frameはこれらの課題に対しては、最初そうした事態はまだ起きていないと答えただけだった。

より詳細な回答を迫ると、彼は以下のように付け加えた「これは透明性のあるアプリなのです。透明性がバイアスを取り除きます。透明性が、起きたことに関する不安と周りのすべての誤解を解消します。透明性の結果は、私たちにはコントロールできません」。

Frameに、デイヴ・エガーズの「ザ・サークル」を読んだことがあるかと尋ねたが、彼の答は「ない」ということだった

もうすぐ映画が公開されるこの小説には、Googleのようなハイテク企業が登場し、それが提供する「SeeChange camera」を人びとは24時間装着している。そうした人びとの中には「透明性」を強調したい政治家たちも含まれている。それらのカメラは、市民たちによっても、密かにあらゆる場所に設置されているのだ。

基本的に「1984年」の焼き直しだが、「ビッグブラザー」がクラウドソーシングになっている点が異なっている。

「私たちは、全ての場所が適切にモニターされているとは思っていません」とFrameは主張する。「このアプリでライブ配信を行って良いのは、事件が起きたときだけです」と彼は言う。

しかし、スマートフォンのおかげで、カメラはどこにでも存在している 。そして、Citizenの考える前提は、犯罪を減らすためには、公共の安全を脅かす犯罪はすべて集約され、ストリーミングされ、そして罰を与えられるべきだというものだ。

しかしながら、犯罪を減少させるためには、雇用、高賃金、そして教育の方が、よりよい手段だと主張することもできるだろう。

Cizizenは、Peter ThielのFounders Fund(FF Angelを経由して)、Slow Ventures、RRE Ventures、Kapor Capital (NAACPの元CEOであるBen Jealousを経由して)、その他のエンジェル投資家たちから、300万ドルのシード資金を調達している。

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(翻訳:Sako)

救急搬送にUberを使うのは、とんでもない考えだ

Paramedics taking patient on stretcher from ambulance to hospital

ワシントンDC消防署は、優先度の低い911通報の搬送にUberを利用する計画を検討している。NBC Washingtonが報じた。これはとんでもない考えだ。

ワシントンの計画では、通報者の状況を電話越しに判断できる看護師チームを雇い、状態が安定していればUberを利用させる。これは救急隊員の目的が、911通報者の病状を判断することであることを踏まえれば、既におかしい。

「転んで足首を骨折した人は、潜在的な症状を抱えている可能性がある」と、ワシントン地区の救命士、Alexia Haralambousは言った。「糖尿病急症が完全に発現していない場合に、そういう状態が起きうる。完全な救命手順を踏む中で、初動要員は最終的に患者の血糖値を調べ、値が高いと判定する」

搬送状態の悪さを考慮して、Uberはサイレンや緊急灯、通信用の大規模無線システム等も備える必要がある、とHaralambousは付け加えた。

数週間前、私は顎を縫った糸を抜くために地元の診療所を訪れた。そこで、心臓疾患の兆候を示したために心電図をとっている男性を見た。男性は、日常的な痛みだと思って受診した。しかし診断結果は深刻だった。医師は直ちに救急車で搬送することを薦めたが、男性は自分で運転することを選んだ。この人は自らの命だけでなく、路上の人々全員の命を危険に曝したことになる。たとえ訓練を受けていても、相乗りドライバーが患者と車両方の安全を確実に守れる可能性は低い。この患者が後部座席に乗っていたとしても、急激な病状の変化がドライバーの不意をつき、事故に結びつくかもしれない。

このような提携は、これまでの相乗り提携とかけ離れたものではない。UberはTechCrunchに、フロリダ州とジョージア州の一部の都市で、既に医療提携を結んでいると話した。Uberは、アトランタの慢性障害を持つ高齢者が予約診療やフィットネスクラブその他のサービスに行く手助けをしている。フロリダ州ゲインズビルでUberは、地元の出資者と協力してこのサービスが移動と自由を維持するためにどのように使えるかを、高齢者に伝えるテクノロジー講座を提供している。

本誌がLyftに問い合わせたところ、移動性の確保に悩む人々の交通を支援するために、同じような目標を同社も持っていると話した。

Lyftの使命は、車を最も必要としている人が、確実に乗れえるようにすることだ。われわれは、全国の公共機関や民間企業と協力して、これまで移動手段に恵まれていなかった人々の選択肢を広げる方法の検討を進めている。われわれは高齢者が ― その多くは定期的に医者の予約があり、移動手段が限られている ― 安全で確実に低価格で動き回れる方法を提供することに誇りを感じている。

いずれの提携の場合でも、意志決定権限は乗客の側にある。乗客はいつどんな時でも乗ることを選べる。ワシントンDCの計画で問題なのは、通報者の健康と安全が、病状を視覚的に評価できない遠く離れた看護師に委ねられていることだ。その結果患者は、市の予算が911通報の量に追いつかないというだけの理由で、不必要に危険な状態に曝される。

とはいえ、深刻な問題のために従来の枠にとらわれない解決策を真剣な考えるワシントンDCには、敬意を表したい。 何もかもUber化する必要はない、というだけのことだ。別の機会に願いたい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国、Text-To-911(テキストメッセージによる緊急通報)サービスを開始(地域限定)

今日(米国時間5/15)から、米国の4大通信会社、Verizon、AT&T、T-Mobile、およびSprintは、一部の地域でtext-to-911を提供開始した。新サービスは、名前が示す通り緊急呼び出しを電話の代わりにテキストメッセージで行えるものだ。ただし、利用するにはいくつか注意点がある。最も重要なのは、米国全土で使えるわけではないことだ。また、これらのメッセージの扱われ方は地域によって異なる。

開始時点で利用できる場所は限られているため、FCCは「911を呼ぶためにテキストに頼る」べきではない、と警告しており、情報提供ページにも「多くの場合、ショートメッセージを送っても911につながらない」と説明している。

制約がありながらも、今日2014年5月15日、通信4社は、コールセンターが対応可能な地域において、自主的にこの text-to-911 をスタートさせた。これは、全国展開に向けての大きな一歩だ。

ただし、全米で利用可能になるまでにはまだ数年かかるかもしれない。

利用は限定的

FCCが公開した報告書 (PDF)には、現在利用可能な地域および、送られてきたケキストの受信に使用されるプラットフォームが詳しく書かれている。

一部のコールセンターは、これらの「通報」を既存のTTYシステムで受信している。これは聴覚困難者向けに作られたシステムだ。しかし、それ以外では最新のブラウザーベースのシステムを利用している。

使えることは、使うべきという意味ではない

世界は、コミュニケーション手段として電話よりもテキスト好む傾向にあるが、いくつかの理由によって、簡易なテキストメッセージを主要な緊急呼び出しに使うことは可能な限り避けるべきである。まず、送信ボタンを押す前に、緊急状況に加えて自分の完全な住所をタイプする必要があることを忘れてはならない。

しゃべれる人にとって、緊急状態の説明には電話の方が便利だろう。

さらに、緊急電話の受け手は、多くの場合に様々な追加情報を尋ねなくてはならない。場所に関すること(交差する道路名や近隣等)だけでなく、背後の雑音や声を聞いて状況の把握に役立てることもある。

そうは言っても、text-to-911システムがもっと広く使えるようになれば、聴覚障害あるいは別の理由で音声通話のできない ― 例えば、電話によって危険が増す ― 場面で有効な手段になるだろう。

text-to-911サービスの詳細はここで読める。

Image credit: afagen

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook