Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

中国で先週、オンラインコンテンツのモデレーターが急死したことで、インターネット時代に生まれた職業の労苦に焦点が当たっている。

中国の動画配信サイト「Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)」でコンテンツを監視していた25歳の男性が、春節(旧正月)中の2月5日に突然亡くなった。この件に詳しい人物から情報を得たというWeibo(ウェイボー、微博)ユーザーの投稿によると、春節の連休中、午前9時から午後9時までの12時間シフトで働いた後のことだったとされている。

この投稿は数時間のうちに何万回も閲覧され、中国のテック業界に蔓延する長時間労働文化に対して、ネット上で新たな抗議の波を引き起こした。

関連記事
中国の長時間労働にスタートアップが反撃
従業員の死や過酷な労働時間への批判をよそに中国のeコマースPinduoduoの株価・ダウンロード数に揺るぎなし

2009年のサービス開始以来、Bilibiliはサブカルチャーのためのニッチな安息地から、2021年9月時点で月間アクティブユーザー数(MAU)2億7千万人を誇る人気動画共有サイトへと変貌を遂げた。

コミュニティが拡大しているということは、それだけ審査すべき動画が増えているということでもある。中国の広大なネット検閲体制の背後には、WeChat(ウィーチャット、微信)、TikTok(ティックトック)、Weiboなどのコンテンツプラットフォームに雇用されている大勢のモデレーターが存在する。これらのモデレーターは、しばしばコンピュータの前で長時間作業し「違法・有害な」ユーザーの投稿にフラグを立てて削除する。その過酷な労働条件から、インターネット時代の「生産ライン」とも呼ばれている。また、工場での仕事と同様に、一日中コンテンツをパージする作業は、労働者の健康を損なうことにつながる。

過労死疑惑に対してBilibiliは、従業員が亡くなる前の1週間、彼は1日8時間、週5日という標準的な労働時間で働いており、同社は法律に基づいて休日出勤した彼の給与を3倍にしていたと主張している。

「彼が担当していたコンテンツセキュリティモデレーションの仕事は、24時間体制の特別な業務です。他の公共サービスと同様に、コンテンツセキュリティは旧正月であっても止めることはできません」と同社は声明で述べた。

もちろん、このような説明では激昂した世論を鎮めることはできない。「悲劇を繰り返さない」ために、Bilibiliは、コンテンツ監査チームの健康状態を「積極的に改善する」と述べている。そのために、2022年中に1000人のモデレーターを追加して「平均的な仕事量を減らす」とともに、同部門のスタッフに「強化された健康チェック」を導入する予定だという。

Bilibili従業員の死について最初に投稿したWeiboユーザーは、動画配信大手である同社の弁護士から手紙を受け取ったと投稿している。スクリーンネームを「Wang Luobei」とするこのユーザーは、Weiboで500万人近いフォロワーを抱えている。Bilibiliは、この弁護士の手紙についてのTechCrunchの問い合わせには応じていない。

画像クレジット:Gao Yuwen / VCG / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

イザナギゲームズが4億2980万円調達、ビリビリと業務提携し中国・アジア中心にオリジナルIP展開強化や新たな展開を推進

イザナギゲームズは2月8日、第三者割当増資による4億2980万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はHODE HK(ビリビリグループ)、コロプラネクスト4号ファンド投資事業組合、アカツキ。累計調達額は7億9860万円となった。調達した資金により、人材採用の強化および新たなプロジェクトのクオリティアップにつなげ、ヒット作を生み出すことを目指す。

また同社は、ビリビリグループとの業務提携締結も明らかにした。これにより、中国本土およびアジアを中心とする世界各国に向けたゲームパブリッシング事業とオリジナルIP展開の強化や新たな展開を推進する。

イザナギゲームズは、日本のクリエイターとともに作ったゲームを世界のマーケットにダイレクトにアピールしていくことを理念に掲げる、コンシューマーゲームを中心とする、インタラクティブエンターテインメントプロデュース企業。

資金調達の幅を広げることで、優れたクリエイターが新しいIP・ゲームを創り出すチャンスを増やし、全世界を販売マーケットとして大きくアプローチすることで、数多くのユーザーにゲームを中心としたインタラクティブエンターテインメント体験を届けることを目指している。

bilibiliがゲーム配信プラットフォームTapTapに136億円投資、過熱する中国のゲーム市場でレベルアップ

中国のテック大手が軒並み、コンテンツや配信に関わるゲーム提携を強化するために買収や投資の可能性を探る中、同国のゲーム業界では競争がますます激化している。

一番最近ではこのたび、中国の若者に人気の動画配信プラットフォームbilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)が大規模なゲーム提携を結んだ。同社は9億6000万香港ドル(約1億2300万ドル、約136億円)を、こちらも中国で人気のゲーム配信プラットフォーム「TapTap」を運営するX.D.Networkに投資することで合意したと、中国時間4月1日に発表した。

関連記事:2億人近いユーザーを抱えUGC中心のBilibiliは中国版YouTubeになりつつある

香港とニューヨークの二重上場企業であるbilibiliは、X.D.の普通株式2266万株を1株あたり42.38香港ドル(約603円)で購入し、4.72%の株式を取得する。

両社は、X.D.社のゲームとTapTapを中心にした一連の「緊密なコラボレーション」を開始すると述べているが、詳細は明らかにしていない。

bilibiliは、アマチュアやプロのクリエイターが制作した動画コンテンツの宝庫として知られているが、収益の大部分をモバイルゲームから得ており、2020年には後者が収益の40%を占めていた。この比率は、2018年には71%、2019年には53%と徐々に減少しており、ゲームの配信以外にも収益源を多様化しようとしていることがうかがえる。

Tencent(テンセント)も同様に、長年にわたり収益の柱としてゲームを重視してきた。WeChat(ウィーチャット)を運営するTencentはオリジナルタイトルや、コンテンツ運営やプロモーションを支援する広大な投資ポートフォリオを通じて、中国のゲーム市場を支配している。

X.D.もゲームを制作しているが、近年は、従来のゲーム配信会社(スマートフォンメーカーが運営するAndroidアプリストア)に対する反逆者として台頭してきた。X.D.はHuawei(ファーウェイ)やXiaomi(シャオミ、小米科技)のように高い手数料を取らず、広告で収益を上げるというビジョンを掲げている。X.D.の提案は、急成長中のスタジオであるLilith GamesやmiHoYo、Alibaba(アリババ)、6年間で3000人の強力なゲームチームを構築したByteDance(バイトダンス)など、数多くのゲーム会社を同社の投資家として惹きつけてきた。

関連記事:TikTokの親会社ByteDanceはゲーム業界にどう切り込むか

bilibiliの投資は、X.D.のトップクラスゲーム投資家のマトリックスをさらに強化するものだ。Tencentは目立って不在だが、ByteDanceがAlibabaに次ぐ同社の新たな宿敵であることは周知の事実だ。ロイターによると、TikTok(ティックトック)の親会社であるByteDanceは最近、東南アジアで地歩を固めているゲームスタジオ、Moontonを買収するためにTencentに競り勝ったという。TikTokの中国版であるDouyin(抖音)も、WeChatで公開されているコンテンツからユーザーの注目を奪おうとしている。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:bilibiliX.D.Network投資ゲーム実況

画像クレジット:Gao Yuwen / VCG / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)