2021年の米企業ニューストップ5:ベゾス氏の退任、Salesforceの共同CEO就任など

消費者側と比べると、企業側の取材はなんだか退屈だという間違った印象を持たれがちだが、これまで数十年にわたってこの分野を追いかけてきた筆者からすると、これほど真実から遠く離れたものはないと断言できる。

理由の1つは、金額が大きいということだ。例えば、Oracle(オラクル)はCerner(サーナー)を280億ドル(約3兆2200億円)で買収すると米国時間12月20日に発表してヘルスケア業界を揺るがした。UiPath(ユーアイパス)は無名のスタートアップから、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の絶対的な存在にまで成長した。上場後に少し下落したが、2021年初めには350億ドル(約4兆円)のバリュエーションがついた。

策謀もある。例えば、アクティビスト投資家が、企業が通常なら好まないような動きを強いる試みや、2021年にBox(ボックス)で見られたような取締役会の主導権争いなどだ。

ドラマもある。100億ドル(約1兆1500億円)規模の国防総省のJEDIクラウド契約をめぐる、世界最大の企業向けクラウドインフラ企業同士の3年にわたる戦いがその例だ。この調達プロセスでは、訴訟、度重なる審査、大統領の干渉などあらゆることが起こった。

つまり、企業の話題は多い。が、つまらないだろうか。決してそんなことはないと思う。2021年も例外ではなかった。そこで、2021年の締めくくりに、企業を揺るがした5つのストーリーを紹介する。12カ月にわたるニュースを5大ストーリーに絞り込むのは難しいが、筆者が選んだのは以下の5つだ。

アマゾンのベゾス、ジャシー、セリプスキーのイス取りゲーム

2021年最大のニュースは、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏がCEOから退き、会長職に就くと決意したことだろう。Amazon(アマゾン)はeコマース企業で、必ずしも筆者の担当範囲ではなく、このこと自体は企業に大きな影響を与えるものではなかったが、その後に起こったことがある。

ベゾス氏が発表した2月のその日に、後任にAmazon Web Services(アマゾンウェブサービス)のCEO、Andy Jassy(アンディ・ジャシー)氏を選んだことも明らかになった。ジャシー氏は、Amazonのクラウドインフラ事業を巨大なビジネスに育て上げ、直近の四半期で年換算売上高640億ドル(約7兆3600億円)を突破させた人物だ。

ジャシー氏の後任探しは簡単ではなかったが、旧知の人間に目をつけ、Tableau(タブロー)のCEO、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏を後任として雇った。同氏はAWSの創業時から2016年まで在籍していたが、Tableau移籍時に退職した。今は列車を走らせ続けることが仕事だ。同氏には勢いがあるが、競争はますます激しくなっている。セリプスキー氏のリーダーシップの下、2022年どうなるかは注目されるところだ。

Salesforceブレット・テイラー氏、絶好調の1週間

もう1つの話題は、Salesforce(セールスフォース)幹部のBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、11月末の同じ週に2つの大きなポジションを手に入れ同氏にとってかなり甘い1週間となったことだ。まず、Twitter(ツイッター)の取締役会長に就任した。それだけでは物足りなかったようで、Salesforceの共同CEOにも就任した。2016年に自身の会社であるQuip(クイップ)が7億5000万ドル(約860億円)でSalesforceに買収されて以来、同社で急速に出世した。

Twitterでは長年CEOを務めたJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が退任し、Parag Agrawal(パラグ・アグラワル)氏が就任するという騒ぎがあった。その一方で、テイラー氏がCRM大手の共同CEOに就任したことは、企業という視点からは明らかにより大きなニュースだった。The Informationは、テイラー氏が引き続きSalesforceの共同創業者で会長兼共同CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏に報告すると報じた。テイラー氏はこの昇進により、もし2021年初めのベゾス氏と同様にベニオフ氏が会長職に退くと決めれば、ベニオフ氏の後継者になる可能性が出てきた。2022年に考慮すべきもう1つのストーリーは、Salesforceが2016年に検討し、その後立ち消えになったTwitter買収を再検討するかどうかだ。

BoxとStarboard Valueの委任状争奪戦

Boxは、アクティビストファンドであるStarboard Value(スターボードバリュー)による取締役会乗っ取りの試みを退けた。この動きは、共同創業者でCEOのAaron Levie(アーロン・レビー)氏の解任、会社の売却、またはその両方をもたらす可能性が高いものだった。数カ月にわたるドラマは最高潮に達し、2021年の主要な企業ニュースとなった。

アクティビストファンドであるStarboard Valueは、2019年にクラウドコンテンツ管理会社であるBoxの株式を7.5%取得し、その後8.8%にまで増やし、同社に対しかなりの影響力をもつことになった。しばらくは静観していたが、2020年、意を決し、取締役会を引き継ぎたいとBoxに通告し、委任状争奪戦が繰り広げられた。

この間、BoxはKKRから5億ドル(約575億円)の出資を受け、Starboardをさらに怒らせた。また、Starboardの役員候補に対抗する文書をSECに提出し、議決権保有者が最新の業績を見ることができるよう決算報告を早めに発表した。幸運にも、同社はStarboardが動いた後、2四半期連続で好成績を収め、委任状争奪戦にあっさり勝利し、今のところ現状を維持している。2022年に何が起こるか。筆者が書いたように、おそらくBoxが大胆な行動を起こす時が来た。KKRの資金の一部を使って隣接する機能を買収するのではないか。

国防総省がJEDIを廃止し、新たなクラウド構想を発表

100億ドル(約1兆1500億円)の10年にわたるJEDIクラウド契約は、2018年に発表されたその日から、ドラマに満ちていた。その間、筆者は関連する記事を30本以上書いていたので、2021年ついに国防総省がそれを潰すと決めたときは、大きなニュースだった。

当初から、これまでの常識では、Amazonが勝つための契約だと言われてきた。RFP(事業者公募書類)がAmazonを意識して書かれているという不満もあったが、最終的に契約を獲得したのはMicrosoft(マイクロソフト)だった。だがAmazonは、前大統領がWashington Post(ワシントンポスト)紙のオーナーでもあるAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏を個人的に嫌っていたため、調達プロセスに直接介入してきたとして、裁判に訴えた。また、Amazonは、実力では自社が勝つとも主張した。

Amazonは2020年2月、このプロジェクトを保留にするよう判事を説得することに成功した。プロジェクトが再開されることはなく、国防総省は7月に新しいプロジェクトに移行することを決めた。また、2018年から技術が変わったとし(これは事実)、新しい構想ではJEDIで追求した勝者総取り方式ではなく、マルチベンダー方式で進めることを賢明にも決定した。

DellがVMwareをスピンアウト

2015年にDell(デル)がEMCを670億ドル(約7兆7000億円、後に580億ドル[約6兆6700億円]に修正)で買収したとき、それはテック史上最大の取引であり、長年にわたって追いかけて書くべき、もう1つの凄い話だった。VMware(ヴィエムウェア)はこの取引で最も価値ある資産であったため、筆者のような企業記者たちは、Dellがそれをどうするつもりなのか、目を光らせていた。しかし、2021年の初め、Dellが90億ドル(約1兆350億円)規模のスピンアウトを発表し、大きな話題となった。

EMC買収による多額の影響がまだ帳簿に残っていることを考えると、少し小さい金額のような気もした。来年はどうなるのだろうか。Dellから解放されたVMwareをどこかが買収する可能性はあるのだろうか。Dellは依然として大株主であり、EMC買収にともなう負債残高もまだ多額にのぼるため、2022年には間違いなく注目される存在になるはずだ。

5つだけ選ぶのは難しい。どうしても価値あるストーリーを外してしまう。あなたなら何を選ぶだろうか。コメントで教えて欲しい。

画像クレジット:EschCollection / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国防総省、中止したJEDIに代わる新たなクラウド契約を発表

米国防総省は米国時間11月19日、白紙に戻された10年間 / 100億ドル(約1兆1400億円)規模のJEDI契約に代わる、新たなクラウド契約の限定的な入札募集を発表した。以前、JEDI(ジェダイ、Joint Enterprise Defense Infrastructureの略)と名付けられた勝者総取りの入札が行われたことを覚えているだろうか?今回の契約は、Joint Warfighting Cloud Capability、略してJWCCと呼ばれる、あまり耳慣れない名前が付けられている。

RFP(提案依頼書)による条件の下、入札を求められているのは、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Oracle(オラクル)の4社。JEDIのRFPでは、ベンダーに選ばれた1社のみが独占することになっていたが、今回のJWCCは複数の企業が契約を得られるマルチベンダー式であることが大きな違いだ。実際に、米国防総省はAmazonとマイクロソフトを有力視しているものの、資格のある(依頼された)ベンダーであれば、契約の一部を得られる可能性があると明言している。

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RFPによると「政府は2社、すなわちAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)およびマイクロソフトとのIDIQ(調達時期・数量未確定)契約を想定しているが、しかし国防総省の要求を満たす能力を示すすべてのクラウドサービスプロバイダー(CSP)に発注する意向である」としている。

この件に関わるベンダーの数を制限したのは、要件を調査した結果、これを満たすことができる企業の数が限られていることがわかったからだと思われる。「市場調査によると、米国防総省の要求を満たすことができるソースは限られていることがわかった。現在、米国防総省が把握している米国のハイパースケールCSP(クラウドサービスプロバイダー)は5社のみ。さらに、それらのハイパースケールCSPのうち、AWSとマイクロソフトの2社のみが、国家安全保障上のあらゆるレベルの分類でクラウドサービスを提供することを含め、現時点で国防総省のすべての要件を満たすことができると思われる」と、RFPには書かれている。

政府はこの契約の金額設定をまだ行っている最中だが、複数のベンダーが関わるため、今はなきJEDI契約の100億ドルを超える可能性も十分にある。「国防総省は今回の調達の契約上限をまだ評価中だが、数十億ドル(数千億円)の上限が必要になると予想している。契約発注額の上限は、各ベンダーに指示される募集要項に記載される予定である」とのことだ。

今回のRFPで選定された企業は、3年間の契約に加えて、1年間のオプション期間が2回設けられることも注目に値するだろう。

JEDIは、トップレベルのクラウドベンダーが競い合い、それより小規模なベンダーも参入しようとしたため、当初から論争の的となっていた。多くのドラマがあり、大統領への苦情大統領からの苦情大統領による干渉への苦情多くの公式調査、そしていくつかの訴訟があった。Amazonに決まると誰もが思っていたにもかかわらず、Amazonは受注することができなかった。結局、契約を勝ち取ったのはマイクロソフトだった

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ところが、それだけで終わらず、両社はこの決定をめぐって激しい論戦を繰り広げ、当然ながら訴訟に発展した。最終的には国防総省がすべてにうんざりして、このプロジェクトを完全に破棄することに決めたのだ。

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しかし、契約がなくなったからといって、軍のコンピューティングシステムを近代化する必要性がなくなったわけではない。だから国防総省は今回、クラウドインフラストラクチャによるテクノロジーの近代化を前面に押し出す新たな取り組みを発表したのである。

Synergy Research(シナジー・リサーチ)の調べによると第3四半期の決算発表時点では、Amazon、マイクロソフト、Googleの上位3社で、パブリッククラウド市場シェアの70%を占めていることは注目に値する。クラウドインフラストラクチャ市場では、Amazonが33%のシェアで首位、マイクロソフトが約20%で続き、Googleは10%で3位につけている。シナジー社によれば、オラクルは一桁台前半とのことだ。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1兆円超規模の米国防総省JEDIクラウド契約を最終的に破綻させたのは単一ベンダー要件

米国防総省がJEDIのクラウドプログラムを中止したことで、見込みがないように思われていたプロジェクトの長く険しい道のりが終わりを告げた。問題は、結局うまくいかなかったのはなぜかということだ。最終的には、国防総省が単一ベンダー要件に固執していることがその原因として指摘できると思う。その条件は、誰にとっても意味をなさないものであり、表面上は契約を勝ち取ったベンダーでさえもそうである。

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国防総省は2018年3月、次世代のクラウドインフラストラクチャを構築するための100億ドル(約1兆1000億円)規模の10年にわたるクラウド契約発表した。別名「Joint Enterprise Defense Infrastructure」、略称は「JEDI(ジェダイ)」である。スター・ウォーズを思わせる呼称はさておいておこう。

このアイデアは、単一ベンダーとの10年間の契約で、2年間のオプションで開始するものだった。すべてが順調に進めば、5年のオプションが行使され、最終的に3年のオプションで契約はクローズする。年間利益は10億ドル(約1100億円)が見込まれていた。

契約が完了した時点での総額はかなり大きいが、AmazonやOracle、Microsoftのような規模の企業にとって、年間10億ドルは大した金額ではない。その意義は、このような知名度の高い契約を獲得したことの威信と、それが販売を誇示する権利にどのような意味をもたらすかということにあった。つまるところ、国防総省の審査に合格すれば、おそらくほぼあらゆる人の機密データを扱えることになるだろうということだ。

いずれにせよ、単一ベンダー契約のアイデアは、クラウドがクラス最高のベンダーたちと協働するオプションを与えてくれるという一般通念に反するものだった。この不運な契約の最終的な勝者であるMicrosoftは、2018年4月のインタビューで、単一ベンダーのアプローチには欠陥があることを認めている。

Microsoftの防衛事業を統括するLeigh Madden(リー・マデン)氏は、Microsoftがそうした契約を勝ち取ることができると確信しているが、それは必ずしも国防総省にとって最善のアプローチではないとTechCrunchに対して語っていた。「国防総省が単一ベンダーだけを採用する道を行くのなら、私たちは勝つために参加します。しかしそうは言いいながらも、それは私たちが世界で見ているような、80%のお客様がマルチクラウドソリューションを採用している動きとは、対照的なものなのです」。

おそらくそうした要因により、最初から絶望的だったのだろう。その上、要件が完全に明らかになる前から、クラウドインフラストラクチャ市場シェアをリードするAmazonを優遇しているという不満の声が上がっていた。Oracleは特に声高に主張しており、RFPが公表される前から、前大統領に直接訴えていた。同社はその後、米政府説明責任局(Government Accountability Office)に苦情を申し立て、このプロセス全体が不公正で、Amazonに有利になるように設計されていたとして複数の訴訟を起こした。しかし、彼らの苦情はその都度却下された。そしてご存知の通り、結局はAmazonが勝者とはならなかった。

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その過程において多くのドラマが展開される中、2019年4月に国防総省はファイナリストとして2社を指名した。そしておそらく、その2社がクラウドインフラストラクチャ市場のリーダーであるMicrosoftとAmazonであったことはそれほど驚くことではなかっただろう。ゲームが開始された。

前大統領の直接の介入もあった。同年の8月に、前大統領は国防長官に対し、本プロセスがAmazonに有利であるとの懸念を挙げて、事案を再検討するよう命じた。これに対しては、国防総省、会計検査院、裁判所から数度にわたって反論がなされている。また、元国防長官Jim Mattis(ジム・マティス)氏は自身の著書で、同氏が前大統領から「100億ドルの契約からAmazonを締め出せ」と命じられたことを明らかにしており、問題をさらに複雑にしている。前大統領の目的は、ワシントンポスト紙のオーナーでもあるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に仕返しすることにあるように思われた。

プロセスにおけるAmazonの優位性についてのこうした主張をよそに、2019年10月の金曜日の午後遅くに勝者が発表され、勝利を得たのは実際にはAmazonではなかった。その代わり、Microsoftが契約を勝ち取った。あるいは少なくともそのように思われた。そしてAmazonが法廷でこの決定に異議を唱えるのもそう遠くないだろうと見られていた。

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AWSの前CEOのAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は、AWSのre:Inventの発表から数カ月後には、大統領がこのプロセスに不当な影響を与えたという考えを表明していた。

「政治的な干渉を受ける事態に陥ってしまったようです。ある会社に対する軽蔑を公にしている現職の大統領と、その会社のリーダーがいる状況では、国防総省を含む政府機関が報復を恐れずに客観的な決定を下すことが非常に難しくなるでしょう」とジャシー氏は当時語っている。

そして訴訟が起こされた。同社は2019年11月に、技術的なメリットではなく政治的な動機によるものだとして、Microsoftを選択する決定に不服を申し立てる意向を示した。そして2020年1月、Amazonは訴訟が解決するまでプロジェクトを停止するよう裁判所に要請した。翌2月、連邦判事はAmazonの主張に同意し、プロジェクトの停止を命じた。プロジェクトが再始動することはないだろうと思われた。

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国防総省は同年4月に、契約調達プロセスに関する内部調査を完了し、不正行為は確認されなかったと結論付けた。当時筆者は次のように書いている。

100億ドルの長期にわたるJEDI契約は当初から論争の的になっていた。国防総省の監察総監室による本日付の報告書には、若干の落ち着かない状況や潜在的な確執がありながらも、全体的な契約調達プロセスは公正かつ合法的なものであり、パブリックコメントが行われたものの、大統領の言動はプロセスに不当な影響を与えなかったと記されている。

2020年9月、国防総省は選定プロセスのレビューを終え、Microsoftが勝者であると再び結論付けたが、訴訟はまだ進行中であり、プロジェクトは停滞したままであったため、それほど重要な意味を持たなかった。

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法的な論争は2021年に入っても続いていた。そして国防総省は先日、「2018年にJEDIのビジョンを発表して以降、状況は変化しており、先に進む時期に来ている」と述べ、ついにこのプロジェクトを白紙に戻した。

国防総省は最終的に、単一ベンダーアプローチは最善の方法ではないという結論に達した。プロジェクトを軌道に乗せることができなかったからではなく、複数のベンダーと協力し、特定のベンダーに縛られない方が、技術的にもビジネス的にも理にかなっているからだ。

国防総省の最高情報責任者を務めるJohn Sherman(ジョン・シャーマン)氏は声明で次のように述べている。「JEDIが計画されたのは、当省のニーズが今とは異なり、CSP(クラウドサービスプロバイダー)の技術と我々のクラウドとの間の知識交流が成熟していなかった時代です。JADC2(Joint All Domain Command and Control、コネクテッドセンサーのネットワーク構築に関するイニチアチブ)やADA(AI and Data Acceleration)などの我々の新しいイニシアチブ、国防総省内のクラウドエコシステムの発展、複数のクラウド環境を活用してミッションを実行するためのユーザー要件の変化などを考慮すると、我々を取り巻く環境は進化しており、従来型と非従来型の戦闘ドメインで優位に立つための新たな道すじが保証されています」。

言い換えれば、国防総省は、世界の他のほとんどの地域と同様に、マルチクラウド、マルチベンダーアプローチを採用することで、より多くの恩恵を受けられるということだ。とはいえ、国防総省はベンダーの選択をMicrosoftとAmazonに限定することも示唆した。

同省は声明で次のように述べている。「当省は、Microsoft Corporation(Microsoft)やAmazon Web Services(AWS)を含む限定された数の業者からの提案を求める意向です。市場調査によると、これら2つのベンダーが当省の要件を満たすことができる唯一のクラウドサービスプロバイダー(CSP)であることが示されています」。

これはGoogleやOracle、IBMには受け入れ難いことかもしれない。ただし同省は、将来的に他のCSPがそれらの要件を処理する能力を持っているかどうかを確認するために、市場を監視し続けるとしている。

最終的に、単一ベンダー要件に大きく左右されたことで、競争が過熱し、政治的に緊張した雰囲気が生まれ、プロジェクトが実現しない結果となった。国防総省はこの先、技術のキャッチアップに取り組む必要がある。JEDIの調達プロセス全体に関わる芝居じみた所行に3年の歳月が費やされたが、それはこの長きにわたる、不穏当な様相も呈する技術の物語において、最も嘆かわしい側面と言えるかもしれない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

米国防総省がついにMSとの1兆円超規模クラウド契約「JEDI」を白紙に、リセットしてやり直し

世界最大のクラウドインフラ企業が数年にわたって争奪戦を繰り広げてきた結果、米国防総省は米国時間7月6日、論争の的となっていた勝者総取りの100億ドル(約1兆1000億円)規模のJEDI契約をついに白紙に戻した。結局、誰も勝てなかった。

「テクノロジー環境の変化にともない、長い間延期されてきたJEDIクラウド契約は、もはや国防総省の能力ギャップを埋める要件を満たさないことが明らかになりました」と、米国防総省の広報担当者は述べた。

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契約調達のプロセスは、2018年に国防総省のクラウドインフラ戦略を担う100億ドル(約1兆1000億円)、10年にわたる契約のRFP募集から始まった。国防総省の広報担当者であるHeather Babb(ヘザー・バブ)氏はTechCrunchに対し、1人勝ち方式を採用する理由を次のように述べていた。「単一受注が有利なのは、特にセキュリティの向上、データへのアクセス性の向上、当省によるクラウドサービスの採用と利用を簡素化できるからです」と、当時同氏は語った。

しかし企業各社は当初から、マルチベンダー方式の方が国防総省にとって良い結果をもたらすと考え、1人勝ち方式に反対していた。特にOracle(オラクル)などは、入札プロセスがAmazon(アマゾン)に有利になるように設計されていると考えていたようだ。

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AmazonとMicrosoft(マイクロソフト)の2社が最終選考に残り、最終的にはMicrosoftが選ばれた。しかし、Amazonは自分たちの方が優れた技術を持っているととともに、当時CEOだった(ワシントンポスト紙のオーナーでもある)Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を公然と軽蔑していた前大統領が直接干渉したために、この契約を失ったと信じていた。

Amazonは決定に対して法廷で争うことにしたが、数カ月の遅れの後、国防総省はそろそろ先に進むべきだという判断を下した。Microsoftは7月6日のブログ記事で、この遅延を引き起こした原因として、Amazonを非難した。

「国防総省がMicrosoftをJEDIパートナーとして選定してから20カ月が経過し、政策立案者が注目すべき課題が浮き彫りになりました。1つの企業が、国を守る人々のための重要な技術アップグレードを何年も遅らせることができるのであれば、抗議プロセスには改革が必要です。Amazonは2019年11月に抗議申し立てを行いましたが、訴訟から判決が出るまでに少なくとも1年はかかると予想され、その後控訴される可能性もありました」と、Microsoftは契約終了に関するブログ投稿に記している。

しかしAmazonは独自の声明の中で、プロセスが公正に行われなかったとの考えを改めて示した。「当社は国防総省の決定を理解し、同意します。残念ながら今回の契約先決定は提案のメリットに基づくものではなく、政府調達にあるまじき外部からの影響を受けたものでした。米国の軍隊を支援し、戦闘員や防衛パートナーが最高の技術を最高の価格で利用できるようにするための当社のコミットメントは、これまで以上に強固なものとなっています。今後も国防総省の近代化を支援し、重要な任務を達成するためのソリューションを構築していきたいと考えています」と同社の広報担当者は述べている。

最初から、うまくいくわけがなさそうに見えたプロジェクトにふさわしい終わり方には違いない。国防総省がちょっと洒落っぽく「スター・ウォーズ」の名を冠したこの契約を発表したときから、この調達プロセスは昼ドラのように紆余曲折してきた。

初めの頃は騒々しく激しさが渦巻いたが、結果的には無意味な結果につながっていった。我々は、次に起こるであろうクラウド調達プロセスに注意を移すこととしよう。

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タグ:米国防総省MicrosoftJEDIAmazon裁判

画像クレジット:US Dept of Defense / Wikimedia Commons under a Public Domain license.

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

アマゾンがマイクロソフトが獲得した1兆円超の米国防総省JEDI契約の差し止めを裁判所に要請

米国防総省が米軍に技術近代化の道筋を提供するとされていた100億ドル(約1兆300億円)、10年におよぶJEDIクラウドの契約を発表してから2年以上が経過した。Microsoft(マイクロソフト)が2019年10月に契約を獲得した一方で、Amazon(アマゾン)はその決定に抗議するために裁判所に訴え、それ以来、法的には中途半端な状態が続いている。

米国時間12月15日にはアマゾンが、マイクロソフトを選ぶという決定を差し止めるように、裁判官に求める最新の一手を法廷闘争で打ったとき、この政府調達を巡る長い物語に新たな変化が生じた。アマゾンの主張は以前にも行ったものと似ているが、今回は国防総省の再評価プロセスを狙ったものだ。この再評価時に、国防総省は契約と選定プロセスを見直した結果、マイクロソフトという決定に変わりはないと2020年9月に発表していた。

アマゾンは、この再評価に大きな欠陥があり、大統領からの不当な影響や偏見、圧力を受けていたと考えている。これを踏まえてアマゾンは、マイクロソフトが選ばれた契約の決定を差し止めるよう裁判所に求めている。

JEDIの再評価と再決定は、政治的な理由で官僚の誠実な分析と論理的思考を抑圧する政権の犠牲となり、最終的には国家安全保障と効率的で合法的な税金の使用を損なうことになる。国防総省はこの調達を客観的かつ誠実に実施していないことを改めて露わにしている。再決定は差し止められるべきである。

想像の通り、マイクロソフトのコミュニケーション担当本社副社長であるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、このアマゾンの主張に同意せず、自分の会社がベストプライスで落札したと信じている。

「入札で負けたアマゾンは、当社の価格設定を知らされ、当初の価格が高すぎたことに気づきました。その後、彼らは価格を下げるために入札を修正しました。しかし、すべての基準を同時に見渡したとき、国防総省のキャリア調達担当者は、優れた技術的優位性と全体的な価値を考えると、当社が最良のソリューションを提供し続けると判断したのです」と、ショー氏はTechCrunchに共有した声明の中で述べている。

アマゾンの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、「我々は単に、この契約先決定に露骨に影響を与えた技術的な誤り、偏見、政治的な干渉に関して、裁判所による公正で客観的な見直しを求めているだけです」とのことだ。

両者の立場からすれば、いい分はそうなるだろう。

国防総省は2018年に、JEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)と名付けられた100億ドル、10年に渡る契約のために入札を行うと発表した。一般的な政府の契約に比べて、はるかに大規模なその金額と領域は広く注目を集め、その調達プロセスは最初から議論の的となっていた。この入札プロセスがアマゾンに有利になるように構成されていると不公正を主張する声が、特にオラクルから上がっていたからだ。

最初の発表から2年以上が経過し、マイクロソフトが当初の契約を勝ち取ってから1年以上が経過した。しかし、いまだに大手テック企業2社が互いに批判し合う法廷闘争では膠着状態が続いている(未訳記事)。どちらも譲歩しそうにないため、最終的な判断は裁判所に委ねられることになる。おそらくこれで長い戦いの物語に終止符が打たれることだろう。

【注記】国防総省はコメントを求める我々の要求に答えていない。状況に変化があればこの記事を更新する予定だ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)