スマート配電盤のSpanがAmazon Alexaと統合、家庭内の電気系統が音声操作で制御・監視可能に

Span(スパン)のデジタルヒューズボックスと、Amazon(アマゾン)の音声認識インターフェース「Alexa(アレクサ)」の統合は、家庭内におけるエネルギー使用量の制御やデバイスの自動化を、少しだけ簡単にする可能性がある。

この統合に合わせて、AmazonのAlexa Fund(アレクサ・ファンド)と巨大保険会社Munich Re Ventures(ミュンヘン・リー・ベンチャーズ)のHSBファンドから、新たに2000万ドル(約20億8000万円)の資金が、このスタートアップ企業に投入された。

Alexaが統合されることで、Spanのスマート配電盤を使用している住宅では、家庭内のあらゆる電気回路や電化製品のオン / オフ、各電化製品が使用している電力の監視、どの電源が家庭で最も発電しているかの判断が可能になる。

たとえば「Alexa、Spanに確認して。今、最も電力を消費しているのは何?」と質問すると、答えが返ってくる。Spanの最高経営責任者であるArch Rao(アーチ・ラオ)氏によると、Alexaの統合によって、住宅所有者は家族が持つスマートフォンなどのデバイスや家電製品を、家庭内の配線と接続することが可能になるという。

Alexaの統合は、Spanにとってテック企業が長い間有望視してきたホームオートメーションのハブとなる方法だと、ラオ氏は考えている。

「今日の家庭には、あまりにも多くのデバイスがあり、あまりにも多くのアプリがあります。我々の利点は、一度設置してしまえば、今後30年から40年の間、家の中に永続的に存在し、家の中のすべての電気に接続されているということです」とラオ氏はいう。

エネルギー使用量や出力の監視に加えて、Alexaのコマンドを使えば、居住者はシステムにプログラムされている各デバイスの電源やスイッチをオフにすることもできる。

「私たちの配電パネルは、建築環境の中で家庭に仮想的なインターフェイスを提供します。それは非常に有能なエッジデバイスであり、住宅内の電気系統をリアルタイムで監視・制御することを可能にする、本当の意味での集約ポイントと神経中枢のようなものになります」とラオ氏は語っている。

今後は、Spanが家庭内の水センサーや火災報知器センサーなどの機器とも統合して、電気系統以外の制御も提供することをラオ氏は想定している。それが実現すれば、Munich Reのような保険会社にとって有益だ。

同社が調達した2000万ドルで、ラオ氏はSpanのデバイスをできるだけ多くの家庭に普及させるために、Munich Re保険会社やAmazonのようなパートナーと協力し、販売とマーケティングを大幅に強化させる予定だ。

ホームオートメーションとエネルギー効率のアップグレードに取り組んできたSpanは、現在大きな追い風を受けており、今後は同社の配電パネルのような技術を普及させるために、政府が補助金を設定する可能性もある。

ラオ氏はSpanの従業員数を増やすことも計画している。同社の従業員は現在35名で、ラオ氏は年末までにその数を2倍の約70名にしたいと考えている。

Spanの成長は、持続可能な選択肢の増加に向けて拡大するホームテクノロジーの分野に見られる幅広い動きのひとつだ。今や多くの家庭で電化が進む給湯器やコンロなどの製品だけでなく、電気自動車の充電ステーションや家庭用蓄電装置など、エネルギーの生成や管理を行うデバイスもすべて、電力網の一部として統合が推し進められている。

「それは家庭に天然ガスを供給するパイプを断ち、オール電化をもたらします。消費者が化石燃料への依存を断ち切ろうとしているように、既存の家庭システムは効率的ではありません。各製品が統合された1つのエコシステムの構築に向け、新たなパートナーシップの機会が見え始めています」とラオ氏はいう。「家電製品の状態を監視するようなアプリケーションや、家全体を見守るようなサービスに、我々が提供するデータを組み合わせれば、これまでにないことが可能になるでしょう」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:SpanAlexaスマートホーム資金調達

画像クレジット:Span

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(翻訳:TechCrunch Japan)

テスラが第4四半期の決算を発表、蓄電池・太陽光発電事業に急成長の兆し

Tesla(テスラ)が最新の決算報告書を発表した。そこには蓄電池と太陽光発電に対するElon Musk(イーロン・マスク)氏の賭けが実を結び始めていることが示されている。

蓄電池事業はこの第4四半期に同社の攻撃的戦略における主役となり、四半期ごとの前年同期比成長率は200%に近づいている。テスラは株主向けプレゼンテーションで「(蓄電池事業の)市場展開は2019年から2020年にかけて大幅に成長しました。当社の蓄電池の総配備量は初めて単年度で3GWhを超え、前年比83%増となりました」と述べている。

太陽光発電事業にも陽光が射し込んだ。年間の太陽光発電の設置量は205MWに増加し、前年比18%増となった。「この成長は製品の簡素化、コスト削減、業界をリードする価格設定など、当社の太陽光発電設備戦略を大幅に改善した結果です」とマスク氏は語った。

Teslaの第4四半期における発電・蓄電事業の収益は7億5200万ドル(約784億円)と、前年同期の4億3600万ドル(約455億円)、第3四半期の5億7900万ドル(約604億円)から増加した。

これは、Teslaの電力事業における急成長の始まりに過ぎないと思われる。同社は長い間、世界最大の電力会社や公益事業会社の1つになりたいと公言しており、世界中の資本が再生可能エネルギーへのシフトを促進するために資源を集めている。

バイデン政権の再生可能エネルギー計画が、その目標に向けて太陽光発電の開発や建造を劇的に推し進めることで、Teslaは大きな恩恵を受ける可能性がある。この大規模なインフラ投資では、再生可能エネルギーを蓄えるために大容量のバッテリーが必要になるだろう。また、大規模な太陽光発電設備も必要になるだろう。

米連邦政府が再生可能エネルギーに資金を移す間にも、民間資本が太陽光発電やエネルギー貯蔵を劇的に後押しするために流入してきている。

先週だけでも、投資家は住宅所有者に太陽光発電設置やオール電化リフォームのために資金を貸す企業に、20億ドル(約2085億円)近くを投入した。SolarCity(ソーラーシティ)の元幹部が設立したある会社は、8億ドル(約834億円)の資金を調達したと米国時間1月27日発表したばかりだ。

少なくとも、これらの資金の一部は、テスラの蓄電池事業と太陽光発電設置事業のキャッシュレジスターを鳴らすことになるだろう。

関連記事:バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Tesla太陽光発電イーロン・マスク再生可能エネルギー決算発表

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

超コンパクトな家庭用トレッドミルTreadly 2はアプリでコミュニティとの連携も可能

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行が続く中、自宅でアクティブに過ごすための選択肢がますます重要になっている。Treadly(トレッドリー)はコンパクトで使いやすく、魅力的なスマートコネクテッド機能を備えた家庭用トレッドミルを開発することに注力しているスタートアップだ。同社は最近、第2世代の製品を発表した。この「Treadly 2 」と名づけられた新モデルは、超コンパクトで、ハードウェアの改良により使用者の体重制限も引き上げられ、さらにワークアウト時間を延長する冷却機能も追加されている。

基礎知識

Treadlyのデザインは、おそらくあなたが想像するよりもずっと小さい。ベース部分の高さはわずか9.4cm、重量は35kgだ。デッキ全体の長さは142cmで、幅は63.5cm。可倒式のハンドルは、速いペースでジョギングする際には伸ばすことができ、ウォーキングを行うだけなら畳んでおける。

デッキにはディスプレイが内蔵されており、スピード、総歩数、時間、距離などの主要なデータを白黒でシンプルながら見やすく表示する。手すり部分には手動で操作する各種コントロールが装備されているが、ベーシックモデルでは専用のリモコンで、アップグレード版の「Treadly 2 Pro」ではBluetooth経由でTreadlyアプリ(現在はiOSのみだが、Androidも近日中にリリース予定)を使って操作することもできる。

また、Treadly 2にはBluetoothスピーカーが内蔵されており、スマートフォンを接続して好きなアプリで音楽を再生しながらエクササイズに励むことが可能だ。TreadlyのiOSアプリでは、コミュニティやライブビデオと連携し、繰り返しワークアウトを行うこともできる。ユーザーはグループに参加したり、自分でグループを作ることもでき、他の人が運動している様子を見ながら一緒に運動したり、ユーザー同士が歩数や距離などの課題を出し合える機能も用意されている。

デザインと機能

Treadlyのデザインは前述のとおり非常にコンパクトで、狭いスペースにもフィットするサイズだ。使わないときには、ほとんどのソファの下に収納できるし、縦に置けば壁際やクローゼットの中に片づけることもできる。ミニマルなデザインは魅力的で、そのまま部屋に置いておいても一般的なエクササイズ器具ほど目立たない。

デッキに内蔵されたディスプレイは、コンパクトなサイズを維持しながらも、ホームジム器具に求められるすべてのフィードバックの数値を表示できる。もしこれが可倒式のハンドルバーに装備されていたら、運動中に定期的にチェックするのも簡単になるが、そうすると間違いなくバーを畳んだときに邪魔になる。それに多くの人にとって、統計的な数値が見づらいくらいの方が実はちょうどいいのかもしれない。思ったよりも数字が伸びていかないと、必要以上にワークアウトがきつく感じることがあるからだ。

ベーシックモデルには、有能でコンパクトなリモコンが付属する。ストラップがついているので、トレッドミルを使用している間には腕にかけておけば見失うことはない。Bluetoothスピーカーは期待するほどすばらしい音ではないかもしれないが、運動中に音楽を流すには必要十分といったところだろう。他にスピーカーやイヤホンを用意せずに済む。

画像クレジット:Treadly

実際にTreadly 2を使ってみたところ、確かに走ったり歩いたりする運動は可能だが、いくつか注意点もある。まず、本当の意味でのインドアランニングを期待してはいけない。このサイズのトレッドミルとしては、確かに耐荷重は優れているものの、最高速度は時速8kmほどなので、ほとんどの人にとっては低強度のジョギングにしかならない。ハンドルバーを下げると時速6kmまで落ちる。早歩きするくらいの速度だ。

Treadly 2はコンパクトな製品にもかかわらず、特に新しく改良された冷却システムのおかげで、時速8km以内で使用する分には使用時間に制限がなく、いつまでも走り続けることができる。これはすばらしい特長だ。室内に籠もって座りっぱなしのライフスタイルを改善するためと考えれば、Treadly 2の速度設定は、フィットネス上級者を除くほとんどの人にとって十分だろう。

結論

このTreadly 2は利便性、ソーシャル機能、ガイド付き使用、コネクテッドコントロール、省スペース設計を見事に融合させたコネクテッドトレッドミルで、ベーシックが749ドル(約7万8000円)、プロが849ドル(約8万8000円)と、価格も手頃な範囲に収まっている(すべてニューイヤーセール特別価格)。人気のエクササイズバイク「Peloton(ペロトン)」と同様、ほとんどの人が実際に長期的に使用する可能性が高い。この未曾有の時代の長い冬の間、アクティブに過ごすには最適だ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Treadlyエクササイズレビュー

画像クレジット:Treadly

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(翻訳:TechCrunch Japan)

GoogleがVRペイントアプリ「Tilt Brush」の開発終了とオープンソース化を発表

Facebook(フェイスブック)やApple(アップル)がAR / VRの世界でより多くのプロジェクトに点火を始めている中、Google(グーグル)は2020年、その領域における既存のプロジェクトのほとんどをシャットダウンしてきた。

そして米国時間1月26日、Googleは「Tilt Brush」の積極的な開発を終了したと発表した。Tilt Brushは、ユーザーが仮想現実空間の中でコントローラーをブラシとして使用し、デジタル彫刻や3Dの情景を創作できるVRペイントアプリ。仮想現実ソフトウェアで初期にヒットしたものの1つだった。

Googleは今後、アプリのアップデートは行わないものの、開発者が独自に改変・配布できるようにコードをオープンソース化して、GitHub上で公開すると発表した。同社によれば、Tilt BrushはVRヘッドセット向けのアプリとして、引き続き各アプリストアに並べられるという。

「私たちはみなさんの手に委ねることで、Tilt Brushを使用しているアーティストをサポートし続けたいと考えています」と、Googleのブログ記事には書かれている。「これはTilt Brushをオープンソース化し、私たちがどのようにプロジェクトを構築したか、すべての人が知ることができるようにしてTilt Brushを自分好みの方向に持っていくことを奨励するという意味です」。

Tilt Brushの開発元は、Googleが2015年に買収したSkillman & Hackett(スキルマン&ハケット)という小さなスタジオだった。

2021年1月初めには、Tilt Brushの共同開発者であるPatrick Hackett(パトリック・ハケット)氏がGoogleを退社し、VRタイトル「Space Pirate Trainer」を手がけたゲームスタジオのI-Illusionsに加わることが発表されていた。LinkedInによると、もう1人の共同創業者であるDrew Skillman(ドリュー・スキルマン)氏は、2018年にTilt Brushの開発から離れており、現在はGoogleのStadia(ステイディア)チームの一員となっている。

Googleは2020年12月、Tilt Brushで作成したデザインを含むデジタルアートをユーザーが共有できる3D素材ライブラリ「Poly」を閉鎖すると発表している。

Googleの広報担当者は、これ以上のコメントを断っている。

 

そして#TiltBrushコミュニティのみなさんへ
みなさんにはいつも刺激を受け、励まされてきました。私はすてきなみなさんのことを愛しています。この数年間で多くのすばらしい友人ができました。みなさんには永遠の恩を感じています。

私は、将来のためにしっかりとした計画を持って、Tilt Brushを離れることにしました。
これからもよろしくお願いします。

続きはこちら。
https://opensource.googleblog.com/2021/01/the-future-of-tilt-brush.html

ある人にとっては、これがTiltBrushの終わりのように見えるかもしれません。私にとって、TiltBrushは不滅です。

これまで助けてくれたチームに乾杯!

関連記事:Googleの3Dコンテンツプラットフォーム「Poly」閉鎖へ、2021年6月30日終了

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:GoogleVRTilt Brushオープンソース

画像クレジット:Google

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ソニーが最高性能・最高価格のプロ向けフルサイズミラーレス一眼カメラ「α1」を発表

Sony(ソニー)は、ビデオグラファーやスポーツ写真家が高解像度で完璧な画質を短期間のうちに求めるプロフェッショナル用デジタルカメラの世界で頂点を狙っている。新たに発表されたフルサイズミラーレス一眼カメラ「α1」は、スペック上では市場にあるすべての製品を打ち負かすが、6500ドル(日本での市場推定価格は税別80万円前後)という価格を聞けば冷静にならざるを得ないだろう。

これはもちろん、一般的な消費者のみならず、つい財布のひもが緩くなるカメラマニアや、「プロシューマー」と呼ばれるセミプロ向けの価格帯さえもはるか超えている。α1はプロのためのツールであり、キヤノンが歴代の「EOS-1D」シリーズや、最近ではフルサイズミラーレスの「EOS R5」を投入している分野だ。2020年に発売されたキヤノンのEOS R5は競合製品を超える大絶賛を受けているが、今度はソニーが明らかにこのR5を超えようとしている。

キヤノン EOS R5はフルサイズセンサー、4500万画素20コマ / 秒、優れたEVF、ボディ内手ブレ補正、8K動画など、すべての条件を満たしていた。ソニーの新製品は、それらすべてを満たす……だけでなく上回っている。

画像クレジット:Sony

α1は、50メガピクセルの静止画を毎秒30フレームで、ファインダーのブラックアウトなしで(しかも、より感度が高い裏面照射型CMOSセンサーで)撮影し、EVFのドット数はEOS R5の2倍近く、リフレッシュレートも約2倍の240fps。8K動画はより高い解像度で撮影され(ソニーは全画素の8.6Kでオーバーサンプリングする)、オーバーヒート(EOS R5の悪癖だ)することなく30分間の撮影が可能、等々。

ソニーはコストを考慮せずに、あらゆる面でキヤノンのフラッグシップ機を上回る気だったらしく、EOS R5の価格が約3800ドル(キヤノンオンラインショップ価格は税抜46万円、ボディーのみ)であるのに対して、α1は6500ドル(市場推定価格税別80万円前後)となっている。

しかし、フォトグラファーが商売道具にそのくらいの金額を出すものだ(レンズはそれと同等かさらに高額になることもある)。スポーツや自然を撮影している人なら誰でも知っていることだが、毎秒20コマではなく30コマになることで、カバーショットが撮れるかどうかの違いが生じる。動画の1ピクセル単位にまで近づいて1日中作業をしている視覚効果アーティストなら、EOS R5の8Kとα1の8Kの違いを見分けることができるだろう。それは重要なことだろうか?重要かもしれないし、そうでないかもしれない。その違いによる作品のリスクを受け入れるか、それともそれを排除するために余分なお金を支払うかは、あなた次第だ。

画像クレジット:Sony

ほぼ最高のものではなく、最高のものを手に入れられるかどうかが、単にお金の問題に過ぎないのであれば、躊躇せず小切手を切る人はたくさんいるだろう。もちろん、EOS R5が発売されたのは半年前のことなので、その後継機(Mark II)が立場を逆転させる可能性もある。

確かなことは、EOS R5もα1も、どちらもほとんどの人にとって必要以上のカメラであるということだ。これらは業界の最先端をいく製品であり、その業界はこの数年の間に着実に縮小してきた。現在、プロフェッショナルをめぐり繰り広げられている熾烈な競争は、太刀打ちできない小さなメーカーが淘汰されていくという長期的な影響を業界におよぼす可能性がある。それは年々スマートフォンが侵入しつつあるにも関わらず、今後も持続すると信じる市場に投資することでもある。

トップエンドのプロフェッショナル以外の我々にとってさらに重要なのは、カメラ業界におけるこのような競争が、後に我々が実際に購入できるモデルに進化をもたらすという恩恵に授かれることだ。誰もが本当に8Kを必要としているわけではないが、改良されたセンサーの読み出し技術やEVFは、我々の使うカメラにも「降りて」くれば、好ましいに違いない。

ソニーα1の詳しい情報はこちらの公式サイトでご覧いただける。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Sonyカメラ

画像クレジット:Sony

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebookが2020年の米大統領選挙に関する広告のターゲティングデータを研究者に公開

Facebook(フェイスブック)は、130万件の政治・社会問題に関する広告のデータセットへの学術的アクセスを、米国時間2月1日より公開する。これは2020年8月3日から11月3日(米国の選挙の日)までの間に掲載された広告も含まれる。

2019年に開始されたFacebookの広告ライブラリは、FacebookとInstagram(インスタグラム)で配信されているすべての広告を、誰でも簡単に検索・閲覧できるデータベースを提供している。2016年のロシアによる米大統領選挙干渉騒動後に実装されたこのデータベースは、研究者や記者が、トピック、企業、候補者ごとに広告を掘り下げ、広告がいつ掲載されたのか、誰が見たのか、いくらかかったのかといったデータを表示することができる。

Facebookによると、プラットフォーム上の広告をより深く見る機能の提供を決めたのは、特に広告のターゲティングについて、より多くの情報を要求する研究コミュニティからのフィードバックを受けたものだという。Facebookの非常に詳細な広告ターゲティングツールは、研究者にとって特に興味深いものだ。彼らは間もなく、閲覧者の場所や関心などのデータも含め、特定の人々がその広告を見た理由にアクセスできるようになる。

「私たちは、オンライン上の政治広告の状況を理解することが選挙を守るための鍵であり、それは私たちだけではできないことを認識しています」と、Facebookのプロダクトマネージャーを務めるSarah Clark Schiff(サラ・クラーク・シフ)氏は発表の中で述べている。

Facebookの広告ターゲティングシステムは、過去に同社を苦境に陥れたことがある。2016年、Facebookは、信用貸付、住宅、求人に関連する広告カテゴリにおいて、「民族的親和性」のターゲティングオプションを無効にした。これらのツールが、特定の人々を違法に差別することにつながるおそれがあると指摘されたためだ。2018年には、同様の差別的な広告を生む可能性があるとして、5000件の広告ターゲティングオプションを削除した。そして、トランプ支持者がホワイトハウスに乗り込んだ際には、Facebook広告のマイクロターゲティングがどれだけ利用されたかということも、いまだに議論が交わされている。

ツール自体についてどのように感じるかはともかく、Facebookの公開された広告ライブラリは記者にとって貴重なツールとなっており、問題ごとに深堀りできるだけでなく、政党別、人種別、候補者別の政治的支出を簡単にひと目で把握することができる。

今回発表された新たなターゲティングデータは、大学に関わる研究者のみがアクセスできるFacebook Open Research & Transparencyで限定公開される予定で、一般向けの広告ライブラリでは見ることができない。

関連記事:Facebook、5000以上のターゲティング項目を削除して差別広告防止へ

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook選挙Facebook広告米国大統領選挙

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アップルが古いiPhoneの性能を意図的に落としていた問題に対しイタリアで新たな集団訴訟

欧州でApple(アップル)に賠償を求める第3次集団訴訟が提起された。イタリアの消費者保護団体であるAltroconsumo(アルトロコンスーモ)は、iPhone 6シリーズについて「計画的な陳腐化」が行われたと訴えている。

この訴訟は、数年前発覚したAppleがバッテリーの劣化した古いiPhoneの性能を、ユーザーに知らせることなく、意図的に落としていた問題と関連している。同社は後にこれを認めて謝罪している。

Altroconsumoが属する消費者団体のEuroconsumers(ユーロコンシュマーズ)が発行したプレスリリースによると、このイタリアにおける集団訴訟は、補償としてiPhoneの所有者1人につき平均60ユーロ(約7600円)と計算し、総額で6000万ユーロ(約76億円)を求めている。対象とされている機種はiPhone 6、 6s、6 Plus、6s Plusだ。

欧州ではこれに先立ち、ベルギーとスペインでも、この問題を巡る集団訴訟が、2020年12月に提起されている。さらにポルトガルでも、間もなく提訴が予定されている。

この巨大テクノロジー企業は2020年、米国で同様の告発を解決した。米国ではAppleが消費者に新型iPhoneの購入や新しいバッテリーへの交換を促すために、意図的に古いiPhoneの性能を落としていると訴えられ、(任意の不正行為であることは否定しながらも)1台のiPhoneにつき約25ドル(約2600円)、総額で5億ドル(約52億円)もの大金を、和解のために支払った。

「消費者はAppleのiPhoneを購入するとき、持続可能な品質の製品を期待します。残念ながら、iPhone 6シリーズはそうではありませんでした。消費者は騙されただけでなく、フラストレーションと金銭的な被害に直面しなければなりませんでした。環境の観点から見ても、これはまったく無責任なことです」と、Euroconsumersで施策と施行の責任者を務めるEls Bruggeman(エルス・ブルッグマン)氏は、声明の中で述べている。

「この新たな訴訟は、欧州における計画的陳腐化に対する我々の闘争の最前線です。我々の要求は単純です。米国の消費者は補償を受けたのだから、欧州の消費者も同じ公正さと敬意をもって対応されたいということです」。

Euroconsumersは、この集団訴訟に対するより広い支持を呼びかけるための動画を作成した。その中でAppleを、巧みに製品の寿命を早める方法を思いつく「天才」と皮肉を述べている。

Appleは欧州の集団訴訟についてコメントを求められている。

ほぼ1年前、同社は古くなったiPhoneの性能を制限するiOSのアップデートをめぐって、フランスの競争監視委員会から2500万ユーロ(約31億5000万円)の罰金を科せられた。また、同社のウェブサイトに1カ月間、この措置に関する声明文を掲載しなければならなかった。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPhone裁判イタリア

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Visaによる買収が未遂に終わったPlaidが無名のフィンテック企業家を支援するインキュベーターを立ち上げる

Plaid(プレイド)は、バックグラウンドがよく知られていないアーリーステージのフィンテック起業家を対象とする9カ月間のインキュベーター「FinRise(フィンライズ)」を起ち上げた。2020年の夏、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)抗議活動の中で行われた社内ハッカソンに触発されたこのアクセラレーターは黒人、先住民、有色人種(BIPOC)が主導するスタートアップを明確に探している。

PlaidのグロースマネジャーであるNell Malone(ネル・マローン)氏と、デザインマネージャーのBhargavi Kamakshivalli(バルガビ・カマクシバリ)氏が、このプロジェクトの先頭に立っている。

このインキュベーターでは、ベータ段階の製品を持つポストシードおよびプレシリーズBのテック系スタートアップを、3社から5社ほど募集していると、マローン氏はTechCrunchに語った。応募には最低2人の従業員と1人の創業者が必要だ。また、明らかにフィンテック分野で活動中のスタートアップであることも条件で、具体的には消費者ビジネスのファイナンスデータに焦点を当てた事業を行っている必要がある。

この最後の前提条件は、Plaidの事業と正確に一致する。Plaidは、消費者の銀行口座とフィンテックアプリ間の結合組織として機能するソフトウェアのスタートアップ企業だ。ゆえにFinRiseは、これらの統合の創造的な延長線に感じられるが、単に新規顧客を獲得することよりも、創業者の起業を支援することに重点を置いている。

合格したスタートアップは、Plaidのリーダーからメンターシップを受け、製品の洞察を助ける専任のアカウントマネージャーと、ブートキャンプのセッションでアドバイスを受けられる起業家のネットワークを得ることができる。このインキュベーターは、Y CombinatorやTechStarsのような通常3カ月間のアクセラレータープログラムよりも長いが、そこまで集中的ではない。

「3日間のバーチャルブートキャンプは、FinRiseプログラムの中で最も集中的な部分になります」と、マローン氏は述べている。「ワークショップの後、参加者は専任のアカウントマネージャーと一緒に仕事を行い、継続的なプログラミングサポート体制を受けることになります。【略】私たちの目標は、9カ月にわたるプログラムの間、参加者にあらゆる段階で継続的なサポートを提供することです」。

奇しくも今回の発表は、Visaが規制上の問題からPlaidの買収を断念したと発表してから、わずか1週間後に行われたものだ。発表当時に買収額53億ドル(約5500億円)といわれていたこの契約は、フィンテックの創業者たちやベンチャーキャピタルから楽観的な見方をされていた。この買収を断念の発表は、民間のフィンテック企業が成長を続ける中で、政策的な問題に対処しなければならないことがいかに増えているかも明らかにしている。

3日間のブートキャンプでは、金融サービス分野における規制や法的な圧力に、スタートアップ企業がどのように対処すべきかという焦点から、このダイナミックな動きに取り組む計画だ。その他の論題としては、情報セキュリティ、エンジニアリングの実践、ユーザー中心の設計などが予定されている。

無名な起業家にとってハードルとなるのは、メンターシップではなく資金調達へのアクセスとなる傾向がある。今のところ、FinRise自身が株を取得したり資金を提供することはないが、小切手帳を持っているVC企業やアクセラレーターのネットワークに紹介することを、このインキュベーターは約束している。

もちろん、Plaidがこれらのスタートアップ企業のどこかに投資を検討するという、古典的なコーポレートベンチャーキャピタルのアプローチを取ることもあり得る。その可能性を尋ねられたマローン氏は「現在のところ、それは我々の計画には入っていません。まだこれからですから。今はプログラムを試験的に実施して、どうなるかを見るのを楽しみにしているところです」と答えた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Plaidアクセラレータープログラムインキュベーター

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

iMessageなど15種のメッセージをまとめて送受信できるPebble創業者が開発したアプリ「Beeper」

数十年前、Trillian(トリリアン)と呼ばれるソフトウェアプログラムは、インターネットユーザーがICQ、AIM、MSN Messenger(MSN メッセンジャー)など複数のIM(インスタントメッセンジャー)ネットワークと1つのウィンドウでやり取りする方法を取り入れた。

現在、Pebble(ペブル)の創設者で Y Combinator(Yコンビネータ)のパートナーであるEric Migicovsky(エリック・ミンコフスキー)氏は、このコンセプトを再検討しているが、今回は現代のチャットアプリケーションへのアクセスを集中化することに焦点を当てている。

新しく立ち上げられたアプリ「Beeper(ビーパー)」を通じて、ユーザーはWhatsApp(ワッツアップ)、Telegram(テレグラム)、Signal(シグナル)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)のDM、Messenger(メッセンジャー)、Skype(スカイプ)、Hangouts(ハングアウト)などを含む15種類のメッセージングサービスに接続することができ、さらにはちょっとした裏ワザを使えばiMessage(アイメッセージ)にも接続することができる。

ミンコフスキー氏は、スマートウォッチの先駆的企業だったPebbleが、Fitbit(フィットビット)に買収される前、同社で働いていた時にユニバーサルチャットアプリのアイデアを最初に思いついたという。

「本当はPebbleでiMessageを送信できるようにしたかったのですが、iMessageのAPIがないため、その方法を見つけることができませんでした」と、ミンコフスキー氏は説明する。しかし、同氏は2年前にMatrix(マトリクス)というプロトコルを知り、Beeperのアイデアが頭に浮かんだという。「BeeperのすべてはMatrixの上に構築されています。Matrixはオープンソースの暗号化されたメッセージングプロトコルです」と、同氏はいう。

ミンコフスキー氏はMatrixのことを、ほとんど「ハッカーのもの」と表現しているが、開発者の間では、Matrixの人気が出始めていると、同氏は考えている。Matrixは基本的に、開発者が「bridge(ブリッジ)」を使用して他のチャットネットワークに接続することができるAPIを提供している。このブリッジと呼ばれるソフトウェアを介して、1つのメッセージングサービスから別のサービスへ、メッセージを送受信できる。

「私はそれを知ったとき、『Matrixを使ってTrillionを作ることができるんじゃないか』と思いました」と 、ミンコフスキー氏は語っている。

画像クレジット:Beeper

ミンコフスキー氏は、Matrixのチャットルームで知り合ったMatrixのコントリビューターであるTulir Asokan(チューリル・アソカン)氏と、サイドプロジェクトとしてBeeperに取り組み始めた。

Beeper(以前はNovaと呼ばれていた)をすべての異なるチャットアプリで動作させるために、彼らは各アプリをつなぐ「ブリッジ」を構築しなければならなかった。このコードはオープンソースで、Gitlab.com/Novaでも公開されている。

「どんなコードを実行しているかを知ることは、人々にとって非常に重要だと我々は考えています。だから、すべてオープンソースなのです。人々はそれを調べることができます」と、ミンコフスキー氏は述べている。「そのおかげで、人々はサービスへのアクセス料として月額10ドル(約1040円)をBeeperに支払う必要もなくなります。自分たちが何をするのかわかっていれば、自分たちのサーバーでブリッジを動かすことも可能です」。

Beeperでは、すべてのメッセージングプラットフォームごとにそれぞれ独自の設定が必要だが、iMessageを動作させるのが最も複雑だった。その解決策は次のように、控えめにいっても少々ややこしい。

それは実際、Beeperがユーザーに古い脱獄済みのiPhone 4S(iPhone 4Sは安いので)を送付し、それをブリッジとして機能させるというものだ。iPhoneにインストールされたコードは、iMessageが保存されているデータベースファイルを読み書きする。iPhoneはメッセージを自分の秘密鍵で暗号化し、Beeperのネットワークを介して送信するため、Beeper(会社)は、ユーザーが送信したメッセージを読み取ることはできない、とミンコフスキー氏はいう。

このプロセスによりAndroid、Windows、LinuxのユーザーもiMessageを使うことができるようになる。しかし、BeeperがiMessageを利用できるようにした方法はこれだけではない。常時接続のデバイスを持っているMacユーザーは、iPhone 4Sを使う代わりに、Beeper Macアプリをインストールしてブリッジとして機能させることもできる。

ミンコフスキー氏は、Apple(アップル)による強制シャットダウンや訴訟を恐れていないという。

「彼らに何ができるでしょうか?」と、ミンコフスキー氏は修辞疑問文で尋ねた。

Appleが何らかの方法で、Beeperがユーザーに脱獄済みのiPhoneを提供することを阻止したとしても、同社は顧客をコミュニティサイトのCraigslist(クレイグスリスト)にリダイレクトし、そこで同社から古いiPhoneを手に入れるようにすることができる。一方、ソフトウェア自体はオープンソースであり、ユーザーの自宅のiPhone上で実行されている。だから、実際にBeeperがiMessage自体に「ハッキング」しているわけではない。

「メッセージングの自由という現在の状況を考えると、Appleが自分たちのユーザーとケンカを始めるのは正気の沙汰ではないと思います」と、ミンコフスキー氏は付け加えた。さらに同氏は、欧州委員会がGDPR(EU一般データ保護規則)と同じように、すべての企業が他のプラットフォーム向けにメッセージングをオープンにすることを義務づける法案に取り組んでいることに注目する。

「この法案が通れば、法的にBeeperが行うようなことをする人をブロックできなくなります」と、ミンコフスキー氏は指摘した。

画像クレジット:Beeper

Beeperはもちろん、iMessageのロックダウンを突破しようとすることに注力した最初のスタートアップでもなければ、唯一のスタートアップでもない。たとえばAirMessageweMessageのように、過去には他のアプリがこれを試みてきた。しかし、これらのアプリは限られた適用に留まっている。また、チャットアプリケーションを一元化しようとしているのも、Beeperだけではない。Texts.comも同様のシステムを開発している。

そうはいっても、Beeperの登録者数は、ミンコフスキー氏が予想していたよりも多かったと同氏はいう(具体的な数字は明らかにしなかったが)。その結果、ユーザーの登録に時間がかかっているという(そのため、我々は実際にBeeperを使用できておらず、その使い勝手や要望などは語ることができない)。

競合他社と比べて、Beeperが優位に立つ可能性があるのは、何が優れたユーザーエクスペリエンスになるのかを理解していることだろう。Pebbleは最終的に、200万本以上のスマートウオッチを販売した

Beeperは現在、検索、スヌーズ、アーカイブ、リマインダーなどの機能を備えており、MacOS、Windows、Linux、iOS、Androidで動作する。

長期的には、他のチャットアプリのようにテキストやメディア、ステッカー、絵文字を共有するだけでなく、それ以上のことができるプラットフォームを、ミンコフスキー氏は構想している。チームは、人々がBeeperの上に、より多くのツールやアプリを構築できるプラットフォームを作ろうとしている。それはGmailのプラグインのようなシステムだ。たとえばユーザーがチャット内からカレンダーにイベントをスケジュールできるツールや、あるいはClearbit(クリアビット)のように、特定のユーザーとの最近のメッセージを複数のプラットフォームにまたがって表示できるツールも可能かもしれない。

ミンコフスキー氏は、Beeperの開発資金の詳細についても言及しなかったが、Beeperは彼にとって次のステップ、つまり新しい会社としてそこで働く可能性があるのではないかと尋ねると、「そうなるかもしれません」と答えた。

「今のところ、私はYC(Yコンビネータ)での時間を楽しんでいます。すばらしい仕事です。YCで一緒に働いているすべての企業から刺激を受けています。ベンチャーキャピタルの仕事の一部は、クールなものを作り上げてそれを起ち上げたすべての起業家たちと話をすることです。私は少し嫉妬しています」と、同氏は認めた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:メッセージチャットツールオープンソースBeeperPebble

画像クレジット:Beeper

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ボストン・グローブ紙が記事内の実名や顔写真の削除を求める人々の要望を検討する委員会設置

The Boston Globe(ボストン・グローブ)紙は、新聞の記事が自分の評判を害していると感じた人が、その記事の更新や匿名化を求めることができる新しいプログラムを開始している。これはEUの「忘れられる権利」を連想させるが、物議を醸す可能性は少ないだろう。同紙の編集部のみに関係することで、コンテンツにとらわれない検索エンジンとは違うからだ。

この「Fresh Start(フレッシュスタート)」と名づけられた取り組みは、レストランの悪いレビューや重大な犯罪の報道を削除するためのものではなく、むしろ、ごく一般的な犯罪事件記事のためのものだ。たとえば「誰々が無秩序な行為で逮捕され、逮捕に抵抗した」と100語程度で書かれた顔写真つきの記事などである。

もちろん、このような記事は、読者に地域の犯罪を知らせるという目的を果たしている。しかし、グローブ紙の編集者であるBrian McGrory(ブライアン・マクグローリー)氏は、次のように指摘する。

短くて比較的重要ではないグローブ紙の記事が、その対象となった一般の人々の未来に影響を与えることは、決して我々の意図ではありませんでした。

刑事司法制度を考えると、これは有色人種に過度な影響を与えているというのが私たちの感覚です。このプログラムの背後にある考え方は、それに対処を始めるというものです。

警察官の偏見による証言が、報道で遺伝的な偏見に変わる。これは深刻な問題であり、米国が何十年にもわたって取り組んできた問題だ。しかし、それはデジタル記録の性質によって悪化している。

応募書類を見る雇用主は、名前や他のいくつかの詳細を検索するだけで、顔写真付きの犯罪記録のような目立った情報を見つけることができる。また、メディアは低所得層の逮捕者についてよく取り上げるが、低所得層者が無罪判決や不起訴処分になったことはほとんど取り上げない。結局、誰もそんな記事をクリックしないからだ。そのため、報道は不完全なものになり、記事に書かれた人にとって潜在的に不利益な情報となることが多い。

検索エンジンのレベルでこれを修正しようとする欧州での試みは、反対と困難に直面している。検索エンジンはそれ自体が索引を作成する情報に関わっているわけではないし、検索エンジンが何を削除するべきか、または削除するべきではないかを決定する立場に置かれるべきではないという意見もあるからだ。さらに、1つの記事が複製されたり、何十回、何千回と引用されたり、インターネットアーカイブのようなサイトにバックアップされたりすることがあるので、タスクは複雑になるだろう。では、どうすればいいのだろうか?

同時に、出版物の削除や内容の変更を求めるよりも、検索エンジンの検索する可能性に制限を求める方が、言論の自由を脅かすものではないことは確かだ。議論は現在も続いている。

グローブ紙のアプローチは、Google(グーグル)に人の記録を「忘れさせる」ほど包括的なものではないが、ずっと単純で反対意見も受けにくい。グローブ紙はもちろん自身の記事に対する編集権を行使しており、問題は情報の一部を消し去ることではなく、そもそもそれがニュース価値のあるものであったかどうかを再検討することだ。

グローブ紙の新しい試みの発表の中で、デジタル版担当のJason Tuohey(ジェイソン・トーヘイ)編集長は次のように述べている。「フレッシュスタート委員会でそんな記事を変更したとしても、我々はなぜ、来週も同じような記事を載せるのか?」

グローブ紙は、記事の更新を求める人々からの嘆願を審査するために10人の委員会を設置した。「更新」であり、決して「削除」されることはない、とつけ加えておくことが重要だ。以前のCleveland Plain Dealer(クリーブランドのプレイン・ディーラー紙)による同様の取り組みでは、人々は裁判所の記録抹消命令を提示する必要があったが、グローブ紙の場合は法的なハードルはない。

フレッシュスタートのチームは、これが複雑なものになるだろうということはすぐに認めている。自動化された要求や詐欺的な要求が確実に押し寄せてくるだろうし、公人はとりあえず要求してみるだろう。出来事や身元を確認するために証拠が必要な場合、それが何であるかについては意見が分かれるだろう。そして最後に達成されるのは、1本の記事、あるいはその1行だけが、変更されることになるだろう。そしてそれは、おそらくインターネット上で散々複製されたりアーカイブされた後のことになる。しかし、これはスタートだ。

1つの新聞だけがこれをやっても大きな効果はないかもしれないが、プログラムが成功すれば、他の新聞社も注目するかもしれない。そして、トーヘイ氏が指摘したように、実際に司法制度がどれほど凋落しているかを知ると、そもそも報道機関の英知が揺らいで見えるようになる。新たに発見した懐疑論を、人々が過去の出来事にも適用したくなるのは当然だろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:メディアプライバシー

画像クレジット:terekhov igor / Shutterstock

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Pinterestがアイシャドウを購入前に試せるバーチャルメイク機能を発表

Pinterest(ピンタレスト)は米国時間1月22日、オンラインショップの買い物客が新しいアイシャドウをバーチャルで試用できる拡張現実機能を発表した。当初はLancome(ランコム)、YSL(イヴ・サンローラン)、Urban Decay(アーバンディケイ)、NYX Cosmetics(ニックス コスメティックス)などのブランドの約4000種類の製品を画面上で試すことができる。

Pinterestによれば、この「AR Try on(日本では「バーチャルトライ」)」機能は、既存の「Pinterest レンズ」と呼ばれるカメラで撮影した画像から検索する技術や、検索結果をさまざまな肌の色から選択する機能、そしてコンピュータビジョンを使ったおすすめ機能を活用しているという。また、同社はデータパートナーであるModiFace(モディフェイス)の技術も取り入れており、顔認識によってデジタル化されたパラメーターを元に、選択したアイシャドウがModiFaceのデータベースでマッピングされ、高画質なレンダリングが行われる。

これがPinterestによる最初のバーチャルメイク機能というわけではない。同社は1年前に口紅のAR Try onを開始している。この機能を使ってバーチャルで試用できる口紅の色は、現在では1万色にまで拡大しており、Estée Lauder(エスティローダー)、bareMinerals(ベアミネラル)、Neutrogena(ニュートロジーナ)、NARS(ナーズ)、Cle de Peau(クレ・ド・ポー)、Thrive Causemetics(スライヴコーズメティックス)、NYX Professional Makeup(ニックス プロフェッショナル メイクアップ)、YSL Beautét(イヴ・サンローラン・ボーテ)、Lancôme(ランコム)、Urban Decayなどのブランドによる4800万枚の「ピン」から見つけることができる。Kohl’s(コールズ)などの小売店も、消費者にリーチするためにAR Try onを利用している。

今回新たに導入されたアイシャドウのAR Try onでは、色や価格帯、ブランドなどの条件で商品検索結果を絞り込むことが可能だ。気に入ったものを見つけたら、すぐに購入したり、ボードに保存したり、関連ボタンを使って似たような色合いのピンを探すことができる。

画像クレジット:PInterest

アイシャドウへの拡張は、ユーザーが単に個々の色を試すだけでなく、より多くのフルメイクを試すことができるようになったことを意味する。Pinterestによれば、トグルで口紅とアイシャドウを切り替えて、一度に複数の製品を試すことができるようになったという。ModiFaceのアプリや、YouCam メイクSephora(セフォラ)のVirtual Artist(バーチャルアーティスト)Ulta(ウルトラ)のGLAMLab(グラムラボ)などのARビューティーアプリが登場したことによって、ARを使ったバーチャルメイクアップ体験はここ数年で人気が高まっている。また、L’Oréal(ロレアル)はウェブサイト上で「Live Try-On」を提供したり、Facebookと提携してバーチャルメイクアップをソーシャルメディアに導入している。Target(ターゲット)のオンラインストアも、バーチャルメイクアップを提供している。

さらに最近では、GoogleがARバーチャルメイクアップの分野に参入。当初はYouTubeで一部の美容インフルエンサーが自分の動画にARを使った化粧品の試用を組み込むことができるという、限定的な機能の提供を開始したが、2020年12月にはModiFaceと提携し、Google検索でバーチャルメイクアップ機能を導入。ARを使った化粧品の試用体験を本格的に取り入れた。

しかし、今回のPinterestによる新たな発表は、視覚的な検索技術とバーチャルメイクに関しては、再びGoogleより先行したことを意味する。PinterestではGoogleよりも多い口紅の試用を提供するだけでなく、今では製品分野までも拡大し、アイシャドウのバーチャル試用も可能になったのだ。

Pinterestによると、このAR Try on機能は、ビジュアルなショッピング体験を創造し、顧客の意思決定プロセスの早い段階でリーチしたいと考えているブランドに無料で提供されているという。同社はショッピングを含む広告を通じて収益を上げ続けており、AR機能それ自体で儲けたり、AR Try onで購入に結びついた製品の売り上げから利益の一部を求めることはしないという。

「AR Try onのような機能を導入して、Pinterestをショッピングに利用しやすくすることで、このプラットフォームはPinners(Pinterestユーザー)にとってさらに魅力的で実用的なものになり、その結果、広告の利用率やクリック率が増える可能性があります」と、広報担当者は説明している。また「Try onのような有機的な機能や、製品のピンを作成するためのカタログの取り込みによって、ブランドがサイト全体のアクセス数を引き上げ、それが我々の収益戦略を補完することになるのです」と、広報担当者は指摘している。

PinterestがAR Try on機能にアイシャドウのサポートを加えたことは、時勢にかなっている。一部の美容ブランドの売り上げは、新型コロナウイルスによって落ち込んでいる。マスクを着用する際に隠れてしまう唇に口紅を使っても意味がないため、特にリップスティックの販売が激減しているのだ。代わって現在の美容トレンドは、目を強調することにシフトしており、明るく大胆な色のアイシャドウや、ワイルドなフローティングアイライナー大きな付けまつ毛などに注目が集まっている。これはもちろん、ソーシャルメディアに投稿する写真を撮影する時の効果も狙ったトレンドだ。

Pinterestによると、実際にこのAR機能は潜在的な顧客に購入を決断させている傾向が見られるという。2020年のPinterestの調査によると、ユーザーはAR Try on体験の利用を始めると、平均6色の口紅をバーチャル試用し、それから購入意思を示す可能性が、通常のピンと比べて5倍に増えたという。

新しいアイシャドウのAR Try onは、米国では1月22日より、iOSとAndroid向けアプリのPinterestレンズで利用できる。

関連記事:YouTubeのAR機能でビデオを見ながら仮想メイクを試せる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pinterestネットショッピング拡張現実化粧

画像クレジット:Pinterest

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(翻訳:TechCrunch Japan)

中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制

中国の決済業界における最近の一連の出来事は、Ant Group(アントグループ)とTencent(テンセント)による複占が揺らいでいる可能性を示唆している。

Ant Groupの急な新規株式公開の中止と、中国政府が同社の事業に修正を指示したことに続き、中国当局は先週、繁栄を続けるデジタル決済業界の寡占を抑制する計画を示す新たなメッセージを送った。

ノンバンク決済を規制するために、中国人民銀行(PBOC)が先週発表した一連の草案によると、1社でノンバンク決済市場の3分の1を占める場合、または2社の合計で半分を占める場合、国務院に属する反独占委員会から規制上の警告を受けるという。

一方、ノンバンク決済事業者1社でデジタル決済市場の半分以上を占める場合または2社で3分の2を超える場合は、独占状態にあるかどうか調査される。

2つの規則の違いは微妙であり、前者はノンバンク決済、後者はデジタル決済に焦点を当てている。

さらに当局が企業の市場シェアをどのように測定するのか、たとえば総取引額なのか、総取引量なのか、それともそれ以外の基準で判断するのかについては、規則では特定されていない。

市場調査会社のiResearch(アイリサーチ)によると、Ant GroupのAlipay(アリペイ)は2020年第1四半期に中国の第三者決済取引の半分以上を処理しており、Tencentは同期間に40%近くを処理していたという。

中国は決済大手への監視を強めており、一方で金融市場を国際的なプレイヤーに開放してもいる。2020年12月には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が中国の合弁事業の完全所有権を取得した。そして2020年1月、PayPal(ペイパル)は現地の決済パートナーであるGoPay(国付宝)の残りの株式を買い取り、中国で1つの決済事業を100%支配する初の外資系企業となった

業界の専門家は、PayPalが中国内の決済大手を追うことはないだろうが、代わりにクロスボーダー決済の機会を探る可能性があると、TechCrunchに語った。つまり、Antのベテランチームによって設立されたXTransferなどの地元企業がいる市場だ。

AntとTencentは、他の中国インターネット企業との競争にも直面している。食品配達プラットフォームのMeituan(美団)や電子商取引プラットフォームのPinduoduo(拼多多)やJD.com(京東商城)、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)まで、様々な企業が独自の電子ウォレットを導入しているが、いずれもAntのAlipay(アリペイ)やTencent傘下のWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に差し迫った脅威を与えるものではない。

PBOCの包括的な提案では、決済処理業者が顧客データをどのように扱うかについても定義している。ノンバンク決済サービスは、一定のユーザー情報や取引履歴を保存し、データチェックについて関係当局と協力することになっている。また、企業はユーザーの同意を得て、顧客のデータがどのように収集され、どのように使用されるかを明確にすることも求められている。これは不正なデータ収集を取り締まる中国の広範な取り組みを反映した規則だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:モバイル決済AlibabaAnt GroupTencentWeChat Pay中国独占禁止法

画像クレジット:Alipay via Weibo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

グーグルがモバイル検索のデザインを変更、違いはわずかだがよりわかりやすくモダンに

Google(グーグル)は米国時間1月22日、モバイル検索の微妙な、しかし歓迎すべきリフレッシュを発表した。そのアイデアは、検索結果の表示を読みやすく改善し、よりシンプルでエッジの効いたモダンなデザインにすることだ。

見たところ、今までと根本的に異なるわけではない。しかし、個々の検索結果を囲む四隅が丸くてわずかに影がつけられていたボックスは、シンプルな直線に改められた。他にも、Googleのロゴが丸みを帯びたり、検索バーの枠がグレーのラインからドロップシャドウのみに変わるなど、いくつかの微調整を見つけることができる。「よりわかりやすく、親しみやすく、人間に優しいデザインに感じられると思います」と、Googleの広報担当者は語る。ところどころに余白も増え、目立たせる部分には色がつけられたため、各パートの分離が強調された。

画像クレジット:Google

「検索のようなもののビジュアルデザインを再考するのは、本当に複雑です」と、GoogleのデザイナーであるAileen Cheng(アイリーン・チェン)氏はこの発表で述べている。「Google検索がどれだけ進化してきたかを考えると、特にそうです。私たちはウェブの情報だけでなく、世界中の情報を整理しています。私たちはウェブページを整理することから始めましたが、今では検索した言葉を理解するのに役立つコンテンツや情報の種類が非常に多様化しています」。

画像クレジット:Google

Googleはまた、GmailやAndroid(アンドロイド)を使っている人にはおなじみのGoogle独自のフォント「Google Sans」をより広範囲に使用することにした。「検索のどこに、どのようにフォントを使うかのという点に一貫性を持たせるのも重要でした。これは人々が情報をより効率的に解析するのにも役立ちます」と、チェン氏は述べている。

今回のリフレッシュは多くの点において、Googleが2019年にそのモバイル検索のリフレッシュで行った作業の続きである。その時も、サイトアイコンやその他の新しいビジュアル要素をページに追加することで、ユーザーがページをスキャンしやすくすることに重点が置かれていた。しかし、検索結果ページをより読みやすくする作業は明らかに行われていない。

とはいえ、新旧のデザインを比較してみると、ほとんどの部分で変更は少ない。これは大規模なデザイン刷新のようなものではない。デザイナーは確かにこだわっているが、ユーザーは気づかないかもしれないほど、小規模な微調整に過ぎない。もしGoogleが、検索結果に表示される広告と、実際にユーザーが求めているコンテンツを、もっと簡単に識別できるような変更を施したら、それこそ注目に値する改善といえるのだが。

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タグ:GoogleGoolge検索

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(翻訳:TechCrunch Japan)

MITの研究者がカスタムチップを使ってロボットの「応答速度」を高速化

MITの研究者たちは現在、ロボットがどれだけ速く情報を処理できるか(まだまだ遅い)と、どれだけ速く動けるか(現代のハードウェアの進歩のおかげで非常に速い)の間の大きなギャップに対処しようとしており、そのために「robomorphic computing(ロボモーフィック・コンピューティング)」と呼ばれるものを用いている。

この方法は、MITコンピュータ科学・人工知能(CSAIL)の卒業生であるSabrina Neuman(サブリナ・ノイマン)博士によって考案されたもので、応答時間を高速化するための手段として、ハードウェアアクセラレーションを提供することができるカスタマイズしたコンピュータチップを使用するというものだ。

特定の目的に合わせて、カスタマイズされた特注のチップというのは新しいものではない。しかし、企業や技術者が、ネットワーク接続を介して大規模なデータセンターとデバイスの間でデータを往復させるよりも、より控えめな電力と処理能力の制約のあるデバイスで、より多くのローカルコンピューティングを行うことを求めるようになるにつれ、カスタムチップはより一般的になってきた。

このロボモーフィック・コンピューティングという方法では、ロボットの物理的なレイアウトや用途に応じて設計された超特化型のチップを製作することになる。ロボットが周囲の環境を認識し、その中で自分を位置づけて理解し、それに基づいて計画される動作を考慮した上で、ソフトウェアのアルゴリズムをハードウェアアクセラレーションで補完すれば、最終段階の効率を大幅に向上させる処理チップを、研究者たちは設計することができる。

多くの人が日常的に遭遇するハードウェアアクセラレーションの典型的な例は、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)だろう。GPUは基本的に、ディスプレイのレンダリングやビデオ再生などの画像処理を行うために特別に設計されたプロセッサだ。現代では、ほとんどすべてのコンピューターが画像処理を多用するアプリケーションを実行するため、GPUは広く使われている。しかし最近は、より高いカスタマイズが可能で効率的な小ロットのチップ製造技術が進化したおかげで、さまざまな機能を備えたカスタムチップの方が、より一般的になってきた。

MIT Newsでは、特にロボット制御用ハードウェアチップの設計を最適化する際に、ノイマン博士のシステムがどのように機能するかについて、以下のように説明している。

このシステムは、特定のロボットのコンピューティングニーズに最適なカスタマイズされたハードウェアの設計を作成します。ユーザーはロボットの手足のレイアウトや様々な関節の動き方など、ロボットのパラメータを入力します。ノイマン博士のシステムは、これらの物理的特性を数学的な配列に変換します。これらの配列は「疎」であり、ロボットの特定の解剖学的構造では不可能な動きにおおむね相当するゼロ値を多く含むということを意味します。(同様に、あなたの腕は特定の関節でしか曲げられないため、動きが制限されています。無限に柔軟なスパゲッティヌードルではありません)。

このシステムでは、配列の中の0以外の値だけを計算することに特化したハードウェアアーキテクチャを設計します。ゆえに結果として得られるチップの設計は、ロボットのコンピューティングニーズに合わせて効率を最大化するようにカスタマイズされたものになります。このカスタム化はテストで成果を発揮しました。

ノイマン博士のチームは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)をテストで使用した。これは完全なカスタムチップと既製品のCPUの中間のようなもので、後者よりも大幅に優れた性能を実現した。つまり、実際にゼロからチップをカスタム製造した場合には、はるかに大きな性能向上が期待できるということだ。

ロボットが環境に対してより速く反応するようになるということは、単に生産の速度や効率が上がるというだけではない(もちろんそれもあるが)。人がロボットのすぐ側で作業したり、一緒に作業したりという状況で、ロボットをより安全に働かせることもできるということだ。これは、我々の日常生活の中でロボット工学がより広く使われるようになるための大きな障壁となっている。つまり、ノイマン博士の研究は、人間とロボットが調和して暮らすSF的な未来の扉を開くのに役立つ可能性があるのだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:MITロボットプロセッサ

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アフリカの教育テクノロジー系スタートアップ企業uLessonがシリーズAで7.8億円調達

ナイジェリアに拠点を置くEdTech(教育+テクノロジー)系スタートアップで、SDカードで学生にデジタルカリキュラムを販売するuLesson(ユーレッスン)が、シリーズAの資金調達で750万ドル(約7億8000万円)を調達した。このラウンドを主導しているのは、わずか数カ月前に5億ドル(約520億円)を超える新規投資を締結したOwl Ventures(オウル・ベンチャーズ)だ。他にもLocalGlobe(ローカルグローブ)や、TLcom Capital(ティーエルコム・キャピタル)、Founder Collective(ファウンダー・コレクティブ)などの既存の投資家が参加している。

今回の資金調達は、uLessonが2019年11月に310万ドル(約3億2000万円)のシードラウンドをクローズしてから1年あまり経っているが、当時と現在の最大の違いは、単に銀行に数百万ドル(数億円)の資金があるかどうかではなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が、このスタートアップの価値提案全体に大きな影響を与えたことだ。

uLessonは、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの世界的大流行を宣言する数週間前に市場に参入した。Dカードの送付によるコンテンツの配信から始まったこのスタートアップ企業は、学生がリモート学習に適応し、アフリカ全土の家庭にスマートデバイスの波が押し寄せた時期と適合した。

「これまで見たことのないようなかたちで地面が濡れてきました」と、uLesson創業者兼CEOのSim Shagaya(シム・シャガヤ)氏は語った。「オフラインだけでは不可能だった、私たちがEdTechの世界でやりたいと思っていた本当に素晴らしいことが、すべて実現できるようになりました」と、創業者は付け加えた。

uLessonは他の多くのEdTech系スタートアップと同様に、一夜にしてリモート教育が普及したことの恩恵を受けてきた。補助的な教育ツールとしての位置づけが、前月比70%の成長を達成するのに役立ったと、シャガヤ氏は述べている。同氏によると、デジタルインフラが整ったことにより、「2021年の第2四半期までに完全オンライン化」が可能になるという。

uLessonの年会費は50ドル(約5200円)で、アプリのダウンロード数は100万回を超えている。

シャガヤ氏は、uLessonがSDカードの送付を利用したオフラインの非同期コンテンツから、ライブのオンラインプラットフォームへと進化していくことで、新たな需要があると見ている。このスタートアップはすでにライブ個別指導の実験を行っており、事前に録画された教材を見ながら学生が質問できる機能をテストしている。このスタートアップには毎日3000以上の質問が寄せられ、需要が高すぎてテスト機能を一時停止せざるを得なかった。

「ユーザーがボタンを押すだけで、自分が勉強していることを基本的にマスターしている大陸のどこかの大学生から、瞬時にサポートが受けられるようにしたいと考えています」と、シャガヤ氏はいう。Chegg(チェグ)、Quizlet(クイズレット)、Brainly(ブレインリー)などの企業を見てもわかるとおり、コンテンツに特化したスタートアップがライブ個別指導のレイヤーを追加する傾向は続いているようだ。

巨大なチャンス

新型コロナウイルスの影響で、eラーニングのスタートアップ業界は活況を呈している。これによって、家庭教師のマーケットプレイスや、学生にサービスを提供するコンテンツが続々流入しつつある。EdTechで最も価値のあるスタートアップの1つは、オンライン学習サービスを提供し、学生にテスト対策を行うByju’s(バイジューズ)だ。

しかし、シャガヤ氏は、他のどんなライバル企業も、Byju’sでさえアフリカ市場に向けてデジタルな方法でこれを行うことについて、困難を乗り越えたとは思っていない。南アフリカやケニアには家庭教師の人材紹介会社があり、学生の自宅に人材を派遣するオフラインの家庭教師市場はあるが、デジタルカリキュラムの観点で明確なリーダーはいない。

「アフリカは大きなチャンスだと誰もが思っています」と、シャガヤ氏は語る。「しかし、それを成し遂げるためには、現地のチームが必要だということも誰もが知っています」。

シャガヤ氏は、アフリカのEdTechには巨大なチャンスがあると考えているが、その理由は2つある。若い人口と、私立学校へ進む学生の深い洞察力だ。これらの事実が組み合わさることで、経済力があって補習教育にお金を払う意思のある学生の宝庫が生まれる可能性がある。

uLessonにとって、そして新型コロナウイルスの恩恵を受けたすべてのEdTech系スタートアップにとって、最大のハードルは流通と成果だ。uLessonは有効性と成果に関するデータは公表していないが、現在、ジョージア大学と共同で熟達度を把握するための研究を進めている最中だという。

「コンテンツへの取り組みと製品は、流通という聖壇で生きるか死ぬかのどちらかになります」とシャガヤ氏はいう。この創業者は、たとえばインドでは、社会的なニュアンスや文化から、事前に録画された動画がうまく機能していると指摘する。uLessonは、アフリカ周辺の市場で動画に最適なソースを見つけ、それを製品に組み込んでいこうとしている。

カテゴリー:EdTech
タグ:uLessonアフリカ資金調達

画像クレジット:uLesson

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebookの監督委員会がトランプ前大統領のアカウント停止決定について再審議

Facebook(フェイスブック)は米国時間1月21日、コンテンツについてポリシーの検討を行う新たに設立された外部組織が、同社の最も重要な行為の1つに取り組むと発表した。トランプ前大統領のアカウント停止の決定だ。

米国時間1月7日、Facebookはトランプ氏のアカウントを無期限で停止した。この決定は、前日の大統領の行動を受けて行われたもので、同氏は米国議会議事堂を襲撃する暴徒を扇動し、米国の民主主義を窮地に陥れ、すでに非常に危険な状態になっていた国を揺さぶった。

Facebookの国際問題およびコミュニケーション担当副社長であるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏は、トランプ氏のアカウント停止をめぐる状況を「前例のない行動を求めた前例のない一連の出来事」と呼び、 Oversight Board(監督委員)がこの件を審議する理由を説明した。

「当時のトランプ大統領のアクセスを停止するという我々の決定は、異常な状況下で行われました。平和的な権力移行を妨害するために行われた暴力的な襲撃を積極的に煽っている米国大統領、殺された5人の国民、民主主義の座から逃げる議員たち」と、クレッグ氏はブログの投稿で述べている

「こんなことはかつて起きたことがありません。そして我々は二度と起こらないことを願っています」。

監督委員会は今回の措置を取ることについて述べた声明の中で、5人のメンバーで構成された委員団が間もなく今回のケースを査定し、90日以内に決定する予定だと説明している。

この少人数のグループがトランプ氏のFacebookアカウント(そして将来的に起こりうる大統領に関わるケース)をどのように扱うかについての結論に達すると、決定には監督委員のメンバーの過半数を超える承認が必要になる。その後は少しずつペースが速まり、Facebookは1週間で監督委員の最終決定を実行に移す予定だ。

Facebookはこの監督委員会が独立した外部の組織としたがるが、「拘束力のある」ケースバイケースの決定を行う自立性を持つにもかかわらず、この監督委員会はFacebook自身が起ち上げたものだ。同社が最初に4人の共同議長を任命した監督委員会は、20人のメンバーで構成される組織に拡大していった。

以前にもお伝えしたように、この委員会の仕組みは、削除されたFacebookのコンテンツに対する活動に偏っている。掲載されたままになっているコンテンツではない。一般的に同社や社会にとって大きな頭痛のタネを生み出すのは、後者の方だ。Facebookはこの批判に応えて、当初は削除されたコンテンツの検討に専念するかもしれないが、プラットフォーム上にまだアップされているコンテンツは「できるだけ早く」プロジェクトの活動範囲の一部になることが予定されていると指摘している。

このグループを巡る批判の一部にとって、トランプ氏のケースは監督委員会の決定が実際にどれだけ影響力のあるものになるかを示す重要な機会となる。もしFacebookの決定を覆すことになれば、すでに前大統領は公の場から退いたとはいえ、トランプ氏のFacebookアカウントをめぐる世間の関心を再燃させることになるだろう。

このプロセスで最も興味深いのは、前大統領のアカウント管理者が自分自身の訴えを主張できるということだ。その場合、監督委員会はトランプ氏のアカウントを復活させるべき理由を主張する「ユーザーの声明」を審査することになる。

Facebookの外部の意思決定機関は、同社独自のポリシー決定に対する一種の「最高裁判所」のようなものであることを意味する。実際に迅速に動いたり、その場で対応することはないが、その代わり将来のポリシーケースに洞察を与えることができる前例を確立しようとしているのだ。ケースごとの決定には拘束力があるが、それが生み出す広範な判例がFacebookの今後のポリシー決定に影響を与えるかどうかは、まだわからない。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebookドナルド・トランプ

画像クレジット:MANDEL NGAN / JOSH EDELSON/AFP / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:TechCrunch Japan)

企業秘密窃盗で18カ月の実刑判決を受けていた元Googleエンジニアにトランプ前大統領が恩赦

企業秘密を盗んだ罪で18カ月の実刑判決を受けていた元Google(グーグル)のエンジニアで起業家のAnthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドウスキ)氏が、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領から恩赦を受けた。

米国時間1月19日深夜に発行されたこの恩赦は、レヴァンドウスキ氏が刑務所の独房入りを免れることを意味する。このほか、同氏を含む全部で73人に恩赦が与えられ、70人が減刑された。レヴァンドウスキ氏は2020年8月に刑期を迎えたが、この事件を担当したAlsup(アルサップ)判事は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威が過ぎるまで、刑務所に出頭する必要はないと述べていた。

「私の家族と私は前に進む機会を与えていただいたことに感謝し、そして大統領と私を支持し弁護してくださった方々に感謝しています」と、レヴァンドウスキ氏はTechCrunchに語った。

レヴァンドウスキ氏の恩赦は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)の共同創設者Peter Thiel(ピーター・ティール)氏やOculus(オキュラス)の創設者Palmer Luckey(パーマー・ラッキー)氏、裁判弁護士のMiles Ehrlich(マイルズ・アーリッチ)氏とAmy Craig(エイミー・クレイグ)氏、実業家で投資家のMichael Ovitz(マイケル・オヴィッツ)氏など、テクノロジー企業の創設者や投資家によって支持された。他にも、Founders FundのパートナーであるTrae Stephens(トレイ・スティーブンス)氏や、Thiel Capital(ティール・キャピタル)のCOOであり、The Thiel Foundation(ティール財団)の会長でもあるBlake Masters(ブレイク・マスターズ)氏など、ティール氏の組織に関係のある人々もレヴァンドウスキ氏を支援している。

以下は、恩赦を支持した人々の名前を含む、ホワイトハウスが投稿した全文だ。

アンソニー・レヴァンドウスキ:トランプ大統領はアンソニー・レヴァンドウスキ氏に恩赦を与えました。この恩赦は、James Ramsey(ジェームズ・ラムゼイ)氏、ピーター・ティール氏、マイルズ・アーリッチ)氏、エイミー・クレイグ氏、Michael Ovitz氏、Palmer Luckey氏、Ryan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、Ken Goldberg(ケン・ゴールドバーグ)氏、Mike Jensen(マイク・ジェンセン)氏、Nate Schimme(ネイト・シンメル)氏、トレイ・スティーブンス氏、ブレイク・マスターズ氏、James Proud(ジェームズ・プラウド)氏らの強い支持を得ています。レヴァンドウスキ氏はGoogleの自動運転技術の開発を主導した米国の起業家です。レヴァンドウスキ氏は民事訴訟から生じた刑事上の起訴訴因に対して有罪判決を受けました。特筆すべきは、判決を下した判事がレヴァンドウスキ氏を「我が国が必要としている輝かしい、革新的なエンジニア」と評したことです。レヴァンドウスキ氏は自分の行動に大きな代償を払い、公共の利益のために自分の才能を捧げることを計画しています。

レヴァンドウスキ氏は、自動運転車業界の中では好き嫌いが分かれる人物である。彼は誰の目から見ても、彼を最も厳しく批評する人の間でさえも、優秀なエンジニアであることは確かだ。彼の勇敢さと危険をいとわない姿勢は、好感が持てる親しみやすい性格と相まって、多くの支持者やライバルを獲得した。

だが、レヴァンドウスキ氏は泥棒のような技術者と誹られ、Uberにあっさりと解雇され、1億7900万ドル(約185億円)の賠償金で破産を余儀なくされた。彼はまた、自動運転車開発初期の先駆的なスターエンジニアとして称賛も受けている。同氏は2009年、内部でProject Chauffeur(プロジェクト・ショーファー)と呼ばれていたGoogleの自動運転プロジェクトの創設メンバーの1人だった。法廷文書によると、彼はProject Chauffeurにおける仕事のために、Googleから約1億2700万ドル(約132億円)もの大金を受け取ったという。

2020年8月にレヴァンドウスキ氏を有罪に導いた刑事事件は、レヴァンドウスキ氏、Uberそして元Googleの自動運転プロジェクトで現在はAlphabet傘下の事業となっているWaymo(ウェイモ)を巻き込んだ数年におよぶ法律大河ドラマだ。

レヴァンドウスキ氏は2016年、 Lior Ron(リオル・ロン)氏、Claire Delaunay(クレア・ドローネ)氏、Don Burnette(ドン・バーネット)氏という3人の経験豊富なエンジニアとともにGoogleを退社し、自動運転トラックを開発する企業としてOtto(オットー)を設立。それから8カ月も経たないうちに、UberはOttoを買収した。この買収から2カ月後、Googleはレヴァンドウスキ氏とロン氏に対して2件の仲裁要求をした。Uberはどちらの仲裁でも当事者ではなかったが、レヴァンドウスキ氏との間に結んでいた補償契約に基づき、同社はレヴァンドウスキ氏を弁護せざるを得なかった。

仲裁が進む一方で、それとは別にWaymoは2017年2月、企業秘密の盗難と特許侵害を理由にUberを相手取り訴訟を起こした。Waymoはこの訴訟で、レヴァンドウスキ氏が企業秘密を盗み、それがUberによって使用されたと主張していたが、2018年に和解に至った。

この和解では、UberはWaymoの機密情報を自社のハードウェアやソフトウェアに組み込まないことに合意した。Uberはまた、シリーズG-1ラウンドの評価額720億ドル(約7兆4510億円)に対するUberの株式の0.34%を含む金銭的和解金を支払うことにも合意した。これは当時、Uberの株式で約2億4480万ドル(約253億円)に相当した。

レヴァンドウスキ氏はWaymo対Uber訴訟の被告ではなかったが、彼はすぐに大きな障害に直面することになった。

2019年8月、米連邦地方検事は、レヴァンドウスキ氏がGoogleに勤務していた間に、33件の企業秘密の窃盗および窃盗未遂を働いたとして、単独で起訴した。2020年3月、レヴァンドウスキ氏と連邦地検は司法取引で合意に達し、レヴァンドウスキ氏は33件の訴因のうち、Project Chauffeurに関連する数千のファイルをダウンロードしたことを認めた。これはChauffeur Weekly Update(ショーファー・ウィークリー・アップデート)として知られているもので、四半期ごとの目標や週ごとのメトリクスのほか、プログラムが直面した15の技術的な課題の要約や、以前に克服した課題に関するメモなど、さまざまな詳細が含まれているスプレッドシートだ。

連邦地検は27カ月の懲役を求めたが、レヴァンドウスキ氏は罰金、12カ月の自宅監禁、200時間の社会奉仕活動を求めていた。アルサップ判事は最終的に、自宅監禁は「将来すべての優秀なエンジニアに企業秘密を盗むことを可能にすると判断し、懲役刑をその答えとする」と判断した。

アルサップ判事はレヴァンドウスキ氏に18カ月の実刑を言い渡したが、新型コロナウイルス感染症の流行が収まるまで出頭期日を延期していた。レヴァンドウスキ氏は、Waymoへの返還金75万6499.22ドル(約7820万円)と罰金9万5000ドル(約980万円)を支払うことにも同意した。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GoogleWaymoUber裁判ドナルド・トランプ自動運転

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

アップルがAR機能も搭載した高価格VRヘッドセット開発中と報道、発売は2022年か

Apple(アップル)が、高価格な仮想現実(VR)ヘッドセットの開発に取り組んでいると、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じている。販売開始は2022年を目指しているという。このヘッドセットには独自のプロセッサと電源が内蔵され、Appleが現在、MacBook Airや13インチMacBook Proに搭載しているM1 Appleシリコンプロセッサよりもさらに強力なチップが搭載される可能性があるとのことだ。

目標とする発売日から遠く離れた時期の報道によくあるように、Bloombergはこれらの計画が変更されたり、完全にキャンセルされる可能性もあるという注意書きをしている。Appleが多くのプロジェクトを、それらが日の目を見る前に抹殺することがあるのは間違いなく、中には多大な時間と設備投資を費やしたものさえ含まれる。そしてこのAppleのヘッドセットは、現在市場で販売されている1000ドル(約10万4000円)ほどの比較的高価なVRヘッドセットよりも、さらに高価格になると報じられている。記事によると、Appleはまず専門的な顧客向けに少量販売のニッチな製品として発売することを意図しているようだ。つまり、現在Appleが販売しているMac ProやPro Display XDRのような種類の製品になるということだ。

このヘッドセットは、主にVRに焦点を当てていると報じられているが、外部カメラから送られてくる現実世界の景色に映像を重ね合わせる拡張現実(AR)機能も、限られたサイズの筐体に搭載される予定だという。これは、Appleが拡張現実カテゴリーにおける同社初のヘッドセット製品として、一般消費者向けのARグラスを開発していると示唆していた当初の報道とは異なる。Bloombergの報道によると、このVRヘッドセットは開発後期のプロトタイプが作られる段階にあるが、ARグラスは設計プロセスのごく初期段階にあり、少なくとも1年以上はVRヘッドセットより遅れて市場に投入される見込みだという。

Appleの戦略は、まずは少量しか販売が見込めないハイテクで高性能、高価格なデバイスを作り上げ、それをもとに効率化を図り、関連技術の生産コストを下げることで、後のマスマーケット向けデバイスへの道を切り開くということだろう。

記事によると、AppleのVRヘッドセット製品はOculus Quest(オキュラス クエスト)とほぼ同じサイズになる見込みで、軽量化のためにファブリック製の外装を採用する可能性があるとのことだ。外部カメラは周囲の環境を撮すほか、ハンドトラッキングにも使用でき、VRコンテンツに特化した専用のApp Storeがデビューする可能性もある。

仮想現実は、現在最も成功している製品であるOculus QuestやPlayStation VRで市場を測ったとしても、まだ萌芽期のカテゴリーといえる。しかし、少なくともFacebook(フェイスブック)は、VR製品への投資と改良を続けることに多くの長期的な価値を見出しているようであり、Appleの見解も同様である可能性が高い。同社はすでにiPhoneのARに多大な力を注ぎ、技術開発に取り組んでいる。そして CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は多くのインタビューで、ARの将来について非常に楽観的な考えを表明している。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:スマートグラスAppleヘッドセット

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:TechCrunch Japan)

バイデン新大統領就任でホワイトハウスのウェブサイトも刷新、ダークモード採用などアクセシビリティが大きく向上

米国大統領の行動や取り組みをまとめた公式サイト「WhiteHouse.gov」は、就任したばかりのバイデン大統領の下で、まず最初に変更されるものの1つだ。最近流行のダークモードが用意されたほか、読みやすいように大きな文字に切り替えられるなど、ウェブ管理者はサイト全体を最新のアクセシビリティガイドラインに適合させることを約束している。

見た目は前政権時代のサイトとそれほど変わっていない。どちらもかなりモダンでミニマルなデザインで、大きな写真をトップに掲げ、カテゴリを掘り下げていくと優先事項やお知らせのリストが整然と並んでいる。

画像クレジット:White House

しかし、多くの人が喜びそうな新政権による大きなデザインの変更点は、ダークモード(ハイコントラストモード)と大きな文字に切り替えるトグルが用意されたことだ。

ダークモードというものはずっと前から存在していたが、Apple(アップル)が少し前にiOSmacOSのシステム全体に採用したときから、一般的なものになった。目が疲れにくいといわれているが、実際の効果はともかく、ユーザーに選択肢が与えられるのは歓迎すべきことだ。

WhiteHouse.govのダークモードは、見出しの文字が愛国的なブルーから目に優しいオフホワイトに変更され、リンクは落ち着いたからし色になる。ホワイトハウスのロゴ自体も、背景がダークブルーから、ホワイトの縁取りがついたブラック一色に変わる。すべて非常にセンスの良い配色ではあるものの、どちらかというとハイコントラストというよりも、ローコントラストモードのように見える。

大きな文字のモードは、「Large Font Size(大きなフォントサイズ)」とあるように、すべての文字がかなり大きくなり、タップやクリックが簡単になる。表示を切り替えるためのトグルが目立ちすぎるともいえるが、そのうち調整されるだろう。

スペイン語版も用意された。それを母国語としている何百万人もの米国人から歓迎されることは間違いない。これは以前のホワイトハウス / カサブランカ(スペイン語で「白い家」という意味)のページにはなかった。

より前向きなのは、アクセシビリティのセクションにある公約だ。

すべての人に向けたアクセシビリティへの取り組みは、このサイトのすべての機能とすべてのコンテンツが、すべての米国人にとって確実にアクセシブルにするための我々の努力から始まります。

我々の継続的なアクセシビリティへの取り組みは、Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)バージョン2.1、レベルAA基準に準拠することを目指しています。

WCAGガイドラインは、視覚に障害を持つ人、聴覚に障害を持つ人、マウスやタッチスクリーンを簡単に使用できない人でもコンテンツに簡単にアクセスできるように、ウェブサイトをデザインするためのベストプラクティスを列挙している。このガイドラインを満たすことは特に難しいわけではないが、多くの人が指摘しているように、最初からアクセシビリティを考慮してウェブサイトをデザインするよりも、既存のウェブサイトを後からアクセシブルにすることの方が難しい。政府機関のサイトはアクセシブルであることが求められるが、その適合レベルはサイトによってばらつきがある。

私が気づいた点の1つは、ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されている写真の多くには、altテキストや目に見えるキャプションが添付されていることだ。これは視覚に障害を持つ人が画像の内容を理解するのに役立つ。以下はその一例だ。

画像クレジット:White House

このaltテキストは通常、画像に達するとスクリーンリーダー(音声による画面の読み上げ機能)で読み上げられるが、一般には見えないようになっている。以前の管理者が制作したサイト(ここにアーカイブされている)は、メタデータが削除されたのでなければ、私がチェックした写真には説明文がなかったので、これは大きな改善だ。ただし、残念なことに一部の写真(フロントページの大きなトップ画像など)には説明文がないので、これは修正されるべきだろう。

それ以外のアクセシビリティに関しては、ガバナンス項目やお知らせにプレーンテキスト版(PDF版やその他の形式ではなく)を速やかに用意すること、公式動画やその他のメディアにキャプションを加えること、そしてチームが指摘しているとおり、サイトを訪れるすべての人にとってより良いものにするための多くの小さな改善を続けることだ。

政権交代にともなうさまざまな変更に比べれば、ある意味では小さなことではあるが、小さなことが積み重なって大きなことになるものだ。

Microsoft(マイクロソフト)のIsaac Hepworth(アイザック・ヘップワース)氏が指摘しているように、まだまだやるべきことはたくさんある。だからこそ、米国政府デジタルサービス (USDS)は、ソースコードに小さなメッセージを隠しているのだ。

画像クレジット:White House

もしあなたがこれを読んでいるなら、より良いサイトに作り直すためにあなたの力を貸してください。https://usds.gov/apply

興味のある方は、こちらから申し込みを

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ジョー・バイデンアクセシビリティホワイトハウス政治・選挙

画像クレジット:White House

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インド政府がWhatsAppに「深刻な懸念」を表明、新たなプライバシーポリシーの撤回を求める

インドはWhatsApp(ワッツアップ)に対し、プライバシーポリシーの変更を撤回するよう求めており、この南アジアの国をユーザー数で最大の市場とするFacebook(フェイスブック)傘下のサービスにとって、新たな頭痛の種となっている。

WhatsApp責任者のWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に送った電子メールで、インドの通信IT省は、このアプリに近々適用されるデータ共有ポリシーの更新が「インド国民の選択と自律性への影響に関する重大な懸念を提起する【略】従って、提出された変更を撤回するように求めます」と述べた。

同省はさらに、Facebookや他の商業企業とのデータ共有契約の明確化をWhatsAppに求めており、EUのユーザーは新しいプライバシーポリシーから免除されるのにインドのユーザーは遵守する以外選択の余地がない理由を尋ねている。

「このような差別的な扱いはインドのユーザーの利益を害するものであり、政府は深刻な懸念を抱いています」と、同省はメールで述べており、そのコピーをTechCrunchは入手している。さらに「インド政府は国民の利益が損なわれないようにする主権者としての責任を負っており、それゆえこの手紙で提起された懸念事項に対応するようWhatsAppに求めます」と続いている。

WhatsAppは、2020年1月初めのアプリ内アラートを通じて、ユーザーに電話番号や位置情報などの個人データを、Facebookと共有することをアプリに許可する新しい条件の規約に同意するよう求めていた。

ユーザーがサービスの使用を継続したいと希望する場合、当初は2月8日より新しい規則を遵守する必要があるとされていた。

「この『オール・オア・ナッシング』アプローチは、インドのユーザーから意味のある選択を奪うものです。このアプローチは、WhatsAppの社会的意義を利用してユーザーに契約を強要するもので、情報プライバシーや情報セキュリティに関するユーザーの利益を侵害する可能性があります」と、同省はメールで述べている。

2021年1月13日、ニューデリーの屋台で新聞に掲載されたWhatsAppの広告が目に入る(画像クレジット:SAJJAD HUSSAIN/AFP via Getty Images)

WhatsAppからの通知は、ユーザーの間で多くの混乱と、いくつかのケースでは怒りと不満を促した。そのユーザーの多くは、最近の数週間でTelegram(テレグラム)やSignal(シグナル)などの代替となるメッセージングアプリを検討している。

WhatsAppの広報担当者は、1月19日の声明で次のように述べている。「この更新はFacebookと共有するデータを拡大するわけではないことを、私たちは強調したい。私たちの目的は、企業が顧客にサービスを提供し成長できるように、企業に結びつけるために利用できる新しいオプションと透明性を提供することです。WhatsAppは常に個人のメッセージを端から端まで暗号化で保護しているため、WhatsAppもFacebookも見ることができません。我々は誤報に対処するために努力しており、どんな質問にも答えられるようにしています」。

Facebookが2014年に190億ドル(約1兆9700億円)で買収したWhatsAppは、2016年からこのソーシャルの巨人であるFacebookと、ユーザーに関するいくつかの限定的な情報を共有している。そして一時期は、ユーザーがこれをオプトアウトすることを許可していた。先週の反発に対応して、世界中で20億人以上のユーザーにサービスを提供しているこのFacebook傘下のアプリは、計画されていたポリシーの施行を2021年5月15日に延期すると発表した。

さらにWhatsAppは先週、4億5000万人以上のユーザーを抱えるインドのいくつかの新聞に一面広告を掲載し、変更点を説明したり、いくつかの噂を否定したりした。

ニューデリーもまた、WhatsAppが2020年に発表したこのアップデートのタイミングに失望したことを明らかにした。同省は、ユーザーのデータが世界とどのように共有されるかを監視することを目的とした、歴史的意義のあるプライバシー法案である個人データ保護法案の見直しを行っていると述べた。

「インドのユーザーにとってこのような重大な変更をこのタイミングで行うことは、馬よりも荷車を先に走らせるようなものです。個人データ保護法案は『目的制限』の原則に強く従っているため、この法案が法律になった場合、このような変更はWhatsAppにとって重大な実行上の課題をもたらす可能性があります」と、同省は書簡で述べている。

1月19日にインドの通信IT・法相のRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサド)氏はまた、Facebookに声を大にして助言を送った。「WhatsAppであれ、Facebookであれ、どんなデジタルプラットフォームであれ、インドでビジネスを行うことは自由ですが、そこで働くインド人の権利を侵害しない方法で行ってください」。

WhatsAppであれ、Facebookであれ、どんなデジタルプラットフォームであれ、インドでビジネスを行うことは自由ですが、そこで働くインド人の権利を侵害しない方法で行われるべきです。個人的なコミュニケーションの尊厳は維持されなければなりません。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:WhatsAppインドプライバシー

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)