顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験実現

顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験を実現

CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」(カルテ)を提供するプレイドは2月2日、ファースト・パーティ・データ活用によりサイト内外で一貫した顧客体験を実現するソリューション「KARTE Signals」(カルテ シグナルズ)の提供開始を発表した。KARTE Signalsは広告ソリューションとの連携を前提にしており、第1弾としてGoogle広告およびFacebook・Instagram広告への提供を開始する。

顧客体験プラットフォームのプレイドがKARTE Signals発表、ファースト・パーティ・データ活用し自社サイト内外で一貫した顧客体験を実現プレイドのKARTEは、ウェブサイトやアプリを利用する顧客の行動をリアルタイムに解析・可視化し、個々の顧客に合わせた自由なコミュニケーションをワンストップで実現するCX(顧客体験)プラットフォーム。

KARTE Signalsは、KARTEと顧客に関わるあらゆるデータを統合する「KARTE Datahub」を介して、自社サイトを訪問・利用する顧客のファースト・パーティ・データをサイト外での体験向上に活用できるサービス。自社サイトでの行動データだけでなく、自社CRMの購買データやオフラインのPOSデータなどもすべて統合。このKARTE Signalsと広告ソリューションを組み合わせることで、顧客の広告に触れる体験の向上と広告配信の最適化をKARTEというSaaSプロダクトにおいて実現する。

認知拡大から購買促進・継続利用までサイトの内外問わずあらゆる接点・チャネルで一貫した施策実施が可能としており、KARTE Signalsは今後、Google 広告・Facebook/Instagram広告以外の広告ソリューションへの提供も展開するという。

またSaaSとして提供することから、別途の環境整備やデータ基盤構築の必要もなく、自社内だけで運用を完結させることも可能だ。KARTE Signalsと広告ソリューションの連携についても開発は不要で、手間をかけずに広告予算の最適化を図れるとしている。

KARTE Signalsの特徴

  • あらゆるデータの収集と統合をワンストップで実現。ファースト・パーティ・データの活用を最大化
  • 広告媒体プラットフォーマーを横断して広告の一括配信を実現
  • KARTE独自の接客のデータ、機械学習を活用した予測モデル、オフラインのデータなどファースト・パーティでしか得られないデータを使った最適な広告運用が可能に
  • ピクセル欠損を補うために、FacebookのコンバージョンAPIを容易に利用可能に

昨今サード・パーティ・クッキー規制が本格化し、プライバシー保護がますます重要になる中で、ブランドのミッションは顔の見えない顧客を対象にしたコンバージョン最大化よりも、顔の見える顧客との関係構築とLTV向上へとシフトしている。

このような環境においてKARTE Signalsと組み合わせてオンライン広告を展開すれば、適切なプロセスによって取得したファースト・パーティ・データを活用し、顧客に合った広告を適切なタイミングで届けられるという。そのとき広告は有益な情報として機能し、エンゲージメントの向上に貢献するとしている。プレイドによると、イオンリテール、ポケットマルシェ、再春館製薬所などが先行し活用しており、その点についてすでに評価を得ているそうだ。

ポケットマルシェは、「新規ユーザーの獲得について、より継続的に購入してくれているユーザーのコンバージョンデータをKARTE Datahubから Google 広告に戻すことによって、私たちのサービスや目指す世界観と親和性の高いユーザーの特徴を捉えてアプローチできました」とコメント。再春館製薬所 海外本部は、「海外市場では、日本以上にFacebook広告のターゲティングが重要な位置づけです。サード・パーティCookie規制の影響もあり広告パフォーマンスは低迷、CAPI対応が急務でしたが、自社で対応するにはリソースの負荷が大きい状態でした。KARTE Signalsによって、サーバーのデータを直接Facebookサーバーへと連携させることができるので大変助かりました」と述べている。KARTE Signalsでオンライン広告のLTVやNPSなど指標を確認することで、広告の価値を顧客とのエンゲージメントの観点で評価できる。

欧州のデジタル規制の再改定でフェイスブックの態度が変わる可能性、内部告発者フランシス・ホーゲン氏が欧州議会で証言

Facebook(フェイスブック)の内部告発者Frances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏は、先に行われた英国と米国の国会議員の前でのセッションの後、欧州議会で洗練された証言を行った。

ホーゲン氏のコアメッセージは、大西洋の両側で発せられたのと同様の深刻な警告だった。「Facebookは安全より利益を優先し、個人、社会、民主主義に悪影響を及ぼす有害コンテンツの増幅を無視することを選んでいる。そして、欧州の規制監督は、こうした無責任な運営を行うプラットフォームを統制し、責任あるものにするために不可欠であり、立法者たちがソーシャルメディアに規制を課すことに一刻の猶予もない」。

Facebookの内部告発者として(これまでで)最も注目度の高い人物であるホーゲン氏は、欧州議会から非常に好意的な反応を受けた。議員たちは、同氏が時間を割いてくれたことや、彼らが同氏の「勇気」と表現する、懸念を公に表明してくれたことへの感謝の言葉を惜しまなかった。そして同氏が発言する前や、約3時間にわたるプレゼンテーションと質疑応答の最後にも、同氏を称賛した。

議員たちはさまざまな問題について同氏に質問した。最も大きな関心が寄せられていたのは、新たに導入されるEU全域のデジタル規制が、不安定なプラットフォーム大手に対して、効果的な透明性と説明責任をいかに最大限にもたらし得るかということだった。

Digital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、欧州議会議員の知性の前に置かれている。欧州委員会の提案に対する修正の検討と投票が行われており、この過程で同法案が大きく変化する可能性もある。

一部の議員が行動広告の全面禁止を求める動きを見せたことなどを受け、コンテクスチュアル広告のようなプライバシー保護に配慮した代替手段が法案に盛り込まれた。あるいは最近支持を得た別の修正案では、ニュースメディアをプラットフォームコンテンツの削除から除外するよう求めている

蓋を開けてみると、ホーゲン氏はこうした修正案に好意的ではないことがわかった。しかし、この規制を総じて支持すると同氏は発言した。

DSAの全般的な要点は、信頼できる安全なオンライン環境を実現することに置かれている。そして本日のセッション中に発言した多くの欧州議会議員たちは、ホーゲン氏が欧州議会で発言することに世界的な注目が集まっていることを受けて、EUの警笛を吹く街頭演説的なオポチュニティを捉えた。Facebookの(さらに)別のパブリシティ危機の真っただ中にある中、デジタル規制が審議中であるだけでなく、採択に向かって急速に進んでいる進歩的な状態であることを知らせるものだ。

Facebookの内部告発者は政治的エゴを満たすことに快く応じてみせた。EUがプラットフォーム規制に真剣に取り組んでいることに「感謝する」と述べ、EUはDSAにより「グローバルなゴールドスタンダード」を築くオポチュニティを有していると示唆した。

とはいえ、同氏は2021年10月に行われた別の証拠審議の際にも、英国議会で同様の表現を用いている。そこで同氏は、同国のオンライン安全法について同じように熱弁を振るった。

ホーゲン氏は欧州議会議員たちに対し、Facebookは「データを使ってごまかす」ことに並外れて長けている、と英国の立法者たちに警告した内容を繰り返し、Facebookのプラットフォーム上で起きていることに関するデータを提出することを単純に要求するだけのような甘い法律を通過させてはならない、と議員らに印象つけた。むしろFacebookは、データを引き出して監視監査を生成するのに使用するクエリの詳細に至るまで、同社が引き渡すデータセットのすべてについて説明を求められるべきだということだ。

法制化においてこのようなステップを取らなければ、EUの新しいデジタル規則に大きな抜け穴ができ、Facebookはチェックマークを付ける構図を描くのに必要なあらゆるクエリを実行して、選択的に自己利益的なデータを提供することでうまく乗り切るだろう、とホーゲン氏は警鐘を鳴らした。

Facebookのように信頼できないプラットフォームでも規制が効果を発揮するためには、市民社会組織や外部の研究者たちの幅広いエコシステムからの多層的で動的かつ継続的なインプットが必要だと同氏は提言した。新たに発生してくる弊害を掌握し、法律が意図した通りに機能していることを確保するためだ。

AIがもたらすインパクトに関して求められている説明責任を真に果たすためには、現在DSAが提案している「吟味された学識者」だけではなく、より広範な分野の外部専門家にプラットフォームデータを提供することで、監視に対する広い視野を持つべきだと同氏は強く要請した。

「Facebookがデータで偽ることは明らかです」と同氏は欧州議会で語っている。「DSAの導入を奨励します。Facebookはデータを提供する際、その取得方法を示す必要があります【略】データを引き出すために使用したプロセス、クエリ、ノートを開示することが極めて重要です。これを確認できない限り、提供された情報を信頼することはできません」。

ホーゲン氏は単に警告を発するだけではなかった。同氏はさらに賛辞を重ね、欧州議員たちに次のように伝えた。「欧州がこれらのプラットフォームを規制する上で重要な役割を担うことを強く信じています。欧州は活気に満ちた、言語的に多様な民主主義国家だからです」。

「言語的にも民族的にも多様な4億5000万人のEU市民のためのDSAの権利を獲得すれば、世界に向けたゲームチェンジャーを創出できます。ビジネスのオペレーションに対する社会的リスクの評価を各プラットフォームに義務づけることで、構築するプロダクトやその構築方法の決定は、利益の最大化だけに基づくものではなくなります。言論の自由を保護しつつ、リスクに対処する体系的なルールや基準を確立し、透明性、監視、執行がどのように機能すべきかを世界に示すことができるでしょう」。

「プラットフォームは自社がどのような安全システムを持っているのか、それらの安全システムがどのような言語に対応しているのか、言語ごとのパフォーマンスを明らかにしなければなりません。これを確実にすることが、深刻に、切実に求められています」と同氏は続け、包括的な情報開示の必要性に関する自身の主張を具体化した。「正直なところこれは欧州人の大多数にとって危険なことなのだろうか?と思われるかもしれません」。

ホーゲン氏によると、このようなアプローチは、そのプラットフォームが稼働するすべての市場と言語にまたがる弊害に対処する上で必要な「言語に依存しないコンテンツ中立的なソリューション」をFacebookに迫ることで、欧州を超えた規模のメリットをもたらすという。

Facebookの(限られた)安全予算における偏り、つまりどれだけの予算が英語圏の市場に向けられているのか、そして / または規制を恐れている少数の市場に向けられているのかという点は、Facebookの非常に多くの内部文書が漏洩したことで増幅された核心的な問題の1つである。そして同氏は、FacebookのAIモデルに状況に応じた透明性を持たせることで、強力なプラットフォームがどのように運用されているのか(そして何を優先するのか、何を優先しないのか)というグローバルな公平性の欠如に対処できると提言。そのためには一般的なパフォーマンス指標に加え、市場、言語、安全システム、そしてターゲットを絞ったコホート単位においても、詳細な情報が必要になると指摘した。

安全性を体系的な要件としてFacebookに取り組ませることは、欧州全域の市場でプラットフォームが引き起こす問題を解決するばかりでなく「世界の脆弱な地域に住んでいて、あまり影響力を持たない人々のために声を上げることにもなる」と同氏は主張する。そして次のように言い添えた。「世界で最も言語的な多様性に富む地域は、往々にして最も脆弱な地域であり、欧州が介入する必要性を抱えています。欧州は影響力を有しており、そうした地域の人々のために真に力を発揮できるのです」。

ホーゲン氏の発言の多くは以前の証言や記者会見でもお馴染みのものであった。一方、質疑応答では多くのEU立法者たちが、有害なコンテンツの増幅というFacebookの問題がマイクロターゲット / 行動広告(当議会で活発に議論されている)の全面禁止により解決されるのではないか、という論点に同氏の声を引き込もうとした。これによりアドテックの巨人は、背後にある人々の情報をデータ駆動型操作を通じて利益を得るために使用することができなくなるだろう、ということだ。

これについてホーゲン氏は異議を唱え、規制当局が決定するのではなく、人々が自分でターゲティング広告の有無を選択できるようにすることを支持すると述べた。

全面禁止の代わりに、同氏は「特定の事柄や広告は【略】実際に規制される必要があります」と提案し、規制の対象となる領域の1つとして広告料金を挙げた。「現在のシステムはヘイトを助成しています。つまり、ヘイト的な政治広告を掲載する方が、そうではない広告を掲載するよりも5倍から10倍安いのです。それを考えると、広告料を均一にする必要があると思います」と同氏は説明した。「ただし、特定の人をターゲットにした広告を規制すべきであるとも考えています」。

「ご存じかどうかわかりませんが、特定の広告について100人のオーディエンスをターゲットにすることも可能です。それが悪用されていることはまず間違いないと思います。政治広告に過剰にさらされているのはどのような人かを分析したところ、驚くことではありませんが、最も影響を受けているのはワシントンD.C.の人々で、それは極端に過度な露出状態です。私たちは月に何千もの政治広告について話し合っています。ですから、特定の人々を彼らの認識なしにターゲットにするメカニズムを持つこと【略】は容認できないと私は考えます」。

ホーゲン氏はまた、Facebookはサードパーティのデータソースを利用して、広告ターゲティング目的でユーザーのプロファイルを充実させていることに言及し、その利用を禁止するよう主張した。

「プロファイリングとデータ保持に関して、サードパーティのデータを取得することを許可すべきではないと思います。Facebookはクレジットカード会社やその他の形態と協働していますが、これは彼らの広告の収益性を根底から高めています」と同氏は述べ、次のように付け加えた。「データソースと連携する際にはその都度承諾する必要があると思います。人々は、Facebookに自分たちのデータの一部があることを知ればとても不愉快に感じるはずです」。

しかし、行動広告ターゲティングに関しては、全面禁止の支持を慎重に避けている。

それはこのセッション中に生じた興味深い波紋だった。この問題にはEU内部でモメンタムがあり、それにはホーゲン氏自身の内部告発が地域の立法者たちのFacebookに対する懸念を増幅させた結果としての影響も含まれていた。そしてホーゲン氏はそれを喚起するのに貢献したかもしれないのだ(しかしそうしないことを選んだ)。

「ターゲット広告に関しては、人々がどのようにターゲティングされるかを選択できるようにすべきであると強く提言します。そして、人々に選択を強要するダークパターンを禁止することを推奨します」と同氏はある回答の中で述べている(しかし「ダークパターン設計」のようなシニカルで多面的な要素に対し、規制当局がどのようにして有効な法律を作ることができるのかについての詳細には触れていない)。

「プラットフォームは、そのデータをどのように使うかについて透明である必要があります」と同氏は自身の提案のすべてを包含する本質を伝えてから、次の提案を繰り返すことに依拠した。「すべての政治広告に均一の広告レートを提供するようプラットフォームに義務づけるポリシーを公表すべきであることは、私が強く提唱するところです。政治広告でヘイトを助成すべきではありません」。

行動広告を禁止することに反対する同氏の主張は、規制当局が完全に包括的なプラットフォームの透明性を達成することに集約されている(むしろそれに依存している)ようだ。それは、Facebook(およびその他の同業各社)が人々のデータを使って実際に行っていることの正確な実態を提示できること、つまり、ユーザーがそのようなターゲティングを望むかどうかについて真の選択ができるようにすることだ。したがって、全面的な説明責任の遂行が重要な意味を持つ。

しかしセッションの別の局面で、それは子どもたちがFacebookのようなプラットフォームによるデータ処理に本当の意味で同意できるかどうかを尋ねられた後だったが、ホーゲン氏は、子どもはもちろんのこと、大人たちも、Facebookが自分たちのデータで何をしているのかを(現時点で)理解できているのか疑問であると主張した。

「自分がどのような情報をトレードしているのかを子どもたちが理解できるかということに関してですが、大人である私たちはほぼ間違いなく、何をトレードしているのかを理解していないと思います」と同氏は議員たちに語った。「アルゴリズムに何が含まれているのか、子どもたちにインフォームドコンセントが与えられるような形でターゲット設定されているのか、私たちにはわかりません。インフォームドコンセントが与えられているとは思えませんし、子どもたちの能力も限られています」。

これを踏まえると、同氏の信念、つまり「前述のような包括的な透明性は可能であり、すべての大人が操作的な行動広告を受け入れるか否かの判断を真に情報に基づいて下すことができるデータ駆動型操作、という普遍的に包括的な構図を描き出すだろう」との考えは、何というか、やや希薄に見える。

ホーゲンの論理、すなわち、規制当局がユーザーに提供されているあらゆるものについて不適切 / 不正確に伝達すること、および / または規制当局がユーザーに自らのリスクと権利に関する適切かつ普遍的な教育を保証していないことを含む、根本的な透明性の欠如に対して同氏が提案した解決策に従うならば、データ駆動型の搾取が(今まさに法律に組み込まれているフリーパスで)続いていくリスクがあることは確かであろう。

ここでの彼女の議論は一貫性に欠けているように感じられた。行動広告を禁止することに対する同氏の反対、そしてそれゆえに、ソーシャルメディアの操作的な有害性を助長する1つの根本的なインセンティブに対処することに反対している同氏の主張は、論理的というよりむしろイデオロギー的なものであるかのようだ。

(確かに、世界中の政府は同氏が主張しているような高い機能を備えた「完全な」監視機能を緊急に導入することができるという信念の飛躍は必要なように思える。とはいえ、同時に同氏は、何週間もかけて立法者たちに対し、プラットフォームは非常にコンテキストに特化した、データが詳細に記述されたアルゴリズムマシンとしてしか解釈し得ないものだと強く訴えてきた。同氏が今回の質疑応答で述べたようなFacebookの「驚くべき」データ量を考えれば、目の前にあるタスクの規模の大きさはいうまでもない。Facebookからデータを生の形で取得した場合、規制当局にとってあまりにも膨大すぎることが示されている)

これはおそらく、権利の専門家ではなく、データサイエンティストに期待される視点でもあるだろう。

(前述のような、行動広告の禁止に対する同氏の即座の拒否は、害が流れてそれが感じられるマシンの外にいるのではなく、ブラックボックスに内通してアルゴリズムやデータを操作することに専念してきたプラットフォームのインサイダーに見られるような、一種のトリガー反応といえよう)

セッション中の別の場面で、ホーゲン氏は、ソーシャルメディアの問題に対する唯一の万能薬として徹底的な透明性を求める自身の主張をさらに複雑にした。EUがこのような複雑な問題の施行を最大27の国家機関に任せることに対して警告を発した。

もしEUがそうするなら、DSAは失敗するだろうと同氏は示唆した。代わりに立法者たちに助言したのは、Facebookレベルのプラットフォームを包み込むために必要だと同氏が指摘する、非常に詳細で階層化された動的なルールの実施に対処するための中央EUの官僚機構を作ることだった。同氏はさらに、自身のような元業界のアルゴリズムの専門家たちがそこに「居場所」を見つけ、彼らの専門的な知識への支援や「公的な説明責任に貢献することによる還元」が推進されることを提唱した。

「アルゴリズムが実際にどのように機能し、その結果がどのような結果をもたらすのか、これらの分野の正式な専門家の数は、世界的に見て非常に少ないのが現状です。この分野に修士号や博士号はありません。そのため、分野に携わる企業の1つで働き、社内で実地訓練を受ける必要があります」と同氏は説明し、さらに次のように付け加えた。「この機能を27の加盟国に委譲した場合、1つの場所でクリティカルマスを獲得できなくなることを、私は深く懸念しています」。

「十分な専門家を確保し、それを広く分散させることは、非常に難しいでしょう」。

プラットフォームが人々の目をたやすく欺くことを防ぐためには、利己的なデータセットや「脆弱な」AIの中の悪質な詳細を明らかにする必要があると立法者たちに警告する声が非常に多い中、広告に個人データを使用しないなどの単純な制限を規制当局が実際に設定することにホーゲン氏が反対していることは、教訓的であるように思える。

同氏はまた、規制当局はプラットフォームがデータを使って実行できることに制限を設けるべきか、および / またはアルゴリズムに使用できるインプットに制限を設けるべきかについて、欧州議会議員らから直接質問を受けた。この質問に対しても、同氏は制限ではなく透明性を優先した(しかし他のところでは、前述のように同氏は、広告プロファイリングを充実させる目的でFacebookがサードパーティのデータセットを入手することは少なくとも禁止すべきだと主張している)。

結局のところ、このアルゴリズムの専門家のイデオロギーには、データ駆動型ソフトウェアマシンのための効果的な規制を考え出す方法について、ブラックボックスの外で考えることに関してはいくつかの盲点があるようだ。

民主主義社会がデータマイニングテクノロジーの巨人たちからコントロールを奪い返すためには、ある程度の急ブレーキは必要なことかもしれない。

したがって、ホーゲン氏の最大のアドボカシーは、デジタル規制を致命的に台無しにする抜け穴のリスクに関する極めて詳細な警告であろう。ここでのリスクが多元的であるという点で、同氏は間違いなく正しい。

同氏はプレゼンテーションの冒頭で、もう1つの抜け穴の可能性を指摘した。立法者たちに、ニュースメディアのコンテンツをDSAから除外しないよう求めた(これも議員たちが検討している修正案の1つだ)。「コンテンツ中立性のルールを作るのであれば、本当に中立でなければなりません」と同氏は主張した。「何も選ばれず、何も除外されないということです」。

「現代の偽情報キャンペーンはいずれも、システムを操作することで、デジタルプラットフォーム上のニュースメディアチャンネルを不当に利用していくでしょう」と同氏は警告した。「プラットフォームがこれらの問題に取り組むことをDSAが違法とする場合、私たちは法の有効性を損なうリスクを負うことになります。実際、今日の状況よりも状況が悪化する可能性があります」。

質疑応答の中でホーゲン氏は、いわゆる「メタバース」の構築に向けて計画されているFacebookの方向転換に照らして、規制当局が直面するであろう新たな課題について議員たちからいくつかの質問を受けた。

関連記事:ザッカーバーグ氏は110兆円規模のフェイスブックを「メタバース」企業にすると投資家に語る

これについて、同氏は議員らに対し「非常に懸念している」と述べ、家庭やオフィスでのメタバース供給センサーの普及によってデータ収集量が増加する可能性に警鐘を鳴らした。

同氏はまた、Facebookがワークプレイス用ツールの開発に注力していることが、ビジネスツールに関して従業員がほとんど発言権を持っていないことを考えると、オプトアウトが選択肢にさえならない状況をもたらすのではないかという懸念を表明した。これは人々が将来、Facebookの広告プロファイリングと、生計を立てることのどちらかを選ぶというディストピア的な選択に直面する可能性を示唆している。

Facebookが「メタバース」に新たな焦点を当てたことは、ホーゲン氏がFacebookの「メタ問題」と呼んだものを浮き彫りにしている。これはつまり、同社が現在のテクノロジーによって生じた問題を終わらせて修復するよりも「先に進む」ことを優先しているということでもある。

規制当局はこのジャガーノート(圧倒的な力を持つ存在)に対して、安全性に重点を置いた新たな方向性を計画させるためのレバーを投入しなければならない、と同氏は強調した。

​​画像クレジット:BENOIT DOPPAGNE/BELGA MAG/AFP / Getty Images under a license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがグループや特定コンテンツの表示数を減らすニュースフィード制御機能をテスト

米国時間11月18日、Facebook(フェイスブック)はユーザーがプラットフォーム上で表示される内容をより細かくコントロールできるようにするためのテストを実施することを発表した。

このテストは、英語圏のユーザーを対象としたFacebookのアプリで実施される。Facebookのニュースフィードに表示される内容を管理するメニューに「友達と家族」「グループとページ」「有名人」という3つのサブメニューが追加されることになる。テストに参加しているユーザーは、自分の好みに応じて、これらの投稿の割合を「通常」のままにするか「多め」または「少なめ」に変更するかを選択できる。

テストに参加している人は、トピックについても同様に、自分が興味のあるものや見たくないものを指定することができるようになる。Facebookはブログ記事の中で、このテストが世界中の「ごく一部の人々」に提供されるとした上で、今後数週間のうちにテストを徐々に拡大していくとしている。

また、Facebookは、広告主が特定のトピック領域からコンテンツを除外できるツールを拡張し、ブランドが「ニュースと政治」「社会問題」「犯罪と惨事」の隣に表示されないようにすることができるようにする。「広告主が1つまたは複数のトピックを選択すると、その広告は、ニュースフィードで最近それらのトピックに反応した人々には配信されません」と同社はブログ記事で書いている。

Facebookのアルゴリズムは、扇情的なコンテンツや危険な誤報を助長することで有名だ。そのため、Facebookとその新しい親会社であるMeta(メタ)は、プラットフォームを浄化し、その慣行をより透明化するよう、規制当局からの圧力を受けている。議会では、ユーザーが表示内容をコントロールできるようにしたり、アルゴリズムによるコンテンツの不透明さを解消したりするための解決策が検討されているが、Facebookはまだ自主規制の時間が残っていると期待しているようだ。

2021年10月、Facebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、Facebookの不透明なアルゴリズムが、特に同社が最も精査している市場以外の国では危険であることを指摘した。

米国やヨーロッパでも、ニュースフィードのランキングシステムでエンゲージメントを優先するという決定により、分断的なコンテンツや政治的に扇動的な投稿が急増している。

ハウゲン氏は、同じく10月に放送された「60 Minutes」で「Facebookの今日のコンテンツの選び方が招いている結果の1つは、エンゲージメントやリアクションを得られるコンテンツに最適化するようになっているということです。しかし、独自の調査によると、憎悪、分裂、偏向的なコンテンツは、他の感情よりも人々の怒りを刺激しやすいことがわかっています」と語っていた。

画像クレジット:Facebook

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Akihito Mizukoshi)

フェイスブックの広告ツールが特定の個人をターゲティングできることを研究者グループが発表

スペインとオーストラリアの学者とコンピュータ-科学者のチームによって執筆された最新の研究論文で、Facebook(フェイスブック)のプラットフォームがユーザーに割り当てる関心事項について十分に認識していれば、Facebookのターゲットツール使用して、特定の個人のみに排他的に広告を配信できることが実証された。

「Unique on Facebook:Formulation and Evidence of (Nano)targeting Individual Users with non-PII Data(Facebook上での一意性:非個人データによる個人ユーザーのナノターゲティングの定式化と証拠)」と題するこの論文では、Facebookのプラットフォームによってユーザーに割り当てられた趣味・関心事に基づいて、ユーザーを一意に識別できる可能性を示すメトリックを定義する「データ駆動モデル」が説明されている。

研究者たちは、Facebookのアドマネージャーツールを使用して、意図した特定のFacebookユーザーのみに届くように多数の広告をターゲット配信することができることを実証した。

この研究では、Facebookの広告ターゲットツールが有害な目的に利用される可能性について、新たな疑問を投げかけている。さらには、Facebookがユーザーについて収集している情報を使用して個人を特定できる、つまり、ユーザーの趣味や関心のみに基づいてFacebook上の膨大なユーザーから1人を選び出すことができるという状況を踏まえ、Facebookの個人データ処理帝国の合法性についても疑問を呈している。

この研究結果により、行動ターゲティング広告の禁止または段階的廃止を求める議員に対する圧力が強まる可能性がある。行動ターゲティング広告は、個人的にも社会的にも害を及ぼす可能性があるため、何年にも渡って非難の対象になってきた。少なくとも今回の論文によって、こうした侵襲的なツールの使用方法について確固とした抑制と均衡を求める声が高まりそうだ。

また、この研究では、こうした独立系の研究機関でもアルゴリズムを利用したアドテックを調査できることの重要性も浮き彫りになっており、研究者のアクセスを遮断しないように求める対Facebookの圧力も強まるに違いない。

Facebookの関心は個人データ

「私たちのモデルで検証した結果、Facebookによってあるユーザーに割り当てられた関心事集合のうち4つの大変珍しい関心事または22のランダムな関心事によって90%以上の可能性でそのユーザーをFacebook上で一意に特定できることが明らかになりました」とマドリード大学Carlos III、オーストラリアのGraz University of Technology(グラーツ工科大学)、スペインのIT企業GTD System & Software Engineering(GTDシステム&ソフトウェアエンジニアリング)の研究者は書いている。これにより、1つの重要な事実がわかる。つまり、Facebookが認識している珍しい関心事または多くの関心事を持つ個人は、Facebook上で、数十億人という膨大なユーザーの中からでも容易に特定できるということだ。

「この論文は、私たちの知るかぎりでは、世界規模のユーザーベースを考慮した上で個人の一意性について調査した最初の研究です」と彼らは続け、28億人のアクティブなユーザーに対するデータマイニングというFacebook固有のスケールについて言及した(注:Facebookはユーザー以外の情報も処理している。つまり、Facebook上でアクティブなインターネットユーザーよりもさらに広範なスケールの人たちにリーチしている)。

研究者たちは、今回の論文は「Facebookの広告プラットフォームを体系的に悪用してインターネット上の非個人識別情報データに基づくナノターゲティングを実装できる可能性」について最初の証拠を提示するものであることを示唆している。

Facebookの広告プラットフォームが、1対1で相手を巧みに操るためのパイプの役割を果たしていることについては早くから論争が繰り広げられてきた。例えば2019年のDaily Dotの記事には、性生活に不満を抱えている夫に、妻やガールフレンドを心理的に操作するサービスを販売していたSpinner(スピナー)という会社の例が紹介されている。挑発的で無意識に相手を操作する広告がターゲットのFacebookやインスタグラムのフィードにポップアップ表示されるというものだ。

今回の研究論文では、2017年に起こった英国の政治生命に関する事例にも言及している。労働党の選挙運動の最高責任者がFacebookのカスタムオーディエンス広告ターゲティングツールを利用して、党首のJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏をだますことに成功したのだ。ただし、このケースでは、ターゲットになったのはコービン氏だけではなかった。彼の同僚や彼と同じ考えの数人のジャーナリストにも広告が送られた。

今回の研究チームは、Facebookのアドマネージャーツールを利用すれば、特定の1人のFacebookユーザーに広告を送ることができることを実証している。彼らはこのプロセスを「ナノターゲティング」と呼んでいる(現在のアドテックで「標準的」な「インターネットベース」の広告をユーザーグループに送るマイクロターゲティングとは異なる)。

「本稿では、21のFacebook広告キャンペーンによって実験を実施することで、広告主がユーザーの関心事を十分に認識していれば、Facebook広告プラットフォームを体系的に悪用して特定のユーザーに排他的に広告を配信できることを論文の3人の執筆者が証明する」と論文には書かれており、この論文は「ターゲットユーザーの関心事のランダム集合を認識するだけで、Facebook上に1対1のナノターゲティングを体系的に実装できる」という「最初の経験的証拠」を提示するものだとしている。

彼らが分析に使用した関心事データは、彼らが作成し、2017年1月以前にユーザーによってインストールされたブラウザ拡張機能を介して、2390人のFacebookユーザーから収集されたものだ。

この拡張機能はData Valuation Tool for Facebook Users(Facebookユーザー向けのデータ評価ツール)と呼ばれ、各ユーザーのFacebook広告設定ページを解析して、ユーザーに割り当てられた趣味や関心を収集すると同時に、Facebookのブラウジング中にそのユーザーに配信される広告によってFacebookにもたらされる利益のリアルタイムの推測値を計算する。

関心事データは2017年以前に収集されたものの、Facebookの広告プラットフォームを介して1対1のターゲティングが可能かどうかをテストする研究者たちの実験は2020年実施された。

「具体的には、この論文の3人の執筆者たちをターゲットとするナノターゲティング広告キャペーンを設定しました」と彼らはテスト結果について説明する。「私たちは、Facebookが各ターゲット執筆者に割り当てた関心事のリストから5、7、9、12、18、20、22個をランダムに選択したものを使用して各執筆者向けにオーディエンスを作成することで、データ駆動型モデルが実際に機能するかどうかをテストしました」。

「2020年の10月から11月の間に合計21回の広告キャンペーンを実施して、ナノターゲティングが現在実現可能であることを実証しました。実験でモデルの実施結果を評価したところ、攻撃者があるユーザーについて18個以上のランダムな関心事を認識していれば、そのユーザーに対して非常に高い確率でナノターゲティングを実行できることが分かりました。実験で18個以上の関心事を使用した9つのうち8つの広告キャンペーンで、当該ユーザーのナノターゲティングに成功しました」。

したがって、Facebookに18個以上のあなたの関心事が登録されている場合、あなたを巧みに操ることを目論んでいる人物にとって、それらの関心事は極めて興味深いものになる。

ナノターゲティングは止められない

1対1のターゲティングを防ぐ1つの方法として、Facebookが最小オーディエンスサイズに厳しい制限を課す方法が考えられる。

今回の論文によると、Facebookは、キャンペーンのオーディエンスサイズが1000人を超える(以前は21人以上だったが2018年にFacebookが制限値を上げた)可能性がある場合、アドキャンペーンマネージャーツールを使用して「Potential Reach(潜在的リーチ)」値を広告主に提示しているという。

しかし、Facebookは、実際には、この潜在的リーチよりも少ないユーザーをターゲットとするキャンペーンを広告主が実施することを禁止していない。ただ、メーッセージがリーチする人の数が極めて少ないことを広告主に知らせないだけだ。

研究者たちは、複数のキャンペーンで、1人のFacebookユーザーに無事広告が届いたことによってこの事実を実証することができた。その結果、広告のオーディエンスサイズはFacebookの広告レポート生成ツールによって生成されたデータを参照したものであること(「Facebookにより1人のユーザーだけにリーチしたことが報告された」)、ウェブサーバー上にユーザーが広告をクリックすることによってのみ生成されるログ記録が存在することによって確認された。さらには、ナノターゲティングの対象ユーザーに広告とそれに付随する「この広告が表示されている理由」オプションのスナップショットを取得してもらった。このオプションの値は、ナノターゲティングに成功したケースのターゲティングパラメーターに一致していたという。

実験結果のサマリーには次のように追記されている。「本実験から得られた主な結論は次のとおりである。(i)攻撃者がターゲットユーザーから18個以上の関心事を推測できる場合、Facebook上の特定の1人のユーザーをナノターゲティングできる可能性は非常に高い。(ii)ナノターゲティングは非常に低コストで実現できる。(iii)本実験によると、ナノターゲット広告の3分の2は有効キャンペーン期間中7時間以内にターゲットユーザーに配信されると予想される」。

ナノターゲティングの防止対策について議論されているこの論文の別のセクションでは、Facebookが課しているとされるオーディエンスサイズの制限は「まったくの無効であることが判明した」と主張しており、20人というオーディエンスサイズ制限は「現在適用されていない」と断言している。

また、Facebookがカスタムオーディエンス(広告主がPIIをアップロードできる別のターゲティングツール)に適用しているという100人制限の回避策も提示されている。

以下論文より抜粋する。

広告主による極めて少数のオーディエンスをターゲットとする広告の配信を防ぐためにFacebookが実装している最も重要な対策は、オーディエンスを形成するユーザーの最小数に制限を課すというものだ。しかし、この制限はまったくの無効であることが判明した。本論文の結果に動機付けられたFacebookは、アドキャンペーンマネージャーを使用して20人を下回るサイズのオーディエンスを設定することを禁止した。我々の調査では、この制限は現在適用されていない。その一方でFacebookは、最小カスタムオーディエンスサイズを100人とする制限を課している。セクション7.2.2で説明するとおり、この制限を回避して、カスタムオーディエンスを使用してナノターゲティングによる広告キャンペーンを実装するさまざまな方法が文献で紹介されている。

この論文では、全体を通して、インターネットベースのデータを「非個人識別情報(non-PII:Personally Identifiable Information)」と呼んでいるが、このような枠組みは欧州の法律のもとでは無意味であることを忘れてはならない。欧州では、一般データ保護規則(GDPR)のもとで、個人データについて非常に広い見方をしているからだ。

PIIという言葉は米国でのほうがより一般的だ。米国では、欧州のGDPRに相当する包括的な(連邦)プライバシー法というものがないからだ。

アドテック企業もPIIという言葉を使いたがる。ただし、それはずっと限定されたカテゴリでの話だ。アドテック企業が実際に処理するすべてのデータ(個人を識別およびプロファイリングして広告を配信するために使用できるデータ)という意味ではない。

GDPRのもとでは、個人データとは個人の名前やメールアドレス(つまり、PII)などの明白な識別子だけでではなく、個人を特定するために間接的に使用できる情報(居場所や関心事など)も含まれる。

以下に、GDPR(第4(1)項)の関連部分を抜粋する(強調部分はTechCrunchによる)。

「個人データ」とは、識別されている、または識別可能な自然人(データ主体)に関する任意の情報を指す。識別可能な自然人とは、特に、名前、識別番号、場所データ、オンライン識別子などの識別子、またはその人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的なアイデンティティに固有の1つ以上の要素を参照することで、直接または間接に識別可能な自然人のことである。

他の研究でも数十年に渡って繰り返し示されていることだが、個人は、クレジットカードメタデータNetflixの視聴習慣など、わずかな「非個人識別情報」があれば再特定できる。

膨大な数の人たちをプロファイリングし広告のターゲットにするFacebookは、継続的かつ広範囲にインターネットユーザーの行動をマイニングして関心事ベースのシグナル(つまり、個人データ)を収集し、個人プロファイリングを行って各個人に合わせた広告を配信する。そのFacebook帝国が、世界中のほとんど誰でも巧みに操作できる(ただし、相手について十分な知識があり、その相手がFacebookのアカウントを持っていることが条件)可能性のある攻撃ベクトルを作り出したとしても何も驚くには当たらない。

しかし、それが法的に問題のないことであるとは限らない。

実際、人々の個人データを処理して広告ターゲティングを行ってもよいというFacebookの主張の法的根拠は、EUで長年に渡って問題とされてきた。

広告ターゲティングの法的根拠

Facebookは以前、ユーザーは自身の個人データが広告ターゲティングに使われることについて同意していると主張していた。しかし、Facebookは、行動ターゲティングのためにプロファイリングされることを承諾するのか、ただ友人や家族とつながりたいだけなのかのどちらかをユーザーに選択してもらう際に、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づいて選択できるようにしていない(ちなみに、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づく同意というのは、同意についてのGDPRの基本的なスタンスだ)。

Facebookを使うには、自分の情報が広告ターゲティングに使用されることを承諾する必要がある。これは、EUのプライバシー運動家が「同意の強制」と呼ぶものだ。つまり、同意ではなく、強制だ。

しかし、2018年5月のGDPR施行以来、Facebookが合法的にヨーロッパ人の情報を処理できるのは欧州のユーザーが広告の受信についてFacebookと契約している状態だからだ、という主張に切り替えたようだ。

FacebookのEU規制当局として主導的立場にあるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)によって今週始めに公開された仮決定では、こうした暗黙の主張変更は透明性に欠けるとして、Facebookに対し、3600万ドル(約40億9500万円)の罰金を課す提案をしている。

DPCは、Facebookの広告契約の主張には問題があるとは考えていないようだが、欧州の他の規制当局は問題があると考えており、アイルランドの仮決定に意義を唱える可能性が高い。この件に関するFacebookのGDPRに対する不満をめぐる規制当局側の調査は今後も続き、当分は終わりそうもない。

仮にFacebookがEUの法律を回避しているという最終判断が下った場合、Facebookはユーザーに対し、ユーザーの情報を広告ターゲティングに使用できるかどうかについて見返りを求めない選択肢をユーザーに与えることを強制されることになる。そうなると、Facebook帝国に存在の根幹に関わるような風穴をあけることになる。というのも、この研究でも強調しているとおり、(ターゲティング広告に利用せずに)保管しているだけの関心事データでも個人データになるからだ。

それでも、Facebookは、問題など存在しないと主張するいつもの常套手段を使っている。

今回の研究に対して回答した声明の中で、Facebookの広報担当はこの論文を「当社の広告システムの動作原理についての理解が間違っている」として一蹴している。

Facebookの声明では、この研究者たちの結論の核心部分から注意をそらして、彼らの研究結果の重要さを矮小化しようとしている。以下に、広報担当の言明を示す。

この研究は当社の広告システムの動作原理を間違って把握しています。広告ターゲティングに使用する特定の人に関連付けられた関心事のリストは、その人がそのリストを共有することを選択しないかぎり、広告主が見ることはできません。このリスト、つまり広告を見た人を特定する具体的な詳細情報がなければ、この研究者たちの手法を使って広告主が当社のルールを破ろうとしても無駄です。

Facebookからの反論に答えて、論文の執筆者の1人であるAngel Cuevas(アンヘル・クエバス)氏は、同社の議論を「残念だ」と表現し、問題がないなどと主張するのではなく、ナノターゲティングのリスクを防止するためのより強力な対策を実装すべきだとしている。

この論文では、ナノターゲティングにともなう数多くの有害なリスクが指摘されている。例えば心理的説得、ユーザーの操縦、脅迫などだ。

「驚くのは、ナノターゲティングが実現可能であり、対策は広告主がユーザーの関心事を推測できないと仮定することくらいしかないことをFacebook自身が暗黙に認識していることです」とクエバス氏はいう。

「広告主がユーザーの関心事を推測する方法はいくらでもあります。この論文でも、(ユーザーからは研究目的で行うという明示的な同意を得た上で)ブラウザのプラグインを使って実際に試してみました。それだけではありません。関心事の他にも、(今回の研究では試しませんでしたが)年齢、性別、都市、郵便番号などのパラメーターもあります」。

「これは残念なことです。Facebookのようなテック大手は、広告主がFacebookプラットフォームでのオーディエンスサイズを決めるために後で使用できるようユーザーの関心事を推測することなどできないという前提に頼らずとも、もっと強力な対応策を実現できるはずです」。

例えば2018年のCambridge AnalyticaによるFacebookデータの悪用スキャンダルを覚えているだろうか。Facebookのプラットフォームにアクセスした開発者が、クイズアプリを使って、気づかれることも同意を得ることもなく、数百万人のユーザーのデータを抽出することができたという事件だ。

つまり、クエバス氏のいうとおり、広告主 / 攻撃者 / エージェントが同じような不透明でずるいやり方を実装してFacebookユーザーの関心事データを取得し、特定の個人を巧みに操ることは決して難しくない。

論文の注には、ナノターゲティングの実験を行った数日後、テスト用キャンペーンに使用したアカウントがFacebookによって何の説明もなく閉鎖されたと記載されている。

Facebookからは(アカウントが閉鎖された理由も含め)論文に記載した具体的な質問に対する回答はなかった。だが、もしFacebookがナノターゲティングの問題を認識していたから閉鎖したのであれば、なぜそもそも特定の1人のユーザーをターゲットとする広告の配信を防ぐことができなかったのだろうか。

訴訟の増加

この研究結果は、Facebookの事業にどの程度広範囲な影響を及ぼすだろうか。

あるプライバシー研究者の話によると、この研究はもちろん訴訟に役立つという。欧州では、特にFacebook(広くはアドテック全般)に対するEU規制当局のプライバシー保護対策が遅々として進んでいないため、訴訟の数が増えている。

また別の研究者は、今回の研究結果は、Facebookが、個人データは処理していないと見せかけておきながら、実はユーザーの体系的な再特定化を大規模に行っていることを浮き彫りにしていると指摘する。つまり、Facebookは膨大な数のユーザーの膨大なデータを蓄積しており、個人情報の処理に制限を設ける程度の範囲の狭い法的規制など事実上回避できてしまうことを示唆している。

このため、行動ターゲティング広告がもたらす害を抑える有意義な制限を課そうとする規制当局は、Facebook独自のアルゴリズムが同社が保持する膨大なデータ内を検索して、その中からユーザーの代理人に相当するパラメーターを探し出して利用するという方法に気づく必要がある。また、同じような論法でFacebookのアルゴリズムによる処理は法的な制限を回避する可能性がある(例えばFacebookが慎重に扱うべき関心事の推測の問題で使った戦術)ことも認識しておく必要がある。

別のプライバシーウォッチャーで独立系の研究者でコンサルタントのDr Lukasz Olejnik(ウカシュ・オレジニク)博士は、今回の研究を驚くべきものだとし、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入る内容だと説明する。

「28億人から1人を特定するのはとてつもないことです。Facebookプラットフォームは、そのようなマイクロターゲティングが行えないようにする予防策を講じていると主張しているにもかかわらず、です。この論文は、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入ります」と語る。

「関心事は個人データに含まれるとするGDPR第4(1)項の意味する関心事によってユーザーを特定することができるようです。ただし、こうした処理をどのようにして大規模に実行するのかは明確に示されていませんが(ナノターゲティングのテストは3人のユーザーに対してのみ実行された点を指摘して)」。

オレジニク氏は、この研究はターゲティング広告が個人データ、そして「おそらくGDPR第9項の意味における特殊なカテゴリのデータにも」基づいて行われていることを示していると指摘する。

「これはつまり、適切な保護対策が行われていないかぎり、ユーザーの明示的な同意が必要であることを意味します。しかし、論文の内容から、私たちは、そうした対策は存在しているとしても不十分だという結論に達しました」と同氏は付け加えた。

今回の研究はFacebookがGDPR違反を犯していることを示していると思うかという質問に対し、オレジニク氏は「DPAは調査を行うべきです。その点は疑問の余地がありません」と話す。「技術的には難しい案件かもしれませんが、立件は2日もあればできるはずです」。

我々はこの研究結果をFacebookの欧州DPAで主導的立場にあるアイルランドDPCに知らせ、GDPR違反があるかどうかを判定するための調査を行うかどうか聞いてみたが、本記事の執筆時点では回答がなかった。

マイクロターゲティングの法的禁止に向けて

この論文によってマイクロターゲティングの法的禁止を肯定する論拠が補強されるかという質問に対し、オレジニク氏は、歯止めをかけることは「前進ではある」が、問題はその方法だと答えた。

「全面禁止にする場合、現在の業界および政治環境の対応準備ができているかどうかは分かりません。とはいえ、少なくとも、技術的な防止策は求めるべきです」と同氏はいう。「(Facebookによれば)すでに防止策は講じているということですが、(ナノターゲティングの件については)防止策は存在しないも同然のようです」。

オレジニク氏は、グーグルのプライバシーサンドボックス案に組み込まれているアイデアを一部利用すればすぐに変化が起こる可能性があると提案する。しかし、同案はアドテック各社が競争監視につながるとして不満を表明したため頓挫してしまっている。

マイクロターゲティングの禁止についてクエバス氏に意見を聞くと、次のように答えてくれた。「私の個人的な立場から言わせていただくと、我々はプライバシー保護のリスクと経済(求人、イノベーションなど)とのトレーオフについて理解する必要があるということです。私たちの研究によると、アドテック業界は、個人識別情報(メール、電話、住所など)について考えるだけでは不十分であり、オーディエンスの範囲を特定する(絞り込む)方法についてより厳しい対策を実装する必要があることは明らかです。

「その上で申し上げますが、私どもはマイクロターゲティング(少なくとも数万人規模のユーザーにオーディエンスを限定できる能力と考えます)を禁止することには反対です。マイクロターゲティングには重要な市場が存在しており、そこでは多くの仕事が生まれています。また、必ずしも悪いこととは限らない興味深いことが行われている極めて革新的な分野でもあります。ですから、マイクロターゲティングの潜在能力をある程度制限してユーザーのプライバシーを保護するというのが私どもの立場です」。

「プライバシーの分野で未だに解決されていない疑問は同意だと思います」と同氏はいう。「研究コミュニティとアドテックエコシステムは、(理想的には協力して)十分な説明を行った上での同意をユーザーから得るための効率的なソリューションを作成するために取り組みを進める必要があります」。

大局的な話をすると、欧州では、AI駆動形ツールの法的要件がおぼろげに見え始めたところだ。

EUでは2021年初めに提案された人工知能の高リスクの応用を規制する法律が施行される予定だ。この法律では「人の意識を超えて作用する行動を大きくねじ曲げるためのサブリミナル技術で、その人または別の人に心理的または身体的な害を及ぼすかその可能性のある技術」を展開するAIシステムの全面禁止が提案されている。

そのため、Facebookのアドツールが脅迫や個人の心理的操作に利用されないようにするための適切な保護策を同社がまだ実施していない場合、FacebookのプラットフォームがEUの将来のAI規制のもとで禁止に直面するのかどうかを推測してみるのは少なくとも興味深い。

とはいえ、現時点では、Facebookのターゲティング帝国にとっては、相変わらずもうかるビジネスである。

クエバス氏にFacebookプラットフォームに対する今後の研究計画について尋ねると「次の研究で是非やりたいのは、関心事と他の人口統計情報を組み合わせることでナノターゲティングが『より容易になる』のかどうかという調査です」。

「というのは、広告主がユーザーの年齢、性別、都市(または郵便番号)といくつかの関心事を組み合わせてユーザーに対してナノターゲティングを実行できる可能性が非常に高いからです」と同氏はいう。「こうしたパラメーターをいくつ組み合わせる必要があるのかを知りたいのです。年齢、性別、住所と数個の関心事をユーザーから推測するほうが、数十の関心事を推測するよちもはるかに簡単です」。

このナノターゲティングの論文は2021年12月のACM Internet Measurement Conferenceでのプレゼンテーションとして受理されている。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックがユーザーの政治的信条、宗教、性的指向を広告ターゲットにすることを禁止予定

Facebook(フェイスブック)は米国時間11月9日、個人の健康、性的指向、宗教的・政治的信条などの、潜在的に「センシティブ」な属性に基づいてユーザーをターゲティングすることを、この先広告主に許可しないことを発表した。たとえば「Lung cancer awareness(肺がんの知識)」「LGBT culture”(LGBTカルチャー)」「Jewish holidays”(ユダヤ教の休日)」などが、2022年初頭からターゲット外となるカテゴリーの例だ。

同社はブログに「こうした詳細なターゲット設定オプションを削除する決定は容易ではなく、この変更が一部の企業や組織に負の影響を及ぼす可能性があることは承知しています」と記し、その上で公民権の専門家、政策立案者、その他の関係者からの意見が今回の決定を後押ししたと述べている。広告収入はFacebookの主要な収入源であるため、広告ポリシーの大幅な変更は大きな副次的影響を及ぼす可能性がある。

Facebookは年齢、居住地、性別(ジェンダー)など、プロフィールに記載されている情報に基づいて、ユーザーをターゲットにすることができる。しかしFacebookプラットフォームが、ユーザーのプロフィールに記載されている性的指向に基づいてターゲットを絞ることはこれまでもしていなかったと、同社の担当者はTechCrunchに語った。この先、削除される広告とは、ユーザーのプロフィール内の関心カテゴリーに基づいて提供されている広告を指すという。

これまでFacebookは、ユーザーのアクティビティに基づいて、そうした関心カテゴリをユーザーのプロフィールに割り当てていた。Facebookのコンテンツにどのように関わったかに応じて、ユーザーには「米国のユダヤ文化」「LGBTの権利」「バラク・オバマ」など、Facebookが「センシティブ」と呼ぶカテゴリーが割り当てられる可能性がある。2022年1月19日から、広告主はこれらのような関心事に基づいて広告をターゲティングすることができなくなる。なお「ロッククライミング」や「編み物」など、センシティブではない他の関心グループは引き続きターゲットとして使われる予定だ。センシティブかどうかに関わらず、そうしたカテゴリーは何万もあるのだ

いまでもユーザーは、デスクトップの「設定とプライバシー→設定→広告→広告設定→広告のターゲット設定に使用されるカテゴリ→興味・関心のカテゴリ」で、自分のプロフィールにひも付けられた関心グループを確認することができる。また特定の関心事に基く広告を見たくない場合は、そこでオプトアウトすることができる。

この広告ポリシーの変更は、Facebookプラットフォームの親会社として新たに社名を変更したMeta(メタ)が、内部告発者のFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏がリークした文書に関連した一連の上院公聴会の後、厳しい監視の目に晒されていることに起因している。より多くの文書が報道機関にリークされるにつれて、Metaは一部のジャーナリストの報道が同社の振舞を誤って伝えていると主張し、防御の姿勢を強めている。

とはいえ、Facebookの広告ポリシーは何年も前から問題視されていた。2020年の米国大統領選挙に向けて、Facebookは、作成できる政治広告の種類に制限を設けた。また2018年には、米住宅・都市開発省(HUD)が、家主や住宅販売業者たちが公正住宅法(Fair Housing Act)に違反する行為をFacebookが幇助していた件告発したことを受けて、Facebookは広告の5000以上のターゲティングオプションに対して同様の削除を実施した。その前の2016年には、Facebookは住宅、雇用、クレジット関連の広告に関する「民族的親和性」ターゲティングを無効にしている。これはProPublica(プロパブリカ)のレポートで、そうした機能が差別的な広告に使われる可能性があると指摘されたことを受けたからだ。住宅や雇用に関しては、特定の社会属性に基づいて広告を出すことは違法なのだ。また、ProPublicaの別の報告書によって、Facebookは反ユダヤ的な関心事のカテゴリーに基づく広告ターゲティングも削除している。

また同社は「私たちは、プラットフォーム上でどのように人びとにリーチできるかについての広告主の期待によりよく沿うと同時に、私たちが利用可能にしているターゲティングオプションを広告主が乱用することを防ぐことの重要性に関する公民権専門家、政策立案者、その他の利害関係者からのフィードバックにも対処したいと考えています」とブログ投稿を行っている。「こうした、詳細なターゲティングオプションを取り除く決定は容易ではなく、この変更が一部の企業や組織に負の影響を及ぼす可能性があることは承知しています」。

Facebookは、データが悪意ある者に悪用される可能性を懸念してこれらの決定を下したとしているものの、このデータが潜在的にポジティブな方向に使用される場合もあるため、一部の関係者を心配させている。たとえばこれまでは「糖尿病の知識」に興味がある人には、コンディションの管理に取り組んでいる非営利団体を紹介することができていたのだ。

それでも、Facebookには、特定のオーディエンスにアクセスするためのツールがまだ数多く残されている。例えばユーザーがiPhone上で広告トラッキングを許可した場合、Facebookの広告主はその情報を広告のターゲティングに利用することができる。また企業は「エンゲージメントカスタムオーディエンス」「類似オーディエンス」などを活用して、ユーザーにリーチすることができるが、その概要については同社のブログ記事で紹介されている。

画像クレジット:Lionel Bonaventure / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

フェイスブックがアップルのプライバシーポリシー変更による広告事業への影響を報告

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月22日、Apple(アップル)のプライバシーに関する変更が同社の広告事業にどのような影響を与えているかについての最新情報を提供した。すでに同社は、第2四半期の決算発表時に、第3四半期までに広告ターゲティング事業にさらに大きな影響が出ることが予想されると投資家に警告していた。同社は今回、その点を改めて強調するとともに、iOSのウェブコンバージョンを約15%過少に報告していたため、広告主にその影響が予想以上に大きいと思われていたことを指摘した。

Facebookのビジネスブログに掲載された発表によると、その正確なパーセンテージは、個々の広告主によって大きく異なる可能性があるとのこと。しかし、売上やアプリのインストールなどを含む実際のコンバージョンは、広告主がFacebookのアナリティクスを使って見ている数値よりも高い可能性があると述べている。

このニュースを受けて、Facebookの株価は4%近く下落している(記事執筆時点)。

Facebookが誤解を招くような測定値を公開したことは、今回が初めてではない。過去には動画広告の測定基準を水増ししていたにもかかわらず、すぐに問題を修正しなかったため、集団訴訟に発展したこともある。しかし、今回のケースでは、評価指標の問題はFacebookを実際よりも良く見せるのではなく、むしろ悪く見せてしまっていたということだ。Facebookは、広告主コミュニティから、ネットワーク上の広告投資に計画していた以上の影響が見られるという声を聞いており、懸念が高まっていると言及した。

そこでFacebookは、この新時代にキャンペーンの影響とパフォーマンスをよりよく理解するためのヒントをいくつか広告主に提供することにした。これまでのように毎日評価するのではなく、最低でも72時間、あるいは最適化ウィンドウがいっぱいになるのを待ってから、パフォーマンスを評価することを、同社は提案している。また、推定されるコンバージョンが遅れてレポートされる場合があるため、広告主は可能な限りキャンペーンレベルでレポートを分析すべきだとも述べている。さらに、広告主のコアビジネスに最も合致したウェブイベント(購入や登録など)を選択することなどを勧めている。

この測定値に関する問題に対処するため、Facebookはコンバージョンモデルの改善に取り組んでおり、レポートのギャップを解決するための投資を加速させ、ウェブコンバージョンを追跡する新機能を導入し、すでにインストールされているアプリ内のコンバージョンを測定する機能を拡張すると述べている。さらにバグを発見したら迅速にその修正に取り組むとしており、最近では約10%の過少報告につながっていたバグを修正し、広告主には共有済みだという。

Facebookは8月に、アップルとGoogle(グーグル)のプライバシーに関する変更と新たな規制の状況に照らして、パーソナライズド広告事業を適応させるためにどのように取り組んでいるかを説明したが、こうした取り組みには時間がかかると述べていた。

広告技術のアップデートだけでなく、Facebookは広告主がアプリを閲覧する消費者に、より効果的にアピールできるような新製品も開発している。例えば先週には、ビジネス向けツールのラインナップを刷新し、いくつかの新機能の導入や、消費者が企業を発見する機会を増やすための小規模なテストを拡大すると発表したばかりだ。すでに米国の一部ユーザーを対象に行われていたこのテストでは、ニュースフィードの投稿の下に、関連した他の企業やトピックを表示し、ユーザーを直接導こうとするものだ。他にも、企業がInstagram(インスタグラム)のプロフィールにWhatsApp(ワッツアップ)のボタンを追加できるようにしたり、InstagramユーザーをWhatsAppのビジネスチャットに誘導する広告を作成できるようにしている。

関連記事:広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebookは以前から、モバイルユーザーがiOSアプリ上で追跡されることをオプトアウトできるアップルの新しいプライバシー機能が、同社の広告ターゲティング事業の一般的な運用に問題をもたらすと広告主に警告してきた。Facebookはまた、アップルの変更が、Facebook広告に依存して顧客を獲得している小規模な店舗などの事業に影響を与えると繰り返し主張もしてきた。そしてこの変更が実施されると、Facebookの懸念は妥当であることが確認された。iOS上でトラッキング許可を選択している消費者はほとんどいないという調査結果が出たのである。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月16日、事業主向けにいくつかの新製品および新機能を発表した。これは、Apple(アップル)が新たなプライバシー機能を導入し、モバイル機器ユーザーがiOSアプリ上での追跡をオプトアウトできるようになったことから、Facebookの広告ターゲティング事業が脅かされていることを受けてのものといえるだろう。この巨大ソーシャルネットワーキング企業は、アップルのプライバシー方針変更が、Facebook広告から顧客を獲得している中小企業に影響を与えると繰り返し主張してきたが、アップルの変更を一切止めることはできなかった。それどころか、市場はユーザーのプライバシーに重点を置いた新しい時代へと移行しており、パーソナライゼーションやターゲティングは、よりオプトインな体験、つまりユーザーに許可する意思の表示を求めるようになっている。そのため、Facebookは企業広告について新たな方法で対処する必要があったのだ。

関連記事
Facebookがアプリ追跡と広告ターゲティング制限に対してアップル批判を強化
Facebookがニュースフィードの投稿に企業の関連コンテンツを表示するテストを米国で開始

Facebookは、消費者を追跡する機能が低下した(追跡されることを自ら選択する消費者はほとんどいないという調査結果が出ている)ことから、企業が自社製品やサービスに関連があるユーザーに、より訴求できるようにする新機能をいくつか導入する。これには、顧客へのリーチ、顧客への広告、Facebookアプリによる顧客とのチャット、リード(見込み客)の生成、顧客の獲得などを可能にするアップデートが含まれる。

Facebookは2021年4月、ニュースフィードの投稿の下に表示される、美容、フィットネス、服飾など、興味のあるトピックをタップして、関連する他の企業のコンテンツを探索する方法のテストを開始した。この機能により、ユーザーは自分が好きそうな新しい企業に出会うことができ、Facebookは特定の種類のコンテンツを好むユーザーのデータセットを、独自に作成することができる。将来的には、この機能を広告ユニットにして、企業が料金を支払って上位表示させることも可能になるかもしれない。

しかし当面は、この機能を米国内のより多くのユーザーに拡大するとともに、Facebookはオーストラリア、カナダ、アイルランド、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、南アフリカ、英国で開始を予定している。

画像クレジット:Facebook

Facebookは、企業がもっと容易に顧客とチャットできるようにしたいとも考えている。企業はすでに、Messenger(メッセンジャー)、Instagram Direct(インスタグラム・ダイレクト)、WhatsApp(ワッツアップ)といった、Facebookが所有するさまざまなチャットプラットフォームで、人々にメッセージを送るよう促す広告を購入することができるが、今後は利用可能なすべてのメッセージングプラットフォームを選択できるようになり、会話が発生する可能性が最も高い場所に基づいて、広告に表示されるチャットアプリがデフォルトで設定されるようになる。

画像クレジット:Facebook

この取り組みの一環として、同社はWhatsAppをInstagramに結びつけることにした。多くの企業がInstagramで宣伝したり、ショップを運営したりしているのに、顧客とのコミュニケーションや質問への回答は、WhatsAppに依存していると、Facebookは説明している。そこで同社は、企業がInstagramのプロフィールに、WhatsAppのClick-to-Chat(クリック・トゥ・チャット)ボタンを追加できるようにした。

特にこの変更は、Facebookが別々のアプリをより密接に結びつけようとする動きを象徴するものだ。その背景には、規制当局が独占禁止の懸念から、Facebookの解体を検討しているという現在の状況がある。すでに同社は、MessengerとInstagramのメッセージングサービスを相互に接続しており、さらに最近では、MessengerをFacebookのプラットフォーム自体に直接統合し始めている。これらのことから、解体はさらに複雑なものになるだろう。

画像クレジット:Facebook

また、それに関連した変更として、企業は近日中に、Instagramアプリからクリックするだけで、直接ユーザーをWhatsAppに送り、チャットを始めることができる広告を作成できるようにもなる(Facebookはすでにこのような広告を提供している)。

今回のニュースとは別に、FacebookはWhatsApp内に新しいビジネスディレクトリを設けることも発表した。これによって消費者は、同チャットプラットフォーム上でもショップやサービスを探せるようになる。

その他の変更は、Facebook Business Suite(フェイスブック・ビジネス・スイート)のアップデートとして導入される。これを利用する企業は「Inbox(受信箱)」でeメールを管理したり、リマーケティングメールを送信できるようになる他、新たに導入される「File Manager(ファイルマネージャー)」を使って簡単に投稿コンテンツを作成・管理することや、異なるバージョンの投稿をテストして、どの投稿が最も効果的かを比較することもできるようになる。

画像クレジット:Facebook

それ以外にテストが行われる新製品としては、Instagramにおける有料の有機的なリードジェネレーション(見込み客生成)ツールや、Messengerで会話を始める前に顧客にいくつかの質問に答えてもらう見積もり依頼、そして小規模事業主がFacebook広告の利用を始めるために提供される特典などがある。これにはFacebook広告クーポン、会計ソフトウェア「QuickBooks(クイックブックス)」とグラフィックツール「Canva Pro(キャンバ プロ)」の3カ月間無料アクセスなどが含まれる。

画像クレジット:Facebook

また、Facebookは「Work Accounts」と呼ばれるもののテストも開始する。これにより事業主は、個人のFacebookアカウントとは別に、この仕事用アカウントでBusiness Manager(ビジネス・マネージャー)などの企業用製品にアクセスできるようになる。企業は従業員に代わってこれらのアカウントを管理したり、シングルサインオンなどの企業向け機能を利用することも可能になる。

Work Accountsは、年内に少数の企業を対象としてテストを行い、2022年には利用可能な範囲を拡大していく予定であると、Facebookは述べている。

その他の広告に関する取り組みとしては、クリエイターや地元企業のコンテンツをより多く取り入れることや、ユーザーが閲覧するコンテンツをコントロールできる新機能などが計画されているというが、これらの変更点については現時点では詳細が明らかにされていない。

今回発表された新機能のほとんどは、すでに展開が始まっているか、近日中に導入される予定だ。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米上院議員がFacebookに研究者のアカウントを停止させた理由の説明を求める

Facebook(フェイスブック)が先週、誤報研究プロジェクトに携わる研究者のアカウントを停止するという決定を下したことは、同社に対する大きな反発を招き、そして今、米国議会が関与する事態にまで発展している。

当時、何人かの議員はこの決定を批判し、Facebookが不透明なアルゴリズムや広告ターゲティングの方法を透明化しようとする努力を敵視していると非難していた。研究者たちは、これらの隠されたシステムを研究することが、政治的な誤報の流れを洞察するために重要な作業であると考えている。

関連記事:フェイスブックがニューヨーク大学研究者からのアクセスを遮断、議員から反発を受ける

Facebookは、特にニューヨーク大学の「Cybersecurity for Democracy(サイバーセキュリティ・フォー・デモクラシー)」プロジェクトに所属する2人の研究者に対して罰則的な措置をとった。この研究者たちは「Ad Observer(アド・オブザーバー)」と呼ばれるオプトイン方式のブラウザツールを使って、Facebookがどのように人々の興味や属性に応じて広告ターゲティングを行っているかを研究している。

ロン・ワイデン
長年にわたってユーザーのプライバシーを侵害してきたFacebookが、その問題点を暴露する研究者を取り締まる口実として、プライバシー侵害という言葉を利用するのは、馬鹿げていると思います。私はFTCに、この言い訳がインチキであることを確認するよう求めました。

ラウラ・エデルソン
今夜、Facebookは私のFacebookアカウントと、ニューヨーク大学のチームであるCybersecurity for Democracyに関連する数名のアカウントを停止しました。これにより、私たちはFacebookのAd LibraryデータやCrowdtangleへのアクセスができなくなりました。

上院議員のAmy Klobuchar(エイミー・クロブチャー)氏(民主党・ミネソタ州)、Chris Coons(クリス・クーンズ)氏(民主党・デラウェア州)、Mark Warner (マーク・ワーナー)氏(民主党・ヴァージニア州)は、FacebookのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOに宛てた書簡で、研究者のアカウントを削除した理由や、彼らがどのようにプラットフォームの利用規約に違反してユーザーのプライバシーを侵害したというのかということについて、十分な説明を求めている。議員たちは米国時間8月6日にこの書簡を送った。

「Facebookがユーザーのプライバシーを守らなければならないことには同意しますが、同様に、Ad Observatoryプロジェクトに参加しているような信頼できる学術研究者やジャーナリストが、Facebookのプラットフォーム上で拡散している誤報や偽情報、その他の有害な活動に、同社がどのように取り組むべきかを明らかにするために独立した調査を行うことを、Facebookは許可しなければなりません」と、議員たちは書いている。

議員たちは長い間、特に2016年にFacebookが選挙の偽情報を配信していたことが発覚した後、政治広告や誤報について、より透明性を高めるよう同社に求めてきた。こうした懸念は、Trump(トランプ)氏の支持者が投票結果を覆そうとして連邦議会議事堂で暴動を起こすに至った選挙に関する誤報の拡散に、Facebookが重大な役割を果たしたことから、さらに高まった。

Facebookは、今回の決定を擁護するブログ記事の中で、アカウントを停止させた理由の1つとして、FTC(米連邦取引委員会)の命令を遵守するためということを挙げている。しかし、FTCは先週、ザッカーバーグ氏に宛てた書簡の中で、FTCの同社に対する指導は公益目的の研究を奨励することを妨げるものではないと指摘し、Facebookの虚勢を批判した。

「実際に、FTCは、特に監視型広告を中心とした不透明なビジネス慣行に光を当てようとする努力を支援しています」と、FTCの消費者保護局で局長代理を務めるSamuel Levine(サミュエル・レヴィン)氏は書いている。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックがニューヨーク大学研究者からのアクセスを遮断、議員から反発を受ける

Facebook(フェイスブック)は米国時間8月3日、2人の学術研究者のアカウントを停止し、世界最大のソーシャルネットワーク上における政治広告や誤報を研究する力を奪った。

Facebookは、2人の研究者が「不正なスクレイピング」を行い、同社のプラットフォーム上でユーザーのプライバシーを侵害したと非難した。しかし、この主張に対し、Facebookの多くの批判者は、透明性に関する研究を阻止するための薄っぺらい口実だと酷評している。

Facebookが行動を起こした相手は、ニューヨーク大学の「Cybersecurity for Democracy(サイバーセキュリティ・フォー・デモクラシー)」プロジェクトに所属する著名な研究者で、以前からFacebookと対立していたLaura Edelson(ラウラ・エデルソン)氏とDamon McCoy(デーモン・マッコイ)氏の2人。この措置により、2人は「Ad Library(広告ライブラリ)」(これまでFacebookが行ってきた唯一の重要な透明性確保の取り組みだ)にアクセスできなくなり、さらにFacebookのモニタリングサービス「CrowdTangle(クラウドタングル)」から得られる人気投稿に関するデータも利用できなくなった。

Facebookとエデルソン氏やマッコイ氏との間には、過去に因縁がある。同社は2020年の米国大統領選挙の数週間前に、2人が作成した「Ad Observer(アド・オブザーバー)」と呼ばれるオプトインのブラウザツールを無効にして調査結果も公表しないように求める停止命令を送っていた。Ad Observerは誰でもインストールできるブラウザツールで、Facebookを1兆ドル(約110兆円)規模の企業に成長させた広告が、誰をどのようにターゲットにしているかを、研究者が知ることができるようにするものだ。

「この数年間、私たちはこのアクセスを使用して、Facebook広告ライブラリのシステム上の欠陥を明らかにし、選挙システムに不信感を植え付ける多くの政治広告の誤報を特定し、Facebookが党派的な誤報を明らかに増幅させていることについて調査してきました」と、エデルソン氏はTwitter(ツイッター)で述べている。

「Facebookは、私たちのアカウントを停止することで、これらすべての研究を事実上終わらせました。また、Facebookは、私たちのプロジェクトを通じてFacebookのデータにアクセスしている他の20数名の研究者やジャーナリストたちへのアクセスも、事実上遮断しました。それらの中には、Virality Project(バイラリティ・プロジェクト)と共同で行っているワクチンの誤報に関する調査や、私たちのデータを利用している多くのパートナーが含まれます」。

この事件をきっかけに、Facebookがより危険な行動におよぶ可能性において、透明性よりも不透明性を重視する姿勢が改めて批判されることになった。

翌8月4日になると、Facebookの行動は一部の連邦議会議員からも注目を集めた。民主党のRon Wyden(ロン・ワイデン)上院議員(オレゴン州選出)は、Facebookがユーザー保護の名目で研究者を罰する決定を下したことについて、同社が習慣的にプライバシーを侵害してきた長い歴史に照らし合わせて批判した。また、ワイデン上院議員は、Facebookが研究者のアクセス権を剥奪したのは、過去にユーザーのプライバシーを侵害したとして連邦取引委員会から出されたプライバシーに関する命令を遵守するためであるという同社の主張を「はったり」であると言い放った。

ロン・ワイデン
長年にわたってユーザーのプライバシーを侵害してきたFacebookが、その問題点を暴露する研究者を取り締まる口実として、プライバシー侵害という言葉を利用するのは、馬鹿げています。私はFTCに、この言い訳がインチキであることを確認するよう求めました。

ラウラ・エデルソン
今夜、Facebookは私のFacebookアカウントと、ニューヨーク大学のチームであるCybersecurity for Democracyに関連する数名のアカウントを停止しました。これにより、私たちはFacebookのAd LibraryデータやCrowdtangleへのアクセスができなくなりました。

民主党のマーク・ワーナー上院議員(バージニア州選出)も、Facebookの最新の論争について、この決定を「深く憂慮すべきもの」と意見した。ワーナー上院議員は、独立した研究者たちが「有害で搾取的な活動を明らかにすることで、ソーシャルメディアプラットフォームの品位と安全性を改善し続けている」と讃えている。

ワーナー上院議員は「詐欺や不正行為の主な原因となり続けているオンライン広告の影の世界に、より高い透明性をもたらすために、議会が行動を起こすべき時はとっくに来ています」と語った。

Firefox(ファイヤーフォックス)の開発元であるMozilla(モジラ)は4日、Ad Observerを擁護し、同社のストアフロントでこのブラウザ拡張機能を推奨する前に「コードレビューと同意フローの検証の両方を行って、2回レビューした」と強調した。Mozillaのチーフセキュリティオフィサーは、ブログ記事の中で、Facebookの主張は「まったく筋が通っていない」と述べている。

同日には、多くの独立した通信社、研究者、誤報専門家もFacebookの決定を非難した。The Markup(ザ・マークアップ)のJulia Angwin(ジュリア・アングイン)氏とNabiha Syed(ナビハ・サイード)氏は「Facebookのプライバシーに対するぞんざいなアプローチが、同社がこれほどまでに支配的になることを可能にしました」と、共同声明の中で書いている。

「しかし今、独立した研究者たちが、同社のプラットフォームとその影響力を調べようとすると、Facebookはユーザーのプライバシーを盾にして隠れようとしているのです」。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックがマルウェアが仕込まれた偽「PC版Clubhouse」アプリの広告を掲載

TechCrunchが入手した情報によると、サイバー犯罪者らは、PCユーザー向けのClubhouseアプリを装ったFacebookの広告多数掲載し、無防備な被害者を狙ってマルウェアを仕込んでいるという。

TechCrunchが米国時間4月7日に得た警告によると、いくつかのFacebookページに結びついている複数の広告がClubhouseになりすましているという。ClubhouseはiPhoneでしか利用できないオーディオチャットアプリだ。広告をクリックすると偽Clubhouseのウェブサイトが開き、そこには存在しないPCアプリがどのように表示されるかという偽のスクリーンショットと、悪意あるアプリのダウンロードリンクが表示される。

悪意のあるアプリを開くと、コマンド&コントロールサーバーと通信して、次に何をすべきかの指示を得ようとする。このマルウェアをサンドボックス解析したところ、隔離されたマシンにランサムウェアに感染させようとしていたことがわかった。

しかしひと晩経つと、ロシアでホストされていたClubhouseの偽サイトはオフラインになっており、それにともないマルウェアも動作を停止していた。4月8日にサンドボックスでこのマルウェアをテストしたGuardicoreのAmit Serper(アミット・サーパー)氏によると、このマルウェアはサーバーからエラーを受け取り、それ以上は何もしなかったという。

偽ウェブサイトはClubhouseの本物のウェブサイトのように見せるよう設定されていたが、悪意あるPCアプリを搭載していた(画像クレジット:TechCrunch)

サイバー犯罪者たちが人気の高いアプリの成功に便乗して、自分たちのマルウェアで犯行を行うことは珍しくない。Clubhouseは招待制であるも関わらず、世界で800万回以上ダウンロードされたと報じられている。その需要の高まりを受けて、アプリをリバースエンジニアリングして海賊版を開発し、Clubhouseのゲートウォールだけでなく、アプリがブロックされている政府の検閲も逃れようとする動きが活発になっている。

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Clubhouseを装ったFacebookの各ページは、わずかに「いいね!」されているだけだが、本稿執筆時にはまだアクティブだった。Facebookは、Clubhouseの偽ウェブサイトを示す広告をクリックしたアカウント数は発表していない。

米国時間4月6日から6日にかけて、少なくも9つの広告が設置された。一部の広告は「これからはClubhouseをPCで使えます」と述べている。また、共同創業者のPaul Davidson(ポール・デヴィッドソン)氏とRohan Seth(ローハン・セス)氏の写真を載せているページもある。Clubhouseは、コメントの求めに応じなかった。

広告はFacebook’s Ad Libraryから削除されたが、コピーがこれだ。そもそも広告がFacebookのプロセスをどのように通過したのかも不明だ。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Facebookが2020年の米大統領選挙に関する広告のターゲティングデータを研究者に公開

Facebook(フェイスブック)は、130万件の政治・社会問題に関する広告のデータセットへの学術的アクセスを、米国時間2月1日より公開する。これは2020年8月3日から11月3日(米国の選挙の日)までの間に掲載された広告も含まれる。

2019年に開始されたFacebookの広告ライブラリは、FacebookとInstagram(インスタグラム)で配信されているすべての広告を、誰でも簡単に検索・閲覧できるデータベースを提供している。2016年のロシアによる米大統領選挙干渉騒動後に実装されたこのデータベースは、研究者や記者が、トピック、企業、候補者ごとに広告を掘り下げ、広告がいつ掲載されたのか、誰が見たのか、いくらかかったのかといったデータを表示することができる。

Facebookによると、プラットフォーム上の広告をより深く見る機能の提供を決めたのは、特に広告のターゲティングについて、より多くの情報を要求する研究コミュニティからのフィードバックを受けたものだという。Facebookの非常に詳細な広告ターゲティングツールは、研究者にとって特に興味深いものだ。彼らは間もなく、閲覧者の場所や関心などのデータも含め、特定の人々がその広告を見た理由にアクセスできるようになる。

「私たちは、オンライン上の政治広告の状況を理解することが選挙を守るための鍵であり、それは私たちだけではできないことを認識しています」と、Facebookのプロダクトマネージャーを務めるSarah Clark Schiff(サラ・クラーク・シフ)氏は発表の中で述べている。

Facebookの広告ターゲティングシステムは、過去に同社を苦境に陥れたことがある。2016年、Facebookは、信用貸付、住宅、求人に関連する広告カテゴリにおいて、「民族的親和性」のターゲティングオプションを無効にした。これらのツールが、特定の人々を違法に差別することにつながるおそれがあると指摘されたためだ。2018年には、同様の差別的な広告を生む可能性があるとして、5000件の広告ターゲティングオプションを削除した。そして、トランプ支持者がホワイトハウスに乗り込んだ際には、Facebook広告のマイクロターゲティングがどれだけ利用されたかということも、いまだに議論が交わされている。

ツール自体についてどのように感じるかはともかく、Facebookの公開された広告ライブラリは記者にとって貴重なツールとなっており、問題ごとに深堀りできるだけでなく、政党別、人種別、候補者別の政治的支出を簡単にひと目で把握することができる。

今回発表された新たなターゲティングデータは、大学に関わる研究者のみがアクセスできるFacebook Open Research & Transparencyで限定公開される予定で、一般向けの広告ライブラリでは見ることができない。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)