AndroidのEUにおけるデフォルト検索エンジン指定に批判多数

Googleは反トラストの嫌疑に対して、Androidの「選択画面」での表示をめぐるオークションで勝利した検索エンジンを公開した

EU内で使われるAndroidスマートフォンでは、ユーザーがデバイスをセットアップするときにプロンプトが表示され、4つの検索エンジンの中からどれかを選ぶことになるが、その中には必ずGoogle自身の検索エンジンもある。

2018年の半ばに欧州委員会は、Androidプラットホームの運用をめぐる反トラスト違反でGoogleに50億ドル(約5500億円)の罰金を科した。この嫌疑には、市場で優勢なスマートフォンOSに自社サービスを優先的に載せていることが含まれており、その違反を正すよう命じられたが、やり方はGoogle自身に任されていた。

Googleの回答は、選択画面を作ってその小さなリストからユーザーが検索エンジンを選ぶことだった。初期画面におけるデフォルトの選択は、各地のマーケットシェアで決まるようだった。しかし2019年の夏、Googleは検索エンジンの名前を表示する欄を非公開のオークションにかける、と発表した。

最初となる2020年3月1日から6月30日までのオークションにおける勝者は、プライバシーを保護する検索エンジンDuckDuckGoで、ヨーロッパの31市場すべてで3つの有料表示欄の1つを勝ち取った。また、Info.comもこれらの市場すべてで検索エンジンのオプションとして表示される。Wikipediaによると、Info.comはGoogleを含む既存の複数の検索エンジンやディレクトリ(目録サイト)から検索結果を得るメタ検索エンジンの古参だ。

選択画面に4つ表示できる検索エンジン候補のうち3つは、優先権のあるGoogleとオークションの勝者DuckDuckGとInfo.comになる。そして残る1つは、8つのヨーロッパ市場でフランスのプライバシー保護検索エンジンQwantが表示される。東部の5つの市場ではロシアのYandexが表示される。

ヨーロッパのより小さな市場で表示されるそのほかの検索エンジンは、GMXSeznamGiveroそしてPrivacyWallとなる。

Microsoft(マイクロソフト)のBingという大物検索エンジンは、意外にもイギリス市場だけで選択画面に表示される。

広告収入のすべてを植樹活動に寄付する検索エンジンEcosiaは、今回のリストにないが、一部の選択画面には登場する。ただし同社はGoogleの「載りたけりゃ金を払え」主義に反対して、オークションをボイコットした。

EcosiaのCEOであるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は、BBCの取材に対して「このオークションは2018年7月の欧州委員会の規則の精神に反していると私は思う。インターネットのユーザーには検索エンジンを自由に選べる権利があり、オークションというGoogleの答えは、自由で開放的で共同的なインターネットを利用できるはずの我々の権利を侮辱している。Android上で誰がデフォルトの地位を持つのか、それを決める権利がなぜGoogleにあると言えるのか?」と語っている。

Googleのやり方が批判されているのは、検索エンジンだけではない。QwantとDuckDuckGoはともに、2019年にGoogleがオークションという有料制への移行を発表した直後に、懸念を表明していた。

オークションに勝利して、選択画面における全市場を対象とする表示欄を得たにも関わらずDuckDuckGoは、表示されるために金を払うという方式に反対している。

「検索エンジンを選ぶメニューは、正しく設計されていればユーザーの選択肢を有意義に増やす優れた方法だと考えている。我々の独自調査もこれを裏打ちしており、ヨーロッパのAndroidユーザーが自分のスマートフォンの設定をする際、容易にDuckDuckGoをデフォルトの検索エンジンに指定できることを期待している。しかしながら、それでもなお弊社は、わずか4つ(実質3つ)の表示欄をオークションにかける有料制は正しくないと考えている。なぜならば、この方法ではユーザーは自分たちにふさわしいすべての選択肢に触れることができず、またこの競争がGoogleの利益になるからだ」とDuckDuckGoは表明している。

一方、Qwantのスポークスパーソンは次のように語っている。「競争者全員がオープンなやり方でモバイル市場へのアクセスを許されることを、Qwantは繰り返し求めてきた。デフォルトの検索エンジンとしてユーザーに選ばれる機会も、すべて平等に与えられるべきである。検索エンジンが金を払ってGoogleに代わるものとして選ばれる機会を得るこの方式は、公正でないと我々は考えている。これは、Androidのモバイルシステムにおける、Googleの支配的地位の濫用だ。しかしながら、モバイル市場はどんな検索エンジンにとっても重要であり、この入札方式に参加せざるをえず、一部の市場のAndroidユーザーにQwantをデフォルトの検索エンジンとして指定する機会が与えられたことにはついてはほっとしている。すべての国のすべての競合製品に、同様の機会が与えられなければならない。そしてその機会の獲得は、彼らの価値によるべきであり、Googleに金を払って選択画面の表示欄を争う能力によるものであってはならない」

この記事はQwantからの新たなコメントによりアップデートされた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Google Chromeの検索エンジンオプションにDuckDuckGoが秘かに加わる

Googleの人気Chromeブラウザーを支えるエンジンのアップデートで、検索大手Googleは秘かにマーケット向けに提供しているデフォルト検索エンジンのリストを更新した。この更新ではユーザーが世界中のマーケットで選べるよう、検索プロダクトの選択肢を広げている。

その中で特筆すべきは、世界60のマーケットでプライバシー重視の検索エンジンを使用できるようにしたことだ。

昨日のChrome73のリリースとともに明らかになった変更は、高まるプライバシー問題や独占禁止の調査などにGoogleが直面している最中に導入されるものだ。

プラットフォームのパワーをコントロールし、テック大企業の影に埋もれた中小のテクノロジー発明家を引っ張り上げるために、いかに競争政策がアップデートされる必要があるか、多くの政府がいま積極的に検討している。

しかしGitHubインスタンスにあるChromeのデフォルト検索エンジンリストへの変更を知らせる案内では、GoogleのソフトウェアエンジニアOrin Jaworski氏が、国ごとの検索エンジンリファレンスのリストが“最近集められたデータ”から“新たな使用戦略に基づいて完全に置き換えられる”とだけ書いている。

各国の検索エンジンの選択肢は、大まかに4つに分けられるようだ。

今回のアップデートで最も恩恵を受けるのがGoogleのライバルでプライバシー最強のDuckDuckGo(DDG)で、いま60マーケット超で選択肢の一つとして提供されている。

これまでDDGは選択肢としてまったく提供されていなかった。

別のプライバシー重視の検索ライバルであるフランスの検索エンジンQwantもまたオプションに加わった。ただし、こちらはフランスでのみとなっている。

DDGは、アルゼンチン、オーストリア、オーストラリア、ベルギー、ブルネイ、ボリビア、ブラジル、ベリーズ、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、クロアチア、ドイツ、デンマーク、ドミニカ共和国、エクアドル、フェロー諸島、フィンランド、ギリシャ、グアテマラ、ホンジュラス、ハンガリー、インドネシア、アイルランド、インド、アイスランド、イタリア、ジャマイカ、クウェート、レバノン、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、モナコ、モルドバ、マセドニア、メキシコ、ニカラグア、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、パナマ、ペルー、フィリピン、ポーランド、プエルトリコ、ポルトガル、パラグアイ、ルーマニア、セルビア、スウェーデン、スロベニア、スロバキア、エルサルバドル、トリニダード・トバゴ、南アフリカ、スイス、英国、ウルグアイ、米国、ベネズエラで選択肢に加わっている。

「消費者にプライベートな検索オプションを提供することの重要性をGoogleが認識したことを嬉しく思う」とDuckDuckGoの創業者Gabe Weinberg氏は、今回の変更についてこうコメントした。

DDGはここ数年着実に成長していて、世界的に高まっているプライバシー重視プロダクトへの関心に応えようと、幅広く展開するために最近、外部からの資金調達も行なった。

興味深いことにChromium GitHubインスタンスの日付は2018年12月で、これはDDGへのDuck.comドメインが何年も棚上げされたのちにようやくGoogleがゴーサインを出した頃だ。

クロミウムでの検索エンジンオプションに変更を加えたこのタイミングについて、我々はGoogleにコメントを求めている。だが、この記事執筆時点で返事はない。

ホームマーケットでオプションに加わったことについてQwantにコメントを求めたところ、共同創業者のEric Leandri氏はGoogleに対し「サンキュー」と述べ、「この措置は明らかにフランスでそれなりにQwantユーザーがいるからだ」とした。

しかし彼は、Qwantとしてはそれでもユーザーに対しMozillaのFirefoxブラウザかプライバシー重視のBraveブラウザを使用するよう勧めている、と付け加えた。

彼はまた、もしGoogleがQwantユーザーのいるドイツとイタリアでもQwantを選択肢に加えていたらもっと良かった、とも語った。

今回のChromeにおける検索エンジンオプション拡大がGoogleの市場独占に関連する行政の干渉をかわすのに十分なものかどうか尋ねたところ、Leandri氏は「ノー」と答えた。その理由として、TechCrunchでも以前取り上げた欧州委員会のAndroid独占禁止ルール後も、AndroidのOEMはGoogle以外の検索エンジンをデフォルトとしてインストールするのにGoogleに代金を支払っていることを挙げた。

「冗談だよ。しかし、繰り返しになるがChrome73はありがたい。心から感謝している。それでもFirefoxとBraveを勧めたい」。

この記事はQwantのコメントがアップデートされた。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)