靴ヒモのスタートアップ、Hickiesに学ぶKickstarter成功の秘訣。1年で50万セットを出荷

そう、タイトルにはたしかに「靴ヒモのスタートアップ」と書いてある。Hickiesは、アルゼンチンのMariquel WaingartenとGaston Frydlewski夫妻らのファウンダーチームが作ったKickstarterプロジェクトだ。同サイトで15万9167ドルのクラウドファンドを集めたおかげで、スタートアップはニューヨーク市に移転して量産に入ることができた。Hickiesは、ほどく必要のない靴ヒモで、しっかり靴を固定しながらスリップオンのように着脱が可能だ。

キャンペーンの資金調達は2012年6月14日に終了し、それ以来会社がやってきたことはニューヨーク移転だけではない。プロトタイプと曖昧な市場調査だけで流通に売り込むには型破りすぎるこの製品も、Kickstarterの熱意によって多くの販売契約を結ぶことができた。その中には空港内で人気のちょっと変わった便利グッズの店、Brookstoneも入っている。

「Kickstarterがもたらしてくれた認知度は、そこで調達したお金と同じかそれ以上に重要だった」とFrydlewskiがインタビューに答えて言った。「BrookstoneがHickiesに関心を持ったのはわれわれのKickstarterキャンペーンの直後だった。Hickiesプロジェクトの成功によって、Brookstoneは試行期間をおかずすぐに全国展開する確信を持った」

求愛してきたのはBrookstoneだけではない。Hickiesは、日本、韓国、カナダ、中南米で販売契約を獲得し、9月にはヨーロッパ拠点の子会社による事業拡大を計画している。Frydlewskiは、Kickstarterの極めて国際的なユーザー層が米国以外への販路拡大に大きく役立ったと言う。Kickstarterの独特なプラットフォーム特性がなければ成し得なかったことだ。

Kickstarterは商品開発段階でも支援を続けている。そこで作られたコミュニティーは継続的であり、キャンペーン実行中に有用であるだけでなく、その後も見返りのあるものだとFrydlewskiは言う。

「Kickstarterの素晴らしいところは、真のコミュニティーとして機能し、支援者たちとの対話を続けられることだ。このためわれわれはHickiesがどう使われているか、どう改善すべきかの理解を深められる」と彼は言った。「つい最近発売した第2世代製品は、支援者からもらったフィードバックを数多く反映して開発した。今後も製品の改善を続け、ワクワクする製品を開発するつもりだ」

Frydlewskiと仲間たちは、Hickiesを作る過程でKickstarterキャンペーンの運営方法に関する貴重な教訓を得た。彼はこのプラットフォームを使うスタートアップに対して、販売契約を急ぎすぎないよう警告する。高まる関心に圧倒されかねないからだ。適正評価を行い、前もって適切な拡大戦略を練ることがハードウェアスタートアップにとってのカギだと彼は言う。また、基本的には資金を要求し始める前に出荷準備を整えておくべきであることも彼らは知った。

「Kickstarterキャンペーンをスタートする最良のタイミングは、まさに生産開始準備が完了した時か、サービスや製品を供給可能になった時」だと彼は言った。「市場に入る準備が100%完了していないならKickstarterキャンペーンを始めないことを推奨する」。

Hickiesは、昨年Kickstarterで資金調達を終えて以来、その独創的靴ヒモを50万セット販売することに成功し、現在3大陸7ヵ国で小売りされている。Kickstarterプロジェクトがこの会社ほどうまく働くことは稀なので、彼らが正しいことをしたのは間違いない。おそらく同じ道を歩もうとする人たちには模倣する価値があるだろう。

HICKIES Overview from HICKIES – love your kicks on Vimeo.

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


EvernoteがホンダとDocomoと提携、シリコンバレーでスタートアップ支援のアクセラレータ・プログラム実施へ

今日(米国時間4/16)、「すべてを記憶する」サービス、Evernoteは、ホンダとDocomoと協力してEvernote Acceleratorと名付けたスタートアップ向けの1ヶ月の集中指導プログラムをスタートさせることを発表した。

実施の場所はシリコンバレーのRedwood CityにあるEvernoteの本社だ。世界中のEvernote APIを利用してプロダクトを開発しようとする個人あるいは小規模スタートアップのデベロッパーが対象となる。

このプログラムはEvernoteが自社の提供するサービスの範囲を超えて、サードパーティのデベロッパーやサービス・プロバイダーを広く巻き込んだプラットフォームへと進化しようという戦略をさらに一歩前に進めるものだ。Evernoteはすでに毎日60億のAPIコールを処理しているが、その大部分はEvernote自身のアプリから来るものだ。

Evernoteはホンダのシリコンバレー・ラボ(英文)、ドコモ・イノベーション・ベンチャーズと協力し、参加者に対してEvernoteのエンジニアによる指導、マーケティングの援助、さらにオフィスと住居を提供する。ただし直接の投資は行わない。ベテランのジャーナリストで昨年Evernoteに参加してプラットフォーム・エバンジェリストを務めているRafe Needlemanはこの点について次のように説明する。

現時点ではわれわれは投資の必要を認めない。われわれにとってこのプログラムの成功はすぐれたEvernoteプロダクトが生まれることだ。投資よって利益が生まれることに関心はない。すぐれたEvernoteプロダクトが生まれることがわれわれ、そしてわれわれのユーザーにとっての成功だと考えている。ただしわれわれはこのプログラムに参加するスタートアップないし個人デベロッパーに対してサードパーティーの投資家を紹介することはあるかもしれない。

Evernote側がベンチャーキャピタル方式の投資を行わないとしても、他の形式での投資はあるかもしれない。人気アプリの一つ、Evernote FoodはEvernoteが主催したハッカソンでオリジナルが開発されたものだった。NeedlemanによればEvernoteが知的所有権を買収して今日のアプリに仕上げたのだという。

このプログラムへの参加者はEvernote APIの普及のために毎年実施されているEvernote Devcupの今年の優秀賞受賞者から選ばれる。アクセラレータ・プログラムは10月の開催が予定されており、1ヶ月にわたるの助言と開発セッションの後、11月にYコンビネーター方式のデモ・デーが行われるという。

Needlemanは「あらゆるジャンルのEvernoteアプリを歓迎する」としながらも、プログラムには2社の共同スポンサーが存在することにも注意を促した。つまりAPIを活用したホンダの自動車向けアプリやモバイル・アプリが重視すべき分野となるということだろう。自動車とモバイル分野についてはそれぞれ優秀賞が設けられる予定だという。

今日、スタートアップ育成のアクセラレータ・プログラムは世界中いたるところで見かけるようになったが、Evernoteのプログラムには非常にユニークな特徴がある。それはEvernote自身がハッカソンを通じて参加候補者を集める点だ。Needlemanは「できるかぎり多様な人材を集めるために、われわれはハッカソンを東京、シンガポール、チューリッヒ、メキシコシティーで開催している。この参加者から選抜した優秀なデベロッパーたちにITのメッカ、シリコンバレーのすべてを味わってもらおうという趣旨だ」という。

〔日本版:EvernoteのCEO、フィル・リビンは今週4/18(木)午後1:30から日経ビジネスのセミナーで講演する予定。〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+