【インタビュー】CMUロボティクス研究所の新ディレクターが語るロボット研究の未来

カーネギーメロン大学のロボティクス研究所では、2年間にわたって暫定的にポストを担ったSrinivasa Narasimhan(スリニヴァサ・ナラシマン)教授が退任し、この度6人目となるディレクター、Matthew Johnson-Roberson(マシュー・ジョンソン=ロバーソン)氏が着任した。2005年にカーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部を卒業した同氏は、ミシガン大学の海軍建築・海洋工学部および電気工学・コンピュータサイエンス部の准教授を経て同ポジションに就任することとなった。

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ジョンソン=ロバーソン氏はUM Ford Center for Autonomous Vehicles(ミシガン大学自動運転車Fordセンター)の共同ディレクターも務めており、今回はそのオフィスから新しい役職における今後の計画や、ロボット研究の将来像について語ってくれた。

TC:今はミシガンでFord(フォード)関連に取り組んでいる最中なのですか?

MJR:そうですね。数人の生徒とともにロボット関連の研究をして楽しんでいますよ。

TC:そこでの主な取り組みは何でしょうか。

とても多くのことを進めています。Fordのための長期的で既成概念にとらわれない研究です。Argo(アルゴ)のように、できれば半年から3年以内に道路を走れるようになる予定のものを対象に多くの研究を行っています。道路を走れるようになるのが5年から10年先のようなものに対しても長く取り組んでいます。新タイプの奇妙なセンサーから人間の予測や安全性の保証まで、あらゆることに非実際的なアプローチをとることができるのが大学の良いところです。

TC:Fordとミシガン大学がとっているような連携システムは、多くの大学にとっての手本のような存在になるのだと感じます。特にCMU(カーネギーメロン大学)のような大学には、裕福な資金提供者との長い歴史があります。こういったパートナーシップは今後大学研究のモデルになっていくとお考えですか?

これは、過去20年間にわたってロボット工学が通り抜けてきた変革を反映しています。90年代、00年代に開発された技術の多くが成熟して商用製品として展開されるようになり、多くの産業の未来に大きな変化をもたらしています。企業と大学が徐々に関係を持ち始めるようになったというのは、自然な流れだと思います。ピッツバーグという街を見ても、天然資源や鉄鋼を中心とした重工業からの転換が進んでいますが、この転換はさらに加速するでしょう。

関係性を継続し、新しい関係を築いていくことが私の目標の1つです。産業界だけでなく政府や政策など、これからのロボット工学に関連するあらゆることを考慮し、そうした関係を築いて研究所ですでに行われている技術的な仕事の強みを生かしていきたいと思っています。これは私が特に楽しみにしていることです。

TC:ピッツバーグでは地元スタートアップ企業が数多く存在する一方で、Google(グーグル)のような大企業も研究や法廷を学んだ卒業生の近くに進出してきています。このような関係をさらに深めるため、CMUはどう取り組んでいるのでしょうか。

CMUのある教授と共同するためにWaymo(ウェイモ)のオフィスを開設しています。このような関係は、教員とだけでなく学生に対しても見られます。高度な訓練を受けた新しい従業員こそがこういった企業の生命線です。採用活動で優位に立ち、人々が来たいと思うような文化を築くためにできることは、これらの企業にとって大きな利点となります。また、企業が共同研究を行ったり、研究のスポンサーになったりして、新しいプロジェクトを開発したり、入学してくる学生との新しい関係を築いたりしています。大学の最もすばらしい点は、毎年世界で最も賢い人々が新たに入ってきてくれるという点です。

TC:大学という幅広い文脈の中で、これらのスタートアップ企業の成長を支援するというのはあなたのタスクの1つとお考えですか。

そうですね。私自身、スタートアップを立ち上げる機会がありましたし、知識に大きなギャップがあることを知りました。非常に賢く、世界に対して大きな野心を持っている学生が大勢いるため、彼らがそれを実現できるように支援する方法を考えることが私の役割だと思っています。今あなたが強調したのもスタートアップですし、エコシステムという言葉がよく聞かれます。その地域に他のスタートアップ企業があるということもありますが、それに加えて一緒に何かをしたり、何かを作ったりする気の合う仲間を見つけることができるコミュニティがあるということです。

TC:現在ミシガン大学にいらっしゃるので、デトロイトで起きている変革を目の当たりにしていると思います。スタートアップコミュニティの育成という点でデトロイトはピッツバーグほど進んでいないかもしれませんが、そこには多くのチャンスがあります。CMUが惹きつけた人材を維持するために、学校はどういった役割を果たせるでしょうか?

いくつかのことがあります。近年ますます重要だと感じることの1つは、まずチャンスがそこにあることを認識するということです。ロボット産業のスピードと規模は、私たちの誰もが予想できないほどの速さで加速しています。そのために重要なのは、そのことを認め、じっとしていようとしないことです。業界は変化し、ロボットを取り巻くエコシステムが変化し、またこれらの企業を取り巻く規模やスケールも変化しています。これを実現するための方法をともに考えていきたいのです。

TC:ロボット工学は歴史的に最もインクルーシブな分野ではありません。その中でCMUはどのような役割を果たしていけるでしょうか? CMUのようなところに入学する多くの人は、入学する前からロボット工学に慣れ親しんでいる人たちなのではないでしょうか。

今回私はCMUにいる間に2つのことを残したいと思っています。1つ目は機会を増やし、参加者の幅を広げ、各分野における多様性を高めるということです。そして2つ目はもっと重要なことだと思います。大学は若い人たちの心を形成するのに適した場所です。私がロボット工学に多様性と包括性を持たせるための変革を起こすためには、第一級のロボット研究機関にいるということ以上に効果的な方法はありません。次世代のロボット工学者の誕生の場にいるということなのですから。

TC:あなたはCMUに入学した当初、ロボット工学を専攻していたわけではないので、良い例ですね。

まったくその通りです。さらにもう一歩踏み込むと、CMUに入学したとき私はとても苦労しました。みんなが自分よりも賢いという場所に足を踏み入れたのは初めてのことでした。それこそがあの場所の特別なところだと思います。何があってもロボット工学を辞めることにはなりませんでした。それは当時も今も、あの場所にいる人々のおかげだと私は思います。

TC:最近のロボット工学において最も楽しみにしていることは何ですか?

世界各地で展開されている大規模なロボット工学分野のシステムは、現在まさに変曲点に来ています。いつか、米国や世界のどこにいても、窓の外を見ればロボットが何か役に立つことをしているという状況になって欲しいと思っています。今の世界はそうではありません。工場の現場などに行けばロボットを見ることができますし、もしかしたらロボット掃除機を持っているかもしれませんが、私は窓の外を見るとロボットがいるというレベルにしたいと思っています。

画像クレジット:CMU

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

ライドシェアサービスは運転手や地域社会にコストを負担させていることが調査結果から明らかに

Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする「ライドシェア」サービスの平均乗車料金は年々上昇しているが、これらの企業のビジネスモデルは、完全に明らかになっているわけではないことがわかった。今回発表された2つの調査結果は、投資家の出資額だけがすべてを物語っているわけではなく、ドライバーや地域社会もコストを負担させられていることを示している。

1つはカーネギーメロン大学の研究で、交通ネットワーク企業(TNC、公的・学術的文書で使われる用語)のあまり目立たないコストと利益を分析したものだ。

例えば、TNCの車両と利用者の活動に関するさまざまなデータを収集した結果、ライドシェア車両は1回の乗車で大気汚染に与える影響が少ない傾向にあることがわかった。これは、筆頭著者のJeremy Michalek(ジェレミー・ミシャレック)氏が大学のニュースリリースで説明しているように「自動車は最初にエンジンを始動させた時、排出ガス浄化システムが効果を発揮する温度に十分温まるまで、高レベルの有害な大気汚染を発生させる」からだ。

ライドシェア車両は通常、1回の乗車ごとにコールドスタートを行う必要がない。また、もともと排出ガス量の少ない新型車が使われていることが多いため、TNCによる移動で発生する汚染物質は、平均すると、自家用車で同じ移動をする場合の約半分と推定される。研究者の試算によれば、それによって地域社会が削減できる大気汚染関連の健康コストは、移動1回につき平均約11セント(約12.3円)の価値があるという。

これは確かに良いニュースだろう。しかし問題は、ライドシェア車両には「デッドヒーディング」(仕事の合間に無目的に運転したり、アイドリングしたりすること)の習慣や、乗客をヒックアップする場所まで移動する必要があるために、せっかくの利益が帳消しになってしまうことだ。さらに、厳密に言えば「使われていない」車が道路を走っていることによる交通量の増加や、それに伴い発生する事故の確率、騒音などを考慮すると、1回の移動につき45セント(約50.5円)のコストが地域社会全体にかかることになる。つまり、1回の乗車につき約34セント(約38.2円)のコスト増となり、そのコストは税金や福祉の低下によって賄われることになるのだ。

画像クレジット:カーネギーメロン大学

研究者たちが提案しているのは、可能な限り乗り合いタクシーや公共交通機関を利用することだが、新型コロナウイルス感染流行時には、それはそれで短所がある。ライドシェア車両の電動化は有効だが、それには多大な費用と時間がかかる。

ライドシェアの運転手たち自身も、この「分散型」業界の重みを背負っている。ワシントン大学のMarissa Baker(マリッサ・ベーカー)氏が、シアトルで組合に加入している運転手を対象に行った調査では、多くの人が勤務先の会社からほとんど何のサポートも受けていないと感じていることが明らかになった。

調査に応じた運転手は、ほぼ全員が新型コロナウイルスの感染を心配しており、約30%が自分はすでに感染していると思っていた。予想通り、ほとんどの運転手が収入は減っているのに、自費でPPE(個人防護具)を購入していた。会社からマスクや除菌剤が支給されたと答えた人は3分の1以下だった。また、ウイルス感染流行中の時期に運転手を辞めた人は、失業手当の受給に苦労したと報告している。特にシアトルでは、運転手は圧倒的に黒人男性が多く、また移民も少なくないため、それぞれが複合的な問題を抱えている。

「ウイルス感染流行時にこのような仕事をしている労働者は、運転手として所属している会社からほとんどサポートを受けられず、自分たちが直面しうる潜在的な危険性について多くのことを認識していました」と、ベーカー氏はこの調査報告に付随したリリースで述べている。シアトルの運転手は、他の多くの都市にはない追加的な保護対策に恵まれているが、他の地域の人々はもっとひどい状況に置かれているかもしれない(2020年、宅配便のドライバーも同じような問題に直面していることが判明した)。

これらの調査は「ギグエコノミー」の隠されたコストやソフトエコノミクスの一端を表すものにすぎない。消費者が企業から耳にする言葉は、このような仕事をバラ色の眼鏡で見たバージョンであることがほとんどなので、独立機関による調査は、たとえそれが単なる聞き取り調査や、立証されていないコストや行動の概算であっても、非常に価値があると言えるだろう。

画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

より安価な義手を求めて

Alt-Bionicsは、2019年の終わりにテキサス大学サンアントニオ校(UTSA)の技術シンポジウムに出場したまったく新しいスタートアップ企業で、波紋を呼んだ。同社は3BMの赤外線塗装硬化システムに次いで2位に終わったが、有望な技術とすばらしいストーリーを武器に国内外の話題をさらった。

同校のサイトに掲載された記事では、700ドル(約7万6000円)という義手の価格は、標準的なシステムにかかるコストの一部に過ぎないと紹介されていた。残りの記事のほとんどは、良いアイデアから市場性のある製品を生み出すまでの道のりに焦点を当てている。同社のCEO兼共同設立者であるUSTAエンジニアリング学科卒業のRyan Saavedra(ライアン・サーベドラ)氏は、この種の製品の価格は1万ドル(約109万円)から15万ドル(約1600万円)になるという。同社では3500ドル(約38万円)程度の価格設定を目指している。

この間、Alt-Bionicsのチームは製品開発の様子をSNSで公開してきた。今回は本格的な取材の前に、この3年間の歩みと今後の展望についてサーベドラ氏に聞いてみたい。そしておまけに、未公開のレンダリング画像をいくつ紹介する。これはAltは「最終製品を示すものではなく、特許の完成を発表するためにチームで作成したお祝いのレンダリング画像」という。

画像クレジット:Alt-Bionics

 

TC:なぜ義肢装具は法外に高価なのですか?

最初に言っておきたいのは、製造にかかる費用はそれほど高額ではないため、ユーザーにとっても高価になる理由はこれっぽっちもないということです。質問に対する答えは1つだけではないのですが、筋電義手(バイオニック・ハンド)を取り巻く法外な価格の背景にある複数の理由を、私なりにまとめてみたいと思います。義肢装具の最終的な価格 / コストには2つの部分があることがわかりました。そして第3の(しかし第2の)理由についても説明します。

まず、メーカー。メーカーはこれらの義肢装具を開発・作成し、義肢装具クリニック(これらのデバイスのフィッティングや購入ができる数少ない場所)に販売しています。義肢装具クリニックに販売されている最も手頃な筋電義手は、約1万ドル(約109万円)から始まり、上は数十万ドル(約数千万円)にもなります。奇妙なことに、この価格は義肢装具の機能や性能を必ずしも反映しているわけではありません。デバイスの価格は、最終的にはメーカーが決定します。大手のメーカーは、価格を下げられない最大の理由として、間接費を挙げています。

義肢装具クリニック。具体的にはまだ勉強中なのですが、これらのクリニックは医療保険面での対応をします。つまり、医療保険会社にLCode(メーカーが提案する筋電義手の保険コード)を提出し、保険金の支払いを受けます。これらのLCodeには、義肢装具士が選択できる償還額の下限と上限があります。償還額は一般的に義手の購入時に支払う金額よりも高く、クリニックや臨床医が調達、フィッティング、テスト、組み立て、患者のケアに費やした時間と労力をカバーしています。通常は(下限に近い償還額で)妥当なマージンが得られますが、1万ドル(約109万円)の義手に対して償還額が12万4000ドル(約1360万円)を超えたこともあります(2018年の患者の請求書より)。

技術的な停滞。筋電義手の技術は15年近く停滞しており、この分野の競争相手として企業が登場したのはごく最近のことです。この分野の大企業は、経橈骨(肘から下)の筋電義手装具という1つの分野だけでなく、複数の分野に取り組んでいます。つまり、彼らの関心は、義手の開発と手ごろな価格だけではないということです。停滞しているということは、既存の義肢装具やそのメーカーに迫る外部要因や力がないということなんです。つまり、価格を下げる理由がないので、価格が変わらない。これは、最初に申し上げた理由がよりいっそう大きな問題であることを裏付けていると言えます。

TC:より広範な医療コミュニティではどのように受け止められていますか?

すばらしいことにクリニック、臨床医、患者、ユーザーとなり得る人たち、そして他の競合企業、すべてが私たちのミッションを非常によく支持してくれています。このコミュニティや企業は競争相手ではありますが、技術の進歩を利用して人々の生活の質を向上させるという同じ目標を持っています。

3500ドル(約38万円)という低価格を実現していることに、最初は懐疑的な見方をされることもありますが、当社の技術やプロセスについてお話しするとすぐに納得していただけます。現在、義肢装具士のクリニックとの提携を検討しており、患者さんのためだけでなく、義肢装具士の修理やメンテナンスの負担を軽減する機器の開発を目指しています。

TC:プロジェクトはどのくらい進んでいますか?市場参入にあたり、現在のスケジュールを教えてください。

このプロジェクトは初期段階から脱したばかりで、約42%が完了しています。特筆すべき成果は以下の通りです。

  • アーミーレンジャー、ライアン・デイビスとの概念実証に成功。2019年12月
  • Alt-Bionicsを結成。2020年5月
  • D’Assault Systems(ダッソー・システムズ)から42,000ドル(約459万円)のSolidWorks助成金を受ける。2020年7月
  • 暫定特許出願。2021年6月
  • サンアントニオ市のSAMMIファンドから5万ドル(約547万円)の出資を受ける。2021年7月

当社のデバイスが市場に参入するまでの現在のスケジュールは、シードラウンドの資金調達が完了してから1年です。現在、目標金額20万ドル(約2189万円)のうち14万2000ドル(約1555万円)を調達しており、9月までに資金調達を完了したいと考えています。

TC:これまでの最大の課題は何でしたか?

FDA規制に従いながら資本を調達することです。FDAの規制プロセスが恐ろしく厄介なものであることは周知の事実です。医療機器を市場に投入しようとしている人たちが、そのプロセスと複雑さを理解できるように支援する専門企業もあるほどです。Alt-Bionicsは最近、テキサス州サンアントニオを拠点とするバイオメディカル・アクセラレータープログラムに受け入れられ、規制当局の専門家と協力して、市場へのスムーズな進出を目指しています。私たちの使命は崇高であり、ビジネスプランは堅実ですが、新型コロナウイルスは投資家に多くの心配や不安を与えました。対面での売り込みができないため、投資家の前に出ることができず、私たちのような会社にとって資金調達が通常よりも少し難しくなっています。

TC:資金調達の状況はどうですか?これまでにいくら調達しましたか、そしてもっと調達する予定ですか?

現在までにAlt-Bionicsは、少数の投資家から合計14万2000ドル(約1500万円)を調達し、サンアントニオ市のSAMMIファンドからは5万ドル(約547万円)の投資を受けています。現在、シードラウンドのために、適格投資家からさらに5万8000ドル(約635万円)の出資を募っています。ここから、市場参入まで1年というスケジュールが始まります(私たちはかなり有利なスタートを切っていますが)。Alt-BionicsはシリーズAに突入し、エンジニアの増員、技術のさらなる開発、国際市場への進出を目指します。

TC:途上国市場は重要なターゲットになるのでしょうか?

発展途上国は、特にNGOを通じたAlt-Bionicsの重要な市場であり、当社の国際展開において重要な役割を果たすでしょう。私たちは、これらの市場に当社の医療機器を提供する機会は大きいと考えています。手頃な価格で医療機器を提供することは、医療機器へのアクセスを提供するという我々の使命にとって極めて重要であり、この拡大は成功すると信じています。

それでは、通常のまとめに戻ろう。

画像クレジット:Berkshire Grey

Berkshire Grey(バークシャーグレイ)が「23億ドル(約2517億3700万円)以上」の食料品ピッキングロボットの契約を発表したとき、私の頭の中には1つの名前が浮かんだことを告白しよう。Walmart(ウォルマート)だ。数週間前にこのパネルでウォルマートのロボットを使った試みについて少し話した後、ウォルマートがこのカテゴリーで大きな新しい試みをしようとしているという噂を聞いていたからだ。

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Symboticとの取引は、必ずしもバークシャーグレイがウォルマートと提携していないことを意味するものではないかもしれないが、巨大小売企業が自動化に多額の費用を投じていることを話題にしたがっていることは注目に値する。少なくとも外から見ていると、これらの取引は、Amazonに対抗する準備ができているように見せるためのPRと、実際にAmazonに対抗するためのPRの両方を目的としていることが多いように思う(Win-Winなのかもしれない)。

画像クレジット:Walmart

この取引により、Walmartの追加の25カ所の配送センターにSymboticの技術が導入されることになり(2社は2017年からパイロットを実施)、Walmartによると「数年」かけて展開される予定だ。私は以前にもこのように推測したことがあるが(そしてこれからも考えは変わらないだろう)、これらのロボットを活用したフルフィルメント企業のうちいくつかはWalmartにとって朝飯前の買収だが、SymboticはTargetのような競合他社との既存のつながりを考えると、おそらく少し厳しいだろう。

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一方、バークシャーグレイは公開ルートを継続している。レボリューション・アクセラレーション・アクイジション(RAAC)の株主は、7月20日にSPAC(特別買収目的会社)の取引に関する投票を行う予定だ。一方、新しく買収されるFetchは、サプライチェーン・ロジスティクス企業のKorberと、フォークリフトに代わるように設計された新しいパレタイジングロボットの契約を発表した

画像クレジット:Facebook AI

7月第2週は2つのクールな研究プロジェクトがあった。Devinは、Facebook AI、UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)、Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)のチームが、四足歩行ロボットが不整地に瞬時に適応できる方法であるRapid Motor Adaptationを研究していることについて書いていた。バークレー校の研究者の1人が言ったこの言葉は、問題の核心を突いている。「我々は砂について研究しているのではなく、足が沈むことについて研究しているのだ」。

画像クレジット:MIT CSAIL

一方私は、MITコンピュータ科学・人工知能研究所では、ロボットアームを使って人に服を着るという研究について執筆した。これは、高齢者介護用ロボットの機能性や、移動が困難な人を支援する技術として期待されている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Alt-Bionics義肢Berkshire GreyMITFacebook AIUC Berkeleyカーネギーメロン大学

画像クレジット:Alt-Bionics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

即興で難易度の高い地形にも対応する「転ばないロボット」を研究者たちが開発

ロボットというものは即興が苦手だ。いつもと違う路面や障害物に遭遇すると、突然停止したり、激しく転倒したりする。しかし研究者たちは、どんな地形にもリアルタイムで対応し、砂や岩、階段などで路面が急に変化しても、その場で直ちに歩幅を変えて走り続けることができるロボットの新しい動作モデルを開発した。

ロボットの動きは正確でさまざまな用途に対応でき、段差を登ったり崩れた場所を渡ったりすることを「学習」することができるが、これらの行動は個々の訓練されたスキルに近いもので、ロボットはそれらを切り替えて行っている。また、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が開発した「Spot(スポット)」のようなロボットは、押したり蹴ったりしても跳ね返せることで有名だが、これはシステムが物理的な異常を修正しながら、歩行における変わらない方針を追求しているに過ぎない。対応能力を備えた動作モデルもいくつか開発されているが、非常に特殊なもの(例えば、このモデルは本物の昆虫の動きに基づいている)だったり、対応するまでにかなり時間がかかるものもある(対応力を発揮する前に、確実に倒れてしまうだろう)。

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Facebook AI(フェイスブックAI)、UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)、Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)の研究チームは、この新しい動作モデルを「Rapid Motor Adaptation(迅速運動適応)」と呼んでいる。これは、人間や他の動物が、さまざまな状況に合わせて、すばやく、効果的に、無意識のうちに歩き方を変えられることに由来している。

「例えば、歩けるようになってから、初めて砂浜に行ったとします。足が沈み込み、それを引き上げるためには、より大きな力を加えなければなりません。違和感は覚えるでしょうが、数歩歩けば固い地面を歩くのと同じように自然に歩けるようになるでしょう。そこにはどんな秘密があるのでしょうか?」と、Facebook AIとカリフォルニア大学バークレー校に所属する上級研究員のJitendra Malik(ジテンドラ・マリク)氏は問いかける。

確かに、砂浜に行ったことがなかった人でも、人生の後半になってから初めて浜辺に行った人でさえ、すぐに自然に歩くことができる。柔らかい場所を歩くために、特別な「サンドモード」に切り替えているわけではない。動き方を変えることは自動的に行われ、外部環境を完全に理解する必要もない。

シミュレーション環境を視覚化したもの。もちろん、ロボットはこれらを視覚的に認識することはない(画像クレジット:Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU)

「置かれた状態に違いが生じると、その影響によって身体自体に生じる違いを、身体が感知してそれに反応するのです」と、マリク氏は説明する。RMAシステムも同じように機能する。「歩く場所の環境が変わると、0.5秒以下の非常に短い時間で十分な測定を行い、その環境が何であるかを推定し、歩行の方針を修正します」。

システムはすべて、現実世界をバーチャルで再現したシミュレーションで訓練された。そこでは、ロボットの小さな頭脳(すべてはロボットに搭載されている限られた計算ユニット上でローカルに実行される)が、(仮想)関節や加速度計などの物理的なセンサーから送られてくるデータを、即座に認知して応答し、転倒を回避しながら最小限のエネルギーで最大限の前進を行う歩き方を学習した。

マリク氏はこのロボットが視覚入力を一切使用していないことを指摘し、RMAアプローチの完全な内部性を強調する。しかし、視覚を持たない人間や動物だって普通に歩けるのだから、ロボットにできないことがあるだろうか?歩いている砂や岩の正確な摩擦係数などの「外部性」を推定することは不可能なので、このロボットは自分自身に注意を向けるだけということになる。

「私たちは砂について学ぶのではなく、足が沈むことについて学ぶのです」と、共同研究者であるバークレー校のAshish Kumar(アシシュ・クマール)氏は述べている。

根本的にこのシステムは2つの部分から成り立っている。1つはロボットの歩行を実際に制御する常時稼働のメインアルゴリズム。そしてもう1つは、それと並行して作動し、ロボットの内部情報の変化を監視する対応アルゴリズムだ。顕著な変化が検出されると、それを分析して「足はこうなっているはずだが、こうなっているということは、状況はこうなっているということだ」と、メインモデルに調整方法を指示する。それ以降、ロボットは変化した状況下においても、どのように前進するかということだけを考え、実質的に即興で状況に合わせた歩行を行うようになる。

シミュレーションによるトレーニングを経て、このロボットは以下のようにニュースリリースにあるとおり、現実の世界でも見事に狙いを成功させた。

このロボットは砂、泥、ハイキングコース、背の高い草、土の山など、すべての実験で一度も失敗することなく歩行できました。ハイキングコースでは、70%の成功率で階段を降りることができました。セメントの山や小石の山では、訓練中に初めて出くわす不安定な地面や沈む地面、障害物となる植物、階段などがあったにもかかわらず、80%の成功率で乗り越えることができました。また、体重の100%に相当する12kgの荷物を積載して移動する際にも、高い成功率で身体の高さを維持することができました。

画像クレジット: Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU

このような多くの状況における歩行の例は、こちらの動画や上の(ごく簡単な)GIFで見ることができる。

マリク氏は、NYU(ニューヨーク大学)のKaren Adolph(カレン・アドルフ)教授の研究を参考にした。同教授の研究では、人間が歩き方を覚えるプロセスが、いかに対応性が高く、自由な形態であるかを示している。どんな状況にも対応できるロボットを作るには、さまざまなモードを用意してそこから選ぶようにするのではなく、はじめから対応力を身につけなければならないというのが、チームの直感だった。

すべての物体や相互作用を網羅的にラベル付けして文書化しても、洗練されたコンピュータビジョンのシステムを構築することはできないのと同じように、砂利道、泥道、瓦礫、濡れた木の上などを歩くために、それぞれ専用のパラメータを10個、100個、さらには数千個も用意しても、多様で複雑な現実の世界にロボットを対応させることはできない。さらに言えば、ただ「前進せよ」という一般的な概念以外のことは何も指定しなくても済むようになるのが理想だ。

「脚の形状やロボットの形態については、あらかじめ一切プログラムしていません」と、クマール氏は述べている。

つまり、このシステムの基本部分は、四足歩行ロボットだけでなく、他の脚を持つロボットや、さらにはまったく別のAIやロボット工学の分野にも応用できる可能性があるということだ。

「ロボットの脚は手の指にも似ています。脚が環境と相互作用するように、指は物体と相互作用します」と、共同執筆者であるCarnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)のDeepak Pathak(ディーパック・パターク)氏は指摘する。「基本的な考え方は、どんなロボットにも適用できます」。

さらにマリク氏は、基本アルゴリズムと対応アルゴリズムの組み合わせが、他のインテリジェントなシステムにも応用できることを示唆している。スマートホームや自治体のシステムは、既存のポリシーに依存する傾向があるが、しかし、状況に応じてその場で対応できるようになったらどうだろう?

今のところ、チームは初期の研究成果を「Robotics:Science and Systems(ロボット工学:科学とシステム)」会議で論文として発表しているだけであり、まだ多くのフォローアップ研究が必要であることを認めている。例えば、即興的な動作を「中期的な」記憶として内部にライブラリー化したり、視覚を利用して新しいスタイルの運動を開始する必要性を予測したりすることなどが考えられる。とはいえ、RMAのアプローチは、ロボット工学の永遠の課題に対する将来性の高い新たなアプローチとして期待が持てそうだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Facebook AIUC BerkeleyCarnegie Mellon University

画像クレジット:Berkeley AI Research, Facebook AI Research and CMU

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カメラではなくレーダーを使ったプライバシーが保護されたアクティビティ追跡の可能性をカーネギーメロン大学の研究者らが提示

部屋が最後に掃除されたのはいつか、ゴミ箱の中身がすでに捨てられたかをスマートスピーカーに問いかけることで、家庭内の争いを解決する(または蒸し返す)ことができる。そんな状況を想像してみて欲しい。

あるいは、健康関連の用途で、エクササイズ中にスピーカーにスクワットやベンチプレスの回数をカウントするように指示できたらどうだろう?または「パーソナルトレーナーモード」をオンにして、あなたが古いエクササイズバイクをこぐ際に、もっと早くこぎましょう、と気合を入れてくれるよう指示できたら(Pelotonなんて必要なし!)?

そして、あなたが食事をしているのをそのスピーカーが認識し、雰囲気にあった音楽を流してくれるほど賢かったらどうだろう?

そしてこうしたアクティビティの追跡を、インターネットに接続されたカメラを家の中に設置することなくできたら、と想像してみよう。

カーネギーメロン大学のフューチャーインターフェースグループの研究で、これらのことが実現できる可能性が浮上している。この研究ではセンシングツールとしてカメラを必要としない、アクティビティ追跡のための新しいアプローチを実証しているのだ。

家の中にインターネットに接続されたカメラを設置することは、プライバシーの観点から言えば、当然大きなリスクとなる。そのため、カーネギーメロン大学の研究者らは、人間のさまざまなアクティビティを検出するための媒体として、ミリ波(mmWave)ドップラーレーダーの調査に着手した。

彼らが解決すべきだった課題は、ミリ波が「マイクやカメラに近い信号の豊富さ」を提供する一方、さまざまな人間の活動をRFノイズとして認識するようAIモデルをトレーニングするためのデータセットを、簡単には入手できないという点である(この点他のタイプのAIモデルをトレーニングするための視覚データとは異なる)。

この問題の解決を目指し、彼らは、ドップラーデータを合成し、人間のアクティビティ追跡モデルにデータを供給することに着手した。プライバシーを保護することが可能なアクティビティ追跡AIモデルをトレーニングするためのソフトウェアパイプラインを考案したのだ。

その結果をワシントンD.C.こちらの動画で確認できる。この動画では、AIモデルがサイクリング、手を叩く、手を振る、スクワットをするといったさまざまなアクティビティを、動きから生成されるミリ波を解釈する能力を用いて正しく認識しているのが示されている。そしてこれは純粋に一般のビデオデータを用いたトレーニングの成果である。

「私たちは、一連の実験結果を通し、このクロスドメイントランスレーションがどのように達成されるかを提示しています」と彼らは書いている。「私たちは、このアプローチがヒューマンセンシングシステムなどのトレーニングの負担を大幅に低減する重要な足がかりであり、人間とコンピュータの相互作用におけるブートストラップ型使用に役立つものであると考えています」。

研究者であるChris Harrison(クリス・ハリソン)氏はワシントンD.C.、ミリ波によるドップラーレーダーベースのセンサーは「非常に微妙なもの(表情の違いなど)」は認識できないと認めている。しかし、食事をしたり本を読んだりといったそれほど活発でないアクティビティを検出するには十分な感度を備えているという。

またドップラーレーダーの持つ動きの検出能力は、対象とセンシングハードウェアの間のLOS(無線波の送受信が可能な範囲)にも制限を受ける(別の言い方をすれば「まだその段階に達していない」ということである。これは、将来ロボットが人検出能力を身につけることを懸念している人にとっては、ちょっとした安心感を得られる情報だろう)。

検出には、当然特殊なセンシングハードウェアが必要になる。しかし、物事はすでにその方向に向かって動き出している。例えば、GoogleはすでにPixel 4にレーダーセンサーを追加するというプロジェクトSoli に着手している。

GoogleのNest Hubにも、睡眠の質を追跡するために同じレーダーセンサーが組み込まれている。

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「レーダーセンサーがあまり携帯電話に採用されていない理由の1つは、説得力ある使用例がそれほどないためです(ニワトリが先かタマゴが先かということだが)」とハリス氏はTechCrunchに語った。「私たちのレーダーを用いたアクティビティ検出に関する研究により、より多くのアプリを使用できる可能性が浮上しています(例えば食事をしているとき、夕食を作っているとき、掃除をしているとき、運動しているときを認識できるよりスマートなSiriなど)」。

携帯用アプリと固定アプリでは、どちらにより大きな可能性があるかと聞かれ、ハリス氏はどちらにも興味深い使用事例があると答えた。

「携帯用アプリにも固定アプリにも使用事例はあります。Nest Hubに話を戻すと【略】センサーはすでに室内にあるため、それを使用して、Googleスマートスピーカーのより高度な機能をブートストラップすることができます(エクササイズで回数を数えるなど)」。

「建物には使用状況を検出するためにすでにレーダーセンサーが多数取り付けられています(しかし、今後は部屋の清掃が最後に行われたのはいつかなどを検出することが可能になる)」。

「これらのセンサーのコストはまもなく数ドルにまで落ちるでしょう(eBayで扱っているものの中にはすでに1ドルに近いものがある)。従って、あらゆるものにレーダーセンサーを組み込むことが可能です。そしてgoogleが寝室に設置される製品で示しているように「監視社会」の脅威は、レーダーが使用される場合、カメラセンサーを使った場合に比べはるかにリスクの少ないものになります」。

VergeSenseといったスタートアップは、すでにセンサーハードウェアとコンピュータビジョンテクノロジーを用いて、B2B市場向けの、屋内空間とアクティビティに対するリアルタイム分析(オフィスの使用状況を測定するなど)を強化している。

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しかし、解像度の低い画像データをローカルで処理したとしても、消費者環境では、視覚センサーを使用することでプライバシーのリスクが発生すると認識される可能性がある。

レーダーは「smart mirrors」のような、プライバシーをリスクにさらす危険のある、インタネットに接続された消費者向けのデバイスに、より適した視覚的監視の代替手段を提供する。

「ローカルに処理されたからといって、あなたはカメラを寝室や浴室に設置しますか?私が慎重なだけかもしれませんが、私なら設置しません」とハリス氏。

彼はまた、以前なされた研究に言及した。これはより多くの種類のセンシングハードウェアを組み込むことの価値を強調したものだ。「センサーが多いほど、サポートできる興味深いアプリケーションが増えます。カメラはすべてを捉えることができませんし、暗闇では機能しません。

最近はカメラもとても安価なため、レーダーが安いとはいっても、価格で勝負するのは困難です。レーダーの最大の強みは、プライバシーの保護だと思います」と彼は付け加えた。

もちろん、視覚的なものにしろ、そうでないものにしろ、センシングハードウェアを設置すれば、プライバシーがリスクにさらされる危険性は発生する。

例えば、子どもの寝室の使用状況を捉えるセンサーは、そのデータにアクセスするのが誰かによって、適切なものにも、不適切なものにもなるだろう。そして、あらゆる人間のアクティビティは、起こっている事柄によっては、安易に公開できない情報を生成するものだ。(つまり、セックスをしているのをスマートスピーカーに認識されてもかまわないか、という話である)

従って、レーダーを用いたアクティビティ追跡が他の種類のセンサーよりも非侵襲的だとはいっても、プライバシーの問題が生じないとは言い切れないのだ。

やはりそれはセンシングハードウェアがどのように使用されているかによる。とはいえ、レーダーが生成したデータはカメラなどが生成した視覚データに比べ、漏洩によってそれが人々の目にさらされた場合、比較的機密性が低いという点は間違いないだろう。

「いずれのセンサーにも、おのずとプライバシーの問題はつきまといます。プライバシーの問題があるか、ないか、ではなく、それは程度の問題です。レーダセンサーは詳細を捉えることができますが、カメラと違い匿名性が高いといえます。ドップラーレーダーデータがオンラインでリークされても、気まずい思いをすることはないでしょう。誰もそれがあなただとは認識できないからです。しかし、家の中に設置されたカメラからの情報がリークされた場合は、どうでしょうか……」。

ドップラーシグナルデータがすぐには入手できないことを前提とすると、トレーニングデータの合成にかかる計算コストは、どれ程だろうか?

「すぐに使えるというわけではありませんが、データを抽出するのに使用できる大規模なビデオコーパスは豊富にあります(Youtube-8Mのようなものを含め)」とハリス氏はいう。「動きのデータを収集するために人々をリクルートして研究室に来てもらうより、ビデオデータをダウンロードして合成レーダデータを作成するほうが、データ収集を桁違いに速く行うことができます」。

「実際の人物から質の高い1時間のデータを得ようとすると、どうしても1時間はかかります。しかし最近では、多くの良質のビデオデータベースから何百時間もの映像を簡単にダウンロードすることができます。ビデオ1時間を処理するのに2時間かかりますが、これは研究室にあるデスクトップ一台あたりの話です。重要なのは、Amazon AWSなどを使ってこれを並列化し一度に100本のビデオを処理できるということです。そのため、スループットは非常に高いものになります」。

また、無線周波数信号は、さまざまな表面からさまざまな程度で反射するが(「マルチパス干渉」としても知られる)、ハリス氏によると、ユーザーによって反射された信号は「圧倒的に優勢な信号」である。つまり、デモモデルを機能させるために、他の反射をモデル化する必要はない(しかしハリス氏は、機能をさらに磨くために「壁/天井/床/家具などの大きな表面をコンピュータービジョンで抽出し、それを合成段階に追加することができる」と述べた)。

「ワシントンD.C.(ドップラー)信号は実際に非常に高レベルで抽象的なため、リアルタイムで処理するのは特に困難ではありません(カメラよりはるかに少ない「ピクセル」のため)。車に組み込まれたプロセッサーは衝突被害軽減ブレーキシステムやブラインドスポットの監視などのためにレーダーデータを使用しています。そしてそれらはローエンドのCPUなのです(ディープラーニングなどを行わない)」。

この研究は、他のPose-on-the-Goと呼ばれる別のグループプロジェクトとあわせ、ACM CHIカンファレンスで発表されている。Pose-on-the-Goは、ウェアラブルセンサーを使わずに、スマートフォンのセンサーを使用してユーザーの全身のポーズの概要を捉えるものだ。

また、このグループのカーネギーメロン大学の研究者らは、安価に屋内「スマートホーム」センシングを実現する方法をワシントンD.C.以前実証しているワシントンD.C.(これもカメラを使わない)他、ワシントンD.C.2020年は、スマートフォンのカメラにより、デバイス上のAIアシスタントに詳細なコンテクストを供給する方法を示してもいる。

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近年彼らはワシントンD.C.レーザー振動計電磁雑音を使ってスマートデバイスにより適切に環境認識をさせ、コンテキスト機能を与える方法の研究も行っている。このグループによる他の研究には、伝導性のスプレーペイントを用いてワシントンD.C.あらゆるものをタッチスクリーンに変える研究や、ワシントンD.C.レーザーで仮想ボタンをデイバイスユーザーの腕に投影したり、別のウェアラブル(リング)ワシントンD.C.をミックスに組み入れるなどして、ウェアラブルのインタラクティブな可能性を広げるさまざまな方法の研究が含まれていて大変興味深い。

現在の「スマート」デバイスは基本的なことにつまづくなど、あまり賢くないように見えるかもしれないが、今後人とコンピューターのインタラクションが、はるかに詳細なコンテクストベースのものになるのは確かだろう。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:レーダープライバシー個人情報アクティビティカーネギーメロン大学

画像クレジット:CMU

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

カーネギーメロン大学のヘビ型ロボが泳ぎをマスター

カーネギーメロン大学(CMU)のロボット工学研究室では、ヘビ型ロボットがすっかり名物のようになっている。筆者が同校を訪れる度に、この生体模倣ロボットは新しいスキルを習得しているようだ。そして今週、その技に水泳が加わったことが、同校から発表された。

このヘビ型ロボットには、水中ナビゲーション用の新しいハウジングが取り付けられ、2021年3月には実際にCMUのプールでテストが開始された。このプロジェクトは2020年7月に始まったというが「これほど速く動かせるようになったことに驚いています」と、Howie Choset(ハウィー・チョセット)教授は、今回の発表に関連するリリースの中で述べている。「その秘密はモジュール化と、CMUでこの技術を研究している人々にあります」。

画像クレジット:CMU

このHUMRS(Hardened Underwater Modular Robot Snake、強化型水中モジュール式ヘビ型ロボット)は、ARM(先進ロボット工学製造)研究所の助成を受けて開発された。

陸上用のヘビ型ロボットは、他の一般的な構造によるロボットでは入れないような、パイプなどの狭い場所にも入ることができるという特長がある。水中でも同様の機能を発揮する。今回のプロジェクトでは、国防総省による使用が想定されており、特に潜水艦や戦艦、その他の船舶の損傷を検知する検査機能が期待されている。

画像クレジット:CMU

非軍事分野では、リグやタンク、水中のパイプなどの検査に使用される。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:カーネギーメロン大学ロボットヘビ

画像クレジット:CMU

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

小さな銀粉がソフトロボティクスの伝導性を向上させるとカーネギーメロン大学

ソフトロボティクスは長い間、新興技術の中でも最もエキサイティングな分野の1つだった。もちろん他の新技術と同様に、この分野にも従来のモデルに比べていくつかの欠点がある。柔らかい素材で作られたロボットは硬い素材のロボットに比べて、柔軟性や耐久性に優れているが、電気的な接続性に問題がある場合が多い。そして多くの場合、水や空気で満たされたブラダーが動きを助けるために使用される。

カーネギーメロン大学の新しい研究によると、ハイドロゲルのような柔らかい素材ではその即応性を損なうことなく、導電率を高めることができるという。

直近の科学ジャーナルで取り上げられたこの方法は、スクリーン印刷に似た方法で、マイクロメートルサイズの銀粉を混合物に加える。材料が部分的に脱水されると、銀粉は電荷を送達するための接続を形成し始める。研究チームはこの粉末を「皮膚上の第2層の神経組織」 に似ていると説明している。

機械工学を専門とするCarmel Majidi(カーメルマジディ)教授は「高い導電性と高い即応性、つまり『しなやかさ』を備えたこの新しい複合材料は、バイオエレクトロニクスやその他の分野でさまざまな応用が可能です」と述べている。「例としては、信号処理用のセンサーを備えた脳ステッカー、電子機器に電力を供給するウェアラブルなエネルギー生成デバイス、伸縮可能なディスプレイなどがあります」。

ソフトロボティクスでは多くの用途が考えられるが、医療分野は最も魅力的な分野の1つだ。脳卒中患者やパーキンソン病の症状に苦しむ患者への支援など、運動障害や筋疾患の治療が注目されている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:カーネギーメロン大学

画像クレジット:Carnegie Mellon University

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

カーネギーメロン大のロボット探査車MoonRangerが2022年に月面の水氷探索に初挑戦、拠点設置に備える

カーネギーメロン大学とスピンオフ宇宙スタートアップのAstroboticは、月面の水を探すためのロボット探査車を開発している。この小さなロボットは、重要な予備設計のレビューに合格し、2022年に行われるその着任ミッションに一歩近づいている。MoonRangerと名付けられた探査車は、将来の人間による月探査を支えるにに十分な量の氷が埋まっているかを調査する最初のロボット調査官となることを目指している。

VIPERの目標は、月の地表近くに存在する水氷を探すことで、それにより2024年に予定されている人間の月着陸に備える。これはNASAと国際的な宇宙コミュニティのパートナーたちとの共同プロジェクトで、私たちの大きな自然衛星の上に、人間が常駐する恒久的な研究所を作る。

MoonRangerは、スケジュールどおりに進めば最初の探査機になるかもしれないが、2022年12月の月面着陸を目指すゴルフカートサイズのロボット探査車である「VIPER」と呼ばれるNASA独自の水氷探査機との競争になるだろう。VIPERの目的は、2024年に計画された月面着陸のための準備で、月の地表近くに存在する水氷を探すことだ。これをきっかけにNASAと国際宇宙コミュニティのパートナーたちは、共同プロジェクトで、大きな自然衛星である月面に科学と研究の拠点を恒久的に設置しようとしている。

VIPERと同様に、MoonRangerも月の南極点を目指しており、NASAのミッションのための一種の先遣隊となるだろう。理想的には、NASAの商用月面運送サービス(CLPS)プログラムの一環としてMasten Space Systemsの月着陸船XL-1で送り込まれるMoonRangerは、一定量の水氷の存在を確認し、そのやや後に到着するVIPERがドリルなどを使って本格的な調査を行う。

MoonRangerはVIPERよりもはるかに小さく、スーツケース程度の大きさだが、これまでの宇宙探査車の中では前代未聞の速度で移動する能力がある。カーネギーメロン大学のロボット探査車は、1日で1000mの距離を探査することが可能だ。小さいため、リレー方式で地球に通信を送る。MoonRangerはまずMastenの着陸船に送信し、その着陸船が持つさらに高出力のアレイアンテナを使って地上の科学者たちに中継を行う。

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カテゴリー:宇宙

タグ:カーネギーメロン大学 Astrobotic MoonRanger NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa