Google Cloudが大幅値上げ、2022年10月1日から実施

クラウドインフラのレンタル料金は、通常時間が経つにつれて安くなるが、米国時間3月15日、Google Cloud(グーグル・クラウド)がその流れに逆らって、多くのコアサービスで大幅な値上げを発表した。この値上げは、Googleが「より柔軟な価格モデルとオプション」を提供したいとの名目で発表したもので、2022年10月1日から実施される予定だ。もちろんほとんどの開発者は喜んでいない

悪いニュースばかりでもない。Googleの米国、欧州、アジア地域のアーカイブストレージの一部が値下げされ、より低価格のPersistent Diskアーカイブスナップショットオプションも登場する。また「Always Free Internet」(オールウェイズ・フリー・インターネット)の容量を1GB/月から100GB/月に引き上げる。

しかし、マルチリージョンのNearline(ニアライン)ストレージなど、ストレージの中核機能の多くは50%値上げとなる。Google CloudのColdline Storage Class A(コールドライン・ストレージ・クラスA)の利用料金は、1万オペレーションあたり0.10ドル(約12円)から0.20ドル(約24円)へと倍増となる予定だ。また、複数のリージョンに配置されたCloud Storageバケットから同じ大陸のリージョンにあるサービスのデータを読み出すことはこれまで無料だったが、今後は同じ大陸にあるGoogle Cloudのロケーション間で行われる他のデータ移動と同じように課金対象となる。

ロードバランシングもまた、0.008ドル(約0.94円)から0.012ドル(約1.42円)の「データ送信処理料金」をGoogleが適用することによる値上げが行われる(地域によって料金は異なる)。Googleは、これで他の主要なクラウドプロバイダーと価格を揃えることができるという。

同社のFAQにはこう書かれている「Google Cloud は、ビジネスを変革するための革新的なソリューションを、顧客志向の一貫した方法で提供しています。従量制の料金体系により、お客様はご利用になるサービスに合わせたコストでご利用いただけるようになります。また、お客様は主要なクラウドプロバイダーとのサービスをより簡単に比較することができるようになります」。

他の大手クラウドプロバイダーのマーケティングチームは、この発表に大喜びだろうが、大量のデータを動かすのは大変なことだ。データの重力が話題になるのには理由がある。これは、顧客の流出を恐れることなく価格を引き上げることができる分野の1つだからだ。

発表の文言はきれいに飾られているが、Googleはこれらの変更がもたらす影響を明確に認識している。FAQに書かれた、顧客は「アプリケーションを新しいビジネスモデルに合わせ、価格変化の影響の一部を和らげるために、現在の利用方法を適応させる必要があります」と書かれていることがそれを物語っている。

Google(特にGoogle Cloud)は、顧客がサービスに依存しているにもかかわらず、ほとんど無作為にサービスを停止するという世間の認識にすでに苦しめられている。その認識に、無作為に値上げを行うという認識も新たに加わった。同社が設定した野心的な成長目標を達成するために、セールスチームは残業を余儀なくされそうだ。

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

2021年のクラウドインフラ市場は前年比36%増の約20.5兆円に急拡大

今さらだが、クラウドインフラ市場は驚異的な成長を続けている。Synergy Research(シナジー・リサーチ)のデータによると、2021年1年間で500億ドル(約5兆7500億円)近いビジネスが追加され、2020年の1290億ドル(約14兆8600億円)から2021年は1780億ドル(約20兆5000億円)に成長した。Canalys(カナリス)も同様の数字を報告している。

四半期に関しては、Synergy Researchの報告によると、市場は500億ドル(約5兆7500億円)に達し、前年比36%増となった。Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のビッグ3は、市場が成熟しても、市場での強みを活かして目覚ましい成長を続けている。

MicrosoftとGoogleは同程度の成長率で、四半期で45%前後、Amazonは40%弱の成長率になっている。四半期の売上高は、Amazonが約170億ドル(約1兆9500億円)、Microsoftが約100億ドル(約1兆1500億円)、Googleが約50億ドル(約5700億円)となり、いずれも健全な成長事業となった。

市場の割合による内訳は、2021年から大きく変わっておらず、Amazonが33%でトップ、次いでMicrosoftが21%、Googleが10%となっている。注目すべきは、Amazonのシェアがここ数年頑固に続いているのに対し、GoogleやMicrosoftは時間をかけて着実に成長を続けていることだが、もちろん、市場は拡大を続けており、Amazonの収益もそれなりの伸びを続けている。

実際、Synergy Researchによれば、4年半前にはわずか11%のシェアだったMicrosoftが、18四半期で2倍となり、見事な上昇ぶりを見せているという。Synergy Researchの主席アナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、Amazonのポジションがしばらく変わっていないことについては、あまり心配していない、と述べている。彼はそれをいい問題だと言っている。

「巨大で急速に成長する市場の3分の1を支配することは、はまるのにとてもいい『わだち』です」と、ディンズデール氏は述べた。そして、将来を予測するつもりはないが、急速な成長を一貫して続けることは難しいと指摘した。

「原則として、将来の市場シェアについては、予測もコメントもしません。それは私たちのようなアナリストが超えてはいけない境界線なのです。しかし、数学は強力な力であり、規模が大きくなればなるほど、積極的な成長を維持することは難しくなるとは言えます。それは(企業の)人生の事実なのです」。

画像クレジット:Synergy Research

CanalysのデータはSynergy Researchのデータにかなり近く、四半期で530億ドル(約6兆1000億円)強、34%増と報告されている。Canalysは、年間では、2020年の1420億ドル(約16兆3600億円)から前年比35%増の1917億ドル(約22兆900億円)としている。

四半期の内訳は、Amazonが33%、Microsoftが22%、Googleが9%となっている。繰り返しになるが、この数字はSynergy Researchのものと引き分けと呼べるほど近いものだ。どちらも市場を同じように定義しているので、大きな驚きにはならない。

Canalysは、ホスティングされた専用プライベートインフラストラクチャまたは共有インフラストラクチャのいずれかのサービスと、サービスとしてのプラットフォームを対象としている。Synergy Researchでは、インフラとプラットフォームサービスを対象としています。両社ともSaaSは除外しており、別カテゴリーとしてカウントしている。

事実、市場は急速な成長を続けており、アナリストや予言者が正しければ、クラウドの成長余地はまだ山ほどあると思われる。特に最大手の企業は、派手な収益を上げてこの成長の恩恵を享受しており、ここ数年、四半期ごとに私たちはそれを目の当たりにしている。

市場の底辺であっても、まだまだ儲けはある。MicrosoftやAmazon、Googleのレベルには及ばないかもしれないが、それでも数十億ドル(数千億円)規模のビジネスの積み重ねは可能だ。今後数年間、私たちは急速な成長を見続ける可能性がある。そうでなくなったとき、それは「人が犬を噛む」ような珍しいニュースになるだろう。

画像クレジット:Kwarkot / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Yuta Kaminishi)

2021年のクラウドインフラ市場は前年比36%増の約20.5兆円に急拡大

今さらだが、クラウドインフラ市場は驚異的な成長を続けている。Synergy Research(シナジー・リサーチ)のデータによると、2021年1年間で500億ドル(約5兆7500億円)近いビジネスが追加され、2020年の1290億ドル(約14兆8600億円)から2021年は1780億ドル(約20兆5000億円)に成長した。Canalys(カナリス)も同様の数字を報告している。

四半期に関しては、Synergy Researchの報告によると、市場は500億ドル(約5兆7500億円)に達し、前年比36%増となった。Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のビッグ3は、市場が成熟しても、市場での強みを活かして目覚ましい成長を続けている。

MicrosoftとGoogleは同程度の成長率で、四半期で45%前後、Amazonは40%弱の成長率になっている。四半期の売上高は、Amazonが約170億ドル(約1兆9500億円)、Microsoftが約100億ドル(約1兆1500億円)、Googleが約50億ドル(約5700億円)となり、いずれも健全な成長事業となった。

市場の割合による内訳は、2021年から大きく変わっておらず、Amazonが33%でトップ、次いでMicrosoftが21%、Googleが10%となっている。注目すべきは、Amazonのシェアがここ数年頑固に続いているのに対し、GoogleやMicrosoftは時間をかけて着実に成長を続けていることだが、もちろん、市場は拡大を続けており、Amazonの収益もそれなりの伸びを続けている。

実際、Synergy Researchによれば、4年半前にはわずか11%のシェアだったMicrosoftが、18四半期で2倍となり、見事な上昇ぶりを見せているという。Synergy Researchの主席アナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、Amazonのポジションがしばらく変わっていないことについては、あまり心配していない、と述べている。彼はそれをいい問題だと言っている。

「巨大で急速に成長する市場の3分の1を支配することは、はまるのにとてもいい『わだち』です」と、ディンズデール氏は述べた。そして、将来を予測するつもりはないが、急速な成長を一貫して続けることは難しいと指摘した。

「原則として、将来の市場シェアについては、予測もコメントもしません。それは私たちのようなアナリストが超えてはいけない境界線なのです。しかし、数学は強力な力であり、規模が大きくなればなるほど、積極的な成長を維持することは難しくなるとは言えます。それは(企業の)人生の事実なのです」。

画像クレジット:Synergy Research

CanalysのデータはSynergy Researchのデータにかなり近く、四半期で530億ドル(約6兆1000億円)強、34%増と報告されている。Canalysは、年間では、2020年の1420億ドル(約16兆3600億円)から前年比35%増の1917億ドル(約22兆900億円)としている。

四半期の内訳は、Amazonが33%、Microsoftが22%、Googleが9%となっている。繰り返しになるが、この数字はSynergy Researchのものと引き分けと呼べるほど近いものだ。どちらも市場を同じように定義しているので、大きな驚きにはならない。

Canalysは、ホスティングされた専用プライベートインフラストラクチャまたは共有インフラストラクチャのいずれかのサービスと、サービスとしてのプラットフォームを対象としている。Synergy Researchでは、インフラとプラットフォームサービスを対象としています。両社ともSaaSは除外しており、別カテゴリーとしてカウントしている。

事実、市場は急速な成長を続けており、アナリストや予言者が正しければ、クラウドの成長余地はまだ山ほどあると思われる。特に最大手の企業は、派手な収益を上げてこの成長の恩恵を享受しており、ここ数年、四半期ごとに私たちはそれを目の当たりにしている。

市場の底辺であっても、まだまだ儲けはある。MicrosoftやAmazon、Googleのレベルには及ばないかもしれないが、それでも数十億ドル(数千億円)規模のビジネスの積み重ねは可能だ。今後数年間、私たちは急速な成長を見続ける可能性がある。そうでなくなったとき、それは「人が犬を噛む」ような珍しいニュースになるだろう。

画像クレジット:Kwarkot / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Yuta Kaminishi)

膨大な量のデータのクラウド移行をローコードで実現するProphecyが約28.4億円調達

米国時間1月20日、データエンジニアリングのローコードプラットフォームであるProphecy.ioが、Insight PartnersがリードするシリーズAのラウンドで2500万ドル(約28億4000万円)を調達したと発表した。既存投資家であるSignalFireとBerkeley Skydeck、および新たな投資家Dig Venturesもこのラウンドに参加し、同社の総調達額は3100万ドル(約35億3000万円)になった。

Prophecyのユーザーエクスペリエンスの核は、データエンジニアやアナリストがワークフローを構築するためのビジュアルインターフェースとコードエディターをシームレスに切り替えることができるローコード環境だ。このインターフェースによって、Apache Sparkのコードをすばやく作成し、そのコードをAirflowサービスを通じて容易に実行することできる。

このコードとビジュアルインターフェースを切り替えていく方法で、一方が行った変更がすぐにもう一方に反映するようになり、また必要に応じてビジュアルインターフェースをカスタムの要素で拡張することもできるため、マーケットで優位に立てるとチームは願っている。まだレガシーなツールを使っている企業が非常に多いため、Prophecyは企業が既存のETLワークフローをモダナイズできるためのトランスパイラーを提供している。

Prophecyの共同創業者Raj Bains(ラジ・ベインズ)氏は、次のように述べている。「誰もが、データは新たなオイルだと、もう10年ぐらい言い続けています。しかし、実際に大企業へ行ってみると、データ管理は混乱しています。そんなところへ私たちが出ていって『直しましょう』というのです」。Prophecyと提携したDatabricksやSnowflakeはデータを利用するための処理エンジンを構築しているが、企業はクラウドへの移行を同時に進めているため、重い作業を行うための多くのツールをまだ必要としていると同氏はいう。

ベインズ氏によると、これらの企業は、オンプレミスで動いている何万ものデータパイプラインが下層にあることが多いという。そこでProphecyのツーリングによりこれらのパイプラインをモダナイズして、クラウド(できればProphecyのプラットフォーム)に移した方がすっきりする場合が多い。

つまり「そのために作ったコンパイラーは、極めて高度なツールです。それは、彼らの古いデータパイプラインを読み、クラウドとクラウド技術のための新しいデータパイプラインを自動的に書き出します。私たちは大企業の膨大な量のデータエンジニアリングの残骸に取り付いて、それらの全体をクラウドへ移行させる。現在、クラウドを志向している大企業は多いのですが、成功する移行方法はわかっていません。そこで、私たちはクラウドへの移行を支援し、まったく異なるエコシステムであるクラウドの世界で彼らが成功できるようにするのです」。

Prophecyは設立から間もないが、すでに多くのFortune 500や50の企業がデータのインフラの構築と管理のために同社サービスを利用している。

Insight PartnerのマネージングディレクターGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏によると、同社に関心を持った理由は、ベインズ氏がHortonworksやNVIDIA、Microsoftなどに在籍していたからなどさまざまだという。

「ラジ(・ベインズ)とProphecyのチームは、昨日までの古いシステム、特にそのデータ部分をよく知っている。だからそれを、クラウドネイティブな世界のどこへどうやって移せば、その巨大な移行が成功するかもわかっています。しかも、ノーコード / ローコードでそれができるのです」とマシュー氏はいう。同氏によると、現在はデータウェアハウスやレイクに積み上がった膨大な量のデータを抱えている企業が増えているたタイミング的にも良いという。数年前までは、それほどでもなかった。

ベインズ氏が掲げる2022年の目標は、プロダクトをもっと磨いて顧客がパイロットではなくプロダクションで成功できるようにすることだ。そのため、当然ながらこの度の資金は同社の市場化努力、特にフルスタックのデータエンジニアリングプラットフォームの構築に投じられる。

画像クレジット:Artur Debat/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドセキュリティの次の波に取り組むPermiso、11.4億円を調達しステルス状態から浮上

パロアルトに拠点を置き、クラウドインフラのID検知と反応を提供するスタートアップPermiso(ペルミソ)が、1000万ドル(約11億4000万円)のシード資金を得てステルス状態から浮上した。

FireEye(ファイアアイ)元幹部のPaul Nguyen(ポール・ヌエン)氏とJason Martin(ジェイソン・マーティン)氏によって設立された同社は、パンデミックの開始以降、各企業が在宅勤務をサポートするために業務のデジタル化を急いだことから生まれた、クラウドセキュリティの潮流に載ったスタートアップの1つだ。

すでに競争が激化しているこの市場に18カ月遅れて参入したものの、ヌエン氏とマーティン氏は、同社の検知反応製品はクラウドセキュリティの次の波に備える準備が整っていると考えている。このアイデアは、Netflix(ネットフリックス)を含むPermisoのエンジェル投資家たちとの会話の中で、クラウドにおける一番の問題はIDであるといわれたことに触発されたものだ。

ヌエン氏はTechCrunchに次のように語っている「このことから私たちは、IDがクラウドで何が起きているかを物語る要(かなめ)であり、クラウドで検知機能を構築するための基礎でもあると認識し始めたのです」。

Permisoは、クラウドインフラの中で可視化されたIDを提供し、誰が環境の中で何をしているかをリアルタイムに把握できるようにする。これにより、監視対象環境で発生したアクセス、アクティビティ、変化の詳細を簡単かつ効率的に特定することが可能になり、このことは認証情報の漏洩、ポリシー違反、内部脅威を示唆する悪意ある行動や異常な行動を発見するのに役立つと同社は主張している。

「私たちは市場より少しだけ先を行っているのです」とマーティン氏はいう。「私たちの知る限り、クラウド先進企業が自社のために構築しているカスタム製品を除いて、IDを中心としたすべての活動、その環境におけるリソース、およびそれらの相互作用に焦点を当てたものは存在していません」。

Permisoは「専門家によって作られ、非専門家でも使える」ことをウリにしており、クラウドセキュリティ市場でスキル不足が進んでいることを考えると、これは重要なポイントだと述べている。「オンプレミスからクラウドに移行しているチームを見たとき私たちが目にしたのは、英語を話すのと同時に、まったく新しい言語であるペルシャ語を学ぼうとしているような姿でした。それはゼロからのスタートなのです」とヌエン氏はいう。

「何年も前から市場の1%のために開発してきましたが、それでは市場の1%を獲得するにとどまるだけです。今、私たちは残りの99%も狙っています」。

このスタートアップの1000万ドル(約11億4000万円)のシードラウンドはPoint72 Ventures主導し、Foundation Capital、Work-Bench, 11.2 Capital、Rain Capitalが参加した。また、Netflixの元情報セキュリティ担当副社長Jason Chan(ジェイソン・チャン)氏、Databricks(データブリックス)の製品セキュリティ責任者Travis McPeak(トラビス・マクピーク)氏、JupiterOneのCMO Tyler Shields(タイラー・シールズ)氏など、セキュリティ業界のリーダーたちがバックアップしているのも特徴だ。

Permisoは、今回の資金調達により、現在15名で構成されるチームを3倍に増員し、現在の顧客基盤を拡大する予定だ。

「私たちの投資家は皆、クラウドネイティブ問題の中でこのID問題を大規模に解決していますが、他の企業はあと1〜2年はここまでたどり着くことはできないでしょう」とマーティン氏は語っている。

画像クレジット:Permiso

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(文:Carly Page、翻訳:sako)

米国防総省、中止したJEDIに代わる新たなクラウド契約を発表

米国防総省は米国時間11月19日、白紙に戻された10年間 / 100億ドル(約1兆1400億円)規模のJEDI契約に代わる、新たなクラウド契約の限定的な入札募集を発表した。以前、JEDI(ジェダイ、Joint Enterprise Defense Infrastructureの略)と名付けられた勝者総取りの入札が行われたことを覚えているだろうか?今回の契約は、Joint Warfighting Cloud Capability、略してJWCCと呼ばれる、あまり耳慣れない名前が付けられている。

RFP(提案依頼書)による条件の下、入札を求められているのは、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Oracle(オラクル)の4社。JEDIのRFPでは、ベンダーに選ばれた1社のみが独占することになっていたが、今回のJWCCは複数の企業が契約を得られるマルチベンダー式であることが大きな違いだ。実際に、米国防総省はAmazonとマイクロソフトを有力視しているものの、資格のある(依頼された)ベンダーであれば、契約の一部を得られる可能性があると明言している。

関連記事:ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウド企業たちを悩ます理由

RFPによると「政府は2社、すなわちAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)およびマイクロソフトとのIDIQ(調達時期・数量未確定)契約を想定しているが、しかし国防総省の要求を満たす能力を示すすべてのクラウドサービスプロバイダー(CSP)に発注する意向である」としている。

この件に関わるベンダーの数を制限したのは、要件を調査した結果、これを満たすことができる企業の数が限られていることがわかったからだと思われる。「市場調査によると、米国防総省の要求を満たすことができるソースは限られていることがわかった。現在、米国防総省が把握している米国のハイパースケールCSP(クラウドサービスプロバイダー)は5社のみ。さらに、それらのハイパースケールCSPのうち、AWSとマイクロソフトの2社のみが、国家安全保障上のあらゆるレベルの分類でクラウドサービスを提供することを含め、現時点で国防総省のすべての要件を満たすことができると思われる」と、RFPには書かれている。

政府はこの契約の金額設定をまだ行っている最中だが、複数のベンダーが関わるため、今はなきJEDI契約の100億ドルを超える可能性も十分にある。「国防総省は今回の調達の契約上限をまだ評価中だが、数十億ドル(数千億円)の上限が必要になると予想している。契約発注額の上限は、各ベンダーに指示される募集要項に記載される予定である」とのことだ。

今回のRFPで選定された企業は、3年間の契約に加えて、1年間のオプション期間が2回設けられることも注目に値するだろう。

JEDIは、トップレベルのクラウドベンダーが競い合い、それより小規模なベンダーも参入しようとしたため、当初から論争の的となっていた。多くのドラマがあり、大統領への苦情大統領からの苦情大統領による干渉への苦情多くの公式調査、そしていくつかの訴訟があった。Amazonに決まると誰もが思っていたにもかかわらず、Amazonは受注することができなかった。結局、契約を勝ち取ったのはマイクロソフトだった

関連記事:アマゾンとの入札競争に勝ったマイクロソフトは米国防総省の1兆円相当のクラウドを作る

ところが、それだけで終わらず、両社はこの決定をめぐって激しい論戦を繰り広げ、当然ながら訴訟に発展した。最終的には国防総省がすべてにうんざりして、このプロジェクトを完全に破棄することに決めたのだ。

関連記事:米国防総省がついにMSとの1兆円超規模クラウド契約「JEDI」を白紙に、リセットしてやり直し

しかし、契約がなくなったからといって、軍のコンピューティングシステムを近代化する必要性がなくなったわけではない。だから国防総省は今回、クラウドインフラストラクチャによるテクノロジーの近代化を前面に押し出す新たな取り組みを発表したのである。

Synergy Research(シナジー・リサーチ)の調べによると第3四半期の決算発表時点では、Amazon、マイクロソフト、Googleの上位3社で、パブリッククラウド市場シェアの70%を占めていることは注目に値する。クラウドインフラストラクチャ市場では、Amazonが33%のシェアで首位、マイクロソフトが約20%で続き、Googleは10%で3位につけている。シナジー社によれば、オラクルは一桁台前半とのことだ。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オープンソースのクラウドインフラ可視化ツールを手がけるスタートアップ「CloudQuery」

開発者が複数のクラウドにコードをプッシュすると、どのインフラストラクチャを所有しているかを把握することが非常に困難になるため、通常はカスタムスクリプトを書くことが必要とされる。アーリーステージのスタートアップ起業であるCloudQuery(クラウドクエリ)は、これをもっと簡単にしたいと考え、その作業を代行するオープンソースのツールを開発した。同社は米国時間11月11日、350万ドル(約4億円)のシードラウンドを実施したと発表。このラウンドはBoldstart Ventures(ボールドスター・ベンチャーズ)が主導し、Work-Bench(ワークベンチ)、Mango Capital(マンゴ・キャピタル)、Haystack(ハイスタック)が支援した。

CloudQueryのCEO兼共同設立者であるYevgeny Pats(エフゲニー・パッツ)氏は、高いレベルでいうと「我々は、SQLで動くオープンソースのクラウドアセットインベントリー(ツール)である」と述べている。同氏は、以前起ち上げたスタートアップであるFuzzit(ファズィット)をGitLab(ギットラブ)に売却して、複数のクラウドプラットフォームで仕事をしていたとき、クラウド間のインフラをレイアウトしたり、すべてのピースがどのように組み合わされているのかを把握するのに苦労していたと語る。

さらに同氏が驚いたのは、そのために役立つオープンソースのツールが見当たらなかったことだ。HashiCorp(ハシコープ)のTerraform(テラフォーム)のように、インフラをコードとして書いている開発者が持っている種類の可視性を与えてくれるソリューションは存在しないように思われた。

そこでパッツ氏は、優れた起業家ならば当然やるべきことをやった。そのツールを作ることに着手したのだ。

「私が新たにCloudQueryを起ち上げて目指そうとしたのは、そのようなプラットフォームです。開発者がビジネスとセキュリティの目的を達成するために、新しいクエリエンジンを学ぶ必要がなく、知っているSQLを使って、ビジネスとセキュリティのロジックだけに集中できるようなエコシステムを構築したいのです」と、パッツ氏は説明する。

同社のツールは9カ月前に発表されたばかりだが、パッツ氏はこの問題を抱えているのが自分だけではないことを知った。すでに、Bloomberg(ブルームバーグ)、Salesforc(セールスフォース)、Zendesk(ゼンデスク)などの大手企業が導入し、スクリプトを書く多くの手作業に代わるツールとして使い始めている。

「(2021年の初めに)GitHub(ギットハブ)で公開してHacker News(ハッカー・ニュース)で発表したところ、3カ月も経たないうちに多くの開発者、DevOps(デブオプス)エンジニア、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)からかなりの支持と採用を得られたので、このオープンソース・プロジェクトの拡大と発展を続けるために、資金を調達してその機会を倍増させることに決めました」と、パッツ氏は述べている。

マネタイズの観点から、パッツ氏まず、コミュニティを構築したいと考えている。この製品が軌道に乗れば、オープンソースツールの使用にともなう複雑さを最小限に抑え、企業顧客向けにいくつかの特別な機能を提供するSaaSバージョンを構築する計画だ。

同社の従業員数は現在11名で、2022年の第1四半期までに14名に増やすことを計画している。オープンソースであるということは、コミュニティからの助けも得られるため、より無駄のない運営ができるということだ。また、パッツ氏によれば、完全なリモート企業であることは、より多様な人材を育成することに役立つが、雇用市場は厳しいため、よりチャレンジングであるという。

パッツ氏は、同社を完全なリモート企業として維持していく方針で、GitLabで働いていたときに学んだいくつかの教訓を、自分の会社で実践していくつもりだという。その1つが、適切なタイムゾーンでチームを構成することだ。世界中に人が散らばっていると、適切な時間にミーティングを行うことが難しくなるからだ。

画像クレジット:CasarsaGuru / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Microsoft Azureがハイブリッド及びマルチクラウドの機能を拡大

Microsoft Azureは近年、競合他社と同様、企業が単一のプラットフォームを使ってクラウドや自社のデータセンターの仮想マシンやコンテナを管理できるツールを数多く発表してきた。その主要なツールがAzure Arcだ。Microsoft(マイクロソフト)は米国11月2日のIgniteカンファレンスで、Arcの新機能やハイブリッド及びマルチクラウドのラインナップ全体を紹介した。このイベントがITプロフェッショナルを対象としていることを考えれば、Igniteでの発表は驚くにあたらない。

「顧客は、何千、何万ものアプリ、データベース、サーバーを様々な場所で運用しています」とMicrosoftのAzure Edge and Platform担当コーポレートバイスプレジデントであるRoanne Sones(ロアンヌ・ソンズ)氏は話す。「規制は常に進化し、拡大しています。セキュリティ攻撃はますます巧妙になっています。一貫性をもってそれらに対応することは、セキュリティ攻撃が実行される環境の広がりを考えると、非常に難しくなっています。かなりの負担を強いられます。そこで同時に、クラウドに注目し、その革新的な乗り物に便乗したいと考えますが、クラウドに移行できないワークロードがあり、それは困難です。クラウドで利用できるものを、必要な場所と方法で実際に運用するには、どうすれば良いでしょうか」

ソンズ氏は、すべてを一貫して管理する方法を見つけることが第一歩だと主張する。最近のインフラの複雑さを考えると、道のりは幾分長い。MicrosoftはIgniteで、管理を容易にするいくつかの新しい統合機能を紹介した。その中には、Azure Stack HCI、VMware vSphere、Azure Policy Guest Configurationとの統合が含まれる。例えば、Azure Stack HCI(HCIは「hyperconverged infrastructure=ハイパーコンバージドインフラ」の略)は、デフォルトでArcに対応する。また、vSphereユーザーは、AzureからセルフサービスのVMコントロールが利用可能になり、vSphereテンプレートに基づいてVMを管理できるようになる。さらに、Azure Arcは、以前のアップデートですでにArc対応環境でのモデルの構築とトレーニングが可能になっていたが、今回、機械学習の推論もサポートする。

「クラウドとエッジの間に完全な一貫性を持たせることができるようになりました」とソンズ氏は語る。「データを移動したくなければ、その必要はありません。これまでは、オンプレミスにデータを移動させる必要がありました。クラウドでは、Arcに対応したすべての機能を利用し、それを持ち帰ることができます。新しいフルライフサイクルを実現させたのです」

現在、Microsoftの顧客の多くは、そうしたAI機能を概念実証で使用しているが、必ずしも本番環境で使用しているわけではない。しかし、ソンズ氏によれば、すでにマルチクラウド環境でモデルを本番環境に投入し始めている顧客もいるという。これは、Azureの顧客(名の知れたユーザーとしてNokiaがいる)が、規制の多い業界で活動していることが大きな理由だ。

オンプレミスの利用に配慮した、もう1つの関連する新機能は、Azure Virtual Desktopsの提供開始だ。顧客のオンプレミスのデータセンターにあるAzure Stack HCI上で、マルチセッションのWindows 10および11のデスクトップインスタンスをクラウド上で実行する機能だ。ソンズ氏によると、これは規制産業のユーザーが求めていた機能だが、こうしたローカルでの展開は、レイテンシーが問題となる場合でも重要だ。

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画像クレジット:sedmak / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

第3四半期のクラウドインフラ市場は年20兆円規模に、チップ不足でも減速せず

Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)のクラウドインフラベンダーのビッグ3が決算を発表した。お察しのとおり、業績は好調で、成長する市場は全世界で450億ドル(約5兆1300億円)を突破した。年換算で1800億ドル(約20兆5200億円)と、気が遠くなるような金額だ。過去12カ月の売上高は1640億ドル(約18兆6960億円)に達した。Synergy Researchによれば、当四半期の売上高は全体で37%増加した。

問題は、これらのベンダーが、スマートフォンからコンピュータまで、テクノロジーのサプライチェーン全体に影響を及ぼしているチップ不足に先手を打てるかどうかだ。

まずは、今期の市場シェアの70%を占めるトップ3のベンダーから見てみよう。Amazonは今回も市場をリードした。シェアは33%とここ数年安定しており、売上高成長率は39%と前四半期比では2%増加、前年同期比では10%増加し、目覚ましい成長を遂げた。

Amazonの売上高は161億ドル(約1兆8354億円)で、前年同期の116億ドル(約1兆3224億円)から増加した。少し計算してみれば、この数字が450億ドル(約5兆1300億円)の3分の1ではないことはわかるだろう。Synergy Researchは、インフラ、プラットフォームサービス、ホステッドプライベートクラウドの金額を集計しており、コンサルティングやハードウェアなど、純粋にクラウドインフラのカテゴリに属さない売上高を除いているためだ。

Microsoftがクラウドインフラ市場全体の把握をさらに難しくする。Synergy Researchのデータに基づいて計算すると、Azureインフラからの売上高は90億ドル(約1兆260億円)となり、前四半期の84億ドル(約9576億円)から増加した。同社によると、Azureおよびその他のクラウドサービスは50%成長した。前四半期の51%成長からわずかに減速した。前年同期比では2%増加した。

最後にGoogleだが、シェアは10%と安定しており、売上高は45億ドル(約5130億円)で前四半期の42億ドル(約4788億円)、前年同期の29億ドル(約3306億円)のいずれからも増加となった。Googleはクラウドインフラ市場で着実な進歩を続けている。

Canalysは、全体の売上高を494億ドル(約5兆6316億円)とさらに大きく見積もっており、年換算で2000億ドル(約22兆4000億円)近くになるとしている。成長率は少し低い35%を見込む。また、ビッグ3の市場シェアも若干異なり、Amazonが32%、Microsoftが21%、Googleが8%と見積もる。

どの数字を使うにせよ、いまだ高成長を続ける重要な市場だが、チップ不足により来年の成長が鈍化する可能性があるとCanalysは警告する。「全体的なコンピュート需要はチップ製造能力を上回っており、クラウドサービスプロバイダーによるインフラの拡張は制限される可能性があります」とCanalysのBlake Murray(ブレイク・マレー)氏は声明で述べた。

サプライチェーンの制約は、企業自身やアナリストらが決算説明会で気にしていたことでもある。MicrosoftのCFOであるAmy Hood(アミー・フッド)氏は、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)のアナリストであるKash Rangan(カッシュ・ランガン)氏から、サプライチェーンの問題がデータセンターの拡張に与える影響について具体的に質問され、次のように答えた

「第二に、サプライチェーンの影響、特にデータセンターに関する良い質問をいただきました。今期の支出を踏まえると、次へのガイダンスも似たようなものになると思います。カッシュ氏がいうことの多くは、リードタイムの長いものであると考えています。私たちは、観測したキャパシティのシグナルを満たすために必要なリードタイムをよく理解しています。複数のサプライヤーを利用することは、こうした状況に対応するために重要です。チームは非常に良い仕事をしたと感じています」とフッド氏は決算説明で語った。

Synergy ResearchのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、これらの大手ベンダーが、チップ市場全体を覆う問題を横目に、その影響力により必要なものを入手できる可能性が高いと述べた。「これらの企業は、サプライチェーンの管理に長けており、巨大な顧客でもあるため、サプライヤーから優遇措置を受けられると考えるのが妥当だと思います」と同氏は話した。

「また、彼らが調整できる点がいくつかあります。建設とリースの意思決定、サーバーの寿命の若干の延長、ワークロードの異なる地域への切り替えなどです。今では、巨大で地理的に分散したデータセンターネットワークを持っているため、必要なものを手に入れる余裕が多くあります」と同氏は語る。

チップ市場の動向を注視しているMoor Insights and Strategiesの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏も、コストが上昇したとしてもハイパースケーラーはおそらく供給を受けることになると話す。

「今はまだその段階ではないと思います。不足がさらにひどくなればそうなるでしょうが、近々そうなるとは考えていません。チップメーカーは利益率の高いデータセンターを優先するため、コンシューマー向けのPCやスマートフォンよりも優先されるのです」とムーアヘッド氏は話した。

供給の問題がデータセンターの成長に短期的な影響を与えたとしても、長期的にはこの市場を減速させることはないようだ。企業はより多くのワークロードをクラウドに移行しようと準備しているため、成長は確実と思われるが、サプライチェーンの影響の有無については次の四半期にわかるだろう。

画像クレジット:Chris Clor / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】2008年、AnimotoがAWSを追い詰めた日

現在、Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス、AWS)は、クラウドインフラストラクチャサービス市場を牽引する企業であり、600億ドル(約6兆6000億円)と圧倒的なビジネス規模を誇る。しかし、2008年当時のAWSはまだ日が浅く、クラウドサーバーの需要拡大に対応するために奮闘していた。実際、AWSがAmazon EC2(アマゾンEC2)のベータ版を発表したのは、15年前、2006年8月25日のことだ。それ以来、AWSはスタートアップに無制限のコンピューティングパワーを提供し、当時、主力のセールスポイントとなった。

EC2は、大規模なエラスティックコンピューティング(必要に応じてスケールアップし、不要になったら削除するサーバーリソース)を販売するための、最初の本格的な試みの1つだった。2008年、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏がスタートアップを対象とした初期のセールスプレゼンテーションで「雷が落ちても大丈夫なように準備をしておかないと、大いに後悔することになるだろう。もし雷が落ちたときに準備ができていなかったら、その状況に対処するのは難しい。だからといって、雷が落ちなかったときのことを考えると、非現実的に冗長な物理的インフラを準備するわけにもいかない。だから、(AWSは)その難しい状況を手助けする」と語っている。

2008年、この価値提案に試練が訪れた。AWSの顧客であるスタートアップAnimoto(アニモト)が、South by Southwest(サウス・バイ・サウスウエスト)でFacebook(フェイスブック)アプリを発表した直後、ユーザーが4日間で2万5000人から25万人に膨れ上がった時のことだ。

当時のアニモトは、ユーザーが写真をアップロードして、それをBGM付きの動画にできるという、一般消費者向けのアプリを提供していた。今となっては大したことのないサービスに聞こえるかもしれないが、当時としては最先端の技術であり、1つの動画を作るのにかなりのコンピューティングリソースを使用していた。Web 2.0のユーザー生成コンテンツというだけでなく、モバイルコンピューティングとクラウドの融合という、今日では当たり前のことをいち早く実現していたのだ。

2006年に設立されたアニモトにとって、AWSを選択することはリスクの高い提案だったが、サービスへの需要がダイナミックに変化することから、自社でインフラを運営することは、それ以上のリスクをともなうことに気づいた。自社でサーバーを立ち上げるには、莫大な設備投資が必要だったのだ。アニモトは当初、最初の資金を集める前にサーバーを構築していたため、AWSに注意を向ける前はそのような方法を取っていたと、同社の共同創業者兼CEOのBrad Jefferson(ブラッド・ジェファーソン)氏は説明する。

「当社では、何らかの方法でコンセプトを証明する必要があると考え、自分たちでサーバーを構築し始めた。その結果、概念実証の段階でさらに弾みが付き、ある程度のユーザーにサービスを利用してもらえるようになった。そのため、一旦一歩下がって、失敗に備えるだけでなく、成功に備えるには何が必要なのか、考えてみることにした」と同氏はいう。

AWSの採用を決断することは、現在の状況を考えれば簡単なことのように思えるかもしれないが、2007年当時としては、ほとんど実績のないコンセプトに、会社の命運を託すことを意味した。

「AWSとEC2の躍進には眼を見張るものがあるが、当時としては本当にギャンブルだった。何しろ、eコマース企業と『インフラの運営について』話していたのだ。Amazonは、自分たちがそういったサーバーを持っていて、それが完全に動的に利用できるということを納得させようとしていた。今にして思えば明らかなことだが、当時、当社のような会社がAWSに賭けるのはリスクがあった」とジェファーソン氏は話す。

アニモトは、AWSが謳っていることの実現を信じるだけでなく、自社のソフトウェアをAmazonのクラウド上で動作するように半年間かけて再設計する必要があった。しかし、ジェファーソン氏が収支を計算してみると、この選択は理に適っていることがわかった。当時のアニモトのビジネスモデルは、30秒の動画は無料、それ以上の動画は5ドル(当時約600円)もしくは1年あたり30ドル(同約3600円)というものだった。このモデルを実現するために必要なリソースレベルをモデル化しようとしたところ非常に難しかったため、同氏と共同創業者たちは、利用者が急増したときでも対処できることを期待し、AWSに賭けるという決断を下した。

そのテストは、翌年のサウス・バイ・サウスウエストで行われたが、アニモトがFacebookアプリを発表したことで需要が急増し、結果として当時のAWSの能力の限界を押し上げることになった。同社が新しいアプリを発表した数週間後には、関心が爆発的に高まり、Amazonは同社のサービスを継続的に運営するために必要なリソースの確保に奔走することになったのだ。

現在、AmazonのEC2担当副社長を務めるDave Brown(デイブ・ブラウン)氏は、2008年当時、エンジニアとしてチームに参加していたが「(アニモトの)すべての動画は、個別のEC2インスタンスを起動し、処理し、終了させることで対応していた。ところが、前の月は、1日あたり50~100インスタンスを使用していたのに、火曜日のピーク時には約400、水曜日には900、そして金曜日の朝には3400インスタンスが使われるといったことが起きていた」と語る。AWSが急増した需要に必要なリソースを提供できたため、アニモトはその需要に対応することができた。アニモトの使用量は最終的に5000インスタンスに達したが、その後落ち着き、エラスティックコンピューティングが実際に有益であることを証明した。

しかし、ジェファーソン氏によると、その時点でアニモトは単にEC2のマーケティングを信用していただけではなく、AWSの幹部と定期的に電話で話し、需要が増えてもサービスが破綻しないことを確認していたという。「話の要点は、もっとサーバーを用意してくれ、もっとサーバーが必要だ、ということだった。AWSが自分たちのウェブサイトや他のサイトから処理能力を奪ったのかどうかはわからないが、AWSのおかげで、当社が必要としていた処理能力を確保することができた。そして、その急上昇を乗り越えることができ、その後は自然と落ち着いていった」と同氏は語る。

アニモトをオンラインにしておくというコンセプトは、同社の最大のセールスポイントとなり、友人や家族以外でこのスタートアップに投資したのは、実はアマゾンが最初の企業だった。その後同社は、2011年に最後の資金調達を行い、合計3000万ドル(当時約24億円)を調達した。現在、同社はどちらかというとB2Bの事業を中心としており、マーケティング部門が簡単に動画を作成できるよう支援している。

ジェファーソン氏は、具体的なコストについては言及しなかったが、多くの時間休眠しているサーバーの維持にコストをかけることは、同社にとって許容できる方法ではないと明言する。クラウドコンピューティングが最適なモデルであるとわかり、同社は今もAWSを利用していると同氏はいう。

クラウドコンピューティングは、必要なときに必要なだけのコンピューティングを提供することを目的としているが、当時の特殊な状況において、その概念が大々的に試されることとなった。

現在、Amazonでは毎日6000万インスタンスを処理していることを考えると、3400インスタンスの生成に苦労したというエピソードは古臭いものに思えるが、当時としては大きな挑戦であり、エラスティックコンピューティングの考え方が単に理論に留まらないものであることをスタートアップに示した功績は大きい。

画像クレジット:EThamPhoto / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

クラウドインフラのDigitalOceanがNimbellaを買収してサーバーレス開発を強化

開発者はソフトウェアの作り方を単純化したいと願っているため、アプリケーションを動かすために必要なインフラを気にせずにコードを書ける「サーバーレス」と呼ばれるソリューションが人気を増している。インフラをサービスとして開発者に提供するDigitalOceanは、米国時間9月7日、サーバーレスのスタートアップNimbellaを買収し、この分野における同社の既存提供品目をさらに強化することを発表した。買収の条件は公表されていない。

DigitalOceanはNimbellaにより、オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームKubernetesと、同じくオープンソースのサーバーレス開発プラットフォームApache OpenWhisk上に構築されていサーバーレスアプリケーションを開発するためのプラットフォームを獲得する。

2年前にDigitalOceanのCEOになったYancey Spruill(ヤンシー・スプルイル)氏は、Nimbellaの機能を「サービスとしてのファンクション(Function as a Service)」と呼ぶ。その目標は、サーバーレスの開発を、オープンソースの環境の中で、ターゲットの顧客のためにより単純化することだ。スプルイル氏は「サーバーレスという呼び名でまとめられる一連の機能は、開発者や企業からあらゆるレベルのインフラストラクチャの負担を取り除き、それらを私たちのようなPaaSないしIaaSが吸収してしまうことでし。ユーザーはツールの構成がより自由になり、私たちが単純にその選択などの負担を取り除いて、彼らの開発スピードを上げます」という。

NimbellaのCEOであるAnshu Agarwal(アンシュウ・アガルヴァル)氏によると、具体的には同社が、高度なサーバーレスアプリケーションを作りDigitalOceanのサービスに接続するための、一連のツールを提供していく。「私たちがDigitalOceanのポートフォリオに加える能力は、高速なソリューション、サービスとしてのファンクションのソリューションであり、そしてそれが、マネージドデータベースやストレージなどのDigitalOceanのサービスと統合して、開発者による完全なアプリケーションの開発を容易にします。それはイベントに応じるだけでなく、完全にステートレスなものの管理も行います」とアガルヴァル氏は語る。

スプルイル氏によると、DigitalOceanがサーバーレスに本腰を入れるのはこれが初めてではないという。2020年同社が最初のサーバーレスツールセットを提供したときから始まり、その上に構築していくものとして、Nimbellaがふさわしかった。

DigitalOceanはクラウド上のIaaSであり、またPaaSのプロバイダーとして、個人デベロッパーとスタートアップ、そして中小企業を主な顧客にしている。同社の2020年の3億18万ドル(約331億円)という収益は、クラウド市場全体の1290億ドル(約14億2177億円)という収益の一部に過ぎないが、それだけ小規模でもクラウドインフラストラクチャサービスが成り立つことの証拠でもある。

今回の買収の条件や異動する人員数、アガルヴァル氏の待遇など、まだわからないことだらけだが、とにかく計画ではNimbellaをDigitalOceanのポートフォリオに完全統合し、その提供品目のブランドも2022年前半にはDigitalOceanになるようだ。

【更新】Nimbellaから12名の従業員がDigitalOceanへ移籍する。

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画像クレジット:Erik Isakson/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)