カップホルダーを車上荒らし防止デバイスに変えるKeep Technologiesのプロダクト

David Moeller(デビッド・メラー)氏は次の会社を起業するつもりはなかった。ウェブサイトバックアップスタートアップのCodeGuard(コードガード)とハードウェア企業Claw Hanging Systems(クローハンギングシステムズ)を起業したことで連続起業家としての称号をすでに勝ち得ていたからだ。

ところが、車上荒らしが相次ぐ中、メラー氏は自分のクルマを盗難から守る製品を急いで探していた。それでわかったのは、市場の車上荒らし対策製品は需要に応えていない部分があり、それを埋める製品を出せばビジネスチャンスになるということだった。

メラー氏は数年に渡ってプロトタイプと研究開発を行い、ビジネスプランを立て、Keep Technologiesという会社を創業する。このアトランタ本拠のスタートアップは、TechCrunch Startup Battlefieldで事実上のデビューを果たし、2020年秋に正式に創業した。

「最初は起業しない理由を本当に探していました」とメラー氏はいい、市場調査、特許調査、消費者調査に数カ月を費やしたあと、プロトタイプを制作したと説明する。「ちょうど会社を売却したところでしたし、起業を検討していたときは、ゴルフも本格的にやりたかったし、下の娘も生まれたばかりだったので、何か危険信号はないか、起業すべきでない理由が欲しかったのです」。

しかし、起業しない理由は見つからなかった。それどころか、車両の安全性とセキュリティを実現するスマートデバイススイート、および付随するクラウドサービスとモバイルアプリも開発してしまった。フラグシップ製品のKnightは、車両への侵入と車周辺の動きの検出器で、車内のカップホルダーに取り付けて使う。もちろん、カップホルダーもそのまま使用できる。

すでに5つのユーティリティ特許を取得し、他にも16の特許を申請中のKeep Technologyは、多くの投資家の目を惹きつけている。メラー氏は最初、自己資金でKeepを立ち上げた。以降、数多くの投資家たちから4億ドルの資金を調達している。Cloudflareの共同創業者兼CEOのMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏、アーリーステージのテクノロジー投資企業TechOperators(テックオペレーター)の共同創業者Tom Noonan(トム・ノーナン)氏、Ellis Capital(エリスキャピタル)のBert Ellis(バート・エリス)氏、 Kenzie Lane Innovation(ケンジーレーンイノベーション)のCEO Tripp Rackley(トリップ・ラックレー)氏、Intercontinental Exchange(インターコンチネンタルエクスチェンジ)の最高情報セキュリティ責任者Jerry Perullo(ジェリー・ペルロー)氏などがKeepに投資している。

動作原理

Keep TechnologyのKnightデバイスは、車両のOBDポートに接続して使う。コードは床板の下を通って車両の中央コンソールに接続される。そこには通常、カップホルダーがある。Knightはカップホルダーに固定して使う。デバイスを回してしっかり固定するとアクティブ化される。

Knightデバイスは所有者以外の誰も取り外すことができない、とメラー氏は説明し、取り付けおよび取り外し作業中のアラーム機能に関する特許もいくつか取得していると付け加えた。Knightにはカメラが内蔵されており、180度の視界を確保できる。携帯電話にも接続可能で、パッシブ赤外線方式(PIR)およびマイクロ波センサーによって車内外の動きを検出できる。

画像クレジット:Keep Technologies

つまり、Knightは車上荒らしの犯人の動画を記録し、そのデータをクラウドに送信し、ユーザーのモバイル端末にも送ることができる。また、クルマの所有者の代わりに動画を確認して、警察に通報するという行動を取ることができるモニタリングサービスも提供している。

目的はもちろん、クルマへのいたずらやパーツの盗難を記録するだけでなく、車上荒らしを防ぐことだ。Keep製のデバイスはBluetooth経由で付属のフォブまたはユーザーのモバイルアプリと通信する。いずれにしても、所有者がドアをロックしてクルマを離れると、デバイスが自動的にアクティブ化される。

何者かがクルマに近づき車内を覗き込んだら、デバイスは抑止モードになり、LED光が点滅し甲高い警告音が鳴る。これは今日市場に出ている大音量の屋外用アラームとは異なる。光の点滅と甲高い警告音は誰かがクルマの周辺をうろついているときだけ発動され、その人が去ると止む。その人がクルマのドアを開けようとすると、最大120dbの警告音を発するブザー(メラー氏によると100人の赤ん坊が泣き叫んでいるような音)が鳴り、魚眼レンズがビデオを録画し転送する。

メラー氏によると、Knightデバイスの価格は299ドル(約3万3000円)、サブスクリプションの場合は年50ドル(約5500円)にする予定だという。本格的な監視サービスを望むユーザーには、月30ドル(約3300円)の価格設定を考えている。製品のリリースは2022年の中頃の予定だ。

Keep創業までの経緯

ジョージア工科大学で機械工学の学位を取得したメラー氏は、GEに就職し、ごく普通にプロとして仕事を始めた。GEでは中東、中国、ダラスの各支社に配属され、4年間在籍した。その後、投資銀行に転職するため仕事を辞め、ハーバードビジネススクールに入学した。起業家精神が芽生えたのはその頃だった。

メラー氏と友人はAmerican Inventorというリアリティーテレビ番組(2007年にABCで放送されたShark Tankの先行番組)に出演する。2人はThe Clawという自転車用ラックを発明し、ファイナリスト6組に残った。最終的には、The ClawをWhirlpool(ワールプール)にライセンス供与し、Lowe’s(ロウズ)、Home Depot(ホームデポ)、Amazon(アマゾン)で100万台以上を売り上げた。

メラー氏は、その夏の前半にAmerican Inventorの撮影を行い、後半は某投資銀行でインターンとして経験を積んだ。

「その夏の終わりまでには、その自転車用ラックが売れなくても、起業家になると決心しました」とメラー氏はいう。「あの経験で、大きなリスクを取ること、そしてその結果起こり得ることに対する私の考え方は大きく変わりました」。

Claw Hanging Systemsを立ち上げたメラー氏は、続いてCodeGuardを起業する。Clawの創業者は製品が番組で紹介されたときに先行予約を受けられるようにウェブサイトを立ち上げていた。ワールプールや他の会社に、この製品の需要があることを示すことが目的だった。が、このウェブサイトは、American Inventorが放映される前にクラッシュしてしまった。

数年後、メラー氏は、ウェブサイトバックアップスタートアップCodeGuardをジョージア工科大学の教授と共同で創業する。CodeGuardはTechCrunch Disrupt 2011に参加し、コンペでファイナリストに残った。その後すぐ、CodeGuardはCloudflareと提携し、2018年、Sectigoに買収された。

メラー氏はその後2年間、Sectigoに在籍していた。当時、同氏は、夜間も週末も費やして神経科学向けのハードウェアの開発を始めた。この取り組みはジョージア工科大学とMITからのスピンアウト組で構成されるNeuromatic Devicesとして会社化され、メラー氏は開発したハードウェアをこの会社から販売するようになる。

CodeGuardをSectigoに売却した頃から、メラー氏は立て続けに車上荒らしの被害に遭う。アトランタで近隣に引っ越した直後に被害に遭ったのを期に、同氏は、車上荒らしの被害を防ぐためのセキュリティデバイスまたは製品について考えるようになった。

今後の展望

画像クレジット:Keep Technologies

KeepはKnight以外にもいくつか製品を出している(製品名はチェスの駒の名前から取っているものが多い)。具体的には、カメラは内蔵していないが、クルマの周辺の動きや車内への侵入は検知できる廉価版のPawn、フロントガラスに貼り付けて使う360度の視界を提供するRookなどがある。

メラー氏によると、Knight、Pawn、Rookの3機種はKeepの初期製品に過ぎないという。同社はメラー氏を含めて11人の会社だが、例えば盗難の被害に遭うことが多いガス浄化装置(自動車の排出ガス中の有害成分を、触媒を使って低減する装置)の盗難防止デバイスなど、上記以外のセキュリティデバイスやセンサーの開発にも取り組んでいる。今後登場するアドオン製品としては、座席モニタリングセンサー、ドア / トランク / 給油口監視装置、カップ式無線充電装置、GPS追跡強化タグなどがある。

またKeepは、Lookoutと呼ばれる製品も設計している。これは、フロントガラスに取り付けて、警察官による職務質問を録画する小型パック型デバイスだ。といっても、メラー氏はこのデバイスでドライブレコーダー業界に参入しようとしているわけではない。むしろ、大手のドライブレコーダーメーカーと提携して、Lookoutを組み込んでもらうほうが可能性があると考えているようだ。

画像クレジット:Keep Technologies

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

米アトランタ地区にT-Mobileとジョージア工科大学のタッグによる5Gインキュベーターが新設

T-Mobileとジョージア工科大学の先端技術開発センター(Advanced Technology Development Center、ATDC)の協力により、米アトランタ都市圏に5G技術に取り組むスタートアップのための新たなインキュベーターが設立されることが米国時間2月17日発表された

これはT-Mobileのアクセラレータプログラムの拡大であり、携帯キャリア大手の同社が5Gイノベーションを後押しする取り組みの一環だ。

アトランタに隣接する準郊外都市、Peachtree Cornersのスマートシティテクノロジー開発パークを拠点とするこのインキュベーターは、T-Mobileの5Gサービスがすでに導入されており、自律走行車、ロボット、産業用ドローンアプリケーション、MRトレーニングやエンターテインメント、遠隔医療、パーソナルヘルスなどにおける5Gユースケースを開発者が構築し、テストするのを支援すると同社は述べている。

この「5G Connected Future」プログラムに参加するスタートアップは、T-Mobileのアクセラレーター、ジョージア工科大学、Peachtree CornersキャンパスのイニシアチブであるCuriosity Labのスタッフと直接仕事をすることになる。

ATDC のディレクターであるJohn Avery(ジョン・エイブリー)氏は、「5G 分野の起業家は、通常のスタートアップの問題に加え、州や地方レベルでの規制問題、 ネットワークセキュリティ、統合テストなど、独自の課題に直面します」と語る。

Peachtree Cornersのセットアップは、そうした展開をナビゲートするのに役立つかもしれない。ATDC は、その関与の一環として、プログラムの提供、スタートアップ企業の採用と評価、Peachtree Cornersでの垂直展開を管理するスタッフの雇用を行うとのことだ。

「今回のコラボレーションは、ATDCとジョージア工科大学、Peachtree Corners市とCuriosity Lab、そしてフォーチュン50社の1つであるT-Mobileにとって、これらの企業と一緒に仕事をし、アイデアをスケーラブルな企業に磨き上げ、彼らのソリューションをより迅速に市場に投入するためのユニークな集積を作りだす絶好の機会です」とエイブリー氏は述べている。

このようなパートナーシップは、「明日のテクノロジーリーダーを可能にするというジョージア工科大学のコミットメントを強調するものであり、それは、ATDCが41年前に設立されたときから変わっていません」と、ジョージア工科大学の研究担当エグゼクティブバイスプレジデントであるChaouki T.Abdallah(チャウキ・T・アブダッラー)氏は述べている。「イノベーションは孤立した状態では起こりません。起業家やスタートアップ企業は、このようなパートナーシップを通じて提供される知識とリソースを必要としています」。

カテゴリー:その他
タグ:T-Mobile5Gジョージア工科大学アトランタインキュベーター

画像クレジット:zf L / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Aya Nakazato)

米国の研究チームが「ワームブロブ」を研究してロボットの動きに応用しようとしている

ワームブロブ(worm blob)って何?ときっとあなたは思っただろう。そう、もちろん、ワーム(ミミズなどのような細長い虫)のブロブ(塊)だ。もっと具体的にいうと、カリフォルニアブラックワーム(学名Lumbriculus variegatus)の塊だ。群れでも集会でも学校でもない。この虫がぐにゃぐにゃとした大きな塊になり、全体が1つであるかのように動く。

ロボット研究者は長年、自然からヒントを得てきた。このほど発表されたのはジョージア工科大学の研究チームが前述のワームブロブの不思議な動き方から知見を得ようとした研究だ。チームは研究成果を応用してロボットの動きを見直そうと考えている。

研究チームは2月初めに成果を学術誌で公表した。研究によると、10匹〜5万匹で構成される塊は温度変化などに適応して生き残るための一種のメカニズムだという。一部の個体でグループを動かすことが可能で、2〜3匹で15匹のグループを動かせる。

研究チームは2本のアームと2つの光センサーを備えたロボットを3Dプリンタで6台作った。アームに取りつけられたメッシュとピンでロボット同士をからませることができる。

研究者のYasemin Ozkan-Aydin(ヤセミン・オズカン – アイディン)氏はこのニュースに関するリリースで「光の強さに応じて、ロボットは光から遠ざかろうとします」と述べている。ロボット間で直接通信はしないが、1つのグループとして効果的に動作した。「ロボットは、ワームで観察されたのと似た行動を起こします」(同氏)。

画像クレジット:Georgia Tech

研究チームは、このような集団行動を個々のロボットを協調的でまとまりのあるユニットにすることに応用できると考えている。Daniel Goldman(ダニエル・ゴールドマン)教授は研究について「ロボットの集団に特定のことをさせようと考えがちですが、ロボットは散らかっていない環境、シンプルな状況で動作する傾向があります。重要なポイントは、ブロブは個体間の物理的な相互作用のみで動くということです。これはロボティクスに取り入れるには興味深い要素です」と述べている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ジョージア工科大学学術研究

画像クレジット:ジョージア工科大学

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)