レーザー測距技術LiDAR活用し人の屋内位置測位技術の研究開発に取り組むHULIXが1.3億円調達

レーザー測距技術LiDAR活用し人の屋内位置測位技術の研究開発に取り組むHULIXが1.3億円調達

大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC)を無限責任組合員とするOUVC2号投資事業有限責任組合(OUVC2号ファンド)は1月28日、レーザー測位スキャナ(LiDAR)を活用して屋内における人の位置を測定できるシステム「ひとなび」を手がけるHULIXに対し、1億3000万円の投資を実行したと発表した。

HULIXは、今回の資金調達によりシステムの改良を行うとともに、プロダクトマーケットフィット(PMF。Product Market Fit)の検証を進め、更なる事業開発を加速化させる計画。

同社事業は、特に現在のようにコロナ禍で人の動きを把握する必要性が高くなっている状況において、社会実装する意義が大きいと判断したため、OUVCは同社に対する投資を決定した。OUVCからは取締役を派遣することで、ハンズオンで支援を継続していく。

HULIXは、人の屋内位置測位技術の研究開発に取り組む大阪大学情報科学研究科・山口准教授の研究成果を基にして、2020年7月に設立された大阪大学発のスタートアップ企業。大阪大学の起業支援施策である「起業プロジェクト育成グラント」の採択案件として、阪大・OUVCの全面的なバックアップのもと、人流空間解析プラットフォーム「ひとなび」の事業化に取り組んできた。

また同社は、LiDARを組み込んだオリジナルエッジ機器の開発を進めており、実証フィールドでの取り組みも進めているという。レーザー測位スキャナ(LiDAR)の点群データから、リアルタイムに人やモノを抽出し空間時系列データへと変換するAIエッジ技術を保有し、こちらも研究開発を行っているそうだ。

ひとなびは、LiDARを活用して屋内における人の位置を測定できるシステムで、大規模空間で不特定多数の人の流れを把握できるという特徴を有している。阪大独自のセンシング技術により、空間に「目」と「知能」を与え、高度な空間理解と空間制御を実現しているという。

また同システムを活用すると、大型商業施設内での消費者行動の分析や混雑状況の可視化や予測が可能になることから、三井不動産と連携し、同社運営の大型複合施設「EXPOCITY」(大阪府吹田市)では、歩行者の軌跡からリアルタイムで混雑状況を予測したり、消費者行動を分析する実証実験を開始している。

なおひとなびは、施設の様々な場所に設置されたセンサーからのデータを基に人の流れを把握しているため、個人情報を取得せずにフードコートや施設内の混雑状況の分析できるとしている。

OUVC2号ファンドは、2015年に設立されたOUVC1号ファンドの後継ファンドで、大阪大学のみならず他の国立大学の研究成果も社会実装する目的で2021年1月1日に設立された。同案件はOUVC2号ファンドの第一号案件となる。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AI / 人工知能(用語)大阪大学大阪大学ベンチャーキャピタル / OUVC資金調達(用語)デジタルツインVC / ベンチャーキャピタル(用語)LiDAR(用語)ロケーションテック(用語)日本(国・地域)

物流スタートアップDatumixが通販物流センターにおける立体シャトル自動倉庫作業の効率化AIアルゴリズムを開発

物流スタートアップDatumixが通販物流センターにおける立体シャトル自動倉庫作業の効率化AIアルゴリズムを開発・特許申請

AIとデジタルツイン技術で、物流の課題を解決する物流スタートアップ企業Datumix(データミックス)トーヨーカネツは9月17日、2020年4月7日に物流の倉庫出庫作業を効率化するAIアルゴリズムを共同開発し、特許を申請したと発表した。時間予測の技術を使用したものとして新規性があると主張している。

通販ビジネス(Eコマース)市場が拡大する中、通販物流センターは多くの商品アイテムを保管する必要があるため自動化設備の導入が進み、GTP(Goods To Person。歩行レスピッキング)対応の高速順立て出庫が可能な「立体シャトル自動倉庫」の仕組みを採用する事例が増加しているという。

しかし、膨大な商品アイテムを保管する必要がある通販センターでは、設備規模が大きくなるほど、その順立て出庫の制御ロジックが複雑になり、人手によるプログラミングで立体シャトル自動倉庫を最適稼働させることが困難になりつつあるという課題がある。

そこでDatumixは、複行オーダーにおいて複数商品アイテムの出庫指示から商品を集約ピッキングするステーションに出庫するまでの過程で、商品トレイの集約にかかる時間が出庫処理全体の84.6%(Datumix調べ)を占めることに着目。「ディープラーニングによる時間予測」を用いて注文の引当から商品トレイ集約の処理に要する時間の削減に取り組んだ。

また今回は、3Dモデリングにより物流設備を精密に再現する同社の物流最適化プラットフォーム「OPTIMUS AI」を用いてデジタルツイン環境を構築。このデジタルツインとは、現実世界の製品・製造設備・オペレーション・環境データの情報を収集し、これを基に仮想世界空間上に同じ状態・状況を再現するモデルを構築し、シミュレーションを行うというもので、製造業の生産性向上に貢献する技術として期待されている。

デジタルツインのモデル元となったトーヨーカネツの立体シャトル自動倉庫は、商品保管棚の一部エリアを使って複数の通路棚に点在しているピッキング対象の商品トレイを1通路に集約してピッキングステーションに供給できる機能を有しており、従来システムに比べ順立て集約出庫時間を大幅に短縮できるものだったが、今回はそれをさらに大きく時間短縮することに成功した。

DatumixのAIアルゴリズムと既存アルゴリズムを同社内で比較した結果、立体シャトル自動倉庫からのオーダー集約出庫作業において、出荷される多品種の商品アイテムをオーダー単位に集約する時間を約20%短縮できることを検証したという。

Datumixは、同AIアルゴリズムにおいて立体シャトル自動倉庫デジタルツイン上で出庫にかかる時間を最小限に抑える検証結果を得られたことで、今後、実際の立体シャトル自動倉庫での検証も行う。またこの技術は、主に立体シャトル自動倉庫とAGV(Automatic Guides Vehicle。無人搬送車)・AMR(Autonomous Mobile Robot。自律走行搬送ロボット)への応用で培ったもので、さまざまな物流設備や機械に応用できるとしている。

Datumixは、同AIアルゴリズムを用いて、自動倉庫だけではなく、さまざまな物流設備や機械での技術応用を実現し、今後さらなる多様化・簡素化が見込まれる物流業界やEC事業に高い技術と革新性を伴った技術の提供を目指す。

ファイザーの元科学主任が設立したUnlearn.AIは「デジタルの双子」で臨床試験の高速化と改善を目指す

医療研究の分野では、双子は昔から重要な役割を果たしてきた。特に臨床試験では、遺伝的に近い2人の片方に処置を施すという方法で、双子は治療の有効性の測定に寄与している。米国時間4月20日、Pfizer(ファイザー)の元科学主任が設立し、AIを使ってこのコンセプトをデジタル化する方法を開発したスタートアップが、その研究をさらに進めるための資金を得たと発表した。臨床試験の検査に使用する患者の「デジタルツイン(デジタル上の双子)」のプロファイルを構築する機械学習プラットフォームUnlearn.AI(アンラーンAI)が、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した。

このラウンドは8VCが主導し、前回の投資企業であるDCVC、DCVC Bio、Mubadala Capital Venturesも参加している。

DiGenesis(ダイジェネシス)というこのスタートアップのプラットフォームは、当初は神経疾患、具体的にはアルツハイマー病と多発性硬化症に適用するためのものだったのだが、これらは有効な治療方法がいまだ確立されておらず、既に発症している患者を対象にした臨床試験の実施が非常に難しい。

Unlearn.AIは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック関連の医療にはほとんど関わっていないものの、臨床試験の改善がなぜ重要なのかを知るいい機会を与えてくれた。この新型ウイルスに対抗するワクチンや治療法をみんなが緊急に競い合う中で、臨床試験のより効果的なアプローチの必要性が注目されている。そこはAIが力を発揮できる分野だ。

Unlearnは、現在のビジネスにおける提携先を公表していない。また実践的な臨床試験を、実際にどこまで実現できているのかも不明だ。今回の資金は、商業的展開に少しだけ近づくためのものと思われる。

「今回の資金調達は、私たちの成長にとって重要な布石だ。既にデジタルツインの研究を開始し、強力なエビデンスでその価値を実証し、臨床試験での成功の可能性を高めつつある規制当局との協力関係を大幅に前進させる力となります」とUnlearn.AIの創設者でCEOのCharles K. Fisher(チャールズ・K・フィッシャー)博士は声明の中で述べている。

「臨床試験は非常に困難な局面にあり、ここ数週間は深刻化する一方です。未来志向の投資家や提携企業の支援をいただき、極めて有能な私たちの人材をさらに成長させ、世界初のデジタルツインのアプローチを支える科学技術をさらに発展させられることを、とてもうれしく思っています」。

フィッシャー博士は、まさにテクノロジーと医療研究の集合体の中を歩んできた。製薬大手のファイザーで科学主任を勤めた経歴に加え、Leap Motion(リープモーション)で働いていたこともある。それ以前には、長年にわたり学術界にて生物物理学の勉強と研究を重ねていた。

Unlearnは昔ながらの機械学習の課題のひとつとして、いわゆるデジタルツインを構築するというアイデアに取り組んでいる。そこでは「デジタルツインを生み出すための疾病専用の機械学習モデルと仮想診療記録を構築するための、患者数万人分もの臨床試験のデータセット」が使われている。

これらは、単なる患者プロファイルとは異なる。デモグラフィック、臨床検査、生体指標に従って人と人とをマッチングさせてある。臨床試験と検査に必要な類似の人間、できれば双子を探す手間を、AIベースの双子を作ることで削減したいという考えに基づくものだ。

Unlearnは、2017年からこのプラットフォームの開発に取り組んできたが、双子(そして医療研究において遺伝子構造が類似した1組の人たち)を使った病理学や治療法の研究は、もう数十年前から始まっている。面白いことに、ある大人気の新型コロナウイルス監視アプリは、ロンドンのキングズ・カレッジ病院と、アメリカのスタフォード大学とマサチューセッツ総合病院が共同で行った長期にわたる双子の調査から生まれている

AIで「人」を作り出し、薬の有効性をテストする研究が広がっているが、それはコンピューターとアルゴリズムを使って薬品の組み合わや治療法を割り出しテストするという、さらに大きな課題へとつながる。以前は、長い時間と大きな資金を費やし、手で行ってきたであろうことだ(医療とは別の応用例として、製品開発がある。一般消費財のメーカーは、新しい石鹸やさまざまな製品の調合をAIプラットフォームで行っている)。

「Unlearnによるデジタルツインの先駆的な利用により、プラシーボを与えられる患者の数を減らすことができ、臨床試験にかかる全体的な時間も短縮できます」と8VCのプリンシパルFrancisco Gimenez(フランシスコ・ヒメネス)博士は声明の中で述べている。「医療とテクノロジーの交差点の投資家として、私たちは、最先端のコンピューター技術と革新的なビジネスモデルを組み合わせて医療の有意義な改善に取り組む企業に情熱を注いでいます。8VCはUnlearnをパートナーに迎え、無作為化臨床試験以来となる薬品の認可プロセスへの大きな挑戦に乗り出せたことで、大変に興奮しています」。ヒメネス氏は今回のラウンドにより、Unlearnの役員に加わった。

画像クレジット: Emsi Production Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:金井哲夫)