パンデミック下で成長する多種多様なフェムテック企業、従業員への福利厚生としても注目が集まる

女性の健康とウェルネスを支える技術「フェムテック」。McKinsey & Companyによると、2021年のフェムテック領域の資金調達総額は、25億ドル(約2830億円)に到達し、過去最高を記録した。

The dawn of the FemTech revolutio Published by McKinsey & Company(2022/2/14)


女性の健康とウェルネスに特化したVCであるCoyote Venturesと、フェムテック領域の情報配信やスタートアップサポートを行うNPO団体であるFemtech Focusの予測によれば、フェムテック市場は2027年までに1兆1860億ドル(約138兆円)の市場規模にまで成長するという。

そんなフェムテック業界だが、その注目領域も変化している。Crunchbaseによると、過去5年間は妊娠と子育てがVCの資金調達の最大のシェアを占めていたが、2021年に最も投資を集めたのは、プライマリ・ケアや予防医療領域だった。不妊や更年期など、困った時に頼るフェムテックから、すべての女性が常に自分の健康を守るために必要不可欠な技術になりつつあることがわかる。

欧米での盛り上がりを受け、日本でも注目が集まる領域だが、今回は、パンデミック後も続くと予測されるフェムテック業界のトレンドと注目領域について解説する。

新型コロナの影響で広まった手軽にできる自宅検査・治療

パンデミックによって、病院に行きづらくなったことを受け、遠隔医療や自宅検査キットが注目を集めた。これまで当たり前に診察や検査のために病院に行っていた人々が、パンデミックによって自宅でもできるという便利さを経験した。安全に病院に行けるようになっても、人々がこの便利さを捨てるとは考えにくい。実際に、2021年のMcKinsey & Companyの調査によると、調査対象の消費者の約40%が、今後も遠隔医療を利用すると回答しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の遠隔医療利用者の11%から上昇している。

膣内マイクロバイオーム検査キットEvvy

Evvyは、膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態の把握とライフスタイル改善アドバイスなどを提供する。General Catalyst、Box Groupなどから500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

筆者も2021年末実際に試してみた。下記のように、検査キットが送られてくる。採取は簡単で、インストラクションを見ながら3分程度で終わった。

画像クレジット:Evvy

箱には「The female body shouldn’t be a medical mystery(女性の身体は、医療で解明できないミステリーであるべきではない)」と記されており、現状研究段階ではあるものの、マイクロバイオーム分析を通して女性の不調を改善したいという気概が感じられた。

次に、オンラインで質問に回答する。生理サイクル、健康の悩み、感染症歴や今回の検査で知りたいことなどを回答する。10分ほどの割と長い質問票だった。


​​採取したサンプルを送付すると、2週間ほどで結果がメールで送られてくる。結果を解説してくれるマイクロバイオーム専門家とのビデオコールも追加コストなしでリクエストできる。ビデオコールでは、自分の悩みを伝え、結果を見ながら改善方法などを教えてくれた。結果を見てもどのように実生活に活用すれば良いのか、わかりにくかったので、マイクロバイオーム初心者の筆者からするとありがたかった。

ユーザーは、3カ月ごとの定期検査のサブスクリプションモデルと1回のみの検査キット購入が選べる。定期的に検査することで、自分の健康状態を見てみたかったので、筆者はサブスクリプションを選択した。

細菌性腟症などの感染症は、一度なると再発しやすい。実際、一部のユーザーは、膣内感染症の再発を防ぐためのヒントを求めてEvvyにたどり着く。また、早産、不妊の可能性や予防法をマイクロバイオームから知りたいというユーザーもいる。

筆者が最も注目しているのは、同社のビジョンだ。まだ研究段階のマイクロバイオームだが、同社は今後、膣内マイクロバイオームと不妊、子宮頸がん、早産などとの関連を調査し解明するというビジョンを持っている。マイクロバイオームから自分の身体の状態を把握するという未来がくるのかもしれない。

カップルの唾液から遺伝疾患リスクを解明する出生前唾液検査キット

画像クレジット:Orchid ウェブサイトより

Orchidは、パートナー両方の唾液サンプルを送付するだけで60億ものゲノムを解析し、子どもが遺伝性疾患を発症するリスクが高いかどうかを判定する唾液検査キットを提供している。2021年4月、シードラウンドで450万ドル(約5億3000万円)を調達。遺伝子キットを開発、販売する23 and Meの創業者も出資​​している。

対象となる遺伝性疾患は、乳がん・前立腺がん・心臓病・心房細動・脳卒中・1型糖尿病・2型糖尿病・炎症性腸疾患・統合失調症・アルツハイマー病の10種類。唾液を送ると、カップル向け、女性・男性の各パートナー向けの3種類のレポートが送付される。

子どもを作る前に、遺伝リスクを検査するというアプローチをとる同社。心配な結果が出たとしても、遺伝カウンセラーと、リスクを最小限に抑える方法などを相談できる。

2020年にシリーズDラウンドで1億2100万ドル(約143億円)の大型調達を発表したSema4も、出生前検査・遺伝性がん検査を手がける企業だ。同社は、2020年フェムテック領域の中で最大額を調達した企業だった。

テレヘルスユニコーンRoが買収、精子分析・保存キット

画像クレジット:Ro

フェムテックではないが、精子を自宅で採取し、分析結果を送ってくれるサービスを提供するDadiを紹介する。同社は、2022年3月にテレヘルスユニコーンのRoに買収されている。米国の国保健社会福祉省によると、不妊症の約3分の1は男性の不妊症に関連しているため、精液の分析と保存は重要な不妊治療サービスだ。自宅で精子を採取した後、採取キットと保存カプセルの両方が、温度変化や提携ラボへの輸送中の障害などから精子を保護・保存するように設計されている。サンプルの分析が完了すると、精子の数、濃度、運動性の評価を含む個人別の報告書が送付される。また、採取した精子は提携ラボで冷凍保存される。

Roは、コアビジネスである勃起不全治療テレヘルスプラットフォームから、テレヘルス全体へ事業拡大を進めるため、過去12カ月に3社(Workpath, Kit, Modern Fertility)を買収している。

成功の鍵は、丁寧なインストラクションと行動に落とし込める分析結果表示

ここまで自宅検査のスタートアップを解説してきた。筆者自身、自宅検査を複数試して感じたのは、自宅検査ビジネスをグロースさせる上で重要なのは「わかりやすい検査のインストラクション」と「ユーザーが行動に落とし込める分析結果を提示する」という点だ。家庭で正しく検査するためには、動画や簡単なイラストなどで、わかりやすいインストラクションが必要だ。

また、検査を受けて良かったと感じてもらうためには、明日からできる行動の変化を促す分析結果を提示することが重要だろう。自分の状態を把握するだけでは、一度きりの購入で終わってしまう。消費者は「xxのサプリを毎日飲む」「○○の栄養素を避ける」「有酸素運動を30分する」など改善のための方法を知りたいのだ。

この満足感が、安定的な収益を達成するためのサブスク顧客獲得に繋がる。現状、専門カウンセラーとのビデオコールを提供し、テスト結果を解説することでこの部分を補う企業が出てきている。専門家たちは、医学的・生物学的な専門知識がない一般消費者をガイドする役割を担っている。ここでの問題点は、スケールだ。ユーザー数が増えるごとに、専門家の数を増やさなければいけない状況では、スケールは難しい。技術を活用し、ある程度自動化をしながら満足度も担保するようなサービスが、今後伸びていくと考える。

人材獲得戦争時代、さらに重要視される企業の充実した福利厚生

米国では現在、労働者が大量に仕事を辞めている。この現象は、大規模離職を意味する「グレイト・レジグネーション(大退職時代)」と呼ばれ、メディアで頻繁に報道されている。​​Fortuneが2000人以上の米国人労働者を対象に行った調査によると、80%が新しい仕事に就くことを考える際に柔軟なスケジュールが重要であると回答している。また、約70%の労働者がリモートワークの選択肢を重要視している。優秀な人材プールを惹きつけるためには、働きやすい環境を作ることが必須だ。そのため、企業は、福利厚生にこれまで以上に投資している。

パンデミックで完全リモートを経験した労働者たちは、今後も働きやすさを求めている。この流れは、B to B to E(Employee)モデルと呼ばれるかたちで、企業向けに福利厚生としてのソリューションを提供するフェムテック企業にとって追い風となる。

働く親のための福利厚生プラットフォーム​​

画像クレジット:Cleoウェブサイトより

従業員は、Cleoを通して、育休からの復職時に悩みを相談できる専門家や、子どもの健康の専門家、助産師や産後うつ専門家などにアクセスできる。同社は、Pinterest、Uber、Upwork、Salesforceなどを含む、55カ国以上の100社を超える多様な企業に導入されている。​​実際、産休・育休後の復職率は、全米での平均が60%であるのに対し、Cleo会員は92%と改善している。

妊娠・出産のサポートから始まった同社のサービスだが、現在は、5歳から12歳の子どもを対象とするCleo Kids、ティーンエイジャーの子どもを対象とするCleo Teensにも拡大している。

多様なニーズに応える福利厚生の変化

画像クレジット:Carrot Fertilityウェブサイトより

これまで対面での不妊治療を中心に提供してきた福利厚生プロバイダーも、パンデミックを受け、そのサービス提供内容と方法をユーザーの求める形に変化させている。

企業の従業員向けに不妊治療を提供するCarrot Fertilityは、SlackやBox groupなど北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、約200社の企業​​を顧客に抱える。これまで約135億円($115M)を調達している。同社は、パンデミックで通院を避けたい患者のニーズを受け、2020年8月に遠隔医療プラットフォームのCarrot at Homeを開始した。また、2021年12月には、自宅で排卵誘発ホルモンや関連バイオマーカーをモニタリングできる自宅検査キットの提供も開始している。2022年2月には、更年期障害向けのプランも追加した。

従業員それぞれのニーズが異なる点に注目し、福利厚生をパーソナライズできるプラットフォームも登場してきている。

画像クレジット:Nayyaウェブサイトより

2022年2月にシリーズCラウンドで5500万ドル(約64億円)を調達したNayyaは、企業の人事福利厚生システムに組み込んで、従業員のための福利厚生をパーソナライズするツールを提供している。

RPAを使って、従業員がプランをより良く選択し、節約する方法を見つけ、より良い支払いオプションを提供し、保険などの福利厚生を総合的にナビゲートできるようにしている。

画像クレジット:Forma

Formaは、​​裁量型福利厚生管理プラットフォームを提供している。同社も2022年2月、シリーズBラウンドで4000万ドル(約47億50000万円)を調達した。同社は、人事担当者が、従業員による福利厚生ベンダーの選定、払い戻し手続き、デジタルウォレットによるプラン利用をチェックできるようなシステムを構築している。

同社によると、企業の福利厚生は通常、企業が従業員に必要なものを決定するトップダウン・モデルで展開されており、これは雇用者と従業員の双方にとって非効率的だという。Formaの使命は、従業員ファーストの福利厚生プログラムを設計することによって、この関係を逆転させることだ。

Formaはプロバイダーと提携し、家族・人間関係、教育・キャリア、ウェルビーイング・ライフスタイル、基礎健康・保護、資産運用、仕事・パフォーマンスの6つの大きなカテゴリーで福利厚生を提供する。Formaの顧客は、社内の予算と戦略に基づいて、これらのカテゴリーから提供するものを選び、従業員に提供したい福利厚生プログラムを設計することができる。

Twitch、Stripe、Zoom、Lululemon、Palo Alto Networks、Squareなど、前年比330%の125社を顧客に抱えており、定着率は99%だという。この1年間で同社は収益を4倍に増やした。

優秀な人材を惹きつけ、繋ぎ止めるために、今後も企業の従業員への投資は、続いていくだろう。​​上記のパーソナライズ福利厚生が成功していることからも、従業員それぞれニーズが異なっており、企業がそのニーズに応えようとしている姿勢が感じられる。

編集部中:本稿の執筆者は大嶋紗季(Saki Oshima)。日本企業と海外スタートアップの新規事業創出を手がけるスクラムスタジオで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援するスタジオ事業部門に所属し、既存プログラムの運営や新規プログラムの立ち上げに従事する。各プログラムで培った日本企業とスタートアップをつなぐ経験を生かし、米国スタートアップ情報プラットフォームScrum Connect Onlineの立ち上げ、運営を担当する。欧米のフェムテックトレンドやサービスを日本語で配信。日本初のフェムテックコミュニティFemtech Community Japan創立メンバー。UCサンディエゴ大学院修了(MBA)。

 

体外受精治療の支払いを予測しやすくする英GaiaがAtomico主導のシリーズAで約23億円調達

Gaiaの創業者兼CEOナダー・アルサリム氏(画像クレジット:Gaia)

Gaia(ガイア)は、パーソナライズされた保険や支払いプランなどの製品を使って、体外受精(IVF)による不妊治療のプロセス全体の「リスク軽減」を目指すスタートアップだ。赤ちゃんのためのBNPL(後払い決済)に近いが、少し異なる。

このたび同社は、ロンドンのAtomico(アトミコ)がリードするシリーズAラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達した。これまでの投資家には、Kindred Capital、Seedcamp、米国のClocktower Technology Venturesが含まれる。これにより、Gaiaの累計調達額は2300万ドル(約26億5000万円)に達した。AtomicoのパートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏は、Gaiaの取締役会に参加する。

保険や支払いプランだけでなく、Gaiaは、臨床データセットに基づいて、適切な治療を提供できるクリニックに加えて、カップルが必要と思われるサイクル数を予測する予測技術を持っているという。

Gaiaの創業者兼CEOであるNader AlSalim(ナダー・アルサリム)氏は、声明でこう述べている。「今日の不妊治療モデルは壊れています。なぜなら、不妊治療を受けたい人と、それを受ける余裕のある人との間の格差がかつてないほど大きくなっているからです。不妊治療を受けようとする人の4人に3人は、経済的な負担が大きすぎるという理由で治療を開始しません。英国と米国では、IVFを必要とする人の7人に1人しかアクセスできない状況で、肉体的にも精神的にも負担の大きい治療へのアクセス、体験、支払い方法を見直す必要があります」。

同氏によると、Gaiaのモデルでは、同社の予測技術の対象となるサイクルで生児が生まれなかった人は、治療費を低く抑えることができるという。そして、出産した人は、治療サイクル全体の費用を月々の支払いに分散させることで、全体の費用計画を立てやすくなる。

アスタフィエバ氏はこう付け加えた。「精子率の低下や晩産化など、さまざまな要因が不妊治療サービスへの需要を高めています。不妊治療に取り組む人が増えている中、経済的な理由だけで治療を断念している多くの家族を支援する上で、Gaiaのサービスは重要な役割を果たすことができるでしょう」。

今回の投資は、Atomicoのコンシューマーパートナーであるアスタフィエバ氏が、Felix Capitalからパートナーとして参加して以来、主導する2回目の投資となる(最初の投資は、LightspeedとのZappのシリーズA)。

Gaiaは、アルサリム氏が妻と一緒に自ら体外受精を利用したことで、治療にかかる費用がいかに予測不可能であるかを実感したのがきっかけとなり、2019年に設立された。

彼はこう語った。「最初の子どもを妊娠するための道のりで、IVFのサイクルを5回、2つの国にまたがる3つのクリニックで行い、5万ポンド(約7800万円)を費やしました。私たちの場合、幸運にも子供を授かることができましたが、ほとんどの人はそこにたどり着くことすらできません。そして、痛みは精神的、肉体的なものだけでなく、経済的なものでもあることに気づきました」。

同氏は、今日、15%の人が不妊治療を必要としているにもかかわらず、2%以下の人しか不妊治療を受けられていないという全体像を指摘している。「当社が解決しようとしている問題は、人々に明瞭な情報と可視性を提供し、経済的な不安を感じることなく安心して治療を受けられるようにすることです。そしてそれ以上に重要なのは、十分なサービスを受けていない人々のために市場を開拓したいということです」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

アプリ開発プラットフォームのヤプリが新人事制度「lily制度」開始、働き方支援制度を拡充・妊活・不妊治療費の補助も

アプリ開発プラットフォームのヤプリが新人事制度「lily制度」開始、働き方支援制度を拡充・妊活・不妊治療費の補助も

アプリの開発・運用・分析をクラウドからワンストップで提供するプラットフォーム「Yappli」を運営するヤプリは1月28日、従業員に対する働き方支援として「lily(リリー)制度」を導入・施行したことを発表。社員の働き方とプライベートにおける選択肢を増やし、長期的に安心して働ける環境を整え、働き方支援制度をより拡充。新たに妊活・不妊治療の支援制度も導入した。

「Yappli」と「Family」を組み合わせて命名された「lily制度」は、働く時間とプライベートの時間を切り分けることなく、社員とその家族を、自社にとって家族のような存在として大切にしていきたいという思いを込めているという。

ヤプリは、「働くこと」だけを優先し、社員の人生における選択肢や可能性を狭めさせたくないと考え、産休・育休の支援制度や出産立ち会い制度、フレックス制度やオープン勤務など、様々なライフスタイルに合わせた労働環境作りを目指してきた。さらに今回は、長期的に勤務する土台を作るためには、社員に対して妊娠・出産前からサポートが必要だと考え、新たに妊活・不妊治療の支援制度を導入した。

ヤプリは今後も、社員とその家族の暮らしを支えることができる制度をlily制度に追加していきたいとしている。

lily制度(働き方支援制度。抜粋)

妊活・不妊治療

  • 妊活・不妊治療費の補助:1従業員あたり上限50万円までを負担
  • 妊活・不妊治療時の特別有給:特別有給休暇を必要な日数分付与
  • オンライン外部相談窓口の設置:妊活・不妊治療に対する、外部のオンライン相談窓口の設置(希望者へは提携医院の紹介も実施)
  • 妊孕性簡易検査キット割引:AMH検査、精子検査の簡易検査キットの購入費用を割引価格で購入できる(10~15%程度割引)
  • リテラシーアップの取り組み:継続的に社内のリテラシーを高められるよう、妊活・不妊治療に関するセミナーを定期開催。専門機関からの妊活・不妊治療メルマガの配信

妊娠~出産

  • 産前特別休暇:産前産後休業前に、使える特別有給休暇
    ・女性は10日間(体調調整、通院など)
    ・パートナーは5日間(パートナーの産前看護、通院付き添いなど)
  • 出産立ち会い休暇:パートナーの出産立ち会い用に使える3日間の特別有給休暇
  • 保活コンサル費用補助(全額):保育園探し~職場復帰までのコンサル費用を会社が全額負担
  • 出産祝い金:社員または社員の配偶者が出産した場合には、1産児につき10万円を出産祝金として贈呈
  • 復職祝い金:復職への感謝と育児応援として、復帰後に復職祝い金を贈呈

育児

  • フルリモート勤務:育児・介護等で必要な場合は、フルリモートでの勤務が可能
  • シッター費用補助:内閣府ベビーシッター割引券の導入予定
  • 子の看護休暇(特別有給):子どもの介護で必要な場合、子ども1人あたり年5日(上限10日)まで使える特別有給休暇

【TC Tokyo 2021レポート】自分をさらけ出す起業なので、肝はすわっている―ILLUMINATEハヤカワ五味氏・mederi坂梨氏にフェムテックを聞く

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

TechCrunch Japanは、12月2、3日に日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2021」をオンラインで開催した。その1日目にあたる12月2日では「フェムテック」(FemTech)セッションを設け、ILLUMINATE(イルミネート)のハヤカワ五味氏、mederi(メデリ)の坂梨亜里咲氏登壇のもと、フェムテックとはどういったものなのか、また各社のサービスについて紹介した。モデレーターは、TechCrunch Japanのライター・イベント担当およびN.FIELD代表の野中瑛里子氏。

ハヤカワ五味氏(ILLUMINATE代表取締役社長)

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテックILLUMINATE代表取締役社長のハヤカワ五味氏は、多摩美術大学在学中にランジェリーブランド「feast」やワンピースブランド「ダブルチャカ」などを立ち上げ、Eコマースを主に販売。2019年には、生理から選択を考えるプロジェクト「ILLUMINATE」を立ち上げ、活動を続けている。

ILLUMINATEでは、女性向けヘルスケアブランドの企画・販売を手がけている。「女性の身体」や「女性のライフスタイル」に徹底的に向き合ったサプリメント「チケットサプリ」を展開しており、鉄分など女性が多く摂取する必要がある栄養素、あるいは不足しがちな栄養素をとれるという。また、デリケートゾーンソープ「NODOKA」を展開している。

ハヤカワ五味氏によると、ILLUMINATEが意識しているのは「どれだけ意義がある商品であっても、おしゃれだったりかわいかったりなど、普段から家・部屋に置きやすいデザインでないと使ってもらえないこと」という。特にサプリメントは継続して使ってもらうのが難しい商品であるため、その点を大事にしているそうだ。NODOKAについては、女性自身にまず自分の体のことを知ってもらい、自分の体を大切にしてもらうことを目的とした製品としている。

坂梨亜里咲氏(mederi代表取締役)

【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテックmederi代表取締役の坂梨亜里咲氏は、明治大学卒業後、ECコンサルティング会社にてマーケティングおよびECオペレーションを担当。女性向けウェブメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、自らの4年に渡る不妊治療経験からMEDERIを設立した。「生みたいときに生める社会にしたい」との考えから、起業を決意した。

mederiは、自宅でできるもっとも身近な妊娠準備をコンセプトにプロダクトを展開。その1つ目が、妊娠・出産を望む女性向けのウーマンウェルネスブランド「Ubu」における、膣内フローラチェックキット「Ubu Check Kit」やサプリメント「Ubu Supplement」などだ。Ubuは、坂梨氏の不妊治療経験から生まれたブランドで、「普段利用していたサプリメントやこんなチェックキットがあったらいいな」と考えたものを手がけている。2つ目は、ピルについてオンライン上で産婦人科医の診療を受けられるというマッチングサービス「mederi Pill」だ。

坂梨氏も、デザインに関して海外のプロダクトを参考にしており、妊活というカテゴリーの中でもできるだけ重々しくならないように、また女性が少しでもハッピーな気持ちになれるようにこだっているという。「ユーザーの利用シーンに自然に溶け込めるプロダクト作りを心がけている」としていた。

mederi Pillは、オンラインで相談できることから、仕事で忙しく病院に行くなどなかなか相談できる時間をとれない、緊張してしまい病院に行くモチベーションがわかないという女性に評価されているそうだ。また地方では、産婦人科に行くだけで噂の元となるといったペイン(課題)がいまだにあり、それが産婦人科医のオンライン相談により解消されるという側面もある。

安定期に入ってしっかり定着してきた

昨今は「フェムテック」という言葉について聞くようになったものの、改めてここで、どういった広がり方をしているのか、どのようなソリューションが展開されているのか尋ねてみた。

「個人には、1~2年くらい前に特に盛り上がっていて、今は安定期に入ってしっかり定着してきた印象がある。海外では5年程度前には一般的に聞くようになったので、その辺りはギャップがある」(ハヤカワ五味氏)。

低用量ピルなどでも、例えばアメリカでは水泳など女性アスリートが利用するなど普及が進んでいる。

「そもそも低容量ピルでいうと、日本ではようやく1990年代終わり頃に認可された(アメリカは1960年代)。日本ではピル自体が約20年の歴史しかなく、親の世代からは大丈夫なの?と心配される。その意味では、フェムテックも歴史が浅くなりやすい」(ハヤカワ五味氏)

フェムテックの勃興が早かった国については、同氏は性教育との関連を挙げた。「性教育が早い国・しっかりしている国は、ニアリーイコールでフェムテックが盛り上がりやすいかなという側面がある。アメリカ、北欧、ニュージーランドなどは性教育が充実していて、結果的にフェムテックへのなじみがあるようだ」(ハヤカワ五味氏)。

自分自身の原体験から起業した、20~30代の女性起業家が多い

また坂梨氏は、フェムテックについて知ったのは2019年という。「不妊治療の経験をきっかけに、どんなジャンルがあるのかと調べていたら、フェムテックや様々な企業が存在することを知ってワクワクした」(坂梨氏)。国内についての盛り上がりについては、ハヤカワ五味氏同様2019年、2020年と指摘した。

国内については、「ウェルネスや月経に関するプロダクトが多い」(坂梨氏)という。この辺りは、国外との違いとして挙げられるようだ。生理が重い、不妊治療や更年期に向き合っているなどの経験があるなど「起業家も、20~40代の原体験がある女性が多い」(坂梨氏)としていた。

「更年期系に関していうと層が薄めで、起業家の人数がまだまだ少ない。起業家自身の原体験からの起業なので、ボリュームとしては20~30代の起業家が多くなっている。結果的に生理系が多くなりやすく、妊活系などもそこまで起業家はいない」(ハヤカワ五味氏)。ユーザーとしては妊娠や更年期を経験している人口が多く、ビジネスとしてはこの層を対象とした方がいいのだが、起業の原体験に基づく場合が多いので、現状では生理系のプロダクトやサービスが増えているそうだ。また早い段階で女性の課題に向き合うスタートアップが増えていくことで、「おそらく今後は、様々なプレイヤーが出てくる」(ハヤカワ五味氏)と見ているという。

一方坂梨氏は、「私自身は、早発閉経という症状で不妊になっていて、ホルモン治療を行っている。他の人よりも早く更年期を迎えると言われていて、最近は、30代で更年期に関するサービスやプロダクトを構築できるかなと考えている」としていた。

不妊治療経験から起業、自分をさらけ出す形なので肝はすわっている

原体験という話題が出たところで尋ねていたのが、坂梨氏とハヤカワ五味氏の起業のきっかけや苦労した点だ。

坂梨氏は、すでに触れたように自身の不妊治療経験から起業している。また、「女性だからということで、起業の点で苦労したことはあまりない」(坂梨氏)という。「自分のウィークポイントをさらけ出す形での起業なので、肝がすわっている方なのだと思う。ただ、BtoCのプロダクトを作っていて、どうしても投資フェーズが長くなるビジネスモデルなので、資金調達をずっと行っている初年度となり肉体的には疲れた」(坂梨氏)。

フェムテックというと、プロダクトのピッチを行う際に、女性ならではの課題(ペイン)を男性の投資家に理解してもらうのは難しそうだが、そうとも限らないという。「妊活領域では、男性の投資家でも、友人や家族などの声や男性としての経験があって、わかりやすかったようだ。不妊の原因が男性に由来することがあり、男性の投資家に共感してもらうことも多かった」(坂梨氏)。さらに「その点では、妊活領域については、女性向けだけでなく男性向け商材のアプローチも考えている」(坂梨氏)と明かしたていた。【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

女性には自分自身をもっと知ってもらいたい、知ることが力になる

ハヤカワ五味氏は、周囲の女性の苦労に気が付いたことがきっかけという。「私は当事者ではなく、2004年から経営している会社(ランジェリーブランドのfeast)で課題があって、それが原体験になっている。女性向け下着をプロダクトとして扱っているので、ほとんどのスタッフが女性という状態だった。そんな中で、毎月同じタイミングで休む方がいる場合に、もしかして生理が重いのかなと思って尋ねてしまうとセクハラになってしまう。スタッフ側としても、同じ女性であっても上司には話しにくい。そこに課題、問題を感じた」(ハヤカワ五味氏)。

そこからさらに、「生理用品を紙袋に入れないといけないよねという風潮や、生理痛が重いけれど産婦人科に行っていない子がいるなど、いろんな課題を見つけるようになった。それが自分にとって糧や力になって、起業してやっていこう」(ハヤカワ五味氏)と思ったという。

「私自身は、生理や女性ホルモンなどで悩んだ経験があるわけではない。多少話題からずれるが、子宮頸がんの検査で引っかかったことがあって、これは病院に検査に行ったからこそ気付けたと考えている。そういった意味で、女性には、自分自身のことをもっと知ってもらいたい、知ることが力になると思う。そこが原体験としてある」(ハヤカワ五味氏)。

女性向けの検査が、「ブライダルチェック」など結婚後を前提にしたイメージに偏ってしまっている

フェムテックという話題からやや離れてしまうが、子宮頸がんワクチンについても触れていた。子宮頸がんワクチンは十分な周知がなされなかったため、接種している女性は少ない。「私くらいの世代で子宮頸がんワクチンを無料接種できるようになったものの、副作用の話がすごくフォーカスされてしまい、現在に至るまでほとんど接種されていないという状況が続いていた。しかし最近、周知に関する状況は変わってきた。子宮頸がんは20代でもかかってしまう身近ながんなので、女性はもっと恐れた方がいい」(ハヤカワ五味氏)。

一般に、がんは「がん化」してから発覚するのだが、子宮頸がんの場合は「がん化」する前に発見できる例は少なくない(子宮頸がんは、「がん化」前の状態を経過してからがんになる)。「現在であれば、子宮頸がんを引き起こすHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染をチェックできるキットもある」(ハヤカワ五味氏)。そういったキットの広まりも含め、「一般的な健康診断にも女性特有の検査をオプションとせずにまとめて扱うようにしてほしい。卵巣や不妊治療に関する検査なども行って、早い段階で知ることができるようにしてほしい」(ハヤカワ五味氏)。

「現在では、女性対象の様々な検査が『ブライダルチェック』など結婚後のものとイメージさせてしまう言葉の形で、浸透してしまっている。言葉を換えて、妊娠や不妊の可能性を含めて、早い段階で女性が自分自身のポテンシャルを把握できるようにすることが重要だと思う」(坂梨氏)。

「事業をやっていて感じるのは、我慢しなければならないという風潮が強いこと。例えば、小中学生の際に生理でもプールに入るように言われたり、自分だけが痛がっているだけかもしれないと思って我慢したりなどがある。フェムテックは、実はそんな我慢は必要ないものと知らせる、『実は、あなたは大変なことになっているよ』と女性自身に気づいてもらうきっかけになるプロダクトが多いと思う」(ハヤカワ五味氏)。【TC Tokyo 2021レポート】「ILLUMINATE」ハヤカワ五味氏・「mederi」坂梨氏に聞く国内フェムテック

また現在20~30代女性の場合、母親世代などからそんなことは言わないもの、男性に生理などについて相談しないものという価値観を示されやすく、相談相手がなかなかいない。「産婦人科にかかるタイミングや重要性なども自分では気づけない、家族にそんな女性がいても気づけないことはあるので、もう少しオープンに話せる場があるといい」(坂梨氏)。

「海外の事例では、D2Cブランドがクリニックを展開する、クリニックがアプリと連動するなど、オンラインとオフラインをシームレスに展開している事業もある。例えば、気楽にオンラインで相談できて、実際の検査は現場に行くなど、いろいろな選択肢がで出てきている」(ハヤカワ五味氏)。

「私が感銘を受けた海外企業に、テレヘルス(Telehealth。非臨床的なサービスを含む遠隔医療)を手がけるHims & Hers Health(ヒムズ・アンド・ハーズ・ヘルス)がある(男性向けのHimsと女性向けのHersを展開)。男性のAGA(男性型脱毛症)やED、女性のピルを含めて、おしゃれなパッケージと世界観を展開している。自分の体やヘルスケアについて気遣うことがおしゃれなこと、ライフスタイルの一部になるようなブランド作りをしていきたい」(坂梨氏)。

フェムテックは女性だけのものではなく、もっと色々な方が関わってくれる業界になってほしい

最後にハヤカワ五味氏と坂梨氏にそれぞれ尋ねていたのが、事業を通じて作っていきたい世界像、理想だ。

ハヤカワ五味氏は、「ブランド名としている『ILLUMINATE』には、『照らす』『明示する』といった意味がある。弊社としては、女性の選択肢、ひいては男性も含めすべての人の選択肢が照らされているような状態を作りたい。知識があるから気付けるし、その気付いたものを得られる商品・状態を作りたい。広く女性自身が障壁を感じずにすむ世界になっていくといいと思う。その先に、男性やほかのジェンダーの方の幸せも待っているのかなと思う」という。

ILLUMINATEのスタッフの半分程度は男性で、「自分自身に体験がないからこそ、周囲の女性の体験を聞くなどヒヤリングを基に意見を出している」(ハヤカワ五味氏)という。それら意見も製品に反映しており、「フェムテックは、女性だけのビジネスではないことが伝わったらいい」としていた。「商品自体の『ゼロイチ』の部分は私が責任を持つにしても、「この商品の設計は、僕でも続けない」などの意見があったりするなど、男性スタッフにも体験・UXを自分事として考えてもらっている」(ハヤカワ五味氏)。フェムテックがより魅力のある市場になることで、男女問わず様々な人がそれぞれの事業を志望するようになると見ているという。

「フェムテックというと敷居が高い、女性だけのものというイメージがあるものの、(この領域の企業では)実際には男性やそれ以外のジェンダーも働いている。フェムテックは女性だけのものではなく、もっと色々な方が関わってくれる業界になってほしいと考えている。興味がある方は、ぜひ様々な事業をチェックしてもらえるとうれしい」(ハヤカワ五味氏)。

男女ともに支え合っていける、ユニセックスで使えるプロダクトも作りたい

坂梨氏は、「『mederi』という社名は『愛でる』という言葉が由来で、もっと「愛でり合う(愛で合う)」社会にしていきたい」という。「男女で性差はあるものの、お互いの良さや足りない部分を受け入れて補い合っていくといい」としていた。「今はフェムテックという領域で展開しているが、mederiとしては、男性も視野に入れた商品展開も行っていきたい。男女ともに支え合っていける、ユニセックスで使えるプロダクトも作りたいと考えている」(坂梨氏)。ジェンダーを問わず対象とする方向性から、「ヒューマンテック」(坂梨氏)ととらえているそうだ。「女性を軸に、男性もお子さんも関わりがあることなので、様々なコミュニティに浸透するようなサービスを展開していけるといいなと思う」(坂梨氏)。

「女性が幸せなら男性も幸せだし、男性が幸せなら女性も幸せという思いから、フェムテック領域でサービスを展開している。今後は、toCだけではなく、toBの福利厚生として、男女とも等しく展開できるようなオンライン診療を用いたパッケージなども展開したい。多くの人が自分事にできるようなサービスにしたいので、注目してほしい」(坂梨氏)。

在宅ヘルスケア大手Roが家庭用精子保存サービスDadi買収に向けて交渉中

ヘルスケアのD2CであるRoは今やユニコーンで、投資家たちの評価額は50億ドル(約5710億円)に達する。同社に近い筋によると、現在Roは家庭で精子を保存できるサービスのスタートアップDadiを買収するという。これはRoにとって、Workpath、KitそしてModern Fertilityに続き、過去12カ月で4度目の買収になる。

買収は完了に近いが、それでもまだ不安材料はある。額面は明かされていないが某筋によると1億ドル(約114億円)に近いという。RoとDadiにコメントを求めたが、返事はない。

Dadiは2019年に創業し、温度管理された家庭用不妊検査と精子採取キットを発売した。共同創業者でCEOのTom Smith(トム・スミス)氏によると同社は「不妊は女性の問題ではない、男性と女性双方の問題である」というミッションを掲げている。Crunchbaseによると、同社はこれまでfirstminute Capital、Third Kind Venture Capital、そしてChernin Groupなど著名なベンチャーキャピタルから1000万ドル(約11億円)を調達している。

Dadiと並ぶ競合他社のLegacyも、精子の検査と冷凍保存で同様にベンチャー資本を調達している。Legacyは2018年のTechCrunchTechCrunch主催Disrupt Berlin 2018のStartup Battlefieldで優勝し、これまでにFirstMark、Y Combinator、Justin Bieberなどから約2000万ドル(約23億円)を調達している。

この買収は、Roの社内で緊張が高まっている時期にやってきた。同社では今、以前の社員と現社員が問題を提起し、成長目標にこだわりすぎると不平を述べている。従業員の一部は会社を辞めたが、我慢が限界に達したのは、成長のための買収が立て続けに行われるようになったときだという。同社に長く在籍する者たちは、企業文化と仕事の改善が先決だと主張した。

最近辞めた社員がTechCrunchのインタビューに応じ、同社の買収の頻度について「得体のしれない買収ばかりだった。買収した企業との統合は何もなかった。会社は一体、何をしてたのだろう?買収のせいでフォーカスは変わってばかりいた。上司たちは『成長企業ってこういうものだよ』という」と語る。

しかしRoの最近の2つの買収は、戦略としてDadiと合いそうだ。Roが6月に買収したKitは在宅診断を提供する企業で、指を刺して採血する血液検査キットや体重測定ツールなど、カスタマイズできるプロダクトがいろいろある。同社はDadi同様、消費者が気楽な自宅で楽に、予防や早期発見のための検査を行なう。

Roの共同創業者でCEOのZachariah Reitano(ザカリア・レイタノ)氏は、Kitの買収について「ヘルスケアには細分化現象があり、ケアのプロバイダーは分断化したデータの全体を把握できません。そのため、私たちのようなところの仕事が増えますが、Kitはそんなインフラの中では重要で不可欠なピースです。同じ屋根の下の患者たちに、さらに多くのケアを提供できる」。

2億2500万ドル(約257億円)でModern Fertilityを買収したことが示すように、このところRoは不妊治療にも力を入れているようだが、Dadiはその方面でも貢献するだろう。Carly Leahy(カーリー・リーヒー)氏とAfton Vechery(アフトン・ヴェチェリー)氏が率いるModern Fertilityは、女性用の在宅不妊検査を提供し、妊娠と出産に関わる健康の問題に、個人化されたサポートを多数提供している。

そしてもちろんRoは、勃起不全(erectile dysfunction、ED)をターゲットとする男性の健康問題でも事業を拡大しようとしている。今やこのヘルステックユニコーンの売上の半分が、ED関連だ。

画像クレジット:Dadi

原文

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)