Datasemblyが消費財向け商品のリアルタイム設定ツールで約11億円を調達

ワシントンD.C.を拠点とするDatasembly(データセンブリー)は、消費者向け商品の価格付けから「当てずっぽう」をなくすことを目指している。

Ben Reich(ベン・ライヒ)氏とDan Gallagher(ダン・ギャラガー) 氏が共同創設したこの会社は、ワシントンD.C.地区の小売り分析企業で働いていた2人が、仕事の後に開発したプロジェクトから始まっている。

大手ブランドや全国規模の小売り業者の商品とサービスの価格に関する情報を収集していたとき、2人は集めたデータの中に、大きく間違っているものが非常に多くあることに気がついたとライヒ氏は話す。

「企業は、不完全なデータを元に数百万ドル(数億円)規模の意志決定をしてます。彼らは競合相手を調べ上げ、市場の中のどこに自分だけの場所があるかを知りたがっています」とライヒ氏。しかし適切なツールがなければ、それは不可能だと彼はいう。

問題は地域、その土地固有、または非常に限定的な地域性による消費者の嗜好の違いに小売業者が対処しようとするときに、さらに深刻化するとライヒ氏はいう。Datasemblyは、同社のソフトウェアを使えば、国中の消費者に向けた供給状況と価格に関するリアルタイムのデータが得られると主張する。

Datasemblyは、大規模にデータを集めることでその問題を解決するとライヒ氏は話す。500 Startups(ファイブハンドレッド・スタートアップス)のアクセラレーターを修了した同社は、これまでに小さなシードラウンド投資を獲得しているが、この度、Craft Ventures主導でValor Siren Venturesが参加したシリーズAラウンドにより1030万ドル(約10億9000万円)をクローズした。

同社の声明によると、米国の最大手日用消費財企業のうち3社と、地域および全国の小売り業者トップ5のうち2社がすでに顧客になっている。

新しい資金はセールス、マーケティング、製品開発の拡大に使われる予定だ。このラウンドの結果として、PayPal(ペイパル)の創設者でCOO、メッセージングサービスYammer(ヤマー)の創設者、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)の共同創設者であるDavid Sacks(デイビッド・サックス)氏がDatasemblyの取締役会に加わった。

「この20年間、小売り業界のデータセットはほとんど変わらぬままでした。しかし今、Datasemblyは、テクノロジーを駆使して企業に見えるもの、共有できるもの、行えることを以前は事実上不可能だった方法で変革しようとしています」と、Craft Venturesの共同創設者であり業務執行取締役のサックス氏は声明で述べている。「ベンとDatasemblyのチームは、競争力のある価格付け情報に関して可能なことへの業界の期待を変えようとしています。このデータを活用したいと考えない小売業者や日用消費財ブランドがあるとは、とうてい思えません」

カテゴリー:ソフトウェア

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(翻訳:金井哲夫)

Shelf Engineはスーパーの食品廃棄を減らすアイデアで13億円を調達

シアトルを拠点とするShelf Engine(シェルフ・エンジン)は、最初の数カ月間、スーパーや食料品店での在庫処理の最適化を業務としてきたが、まったくの無名だった。

4年ほど前、共同創設者のStefan Kalb(ステファン・キャルブ)氏とBede Jordan(ビード・ジョーダン)氏がソルトレークシティーの外れにスキー旅行に出かけたときから、米国の食品廃棄問題に何か具体的な手立てはないものかと話し合うようになった。

キャルブ氏は、いくつもの企業を創設してきた起業家だ。最初に立ち上げたのはMolly’s(モリーズ)という食品流通企業だった。それは2019年に、HomeGrown(ホームグロウン)という会社に買収された。

ウェスタン・ワシントン大学で保険数理学の学位を取得したキャルブ氏は、世界を変えようと食品会社を立ち上げたと語る。実際、Molly’sでは健康的な食事を提唱していた。しかし、キャルブ氏とMicrosoft(マイクロソフト)のエンジニアであったビード氏がShelf Engineで取り組んでいることは、むしろインパクトというべきかも知れない。

食品の無駄は、米国民に安全で安価な食料が行き渡らないという大きな問題を助長するばかりか、環境にも悪い。

Shelf Engineは、生鮮食料品の需要予測を提供することで、この問題に対処しよう計画している。そうすることで、発注システムから非効率性を閉め出そうという考えだ。パン売り場と、特に足が早い生鮮食品の売り場では、一般的におよそ商品の3分の1が廃棄されている。Shelf Engineは店に売上げを保証し、売れ残りについてはすべて同社が代金を支払うことにしている。

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Shelf Engineは店に並ぶ特定商品の普段の売上げに関する情報から、その商品の需要がどれほどあるかを予測する。同社の利益は、供給業者に支払う商品代金と、食料品店に卸す価格との差額から得られる。

こうすることで、食料品店は食品廃棄量を減らせるのと同時に、より豊富な種類の商品を棚に並べることができるようになる。

当初Shelf Engineは、食料品店向け商品の販売で市場に乗り込んだのだが、マーケットプレイスに転向し、店の棚に陳列される特定商品の需要を予測するモデルを完成させたときから注目を集めるようになった。

ビード氏とキャルブ氏の次なる計画は、規格外農産物の小売り業者や食料品のアウトレット販売業者などの二次的販売経路の見識を高めることだ。

同社のビジネスモデルは、すでに米北西海岸地区の400ほどの店舗で実証済みであり、市場に打って出るための新たな資金1200万ドル(約13億円)も獲得したと、キャルブ氏は話す。

この資金はGaryy Tan(ゲイリー・タン)氏のInitialized、GGVからの出資だ。ちなみにGGVの業務執行取締役Hans Tung(ハンス・タン)氏はShelf Engineの役員に加わった。さらにFoundation Capital、Bain Capital、1984 Ventures、Correlation Venturesといった企業も参加している。

Shelf Engineへの投資は、Signia VenturesのパートナーSunny Dhillon(サニー・ディロン)氏がTechCrunch Extraに寄稿していたように、食料品店に新しいテクノロジーを活用するという流れに乗っている。

「食料品の利幅は常にカミソリの刃のように薄く、儲かっている食料品店と儲かっていない食料品店の差は、1ドルあたりほんの数セント程度だ」とディロン氏は書いている。「従って、食料品の電子商取引がますます受け入れられるようになるにつれ、小売業者はフルフィルメント業務(マイクロフルフィルメントセンターなど)だけではなく、顧客の玄関先まで配達してスピードと品質を確かなものにするロジスティックス(ダークストアなど)の最適化も図らなければならない」。

しかしディロン氏が提唱する、マイクロフルフィルメントセンターやダークストアを活用した配達に限った食料品ネットワークだけがすべてではない。既存の不動産や注文に応じたショッピング方法を有するチェーンにも、生鮮食料品の利益を高める道はまだまだある。

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(翻訳:金井哲夫)

AI自動販売機のスタートアップStockwellが7月1日に廃業、自販機業界には90%も売上が落ち込む企業も

鳴り物入りで登場したStockwell AI(ストックウェル・エーアイ)は、涙の退場が決まった。2017年に元Google社員によって設立され、生を受けたときはBodega(ボデガ)という社名だったこのAI自動販売機のスタートアップは、家族経営の小さな商店を悪く言い、無残にも一撃でそうした店舗を叩き潰しては大金を手にするというそのやり方(未訳記事)が、とても嫌われた(The Washington Post記事)。結局のところ同社は、新型コロナウイルス(COVID-19)と、それが私たちの生活に与えた影響に対処できなかった。

TechCrunchが調査し確認したところでは、Stockwellは2020年6月末で廃業することになった。コンビニと同じ商品を販売する屋内型のアプリ操作式「スマート」自動販売機は、儲かるビジネスにつながらなかったようだ。

「まことに遺憾ながら、今般の状況により事業の継続が困難となり、7月1日をもって弊社は廃業することとなりました」と共同創設者でCEOのPaul McDonald(ポール・マクドナルド)氏はTechCrunch宛の電子メールで述べている。「私たちはこの事業を可能にしてくれた有能なチーム、素晴らしいパートナーと投資家、そして称賛すべきお客様に深く感謝します。このような形で旅を終えるのはまことに残念ですが、人々の生活の場、職場、遊びの場に店を置くという私たちのビジョンは、他の優れた企業、製品、サービスの中で生き続けるものと確信しています」。

もともと我々は、同社の廃業に関する電子メールを受け取った人物からの内報を受けて取材を行った。Stockwellの販売機は主にアパートやオフィスビルの中に設置されているが、先週、それらの顧客に同社からの廃業の知らせが届いた。

Stockwellを利用しているあるビルの運営会社は、Stockwellに代わって商品の補充をしてくれる業者を懸命に探しなんとか使い続ける道を見つけたそうで、これにはいくぶん慰められるが、厳しいことを言えば、今は売り上げが最大で90パーセントも落ち込む業者が出るほど、自動販売機業界にとって過酷な時期だ。

Stockwellの廃業は、現在の状況では頼れる支援者を数多く有し潤沢な資金があったとしても、誰もが必ず試練を乗り越えられるわけではないと再認識させてくれた点で意義深い。

2019年9月の時点で、Stockwellは少なくとも4500万ドル(約48億3000万円円)の投資をNEA、GV、DCM Ventures、Forerunner、First Round、Homebrewなどから調達していた。そのネットワークは1000カ所もの「ストア」に拡大していた。同社のスマート販売機は、ホテルの冷蔵庫を進化させたようなものだ。取り出した商品はセンサーが認識し、利用者は購入履歴の確認や支払いがスマートフォンで行える。

2019年秋まで、同社はそのビジネスモデルの拡大を目指して準備を進めていた。ビルやオフィスやアパートなどに置かれたStockwellの自動販売機で買える商品について、もっと利用者の意見を受け入れられるようにするというものだ。それは、水や清涼飲料水の他、おつまみ系のスナックや甘い菓子類、洗濯洗剤や鎮痛剤などの生活必需品に至る。

12月にマクドナルド氏の共同創設者であるAshwath Rajan(アシュワス・ラジャン)氏が静かに同社を去り、2020年が幕を開けると当時に新型コロナウイルスの影響が出始めた。

まずは利用者が自宅で仕事をし、家で過ごすようになった。外出が減り、買い物を最小限に抑えるためにまとめ買いをするようになった。そのため、気楽に少量の買い物ができるというStockwellなどの自動販売機の典型的なビジネスモデルに基づく事業の存続が困難になった。

次に感染拡大を抑えるための多くの人がマスクを着用し手洗いを徹底して、やたらと物に触らないように努める中で、人の手を離れた自動販売機をどうやって適切に消毒するのかという大きな問題が浮かび上がった。それは自動販売機の利用を減らしただけでなく、自動販売機に商品を補充したりメンテナンスをする業者にも重大な影響を及ぼした。

自動販売機業界の新型コロナウイルス対応には、おもしろい工夫が見られた。一部の企業は、商品をブレッツエルやスニッカーズから個人用防護具に変更した(Las Vegas Review-Journal記事)。またある業者はこの大変な時期に、簡単に栄養を摂取する方法がない最前線で働く人たちのために健康食品を販売する機会を探っている(EATER記事)。

だが全体的に、自動販売機業界はパンデミックの影響を大きく受けることになった。

通常の年であれば、この大きな市場の価値は年間300億ドル(約3兆2000億円)ほどと見積もられている(Grand View Research記事)。それが、Stockwell(旧Bodega)が投資家の目に留まった理由のひとつだ。しかし、数々の重大な要因が重なり、同社の事業は崖から転落してしまった。

2020年4月にEuropean Vending Association(欧州自動販売機協会)の会長は、政府高官に資金援助を求めた訴えの中で、取引高は最大90パーセント落ち込み、この分野に新型コロナウイルスが「壊滅的な影響」を与えていると説明している( FoodBev Media記事)。世界中のPepsi(ペプシ)やMondelez(モンデリーズ、旧Kraft)にとっても厳しい数字だが、若く有望でありながら当初から疑問を持たれていたAIベースの自動販売機スタートアップには、これが致命傷となったようだ。

画像クレジット:Bryce Durbin
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(翻訳:金井哲夫)

Googleが実店舗のネット活用を支援するスタートアップPointyを買収へ

Googleは、実店舗で販売を行う小売業者と密接な関係を作り、電子商取引の世界に参入するという長期目標を掲げているが、どうやらその計画が少し進展したようだ。検索エンジン大手である同社は、アイルランドのダブリンに本拠を置き、実店舗の小売業者を支援するハードウェアとソフトウェア技術を開発するスタートアップPointyの買収に乗り出した。その技術とは、特に取り扱い商品を細かく陳列するネットショップを開設していない店舗を対象に、大きな手間をかけることなく、商品をネット上で見つけやすくするためのものだ。

どちらの企業も買収額は公表していないが、ある情報筋によれば1億4700万ポンド(約210億円)とのことだ。

Googleは1時間以内に公式発表をすると言っていたが、情報筋から得た話の詳細を探っている間に、Pointyはすでに自社サイトでそのニュースを公開していた。現在は「習慣的な買収完了条件」の交渉中で、数週間以内に契約は完了するという(Googleの買収に関するブログ記事はこちら)。

Pointyは買収後も事業を続ける。「私たちは、Googleの資産とリーチの支援を受けて、今後もよりよいサービスが構築できることを楽しみにしています」と同社は書いている。だが、この計画に誰が残るかは不明だ。

情報筋は、この買収は「よい結果」だったと話している。なぜならPointyには「唯一無二」の製品があり、市場に比較対象がなかったからだ。さらにPointyは、小さなスタートアップにしては非常に多くのトラクションがあり、アメリカでは、特定分野の実店舗小売り業者の10パーセントほどと取り引きをしている(その中にはペットとオモチャの小売業者が含まれている聞いている)。

Pointyは創設6年目の企業で、さまざまな投資家から2000万ドル(約22億円)の資金を調達している。投資会社にはFrontline Ventures、Polaris、LocalGlobe、個人投資家には、以前はGoogleマップの開発を取り仕切り、その後、Facebookで検索エンジンや企業向けの製品の開発を行っていたLars Rasmussen(ラーズ・ラスムーセン)氏が名を連ねている。

Pointyは、CEOのMark Cummins(マーク・カミンズ)氏とCTOのCharles Bibby(チャールズ・ビビー)氏によって共同創設された。注目すべきは、カミンズ氏にとって今回がGoogleへの2度目のイグジットであることだ。彼が最初に立ち上げた会社Plink(プリンク)は、Googleがイギリスで最初に買収した企業だった。

Googleにとって、Pointyはカミンズ氏のスタートアップを前にも買収したことがあるという以上の既知の仲だ。この検索エンジン大手が実店舗を経営する小売り業者のためのツール開発をPointyが強く後押ししたことで、両者は2018年から一緒に活動していたのだ。

当時、Pointyの主軸製品は企業の販売時点管理、つまりバーコード読み取りユニットに接続するハードウェアだった。これを使えば、商品の販売時にバーコードを読み取るだけで、その商品が(販売数も含め)インターネットにアップロードされる。その後も、商品が売れるたびに読み取られたバーコードから在庫数が更新される。Pointyは入荷に関しては関知しない。長期的な販売パターンから、ほぼ正確に在庫数を割り出せるアルゴリズムを使用しているためだ。

一般の利用者は、その商品を検索すると、Googleの検索結果(ナレッジパネルの「◯◯を見る」やGoogleマップ)で、または広告にその詳細が示されるようになる。目的は、これらのリストを通じて該当する商品を、Pointyでそれをアップした店で買ってもらうチャンスを高めることだ。お客さんを店に導き、他の商品も買ってもらえればなおいい。

この装置の価格は700ドル(約7万7000円)ほどだが、特定メーカーのPOSに組み込める無料アプリも提供されている。Clover、Square、Lightspeed、Vend、Liberty、WooPOS、BestRx、CashRx POSのシステムなら、ハードウェアを必要としない。

2018年、Pointyと最初に提携したGoogleの狙いは、検索ポータルの電子商取引ツールとしての機能を高めることにあったのだが、なかなか実現しなかった。一方Amazonは、実店舗との連携を順調に強め、インターネットで買い物をする人が最初に見るサイトというGoogleの地位を大きく脅かした。

あれから2年。こうした課題は、Amazonの躍進によってますます大きくなるばかりだ。GoogleがPointyの引き込みに熱心だった理由は、恐らくそこにある。だが今、その技術を深く取り込み発展させる準備が整った。

Pointyも、小売業者との緊密さを少しだけ高めることができ、何が売れるか、何を多く仕入れるべきかといったインサイトを店舗に提供できるようになった。だが、インターネット上にリストアップされる商品の実際の売買にまでは、手を出さず、あくまで店舗とそこを訪れて直接商品を買いたい客との取り引きに任せていた。Pointy(と独自に小売り事業を目指すGoogle)がそこでどのような展開を見せるか、未来のドアは大きく開かれている。

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(翻訳:金井哲夫)

Amazonのワンツーパンチ、従来の小売業者たちはどのように反撃できるのか

もし物理的な小売業は死んでしまったと考えているのなら大間違いだ。電子商取引の爆発的な増加にもかかわらず、私たちは今でもオフラインストアでたくさんのものを買っている。2017年の米国の小売業界の売上高は3兆4900億ドル(約390兆円)だったが、そのうち電子商取引が占める売上はわずか13パーセント(約4350億ドル、約49兆円)である。もちろん、電子商取引の方がはるかに速いペースで年々成長していることは事実だ。とはいえ、まだ転換点からはほど遠い段階である。

だが、電子商取引の巨人Amazonは、皆が考えているよりもはるかに長期的な勝負をしている。同社はすでにオンライン小売を支配していて、2018年に米国の電子商取引で使われた総額の、ほぼ50パーセントをAmazonが占めているのだ。そして現在、Amazonが目を向けているのははるかに大きな分野だ。洗練されたデータ分析の利用を中心に、実店舗での販売を近代化し支配しようとしているのである。最近行われたWhole Foodsの買収とは別に、Amazonが複数の米国の都市で、独自の食料品店チェーンを立ち上げているという最近のレポートは、この動きを示す例の1つである。

こうした動きは、Amazonのワンツーパンチと考えることができる。同社の電子商取引における強大な力は、相手の顔面に対して繰り出された最初の素早いジャブに過ぎないのだ。オフライン小売業におけるデータ中心のイノベーションこそが、Amazonの2発目、すなわちはるかに重いクロスパンチである。そのジャブばかりに焦点を当てている従来の小売業者たちは、後から追ってきているクロスパンチを見ていない。しかし著者たちは、賢明な小売業者による反撃は可能だと考えている、そしてノックアウトを回避することも。以下にそのやり方を説明しよう。

電子商取引のジャブは倉庫の整備から

商品の物理的な保管は、商取引の進歩にとって長い間重要な課題だった。この分野でのイノベーションには、1910年のヘンリーフォードのコンベアベルト組立ラインから、1970年代のIBMによる汎用製品コード(いわゆる「バーコード」)、そして1975年のJ.C. Penneyによる最初の倉庫管理システムの実装などが含まれている。Intelligrated(Honeywell)、Dematic(KION)、Unitronics、Siemensなどが従来の倉庫をさらに最適化し、近代化した。しかし、その後Amazonがやってきた。

書籍から多種商品提供へと拡大した後、Amazon Primeが2005年にローンチした。それから同社の事業の焦点は、翌日発送を可能にするスケーラブルな仕組に向けられた。何億もの製品SKUがある中で、課題はどのようにしてポケット3層縫合パッド(傷口の縫合を練習するための人工皮膚)を倉庫から取り出し、迅速に荷主に引き渡すかである(なお、この特殊な製品を例に挙げたのは、Amazonがいまやいかに特殊なものを扱っているかを示すためだ)。

自動化された倉庫に、まだ広大な設置面積と資本集約的なコストが必要だったときに、Amazonはこの課題に挑戦した。Amazonは2012年にKiva Systemsを買収した、これは自律誘導車両(AGV、Autonomous Guided Vehicles)の時代を先導するものだった。倉庫の奥から、固定した場所にいる人間の梱包担当者に素早く商品を運ぶロボットたちだ。

Kivaの買収以降、小売業者たちはAmazonの倉庫の効率性に負けないように、われ先にとテクノロジーを採用するようになった。そうしたテクノロジーには、倉庫管理ソフトウェア(Oracleに買収されたLogFire製のもの、その他のものにはFishbowlおよびTemandoなどもある)から倉庫ロボット(Locus Robotics、6 River Systems、Magazino)までのものが含まれている。こうした企業のテクノロジーの中には、倉庫作業員のためのウェアラブル(例えばProGloveやGetVu)なども含まれている。この分野では、Google Roboticsなどの、より汎用的なプロジェクトもみることができる。こうした新技術を主に採用している者は、Amazonの勢いをもっとも目障りに感じている業者たち、より正確に言えば電子商取引に対するフルフィルメントサービスを提供する運営者たちである。

以下の概略図が示すのは、そうした運営者たちの全体像と、彼らが採用している倉庫/在庫管理テクノロジーのリストの一部である。

Amazonがこれらを超えてどれほどの最適化をもたらすのかを言うことは困難だが、予測することよりも小売業者たち自身が認識することの方が大切だろう。

クロスパンチ、物理的小売環境の近代化

最近Amazonは、オフラインショッピングへの進出を重ねている。それは、Amazon Books(実書店)、Amazon Go(消費者がレジを通ることのない高速小売店)、そしてAmazon 4-Star(4つ星以上のランクが付けられた商品のみを扱う店舗)などである。Amazon Liveは、QVCのようなホームショッピングコンセプトの旧来型テレビショッピングストリームさえ提供する。おそらく最も顕著な動きは、2017年に買収したWhole Foodsによって、食品小売と全国規模の実店舗展開への足ががりを得たことだ。

大部分の小売業界のウォッチャーたちは、こうしたこれらのプロジェクトを道楽として片付けるか、集中する業種として狭すぎる(特にWhole Foodsの場合)と言って、まともに取り合うことをしなかった。しかし著者たちは、そうしたウォッチャーたちはAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏の長期的な戦略目標を見誤っていると考えている。

そのクロスパンチに注目しよう。Amazonは現在の実店舗小売業がどのように回っているかをマスターしつつある。つまり既にオンラインで驚くほど上手くやっているようにオフラインでも上手くやることができるのだ。そこでは小売業者たちがより多く賢く売ることができるように、データが活用される。Amazonは、特定の製品がオフラインショッピングに向いていることを認識している。食料品や子供服はそうしたものの単なる例に過ぎない。

そうしたショッピング体験はなくなりそうもない。しかし、従来の小売業者(およびオフラインのAmazon)は、ショッピングと実際の購入の間をつないでいるデータを、もっともっとたくさん理解することができるのだ。ショッピング客は店内でどのコースを歩いたのか?彼らはどの製品に触り、どの製品をカートに入れたか?どのアイテムを試着し、どの製品を諦めたか?彼らは異なるサイズの有無をたずねたか?店舗内における商品の置き場所が、消費者の購買意欲にどのように影響するのか?商品間の相関関係はタイムリーなマーケティングとして、何を知らせることができるのか?例えば春には女性がしばしば帽子とサングラスを一緒に購入するとしたら、タイムリーなクーポン提供によって、追加の購入へと誘うことはできるだろうか?Amazonはすでに、これらの質問の大部分に対する答をオンライン上で知っている。彼らは、それと同じ情報をオフラインでの小売にも持ち込もうとしている。

当然ながら、顧客のプライバシーは、この勇敢で新しい未来における重大な関心事になるだろう。とはいえ、いまや消費者たちはオンラインデータ追跡を期待するようになり、そうしたデータによってもたらされる、より多くの情報に基く推奨や利便性をしばしば歓迎もするのだ。オフライン小売で同様のマインドシフトが起こらない理由はあるだろうか?

小売業者たちはどのように反撃できるのか?

見誤ってはならない。Amazonのワンツーパンチはおそるべきものになる。不意打ちがどれほど重要なものであるかを思い出そう。あまりにも多くのベンチャーキャピタリストが、実小売業の重要性を過小評価しており、その分野に注力するスタートアップたちを鼻で笑っている。だがそれは極めて近視眼的な態度だ。

AmazonがAmazon Goのためのコンピュータビジョンを開発しているという事実は、同様のセルフ精算手段会社(例えば、Trigo、AiFi)などが不利であることを意味しているだろうか?従来の小売業者たちがAmazonへの追従に苦労していることを考えると、著者たちはそれがむしろ好材料と成り得るのだと主張したい。

従来の小売業者はどうやって反撃できるのか?とにかく先を見越した対策が肝心だ。Amazonが小売業の次のベストプラクティスがどうあるべきかを示すのを、座して待っていてはならない。ジェフ・ベゾス氏にパンチで反撃するために、今日にでも採用できるたくさんの刺激的な技術が存在している。例えば、フィンランドのスタートアップであるRelexのことを考えてみよう。この会社はAIと機械学習を用いて、実店舗や電子商取引企業に対して、製品がどれほど売れるのかに対するより良い予想を助ける。あるいは、より没入型でインタラクティブなオフラインショッピング体験のためのソリューションを開発しているMemomiやMirowのような企業もある(どちらもメイクや試着などをよりインタラクティブな体験にするソリューションを提供している)。

Amazonのワンツーツーパンチ戦略はうまくいっているように見える。従来の小売業者たちは、巨人の倉庫イノベーションによってほとんど目くらましを受けているが、店舗内でのイノベーションによっても打撃を受けようとしている。だが従来の小売からの反撃を助けるための新しい技術が出現しつつあるのだ。唯一の問題は、意味のある十分な速さで、ソリューションを実装できるかどうかという点だ。

【編集部注】著者のアーロン・リンバーグ氏は、イスラエルのヘルツリーヤにあるBattery Venturesのアソシエートである。また、もうひとりの著者であるスコット・トービン氏は、同じくBattery Venturesのゼネラルパートナーである。

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(翻訳:sako)

Square Retailは、小売店オーナーの要求に応える先進ソリューションを狙う

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本日(米国時間8日)Squareは、小売業の顧客に対する新しいアプローチを開始した。新しいSquare Retailアプリは、在庫管理、CRM、従業員用ツールなどを完全に含む包括的バックエンドツールを補完的に提供する。

新製品は、単なるSquare Readerと基本的なSquareモバイルアプリ以上のものを必要とする商店や店主たちに、1段上の小売ソリューションを実際に提供できるようにデザインされている。SquareのPOS責任者であるMatthew O’Connorは、このソリューションが顧客の必要に応じてスケールを実現できるものであると説明してくれた。1店舗だけの運営から、複数の店舗を持つ商店の多くの在庫を追跡するなど、あらゆる顧客をサポートすることが可能だ。

「私たちは主に、私たちが『オーナー主導型』と呼んでいるビジネスをターゲットにしています、よって彼らのビジネスをどう展開するかに関する意思決定者は、通常は1人だけ存在しています。数百の拠点へとスケールすることもできますし、数十万点のSKUやアイテムに対応することも可能です」。

Squareの新製品が、現時点で主たるターゲットとしている小売業者のタイプは、「最終製品」を扱う顧客たちだ。すなわちワインやゲーム同様に、パッケージされた製品やシャツや服のようにバーコードを付けられたものを扱う顧客たちだ。そうした業態は、O’ConnorとSquareがデモを見せてくれた在庫管理システムにベストマッチする。それはスマートでスッキリとしたデザインを備え、簡潔で直感的なインターフェイスを誇っている。

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新しいSquare Retailアプリは検索に重点を置いている。例えば顧客プロフィールや、在庫の中の任意のアイテムを、トップにある統一された検索バーを用いて、素早く簡単に見つけることができる。アプリは、チェックアウト時に、ショッピングカートの商品を素早く処理するバーコードスキャニング機能も提供し、さらにこうした全ての機能が新しい拡張可能なバックエンドにプラグインされている。このバックエンドもインターフェイス同様にシンプルで、クリーン、そして容易に使えるものだ。

Squareの新しいダッシュボードツールを使えば、店のオーナーと小売スタッフは、新しい顧客情報を保守・参照できる。これにより、販売記録が追跡され、買い物客のプロファイルが構築される。またどのスタッフが買い物客の対応を行ったのかに関するメモも含めることができる。システムはまた、買い物客を購買習慣に基づいて自動的にグルーピングする機能を提供する。これは特にあなたが小さな店を運営していて、熱心な顧客たちを抱えており、しかしCRM自身にはあまり焦点を当てていないような場合には便利な機能だ。

在庫管理も同様に巧妙だ。もし複数の拠点を持っている場合でも、それらにまたがるリアルタイム管理が可能だ。このシステムはまた、ある場所から別の場所へユニットを転送することを要求することが可能だ。そして、注文書の入力と追跡を行い、受け取った荷物を自動的に新しいアイテムとして在庫に追加する機能もサポートしている。

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最後に紹介する従業員管理ツールは、個人あるいはグループ単位でのアクセスレベルの設定を可能にする。このことで複数の店舗に跨った運営をスムースに行うことができる。

Squareはシステム全体を、大部分の人が触りながら、最小限の努力で使い方を自ら学べるようにデザインしたと言っている。これは個人業者に自身の携帯電話を使って集金させるという、元々のビジネスモデルでも採用されたアプローチと同じものだ。ここでのアイデアは、軽量でありながら完全な機能を、最低限の費用で提供するというものである。Square for Retailの全パッケージにアクセスするための費用は、レジ1台あたり月に60ドルになる。

小売業オーナーたちが、競合相手のSopifyやRevelを差し置いて、Square Retailを選ぶ理由は何かと尋ねると、O’Connorはこう答えた「統合的な支払い方法を提供していますし、Capital(米国の大手クレジットカードイシュア)へもアクセスできます。クレジット会社からの支払い拒否に対する補償もありますし、私たちが提供する分析データもあります」。「顧客からの声として、とても大切だと思っているのは、顧客はワンストップを本当に求めているのです。自分たちのビジネスを助けてくれるように思える、ただ1つの場所に行きたいのです。複数のベンダーや複数の担当者を相手にしなければならないことは、普通厄介な事だと思われています。ですので、最終的にはSquareが全てを提供できると思っています。実際全てが連携して動き、バックエンドに統合されているのです」。

Squareはそのエコシステムの効果に期待している。言い換えれば、対象とする顧客のグループに対する魅力的な先進性に期待しているということだ。そうした顧客はしばしば大きな責任を自らの肩に負っている人びとだ。そうした人びとが外部のベンダーに依存する必要がある場合、一般的には1つのベンダー、1つのコンタクトを相手にしたがるのは理に叶っている。Squareによる小売業に対するアプローチの再考は、よりターゲットを絞り徹底的に考え抜かれた計画のように見える。そしてそれはこの領域に対する良い予兆を感じさせるものだ。

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(翻訳:Sako)