AIリスク情報配信FASTALERTの「リアルタイムAPI」機能がアップデート、災害ビッグデータの網羅性が国内最大級に

災害ビッグデータの網羅性が国内最大級に、AIリスク情報配信「FASTALERT」の「リアルタイムAPI」機能が大幅アップデート

SNSに投稿された災害や事故などのリスク情報を収集し、AIで精査して配信するウェブサービス「FASTALERT」(ファストアラート)を提供するJX通信社は6月29日、外部サービスやアプリでの「FASTALERT」のリスク情報を共有可能にする「FASTALERT リアルタイムAPI」の大幅アップデートを発表した。

FASTALERT リアルタイムAPIは、自然災害速報、火災速報、ライフライン速報、通信障害・システム障害速報、新型コロナウイルス感染症・ワクチン関連統計情報をすでに提供済み。今回新たに、鉄道運行情報、バス運行情報、航空運行情報、フェリー・客船運行情報、高速道路情報、停電情報、新型コロナ感染場所(事例)情報が追加しており、人々の関心が高い旅客インフラの遅延や高速道路の混雑状況などが、このAPIをサービスやアプリに組み込むことで提供可能になる。

たとえば、Yahoo! Japan、LINENEWS、FNNプライムオンラインは、このAPIを使って「新型コロナ ワクチン接種リアルタイム統計データ」を提供している。

FASTALERTは、TwitterなどのSNS投稿のほか、企業や官公庁からの公式情報、JX通信社の一般向けニュース速報アプリ「NewsDigest」からリスク情報を収集し、独自のAI技術でデマなどのノイズを排除した上で発生場所を特定し、「できごと単位」で即時配信するサービス。日本のすべての民放キー局とNHK、そのほかのマスコミおよびインフラ企業、警察、消防、自治体などでも広く導入されている。2016年9月にベータ版をリリース、2017年4月に公式リリースした後、ニュース番組などでの「視聴者提供動画」の定着に寄与したという。2018年には日本新聞協会「技術開発奨励賞」を受賞するなど、数多くの賞を獲得し、現在はSNS緊急情報サービスのシェア1位の業界標準とされている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:API(用語)自然災害 / 火災(用語)JX通信社(企業)事故 / アクシデント(用語)FASTALERT日本(国・地域)

AI活用で「報道の機械化」進めるJX通信社、テレビ朝日やフジらから数億円を調達

AIニュースサービスを展開する報道ベンチャーのJX通信社は4月12日、テレビ朝日ホールディングスフジ・スタートアップ・ベンチャーズ、既存株主等を割当先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数億円規模の調達になるという。

JX通信社が現在力を入れているのが「FASTALERT」や「News Digest」など、ニュース速報の分野でAIを活用した事業だ。FASTALERTはSNS上の事件、事故などの緊急情報をAIが自動収集・解析するサービス。従来は報道機関が警察や消防に取材をして集めていたような情報を、SNSを通じてよりスピーディーに収集できるのが大きな特徴だ。

すでに在京の民放キー局とNHKが導入しているほか、地方のテレビ局でも活用が進んでいる状況。JX通信社の代表取締役を務める米重克洋氏によると「(具体的な数までは言えないが)全国の大半のテレビ局に採用されている」という。

もうひとつのNews Digestは報道価値の高いニュース速報をAIが検知、配信するアプリ。速報スピードがウリだ。JX通信社ではこれまでも報道現場でのAI活用を進めてきたが、今後も世論調査の自動化や記事の自動生成など「報道の機械化」に向けて各社と連携して取り組む方針だ。

「報道産業は何から何まで人間がやるビジネスという側面が強く、労働集約的になりがちだった。実際のところデジタルシフトも遅れていて、現場ではコストの削減とともに付加価値をあげた収益性の向上が求められている」(米重氏)

米重氏の話では、速報レベルの情報はかなり機械化できる要素があるという。記者の業務には人間が仕方なくやっているものも多いのが現状。これらをシステムに任せることができれば、コストを下げることに加えて、記者が本来やるべきことにより多くの時間を使えるようにもなる。

JX通信社はこれまでも共同通信社や、大手金融情報サービス事業者QUICKらから資金調達を実施。今回のラウンドで、新たに民放キー局が2社株主に加わった。

「今回の調達は組織基盤の強化の目的もあるが、報道機関との連携をより強めていきたいという意図が大きい。報道の機械化というのは、現場の理解があってこそ実現できる。今後はもっと報道の現場に貢献できる総合通信社を目指してチャレンジを続けていきたい」(米重氏)

事故や事件などの緊急情報をAIで自動検知——報道機関向けサービス「FASTALERT」が正式公開

日本国内で発生している事件や事故、自然災害——こうした緊急情報は警察署や消防署からの発表を受け、報道機関が現地に足を運び、そして報じる。それが一般的な報道の形だった。それがこの数年で変化してきた。

その変化の中心にあるのがSNSだ。すでに実感している人も多そうだが、何かあればFacebookやTwitterに情報を投稿する時代。現場にいる人の投稿で事件や事故、自然災害の発生を知ることが増えている。東日本大震災が起きたときも、Twitterを使って最新の情報をチェックしていたという人は多かったのではないだろうか?

こうした時代の変化を受け、報道機関も公的機関だけでなくSNSを使って第一報の収集にいそしんでいる。だがそこには人手や時間的な制約といった課題もある。そんな課題に着目し、解決しようとするサービスがある。それが「FASTALERT(ファストアラート)」だ。

JX通信社は4月13日、FASTALERTの正式リリースを発表した。2016年9月に有償ベータ版としてすでに公開していたが、正式リリースにあたって解析精度を向上。インターフェースも刷新した。

SNSに投稿されている緊急情報をAIが自動で検知

FASTALERTは、AIによってSNSに投稿されている事件や事故、自然災害といった緊急情報を自動検知するサービス。これにより、報道機関はFacebookやTwitterなどを細かくチェックし続けなくとも、いち早く報道すべき緊急情報をパソコン、スマートフォンから知ることができる。

検知の仕組みだが、JX通信社 代表取締役の米重克洋氏によれば、自社開発のAIが「いつ・どこで・何が起きたのか」という3つのポイントでSNSに投稿されている情報を判定し、報道機関をはじめとしたユーザーに伝える。Twitterにはデマ情報も多く投稿されているが、FASTALERTはきちんとフィルタリングを行い、間違った情報は低く評価し、ノイズが入らないようにしているそうだ。

もともと、JX通信社はテーマ特化型のニュース収集サービス「Vingow(ビンゴー)」、ニュース速報特化型サービス「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」など消費者向けのサービスを展開している印象が強いが、なぜ、法人向けのサービス開発に至ったのだろうか?

「我々は『ビジネスとジャーナリズムの両立』というビジョンを掲げ、その実現を目指しています。昨今、ニュースキュレーションアプリが登場したことで収益をあげる構造はできあがってきていますが、一方で報道機関やメディア運営は典型的な労働集約型でコストがかかったまま……。そんな状況に対し、緊急情報の収集を全て機械化することで、情報収集や取材のコストを削減できると思い、FASTALERTの開発に着手しました」(米重氏)

在京TV局や大手報道機関から高い評価

そして、2016年9月に有償ベータ版として公開。約半年の運営にもかかわらず、すでに日テレ、テレ朝をはじめとした複数の在京TV局、共同通信社、産経デジタルなど多数の大手報道機関で正式に採用されるなど実績も出ている。

この領域には米Dataminrのほか、日本のデータセクションSpecteeなどが先行して参入している。後発のサービスながらここまでの実績が出せた理由について、米重氏は「検知スピードの速さと情報の網羅性」を挙げる。FASTALERTはAIの活用に加え、ニュース速報アプリとして実績のあるNewsDigestのシステムも活用しているため、ノイズの少ない情報をスピーディーに検知してくる。報道機関からは「ニュースになる前の情報を知れるので、いち早く取材対応ができる」との声も挙がっているという。

実際、2016年10月に発生した東京の大規模停電、2016年12月に発生した糸魚川市大規模火災の第一報はFASTALERT経由だったそうだ。

また、情報の網羅性については国内だけでなく海外の緊急情報を検知する。そのため報道機関にとっては非常に重宝するサービスになっているとのこと。導入企業数は非公表とのことだったが、かなり高い評価を得ているそうだ。

今後について、米重氏は「ライフラインとして機能するプラットフォームを目指していく」と語った。