【レビュー】「静かさ」も魅力、Mac Studioは卓上のモンスターだ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

最高性能のMacである「Mac Studio」のレビューをお届けする。

感想はシンプル。「重いがデカくない」「パワフルだが静か」もう、この2つに尽きる。

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

Appleシリコン世代としてのハイエンドを目指した製品だが、それにふさわしい性能になっている印象だ。

Mac miniを「ハイパワー化するために巨大にした」ような設計

その昔、「Power Mac G4 Cube」という製品があった。

パワフルでコンパクト、ディスプレイとセットでクリエイターが使うことを想定したマシンだった。そうそう、あのディスプレイも「Studio Display」だった。

Mac Studioは立方体ではないが、パッケージが見事に「立方体」でちょっと昔を思い出させる。

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

中身はどちらかというとMac miniに近い。キーボードやマウスは付属せず、入っているのは本体と電源ケーブルくらいとシンプルだ。

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の設置面積はMac miniと同じだが、高さ9.5cmとかなり分厚くなっている。そして、意外なほどの重さに驚く。今回試用したM1 Ultra搭載のモデルは、重量が3.6kgもあるのだ。Mac miniが1.2kgなので、ちょうど3倍になる。

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

Mac Studioは、M1 Ultra搭載モデルとM1 Max搭載モデルとで重さが異なる。前者が3.6kgであるのに対して後者は2.7kg。その違いは、冷却に使われるファンやヒートシンクが銅製になっているからだという。

Appleの発表会映像を見る限り、Mac Studio内の3分の2程度が冷却機構で占められており、ボディの後ろ側にもかなりの面積の排気口がある。

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

底面にはロゴを囲むように吸気口がある。そういえば、MacBook Proの底面にもロゴが付いているのだが、Appleはこのパターンをハイエンド製品の定番デザインにするつもりだろうか。

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

Mac miniから大きく変わったのがインターフェースだ。

Mac miniは背面に

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2
  • USB Type-A×2

だったが、

Mac Studioは

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×4
  • USB Standard-A×2

になり、さらに前面にも

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2(M1 Max搭載機ではUSB Type-C×2)
  • SDXCカードスロット(UHS-II)

が搭載されている。

「M1 MaxじゃMac Studioの意味が……」と思っている人もいそうだが、単純にインターフェースの増えたMacとして選んでもいいのかもしれない。

特に前面の端子は、今回も試用中にも大変お世話になった。当たり前の話だが、アクセスしやすい場所にあるインターフェースがあるのはとてもありがたい。

速さは圧倒的、コアの数だけ性能アップ

ではパフォーマンスをチェックしていこう。

今回は比較対象として、M1搭載のMacBook Pro・13インチモデル(2020年モデル)とM1 Pro搭載のMacBook Pro・14インチモデル(2021年モデル)も用意している。一部マルチプラットフォームで試せるものについては、自宅で使っているWindowsのゲーミングPC、ASUSの「ROG Zephyrus G14」(2021年モデル、CPUはAMD Ryzen 9 5900HS、GPUはNVIDIA GeForce RTX 3060 Max-Q)での結果も合わせて見ていただきたい。以下、「ROG Zephyrus G14」を便宜上「ゲーミングPC」と呼称する。

まずは定番の「Geekbench 5」から。

CPUについてはシンプルにわかりやすい結果だ。基本的にはCPUコアの数だけ速くなっている。1コアあたりの速度差は、M1とM1 Pro・Ultra、Ryzen 9で当然あるのだが、コア数による速度差を比較すると小さなもの。20コアを搭載したM1 Ultraが圧倒的に速い。

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

同じくCPUの速度をチェックするため、「Cinebench R23」も使ってみた。これはCG演算の速度を測るもので、主にCPUに依存する。

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

こちらの値も、基本的にはGeekbench 5のCPUテストと傾向が同じである。CPUコアの分だけスピードが出ている。

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

他のCPUの結果と比較すると、上にいるのは32コアの「Ryzen Threadripper 2990WX」や24コアの「Xeon W-3265M」といったところであり、もはやコンシューマ向けとは言い難いレベルである。

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

GPUについてはどうだろう?

まず、Geekbench 5。こちらはマルチプラットフォーム性を考えて「OpenCL」でテストしている。M1 Ultraがかなり速いが、RTX 3060での値を超えてはいない。

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

ただ、Geekbench 5のGPUテストはGPUの全ての要素を反映する訳ではないので、そちらを考慮して別のテストもしてみた。「3DMark」のマルチプラットフォーム対応テストである、「3DMark Wild Life Extreme」だ。Extremeとあるように、スマホまで想定したWild Lifeの中でもハイパフォーマンス向けである。それを、フレームレート制限をかけない「Unlimited」モードでチェックした。

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

結果は、M1 Ultraの圧勝だ。多くのビデオメモリを活用できることもあり、ソフトの作り方によって相当な差が出るのであろうことが予想できる。

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

じゃあ、実際の作業ではどのくらいの速度になるのか?

ここでは、Macのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDR撮影の映像をグレーディング・手ぶれ補正などの処理を施した上で2分51秒に編集した映像を、同じく4KのH.264形式で圧縮して書き出すまでの時間を計測した。これまでのグラフとは違い、「棒が短いほど性能がいい」のでその点ご注意を。また、アプリの関係上、Macのみでの比較になる点をご了承いただきたい。

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

こちらも、当然ながらM1 Ultraは速い。そこそこ重い処理なのだが、M1の半分の時間で終わっている。M1とM1 Proでは12%しか速度が変わっていないが、M1とM1 Ultraの比較では93%以上高速になっている。この差は大きい。

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

性能は重要、より重要なのは「速くてしかも静か」であること

ただ、テスト中に感じたのは「速さ」だけではない。

どのプロセッサも負荷の高い処理を長く行うと発熱が大きくなり、冷やすためのファンの動作も大きくなる。

M1シリーズはモバイル向けプロセッサが出自ということもあってか、比較的発熱が小さい傾向にあり、ファンなども回りにくい。だが、ベンチマークのようなことをすると、どうしてもアルミボディが熱くなってくる。

ゲーミングPCについてはいうまでもない。特に今回のテストは、パフォーマンス重視の「TURBOモード」設定で行なったため、発熱もファンの動作音も大きい。掃除機並み(55dB程度)の音になることも珍しくない。

一方、Mac Studioは全然音がしない。

アクティビティモニタで負荷を見ると処理負荷は天井に張り付いている状態なのに、ファンの回る音もほとんどしないし、排気もそこまで熱くはなっていない。手を排気に当てると、ほんの少し暖かい程度。これは、プロセッサの発熱が少ないだけでなく、相当に排熱機構が優秀ということだろう。

Mac Studioは高価な製品で、ここまでのパフォーマンスを必要とするのは一部のプロフェッショナル・ワークだろう、とは思う。

だが、高い負荷をかけてもこれだけ静かである、というのはそれだけで大きな魅力である。誰だって、作業を騒音や発熱で邪魔されたくないはずだ。

プロセッサとGPUの組み合わせによって、もっと高性能なPCを作ることもできると思う。PCアーキテクチャのサーバーなどではそうした機器が必要になる。だが、ここまで静かで「普通に卓上に置いて使えるのに、パワフル」な製品は少ない。Mac Studioが圧倒的に優れているのはその点だ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

今晩午前3時からのアップルイベントで期待される新製品、iPhone SE、MacBook、iPad Airそして新チップ

一連のバーチャルイベントについていえることは、メーカーが我々に近づく確かな方法を手に入れたということだ。古き良き出張の時代、大きなショーの数週間前には、Palo Alto Travelodge(パロ・アルト・トラベロッジ)(良好のWi-Fiと、そうでもない朝食)の宿泊を予約したものだ。バーチャルへの移行は、企業が社員にパソコンの前で1時間過ごさせるために、スターの登場を約束する必要がなくなったことも意味している。

最近のニュースに流れる絶え間ないリークからは、Appleにとってかなり控えめなイベントが予想される。その予想は、会社の標準的リリース間隔によっていっそう増強される。Appleは2021年秋のイベントに、それはそれはたくさんの商品を詰め込んだ。そこにはiPhone 13、Apple Watch 7、iOS、そしてショーの人気をさらったいくつかのiPadがあった。半導体の遅れとホリデーシーズンが完璧に重なり合って、最近の記憶の中で最大のAppleイベントになった。

画像クレジット:TechCrunch

というわけで今週はiPhone 14もApple Watch 8もない。それでも新しいiPhoneは見られそうだ。Appleが新しいiPhone SEを出す期限を過ぎているというわけではない。なぜならこのお手頃端末のリリース間隔は、よくいって不定期だから。今回は、2016年と2020年に続くSE第3世代になる。お手頃iPhone(前世代は399ドル、日本では4万9800円からだった)は過去数年にわたって多くのファンを獲得し、その1人でもあるTechCrunchのDevin Coldewey(デビン・コールドウェイ)記者は、かつて同製品の「死」を悼んだこともあった。

このラインは、Appleの歴史的工業デザインの最後の痕跡を残す商品としてよく知られている。iPhoneがフルスクリーンになって切り欠きが付く前のデザインだ。長年のApple予言者であるMing-Chi Kuo(ミンチー・クオ)氏は、2年の空白の後にこの端末が戻ってくることをいち早く指摘した1人だ。同氏は、ほとんど変わらないデザイン、A15チップ、ストレージは64~256 GBと伝えている。しかし、ショウの呼び物は、入門レベル機種への5Gの追加だ。

iPadが再び話題をさらうかもしれない。第5世代のAir(エア)が予想されており、2021年のmini(ミニ)から多くの特徴を引き継ぐだろう。iPhone SEと同じく、この機種も2020年以来改定されていない。オプションの5G、A15チップ、カメラハードウェアとソフトウェアのアップグレードなどが噂されている。

画像クレジット:TechCrunch

2021年は2020年版M1チップのスーパーチャージ版が2種類登場したが、2022年のどこかの時点でM2がやってくる可能性が高い(イベントのタイトル、Peek Performanceにあるパフォーマンスのチラ見せはこれのこと?)。Appleが新しいチップを発表するとすれば、まず間違いなく新しいMacハードウェアと一緒だ。2022年、噂の先頭を切っているのは、薄くて軽い長年の人気機種、MacBook Airの新バージョンだ。Mac Miniも、そして大きくてよりPro(プロ)ライクなiMacも期待されている。

画像クレジット:TechCrunch

噂の最後を飾るのは27インチのAppleディスプレイだ。現在同社が販売している32インチPro Display XDRのハードルを下げるものだ。ここ数年で世界の大部分がリモートワークに移行していることから、この種の製品の需要が高まっていることをAppleは間違いなく知っている。しかし5000ドル(日本では58万2780円)という価格はどうみてもほとんどの人の手には届かない。

最後に、この種のハードウェア・イベントには、いくつかのOSアップデートが必ずついてくる。macOS、iOS、およびiPadOSのアップデートが予想される。

イベントは米国時間3月8日太平洋時刻午前10時、東海岸時刻午後1時(日本時間3月9日午前3時)に始まる。それでは現地でお会いしましょう。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWSが新たにM1搭載Mac miniをクラウド化

米国時間12月2日に行われた「AWS re:Invent」カンファレンスの基調講演で、アマゾンのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTO兼副社長は、AWSがEC2コンピュートサービスの一部としてM1 Mac miniを提供することを発表した。

AWSが初めてMac miniを同社のクラウドに導入したのは、2020年のことだった。これらのminiは、Thunderboltポートを使ってAWS Nitro Systemに接続され、他のインスタンスと同様にEC2クラウドで利用できるようになる。ここで使用されているミニは、標準的なM1チップ8コアマシンで、16GiBのメモリを搭載している。

新しいインスタンスは、2つのリージョン(米国西部のオレゴン州、米国東部のバージニア州北部)で、1時間あたり0.6498ドル(約73.51円)で提供され、AWSのSavings Planによる割引もサポートされる。AWSは、これらの新しいマシンが「iPhoneおよびMacアプリ構築のワークロードにおいて、x86ベースのEC2 Macインスタンスと比較して、価格パフォーマンスが60%向上している」と約束している。

画像クレジット:AWS

これらのマシンのユースケースは、今回のローンチでも変わらない。初代のMacインスタンスと同様に、ここでのアイデアは、デベロッパーがMac OSやiOS用アプリケーションをビルドしてテストするためのハードウェアを提供することだ。

最初のMacインスタンスが発売されたときには、すでにM1 Mac miniが展開されていたことを考えると、今回の発表はほとんどの人にとって驚きではないだろう。当時、AWSはM1マシンが「2021年初頭」に登場すると述べていたが、展開するには少し時間がかかったようだ。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

Apple M1搭載Mac miniに「10ギガビット Ethernet」オプションが追加、価格は税込1万1000円

アップルがApple M1搭載Mac miniに「10GB Ethernet」オプション追加、価格は税込1万1000円アップルが21日(日本時間)に開催した「Spring Loaded」イベントでは新型iMacなどが発表されましたが、その後ひそかにM1 Mac miniに10ギガビットEthernetオプションが追加されました。

上記のイベント終了後、公式オンラインストアでM1 Mac miniをカスタマイズする際に、標準のギガビットEthernetオプションよりも高速な「10ギガビットEthernet」を注文できるようになりました。このオプションは、2020年末にM1 Mac miniが販売開始された当初は用意されていなかったものです。

アップルがApple M1搭載Mac miniに「10GB Ethernet」オプション追加、価格は税込1万1000円

10ギガビットEthernetにアップグレードする場合、価格は+1万1000円(税込)。実はM1 Mac mini発売直後からアップル認定サービスプロバイダ向けの部品発注リストに10ギガビットEthernetに対応したロジックボードが掲載されていたことが明らかになっており、何らかの事情でストアでの提供が遅れていた模様です。

日々のWeb閲覧からクリエイティブな協働作業に至るまで、10ギガビットEthernetはスピードや生産性に貢献するはず。新iMacの予約開始は4月30日〜と少し先のため、こちらの方がすぐに役立つアップグレードと言えそうです。

M1 Mac mini

(Source:9to5MacEngadget日本版より転載)

関連記事:
M1搭載Mac miniレビュー、高性能で低価格なデスクトップMacの復活
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple / アップル(企業)APPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021Apple M1(製品・サービス)Mac (製品・サービス)Mac mini(製品)

AWSがMac miniのクラウド化を発表

「AWS re:Invent」2020カンファレンスが212月1日にバーチャルで開幕した。サプライズはMac miniがクラウド化された(AWSブログ)ことだ。具体的にはEC2に最新のMac miniインスタンスが追加された。料金としては必ずしも安くないが広く一般に公開され、AWSの全サービスが利用できる。

ターゲットとなるユーザーは(AWSがターゲットを絞っているのはこのサービスだけだが)は、MacとiOSアプリ用をクラウド上でビルドしテストする環境が必要なデベロッパーだ。ただしここで重要な点は、AWSのこのサービスにアクセスするとフル機能のMac miniをリモートで利用できることだ。デベロッパーはアプリ開発関連に限らず、あらゆる種類のユースケースを発見するに違いない。

最近リリースされたM1 Mac miniのスペックを考えると、AWSが利用するハードウェアは(少なくとも現在のところ)、6物理コア、12論理コア、32GBのメモリを備えたi7マシンだ。AWSは、Mac OSに組み込まれたネットワークオプションを使用して、クラウド上のMacをEC2のベアメタルであるNitroシステムに接続する。つまりネットワークとストレージへの高速アクセスが可能になる。AWSのブロックストレージをMacインスタンスにアタッチすることもできるわけだ。

当然だがAWSチームはApple(アップル)のM1 Mac mini自体をクラウドに導入することにも取り組んでいる。私が取材したところでは「2021年初め」に利用可能とする予定だという。2021年上半期に展開されるのは間違いない。ただしAWSもアップルもどちらも、Intelチップのマシンの必要性がすぐになくなるとは考えていない。実際、デベロッパーの多くは相当先までIntelマシンでテストが実行できることを望んでいるはずだ。

AWSのEC2担当副社長、David Brown(デビッド・ブラウン)氏は取材に対して「このサービスが提供するのは一切変更されていないMacm mini」だと語った。AWSがオフにした機能はWi-FiとBluetoothだけだ。ブラウン氏によればminiは、AWSの1Uラックにちょうどうまく収まるという。「Mac miniは無造作に積み重ねるわけにはいきません。実は我々のサービススレッドにマッチし、AWSが利用するカードなどもすべてにうまく対応します。データセンターのネットワークへの組み込みはMac mini付属のポートに接続するだけでした」とブラウン氏は説明した。AWSにとってこうしたサービスがチャレンジであったことを認めた。以下の動画でも冒頭にMac miniを積んだパネルトラックが登場するが、クラウドでMac miniのインスタンスを提供する唯一の方法はデータセンターに大量のアップルのハードウェアを設置するしかなかったわけだ。

画像クレジット:AWS

ここではAWSがハードウェアを仮想化していない点が重要だ。ユーザーがAWSのMac miniにアクセスするときは他の人と共有していない自分だけのデバイスにフルアクセスする。「AppleストアでMac miniを買ったのと同等のユーザー体験とサポート実現したかったのです」とブラウン氏は述べた。

他のEC2インスタンスとは異なり、新しいMacインスタンスを起動する度に、24時間分の料金を前払いする必要がある【アップデート:AWSの広報によれば、これは前払ではなくコミット(料金の確定)だという】。最初の24時間以後は他のAWSインスタンスと同様、秒単位で課金される。

具体的な料金は1時間あたり1.083ドル(約113.05円)で、秒単位で課金が可能だ。マシンを起動して24時間実行すると約26ドル(約2,714.11円)程度かかる。これは小規模なMac miniクラウドプロバイダーの料金よりだいぶ高い。こうしたプロバイダーの場合エントリーレベルのデバイスでは月額60ドル(約6264円)以下だ(RAM32GBのi7マシンでは約2〜3倍となる)。

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

これまでMac miniはホスティングサービスの中でもかなりニッチな市場だったが、それなりの需要があり、Mac Stadium、MacinCloud、MacWeb、Mac Mini Vaultなどがシェアを争っていた。

小規模事業者は価格において優位性はあるものの、AWSの参入で手ごわいライバルが出現したことになる。AWSのMacを使えばデベロッパーはポートフォリオに含まれるすべてのサービスにAWS内でアクセスできるという。ブラウン氏はこう説明する。

処理のスピードやサービス粒度は(他のMac miniクラウドプロバイダーのような)サービスよりAWSのほうがずっと優れています。たとえば新たに契約した場合、マシンを起動するまでにプロビジョニングに数日かかります。小規模なプロバイダの場合、人の手でマシンをラックに入れ、接続のためのIPアドレスを用意しなければならず、ユーザー自身がOSを管理する必要があります。一般的に、契約期間は最低1カ月であり、ディスカウントの適用を受けるためにはもっと長い期間の前払いが必要になります。これに対してAWSの場合は要求後、わずか数分でマシンを起動しフルに利用できるようになります。100台、いや500台必要だとしてもリクエストするだけでいいのです。もう1つ大きな違いはエコシステムです。AWSが提供する200種類以上のサービスがすべてMac miniから利用できます。

またブラウン氏は、AWSではデベロッパーがさまざまなマシンイメージを横断的に利用できることを強調した。現在、macOS MojaveとCatalinaのイメージを提供しており、Big Sureのサポートも「将来提供される」予定だという。またデベロッパーは必要に応じて独自のマシンイメージを作成、保存できる。つまり新しいマシンを起動したときに既存のマシンイメージを再利用できる。ブラウン氏はこう述べた。

現在、我々のほとんどすべての顧客はiPhone、iPad、Apple TVその他なんであれAppleデバイスとAppleエコシステムをサポートする必要があります。そのニーズに本当に応えるサービスを求めています。我々が解決に力を入れて入る課題はこういうものです。つまり「うちの会社ではサーバー側のワークロードをすべてAWSに移した。それはいいが、ビルドのプロセスの一部がローカルに残っている。クラウドにMac miniがなかったり、あっても自分でメンテナンスしなければならない。AWSが全部引き受けてくれればいいのだが」。

このサービスのAWSのローンチカスタマーはIntuit、Ring、モバイルカメラアプリのFiLMiCだ。Intuitのプロダクト開発担当バイスプレジデントのPratik Wadher(プラティック・ワダー)氏は次のように述べている。

よく知られているEC2インターフェースとAPIから利用できるEC2のMacインスタンスを利用することで、既存のiOSおよびmacOSのアプリのビルドとテストのプロセスをシームレスにAWSに移行することができました。これによりデベロッパー生産性が大きく向上しました。当社独自のデータセンターと比較してパフォーマンスは最大30%向上しています。処理能力拡張における柔軟性、複数ゾーンを利用してノンストップで利用できるセットアップの効果によるものです。現在、我々はプロダクトのビルドの80%をEC2 Macインスタンスで実行しています。この分野でのAWSのイノベーションに期待し、楽しみにしています。

新しいMacインスタンスは多数のAWSリージョンで利用できる。現在、US East(バージニア州北部、オハイオ州)、US West (オレゴン州)、Europe(アイルランド)、Asia Pacific(シンガポール)が含まれているが、他のリージョンでも間もなく利用可能となる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AWS re:InventAWSAmazonMac miniApple

画像クレジット:AWS

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(翻訳:滑川海彦@Facebook