「エンジニアの立場でスタートアップの成功確率を上げたい」―CTOという仕事を語り合う

2015年3月9日に開催したTechCrunch School第7回、「CTOというキャリアを考える」では、藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)、舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)、増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)が集まり、CTO(最高技術責任者)にまつわる話題を語り合った。モデレーターを務めたのは西村賢(TechCrunch Japan編集長)である。

3人のCTOが語った「3つの数字」

3人のCTOに西村編集長から出されたのは「3つの数字」で自己紹介してほしいというお題。

グリー藤本氏が挙げた数字は、「3→1788」「10→ ?」「1→ >10」の3つ。最初の数字は従業員数だ。藤本氏が関わりはじめた10年前のグリーは3人の会社だったが、今の従業員数は4桁だ。2番目の数字はサーバ台数。藤本氏が参加した当時は10台だったが、今では「未公表ですが、5桁はいってます。だからバカスカ壊れます」。3番目の数字は利用しているプログラミング言語の種類だ。創業当時はPHPだけだったが、今や10以上の言語を使っている。西村編集長が「言語の割合は?」と聞くと、藤本氏は「PHPがやっぱり多い。C#、JavaScript、Objective-C、Javaとか。あとはRubyとか。C/C++もちょこちょこあったり」と返す。

クックパッド舘野氏が挙げた数字は、「3000→18992」「1→15」「1→5」の3つ。最初の数字は、同社のテスト数の推移だ。2010年、舘野氏が入社した時にはテスト数は約3000だったが、直近の数字は1万8992まで増えた。2番目の数字はサービス数、3番目の数字はサービスを提供する国の数の変化だ。サービス数はレシピサイト1種類だけではなくなり、サービスを提供する国も、アメリカ、スペイン、インドネシア、レバノンが加わった。

トレタの増井氏は「『IT芸人』か『フログラマー』で検索してください。私の記事が上位に出てきます」と笑いを取りつつ、「4社」「2000社」「3倍」と数字を挙げる。1番目の「4社」は増井氏が創業に関わった会社の数だ。大学時代に起業を経験。その後フリーランスになるが、米国に渡りBig Canvas社を立ち上げ、日本に戻ってmiilの創業に関わった。今のトレタは4社目ということになる。「さすがに少しずつ賢くなってきている」と話す。2番目は、飲食店の予約サービスを展開するトレタの顧客数だ。3番目は、増井氏のCTOとしてのミッションとして「エンジニアの数を3倍にする」目標があることから来ている。

CTOの役割とは結局なんなのか?

この「つかみ」の後で西村編集長が聞き出していったのは、3社3様のそれぞれの段階にあるスタートアップ企業にとって、CTOとはどのような役割なのかということだ。今や従業員数4桁の組織となったグリー藤本氏はこう話す。「300人のエンジニアがいるとする。普通にやると(組織を作ると)4レイヤーぐらいになる。これぐらいになると、信頼できる人にこのセクションを任した! となる」。直接コードを書く役割、エンジニアのマネジメントの役割は信頼できる人に任せる形となっていく。

一方、クックパッド舘野氏は、最近はJavaコードを集中的に書いているという。フロントエンドとなるAndroidアプリについて、もっと知るためだ。同社はもともとWebに強いエンジニアを抱えていたが、そのためネイティブアプリでは出遅れたとの反省があるという。今はモバイルアプリを重視する流れにある。

トレタ増井氏は、創業期のCTOの役割について「最初のエンジニアは、とても大事だ」と話す。会社の創業の時期には、CEOとCTOは密接な関わりを持つが、その人間関係が、そのままその後の会社とエンジニア達との関係に引き写されていく。起業家はエンジニアリングをどこまで理解しているべきか、という問いかけに対しては、「コードを書ける必要はないが、エンジニアリングへの理解、信頼は必要」と語る。

パネルディスカッションの終盤、グリー藤本氏は「日本のスタートアップの成功確率がもっと上がるようにやっていきたい」と語った。連続起業家や、CTOとしての参画経験が3社というような人が少なからずいるシリコンバレーに比べると、日本では起業経験を伝える人材の層が薄い。「起業の勝率、ふつうに負けるよなと」。藤本氏がTechCrunchのCTO関連イベントの登壇を引き受けたのも、そうした思いからだそうだ。

ところで、今回のTechCrunch Schoolが開催された会場は「Tech Lab PAAK」だった。アップルストア渋谷と同じビルにある、リクルートが運営する会員制コミュニティスペースだ。自由に使えるスペースで、卓球台もあれば、もちろんWiFiもある。このようなスペースの運営はリクルートの業務と直接の関係がある訳ではないが、麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)は「こういう場で世の中を変えるプロダクトが生まれることが、長期的にはリクルートの利益になると信じてやってます」と語る。現時点で40組100人ぐらいが登録しているが、まだ会員になれる余地はあるそうだ。

もう1件、リクルート関連の情報発信があった。リクルートが2012年に買収した求人情報検索サービス米Indeedの東京オフィスで働くエンジニアである濱田卓さんと西村編集長とのミニトークセッションだ。Indeedは、リクルート本体とは全く異なる米国のソフトウェア開発会社のカルチャーのまま、東京オフィスを運営している。濱田氏も、東京大学大学院修士課程で情報科学を学んだが、知名度が高い会社を蹴ってIndeedへの就職を決めた。「ミリ秒単位で性能を改善していこうという組織」である点が楽しいと話す。仕事中にビールを飲んでも、誰も文句を言わない素敵な職場だそうだ。

最後に、今回のイベントの印象をまとめておきたい。今回の「お題」はCTOだった。CTOはエンジニアのボスであるだけではなく、経営陣の一員でもある。エンジニアを理解して信頼する経営者が必要とトレタ増井氏が話すように、経営を理解して参加するエンジニアも求められているのだ。クックパッド舘野氏は最近は経営書を良く読んでいるそうだ。グリー藤本氏も、技術基盤やエンジニアのチームのことだけでなく、事業への関わりについて考えていると話す。エンジニア文化と経営の両方を理解するCTO経験者、CTO候補者がもっと大勢出てくることが、日本のスタートアップの「勝率」アップのためには必要だろうと感じたイベントだった。


TechCrunch School第7回は3月9日開催-テーマは「CTOというキャリアを考える」

2014年1月から不定期で開催しているイベント「TechCrunch School」では、これまでに「学生の起業」、「スタートアップのマーケティング」、「大企業からのスピンアウト」、「IoT」、「シェアリングエコノミー」などのテーマでセッションを繰り広げてきた。7回目の開催となる次回は、3月9日月曜日午後7時から「CTOというキャリアを考える」というテーマで開催する。参加は無料で、本日よりこちらで参加登録を受け付けている。

会場となる「TECH LAB PAAK」

テック系のスタートアップに欠かせないエンジニアリングチーム。このエンジニア集団をリードし、ときにはゼロから1人でチームを作り上げるのがCTOだ。会社が成長した暁には、経営陣の1人として技術面から多くの経営判断に加わりつつ、同時にコードを書き続けることも珍しくない。

日本でスタートアップ企業が多く誕生しつつある今、CTOという役職が注目されつつある。今後、あらゆる業種においてソフトウェアの果たす役割が大きくなっていくだろうから、この傾向はますます加速するだろう。外部から「ソリューション」を調達したり、開発を外部へ委託する情報部門やCIOではなく、自らビジネスのコアになるシステムやアプリを作り出すチーム体制への移行が時代背景としてあると思う。

そう考えると、エンジニアとしてのキャリアを考える上で「CTO」というのは何もスタートアップ企業やネット企業だけに限った話ではなくなってくるのだろう。CTOとしてキャリアを積み、複数のスタートアップの立ち上げに携わる「シリアルCTO」というキャリア形成も増えつつあるように見える。

グリー、クックパッド、トレタのCTOが登壇

3月のTechCrunch Schoolでは、CTOというキャリアに焦点をあてて、経験豊富な注目CTOたちに、ざっくばらんにエンジニアリング、経営、スタートアップというテーマで語っていただこうと思っている。

登壇者となる3人のCTOは、グリーの藤本真樹氏、クックパッドの舘野祐一氏、トレタの増井雄一郎氏だ。3人ともエンジニアコミュニティでは、よく知られているが、改めて簡単にご紹介したい。

グリーの藤本CTOは、創業初期から同社プラットフォームを支えてきたCTOだ。マンションの1室からスタートして1000〜2000人規模の組織となる10年間を、CTOという立場で見てきた人は日本では多くないだろう。これまでを振り返りつつ、今後CTOとして取り組んでいきたい領域やチャレンジについて聞いてみたいと思う。クックパッドの舘野祐一CTOは、RubyやJavaScriptのコミュニティでも良く知られたエンジニアで、2010年クックパッドへ入社。技術基盤やビッグデータ基盤の開発、構築を行い、2012年に技術部長、2013年のエンジニア統括マネージャを経て、2014年2月からクックパッド執行役CTOとなった人物だ。経歴から分かる通り、1人のエンジニアからCTOへというキャリアを歩んでる。舘野氏にはエンジニアにとって、マネジメントやビジネスを理解することの意味ということをお聞きしようと思っている。トレタの増井雄一郎CTOは、料理写真共有サービスの「ミイル」の元CTOで、現在は店舗向け予約受け付けサービスのトレタのCTOとして活動している。立ち上げ期のスタートアップ企業に関わるエンジニアという視点から話を聞ければと思う。

今回の会場は東京・渋谷の「TECH LAB PAAK」

さて、これまでTechCrunch Schoolは基本的にTechCrunchのオフィスが入居している東京・末広町の3331 Arts Chiyodaで開催していたが、今回は前回同様にリクルートホールディングスが東京・渋谷に開設したばかりの会員制スペース「TECH LAB PAAK」で開催する。

TECH LAB PAAKは入会審査ありの会員制だが、施設自体は会員であれば無料で利用できる。会員になれるのは「スペースを通じてみずからの持つスキルを深めたり、情報共有したりしたい」「技術やアルゴリズムの研究・開発に取り組んでおり、コラボレーションして発展させたい」といった思いを持つ個人やチームで、同社が定期的に開催する審査に通過する必要がある。リクルートホールディングスいわく、「本気でテクノロジーで世界をよくしたいと思っている」「イノベーションを起こすスキルを持ちながら、リソースが不足している」という人の応募を待っているとのこと。当日はその辺り話もRecruit Institute of Technology戦略統括室 室長の麻生要一氏からお話いただける予定だ。

TechCrunch School #7
「CTOというキャリアを考える」

【開催日時】 3月9日(月曜日) 18時開場、19時開始
【会場】 東京・渋谷 TECH LAB PAAK (地図)
【定員】 80名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 CTOもしくはCTOに準じるエンジニア、もしくは今後CTOを目指したいエンジニア
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【内容】
19:00〜19:05 TechCrunch Japan 挨拶
19:05〜20:05 パネルセッション「CTOというキャリアを考える」
パネリスト
藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)
舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)
増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)
モデレーター
西村賢(TechCrunch Japan編集長)
20:05〜20:20 講演セッション「リクルートが考えるオープンイノベーションとその取り組みについて」
麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)
20:20〜20:30 ブレーク
20:30〜22:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

TechCrunch School第4回は5月29日開催–テーマは「大企業を飛び出してスタートアップの世界に飛び込んだ理由」

1月から開催しているイベント「TechCrunch School」。3月に開催した第3回「スタートアップ企業のマーケティング戦略」は、天候にこそ恵まれなかったが100人超に参加頂くことができた。

そして5月29日木曜日の夕方6時から、これまでと同じく東京・秋葉原(末広町)で第4回となるイベントを開催する。今日から参加申し込みの受け付けを開始したのでお知らせしたい。

今回のテーマは「大企業を飛び出してスタートアップの世界に飛び込んだ理由」。前回はスタートアップ企業のマーケティング担当者やCMO、起業家などを対象にしたが、今回は大企業から中小企業までに勤めつつ、スタートアップを立ち上げたい、スタートアップに参画したいと考えている人。大企業からの内定を得ているが、スタートアップに参加することを考えている学生、さらにはそういったスタートアップにに挑戦したい人たちと出会いたい、一緒に働きたいと考えているスタートアップの起業家や人事担当者らを対象にしたい。

今回はゲストスピーカーとして、KAIZEN Platformの共同創業者でCEOの須藤憲司氏、freee代表取締役の佐々木大輔氏、みんなのウェディング代表取締役社長の飯尾慶介氏の3人をお呼びしている。

須藤氏は、新卒でリクルートに入社。マーケティングや新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立上げ。リクルートマーケティングパートナーズで最年少の執行役員として活躍したのちに退職し、KAIZEN platformを創業した

リクルート時代から広告の最適化に取り組んできた同氏だが、KAIZEN platformでは、A/Bテストの実行と、テスト向けのクリエイティブ制作のクラウドソーシングを組み合わせた「planBCD」を展開している。また最近では元グーグルで、広告営業部門の立ち上げ、業界営業部門の立ち上げと責任者、広告代理店事業の責任者を歴任した小川淳氏や、グリーおよびGREE Internationalで、ゲームやアドテクノロジー分野のプロダクトマネジメントを手がけた瀧野諭吾氏などの参画を発表。さらに500万ドルの大型調達を実施して米国を中心に展開を本格化するとのこと。イベントでは、大企業とスタートアップの違いから、優秀な人材の“口説き方”までを聞いていきたいと思う。

またfreee佐々木氏は、大学在学時よりインタースコープ(経営統合を経て、現:マクロミル)にてリサーチ集計システムや新しいマーケティングリサーチ手法を開発。卒業後は博報堂、CLSA キャピタルパートナーズを経て、ALBERTの執行役員に就任。その後2008年にGoogleに参画し、国内のマーケティング戦略立案やGoogle マップのパートナーシップ開発、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括を担当したのちに退職。2012年7月にfreeeを創業した。

2013年3月にサービスを開始したfreeeだが、現在のユーザーはすでに7万事業者以上。Windows XPのサポート期間終了や消費税率の変更なども追い風となりその数はさらに増加中だという。また直近には8億円の資金調達も発表し、機能強化やアジア進出についても準備しているという。以前、佐々木氏に起業の経緯を聞いた際、前職で中小企業との接点があったことからその課題を知ったのがきっかけだと語っていたが、イベントでは、Googleを飛び出して起業した理由や、過去の経験がスタートアップにどう生きているかについて聞いていきたい。

飯尾氏は、1999年にトーハンに入社。子会社直営店舗の店長、スーパーバイザー職などを経て、2006年にディー・エヌ・エーに入社。ECアドバイザー職を経て、社長室の新規事業としてウェディング情報の口コミサイト「みんなのウェディング」の立ち上げに携わる。その後、Mobageのオープンプラットフォーム立ち上げなども経験したのち、2010年10月にスピンオフ。みんなのウェディングを設立。同社は2014年3月に東証マザーズ市場に上場した。

「大企業の新規事業を持ってスピンオフして、上場を目指す」というIT系スタートアップはそう多くない。例えばこれが社内の事業として展開していたのであれば、このスピードでの上場を実現できていなかったのかもしれない。飯尾氏には、大企業から出て自らのサービスに注力した意味やその成果、さらにはスピンオフで得た経験や知識について聞いていきたい。

前回に引き続き、今回のパネルディスカッションでは、会場でのみ聞ける「オフレコタイム」を設ける予定だ。プレゼンテーションの模様は記事や動画でも紹介する予定だが、会場に来て頂いた人たちに限定して、登壇頂く起業家の生の声を届けたい。

今回は1人3000円の有料イベントとなる。19時半以降の交流会では食事とドリンクも用意するので、是非早めにお申し込みをいただければと思う。

TechCrunch School #4
起業志望者注目!
「大企業から飛び出してスタートアップの世界に飛び込んだ理由」
【開催日時】 5月29日(木) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 100名程度
【参加費】 3000円
【参加資格】 起業を志す、もしくはスタートアップに興味のある大〜中小企業の社員および、学生の方。スタートアップへの参画を希望する人材と出会いたいスタートアップの起業家、CxO、人事担当者
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【内容】
18:00〜18:05 TechCrunch Japan挨拶
18:05〜18:50 講演セッション
須藤憲司氏(KAIZEN Platform共同創業者・CEO)
佐々木大輔氏(freee 代表取締役)
飯尾慶介氏(みんなのウェディング 代表取締役社長)
18:50〜19:30 パネルセッション「僕らが大企業を飛び出してスタートアップの世界に飛び込んだ理由」
パネラー:
須藤憲司氏(KAIZEN Platform共同創業者・CEO)
佐々木大輔氏(freee 代表取締役)
飯尾慶介氏(みんなのウェディング 代表取締役社長)
西村賢(TechCrunch Japan編集長)
19:40〜21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp

TechCrunch School第3回は3月5日、受付開始! テーマは「スタートアップ企業のマーケティング戦略」

1月末に第1回を開催したTechCrunch Schoolは早くも第3回目となる。3月5日水曜日の夕方6時から、再び東京・秋葉原(末広町)で100名規模のミートアップを開催する。今日から参加申し込みの受け付けを開始したのでお知らせしたい。

今回のテーマは「スタートアップ企業のマーケティング戦略」だ。TechCrunch Schoolの1回目と2回目は大学生・大学院生を対象としていたが、今回はスタートアップ企業のマーケティング担当者やCxO、中でも特にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の肩書きを持つ人、そうした役割を設置する必要性を感じている起業家などの参加をお待ちしている。

今回はゲストスピーカーとして、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスの「PR TIMES」でマーケティング本部アカウントプランナーを務める千田英史氏、自動家計管理・資産管理ツールを提供する「マネーフォワード」代表取締役社長でCEOの辻庸介氏(ブログ)、日本最大級のクラウドソーシングサイト「クラウドワークス」の代表取締役社長でCEOの吉田浩一郎氏(ブログ)の3名をお呼びしている。

千田氏には今どきのPRの成功事例を国内・国外でご紹介頂き、どういったPR手法が存在していて、なにがトレンドなのかといったことをお話し頂く。ネット上のバズ(シェア)によって爆発的に成功したキャンペーンの話など、昨今のトレンドが感じられるようなトピックをお話し頂けると思う。

クラウドワークス吉田浩一郎CEO

クラウドワークスの吉田氏はマーケティングについて「お金で広告を打ってもダメで、共感を得られるような文脈づくりが重要」と言う。革新(イノベーション)とは商品を見直すことよりも関係を見直すことが重要といい、クラウドソーシングについても「コストダウンが本質ではない。個を活かした「共創」によるモノ作りの始まりである」という風に捉えてメッセージを出しているという。企業のCSRっぽいキレイすぎる文言という気がしなくもないけれど、若い頃にビジョンや夢のない起業では人がついて来ない(裏切られた)という苦い経験したという吉田氏だからこその、本気の理念なのだろうと思う。使ってみれば分かるが、確かにクラウドソーシングというのは無味乾燥な発注・下請けという関係などではない、ということが多い。それがサービスを使ったことがない人に伝わらなければマーケットは広がらない。

マネーフォワードの辻氏も「共感」という言葉を使う。「KPIだけ見ていてもダメ。KPIからは共感が見えてこない。数字だけを見ていると(正しいことや、やるべきことを)やってるよう見えてしまう」という。これは私も同感だ。最近のネットのサービスは毎日のようにメールを送り付けてくるサービスがあってウンザリすることが増えた。数字だけ見ていれば、再訪率は上がるように見えるだろう。しかし、画面の前でウンザリしているユーザーがいることを想像しているだろうか、と感じることがある。

マネーフォワード辻庸介CEO

さて、辻氏は新聞やテレビといったマスメディアから、TechCrunchというニッチな専門媒体まで幅広いメディアの人間と付き合っていく中で、どういう頻度、ネタでプレスリリースを出すべきか、どういうストーリーにすれば記事になるのかといったことを考えながらマーケティング戦略を立てているという。「一般紙の記者は担当ジャンルが2、3年で変わるので、知識が追い付かないこともある。だから人間関係と同じで、分かってくれていると思ったら誤解されてたということも起こる」という失敗談なんかもパネルディスカッションでは共有してくれるだろう。ここら辺は、TechCrunchとしてもスタートアップ側の皆さんに知ってもらいたいことがあるので、私もそういう話ができればと思っている。

このほか、「C向けとB向けのマーケティングの違い」「スタートアップ企業の社長は自ら客寄せパンダとなるべきか?」「競合サービスとの差別化より市場拡大のメッセージを出すべきか?」といったようなテーマでパネルディスカッションができればと思っている。

さて、今回のパネルディスカッションでは、会場でのみ聞けるトークの時間として「オフレコタイム」を設けようと思う。パネルの模様は動画コンテンツとしてTechCrunch上での公開を考えているのだが、アーカイブに残る前提では話しづらい本音というのがある。

今回も参加は無料。19時半以降の交流会では食事とドリンクも用意するので、是非早めにお申し込みをいただければと思う。

TechCrunch School #3
スタートアップ企業必修!
「スタートアップ企業のマーケティング戦略とは?」
【開催日時】 3月5日(水) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 100名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 スタートアップ企業のCxO、CMO、またはマーケティングに携わる方
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【協賛】 PR TIMES
【内容】18:00~18:05 TechCrunch Japan挨拶
18:05~18:20 講演セッション「いまどきのPR成功事例」(PR TIMES 千田英史氏)
18:30~19:30 パネルセッション「スタートアップ企業のマーケティング戦略とは?」パネラー:
千田英史氏(PR TIMES)
辻庸介氏(マネーフォワード 代表取締役社長CEO)
吉田浩一郎氏(クラウドワークス代表取締役社長CEO)モデレーター:
西村賢(TechCrunch Japan編集長)

19:40~21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp


満員御礼! TechCrunch School第1回開催報告と、第2回の申し込み受付開始のお知らせ

TechCrunch Japanでは、1月31日金曜日の夕方に、東京・末広町で「TechCrunch School #1 ベンチャー投資家に学ぶスタートアップ概論」を開催した(告知記事)。ゲストスピーカーとしてクロノスファンド EastVentures パートナーの松山太河氏と、ベンチャーキャピタルファンドANRIのパートナー佐俣アンリ氏のお二人に登壇頂いた。講演、パネルディスカッションとも素晴らしいお話を頂けたし、来場した「起業に前のめり」な学生さん同士の交流も活発だったし、第1回目として盛況のうちにスタートを切れたと思う。申し込みは告知後24時間以内に定員がイッパイになり、想定以上の反響だった。わざわざ京都など東京近郊以外から参加してくれた人も少なくなかった。

クロノスファンド EastVenturesパートナーの松山太河氏

ここで簡単に第1回の開催報告と、第2回の告知をしたいと思う(前回申し込みが間に合わなかった!という人は以下は読み飛ばして申し込みページへゴー!)

「起業か就職か?」の問いに「就職興味ないっす」の声も

「スタートアップ概論」というテーマで学生からの申し込みが一瞬で集まったことも驚いたのだが、もっと驚いたのは当日の参加者の前のめり感だ。

事前アンケートで「起業に興味あり」とした回答は9割を超えていたが、「まあそうは言っても大半は大企業に就職するんだろうけどね」という話を内部ではしていた。ところが、交流会などで来場者と話をしてみると、これが驚くほど誰も彼もが起業を目指しているというし、すでに事業を始めて儲かっているという話や、VCから資金調達を受けている学生さんも来ていた。

例えば、読書の感動を共有するサービスという「Booklap」を提供するProsbee代表取締役CEOの笠井レオ氏はIncubate Camp 3rdの最年少出場者としてVCから資金を得て大学2年生で起業した学生さんだ。せっかくなので会場では前に出てきて自己紹介をしてもらったが、実は2週間前に退学届けを提出したところなのだとか(!)。

forEstの後藤匠氏は、東工大の大学院生。受験参考書などをタブレットで閲覧し、復習や類題探しを最適化できる新サービス「ATLS」(アトラス)を準備中だという話だった。「参考書がどのように選ばれてどのような使われ方をしているのかというデータを出版社に提供してtoB向けに出版コンサルをしたり、個人の学習傾向や苦手分野などの個人データを軸にして他のEdTechサービスを繋ぐハブのようになれれば」と話していた。ほかにも、共同編集型比較表「Wikiparison」を開発する河又翔平氏を始め、スタートアップ企業、あるいは関連企業でインターンをしている学生さんが非常に多かった。

リアルなアドバイスや洞察に満ちたトーク

ベンチャー投資家の松山太河氏には「スタートアップ概論」の講演をお願いしてあったのだが、起業するにあたって本当に大切なことは何か? というお話しを頂いた。シード期の資金調達の存在意義とは何か……というような、どちらかと言えば「型」に関するスタートアップ入門的なお話し以上に興味深かったのは、スタートアップに関わる人々の精神面に関するリアルな洞察やアドバイスのほうだ。

例えば、多くのスタートアップや起業家を見てきた松山氏が、成功のカギとして挙げた3つの要素は、「実力 x 意志の力 x 善悪」だったりする。起業家やチームに実力があるだけではダメで、ほかに意志の力と善悪判断の伴った思い入れのある・なしがスタートアップの成否に強く影響するという。善悪について松山氏は、こう指摘していた。「社会的に求められているもので、社会の問題を解決するために頑張っているという人は強い。プレゼンで魂が入ってくるし、採用でも有利。採用は、その人(起業家)が本気かどうかで決まる面があるから」。意志の力や善悪(社会的意義を起業家自身が強く信じていること)によって実力以上の結果が出せる、というのが長年ベンチャー投資をしてきた松山氏の観察だ。

起業家が人材採用することに関しての生っぽいアドバイスとしては、遠くのスーパーエンジニアよりも身近にいる友だち、という発言もあった。いまどきのネット時代の若者はみんな勉強熱心で耳年増。だから、目が肥えていて人材に対するハードルが上がりがち。若い人は半年ほどで別人になるほど能力を開花させる人もいて伸びしろが大きいので、むしろある時点での能力よりも友だちとしてどうかという人格を見たほうがいいというアドバイスだ。

松山氏によれば、2014年、2015年は資金調達がやりやすい流れになっていて起業環境は悪くないという話。新卒で企業に就職しても初任給は年収でせいぜい400万や500万。自己評価で「切れ者」だと思っているのなら、シードファンドで400万円ぐらい調達し、その次の資金調達で2000万円も集めれば3000万円ぐらいになる。チームメンバーが3人として、それぞれ300万円の年収でやれば3年間は走れる。大学院に行ったと思えば、何らかのアイデアにかけてみる価値はある、という話だった。

実際に起業のリスクには、どういうものがあるのか? 起業と大企業への就職という選択肢の間には、どんな道があり、それぞれのメリット・デメリットは何なのか? そんな「起業か就職か」というテーマを巡って話していた感もあるパネルディスカッションでは、ベンチャーキャピタルファンドANRIのパートナー佐俣アンリ氏も加わって、割とアグレッシブな議論が展開した。

佐俣アンリ氏(左)と松山太河氏(右)

「アグレッシブ」と書いたのは、起業を勧めるトーンが強かったからだが、それには理由がある。一般論としては学生一般に就職より起業を勧めるような大人はいないと思うが、対象によっては話が変わってくる。すでに書いたように、TechCrunch School第1回は、TechCrunch上で告知しただけなのに24時間で参加枠が埋まった。ここにやってきた人たちは一般論で話しかけるべき学生ではない、というのが松山氏や佐俣氏の見立てだったようだ。

さて、当日の講演とパネルの模様は近日動画で公開する準備を進めているので楽しみにしていてほしいのだが、投資家の松山氏は、むしろ来場者同士の交流こそを深めてほしいと語っていて、実際、開催時間を過ぎても会場で話し込む人たちが多かったのは開催サイドとしては嬉しいことだった。

TechCrunch Schoolの第2回のテーマはグロースハック

第1回開催から、まだ時間があまり経っていないのだが、TechCrunch Schoolの第2回目を2月17日月曜日18時から開催することとしたので、お知らせしたい。

第2回のテーマは「グロースハック」。今回も参加者は大学生・大学院生に限らせて頂ければと思う。ちょっと現場寄りなテーマではあるが、スタートアップ企業というのは「起業」の中でも爆発的成長を遂げる企業群のこと。小さく始めて少しずつ成長するスモールビジネスとは異なる。昨今そうした爆発的に規模を大きくするスタートアップでカギと言われているのが「グロースハッカー」という主にユーザー数やトラフィックの成長をドライブする人々である……、というのは恐らくTechCrunch読者であれば説明不要だろう。

TechCrunch Schoolの第2回には海外スピーカーとして、LaunchRockの創業者であるJameson Detweiler氏、そして国内スピーカーとしてファッションSNSの「iQon」を運営するVASILYの金山裕樹氏にご登壇頂けることとなった。

LaunchRockは製品のプレローンチサイトを簡単に設置し、バイラルで拡散するためのツール。Detweiler氏はプロダクトをバイラルに拡散していく際の知見や経験の豊富な人物。学生起業家や起業準備中という人であれば、会場で個別のアドバイスをもらえるかもしれない。一方、VASILYの金山裕樹氏は、Yahoo!JAPANに入社後、Yahoo!FASHIONなどの立ち上げに参画し、その後株式会社VASILYを設立し代表を務めている人物。VASILYではファッションコーディネートアプリのiQonを運営しながら、専門のグロースチームも設置しており、ここでの経験をシェアしてくれるだろう。

パネルセッションでは、顧客獲得のためのモバイルSDKを提供するAppSociallyの高橋雄介氏にモデレーターをお願いして「新しい専門キャリア、グロースハッカーとは?」というタイトルで3人にお話しいただく。グロースハッカーというのはかなり新しい専門職だが、コーディング、データ、デザイン、UX、マーケティングなどの重なる領域におけるグローバルなキャリア、専門性形成ができる職種だ。その実際のところと今後の可能性について、学生の皆さんにとって興味深い話が聞けるのではないかと思う。

また今回のイベントには特別ゲストとして元TechCrunch Japan編集長で、現在B Dash Venturesでシニア・インベストメントマネージャーを務める西田隆一氏にも参加して頂けることとなっている。シード期の投資やPR関連で話を聞いてみたい学生さんは、メディアの視点も投資家の視点も持っている彼に相談すると、良いアドバイスがもらえるかもしれない。第1回と同様に、交流目当てに来て頂くのも大いに歓迎だ。

というわけで、TechCrunch School第2回の開催概要は以下の通り:

【イベント名】

TechCrunch School #2
学生起業家、その予備軍へ!
内外注目スタートアップに学ぶグロースハックの基礎
【開催日時】 2月17日(月) 17時半開場、18時開始
【会場】 東京・末広町 3331 Arts Chiyoda 3331 Arts Chiyoda地図
【定員】 100名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 大学生もしくは大学院生
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【協賛】 リクルートホールディングス
【内容】

18:00~18:05 TechCrunch Japan挨拶

18:05~18:45 講演セッション「グロースハックとは」(LaunchRock創業者 Jameson Detweiler氏)

18:50~19:30 パネルセッション「新しい専門キャリア、グロースハッカーとは?」

モデレーター:高橋雄介氏(AppSocially創業者)
パネラー:Jameson Detwiler氏(LaunchRock創業者)
金山裕樹氏(VASILY創業者)

19:40~21:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)

特別ゲスト:西田隆一氏(元TechCrunch Japan編集長、B Dash Venturesシニア・インベストメントマネージャー

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【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp