「エンジニアの立場でスタートアップの成功確率を上げたい」―CTOという仕事を語り合う

2015年3月9日に開催したTechCrunch School第7回、「CTOというキャリアを考える」では、藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)、舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)、増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)が集まり、CTO(最高技術責任者)にまつわる話題を語り合った。モデレーターを務めたのは西村賢(TechCrunch Japan編集長)である。

3人のCTOが語った「3つの数字」

3人のCTOに西村編集長から出されたのは「3つの数字」で自己紹介してほしいというお題。

グリー藤本氏が挙げた数字は、「3→1788」「10→ ?」「1→ >10」の3つ。最初の数字は従業員数だ。藤本氏が関わりはじめた10年前のグリーは3人の会社だったが、今の従業員数は4桁だ。2番目の数字はサーバ台数。藤本氏が参加した当時は10台だったが、今では「未公表ですが、5桁はいってます。だからバカスカ壊れます」。3番目の数字は利用しているプログラミング言語の種類だ。創業当時はPHPだけだったが、今や10以上の言語を使っている。西村編集長が「言語の割合は?」と聞くと、藤本氏は「PHPがやっぱり多い。C#、JavaScript、Objective-C、Javaとか。あとはRubyとか。C/C++もちょこちょこあったり」と返す。

クックパッド舘野氏が挙げた数字は、「3000→18992」「1→15」「1→5」の3つ。最初の数字は、同社のテスト数の推移だ。2010年、舘野氏が入社した時にはテスト数は約3000だったが、直近の数字は1万8992まで増えた。2番目の数字はサービス数、3番目の数字はサービスを提供する国の数の変化だ。サービス数はレシピサイト1種類だけではなくなり、サービスを提供する国も、アメリカ、スペイン、インドネシア、レバノンが加わった。

トレタの増井氏は「『IT芸人』か『フログラマー』で検索してください。私の記事が上位に出てきます」と笑いを取りつつ、「4社」「2000社」「3倍」と数字を挙げる。1番目の「4社」は増井氏が創業に関わった会社の数だ。大学時代に起業を経験。その後フリーランスになるが、米国に渡りBig Canvas社を立ち上げ、日本に戻ってmiilの創業に関わった。今のトレタは4社目ということになる。「さすがに少しずつ賢くなってきている」と話す。2番目は、飲食店の予約サービスを展開するトレタの顧客数だ。3番目は、増井氏のCTOとしてのミッションとして「エンジニアの数を3倍にする」目標があることから来ている。

CTOの役割とは結局なんなのか?

この「つかみ」の後で西村編集長が聞き出していったのは、3社3様のそれぞれの段階にあるスタートアップ企業にとって、CTOとはどのような役割なのかということだ。今や従業員数4桁の組織となったグリー藤本氏はこう話す。「300人のエンジニアがいるとする。普通にやると(組織を作ると)4レイヤーぐらいになる。これぐらいになると、信頼できる人にこのセクションを任した! となる」。直接コードを書く役割、エンジニアのマネジメントの役割は信頼できる人に任せる形となっていく。

一方、クックパッド舘野氏は、最近はJavaコードを集中的に書いているという。フロントエンドとなるAndroidアプリについて、もっと知るためだ。同社はもともとWebに強いエンジニアを抱えていたが、そのためネイティブアプリでは出遅れたとの反省があるという。今はモバイルアプリを重視する流れにある。

トレタ増井氏は、創業期のCTOの役割について「最初のエンジニアは、とても大事だ」と話す。会社の創業の時期には、CEOとCTOは密接な関わりを持つが、その人間関係が、そのままその後の会社とエンジニア達との関係に引き写されていく。起業家はエンジニアリングをどこまで理解しているべきか、という問いかけに対しては、「コードを書ける必要はないが、エンジニアリングへの理解、信頼は必要」と語る。

パネルディスカッションの終盤、グリー藤本氏は「日本のスタートアップの成功確率がもっと上がるようにやっていきたい」と語った。連続起業家や、CTOとしての参画経験が3社というような人が少なからずいるシリコンバレーに比べると、日本では起業経験を伝える人材の層が薄い。「起業の勝率、ふつうに負けるよなと」。藤本氏がTechCrunchのCTO関連イベントの登壇を引き受けたのも、そうした思いからだそうだ。

ところで、今回のTechCrunch Schoolが開催された会場は「Tech Lab PAAK」だった。アップルストア渋谷と同じビルにある、リクルートが運営する会員制コミュニティスペースだ。自由に使えるスペースで、卓球台もあれば、もちろんWiFiもある。このようなスペースの運営はリクルートの業務と直接の関係がある訳ではないが、麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)は「こういう場で世の中を変えるプロダクトが生まれることが、長期的にはリクルートの利益になると信じてやってます」と語る。現時点で40組100人ぐらいが登録しているが、まだ会員になれる余地はあるそうだ。

もう1件、リクルート関連の情報発信があった。リクルートが2012年に買収した求人情報検索サービス米Indeedの東京オフィスで働くエンジニアである濱田卓さんと西村編集長とのミニトークセッションだ。Indeedは、リクルート本体とは全く異なる米国のソフトウェア開発会社のカルチャーのまま、東京オフィスを運営している。濱田氏も、東京大学大学院修士課程で情報科学を学んだが、知名度が高い会社を蹴ってIndeedへの就職を決めた。「ミリ秒単位で性能を改善していこうという組織」である点が楽しいと話す。仕事中にビールを飲んでも、誰も文句を言わない素敵な職場だそうだ。

最後に、今回のイベントの印象をまとめておきたい。今回の「お題」はCTOだった。CTOはエンジニアのボスであるだけではなく、経営陣の一員でもある。エンジニアを理解して信頼する経営者が必要とトレタ増井氏が話すように、経営を理解して参加するエンジニアも求められているのだ。クックパッド舘野氏は最近は経営書を良く読んでいるそうだ。グリー藤本氏も、技術基盤やエンジニアのチームのことだけでなく、事業への関わりについて考えていると話す。エンジニア文化と経営の両方を理解するCTO経験者、CTO候補者がもっと大勢出てくることが、日本のスタートアップの「勝率」アップのためには必要だろうと感じたイベントだった。


TechCrunch School第7回は3月9日開催-テーマは「CTOというキャリアを考える」

2014年1月から不定期で開催しているイベント「TechCrunch School」では、これまでに「学生の起業」、「スタートアップのマーケティング」、「大企業からのスピンアウト」、「IoT」、「シェアリングエコノミー」などのテーマでセッションを繰り広げてきた。7回目の開催となる次回は、3月9日月曜日午後7時から「CTOというキャリアを考える」というテーマで開催する。参加は無料で、本日よりこちらで参加登録を受け付けている。

会場となる「TECH LAB PAAK」

テック系のスタートアップに欠かせないエンジニアリングチーム。このエンジニア集団をリードし、ときにはゼロから1人でチームを作り上げるのがCTOだ。会社が成長した暁には、経営陣の1人として技術面から多くの経営判断に加わりつつ、同時にコードを書き続けることも珍しくない。

日本でスタートアップ企業が多く誕生しつつある今、CTOという役職が注目されつつある。今後、あらゆる業種においてソフトウェアの果たす役割が大きくなっていくだろうから、この傾向はますます加速するだろう。外部から「ソリューション」を調達したり、開発を外部へ委託する情報部門やCIOではなく、自らビジネスのコアになるシステムやアプリを作り出すチーム体制への移行が時代背景としてあると思う。

そう考えると、エンジニアとしてのキャリアを考える上で「CTO」というのは何もスタートアップ企業やネット企業だけに限った話ではなくなってくるのだろう。CTOとしてキャリアを積み、複数のスタートアップの立ち上げに携わる「シリアルCTO」というキャリア形成も増えつつあるように見える。

グリー、クックパッド、トレタのCTOが登壇

3月のTechCrunch Schoolでは、CTOというキャリアに焦点をあてて、経験豊富な注目CTOたちに、ざっくばらんにエンジニアリング、経営、スタートアップというテーマで語っていただこうと思っている。

登壇者となる3人のCTOは、グリーの藤本真樹氏、クックパッドの舘野祐一氏、トレタの増井雄一郎氏だ。3人ともエンジニアコミュニティでは、よく知られているが、改めて簡単にご紹介したい。

グリーの藤本CTOは、創業初期から同社プラットフォームを支えてきたCTOだ。マンションの1室からスタートして1000〜2000人規模の組織となる10年間を、CTOという立場で見てきた人は日本では多くないだろう。これまでを振り返りつつ、今後CTOとして取り組んでいきたい領域やチャレンジについて聞いてみたいと思う。クックパッドの舘野祐一CTOは、RubyやJavaScriptのコミュニティでも良く知られたエンジニアで、2010年クックパッドへ入社。技術基盤やビッグデータ基盤の開発、構築を行い、2012年に技術部長、2013年のエンジニア統括マネージャを経て、2014年2月からクックパッド執行役CTOとなった人物だ。経歴から分かる通り、1人のエンジニアからCTOへというキャリアを歩んでる。舘野氏にはエンジニアにとって、マネジメントやビジネスを理解することの意味ということをお聞きしようと思っている。トレタの増井雄一郎CTOは、料理写真共有サービスの「ミイル」の元CTOで、現在は店舗向け予約受け付けサービスのトレタのCTOとして活動している。立ち上げ期のスタートアップ企業に関わるエンジニアという視点から話を聞ければと思う。

今回の会場は東京・渋谷の「TECH LAB PAAK」

さて、これまでTechCrunch Schoolは基本的にTechCrunchのオフィスが入居している東京・末広町の3331 Arts Chiyodaで開催していたが、今回は前回同様にリクルートホールディングスが東京・渋谷に開設したばかりの会員制スペース「TECH LAB PAAK」で開催する。

TECH LAB PAAKは入会審査ありの会員制だが、施設自体は会員であれば無料で利用できる。会員になれるのは「スペースを通じてみずからの持つスキルを深めたり、情報共有したりしたい」「技術やアルゴリズムの研究・開発に取り組んでおり、コラボレーションして発展させたい」といった思いを持つ個人やチームで、同社が定期的に開催する審査に通過する必要がある。リクルートホールディングスいわく、「本気でテクノロジーで世界をよくしたいと思っている」「イノベーションを起こすスキルを持ちながら、リソースが不足している」という人の応募を待っているとのこと。当日はその辺り話もRecruit Institute of Technology戦略統括室 室長の麻生要一氏からお話いただける予定だ。

TechCrunch School #7
「CTOというキャリアを考える」

【開催日時】 3月9日(月曜日) 18時開場、19時開始
【会場】 東京・渋谷 TECH LAB PAAK (地図)
【定員】 80名程度
【参加費】 無料
【参加資格】 CTOもしくはCTOに準じるエンジニア、もしくは今後CTOを目指したいエンジニア
【ハッシュタグ】#tcschool
【主催】 AOLオンラインジャパン
【内容】
19:00〜19:05 TechCrunch Japan 挨拶
19:05〜20:05 パネルセッション「CTOというキャリアを考える」
パネリスト
藤本真樹氏(グリー株式会社 取締役 執行役員常務 最高技術責任者)
舘野祐一氏(クックパッド株式会社 執行役 最高技術責任者)
増井雄一郎氏(株式会社トレタCTO)
モデレーター
西村賢(TechCrunch Japan編集長)
20:05〜20:20 講演セッション「リクルートが考えるオープンイノベーションとその取り組みについて」
麻生要一氏(Recruit Institute of Technology戦略統括室 室長)
20:20〜20:30 ブレーク
20:30〜22:00 懇親会(アルコール、軽食も出ます)
【申し込み】イベントページから事前登録必須
【事務局連絡先】tips@techcrunch.jp