RedisとKafkaのためのサーバーレスデータプラットフォーム構築のためにUpstashが約2.3億円のシード資金獲得

データ集約的なアプリケーションは、インフラストラクチャのセットアップが高く付き、時間もかかる。特にクラウドでは、実際には使わないリソースに料金を支払っていることもある。そしてそんなとき、サーバーレスのメリットが生きる。使っているリソースにだけ払えばよいし、寝ているリソースに払う必要はない。

アーリーステージのスタートアップであるUpstashは、リソースの消費量をベースとする料金モデルにより、データインテンシブなアプリケーション開発者のためのサーバーレスのデータプラットフォームを開発している。手始めに、人気の高いオープンソースプロジェクトであるRedisKafkaをサポートしている。

Upstashの創業者でCEOのEnes Akar(エネス・アカール)氏によると、クラウドにただデータベースのインフラストラクチャをセットアップするだけでは、実際にデータを自分のシステムから移送し始める前から、月額数百ドル(数万円)の費用が生じる。そうしたサービスのマネージドバージョンも存在するが、アカール氏がやりたいのは、運用時のもっと多くのオーバヘッドを抽象化してしまうことだ。

「私たちのシステムは何百ものRedisのデータベースやKafkaのクラスターを扱えますが、リクエストがないときは一銭も払わなくてよいものです」とアカール氏はいう。

サーバーレスは、サーバーがないという意味ではない。サーバーはあるが、開発者は自分の需要に合わせるためのプロビジョニングで悩む必要がない。サーバーレスのプロバイダーは、正確に必要な量だけリソースを供給する。少なくとも、そういう理論だ。

さらにUpstashは、データのメモリの要量とストレージの要量のバランスを取ることによっても費用を下げる。アカール氏によると「私たちのやり方では、データをメモリとディスクの両方におき、アクセスのないデータはメモリから外してディスクにおきます。私たちの料金に大きな柔軟性があるのは、そのような秘密のソースがあるためです」。

トルコに本社のある同社は2020年に創業し、2021年にプロダクトが登場した。すでに1万3000の顧客の開発者がプロダクトを使っている。1日に最大1万リクエストまでという無料版もあり、毎秒のリクエストが1000コミットを超えたらエンタープライズ料金になる有料版もある。

有料ユーザーはまだそれほど多くないが、中小のデベロッパーか、大きなエンタープライズか、どちらを主力にするかそろそろ決めたいとアカール氏はと考えている。後者であれば、従来からの営業で対応できる。いずれにしても、まだ検討中の段階だという。

現在、社員は7名で全員が技術者だが、年内に10名に増やしたいとのこと。2023年はその倍を考えている。現在は全員男だが、ダイバーシティが重要であることは認識している。「それは重要なことです。投資家は企業文化もみます。今の7名は残念ながら全員男です。今後はダイバーシティを意識しなければなりません」とアカール氏はいう。

同社は米国時間3月17日、190万ドル(約2億3000万円)のシードラウンドを発表した。投資家はMango Capital、AngelList、ScaleX Venturesそして個人の業界エンジェルたちとなる。

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画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

KnativeがCNCFのプロジェクトになった

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)は、今日の最も重要なオープンソースプロジェクトのホームであり、Kubernetesもその1つだ。米国時間3月2日、CNCFの技術監督委員会(Technical Oversight Committee)が、KnativeをCNCFのインキュベーションプロジェクトとして受け入れたことを発表した。

CNCFのCTOであるChris Aniszczyk(クリス・アニシュチェク)氏は「Knativeはクラウドネイティブのエコシステムに良質に統合された強力な技術であり、サーバーレスのコンテナを容易に動かせるようにしてくれる。このプロジェクトは当財団のオープンガバナンスモデルの下でさらに成長し、新たなコントリビューターやエンドユーザーに到達するだろう。Knativeのコミュニティと一緒に仕事をすることが楽しみであり、チームのコントリビューションを歓迎する」と述べている。

Knativeは「ケイネイティヴ」と読み、2018年にGoogleが開発したが、その後IBMやRed Hat、VMware、TriggerMesh、SAPなど業界の重鎮たちも貢献した。このプロジェクトの基本的な考え方は、Kubernetes上でサーバーレスおよびイベントドリブンのアプリケーションを容易に構築、デプロイ、そして管理できるようにすることだ。今は多くのエンタープライズがデジタルトランスフォーメーションの一環として新しいアプリケーションを開発したり、既存のアプリケーションをモダナイズするとき、まさにその方向に進んでいる。そしてKnativeは今なお極めて若いプロジェクトだが、すでにBloombergやAlibaba Cloud、IBM、VMwarenなどはプロダクションでそれを使っており、またGoogleはKnativeを使ってGoogle Cloudのサーバーレスコンピューティングプラットフォームを運用している。

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このプロジェクトは2021年11月にバージョン1.0の節目に達し、その直後にGoogleが、プロジェクトをCNCFに検討のために付託したと発表した。現在、その段階が完了したためGoogleはKnativeの商標とIPとコードをCNCFに寄贈することになる。

Knative推進委員会とDOCS-UXのリードであるCarlos Santana(カルロス・サンタナ)氏は次のように述べている。「Knative 1.0で安定に達したこのプロジェクトを、特定のベンダーに偏らないホームへ寄贈することは、プロジェクトの今後の成長とコミュニティの自己統治を可能にする次のステップです。私たちの信ずるところによれば、CNCFこそがそのベンダー不偏の団体であり、そこがKnativeを受け入れたことで今後多くの企業が採用する気になり、プロジェクトの寄与貢献や宣伝もしてくれるでしょう。また、Knativeのコミュニティが、自身が利用しているすべてのプロジェクトに限らず、このエコシステム内のその他のクラウドネイティブプロジェクトにも接近して、フィードバックと機能の善循環を確立するでしょう」。

画像クレジット:bugphai/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

NetlifyがQuirrelを買収、サーバーレスファンクションの管理をプラットフォームのメニューに

Netlifyは多くの点で資金状態も良好で、以前はJamstack運動を始めた企業でもあるが、米国時間2月1日はQuirrelを買収したことを発表した。ここはサーバーレスのファンクションを管理し実行するオープンソースのサービスだ。

Quirrelの創業者であるSimon Knott(サイモン・ノット)氏は、広く使われているReactフレームワークBlitz.jsのメンテナーでもあるが、この買収の前にQuirrelは一度も外部資金を調達していない。Netlifyの投資家の1人がQuirrelを紹介し、そのあと、2021年の半ばに秘かに買収が行われた、とNetlifyのCEOであるMatt Biilmann(マット・ビルマン)氏がいう。

かなりの額を調達しているNetlifyが、買収によって成長を加速しプロダクトを拡張することは、目下のところ当然だろう。数年前にはNetlifyはまだJamstackのコンセプトをいちいち説明しなければならなかったが、現在ではいろいろな競合他社が存在し、中でもVercelは11月に1億5000万ドル(約171億5000万円)のシリーズDを発表、その前の6月には1億200万ドル(約116億6000万円)のシリーズCを発表している。

これはNetlifyにとって3度目の買収だ。最初は同社はY Combinatorが支援する、デベロッパーコラボレーションサービスFeaturePeekを5月に買収した。11月には、これまたY Combinator卒のGraphQLスペシャリストOneGraphを買収。その少し前にNetlifyは、1億500万ドル(約120億1000万円)のシリーズDを発表している。

画像クレジット:Netlify

「私たちがどこにいたいのか、どこへ行きたいのかは非常にはっきりしている。だからもちろんその、ウェブはこうあるべきだという私たちの目的意識に合致したとてもクールで小さなスタートアップを見つけたときには、うれしい。それらの一部は、提携して一緒に仕事をするほうがいいだろう。あるいは今回のように、一緒になってしまう方が良いケースもある」とビルマン氏はいう。

買収後もオープンソースプロジェクトはQuirrelという名称のままだが、Netlifyはすでに、その背後にあるアイデアの多くを自分のプラットフォームに統合する作業を開始している。同社がそのサーバーレスのプラットフォームをローンチしたのは2018年だ。その後、同社のサービスの中核的な機能になったが、しかしファンクションとバックグラウンドのタスクを一定のスケジュールで実行するためのスケジューリングは、Netlifyのデベロッパーたちにとってやや難題だった。

画像クレジット:Netlify

「デベロッパーが実現したい目的にとって、そうした種類のジョブはとても重要です。Quirrelのサイモンはそれを、大量の構成や古めかしいcronジョブのリストにしないやり方を見つけた。彼にはそれが、普通にコードを書くような感覚でできるのです」とビルマン氏は説明する。

しかしNetlifyとQuirrelとではスケールが違うため、デベロッパー体験をQuirrelの本来のビジョンに合わせるために、インフラストラクチャの多くを再構築しなければならない。ビルマン氏はそれを、第一原理から行うと説明する。同社のスケールが違うからではなく、Netlifyの哲学として、そのサービスの中核的な抽象化は特定のプラットフォームに依存していてはならないからだ。Quirrelの場合は、Blitz.jsが特定のプラットフォームだろう。

Quirrelのユーザー体験に基づくNetlifyの新しいスケジューリング機能は、Netlify Labsから無料で利用できる。Labsは、同社が新しい機能のベータテストをする場所だ。ということは、機能の一部が今後変わるかもしれないし、課金の方針も決まるだろう。でも今のところは、デベロッパーたちがこのサービスをどのように使うかを見て、プロダクトを調整していきたいのだ。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サーバーレスのデータ基盤ツールで非構造化データセットを解決する独Tiloがプレシード調達

一般的に企業内で使用されるデータセットは、ほとんどの場合さまざまなソースから、さまざまな非構造化形式で提供されている。それらを結びつけることは、非常に大きな頭痛の種になり得る。しかしそれができれば、特に金融分野では、不正行為の検知やKYC/AMLチェックなど、さまざまなメリットがある。これは特に金融機関が直面する問題だが、新型コロナウイルスの接触者追跡調査や一般的なビジネスインテリジェンス分野でも役に立つ可能性がある。

現時点で使用されている主なプラットフォームは、Neo4j、Senzing、またはAWSのNeptuneなどだ。あるいは、企業はElasticsearch(エラスティックサーチ)を使って独自のソリューションを構築しようとしている。だが、解決すべき大きな問題であることに変わりはない。

大企業からスピンアウトして理論を検証してきたベルリンの新しいスタートアップが、この難しい問題を解決しようとしている。

Tiloのデータ基盤ツール「TiloRes」は、サーバーレスでありながら、ほぼリアルタイムで大規模なデータマッチングを可能にすることで、企業が異なるソースやフォーマットのデータポイントをマッチングさせるのに役立つとしている。

Tiloは今回、欧州のVCであるPeak Capitalが64万ユーロ(約8300万円)を出資してリードしたプレシードラウンドで、120万ユーロ(約1億5500万円)のプレシード資金を調達した。今回の資金調達には、ベルリンを拠点とするTiny VC(Philipp Moehring、フィリップ・モエリング氏)、First Momentum Ventures、Enduring Venturesの他、Algoliaの創業者やContentfulの元CMOなどのエンジェル投資家が参加している。

Peak Capitalの投資先には、グローバルオークションマーケットプレイスのCatawiki、ヘッドレスコンテンツ管理システムのGraphCMS、オムニチャネルコミュニケーションプラットフォームのTrengoなどがある。

Tilo は、KYC/AML用のアプリケーションに加えて、新型コロナの接触者追跡調査に携わるすべての組織に、同社のソリューションを無料で提供する予定だ。

2021年11月に設立されたTiloは、企業やスタートアップとともにパイロットプロジェクトを開始した。Tiloのビジネスモデルは、企業がTiloResで処理するデータ量に応じてライセンス料を徴収するというもの。サーバーレスであるため、使用量に応じてコストが変動し、サーバーベースのソリューションよりも安価に利用できる。

Gartner(ガートナー)によると、Tiloが挑戦する市場は大きく、650億ドル(約7兆4740億円)の規模があると言われている。

TiloのSteven Renwick(スティーブン・レンウィック)CEOはこう述べている。「当社の最大の強みは、データがどれだけ増えても、エンティティがどれだけ複雑になっても、データの検索、照合、評価(例:オンライン決済プロセスにおける不正行為のチェック)がほぼリアルタイムで行われることです。これは、ほぼ常にリアルタイムの応答速度が求められる現代のニーズにとって重要なことです」。

Tiloの創業チームであるCEOのレンウィック氏、CTOのHendrik Nehnes(ヘンドリック・ネネス)氏、CDOのStefan Berkner(ステファン・ベルクナー)氏は、以前はドイツの消費者信用調査機関であるRegis24の技術チームだった。しかし、Regis24は彼らのソリューションをスピンアウトさせ、このスタートアップに戦略的に出資することに合意した。

PeakのDACH地域(ドイツ・オーストリア・スイスのドイツ語圏)責任者であるMadeline Lawrence(マデリン・ローレンス)氏は次のようにコメントしている。「正直なところ、最初は Tiloが何を解決しようとしているのか分かりませんでした。そして、私たち自身がデータマッチングに苦労していることに気づきました。CRMの重複やスペルの違いが私たちの頭痛の種になっているとしたら、さらにリスクが高く、ニーズがリアルタイムで、問題となるデータの規模が桁違いに大きい場合の苦痛を想像してみてください」。

画像クレジット:Tilo Team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

Cockroach Labsがサーバーレス版SQLデータベースを発表

米国時間10月19日、CockroachDB(コックローチDB)を開発しているCockroach Labs(コックローチ・ラボ)が、開発中のSQLデータベースの新しいサーバーレスバージョンのパブリックベータ版を発表した。これにより、開発者は明示的に定義することなく、スケールアップ / ダウンするデータベースリソースを簡単に使えるようになる。

共同創業者でCEOのSpencer Kimball(スペンサー・キンボール)氏は、その目標は開発者の複雑さを軽減すると同時に、きめ細かな価格体系を提供することだとしつつ、次のように述べている。「(サーバーレス製品は)開発者たちの事前の決定事項を減らします。これはとても重要なことです。しかし、もう1つの大きなメリットは、きめ細かな使用量に応じた課金が可能になり、使用した分だけ請求されるようになることです」。

データベースに対するサーバーレスのアプローチが重要な点は、開発者が行うキャパシティプランニングやそれに関連するすべての作業が不要になるところだ。つまり、アプリケーションを実行するために必要なノード数やマシンタイプを予測する必要がなくなるということだ。その代わりに、Cockroachのサーバーレスデータベースを指定するだけで、ワークロードを実行するために必要なだけの量のリソースを提供してもらえる。ワークロードが必要としないときには、1つのノードを完全に使うことさえしないかもしれない。

この動作にはリソースの共有も含まれているが、個別のデータはバックエンドで常に隔離されているとキンボール氏は指摘する。「実データが暗号化されていない重要な部分は、個別の開発者やユースケースから完全に隔離されています。このように隔離は行われつつも、バックエンドではデータの保存と検索のためのタスクが多数のマシンで共有されており、リソースを効率的に利用することができるようになっています」と彼はいう。

そして、このようにリソースを効率的に共有することで、開発者がアプリケーションを構築する際に、実際に軌道に乗るまではお金を払わなくてもよいような、寛大な無料プランを提供できるようになったという。さらに、ワークロードが急増した場合には、必要に応じてリソースを自動的に増減させることが可能だ。また、容量管理を自動化する際の重要なポイントだが、リソースの使用量が支払い能力を上回らないように制限をかけることができる。

キンボール氏によれば、無料プラン版から有料プラン版に移行するまではクレジットカードの提示は求めないので、アプリケーションが急激に成長を始めても請求書に驚くことはないという。彼は無料プランを「寛大」と表現しているが、価格プランの正確な詳細はまだ検討中だ。

このサーバーレス製品は、米国時間10月19日よりパブリックベータ版の提供が始まる。

Cockroach Labsは2015年に創業された。Crunchbaseのデータによると、これまでに3億5500万ドル(約405億5000万円)以上を調達している。直近の資金調達は、1月に20億ドルの評価額で行われた1億6000万ドル(約182億8000万円)のシリーズEだ。

画像クレジット:onurdongel/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

Google CloudがSparkのマネージドサービスを発表

Google(グーグル)は米国時間10月12日の同社Cloud Nextイベントで、フルマネージドサービスとして「Spark on Google Cloud」の提供を発表した。これにより、オープンソースの人気データプロセッシングエンジンをGoogle Cloud上のプレミアムなサービスとして利用できるようになる。

Googleのデータベース、アナリティクス、Looker担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのGerrit Kazmaier(ゲリット・カッツマイヤー)氏は次のように述べた。「このイノベーションで、Sparkがついにクラウドネイティブの世界にやってきます。データエンジニアやデータサイエンティストは、クラスタエンドの構成を心配することなくSparkを扱えるようになります。しかもGoogle Cloudのあらゆるデータサービスとも統合しました。そのため、BigQueryやVertex AI、Dataplexから直接Sparkを使い始めることができます。このようにSparkを簡単に利用でき、お客様は使い慣れたフレームワークやツールキットを使えます。データサイエンスのエクスペリエンスを、これからはクラウドネイティブで活用できるのです」。

Googleは「Google Cloudデータプラットフォーム向けとして世界初の、オートスケーリングでサーバーレスのSparkサービス」と説明している。しかしSparkの人気を考えれば、Sparkの実行や管理を提供する企業はたくさんある。SparkはDatabricksプラットフォームの中心でもあるが、DatabricksはSparkの開発者が創業し、十分な資金を調達しているスタートアップであることを考えれば当然だろう。

あなたはこんなふうにも思うかもしれない。「Google Cloudには、Dataprocの一部としてマネージドのSparkサービスがすでにあるんじゃないの?」(もちろん、あなたがGoogle、Amazon、Microsoftのクラウドのすべてのサービスを覚えている20%のうちの1人ならば、ということだが)

しかしカッツマイヤー氏は筆者に対し、異なる顧客をターゲットにした別のサービスであると説明した。すでにSparkやHadoop、あるいはMapReduceやPrestoなどのシステムを構成して利用しているなら、 Dataprocはこれらすべてをマネージドサービスとして今後提供する。しかし同氏としては、Google Cloudのデータサービスに関して開発しているものはすべてシンプルであることが大切で、特にデータのジャーニーを始めたばかりの企業が簡単に利用できることを重視しているという。

同氏はこう語った。「データチームを編成しているときに、データエンジニアを1人、データサイエンティストを1人雇いますか?最初に『これからストレージシステムを構築します。メタデータのシステムをゼロから作るんです』なんて言いたいでしょうか?もちろんそうではないですよね。しかし現状では、実際にそうせざるを得ません。これからはサーバーレスのSparkがあります。『さあ、やろう』というだけです」。

画像クレジット:Aki Ikonen / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

サーバーレスアプリケーションのためのAPIベースのデータベースサービスを提供するXata

Xataをご紹介しよう。同社は、これまでにない新しい角度からマネージドデータベースに取り組んだスタートアップだ。同社はあなたのデータベースをあなたに代わって動かし、それをAPIに変えるので、データベースのクエリやアップデートをサーバーレスのアプリケーションから行える。Xataはこの度、500万ドル(約5億5000万円)の資金を調達した。プロダクトはまだ十分に成熟していないが、同社はその詳細をすでにシェアしている。

XataはJamstackのウェブサイトに特に合ってるように思われる。Jamstackは、大規模なウェブサイトを開発しデプロイするための方法として、よく使われてきた。よく知られているJamstackのホスティングプラットフォームは、NetlifyVercelそしてCloudflare Pagesなどだ。

アプリケーションはグローバルなエッジネットワーク上にデプロイされ、ロジックはもっぱらAPI呼び出しが扱う。その結果ウェブサイトないしウェブアプリケーションはロードが速くて大量のトラフィックを扱える。

JamstackのウェブサイトはGitのリポジトリとタイトに統合されていることが多いため、デプロイがとても簡単だ。コードの変更をコミットしたら、サーバーレスのプラットフォームがアプリケーションのデプロイをやってくれる。APIベースのデベロッパーツールの統合は比較的楽だし、ロジックを自分で管理しなくてもよい。

たとえば静的なコンテンツとStripeのチェックアウトモジュールのあるウェブサイトをデプロイするなら、決済のサーバーはあなたに代わってStripeが管理する。しかしそこに、ライブのデータベースとそれとの対話が加わると、複雑な仕事になる。従来的なデータベースは、行を1行加えるだけでもインターネット上でAPI呼び出しに頼ろうとしない。複数の行を探索してデータを見つけるなら、なおさらだ。

Xataはデータベースに注力して、データベースをユーザーのサーバーレスアプリケーションに容易に統合できるようにしたい。データベースのスケーリングもXataが行うため、ユーザーはインフラストラクチャーを気にする必要がない。ソフトウェアのアップデートや、新しいサーバーへのデータの移動なども同じくだ。

データベースは通常、応答時間を速くして冗長性を持たせるために複数のデータセンターに分散している。画像も含めて、サポートするデータ型はとても多い。それでいてXataでは、データベースとの対話はまるでそこらのRESTful APIのようにに行われる。

同社はまた、Airtableのようなよく使われているノーコードのスタートアップからもヒントを得ている。データベースをウェブブラウザの中で開いて、データとの対話は直接そこから行なう。例えばカレントビューをフィルターし、特定の基準でデータをソートし、そして自分のコードで使えるAPIのクエリを得る。

データベースに大量のデータがあるなら、それらをフリーテキスト(無定型な自由文)検索機能で検索できる。また、Xataをアナリティクスに使ってチャートや視覚化を作ることもできる。

ウェブブラウザからデータと対話できる能力が、Xataの強みだ。今は、新しいプロジェクトのプロトタイプを作るときに、最初のバックエンドとしてAirtableに頼る企業が多い。しかしXataはそういうAirtableアズアバックエンド型のデータ管理モデルで、プロダクション(本番)にも対応したバージョンになれる。

500万ドルのラウンドはIndex Venturesがリードした。Operator CollectiveとSV Angel、そしてX-Factorのfirstminute Capitalが参加した。また当業界のエンジェルとして、ElasticのShay Banon氏とUri Boness氏、ConfluentのNeha Narkhede氏、VercelのGuillermo Rauch氏、 Color GenomicsのElad Gil氏、NetlifyのChristian Bach氏とMathias Biilmann氏が投資した。

同社の創業者はMonica Sarbu(モニカ・サルブ)氏だ。彼女はElasticのエンジニアリングのディレクターだったため、データベースのスケーリングについては詳しいはずだ。

画像クレジット:Xata

画像クレジット:Susan Q Yin/Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドインフラのDigitalOceanがNimbellaを買収してサーバーレス開発を強化

開発者はソフトウェアの作り方を単純化したいと願っているため、アプリケーションを動かすために必要なインフラを気にせずにコードを書ける「サーバーレス」と呼ばれるソリューションが人気を増している。インフラをサービスとして開発者に提供するDigitalOceanは、米国時間9月7日、サーバーレスのスタートアップNimbellaを買収し、この分野における同社の既存提供品目をさらに強化することを発表した。買収の条件は公表されていない。

DigitalOceanはNimbellaにより、オープンソースのコンテナオーケストレーションプラットフォームKubernetesと、同じくオープンソースのサーバーレス開発プラットフォームApache OpenWhisk上に構築されていサーバーレスアプリケーションを開発するためのプラットフォームを獲得する。

2年前にDigitalOceanのCEOになったYancey Spruill(ヤンシー・スプルイル)氏は、Nimbellaの機能を「サービスとしてのファンクション(Function as a Service)」と呼ぶ。その目標は、サーバーレスの開発を、オープンソースの環境の中で、ターゲットの顧客のためにより単純化することだ。スプルイル氏は「サーバーレスという呼び名でまとめられる一連の機能は、開発者や企業からあらゆるレベルのインフラストラクチャの負担を取り除き、それらを私たちのようなPaaSないしIaaSが吸収してしまうことでし。ユーザーはツールの構成がより自由になり、私たちが単純にその選択などの負担を取り除いて、彼らの開発スピードを上げます」という。

NimbellaのCEOであるAnshu Agarwal(アンシュウ・アガルヴァル)氏によると、具体的には同社が、高度なサーバーレスアプリケーションを作りDigitalOceanのサービスに接続するための、一連のツールを提供していく。「私たちがDigitalOceanのポートフォリオに加える能力は、高速なソリューション、サービスとしてのファンクションのソリューションであり、そしてそれが、マネージドデータベースやストレージなどのDigitalOceanのサービスと統合して、開発者による完全なアプリケーションの開発を容易にします。それはイベントに応じるだけでなく、完全にステートレスなものの管理も行います」とアガルヴァル氏は語る。

スプルイル氏によると、DigitalOceanがサーバーレスに本腰を入れるのはこれが初めてではないという。2020年同社が最初のサーバーレスツールセットを提供したときから始まり、その上に構築していくものとして、Nimbellaがふさわしかった。

DigitalOceanはクラウド上のIaaSであり、またPaaSのプロバイダーとして、個人デベロッパーとスタートアップ、そして中小企業を主な顧客にしている。同社の2020年の3億18万ドル(約331億円)という収益は、クラウド市場全体の1290億ドル(約14億2177億円)という収益の一部に過ぎないが、それだけ小規模でもクラウドインフラストラクチャサービスが成り立つことの証拠でもある。

今回の買収の条件や異動する人員数、アガルヴァル氏の待遇など、まだわからないことだらけだが、とにかく計画ではNimbellaをDigitalOceanのポートフォリオに完全統合し、その提供品目のブランドも2022年前半にはDigitalOceanになるようだ。

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画像クレジット:Erik Isakson/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サーバーレスCMSのWebinyがサーバーレス開発フレームワーク提供のために資金調達

2019年にオープンソースのサーバーレスCMSを発表した、アーリーステージのスタートアップWebiny(ウェビニー)は、CMSの構築を支援するフレームワークも開発していた。しかし同社はまた、顧客が自身のサーバーレスアプリの構築を支援する環境にも興味を持っていることに気が付いた。米国時間8月18日、Webinyはこの2つの製品の開発を継続するために、350万(約3億8400万円)ドルのシードラウンドを発表した。

今回のラウンドを主導したのは、Microsoft(マイクロソフト)のベンチャーファンドであるM12だ。そしてSamsung Next、Episode 1、Cota Capital、その他無名の投資家たちが参加している。同社は2019年に、34万8000ドル(約3817万円)を調達している。

Webinyの創業者であるSven Al Hamad(スベン・アル・ハマド)氏によれば、同社を立ち上げたときにはサーバーレスが未来になることを予感し、オープンソースのサーバーレスCMSを作ることから始めたそうだが、その後おもしろいことが起きたのだという。

「私たちは、実際に声をかけてきた300社以上の企業さんと話をしましたが、彼らもまた、未来はサーバーレスインフラの上に構築されると考えていたのです。彼らは私たちが構築したCMSにも興味を持っていましたが、それ以上に興味を持っていたのが私たちがそのCMSを構築した方法でした。なぜなら、彼らもサーバーレスを試みながら、満足のいく結果を得られていなかったからです」とアル・ハマドは説明する。

そのことによって、Webinyチームが、CMSを構築するためにその基盤となるサーバーレスフレームワークの構築に大半の時間を費やしていることが明らかにされた。このことからアル・ハマド氏は、フレームワークとCMSの両方をマーケティングして販売するべきなのではないかと考え始めたのだ。

「いまでもCMSに対する興味はたくさん寄せられています。しかし、多くの企業は、コンテンツプラットフォームの一部にCMSを利用するだけでなく、カスタムAPIやカスタムビジネスロジックを構築しすべてをサーバーレスで実現するという、両方の機能を求めていたのです」と彼はいう。

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こうして、アル・ハマド氏は自分のスタートアップには2つの製品があることに気が付き、会社を成長させるための新たな資本を得ることとなったのだ。彼は今でもコミュニティの構築に取り組んでいて、1000人近い開発者が参加するSlackコミュニティを主催している。この先の目標は、この資金を使って、オープンソースで提供している製品の上に、商用製品の構築を開始することだ。

そうした商用製品には、複雑な環境に対応する管理機能、シングルサインオン、より優れたセキュリティなどを備えた、ある程度のエンタープライズ機能が必要になる。

サーバーレスは、自動化された方法でインフラを提供する方法の1つで、開発者は正確な量のリソースが提供されるかどうかを心配することなく、アプリケーションの構築に集中することができる。しかしそのためには、関数やトリガーを書くなどの、非常に特殊なプログラミング方法が必要になる。Webinyのサーバーレスフレームワークは、開発者がこのような特殊なアプリと、それをすべて機能させるための仕掛けを構築できるように設計されている。

現在同社の従業員は9名で、2021年中に6名程度を追加する予定だ。アル・ハマド氏は、多様性は最重要課題だが、技術系人材のタイトな市場では課題が大きいという。「私たちは多様性について制約抜きに考えていますが、市場で実際にみつかる人材との兼ね合いが、そのバランスを見つけることを非常に難しくしています」と彼はいう。彼は、STEM分野でより多様な人材を育成するために、社会システム全体で努力する必要があるという。しかし彼は、困難にもかかわらず、多様なスタッフを探す努力を続けていくつもりだ。

現在従業員は分散しているというが、オフィスに戻れるようになったら、人が多くいるところにオフィスを開設して、いつでも自由に出社できるようにするつもりだという。

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画像クレジット:imaginima/Getty Images

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(文: Ron Miller、翻訳:sako)