Beewiseのロボット巣箱が世界のミツバチを救う?

ここに残念な統計がある。毎年、ミツバチのコロニー(蜂群)の約30%が消滅しているというのだ。科学者たちは、世界のミツバチの個体群における破壊的な継続的傾向を言い表すために「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)」という言葉を作った。その原因は特定されていない。しかし、専門家の間では、生息地の破壊や殺虫剤など、多くの人為的な原因が指摘されている。

そこで、ミツバチの個体数を回復させるために人間ができることはないだろうか、という疑問が浮かび上がってくる。2018年にイスラエルで設立されたBeewise(ビーワイズ)というスタートアップ企業は、ロボットによる解決策を提供している。同社は、外に設置して一種の自動養蜂場として機能するように設計された箱を製作した。太陽光発電装置を備えたこの箱は、蜂の巣を監視し、気温制御と自動収穫を行う。ペットの侵入といった問題が起きないように監視する一方で、内部の環境を調節して入居者の群れ行動を防ぐように設計されている。

画像クレジット:Beewise

現在、Beewiseは同製品を月額400ドル(約4万9000円)のRaaS料金+初期配送・設定料2000ドル(約24万円)で養蜂家に提供している。これには24のコロニーと継続的なメンテナンスが含まれる。その見返りとして、この技術は収穫量の向上や、周囲の農作物の受粉といった利益を約束し、さらにうまくいけば、問題となっているミツバチの個体数減少に対しても正味の利益をもたらす。

同社は今週、8000万ドル(約9億8000万円)のシリーズC資金調達を実施したことを発表した。Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)、Corner Ventures(コーナー・ベンチャーズ)、lool ventures(ロール・ベンチャーズ)、Atooro Fund(アトゥーロ・ファンド)、Meitav Dash Investmentsが(メイタフ・ダッシュ・インベストメント)が参加した今回のラウンドにより、このアグリテック企業がこれまでに調達した資金の総額は、1億2000万ドル(約147億円)を超えた。

「ミツバチを救い、蜂群崩壊という流れを逆転させようとする私たちの献身、粘り強さ、情熱を理解してくれるすばらしい投資家たちからシリーズCの支援を受けられることに、Beewiseのチームは感激しています」と、Saar Safra(サアー・サフラ)CEOは声明で述べている。「この数カ月だけでも、米国では数千の注文がありました。今回の資金調達により、Beewiseは製造を拡大して市場の大きな需要に応え、さらなる製品の改良を行い、受粉の環境をさらに改善することが可能になります」。

画像クレジット:Beewise

今回、同社は資金調達のニュースとともに、その「Beehome(ビーホーム)」と呼ばれるシステムの新バージョンも公開した。新しい筐体は従来のものより32%小さく、20%軽くなっており、より迅速な収穫と、改良された給餌・暖房システムを特徴としている。

画像クレジット:Beewise

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ミツバチを飼わずに精密発酵と植物科学で本物のハチミツを生産するMeliBio

MeliBioは、9000年の歴史があるハチミツの生産方法を一変させようとしている。同社の生産方法はハチをいっさい使わず、精密発酵と植物科学を利用する。

ハチミツ企業の役員だったDarko Mandich(ダーコ・マンディッチ)氏と、科学者でアマチュアのシェフでもあるAaron Schaller(アーロン・シャラー)氏は、全世界で100億ドル(約1兆1878億円)のハチミツ市場にサステナビリティを導入することを狙って、2020年にサンフランシスコで同社を立ち上げた。マンディッチ氏によるとこれまでのハチミツ産業は「サプライチェーンと品質管理が破綻している、最も持続可能性を欠く農業分野」だ。

マンディッチ氏の説明によると、彼の着想はWiredの記事でハチを巣箱で飼うやり方は、これまで2万種のハチの野生在来種を断ち、ハチの集団の多様性(ダイバーシティ)を失わせてきたという指摘を読んだときに生まれた。

「食べ物を持続可能にし、もっと栄養豊富にし、ハチたちをはじめ愛すべき動物たちを犠牲にしないようにするために、食品産業を変えたい」とマンディッチ氏はいう。

ただしハチの分野ではすでにBeewiseのような企業が精密なロボットを使って巣箱を自動化したり、またハチの健康管理をするBeeHeroのような企業もある。

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イスラエルのBee-ioは、同社が特許を持つバイオ技術を用いるハチを使わないハチミツ生産方法を追究しているが、しかしマンディッチ氏によるとMeliBioは、ハチを使わずに本物のハチミツを生産する最初の企業だ。製品はニューヨークの4つのレストランでテストを行い好評だった。

MeliBioのハチのいないハチミツ生産方法は、二段階になっている。まず植物科学により、ハチがどのように植物にアクセスして、蜜をつくるために何を得ているのかを理解する。

第2段階では、分子の組成を改良して製品とその大量生産を可能にする。そこに登場するのが、精密発酵だ。この精密発酵が、目的を達成するために役に立つ有機物を特定することで、食べ物にかけるだけでなく、パンなどでオーブンで焼けるようにするなどいろいろな使い方ができるようにする。

同社はこのほど570万ドル(約6億8000万円)のシード資金を調達して、外食産業やB2Bアプリケーションへの市場拡大に努めている。マンディッチ氏によると、すでにMeliBioは30社と提携しており、製品の評価事業に参加しているという。

シードラウンドをリードしたのはAstanor Venturesで、これにSkyview CapitalやXRC Labs、Collaborative Fund、Midnight Venture Partners、Alumni Ventures、Big Idea VenturesそしてHack Venturesらが参加した。

MeliBioのチーム。左からMattie Ellis(マティー・エリス)氏、アーロン・シャラー氏、ダーコ・マンディッチ氏、Benjamin Masons(ベンジャミン・メイソン)氏(画像クレジット:MeliBio)

Astanor VenturesのパートナーであるChristina Ulardic(クリスティーナ・ウラルディック)氏は次のように述べている。「MelBioの、植物科学と精密発酵を結びつけて次世代の食品技術を開発していくアプローチはすばらしい。ハチミツの商業的な生産のサプライチェーンから負担を取り除き、授粉者のダイバーシティを回復することに、ダーコとアーロンは情熱を燃やしている。そんな彼らの最初の製品にはとても感動しました」。

新たな資金は研究開発の継続と、微生物を利用する発酵工程の規模拡大、そして4月に予定している製品の正式な立ち上げに使われる。またマンディッチ氏は、正社員を年内に現在の4名から10名に増やそうとしている。14名の契約社員は現状のままだ。

同社はまだ売上を計上していないが、マンディッチ氏は製品が発売され、大手食品企業やレストランなどとの契約が実現すれば状況も変わると信じている。

次にマンディッチ氏が構想しているのは、市場規模5000億ドル(約59兆3760億円)の原材料市場に進出して、同社の精密発酵技術で未来の市場のマーケットシェアを獲得することだ。

「私たちは科学とオルタナティブな方法を利用して野生在来種のハチの負担を減らしています。ハチミツの需要は伸びていますが、私たちの方法ならハチの生物多様性を保全することができます。米国の企業は世界中からハチミツを輸入していますが、その過程はますます複雑になっており、品質も保証されていません。本物のハチミツでないこともありえます。しかし国内生産ができればサプライチェーンを単純化でき、サプライヤーは国内だけなので、納品の遅れや品質の問題もありません。MeliBioはハチミツを1日3交替、365日の稼働で生産するため、市場の他の製品と価格でも十分競合できるでしょう」とマンディッチ氏はいう。

画像クレジット:MeliBio

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

IoTでミツバチの動きや健康状態をリアルタイムで追跡するBeeHeroの精密受粉プラットフォーム

精密農業をさらに超え、精密「養蜂」が未来志向の農家の心を捉えている。「BeeHero(ビーヒーロー)」は、2020年の登場とシードラウンド以来、急速に成長してきた。新たに1900万ドル(約21億1600万円)の資金を獲得したことで、当初の市場を超えて規模を拡大し、何千もの活発なミツバチの巣から収集した独自のデータをさらに活用できるようになる。

同社はミツバチの巣にIoT技術を導入することで、ミツバチの動きや健康状態を実質的にリアルタイムで追跡し、ダニの蔓延などを未然に防ぐことができる。その結果、作物の収穫量が大幅に向上し、巣箱が健康になり、結果的にトラクターに乗る回数も減らせる。巣箱を設置してから数週間ごとに様子を見に行くという通常の方法では、時間がかかる上に効率が悪く、その間に巣箱が崩壊していたり、受粉がうまくいかなかったりして、何エーカーもの農場を不作のシーズンへ導いてしまう。

BeeHeroのCEO兼共同設立者であるOmer Davidi(オメル・ダビディ)氏は「今日行われている受粉法は困難です。巣箱が不足していて、たとえ箱を手に入れられても、中に何が入っているのかわからず、ただ期待するしかありません。これでは、受粉を戦略的に行うことはできません。ストレス要因やさまざまなインプットとアウトプットを理解する必要があります。しかし、データをあまり必要としない古い産業でこれを行うのは難しいことなのです」と語っている。

画像クレジット:BeeHero

パンデミックが発生した当初の数カ月間のうちに製品を発売するという困難な状況にもかかわらず、農家とのつながりを構築する方法を見つけ出してからは、多くはゆっくりとだが、しかし確実に最新のソリューションを採用するようになっており、彼らの牽引力は目覚ましいものがあったとダビディ氏は語っている。彼ら農家はそのメリットに懐疑的で、(ビデオ通話やバーチャルデモなどで)手っ取り早い解決策を提示するスタートアップの創業者なんて当然ながら詐欺師だと疑っている。

「当初、私は『ひまわりやカシューを100%増やしたとみんなに伝えなければならない!』と言っていました。ただ、気をつけなければならないことがあります。彼ら農家は何世代にもわたって同じやり方を続けてきたのです。いきなり『私が新手法を解明しました』と言っても、すぐに信用を失ってしまいます」と同氏は説明した。「そのため、私たちは約束以上のことをしなければなりませんでしたし、それによって、より手がかからずに導入できるプロセスを構築することができました。そして、一度でもその成果を見ると、毎年それをやりたいと思うようになるのです」。

現在、BeeHeroは、世界的にアーモンドの生産量が多いカリフォルニア州の複数のトップアーモンド生産者と提携している。2021年末までには、10万個の巣箱を管理し、米国最大の受粉業者になることを目指している(現在は第4位)。

スマートフォンのBeeHeroアプリで巣の健康状態を表示しているところ。(画像クレジット:BeeHero)

1500万ドル(約16億7100万円)のAラウンドには、ADMキャピタル、Rabo Food and Agri Innovation Fund(ラボ・フード&アグリ・イノベーション・ファンド)、iAngels(アイエンジェルズ)、FirstTime(ファーストタイム)、J-Ventures(Jベンチャーズ)、UpWest(アップウェスト)、Entrée Capital(エントリー・キャピタル)、Good Company(グッド・カンパニー)、the Arison Group(アリソン・グループ)、Gaingels(ガインゲル)が参加している。また、同社は欧州委員会、BIRD財団、イスラエル・イノベーション局から400万ドル(約4億4500万円)の助成金も獲得している。

今回の調達の第一の目的は、米国やアーモンド品目以外にも展開することだ。まずベリー類、アボカド、リンゴなどに展開し、次にヒマワリや大豆などの作物にも展開する計画だ。トマトのような温室栽培の作物も可能かもしれない。オーストラリアやヨーロッパも候補に挙がっているが、パートナーシップやその他の要素次第となる。少なくとも資金はあるということだ。

ダビディ氏は、今自分たちがいる段階に現実的でありながらも、増大し続けるミツバチの活動データベースが、他の方法でも価値あるリソースになることを期待している。

「データサイエンティストとして言えることは、我々は何も知らないということです」と彼は認めた。しかし「我々」とは業界全体のことであり、BeeHeroは蜂に関連するデータにおいて最大のコレクションを構築している。蜂の巣や受粉が、さまざまな天候パターン、作物や植え付けスタイル、農薬、外来種(彼らは殺人スズメバチを注視している)、その他多くの要因に対してどのように反応するかを知ることは、非常に価値のあることであり、同社の仕事はまだ始まったばかりだ。

「例えば、まだ解明されたばかりですが、ミツバチは雨が降る30分前には雨が降ることを知っています」とダビディ氏はいう。なぜ、どうやって?いずれにせよ、その情報は農家にとって、そしておそらく養蜂業全般にとっても、有益なデータとなるだろう。

「世界ミツバチ計画」や日本の文部科学省をはじめとする学術界での研究提携は、このデータの宝庫に未開発の可能性があることを示している。世界の食糧供給を維持するために受粉が非常に重要であるにもかかわらず、ハチへの脅威は増加の一途をたどっているため、私たちはどのような情報でも得る必要があると言えるだろう。

画像クレジット:BeeHero

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)

寒い季節でもミツバチの健康を保つ技術で収穫量を最大90%も増加させるBeeflow

ミツバチは私たち人間の農業や、地球上の生態系、そして地球上の生物種としての全体的な幸福のために、絶対的に必要不可欠な存在だ。しかしながら、ミツバチの個体数は減少しており、絶滅の懸念が大きくなっている

米国時間6月29日、スタートアップ企業Beeflowは830万ドル(約9億2000万円)のシリーズAラウンドの完了を発表した。同社はミツバチを救うことと、農家の経営効率を上げることの両立を追究している。

Beeflowは、独自の科学技術を用いて、特に寒い季節においてミツバチをより健康にする。膨大な研究の結果、ある種の植物性食品や分子をミツバチに与えると、ミツバチの死亡率が最大70%減少し、寒い気候での元気が増すことがわかった。

元気という表現は何のことを曖昧だと思うかもしれないが、それは当然だ。

ミツバチは地球上の天然の受粉媒介者だ。花を実らせるために、花粉をある場所から別の場所へと運んでいく。多くの農家では、養蜂家からミツバチを「レンタル」してもらい、農場で植物の受粉をやってもらっている。しかし、その効果はほとんどすべての面で測定することができず、ミツバチ自体を本当の意味でコントロールすることも不可能だ。

Beeflowの技術により、ミツバチは健康で丈夫になり、寒冷な気候の中でも、それがない場合に比べて最大7倍もの飛翔が可能になる。これは、ミツバチが農家のために効果的、効率的に作物を受粉させる可能性が高くなることを意味する。

同社は、ミツバチの死亡率を下げるだけでなく、ブルーベリーやアーモンドといった特定の作物を狙うようにミツバチを訓練する「ToBEE」という製品も提供している。

これらのBeeflowのプロダクトを組み合わせることで、農家は作物の収穫量を最大90%増加させられるという。

Beeflowのビジネスモデルは2つある。1つが自社で保有するミツバチを農家に貸し出して受粉させるというもの。もう1つが、養蜂家と協力して彼らをBeeflowのネットワークに参加させるというものだ。養蜂家はBeeflowの技術にお金を支払のではなく、農家との関係を権利として提供する。

アルゼンチン出身のMatias Viel(マティアス・ビエル)氏が設立したこのスタートアップは、主にラテンアメリカと米国西海岸で事業を展開しているが、今後は東海岸やメキシコにも進出する予定だ。

「最大の課題は、オペレーションとその実行です。非常に多くの需要があり、我々は今、チームとオペレーションの規模を拡大する必要があります」とビエル氏はいう。

今回の資金調達ラウンドはOspraie Ag Scienceがリードし、Future VenturesのSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏やJeff Wilke(ジェフ・ウィルク)氏、Vectr Ventures、SOSVのIndieBioとGrid Exponentialが参加した。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Beeflow農業ミツバチ資金調達

画像クレジット:Beeflow

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(文:Jordan Crook、翻訳:Hiroshi Iwatani)