Beewiseのロボット巣箱が世界のミツバチを救う?

ここに残念な統計がある。毎年、ミツバチのコロニー(蜂群)の約30%が消滅しているというのだ。科学者たちは、世界のミツバチの個体群における破壊的な継続的傾向を言い表すために「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)」という言葉を作った。その原因は特定されていない。しかし、専門家の間では、生息地の破壊や殺虫剤など、多くの人為的な原因が指摘されている。

そこで、ミツバチの個体数を回復させるために人間ができることはないだろうか、という疑問が浮かび上がってくる。2018年にイスラエルで設立されたBeewise(ビーワイズ)というスタートアップ企業は、ロボットによる解決策を提供している。同社は、外に設置して一種の自動養蜂場として機能するように設計された箱を製作した。太陽光発電装置を備えたこの箱は、蜂の巣を監視し、気温制御と自動収穫を行う。ペットの侵入といった問題が起きないように監視する一方で、内部の環境を調節して入居者の群れ行動を防ぐように設計されている。

画像クレジット:Beewise

現在、Beewiseは同製品を月額400ドル(約4万9000円)のRaaS料金+初期配送・設定料2000ドル(約24万円)で養蜂家に提供している。これには24のコロニーと継続的なメンテナンスが含まれる。その見返りとして、この技術は収穫量の向上や、周囲の農作物の受粉といった利益を約束し、さらにうまくいけば、問題となっているミツバチの個体数減少に対しても正味の利益をもたらす。

同社は今週、8000万ドル(約9億8000万円)のシリーズC資金調達を実施したことを発表した。Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、Fortissimo Capital(フォルティシモ・キャピタル)、Corner Ventures(コーナー・ベンチャーズ)、lool ventures(ロール・ベンチャーズ)、Atooro Fund(アトゥーロ・ファンド)、Meitav Dash Investmentsが(メイタフ・ダッシュ・インベストメント)が参加した今回のラウンドにより、このアグリテック企業がこれまでに調達した資金の総額は、1億2000万ドル(約147億円)を超えた。

「ミツバチを救い、蜂群崩壊という流れを逆転させようとする私たちの献身、粘り強さ、情熱を理解してくれるすばらしい投資家たちからシリーズCの支援を受けられることに、Beewiseのチームは感激しています」と、Saar Safra(サアー・サフラ)CEOは声明で述べている。「この数カ月だけでも、米国では数千の注文がありました。今回の資金調達により、Beewiseは製造を拡大して市場の大きな需要に応え、さらなる製品の改良を行い、受粉の環境をさらに改善することが可能になります」。

画像クレジット:Beewise

今回、同社は資金調達のニュースとともに、その「Beehome(ビーホーム)」と呼ばれるシステムの新バージョンも公開した。新しい筐体は従来のものより32%小さく、20%軽くなっており、より迅速な収穫と、改良された給餌・暖房システムを特徴としている。

画像クレジット:Beewise

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動インシデント対応プラットフォームを構築するShorelineがシリーズBで約43億円を調達

Shorelineの創業者でCEOのAnurag Gupta(アヌラグ・グプタ)氏は、同社を創業する前は8年間、AWSでインフラストラクチャに携わっていた。AWSのシステムがスローダウンしたり停止したりするインシデントに対応するシステムの責任者を務めていた。

これは大仕事で、同氏はインシデント対応を自動化する社内システムの構築に関わっていたが、マーケットプレイスには他社がそうした自動化に役立つツールが不足していることに気づいた。ソフトウェアのテストと導入、本番システムの監視、インシデントが起きた時の対応をするツールはあるが、同氏は欠けているものがあると見ていた。

同氏は、インシデントのチケットが発行され必要な人が対応を始めると、何がおかしいかをつきとめて修復するのは通常は手作業が極めて多いプロセスになると指摘する。システムがダウンすると1分ごとにコストがかさむ。ソフトウェアとシステムが複雑になり、こうした問題に対処する責任者であるSRE(サイト信頼性エンジニア、Site Reliability Engineer)が根本原因をつきとめて修復するのはさらに難しくなっている。

グプタ氏は「ほぼすべてのケースで手作業のプロセスとなり、人間は消耗してミスをします。たくさんの人手に頼る作業です。そして人間は機械よりも長い時間を要するのでダウンタイムが発生するのです」と説明する。

同社はジュピタースタイルのノートブックを作ってシステムによくある問題への対応を記録し、自動化する。問題を解決するためのステップ・バイ・ステップの手順を示し、可能な場合には対応を自動化するのだ。狙いは問題が起きた時に対応する負荷を軽減することだ。

グプタ氏は、システムの問題が発生した時にそれを解決する必要性が高まりSREの役割は急速に大きくなっているが、問題に体当たりしていくのは持続可能なアプローチではないと語る。

Shorelineに投資しているInsight PartnersのマネージングパートナーであるGeorge Mathew(ジョージ・マシュー)氏は、機械と人との協力で問題の解決を早めるのだという。

マシュー氏はShorelineに投資した理由を「ハイレベルの役割を人間が果たし、ローレベルの役割を機械学習のアルゴリズムで自動化できれば、この分野においてはたいへん魅力的なチャンスです」と説明する。

Shorelineが創業したのは2019年だが、このような自動化ソリューションを構築するのに2年半かかり、シリーズAでは2200万ドル(約27億600万円)を調達した。このプロダクトを発売してからすでに約半年が経ち、従業員はすでに50人近くいる。

グプタ氏は創業に関し、自社が事業をしている世界を反映した従業員を有することが自分にとって重要なゴールであると語る。

同氏は「当社の従業員はテックの世界ではなく社会全般と同じようでなくてはならないと強く確信しています。テックの世界には組織的なバイアスがすでにあるからです」と語る。つまり、従業員の比率を実際の人口比に一致させようとしている。

「私が変わることなく信じているのは、雇用のプロセスに多様性を取り入れれば、結果として企業は多様になるということです」と同氏はいう。

米国時間3月28日、ShorelineはInsight Partnersが主導し、Dawn Capitalが参加した3500万ドル(約43億500万円)のシリーズBを発表した。Shorelineによれば、今回のラウンドでこれまでの調達金額の合計は5700万ドル(約70億1100万円)となった。

画像クレジット:Dansin / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

ServiceNowがユーザーエクスペリエンスを一新、ネイティブのRPAと組み合わせて使えるAutomation Engineも登場

ServiceNow(サービスナウ)は米国時間3月23日、まったく新しくなったアプリのデザインを公開し、企業がオートメーションを短時間で作れるように開発されネイティブのRPAとも統合できるツールのAutomation Engineも発表した。どちらも米国時間3月23日に公開された新しいSan Diegoリリースに含まれている。

ServiceNowの最高イノベーション責任者であるDave Wright(デイブ・ライト)氏は、今回のリリースは効率とシンプルさを狙ったと説明している。同氏は「新しいデザインで重要なポイントの1つは『次世代エクスペリエンス』のコンセプト、つまりユーザーエクスペリエンスのあり方の刷新です」と述べた。

ServiceNowのSVP兼デザイン担当グローバル責任者であるAmy Lokey(エイミー・ローキー)氏は2年半前に入社し、同社のツールをデザインの観点から体系的に見直した。同氏はモバイルに関しては良い感触を持ったが、ウェブアプリはしばらくアップデートされていなかったため効率化とモダン化をしようと考えた。

ローキー氏は「当社のプラットフォームは多数のツールとアプリを含むウェブベースのアプリですが、深く探っていくうちにこのエクスペリエンスには革新とモダン化の両方について大きなチャンスがあると強く感じました」と語った。

同氏によれば、細心の注意をはらってデザイン全体を変更する必要があったという。ユーザーがServiceNowを使う際の中心であり、長く使っているユーザーを戸惑わせることなく使いやすくしたいと考えたからだ。

画像クレジット:ServiceNow

ローキー氏は「これはIT、人事、カスタマーサービス部門にわたって担当者が使うものです。ユーザーは業務のために1日8時間以上このアプリを使うこともあります。そのため、生産性を向上し、エクスペリエンスにインテリジェンスが組み込まれ、一体感があり簡単に使えて、使う人の力になると感じられるように変更する必要がありました」と説明する。

こうした考えから、デザイン変更には3つの重点が置かれた。操作の効率化、インテリジェントな検索、シンプルなパーソナライズだ。仕事のやり方に影響を与えることなく、仕事の効率を上げてもっとスマートにすることを目指してデザインが変更された。

また、ワークスペースの高度なカスタマイズ、メニュー操作による目的の機能への移動、そしてサービス技術者にとって優れたエクスペリエンスとなりそうな夜間や暗い環境で仕事をするためのダークモードもある。

今回のリリースにおけるもう1つの大きな変更点はAutomation Engineだ。これは以前に発表されたIntegrationHubと、2021年のIntellibot(インテリボット)買収で獲得したRPA機能をまとめるものだ。ライト氏は「Automation EngineはIntegrationHubとRPA Hubの組み合わせです。これにより標準的な統合に加え、統合した上でbotのプロセスを実行することもできます」と述べている。

Automation Engineにより、人間が介在しない、またはタスクの一部に人間が必要なbotが可能になるだろう。このツールはオートメーションを追加することでServiceNowのワークフローをシンプルにするために設計されているが、実装には組織のワークフローを理解して構築できる専門知識を有する人、あるいは適切に構築できる他社コンサルタントの助けが必要かもしれない。

画像クレジット:Eugene Mymrin / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

さまざまなeコマースツールを接続、自動化するAlloy Automationが約23億円調達

Y Combinator(Yコンビネーター)の卒業生で、異なるさまざまなeコマースツールの接続に力を入れるAlloy Automation(アロイ・オートメーション)は米国時間2月22日朝、a16zが主導する2000万ドル(約23億円)のシリーズAをクローズしたことを発表した。同社にとってこの資金調達イベントは、資金確保が困難だった2021年とは対照的に、活発なものとなった。

TechCrunchは、ちょうど1年前にAlloyのシードラウンドを取り上げたが、このスタートアップは当時、事前評価1600万ドル(約18億4000万円)で400万ドル(約4億6000万円)を調達し、調達後企業評価額が2000万ドルだった。つまり、Alloyは1年前の企業価値と同じだけの資本を調達したことになる。

TechCrunchは、Alloyの共同創業者兼CEOのSara Du(サラ・ドゥ)氏とCTOのGregg Mojica(グレッグ・モジカ)氏に、今回のラウンドと、この1年間で自社のピッチがどのように洗練されたかについて話を聞いた。

Alloy AutomationのシリーズA

資金調達を行った際に、Alloyは同規模の他の企業よりも、キャッシュバーン(資金燃焼率)の面でやや保守的であったことに気づいたと、共同創業者は語っている。ベンチャー市場が価格、つまり支出の自制を見直し始めている中で、この事実は同スタートアップの資金調達の見通しにとってマイナスではなかった。また、Alloyの第4四半期は好調であり、これも悪くなかったと、ドゥ氏とモジカ氏はTechCrunchに語った。

なぜ、同社はより多くの資金を調達したのだろうか? いくつかの理由があるが、創業者たちは次のように述べている。もちろん、成長中の事業において、現金は多くあるに越したことはない。しかし、Alloyにとって同じくらい重要だったのは、多くの出資を集めたことと、その資本政策にa16zの名前が入ったというシグナルだった。この2つの要素が、会社の地位を築くために役立ち、パートナーシップの確保につながると、共同創業者たちは説明する。また、人材コストが高騰している現在、総資金額が多ければ、目先の資金繰りに悩まされることなく、必要な人材を確保することができる。

Alloyは、自社の自動化技術(企業が多くのアプリケーションをリンクさせ、自動化されたワークフローの構築を可能にする方法)をeコマース市場に応用しているが、この分野に注力しているのは、初期の顧客からの要望によるものだ。現在、Alloyは複数のアプリケーション間のコントロールパネル、つまりeコマースを同調するためのオペレーティング・システムとしての役割を担うと、自らを謳っている。

自動化の市場は決して小さくない。ワークフローとオートメーションの分野に属する別の企業であるAppian(アピアン)は、最近の上場ソフトウェア企業の傾向に反して、投資家が実際に好むような成長を報告している。つまり、長期間にわたって成長を加速させているということだ。Alloyにとって、Appianの最近の成功は、創業者や投資家が切望するTAM(獲得できる可能性のある最大の市場規模)の増加を意味する。

ドゥ氏とモジカ氏はインタビューの中で、かつてeコマース企業は独自の技術スタックを構築する傾向があったと語る。しかし現在では、それとは対照的に、サードパーティのソフトウェアが主流になっている。このような変化が、Alloyの構築しているものに対する需要を生み出したのだろう。eコマース企業が利用するソフトウェアサービスが増えれば増えるほど、それらを統合し、相互に補完することが求められるようになるからだ。

Alloyの従業員数は現在20人を超えるほどだが、当然のことながら同社は積極的な雇用計画を立てている。2022年中にはスタッフを倍増することを漠然と予期しているという。

Alloyは、eコマースソフトウェアの世界では中立的な立場に近く、eコマースサイトのすべての構成要素を自ら作り出すのではなく、その中心に位置することを望んでいる。そう考えると、TechCrunchが創業チームを取材したとき、モジカ氏がテキサス州で開催されたBigCommerce(ビッグコマース)のイベントに参加していたことにも驚きはなかった。BigCommerceは、ヘッドレスのeコマースソフトウェアをてがける企業で、顧客の選択に大きく依存しないという点でAlloyと精神的に共通している。

このようなオープンなモデルは、決済のようなファーストパーティのソリューションで収益を上げている他の企業とはやや対照的だ。eコマースの世界では、Shopify(ショッピファイ)がその典型例である。

Alloyが今後、パートナーと顧客それぞれの観点から中心性を高める努力をしながら、その中立性をどのように管理していくのか、興味深いところだ。確かにこのスタートアップ企業は、次の4〜6四半期を運営するだけの資金をすでに確保している。次のベンチャー資金調達に戻る前に、同社がどこまで行けるか、見守ることにしよう。

画像クレジット:Visual Generation / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Automataがラボオートメーションの野望を拡大、ラウンドBで57.5億円を調達

現在世界中のラボ(実験施設)は、新型コロナウイルス感染症(COVID)のためだけではなく、成長するバイオテクノロジーや医薬品開発の分野から、より多くのテストや材料の処理を行う必要に迫られている。自動化はそのために必要となる道筋だ。Automata(オートマタ)は、個々の作業を扱うロボットアームの製造からスタートした企業だが、研究室のプロセス全体を最初から最後まで自動化するために、新たに5000万ドル(約57億5000万円)を調達した。

前回Automataと話したのは2019年だったが、当時同社は740万ドル(約8億5000万円)のラウンドAを実施したばかりで、ガラス容器を移動させたり、簡単なサンプリングを実行したりといった、さまざまな一般的なタスクに使用できるEva(エバ)ロボットアームの開発と展開に注力していた。しかし彼らはすぐに、独自性の高い小規模なプロジェクトや研究室向けにロボットを提供するという事業が、ビジネスモデルとして成り立たないことに気づいた。

共同創業者でCEOのMostafa ElSayed(ムスタファ・エルセイード)氏は「ある段階で顧客と関わるだけでは十分ではありません。例えば『市場で最も手頃な価格のロボットアームがあります。あとは幸運を祈ります!』と売り込んで、お客さんが1〜2台のロボットを購入しても、ある程度のプロセスの最適化は行われますが、その企業の動きに革命を起こすことはありません。そこでここ数年は、当社の技術を大規模に採用してもらうにはどうすればよいかを検討してきました」と語っている。

彼らは、ほどなく自動化ブームが到来すると考えられる3つの大きな市場を特定した。それは、診断、創薬、そして合成生物学(特定の目的のための微生物の発見や合成培養)だった。

同社が最初の数百台のEvaアームを設置して発見したことは、これらの分野の企業には「部分的な自動化」が多いということだった。エルセイード氏は、これをキッチンにある食洗機にたとえた。たしかに食器を手で洗う必要はなくなったが、食器の出し入れ、洗剤の追加、設定操作などの作業が相変わらず必要なのだ。もちろん食洗機は便利だが、動作するためには完全に人間の作業に依存していることには変わりがない。

こうした部分的な自動化の限界は、パンデミックによって浮き彫りになった。特にPCRテストを行うラボは、最大の能力で稼働していたものの、それでも需要を満たすことはできなかった。同様に、医薬品開発や合成生物学の分野では、1つのプロセスの実行頻度に制限があるため、実行スパンが5〜7年に及ぶこともある。部分的な自動化から完全な自動化へと移行することで、大幅な時間短縮とスループットの向上を実現することができる。しかし、それは数少ないロボットアームだけでは実現できなかった。

Automata Labsの操作コンテナならびに、その横に並ぶEvaロボットアーム

「このような自動化を可能にするために、まったく新しいハードウェア群を開発しなければなりませんでした」とエルセイード氏は述べている。2021年末、彼らは新しいハードウェアプラットフォームAutomata Labs(オートマタラボ)を発表した。これは、内部の機械を連続的に動作させ、その結果を次のステップに渡すことができるように作られた、一種のモジュラーコンテナだ。「この作業台は、実際にあらゆるラボにある標準的なユニットですので、基本的には、自動化に対応した総合ラボ作業台なのです」。

同社の最も顕著な成功例は、NHS(英国国民保健サービス)の検査施設だ、現在は可能な限り自動化され(つまり、人間はまだそこにいるものの、膨大な量の作業がロボットによって行われている)、現在では100万以上のサンプルが処理されている。エルセイード氏は、この数字が大きいということも指摘しつつ、より重要なのは、自動化によって結果が出るまでの時間が半分に短縮されたことだという。ご想像の通り、これは時間的成約の厳しい検査には重要だ。それは、臨床医がロボットを一晩中働くように設定し、朝には結果が出るようにできるレベルまで自動化されていることに大きく依っている。

実験的な環境では、タイムラインを25〜40%削減することができた。これは大きな成果だが、製造業などの分野で生産性が大幅に向上したことを知っている人には控えめな数字に聞こえるかもしれない。エルセイード氏によれば、特定の数値をさらに向上させるためには、NHSの迅速ラボを可能にした「lights out laboratories(完全自動ラボ)」のような道が他にもあるという。

ムスタファ・エルセイードCEO

しかし、同時にエルセイード氏は、多くの研究者にとっては精度や再現性も重要な課題だと語る。

「そうしたユーザーの間には、明確なニーズがありました」と彼はいう。「基本は、ラボでの単純な作業を減らしながらスループットを向上させることが目標です……が、私たちは気が付いていなかったのですが、ラボには再現性の問題もあったのです。研究チームは研究論文を発表しますが、その結果を再現しようとしても失敗します。なぜなら、研究室でのプロセスは複雑な手作業であり、変動するからです」。

そのため、自動化によって得られる大きな利点は、体系的な追跡と実行、そしてエラーが少ないことだ。その目的のために、Automataはラボ装置やロボットを管理・運用するためのソフトウェアに投資してきた。

「これらの組織の科学者、特に将来大切になる自動化を担当する科学者の方は、単に私たちを呼んで自動化作業を依頼なさるのではなく、自分たちでシステムをプログラムし、自分たちでスクリーニングを設計できる能力を本当に求めていられるのです」とエルセイード氏は語る。科学者と交渉したことのある人ならわかると思うが、科学者の多くは、外部機関に主導権を奪われるくらいなら、従来のやり方を続けたいと考えている。そのため、現場のスタッフが展開・調整することを前提としたシステムを開発することに重点が置かれてきた。

彼は続ける「当社のハードウェアを採用なさっているラボの中には、ご自身でコンフィグレーションやデプロイメントを行ったり、エコシステムをご自身のデータシステムに接続したりすための、デジタルソリューションを求められるところが増えています」。

新世代のハードウェアが、パートナー企業との限定的なテストを経て、年内に公開される予定だ。また、Automataは、米国やヨーロッパの広い市場への進出の準備も進めている。この拡大のために必要となる膨大な雇用、製造、販売、サポートなどが、今回の5000万ドル(約57億5000万円)のラウンドBの理由だ。このラウンドは、Octopus Venturesが主導し、Hummingbird、Latitude Ventures、ABB Technology Ventures、Isomer Capital、In-Q-Telなどが参加した。

画像クレジット:Perchpeek app

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

製品ピボットのタイミング、2つの決算報告の話

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは。米国は(米国時間)2月21日はお休み(大統領の日、ワシントン誕生日)なので、長い週末だ。おそらく読者がこれを読んでいるときには、私は(願わくば)ソファで3匹の犬と一緒に昼寝をしていることだろう。

しかし!まず最初に!やるべきことはたくさんあるが、先週の初めに行われたあるスタートアップのピボットと、そう、お金についても少しお話しよう。

Jukesのピボット

eスポーツの世界は、かなり細分化されている。さまざまなゲーム、フォーラム、トーナメントシリーズ、プラットフォーム、チャットアプリ、ウェブサイトの上に構築されているので、お気に入りのゲームでさえ、一体何が起こっているのかを理解するのには大変な労力を必要とする。そこでJuked.gg(ジュークド)は、2020年になってeスポーツに関するニュースをひとまとめに管理するハブの構築に着手した。

初期の同社はある程度の成功を収め、私達も記事にしたように、2021年初頭には100万ドル超え(1億円強)の調達ラウンドを実施した。しかし、共同創業者のBen Goldhaber(ベン・ゴールドへーバー)氏によれば、同氏がグラフで「右肩上がり」と表現したような急速な成長時期もあったものの、2021年にはアクティブユーザー数が頭打ちになった。

何が起きたのだろう?「FishStix」というゲーマータグも持つゴールドへーバー氏によれば、Jukedはeスポーツファンの上位1%にはリーチできていたものの、それ以上広がることはできなかったのだという。そこで、この新しい会社はスマートなやり方として、ユーザーに自社のサービスの感想を尋ねた。それらの会話を通して、ユーザーが、コミュニティの「毒性」、スパム、感情的な会話などのeスポーツ特有の問題を提起してくれたのだとゴールドへーバー氏は語っている。

そこでJukedは、少し軸足を変えて、ユーザーが事実上求めていたソーシャルネットワークを構築することにした。すなわちeスポーツファンにとって「毒性」が少なくもっと安心できる場所である。

この製品は、約750人のユーザーによるクローズド・アルファ版としてのテストを経た後、米国時間2月12日に一般公開された。

AppAnnie(現在はData.aiとなっているようだ)の情報によると、このサービスは今週米国のiOSユーザーの間で、ソーシャル・ネットワーキングのカテゴリー限定ではあるがチャート入りを果たした。2、3カ月後にまた、ダウンロードがどのように進んだかを確認してみたいと思う。

このサービスがどのようにして大規模にコミュニティの「毒性」対策を行うのかなどへの大きな疑問は残る(サインアップのためには、かなり強い条件に同意しなければならなかった)。Jukedは将来的にはAIをアシスタントに使った人間によるモデレーションを行うことを意図しており、ユーザーには電話番号の登録を求めている。すべて良いアイデアではあるが、同社は大規模な検証は行っていない。

私はeスポーツのファンなので、Jukedが取り組んできたことは理解している。しかし、私は必ずしも市場に新しいソーシャルネットワークを求めているわけではない。このスタートアップの市場での戦略が、どのようにしてより多くのポイントを獲得できるかを見いくことにしたい(そしておそらく資金調達だ。エクイティクラウドファンディングのラウンドから1年経っているので、同社が今後の四半期でもっと多くの資金を調達しようとしたとしても、驚くようなことではない)。

2つの決算報告

今週は、ハイテク企業の決算報告が相次いで行われた。いつものように市場に目を向け、スタートアップ企業の今後を占うヒントを探してきた。

私たちの仕事のほとんどはここにまとめてある。今日のテクノロジー企業にとって今後の業績予想がいかに重要であるかを掘り下げている。投資家にとっては、将来の見通しに比べて、過去の実績は全然重要ではないようだ。そのため、Amplitude(アンプリテュード)が公開市場の投資家から非難を受けたことには、注意をひかれた。同じような批判を受けた会社はMeta(メタ)も含めて他にもあったので、私たちが最近上場したAmplitudeを非難しているのだとは思わないで欲しい(同社は2021年直接上場を行っている)。

しかし、Appian(アピアン)の業績発表は、また別の側面を見せた。ローコードオートメーション企業のAppianは、他のハイテク企業よりも静かに公開市場に登場してきた。それは決して悪い話ではない。同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏は、先週の決算説明会で私にそう語った。

それはなぜか?それはイノベーションとは何かというカルキンス氏の定義に帰結するが、イノベーションとは単に何かを作ることではない。TechCrunchに語ったところによると、彼の会社は長らくエンジニアリング主導の組織であったが、それだけではクールなものを作るのには不十分だという。新しい機能を市場に出して売り、使ってもらわなければ、実際にはイノベーションを起こしていないのだ。イノベーションとは、製品ではなく体験であるとカルキンス氏はいう。イノベーションの最終的な成果は、新しい機能に対する顧客からの証言であると彼は付け加えた。すなわち誰かが新しいものは本当に良いものだという言葉を残したときだ。そのためには、人々が試せるように、その存在を知らしめる必要があるのだ。

私は彼の視点が好きだ。これは、ブロックチェーンの世界におけるいわゆるイノベーションの多くが、本当のイノベーションではなく仮説の集合を生み出しているとしか思えない理由を説明するのに役立つ。確かに、現在市場に出ている難解なWeb3製品の中には、実際に影響力を持つものもあるだろうが、ほとんどのものは、役に立つツールというよりは単にコーディングのトリックだ。

終わる前にもう少しだけ。米国の企業が感じている人材不足は、単に雇用コストを上昇させるだけではなく、Appianのような企業の後押しもしている。同社は、従業員がやりたがらないので、さらに多くの仕事の自動化をしたいという企業からの要望を受けている。そして、不幸な社員たちは追い出されるというわけだ。

こうして、Appianの成長は少し前から加速している。また、決算発表では株価は下落せず、上昇した。話を元に戻すと、これは現在、企業が時価総額を拡大するためにクリアしなければならないハードルだ。数四半期前とは比較にならないほど厳しい市場となっている。そのため、個人的にはIPOの線はまだしばらくは使えないと考えている。

ではまた。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

カスタマーサービスの電話応対をAlexaを使うようにするRedRouteが約7.5億円調達

RedRouteの創業者。左からCROのサム・クルット氏、CEOのブライアン・シフ氏、CTOのジェイコブ・クーパー氏(画像クレジット:RedRoute)

音声によるカスタマーサービス体験と会話型人工知能のスタートアップであるRedRoute(レッドルート)は、訪れる3500億ドル(約40兆円)規模のカスタマーサービス自動化分野を狙っている。

Brian Schiff(ブライアン・シフ)氏、Sam Krut(サム・クルット)氏、Jacob Cooper(ジェイコブ・クーパー)氏が2015年に同社を設立したとき、彼らはまだコーネル大学の学部生で、当初は大手交通会社が営業していない大学キャンパス内での乗り物を探すための、Uberのようなソーシャルな交通用アプリであったという。

シフ氏はTechCrunchに、多くのタクシー会社と仕事をする中で、ビジネスの多くが電話でタクシーサービスに入ってきており、リクエストが多すぎて電話担当者が足りなくなっていることに気づいたと語っている。そこで、カスタマーサービスやコンタクトセンターのバックエンドチャネルを改善する機会があることに気づいたのだ。

多くの人がAmazon(アマゾン)のAlexaやGoogle Home、音声操作のテレビを家に備え付けるようになり、音声技術の現代の世界を見て、3人は2017年に事業を変更し、カスタマーサービスの世界でも同様の体験を実現することにしたのだ。

画像クレジット:RedRoute

その仕組みはこうだ。カスタマーサービスに電話をかけると、音声操作の「Alexaのような体験」で挨拶をしてくれるのを想像してみて欲しい。そこで電話をかけてきた人とやり取りをし、簡単な要望を解決する手助けをしてくれる、とシフ氏は説明してくれた。

シフ氏によると、RedRouteのセットアップは30分程度で完了し、顧客は初期費用ゼロでソフトウェアを試すことができる。リスクフリーでパフォーマンスベースの価格設定は業界初だという。同氏は、RedRouteのAIは、平均して50%のリクエストを完全にこの製品で処理できると見積もっている。残りの50%の複雑な電話については、RedRouteが情報を取得し、それらの電話対に費やせる時間が増えたエージェントに繋いでくれる。

彼らは1年間製品に取り組み、2018年初めに市場に参入し、運送業の顧客と連携している。2020年にパンデミックが発生すると、RedRouteはコンタクトセンターの領域にさらに進出し、現在ではBrooklinen(ブルックリネン)、UNTUCKit(アンタックイット)、Pair Eyewear(ペアアイウェア)、GNCなどの顧客と連携している。

「eコマースに進出するタイミングでした。パイロットで成功した最初の顧客と一緒に入り、規模を拡大し始めました。そして、その努力を倍加させるために、資金調達に踏み切ったのです」とシフ氏は語った。

彼のいう資金調達ラウンドとは、Scoop Venture Capital(スクープ・ベンチャー・キャピタル)とBullpen Capital(ブルペン・キャピタル)が主導し、エンジェル投資家のグループも参加した650万ドル(約7億5300万円)のシード資金調達のことだ。RedRouteは以前、200万ドル(約2億3100万円)のプレシードラウンドを調達している。

シフ氏は、この新しい資金を、全面的な事業の成長、製品開発、主要なリーダーシップに使う予定だ。

RedRouteの競合他社と比較すると、初期費用ゼロなのと、顧客とインテリジェントに関わり、会話をし、自身で要求を完了するコールオートメーション技術を提供することによって、自社が差別化されると彼は見ている。また、同社は小規模なコンタクトセンターもターゲットにしており、そこではコールオートメーション技術の採用がまったくと言っていいほど進んでいないとシフ氏はいう。

「これらの企業は、既存の技術スタックにあらかじめ統合され、エンジニアリングや大規模な先行投資を必要としない既製品を購入しようとしています。私たちは、初期費用なしで、30日間無料で、30分ほどで起動し、初日から結果を見ることができるようなソリューションを提供しています」と彼は付け加えた。

一方、RedRouteは現在100社の顧客を抱え、第4四半期には売上が10倍となり、3倍の成長を遂げている。第4四半期には売上が10倍になり、3倍になった。eコマースの方は「すごい勢いで伸びている」といい、運送の方も「回復している」と付け加えた。

シフ氏は「我々は、製品と市場の適合性が確立された位置にいると感じています。我々は大きな月に強力な牽引力を発揮し、その成長のさせ方を理解しており、今がその規模を拡大するチャンスです。これが、私たちが毎日考え、取り組んでいることなのです」と語った。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Q5Dは手作業で行われてきた電子機器製造工程の配線作業をロボットで自動化

Q5Dの提案はシンプルだ。「ロボットを使って電子機器用ワイヤーハーネスの製造工程を自動化する」こと。電子機器用ワイヤーハーネスの製造は、その全体的な複雑さゆえに、意外にもいまだに手作業で行われていることが多い。この工程は前世紀からあまり変わっていないと、同社は事あるごとに指摘する。これらを機械に任せることで、製造工程のスピードアップ(現在のような遅れの中では絶対的なプラス要因)、コスト削減、ヒューマンエラーの減少につながる。

英国ブリストルに本拠を置くこのスタートアップ企業は、Cella Energy(セラエネルギー)やCEL-UK(セルUK)に携わっていたSteve Bennington(スティーブ・ベニントン)氏とChris Elsworthy(クリス・エルスワーシー)氏が、2019年に設立した。現在はそれぞれCEOとCTOを務めている。実はこの会社は、Robox(ロボックス)ブランドを含む3Dプリンターを製造しているCEL-UKと、電子機器製造用の工作機械を製造しているM-Solv(Mソルブ)のジョイントベンチャーなのだ。

画像クレジット:Q5D

Q5Dは、ハードテックのベンチャープログラムであるHAXの卒業生であり、今回発表されたシードラウンドには、HAXを運営するSOSVも参加している。「製品の内部に配線を施すことは、製造工程の中で最も手作業が多く、うんざりする作業です。Q5Dのプロセスと製品は、先進的な製造業において自動化を完結するために必須のものです」と、HAXのパートナーであるDuncan Hunter(ダンカン・ハンター)氏は、今回の資金調達に関するリリースで述べている。

今回の270万ドル(約3億1000万円)の資金調達は、Chrysalix Venture Capital(クリサリックス・ベンチャー・キャピタル)が主導し、Rainbow Seed Fund(レインボー・シード・ファンド)も参加した。この資金は、同社の技術をさらに拡大するために使用される予定だ。現在はSafran(サフラン)やOxford Space Systems(オックスフォード・スペース・システムズ)など、主に航空宇宙分野の顧客に使用されているが、この技術は民生用電子機器や自動車、特に配線システムが内蔵された電子機器など、非常に幅広い分野で展開が可能であることを、同社は即座に強調する。

「今は大きな変化の時代です。交通機関の急速な電化や、洗濯機から携帯電話まであらゆる機器の高機能化により、配線はさらに複雑で手間のかかるものになっています」と、ベニントン氏はリリースの中で述べている。「この世界で過去80年間行われてきた配線のやり方は、変わらなければなりません」。

画像クレジット:Q5D

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小企業の営業とサポートチーム向け自動化プラットフォームSaaS Labsが約48億円を調達

SaaS Labs(SaaSラボ)は、中小企業の営業およびサポートチーム向けの自動化プラットフォームを積極的に成長させるため、前回の資金調達完了から3カ月足らずで新たな資金調達ラウンドで4200万ドル(約48億490万円)を調達し、2社のスタートアップを買収した。

SaaS LabsのシリーズBラウンドは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導した。このラウンドには、既存の出資者であるBase 10 Partners(ベース10パートナーズ)とEight Roads Ventures(エイト・ロード・ベンチャー)の他、起業家の Anand Chandrasekaran(アナンド・チャンドラセカラン)氏、Allison Pickens(アリソン・ピケンズ)氏、Michael Stoppelman(マイケル・ストッペルマン)氏、Amit Agarwal(アミット・アガーワル)が参加している。今回の資金調達は、カリフォルニアとノイダを本拠地とする同スタートアップが10月に行った1800万ドル(約20億5800万円)のシリーズA調達に続くものだ。

大企業やエンタープライズ向けには、営業やサポート業務の効率化をもたらすツールが数多く存在する。しかし、中小企業には同じことは当てはまらない。これが、Gaurav Sharma(ガウラブ・シャルマ)氏が米国で立ち上げたHelloSociety(ハローソサエティ)というベンチャー企業で得た学びである(この会社は、New York Timesに買収された)。

彼はTechCrunchのインタビューで「中小企業は、彼らの指先にあるソフトウェア製品を見てみると、それほど愛されておらず、十分なサービスを受けられていないことがわかる」と語っている。それに比べて大企業は「エージェントの生産性を向上させるためのすばらしいツールにアクセスできる」と彼は述べている。

SaaS Labsはこの6年間、中小企業の営業チームやサポートチームを強化するために「同じくらい強力」なAI搭載ツールを構築してきた。これらの製品はノーコードソリューションであり、導入のためにITチームを持つ必要性を排除している。

「これらのツールはまた、非常に手頃な価格で、中小企業が依存する他のビジネススタックやオンプレミスのハードウェアソリューションとシームレスに統合することができます」と同氏は語る。

現在、1500万人以上の販売・サポート担当者が直面している課題は、コールログやCRMツールを手動で更新しなければならず、そのツールは上司にリアルタイムの更新情報を提供するようには設計されていないということだ。このため、彼らのコミュニケーションチャネルにギャップが生じ、リアルタイムに介入することができないのだ。

中小企業が営業やサポートチームのためにクラウドベースのコンタクトセンターを数分で立ち上げることができるSaaS LabのJustCallのダッシュボード(画像クレジット:SaaS Labs)

「顧客とのコミュニケーションを行う5人のチームを持つと、大混乱が起こり始めるものです。例えば、JustCall.ioは100以上のビジネスツールと統合されており、これらのチームが利用することができます。JustCallは1億件以上の通話データベースを持ち、機械学習によって通話の品質やプレイブックやワークフローが守られているかどうかを確認することができます。管理者は、すべての通話をふるいにかけるのではなく、評価の低い通話だけを見ることができるのです」と同氏はいう。

このスタートアップは、全世界で6000社以上の顧客を獲得している。小規模な企業であれば、月々25ドル(約2800円)程度の支払いで利用でき、ビジネスの成長とともに年額数万ドル(数百万円)の支払いに移行していくのが一般的である。

顧客のうち70%以上が米国、10%が英国に拠点を置いている。顧客にはGrab(グラブ)、GoStudent(ゴースチューデント)、Booksy(ブックシー)、HelloFresh(ハローフレッシュ)などが含まれる。

同スタートアップは何年も黒字を続けており、2021年は売上を2.5倍に伸ばしたという。

米国時間1月20日には、2つの買収も発表した。ポーランドに拠点を置くCallPage(コールページ)は、営業チームがリードと即座につながるためのコールバック自動化ツールで、フランスに拠点を置くAtolia(アトリア)は生産性とコラボレーションツールである(彼らのチームは、正社員としてSaas Labsに参加する予定だ)。シャルマ氏は、これらの買収はSaaS Labsの製品提供の幅を広げ、さまざまな市場での足跡を深めるのに役立つと述べている。

シャルマ氏によると、今回の資金の一部は、さらに多くのスタートアップを買収するために投入される予定だという。

「当社は十分な資本を有していますが、今回の資金調達により、成功した事業をさらに強化したり、優れた人材をグローバルに採用したり、革新的な製品を発売したり、ブランドマーケティングに注力したり、戦略的M&Aを積極的に行うために必要な資金を確保することができるようになります。中小企業が営業、サポート、マーケティングなどさまざまな機能を現代化するためにソフトウェアを導入し続ける中、SaaS Labsはこの機会を捉え、今後5~7年で30倍の成長を遂げることができると確信しています」。と述べている。

彼は、今後4~5年以内にSaaS Labsを上場させることを視野に入れているという。

「SaaS Labsは、中小企業向けのマルチチャネルの顧客コミュニケーションプラットフォームを構築しています。一連の製品を通じて、デジタルの効率性とオフラインのコミュニケーションチャネルの親密性を融合させた体験を提供しています」と、Sequoia Capital IndiaのMDであるTejashwi Sharma(テジャシュウィ・シャルマ)氏は声明で述べている。

「例えば、同社の主力製品であるJustCallは、大きなインパクトを与えることができました。顧客は、平均して1人のエージェントが手作業で行う時間を週に12時間短縮したと報告し、顧客満足度は30%向上しました。Sequoia Capital Indiaは、顧客コミュニケーションの未来を築くガウラブとそのチームと提携できることをうれしく思っています」とも述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ホームオートメーションプラットフォームSpaceCore提供のアクセルラボが7億円調達、人材採用・開発強化

ホームオートメーションプラットフォームSpaceCore提供のアクセルラボが7億円調達、人材採用・開発強化

ハウスメーカー・不動産事業者、居住者、物件オーナーのためのスマートライフプラットフォーム「SpaceCore」(スペース・コア)を運営するアクセルラボは1月15日、第三者割当増資により7億円を資金調達したことを発表した。引受先は、フューチャーデザインキャピタル。累計資金調達額は22億円となった。

SpaceCoreは、家電や住宅設備を専用アプリで操作できるプラットフォームサービス。給湯器やエアコン、照明などのオートメーション化や外出先からの遠隔操作が可能な「スマートホーム機能」、物件のオーナーと居住者のコミュニケーションが円滑に行なえる「リレーション機能」、家事代行やクリーニング、収納サービスなどを申し込める「生活サービス機能」を備えたクラウドサービスおよびアプリとして提供されている。2019年8月の提供開始以来、全国100社以上、約1万8000戸(2021年9月時点)に導入され、接続デバイス数は20種類を超えるという。

今後さらにパートナー企業との連携および開発を進めることが計画されているため、今回の資金調達に至った。調達した資金は、採用に係る人材費、SpaceCoreの開発費、サポート体制の拡充に係るオペレーション費に充当され、事業基盤および顧客基盤の拡大を目指す。

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドローンで中国におけるフードデリバリーを再定義するMeituan、自転車や自動車で行きづらい場所へ配達

深圳にあるピックアップキオスクの最上部に着陸するMeituanのフード配達ドローン(画像クレジット:TechCrunch)

深圳の繁華街に隣接する混雑した歩道で、20代の女性がスマートフォンのアプリから、フードデリバリー大手のMeituan(美団)でミルクティーを注文している。10分もしないうちに、真珠のように白い飲み物が、どこでも見かける宅配バイクの荷台ではなく、ドローンの荷台の段ボール箱に載せられて曇天から降臨し、道端の小さなキオスクに届けられる。このシーンに欠けているのは、天使の聖歌隊だけだ。

中国最大級のインターネット企業であるMeituanは、過去2年間で人口2000万人近い深圳市全域の8000人の顧客に1万9000食を空輸してきた。この試験プログラムはわずか7つの地区で展開され、厳選された加盟店からのみ利用することができる。それぞれの地区の長さは3kmだ。SF作家が描くように窓の外を飛ぶのではなく、街角にある指定のキオスクに配達される。しかしこの試験はMeituanの野望の概念実証だ。同社は今、空中配送の野望を拡げる準備を整えた。

Tencent(テンセント)傘下のMeituanだけが、都市の空を小さな飛行機で埋め尽くしたいと考える中国のテック大手ではない。MeituanのライバルであるEle.meを運営するAlibaba(アリババ)、そしてeコマース大手のJD.comも近年同様のドローン配送サービスに投資している。

試験的なプログラムを経て、Meituanは深圳全域での商業的なドローン配送サービス運営を申請したと、同社のドローン配送部門の責任者であるMao Yinian(マオ・イーニエン)氏は2021年12月のプレスイベントで語った。9月に提出されたこの申請は現在、深圳の航空当局の審査を受けている。実際のスケジュールは政府の決定次第だが、認可は2022年の予定だ。

「当社は郊外での実験から中心部へ向かいます。これは当社のオペレーション能力が新たなレベルに達したことを意味します」と、Meituanのドローン事業の技術専門家であるChen Tianjian(チェン・ティエンチエン)氏は同イベントで話した。

空飛ぶ食事

現時点では、Meituanの配達用ドローンはまだそれなりの人手を必要とする。例えば、ミルクティーの注文。ミルクティーができあがると、Meituanのバックエンドの配送システムが人間の運搬担当を割り当てる。その人間がモール内の加盟店からミルクティーを取ってきて、複合商業施設の屋上まで運ぶ。そこには、同社が設置したドローン離着陸パッドがある。

深圳のショッピングモールの屋上に設置されたMeituanのドローン離着陸パッド(画像クレジット:TechCrunch)

離陸前に検査員が飲み物を入れた箱が安全かどうか確認する。その後、Meituanのナビゲーションシステムが、集荷キオスクまでの最短かつ安全なルートを算出し、離陸する。

もちろん、ドローンを使って食品を配達することの経済面での実行可能性は、まだ証明されていない。カーボンファイバー製のMeituanの小型飛行機の重量は約4kgで、約2.5kgの食品を運ぶことができる。これは、チェン氏によれば、2人分の食品の重さに相当する。もし、誰かがミルクティーを1杯だけ注文したら、残りのスペースは無駄になってしまう。各キオスクが受けることができる注文は約28件だ。ピーク時には、顧客が速やかに料理を取りに来ることに賭けることになる。

また、新しい宅配ボックスでは、発生するゴミの問題もある。Meituanは、キオスクの横にリサイクルボックスを設置したが、顧客が容器を持ち去ることは自由だという。ゴミ箱に捨てる人がいてもおかしくはない。

米国から得た教訓

2017年から2018年にかけて、中国の民間航空局は、米連邦航空局が行った低高度空中移動に関する研究を参考にして、米国の「後を追い」始めたとチェン氏はいう。それから間もなく、中国の規制当局は、新進のこの分野のガイドとルールの策定を開始した。Meituanも同様に、米国のドローンのルールなどを研究したが、両国は人口密度や消費者行動が著しく異なるため、画一的な解決策があるわけではないことは認識している。

深圳にあるMeituanのドローン着陸キオスクで注文品を受け取る客(画像クレジット:TechCrunch)

米国人の多くは郊外のゆったりとしたところに住んでいるが、中国やその他多くのアジア諸国では、人々は都市部に密集している。そのため、米国のドローンは「耐久性に重点を置いている」とチェン氏はいう。例えばGoogle(グーグル)やAmazon(アマゾン)が開発したドローンは傾向として「垂直離着陸が可能な固定翼型」だが、Meituanのソリューションは小型ヘリコプターのカテゴリーに入り、複雑な都市環境により適している。

米国で生まれた技術は、しばしば中国で、類似した開発にヒントを与えてくれる。Amazon Prime Air(アマゾン・プライム・エア)の場合は、将来がバラ色というわけでもない。Amazonのドローン配送事業は目標としていた時期に間に合わず、従業員を解雇していると報道されているが、同社はドローン配送部門が「大きな前進を続けている」と話す。

チェン氏は、Prime Airが「明確な戦略を持っていないようだ」とし、Alphabet(アルファベット)のWing(ウィング)が注力する近隣配送と、UPSが得意とする長距離輸送の間で「揺れ動いている」と主張する。さらに、こう続けた。

低高度航空物流における中国と米国の競争からわかるのは、自身の戦略的位置を把握することが重要だということです。無人航空機の設計は誰でもできます。問題は、どのような顧客に、どのような無人航空機を使うかです。

規制について

ドローン配送の安全性について尋ねると、チェン氏は、Meituanのソリューションは「民間航空局」が定めたルールに「厳密に従う」と答えた。北京に本社を置く同社が深圳を試験の場に選んだのは、ドローン大手DJIの本拠地であること、無人航空機のサプライチェーンが成熟していることだけが理由ではない。経済的な実験で知られるこの南部の大都市は、中国で最もドローンに友好的な政策を掲げていると同氏は話す。

Meituanの各ドローンは、深圳の無人航空機交通管理情報サービスシステム(UATMISS)に登録される。飛行中は、5秒ごとに正確な位置をUATMISSに通知することが義務付けられている。さらに重要なのは、迂回の手間をかけてでも、人混みや市街地を避けられるよう、ナビゲーションシステムが作動していることだ。

Meituanのドローン宅配ボックスから受け取ったミルクティー(画像クレジット:TechCrunch)

今回テストしたドローンは、このモデルでは3回目の試験機だ。15m離れたところで聞こえる騒音は約50dBで、これは「昼間の街頭レベル」に相当するとチェン氏はいう。次世代機では、さらに静粛性を高め「夜間の街頭レベル」まで騒音を低減させる予定だ。だが、小型航空機にとって、静かすぎるということはない。規制当局は、騒音を許容できるレベルにすることが「より安全である」との見解を示している。

人の手を借りる

Meituanは、中国における数百万の宅配便をすべて無人航空機に置き換えるつもりはない。だが、自動化により、過負荷気味になっている同社の配送プラットフォームの負荷を軽減できる。同社の配車アルゴリズムは、乗員の安全よりも事業の効率性を優先しているとされ、国民と政府の両方から批判を浴びている。労働者の確保が困難なため、労働集約型の産業はすでにロボットの助けを求めている

関連記事:1本のバイラルな記事が中国フードデリバリー業界の狂乱にブレーキをかける

Meituanの目標は、人間とロボットのコラボレーションの最適点を見つけることだ。深圳の道路インフラはスクーターのドライバーやサイクリストに優しくないことで有名だが、空中移動はそうした地上の障害物によって制限されることはない。ドローンは大きなインターチェンジの上空を飛び、宅配業者がピックアップしやすく、顧客の最終目的地まで配達しやすい場所まで食事を運ぶことができる。

Meituanは、すでにさらなる自動化を視野に入れている。例えば、消耗したドローンのバッテリーをスタッフが手作業で交換することに代わる、自動バッテリー交換ステーションに関する研究と開発を行っている。また、レストランから近くのドローン離陸場まで、ベルトコンベアのようなシステムで商品を移動させることも検討している。これらのソリューションの大規模展開にはまだ何年もかかるが、明らかにフードデリバリーの巨人は自動化された未来へと滑り出している。

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

RPAソフトAutomation AnywhereがFortressIQを買収、プロセスディスカバリー分野に進出

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ソフトウェアで知られるAutomation Anywhere(オートメーション・エニィウェア)が、プラットフォームの拡大を計画している。同社は米国時間12月23日朝、プロセスディスカバリーのスタートアップ企業であるFortressIQ(フォートレスIQ)を買収する意向であると発表した。両社は買収金額を明らかにしていない。

FortressIQは、Automation Anywhereに不足していたプロセスディスカバリーのコンポーネントを提供することになる。これによって、AIを搭載したソフトウェアで自動的に内部プロセスをマッピングすることが可能になり、高額なコンサルタントが不要になる。

「Automation AnywhereとFortressIQは一緒になって、自動化の未来を再形成し、デジタルトランスフォーメーションのイニシアチブを追求するお客様の自動化、適応、加速の方法を変えていきます」と、Automation AnywhereのCEO兼共同創業者であるMihir Shukla(ミヒル・シュクラ)氏は、声明の中で述べている。

この発言には、幹部ならではの大げさな言葉が少なからず含まれているものの、この買収が同社の能力を拡大することは確かだ。PitchBook(ピッチブック)のデータによると、FortressIQは2017年の創業以来、4600万ドル(約52億6000万円)を調達しているという。TechCrunchでは、2018年に1200万ドル(約13億7000万円)を調達したシリーズAと、2020年の3000万ドル(約34億3000万円)を調達したシリーズBを記事にしてきた。

しかし、これに対して市場リーダーのCelonis(セレニス)は、Crunchbase(クランチベース)のデータによると、6月に110億ドル(約1兆2600億円)の評価額で10億ドル(1143億円)の大規模なシリーズBを実施するなど、これまで14億ドル(約1600億円)の投資を集めている。4月には大規模な組織内でそのサービスを販売するためにIBMと重要な契約を結んだ

FortressIQの創業者兼CEOであるPankaj Chowdhry(パンカジ・チャウドリー)氏は、シリーズBラウンドの際に、同社は自動化されたプロセスディスカバリーを支援するコンピュータービジョンを用いたソリューションに注力していると語っていた。

「私たちはプロセスディスカバリーの、主にプロセスを自動化する部分を支援するために、このようなクールなコンピュータビジョンを開発しています。しかし、私たちが見てきたのは、人々が当社のデータを活用して変革戦略を推進しているということであり、結局その中で自動化はかなり小さな要素になっています」と、チャウドリー氏は当時、語っていた。Automation Anywhereの一部として、自動化はより大きな役割を果たすことになるはずだ。

2021年は、RPA、ローコードのワークフローツール、プロセスマイニングが一体となって過剰なほど市場を活発化させており、確かにプロセスオートメーションは最近注目を集めている

RPA市場のリーダーであるUIPath(UIパス)は、4月に株式を公開して大きな反響を呼び、最終的な非公開評価額は350億ドル(約4兆円)に達したが、その後は株価が冷え込んでいる

それでもなお、IT調査会社のGartner(ガートナー)は、UIPath、Blue Prism(ブルー・プリズム)、Automation Anywhereの3社をRPA市場のリーダーと見なしている。今回の買収はAutomation Anywhereにとって、業界に遅れを取らないようにそのプラットフォームと同社の自動化能力を拡大するためのものだ。

画像クレジット:Nataliia Nesterenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウォルマート提携のロボット企業SymboticがソフトバンクSPAC経由で株式公開へ

Walmart(ウォルマート)は、Amazon(アマゾン)のオンライン支配に対抗するためにあらゆる優位性を追求し、ロボティクス分野で浮き沈みを繰り返してきた。巨大な小売企業のWalmartは2021年7月、マサチューセッツ州を拠点とするオートメーション企業Symbotic(シンボティック)と契約を結び、同社との関係をさらに強化した。この新しい契約は、2017年に初めて試験的に実施された、Walmartの25の地域配送センターにロボットを導入するという提携を拡大した。

関連記事:ウォルマートが25の配送センターにSymboticのロボットを導入

完成までには「数年」を要する予定のこの提携は、Albertsons(アルバートソンズ)やC&S Wholesale Grocers(C&Sホールセールグローサーズ)とのパートナーシップに続くものだ。Symboticによると、現在導入しているのは「16州とカナダの8つの州の1400超の店舗」で、これはおそらく配送センターの影響を直接受ける場所を指している。同社の自律型ロボットシステムは、既存の倉庫構造を増強する。当然のことながら、同社は現在も続くサプライチェーンの問題に影響を与える方法にも積極的に取り組んでいる。

同社は米国時間12月13日、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のSVF Investment Corp.3との合併により、SPAC経由で株式公開する計画を発表した。この取引により、Symboticのプロフォーマの株式価値は約55億ドル(約6250億円)となり、ソフトバンクからの2億ドル(約230億円)を含む7億2500万ドル(約820億円)の総資金を調達することができる。また、ソフトバンクにとっては、ロボットへの投資が非常に実り多い年として2021年を締めくくるものになる。

CEOのRick Cohen(リック・コーエン)氏は、リリースの中で次のように述べている。「ソフトバンクは、最先端の人工知能やロボティクスのイノベーターに投資してきたすばらしい経験を持っています。彼らとの提携は、当社の可能性を最大限に実現するための新たな洞察力、関係性、資本を提供してくれるでしょう。ソフトバンクとともに、Symboticがサプライチェーンの近代化において強力かつ長期的な力を発揮し、すべての人に利益をもたらすことを確信しています」。

想定どおり2022年上半期に取引が完了すれば、Walmartはロボット・AI企業の9%を所有することになる。Amazon Robotics(アマゾン・ロボティクス)の基盤となったKiva Systems(キヴァ・システムズ)のような企業の全面的な買収とまではいかないが、ロボットを使ったフルフィルメントセンターへの取り組みは将来に向けて不可欠なステップだとWalmartが判断したことは明らかだ。

画像クレジット:Symbotic

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

【TC Tokyo 2021レポート】コロナ禍で成長したD2Cブランドが、今後も生き残る条件とは?

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。2日目午後3時25分から午後4時にかけて行われたセッション「D2C」では、コロナ禍で需要の伸びたeコマースの中でも、D2Cブランドにスポットが当てられた。セッションには、D2Cブランドとしてお菓子セットのサブスクリプションサービスを提供しているBokksu(ボックス)創業者兼CEOのDanny Taing(ダニー・タン)氏と、ツール提供側からオンラインストアの自動化ツールを提供しているAlloy Automation(アロイオートメーション)共同創業者兼CEOのSara Du(サラ・ドゥ)氏が登壇。モデレーターはライター / 翻訳家の大熊希美氏だ。

食を通じて日本文化を広めたい

タン氏はニューヨーク出身。スタンフォード大学で心理学と日本語を学んだ後、Googleで1年間デジタルマーケティング業務を行った後、東京に移り住んだ。早稲田大学で、さらに日本語を学んでから2010年に楽天に就職。2013年頃に楽天を辞め、故郷のニューヨークへと戻ることにした。

ニューヨークに戻ってからの悩みは「日本のおいしいお菓子が手に入らないこと」。「日本にいた4年間で日本語をだいぶ操れるようになったので、日本中を旅することができた。そして、各地で「地方限定」のお菓子と出会えた。しかし、米国ではそれを手に入れるのがとても難しかった」とタン氏は振り返った。

また、自分がアジア系というマイノリティであることに言及した後「米国の大多数は、日本にはピカチュウかゲイシャしかないと考えているのではないか、と思うことがあった」と所感を述べる。

「でも、日本にはもっと多様な文化がある。深いレベルで、食を通じて文化の橋渡しをしたい。家族経営で作っているお菓子は、みんなをワクワクさせる力がある。それで、2016年4月、日本のお菓子やお茶のセットを詰め合わせたボックスを、毎月届けるサブスクリプションサービス Bokksuを立ち上げることにした」とタン氏。

Bokksuのボックスで届くお菓子は、北海道から九州、沖縄まで日本各地のもの。数百年続いている老舗のメーカーや家族経営店など約100軒の菓子メーカーと契約しており「中には五代以上続くビジネスもある」という。「お花見、月見などを楽しむ文化が日本にはある。毎月、文化的なテーマに沿ってキュレーションを行い、約14~16種類の商品をボックスに入れている」とタン氏。発送先は世界中の約100カ国、発送個数は100万個近くに上るという。

創業当初の登録者数は40人ほど。菓子メーカーも2〜3軒だった。「外部からの資金提供もなかったので、できるだけコストに無駄のない手段を使いたかった」というタン氏が選んだツールは、ShopifyとReChargeだった。ShopifyはECプラットフォームを、ReChargeは、ECサイトにサブスクリプション決済を実装可能にするツールだ。

「おかげで、わずか数千ドル(数十万円)で起業。自分でウェブサイトを作り、ニューヨークの自宅の居間でお菓子を箱詰めして出荷するという一連のサイクルを回すことができた」とタン氏はいう。

垂直型成長に潜む落とし穴

立ち上げ当初は、口コミ、アフィリエイト、現物支給のインフルエンサーマーケティング紹介プログラムなど、コストのかからないマーケティング手法しか取れなかった。「ビジネスを始めてから2〜3年目までは、サービスの完成度を高めることに重点を置いた」とタン氏。「そのために、毎月顧客にアンケートを送り、改善点を尋ねながら、サービスを改善していった」。

タン氏は「顧客基盤があるサブスクリプションサービスだからこそ、継続的な改善が可能だった」と話す。

そして、2018年にそれは突然訪れた。バイラルキャンペーンが当たり、わずか1カ月で加入者が1000人から3000人に増加したのだ。

「私たちとしては、顧客が増えたと大喜びだった」とタン氏。「しかし急速に拡大したため、倉庫では出荷が、梱包時には人手が、カスタマーサポートは遅延によるクレーム対応がそれぞれ追いつかなくなり、すべてが壊れてしまった」と振り返った。

「急激な規模拡大には、ウェブサイトのソフトウェア面だけでなく、フルフィルメントなど物理的なインフラもしっかり用意しておく必要があった」(タン氏)

ツールによる自動化の必要性に迫られる

セッションは、ウェブサイトで利用できるツールに焦点を当てて続けられた。そして、この段階で必要性を増したのが、eコマースに関連したものすべてを包含可能な自動化ツールの利用だった。

「起業当初は、Shopifyに入ってくる注文1つ1つをチェックして興奮していた」とタン氏。「しかし、規模が大きくなり、1日に数千件もの注文を受けるようになると、手作業では対応できない。そこで、100%の確率で機能する強力な自動化ツールの導入を検討することにした」。

自動化ツールでは、トリガーに対して適切な対応を行える。注文のタグ付け、顧客プロフィールに応じた礼状の送付、さらにABテストなども実行できる。

「Alloyがなければ、顧客が受け取ったものをABテストし、それによりサービス向上につなげることはできなかっただろう」とタン氏はAlloyの有効性について述べた。

ここで、Alloyについて触れておこう。Alloyは、2019年に創業したスタートアップAlloy Automationが提供するeコマース向けのツールだ。eコマースを運営するためには、受注、決済、倉庫への連絡、顧客への連絡などさまざまな作業が必要で、場合によっては作業ごとにアプリを変える必要がある。それらをまとめて管理し、タスクを自動化するのがAlloyというわけだ。

ドゥ氏は、ハーバード大学の学部生だったが、休学し、米国のショッピングアプリ「Wish」でインターンを行う。そこでZapireのような自動化ツールに興味を持ったが、アプリ同士をつなげる程度のシンプルなことしかできなくても、年間2万ドルもするような高額のものであることに気づいた。

「既存のワークフローを視覚的にする自動化ツールの構築に興味を持った」とドゥ氏。エンジニアであり、デザインの勉強もしていた氏らしい発想だ。

そして、さまざまなアプリ同士を連携させ、循環させるツール開発に取り組み始め、2019年10月に公開するや、爆発的にヒットした。

公開からしばらくは、用途を念頭に置くことなく、データ操作や論理的操作を実行する機能、つまりコアの構築にしぼってツールに磨きをかけていった。それにより、さまざまなAPIをサポートし、ワークフローエンジンを持たせるという当初の目的を果たすツールに成長したのだ。

「パンデミックが本格化する直前の2020年3月には、eコマースで磨きをかけた」とドゥ氏。「わたしも小さなストリートウェアブランドを立ち上げたばかりだったし、友人にも店舗経営者が幾人かいた。そこで、最初の統合にShopifyを加えることにした」。

Shopify FlowやZapireといった、他の自動化ツールとの違いについて大熊氏から尋ねられたドゥ氏は「接続アプリ数の違い」を挙げた。

「Zapireなどでは2つまたは4つのアプリを接続してデータを同期するだけだ。しかし、わたしたちの顧客の多くは20、または30以上の非常に複雑なワークフローを構築している。それに対応し、さらに視覚化するのがAlloyだ。

また、eコマースに重点を置いたツールで、プラットフォームでは行えないような深いところでのアプリ同士の統合を、エンジニアチームを必要とせずに行うことができるという特徴もある」(ドゥ氏)

実に、130ものアプリをサポートしているというのだ。それにはSMS、Eメールロイヤリティ、UGC、返品アプリの3PLなどが含まれる。そのため、商品の追加や在庫の更新、自動応答といった作業をすべて自動で行える。

「データがさまざまなアプリ間でサイロ化(データを横断的に使えない状態)されている、大量のデータを手動でさばききれないときなどに、Alloyはマーケターをサポートする。Bokksuのように、サブスクリプション決済を行っているケースでも、対応できる。しかも、ノーコードで、マウス操作のみでそれらが可能だ」(ドゥ氏)

顧客自ら参加したくなるコミュニティの形成でD2Cブランドを確固たるものへ

急激な成長時には、まだAlloyが誕生していないこともあり、Bokksuの自動化ツールとして利用できなかったタン氏だが「今ではAlloyのおかげで、Shopifyに関連した90%ほどの作業を自動化できている」と喜ぶ。「在庫が少なくなったことを検知するトリガーを設定し、倉庫にメールを送る、再入荷があった場合に顧客にメールを送る。これらを手動ではなく、自動的に行えるようになった」。

そのおかげで、本家のbokksu.comだけでなく、日本のキッチン用品や包丁、ガラス製品などを都度販売するbokksugrocery.comという2つのストアを円滑に運営可能となった。「Alloyは、bokksu.comに登録されている顧客がbokksugrocery.comで購入した場合に、特別な方法で識別して、タグ付けできる。これは、Shopify Flowではできないことだ」とタン氏は説明した。

最後に大熊氏は、2人にD2Cブランドの構築と拡大に重要な要素についてどう思うかを尋ねた。

ドゥ氏は「コミュニティの重要さ」について語った。「フォロワーが5万人いるのに、投稿に対しての『いいね!』が20件のコミュニティより、フォロワーが3000人しかいないのに、『いいね!』が常に300件つくようなコミュニティを育てるブランドのほうがはるかにいい。そのためにも、リテンション(顧客との関係性維持)に取り組むのに役立つツールも重要になってくると思う」。

タン氏も、コミュニティの重要さを肯定しつつ「商品を販売していては、Amazonに勝てない。D2Cブランドが提供すべきなのは、ユニークな体験だ」と語る。「Bokksuも、単にお菓子の詰め合わせを送っているわけではなく、24ページ以上ある『カルチャーガイド』マガジンに、アレルゲン情報や、製品の最高の楽しみ方、メーカーへのインタビュー、日本の地図や製品の産地などを紹介している。おいしいお菓子だけでなく、日本のグルメ旅行も楽しんでもらえる、そういう体験を提供しているのだ」と説明した。

「顧客が、『これは特別だ』と感じてくれるものを提供する。学び、記憶に残る経験をしてもらう。それができるD2Cブランドは、人々をコミュニティに引き込み、コンテンツに参加させることができ、成功に至ると思う」とタン氏は語る。

作業そのものはツールで自動化を図り、顧客に最高の体験を提供することに専念する。それにより、顧客満足度が上がり、良質なコミュニティを形成できる。これこそが、D2Cブランドの成功の秘訣だ、と感じられるセッションであった。

TechCrunch Tokyo 2021は、12月31日までアーカイブ視聴が可能だ。現在、15%オフになるプロモーションコードを配布中だが、数量限定なのでお早めに。プロモーションコード、およびチケット購入ページはこちらのイベント特設ページからアクセス可能だ。

レブコムの音声解析AI電話MiiTelがノーコードのワークフロー自動化ツールZapierと連携開始

レブコムの音声解析AI電話MiiTelがノーコードのワークフロー自動化ツールZapierと連携開始

RevComm(レブコム)は12月10日、同社音声解析AI電話「MiiTel」(ミーテル)と、Zapierのワークフロー自動化ツール「Zapier」との連携を開始したと発表した。従来のSalesforce、Slack、Kintoneなどとの連携に加えて新たにZapierとも連携可能となったことで、より様々なアプリケーションやサービスと組み合わせる形で業務を自動化しやすくなった。

Zapierは、複数のウェブアプリやサービスを連携させることで、日々の業務で発生する定型的な作業をプログラミング不要で自動化できるツール。「Googleスプレッドシート」「Chatwork」「Microsoft Teams」など、3000以上のアプリケーションやサービスをサポートしている。RevCommは、MiiTelが生成する様々なデータを各種サービスと連携させることで、業務効率のアップ、また新たなインサイトの発見に役立てられるとしている。

Zapier連携機能では、現在4つの「Trigger」(トリガー。処理開始のきっかけとなるイベント)を利用できる。

Zapier連携機能で利用できるTrigger

  • Incoming unanswered:不在着信。利用例は、「不在着信があった場合に、Gmailへメッセージを送信」など
  • Phone analysis completed:音声解析完了。利用例は、「MiiTelの音声解析完了時に、応対履歴を利用中のSFAやCRMへ連携」など
  • Video analysis completed:動画解析完了。「MiiTel Live」「MiiTel for Zoom」(ベータ版)利用ユーザー向けの機能。利用例は「ミーティング動画の解析完了時に、音声認識結果をGoogle ドキュメントとして保存」など
  • Answering Machine recorded:留守電録音。利用例は、「留守番電話があった場合に、Chatworkへ留守番電話の通知メッセージを送付」など

人の意思決定が必要なワークフローをより簡単に構築できるようにするIkigaiが約15億円調達

MITの研究をベースにしたスタートアップIkigai(イキガイ)は、人間が関与するワークフローの構築をシンプルにしたいと考えている。従来のロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が反復的な作業のためのボットを構築するものであるのに対し、同社はプロセスの一部として人間が意思決定をしなければならないワークフローを簡単に構築しようとしている。

同社は米国時間12月9日、Foundation Capital、8VC、Underscore VC、およびさまざまな業界のエンジェル投資家から集めた1300万ドル(約15億円)のシードラウンドを発表した。

同社の共同創業者でCEOのVinayak Ramesh(ヴィナヤク・ラメシュ)氏は、MITでの研究や、2021年12月に買収したデジタルヘルスケアのスタートアップであるWellframe(ウェルフレーム)での研究で、RPAでは対応できない複雑なワークフローが存在することを発見したと話す。

「ユースケースがあることを目の当たりにしました。基本的には人間がデータに基づいて判断や意思決定を行い、データやルールが頻繁に変更されるために自動化が非常に困難な、組織でのマニュアルプロセスなどです」とラメシュ氏は筆者に説明した。

日本語で「あなたの目的」を意味するIkigaiはこの問題を解決するためのツールで、異なるデータソースを含むドラッグ&ドロップのワークフローを作成し、その一方で人間が判断するステップを組み込み、その結果をダッシュボードやスプレッドシートで表示することができる。ラメシュ氏らは、これを「AI-Charged」スプレッドシートと表現している。

画像クレジット:Ikigai

しかしラメシュ氏らは、Power BIやAirtableといった他の超高機能スプレッドシートのアプローチとは異なると考えている。「(それらのツールは)ワークフローに人間を必要としますが、意思決定やデータに基づくワークフローではありません」とラメシュ氏は述べ、決定ループを構築できることが自社製品の重要な差別化要因だとする。

現在、同社の従業員はエンジニアを中心に20人で、2022年には倍増させる計画だ。創業者たちは、会社の規模を拡大するにあたり、多様性のある包括的なチームを構築する必要性を確実に認識しているようだ。

「多様性があることで、さまざまな視点を持ち、さまざまなタイプの人たちが毎日出社してくるので、すべてが働きやすい環境になります」とラメシュ氏は話す。また、初期の従業員の多くが移民であり、彼らが米国で働くためのビザを取得するという困難なプロセスを乗り越えるための支援を行ってきたことも指摘する。

この会社のアイデアは、ラメシュ氏がMITの学生時代に行っていた研究から生まれた。実は、共同創業者でCTOのDevavrat Shah(デバブラット・シャー)氏は、MITのコンピュータサイエンスの教授で、ラメシュ氏の教授でもあった。シャー氏は、2019年にNike(ナイキ)が買収したCelect(セレクト)という別の会社も立ち上げている。

Wellframeの設立に協力した後、ラメッシュ氏は大学院に戻り、そこでシャー氏とつながった。このような製品のアイデアは時間の経過とともに顕著になるばかりで、彼らはさらに研究を始め、2020年に製品を作った。

画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Slackがワークフロー構築を容易にする開発者向けのビルディングブロック機能を発表

Slackは、Slack内でアプリケーションを動かして面倒な切り替えを減らすことで、常にコミュニケーションツールとして差別化してきた。米国時間11月16日のSlackのFrontiersカンファレンスでは、新しいビルディングブロックによるアプリ統合の進化が発表される。ビルディングブロックとは開発者が構築するパッケージ化されたワークフローのコンポーネントで、ビルディングブロックをつなぎ合わせて使うことができる。

Slackのプロダクトマネジメント担当シニアバイスプレジデントであるSteve Wood(スティーブ・ウッド)氏は、再利用可能なビルディングブロックを提供しようとしたため、新しいアプローチではプラットフォーム全体を再設計する必要があったと語る。これまで開発者はSlack内のアプリを作ることができ、それは開発者の意図の通りに動作した。新しいビルディングブロックはユーザー側がコントロールできるため、プラットフォーム全体がもっと利用しやすく、カスタマイズ可能になるはずだ。

ウッド氏は「この新しい世界で、我々はまさに(プラットフォームを)リミックス可能なものとして前進させていきます。ユーザーがアプリをインストールするとビルディングブロックを利用できるようになり、ビルディングブロック同士をつないで、チャンネル内でビルディングブロックがお互いにやりとりできるようになります。ビルディングブロックをつなげば、やりたいことのために必要なワークフローを構築できます」と説明した。

画像クレジット:Slack

同氏は、業務に必要なアプリがどんどん増えていくことを背景にこのアプローチが生まれたとし、今後はSlackのワークフローの中でアプリをつなぎ合わせて目的のタスクを選択できるようになると述べた。ユーザーがSlack内で、あるいはSlack以外のアプリを切り替えを余儀なくされるのではなく、ソフトウェアがユーザーに代わって仕事をする。

ウッド氏は、Slack内で障害に関するZendeskのヘルプデスクチケットが発行される例を挙げている。自動化された緊急対応ワークフローが動き出して、PagerDutyのアラートが発せられ、重要人物を集めたZoomミーティングが自動で始まり、Boxから緊急対応チェックリストが引き出され、インシデントに関する記録を取るためにGoogleドキュメントで書類が開く。

ツール自体は開発者がファンクションとトリガーを構築するためのインターフェイスで、開発者はSlackの新しいコマンドラインインターフェイスで開発ができる。トリガーによってワークフローを動かすファンクションが開始される。構築したものは単独のアプリとしてもビルディングブロックとしても保存でき、開発者は複数のビルディングブロックをつなぎ合わせることもできる。

CCS Insightのアナリストでワークフローのトランスフォーメーションを担当するAngela Ashenden(アンジェラ・アシェンデン)氏は、Workflow BuilderツールとともにSlackの統合機能をすでに使っている企業にとってこのアップデートは好ましいはずだという。

アシェンデン氏は次のように説明する。「この新機能はアプリとワークフローを作成するプロセスの高速化を目指しています。プロセスのさまざまなパーツ間のギャップを埋め、テック系か非テック系かにかかわらず誰もがこれまでよりも簡単にワークフローを構築し、日々のワークフローを共有して利用できるようになるでしょう。目的は従業員がワークフローをアドホックで、あるいは個人のプロセスで利用できるようにすることであり、チームのプロセスももっと明確にすることです」。

IDCのアナリストでソーシャルやコラボレーション分野を調査するWayne Kurtzman(ウェイン・カーツマン)氏は、ビルディングブロックのコンセプトは必ずしも目新しくはないものの、これによりSlackは組織内でワークフローを動かし、単なるコミュニケーションを超える場としてさらに幅広くアピールするだろうと述べた。

カーツマン氏は「Slackにはこれまでにも(統合の)機能があり、ブロックのおもちゃのように簡単に作れることを狙っていました。使いやすくて再利用でき、またユーザーがオートメーションへの理解を深めていくことで、この機能はさらに幅広く使われるだろうと私は予想しています」と語った。

ウッド氏は、数日中にプライベートベータを公開するが、最終的にはビルディングブロックのライブラリやマーケットプレイスのような配布システムが公開されるだろうと述べた。これはまだ検討段階だ。SlackのWorkflow Builderのアップデートも予定されており、これを使うと非テック系のエンドユーザーがあらかじめ用意されたビルディングブロックをつなげて、テンプレート化された便利なワークフローを作ることができる。

このツールは2022年中にリリースされる見込みだが、ビルディングブロックが説明通りに動作するのであれば、Slackはコミュニケーションの意味合いを弱め、ワークフローやプロセスオートメーションにシフトしていくのかもしれない。それは、Salesforceとより深く統合するために重要なことだろう。Salesforceは2020年末にSlackを270億ドル(約3兆円)以上で買収した

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

業務プロセスを自動化するRPAを「自動化」するMimicaが6.8億円のシリーズA調達

RPA(ロボットによる業務プロセス自動化)導入を自動化するMimica(ミミカ)が、Khosla VenturesからシリーズAで600万ドル(約6億8000万円)を調達した。同社は今回の資金を、米国での販売チームの設立と製品の開発に使う予定だ。これまでのシード投資家には、英国のアクセラレーターEntrepreneur FirstやEpisode 1 VCなどがいた。

Mimicaの最初の製品であるMapper(マッパー)が対象とするのは「プロセス・ディスカバリー」の領域だ、すなわち「従業員のクリックやキーストロークからパターンを学習する」ことで、通常はビジネスアナリストが手作業で数カ月かけて作成する業務プロセスマップ(業務プロセスの見取り図)を生成するのだ。つまり「プロセスを自動化するための作業」を自動化するということだ。

MimicaはRPAチームを持っていて、データ入力、フォームへの入力、クレームやチケットの処理などの反復的な作業を行うソフトウェアボットを開発している。こうした市場規模は2027年までに1070億ドル(約12兆2000億円)に達すると予想されている。しかし、Mimicaによれば、UiPath(ユーアイパス)のようなRPAの巨人が提供するシステムを実際に導入することは難しく、Mimicaのシステムを使うことで導入を加速することができるという。

Mimicaのチーム

MimicaのAIは「自動化できる局面」を自動的に発見し、開発を加速できるボット用のプロセスマップを生成することで、導入のためのボトルネックを取り除くのだ。

CEOのTuhin Chakraborty(トゥヒン・チャクラボルティ)氏とCTOのRaphael Holca-Lamarre(ラファエル・ホルカ=ラマール)氏が、2017年にMimicaを共同創業した。ホルカ=ラマール氏は、計算論的神経科学と機械学習で博士号を取得た。チャクラボルティ氏は、スタンフォード大学で機械学習を学び、LinkedInで開発した教師付き学習モデルで特許を取得した。

2020年のローンチ以来、MimicaはDell(デル)、AT&T、Hexaware(ヘクサウェア)、Experis(エクペリス)、Ironbridge(アイアンブリッジ)と仕事をしてきた。

チャクラボルティ氏は次のようにいう「RPAは当社の技術を売り込むための最適な足がかりとなります、なぜならRPAを導入した企業はどこも大変な苦労を重ねているからです。手作業で自動化できる局面を探したり、プロセスマップを構築したりするのは拷問のようなものですし、不必要なものなのです」。

Khosla Venturesの創業者であるVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏は次のように語る「私たちがMimicaに投資したのは、彼らのチームがAIシステム構築の深い技術的専門知識を持ち、企業がプロセスを管理する際に直面する課題を十分に理解している、というすばらしい組み合わせだったからです」。

Mimicaの競合相手は、米国のFortressIQ(フォートレスIQ)やSkan(スキャン)だ。なおUiPathやCelonis(セロニス)のような他のプレイヤーも、競合するソリューションを開発している最中だ。

画像クレジット:charles taylo / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)