【レビュー】MINIクーパーSE、楽しいEVだが追いつくべきところが残っている

2ドアMini Cooper(ミニクーパー)のようなクルマを電動化することは「なぜ今まで思いつかなかったんだ」的なすばらしいコンセプトに思えるが、もちろんMiniも同じ意見だ。

同社はこのコンセプトを2009年以来試しており、全電動クーパーの実用性と魅力を実地テストするためのプログラム、Mini Eを限定販売したこともある。

テクノロジーの進歩と、そんなクルマへの需要からMini Cooper SEが生まれた。熱烈な支持を得ている同社の2ドア・ハッチバックの電動バージョンだ。これは、会社が自らに課した期限、2030年までの全電動化に向けた第1ステップだ。

結論:Mini Cooper SEは、ブランドが期待するの遊び心あるファンに向けた軽快な1台だが、残念ながら年老いたハッチバックに2022年には物足りない電動パワートレインを載せたクルマである。

ポイント

Mini Cooper SEは、2年前に登場したばかりの第3世代Cooper(市場によってはHatchで知られる)の完全バッテリー駆動バージョンだ。陽気な2ドア車の内燃臓器が、同社の新しい電動内蔵で置き換えられた。

燃料タンクの代わりにバッテリーが配置され、ケーブルはトランスミッション・トンネルを通り、エンジンルームの大部分を駆動ユニットが占めている。

従来のターボチャージャー付きエンジンに代わり、このMiniは前輪を駆動する電動モーターを備え、181馬力、最大トルク199ポンド・フィート(27.5kgf・m)を引き出す。

他のCooperと比較すると、Cooper Sあるいはターボチャージャー付き2.0リッター4気筒とほぼ同等だ。SEのパワーを蓄えているのが28.9kWhバッテリーで、フル充電で約114マイル(約183 km)の走行が可能。レベル3 DC高速充電器ならバッテリーの80%を約35分間で、レベル2充電器では1時間当たり20%充電できる、と同社はいう。家庭用コンセントでは1時間当たり2%充電できる。

テクノロジー

画像クレジット:Alex Kalogianni

標準搭載されているテクノロジーに関して、Mini Cooper SEは基本部分を押さえている。8.8インチのタッチスクリーンが運転席と助手席の主要なインターフェースだ。ここにエンターテインメントとナビゲーション機能があり、後者はリアルタイムの交通状況を表示する。BMW(ビー・エム・ダブリュー)ファミリーの他の車と同じく、Cooper SEには細かい機能をカスタマイズできる設定ページがたくさんある。すべて「ライブ・ウィジェット」形式になっていて、大きくてカラフルなグラフィクスを指でスワイプして操作する。これが肌に合わない人は、Apple CarPlayも利用できる。

安全および運転支援には、アダプティブクルーズコントロールと車線逸脱警報システムを備えている。車と歩行者の両方を監視する前方衝突予測警報もある。

ユーザー体験

BMW製フォーマットをデザイン変更、再使用して以来、MiniのデザインはCooperの精神を注意深く強調してきた。このため、ユーザー体験はさまざまな基本的部分が驚くほどドライバー・フレンドリーだ。

まず、運転席まわりは見た目以上にゆったりしている。コックピットは運転席と助手席にわたってこぢんまりと配置され、どちらの席でも心地よく感じられる。ドライバーのハンドル越しに見えるシンプルなディスプレイは、必要最小限の情報を提供して雑音をヘラしている。現在の速度の他には、充電状態と利用状況、回生充電状態かどうかを示す2つの計器がある。ドライバーはこれらの表示と常時変化を続ける予測走行距離を、ときとして過剰に、見続けることになる。ありがたいことに、別のクルマに近づきすぎた際には、常時有効な衝突予測警報が、同じディスプレイに明るい赤のグラフィックを表示して注意を促してくれる。

このMiniは、かつてスピードメーターを包んでいた丸形のダッシュボード・ディスプレイを継承している。このオリジナルMiniのユニークなデザインへのオマージュは、どこにでもあるインフォテイメント画面の時代に残された過去の痕跡だ。8.8インチのタッチスクリーンは丸い穴の中の四角い杭のように居座り、黒いピアノ型ボタンが隙間を埋めている。ウィジェットのUIは適切な色遣いで楽しいが、ナビゲーションの直感性は損なわれている。目的の機能を見つける方法は必ずしも明快ではなく、貴重な運転中の注意を削がれることがしばしばあった。

その他の物理的入力装置は、飛行機風のスイッチからエアコンのダイヤルまで、かなり重厚で存在感がある。すべてが理に適った機能的なかたちに配置されており、必要な瞬間に探さなくてはならないことは稀だろう。Mini SEを運転することがアクティブな体験であることから、これは重要だ。

走り

画像クレジット:Alex Kalogianni

いにしえのMiniたちほどミニではないが、それでもCooper SEはコンパクトで機敏なクルマであり、ずんぐりとした特徴あるスタイルを軽快な性能が支えている。電動モーターの優れたトルクと相まって、このクルマはポケモンのピカチュウカーのようにそわそわと動き回るだろう。

Miniの担当者はすかさず、このクルマの「ゴーカート」のような運転フィーリングを指摘し、そうすることは間違っていないと話した。

電動パワートレインの恩恵も大きく、Cooper SEの性能はレスポンスに優れ、持て余すこともないだろう。そのトルクはいつでも発揮可能で、0~60mphが7秒という数字は誰かを興奮させるものではないが、渋滞の隙間に入り込む能力は称賛に値する。

Cooper SEが機嫌を損ねることは滅多にないが、状況は個人による。スリルを求めて足回りがを気にする人もいるが、他の人達は今のままで満足だろう。

Cooper SEには運転モードが4種類ある。デフォルトの「Mid」モードでは、バッテリーは効率と性能のバランスをとり、アクセルを強く踏んだ時にはパワーを出すが、それ以外はできる限り電力を節約する。「Green」モードは、利用できる加速エネルギーを制限し、ペダルからの入力を緩和する。「Green+」は、人間の心地よさを一部犠牲にして最大の省エネを求める。「Sports」はアクセルの感度を高め、できる限りのパワーを出力するが、当然バッテリーを消耗させる。

どのモードを使うかによって走行距離は変わってくる。それぞれのモードによって、クルマの動作形態は大きく変わる。他に、2段階の回生ブレーキ発電が常時働く。デフォルトでは、ワンペダル運転を可能にする積極的な設定になっているが、効率の低いより自然な設定に変えることもできる。

これらのモードはどこにでもあるものだが、100マイル(160km)程度というMiniの走行距離は、運転体験に大きく影響する。この限られた距離のために、ドライバーが設定を繰り返し調節することが容易に想像できる。

典型的な乗り方はこんな感じだろう。Midモードで表示されている予測マイレージがなんであれ、Greenの方が常に心配が少なく魅力的なので、できる限りGreenモードで走り続け、交通量が増えてきたらMidに切り替える。Sportモードは非常に贅沢なごちそうとして常に背後で待機している、なぜならわずかな気まぐれの爆発が貴重な電力を貪り食うからだ。同時に、走行距離の延長と心地よさを天秤にかけて回生ブレーキモードを切り替えることも珍しくない。

普通の人は1日に100マイルも走らないという意見もあるだろう。それは真実だが、家庭の充電環境が充実していたとしても、バッテリー不足の心配は運転の楽しさを半減させる。

未来へ

今後のEV開発について、TechCrunchはMiniの考えていることを以前取り上げており、親会社のBMWが2030年までにMiniを完全電動化する計画であることもわかっている。

関連記事:Miniの電気自動車の未来はどうなる?期待されるコンバーチブル化やさらなる小型化

現在の取り組みは、急速に迫りくる期限を前にしてゆっくりとした歩みに見えるが、Miniの製品計画部門責任者であるPatrick McKenna(パトリック・マケンナ)氏、その理由の一部をTechCrunchに話した。「会社がどのように転換するかは現在も流動的ですが、今後数年の私たちの焦点は戦略的柔軟性であり、引き続きガソリン車とバッテリー駆動車を提供できる体制です」とマケンナ氏は語る。

「Cooper SEは、内燃機関のF56ハードトップと同じ生産ラインに載っています」とマケンナ氏は続けた。「(この柔軟性によって)隣り合わせで違うクルマを作ることが可能なのです」。

生産の視点から見て、2種類の顧客を満足させられるポジションにいることは理に適っているが、この戦略には自ずから限界がある。使用しているバッテリーに何か進化が起こらない限り、Cooper SE最大の問題は、改善の物理的な余地がないことだ。パワートレインは生産中止されたBMW i3からのものであり、近い将来それが起きるかどうかもわからない。

Cooper SEには、好きになれるところが山ほどあり、Miniの斬新なスタイルのファンならなおさらだ。しかしそうでない人にとっては、メーカーがいつまでこのクルマを楽しく運転させ続けてくれるかどうかを考えないわけにはいかない。

そして、既存の車両をEVに変換していることと走行距離の短さは、このクルマの売り方を難しくしている。十分なバッテリー寿命を備えたスポーティーEVが、数年前と比べて珍しくなくなっている今はなおさらだ。Miniという、その特徴を強く過去に依存しているブランドにとって、全電動化の未来はあるのかもしれないが、現在の取り組みはライバルの数歩後を歩んでいるように思える。

画像クレジット:Alex Kalogianni

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウクライナ侵攻を受けた自動車メーカーの動きまとめ

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界各国がロシアに対する制裁を強化している。その結果、多くの自動車メーカーを含め、企業はロシアでの事業活動を制限、停止、あるいは完全に撤退している。

本稿では、ロシアからの撤退決定など自動車メーカーの対応を紹介する。

ロシアでの生産を停止している自動車メーカー

MSCやMaersk(マースク)など多くの海運大手や物流会社がロシア発着のコンテナ輸送を停止したため、自動車メーカーはサプライチェーンの混乱により生産停止を余儀なくされている。

直近ではトヨタ自動車が3月3日、ロシアの工場での生産を4日から停止すると発表した。同社はサンクトペテルブルクに工場を1つ持ち、主にロシア市場向けのRAV4とCamryのモデルを生産している。

Daimler Truck(ダイムラートラック)は現地時間2月28に、ロシアのトラックメーカーKamaz(カマーズ)との合弁事業を含め、ロシアでのすべての事業活動を停止すると発表した。これまでロシア市場向けに3万5000台のトラックを生産してきた同JVは、2009年にMercedes-Benz Trucks Vostok(メルセデス・ベンツ・トラックス・ボストーク)とFuso Kamaz Trucks Vostok(ふそうカマーズ・トラックス・ボストーク)の2つの独立したJVとしてスタートしたが、2017年にこの2社が合併した。そして今後はKamazとの提携によるトラックは生産されず、Daimlerもこのトラックメーカーに部品を供給しない、とロイターは伝えている

また、Daimlerがスピンオフする前の親会社Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)も、Kamazの株式15%を売却すると発表した。

スウェーデンのトラックメーカーAB Volvo(ABボルボ)はロシアでの生産をすべて停止し、Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)も現地時間3月1日、追って通知するまでロシアでの事業を停止すると発表した。Fordはロシアの自動車会社Sollers(ソラーズ)との合弁事業を除けば、ウクライナで重要な事業を展開していないが、Fordは2019年にSollersに支配権を譲渡した

フランスの自動車メーカーRenault(ルノー)は現地時間2月25日、物流圧迫により部品不足が生じたため、ロシアにある自動車組み立て工場の一部の操業を停止すると発表した。調査会社IHS Markitによると、Renaultはロシアの自動車生産の40%近くを占めている。

Renaultは減産の具体的な内容を明らかにしていないが、ロシアには3つの自動車組み立て工場がある。モスクワ工場で生産されているロシア人向けの主なモデルは、Kaptur、Duster、Nouveau Duster、Arkana、Nissan Terranoだ。Renaultは、日産および三菱と戦略的提携を結んでいる。また、ロシアの自動車メーカーAvtoVAZの支配的株式を持っている。

韓国のHyundai Group(現代グループ)はサンクトペテルブルクの工場で年間約23万台を生産しており、ロシアの自動車生産の27.2%を占めている。ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はサプライチェーンの混乱により、3月1日から5日にかけてサンクトペテルブルクの自動車組立工場を休止するが、来週には操業を再開する予定だ。同紙は、今回の閉鎖は、ロシアのウクライナ侵攻や経済制裁とは関係がないものだと報じた。現代自動車にとってロシアは大きな市場であるため、できることなら操業停止しないよう試みる可能性もある。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)傘下のチェコの自動車メーカーSkoda Auto(シュコダ・オート)は、供給不足のため国内工場の生産を一部制限すると発表したが、ロシアでの事業は継続されている。ロシアは2021年、Skodaにとって2番目に大きな市場だった。

「ロシアとウクライナでの販売戦略については、現在、集中的に議論しているところです。最近の情勢から、ウクライナとロシアの両方における販売台数は減少することが予想されます」とSkodaは述べ、ロシアまたはウクライナ市場から撤退するかどうかは、最終的にVWが決定することになると指摘した。

日本の三菱自動車は3月1日、ロシアでの生産を停止する可能性があると発表した。三菱はPSA Peugeot Citroën(PSAプジョー・シトロエン)と合弁事業契約を結んでいて、ロシア・カルーガの組立工場でプジョー、シトロエン、三菱の車両を生産している。

販売・輸出停止

欧米の対ロ制裁の一環として、ロシアの多くの銀行が、国境を越えた迅速な決済を可能にする安全なメッセージシステムSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出された。その結果、ロシア国内の自動車ディーラーやバイヤーが外国車を買えなくなり、外国企業は外国車を売れなくなった。

三菱自動車は、ロシアでの生産を停止する可能性に加え、同国での自動車販売も停止する可能性があると述べた。トヨタは、ロシアへの輸出を停止すると発表した。

米国の自動車メーカーGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)とスウェーデンの自動車メーカーVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は現地時間2月28日、追って通知するまでロシアへの自動車輸出をすべて停止すると明らかにした。Volvo Group(ボルボ・グループ)は、売上の約3%をロシアの購買者から得ており、同国に1つの工場を持っている。

国際的な自動車メーカーで初めてロシアへの自動車出荷を停止したVolvoは声明の中で「EUと米国による制裁を含め、ロシアとの材料取引にともなう潜在的なリスク」があるため、出荷を停止したと述べている。

GMはロシアで年間約3000台を販売し、現地に工場は持っていない。

Volkswagenのロシア部門は、追って通知するまで、あるいは欧州連合と米国が科した制裁が明確になるまで、ディーラーへの納車を一時停止する。

同じくドイツの自動車会社BMWは、3月1日時点でロシアへの輸出を停止しており、供給面での制約が予想されるため、同地での生産を停止すると明らかにしている。

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は同日、ロシアでの事業と、同国へのオートバイ出荷を停止したと発表した。このブランドは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が乗っているところを写真に撮られたことがある。ロシアは米国のバイク会社にとってあまり重要な市場ではなく、ロシアには10店舗ほどしかディーラーがない。

英国の高級車メーカー、Jaguar Land Rover (JLR、ジャガー・ランドローバー)とAston Martin(アストン・マーティン)も、取引問題を理由にロシアへの車両出荷を一時停止した。JLRは2021年にロシアで6900台を販売したが、これは世界販売の2%未満だ。Aston Martinは、世界販売台数におけるロシアとウクライナの割合は合わせたても1%だと述べた。

地政学的な状況や自動車メーカーの対応は常に変化している。最新情報については再びチェックして欲しい。

画像クレジット:Anton Vaganov / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

アパートなど地下駐車場でのEV充電を容易にするHeyChargeがBMW主導で約5.4億円のシード調達

明らかな理由から、EV充電ビジネスは高成長を続けている。2007年以降、最大のプレーヤーの1つとなっているのは、広範なEV充電ネットワークを持つ米国の上場企業、ChargePoint(チャージポイント)だ。しかし、多くのスタートアップがそれに追いつこうとしている。

ドイツに本社を置くHeyChargeは、一般的にEV充電活動の約80%を占める地下駐車場でのEV充電に問題があることに気づいた。問題は、通常のスマート充電インフラにはインターネット接続が必要だが、地下ではそれができないことだ。そこで、HeyChargeは解決策を考えた。

それを実現するために同社は中央ヨーロッパ時間1月13日、BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Ventures(ChargepointやChargemasterの初期投資家でもある)主導のシードラウンドで470万ドル(約5億4000万円)を調達した。今ラウンドには、欧州の大規模な再生可能エネルギー発電会社であるStatkraftのVC部門Statkraft Venturesも参加している。

HeyChargeがYCの2021年バッチの一部だったときに、TechCrunchは同社を取材した。

HeyChargeのソリューションは、アパートやオフィス、ホテルなどの地下にあるEV用のインフラを対象としている。同社のSecureCharge技術は、現場でのインターネット接続を必要とせず、Bluetoothで接続するプラグ&プレイ(PnP)セットアップを採用している。

HeyChargeのChris Carde(クリス・カルド)CEOは次のように述べている。「欧州では40%、米国では37%の人がアパートに住んでおり、自宅で充電できないために電気自動車を利用することが困難な人が大勢います。HeyChargeのソリューションは、EV充電の拡張性を高めるだけでなく、費用対効果を高めてよりアクセシブルにし、どこに住んでいても、どこで働いていてもEV充電ができるようにします」。

BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(キャスパー・セイジ)氏はこう述べている。「今後数年でEV市場が急速に成長するのにともない、世界中で充電ソリューションのインフラ構築を進める必要があります。HeyChargeは、インターネットに接続しないEV充電ネットワークを可能にした最初の企業であり、これは未開拓のホワイトスポットをカバーするための重要な成功要因です」。

HeyChargeは、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Google(グーグル)、BMW、SIXTでの勤務経験を持つクリス・カルド氏とRobert Lasowski (ロバート・ラソウスキー)博士によって2020年3月に設立された。

画像クレジット:HeyCharge founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

BMWはクルマをプライベートシアタールームにする

2年前のCES 2020で、クルマに心地よいラウンジシートをフィットさせたBMWは、米国時間1月5日、同社の車載エンターテインメントの次なるステップを披露した。31インチ、8KスマートテレビにAmazon Fire TVサービスがついてくる(中国向けには国独自のストリーミングサービスを開発中)。後部座席に乗る人のために配置されたこの新しい32:9「My Mode Theatre(マイモード・シアター)」画面とBowers & WilkinsのDiamond Surround Sound Systemの組み合わせは、国道を走りゆく乗客に映画館のような体験をもたらすことを意図している。

関連記事:BMWは自動運転車をラウンジに変える

5G接続を利用して、このクルマでは最新のショーをオンデマンドでストリーミング視聴することが可能で、My ModeシステムはThe Expanseのエピソードを最新回まで一気見するムードを醸し出す。今のところ見るべき8Kコンテンツは多くないし、Fire TVもまだ対応していないが、少なくともそのときが来たら、あなたのクルマは準備完了だ。

画像クレジット:BMW

また、巨大画面にいつも視野を遮られたいわけではないため、スクリーンは天井に格納することができる。そのためのタッチコントロールは後部ドアに備え付けられている。

「私達は純粋なドライブの楽しみのために没入的なデジタル体験を開発しました」とBMW AG Developmentの研究開発責任者、Frank Weber(フランク・ウェーバー)氏はこの日の発表で語った。「シアターモードでは後部座席がプライベートシネマラウンジに変わります。31インチディスプレイと5G接続、8K解像度にサラウンドサウンドとストリーミングプログラムによって車載エンターテインメントの新しい標準を決める前例のない体験が作り出されます」。

映画を観るだけでなく限らず車内のムードを醸し出すために、BMWの最新のiDriveやOSはMy Modeを備えている。My Modeは運転とトランスミッションの制御を変更することで、車全体の運転挙動だけでなくディスプレイのテーマやサウンド、全体のライティングなどをユーザーの好みに基づいて変化させることができる。

画像クレジット:BMW

これまでにあったモードは「Efficient(効率的)」「Sport(スポーツ)」「Personal(パーソナル)」の3つだったが、この日のCESで同社は、新しいバリエーションをいくつか追加した。「Expressive(表現的)」「Relax(リラックス)」「Digital Art(デジタルアート)」および映画鑑賞のための「Theatre(シアター)」だ。これらの新モードは2022年の後半に提供される。ちなみにここで取り上げている新しいモードのほとんどはドライブの特性を変えるものではなく、クルマのテーマ変更に関するものだ。

デジタルアートモードに関して、BMWは中国のマルチメディアアーティストCao Fei(ツァオ・フェイ[曹斐])氏とパートナー契約を結び、人間と自然の深いつながりを象徴することを狙いとする新発表に向けて同氏が新しいアートワークを制作した。

画像クレジット:BMW

一方、サウンドデザインについては、BMWは映画音楽作曲家のHans Zimmer(ハンス・ジマー)氏と再び組んで、同社の電気自動車シリーズのために特別なサウンドを制作した。BMW IconicSounds Electric(BMW アイコニックサウンド・エレクトリック)は、2022年後半にBMW i4でデビュー予定で、ワイヤレスオンラインアップデートで提供される。

画像クレジット:BMW


画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

BMWが電気自動車の高性能モデル「iX M60」を発表

BMWのM部門(BMW M GmbH)は、このドイツの高級車メーカーの製品を、さらに数段上まで引き上げることを常に目指している。そして競合他社と同様に、BMWは長い間、電気駆動装置と進歩的な自動運転技術の組み合わせが、BMW Mのようなブランドにとって、どのような意味を持つかということについて考えてきた。BMW Mが手がけた最初の電気自動車は、2021年発売された最高出力544psのセダン「i4 M50」だった。しかし、今週ラスベガスで開幕したCESでは、同社のテクノロジーフラッグシップモデル「iX」の最強バージョンとなる「iX M60」を発表した。この最高出力619ps(スポーツ・モード選択時)を発揮する電気自動車は、BMWのテクノロジーを中核としたiXプラットフォームと、パフォーマンスを重視するMシリーズの伝統を、組み合わせることを目指している。

BMWは、iX M60が停止状態から100km/hまで3.8秒で加速すると約束している。これはローンチコントロールを作動させると2基のモーターが瞬間的に発生する合計1100Nmものトルクに寄るところが大きい。最高速度は電子制御リミッターにより250km/hに制限されるものの、超能力を持った悪の怪人から逃げるような状況でもなければ十分だろう。大きくて重いクルマだが、1回の充電で走行可能な航続距離は WLTPテストサイクルで最大566kmとされている(現時点の開発状況に基づく欧州仕様の予想値)。参考までに挙げると、Tesla(テスラ)の電動SUV「Model Y(モデルY)」は同じWLTPテストサイクルで最大507kmだ。iX M60の高密度バッテリーは、DC急速充電器を使えば10%から80%まで35分で充電できる。

画像クレジット:BMW

BMWは、iX M60に搭載されている2つのモーターには永久磁石がないため、レアアースを一切使用していないと明記している。代わりに「電流付勢同期機械」の原理を採用しているという。

標準装備の4輪アダプティブ・エア・サスペンションと電子制御式ショックアブソーバーは、どんな速度でも車高を適切に保つことを約束する(ドライバーが手動で車高を調整することも可能)。

画像クレジット:BMW

テクノロジー面では、運転支援システムやインフォテインメントシステムのために最新世代のセンサーとソフトウェアを採用し「自動運転や自動駐車を一貫して進化させる大きな可能性を秘めた」コンピューティング・プラットフォームを備えていることを、BMWは約束している。標準装備も充実しており「BMW Live Cockpit Professional(BMWライブ・コックピット・プロフェッショナル)」や「BMW Natural Interaction(BMWナチュラル・インタラクション)」「Bowers & Wilkins Diamond Surround Sound System(バウワース&ウィルキンス・ダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システム)」「BMW Laser Light(BMWレーザー・ライト)」「Comfort Access(コンフォート・アクセス)」、運転席と助手席の「Active Seat Ventilation(アクティブ・シート・ベンチレーション)」などが含まれる。さらに、シートやステアリング、アームレストのみならず、真冬のスキー旅行に備えてドアパネルやダッシュボードも温めることができる「Radiant Heating Package(ラディアント・ヒーティング・パッケージ)」も標準で備わる。

画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWの製造施設に車両を自律走行させるV2XセンサータワーをSeoul Roboticsが導入

AIベースの知覚ソフトウェア会社Seoul Robotics(ソウルロボティクス)は、自動車やトラック輸送のファーストマイルおよびラストマイルの物流ハブを、1つのセンサータワーがオーケストラの指揮者のようにフリートの動きを制御し、数百台の車両を所定の位置に誘導するような集合体にしたいと考えている。

BMWとの2年にわたる試験的な技術提携を経て、Seoul RoboticsはCESで、ミュンヘンの製造施設における車両物流の自動化という、同社にとって初の商業展開を発表した。「インフラによる自律走行」と呼んでいる技術を展開する。

Seoul Roboticsの最新製品であるレベル5コントロールタワー(LV5 CTRL TWR)によって誘導される車両は、それ自体が自律走行するものではない。同社CEOでのHanBin Lee(ハンビン・リー)氏によると、必要なのは自動変速機とコネクティビティだけだという。

Seoul Roboticsの3D知覚ソフトウェア「Sensr」を搭載したセンサーとコンピュータの網が、施設内のインフラに戦略的に配置される。そして、そのインフラが車両を取り巻く環境の情報を感知し、計算を行い、予測を立て、車両に指令を送る。リー氏は、この作業を人間の安全オペレーターや人間がまったくループに入ることなく安全に行うことができると話す。

BMWでは、LV5 CTRL TWRは主に施設内に配置された約100個のLiDARセンサーに頼っているが、将来的にはセンサーの冗長性のためにカメラやレーダーも導入したいとリー氏は話す。

自動走行車企業の多くは、都市部や高速道路での走行を可能にする独自のセンサーや計算処理能力を備えた自動運転車の開発に全力を注いでいる。少なくとも自動走行貨物車の場合、開発企業は物流ハブ内の移動や、BMWの場合は新しく製造された車両を組立ラインから車両配送センターへ移動させるなど、特定の時点で人間が業務を引き継ぐ必要がある。

自律走行トラック運送会社のTuSimpleは、施設から施設まで80マイル(約128km)の高速道路を走行し、初のドライバーなしプログラムを成功させたばかりだが、同社はまだ地上での特定のオペレーションを管理するために人間を必要としている。Waymo(ウェイモ)は、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担う自動運転とマニュアル運転を組み合わせたトランスファーハブモデルを促進するために、自律走行トラック輸送ハブを建設している

LV5 CTRL TWRは高速道路に配備されることを想定していない。むしろOEM、トラック運送会社、レンタカー会社、そして潜在的には空港のファーストマイルとラストマイルにおけるギャップを埋め、コストを削減することを目的としている。

「施設の性質上、駐車場は非常に狭く、この狭い施設内を多数の車両が走り回ろうとします。誰かがそれを指揮し、誰かがコントロールタワーとなって、車両が正しいタイミングで指定の場所に入ることを確認する必要があります」とリー氏はTechCrunchに語った。「たとえ車両がいつか自律走行するようになったとしても、レベル5のコントロールタワーは必要です。というのも、車両管理システムだからです。レベル4やレベル5はいうまでもなくかなり先の話ですが、一方でこのシステムは、基本的に非常に限られたスペースでロボタクシーとしてのメリットをすぐに提供しています」。

OEM、レンタカー会社、トラック運送会社は、自社施設内で車両をA地点からB地点に移動させるだけの作業に何千人もの従業員を割いている。これは不必要な労働力の使用であるだけでなく、高度な訓練を受けたドライバーではなく、アルバイトであろう地元の人々が混雑したスペースを運転することによって多くの損害や事故が発生していると、リー氏は話す。

トラックの後ろやコーナー周辺など、複数の視点から情報を提供することで、センサータワーの死角をなくし、これによって衝突を減らし、より信頼性の高いプロセスを構築することができる、とSeoul Roboticsは説明する。

V2X(Vehicle-to-Everything)ソフトウェアを開発する企業が直面する課題の1つに、レイテンシーの問題がある。世界では、V2Xの制御は公共の4Gや5G LTEを通じて車両と共有されているが、Seoul RoboticsはBMWが所有・運営するような私有地で展開しているため、自社のユースケースに専用の帯域を確保できるプライベートネットワークで情報を送信している。また、これらの施設の車両の最高スピードは、時速13マイル(約20キロ)までとなっている。

私有地での自動化に高度なV2Xを使用する利点は、ドライバーなし走行の許可を得るために政府とやり取りする必要がなく、交通弱者が事故に遭うリスクがほとんどないことだと、リー氏は指摘する。

また、V2X企業がこれまで特に公道で直面してきた課題は、ハードウェアの購入と設置にともなうコストだが、物流の観点からユニットエコノミクスがうまく機能しているとリー氏はいう。

「LiDARは最近ずいぶん安くなっていて、センサー1個あたりは1000〜2000ドル(約11万6000〜23万2000円)ほど、システムのフル展開には数百万ドル(数億円)かかります」と同氏は語る。「OEMはハードウェアの費用を前払いするので、ハードウェアや設置の費用はかかりません。システム設置後は、当社は基本的に設置費用と車両1台あたりのライセンス月額費用の支払いを受けます。OEMは人件費や潜在的な損害にかかる費用を節約できるため、ROIは最短で1〜2年です」。

他の企業も同様の技術に取り組んでいる。2019年にはBosch(ボッシュ)とDaimler(ダイムラー)が共同で自動バレーパーキングの試験を行った。リー氏によれば、まだ技術を公表していないものの、BMWのギグにも入札したスタートアップが多数存在するという。

画像クレジット:Seoul Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMW、ボタン1つで色が変わるクルマをCESで披露

数週間前に情報をリークした後、BMWはCESで米国時間1月5日、色が変わるクルマを正式に発表した。「BMW iX Flow」と名付けられたこの試作車は、基本的にはBMWがE Inkと協力して開発した電子ペーパーの一種に包まれている。

現在のところ、色の選択肢は黒と白(その間にいくつかの濃さのグレーがある)だけだが、これは時間の経過とともに変わる可能性がある。また、Kindleのスクリーンがコンテンツを変更した後はエネルギーを消費しないように、iX Flowの電子インク技術も、好みの色やデザインを設定した後はエネルギーを消費しない。

画像クレジット:BMW

これは何よりも、ドライバーがクルマの外観をカスタマイズするための選択肢を増やすことを目的としている。E Inkを搭載したBMW iX Flowのプロジェクト責任者であるStella Clarke(ステラ・クラーク)氏は、次のように述べている。「これによりドライバーは、自分の個性のさまざまな側面や変化を楽しんでいることを外に向けて表現し、クルマに乗るたびにそれを再定義する自由を得られます。ファッションやソーシャルメディアチャンネルのステータスと同様に、クルマは日常生活におけるさまざまな気分や状況を表現するものになるのです」。

現時点では、BMWは車体の表面全体が変化する様子を見せているだけだが、電子インクのバンパーステッカーに相当するものや、今のご時世を考えると、クルマの側面にフルサイズの広告が表示されることも容易に想像できる。

画像クレジット:BMW

しかしBMWは、ここには別の動機もあると主張している。例えばドライバーは、暖かい日には熱を吸収する黒い面ではなく、明るい面を選ぶことができるかもしれない(寒い日にはその逆も可能だ)。「これにより、車両の電気システムが必要とするエネルギー量が減り、それに伴って車両の燃料や電気の消費量も減ります」と同社は5日の発表で主張している。「全電気自動車の場合、天候に合わせて色を変えることで、航続距離を伸ばすことができます。インテリアでは、ダッシュボードが熱くなりすぎないようにするなどの効果があり得ます」。

それはいいボーナスではあるが、多くの人が求めているのは、単にスーパーヴィランのように色の変わるクルマではないだろうか。だが、それはすぐには実現しない。今のところ、これはあくまで実験であり、いつ、あるいは市販車に搭載されるかどうかは未定だ。

画像クレジット:BMW

画像クレジット:BMW

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

メルセデスやBMWもCES出展を断念、パナソニックは会場での会見中止

対面でのCES出展を辞退する大企業の数が増え続けており、開幕まで残り1週間を切ったところで、さらに大手自動車メーカー2社が名を連ねた。米国時間12月29日、Mercedes(メルセデス)は、対面イベントを見送ると表明した。

関連記事:CES 2022会場出展を断念する企業が続出、オミクロン株感染拡大受け

「顧客、パートナー、従業員、ゲストの健康と安全が最優先のためです」と同社は声明で述べた。「参加者の数が多く、国ごとに異なる規制があるため、すべての参加者のために堅実で安全かつ無害な計画を立てることは、残念ながら現状では不可能です。非常に残念な決定ですが、必要なことだと考えています」。

米国時間12月30日、BMWもこれに続いた。同社はメディアリリースを発表し、バーチャル記者会見への移行を発表した。「BMWグループは長年にわたり、ラスベガスで開催されるCESでイノベーションを発表してきました。パンデミックのため、BMWグループはCESで予定していたすべてのメディア活動を、ドイツからライブ配信する完全なデジタルプログラムに移行します」と述べた。

一方、LiDAR会社のVelodyne(ベロダイン)は、12月26日の週に同社の決定についてフルプレスリリースを発表し、次のように述べた。

Velodyne LiDARは、新型コロナウイルスの感染率が急上昇しているため、CES 2022に対面参加しません。従業員、パートナー、一般市民の健康と安全がVelodyneにとって最優先事項であり、この決定の主な要因です。

IBMも米国12月30日、対面イベントからの撤退を決定したことをTechCrunchへの声明の中で表明した。

新型コロナの感染状況が悪化しているため、また慎重を期して、IBMは2021年ラスベガスで開催されるCESに参加しません。バーチャルでのイベントに参加することを楽しみにしています。

また、パナソニックは、米国時間1月4日に会場での記者会見を予定していたが、新たに中止を決めた。同社は、バーチャルイベントにシフトし、会場でのプレゼンスは限定的となる見込みだ。

これらの企業は、GM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、AMD、OnePlus(ワンプラス)、MSI、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(T-モバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Proctor & Gamble(プロクター&ギャンブル)、TikTok(ティクトック)、Pinterest(ピンタレスト)、そしてTechCrunchを含む多くの大手メディアの仲間入りをする。存在に気づいてもらうのにCESのような展示会に依存しているスタートアップにとって、オミクロンの懸念が高まる中で撤退を決断することは、特に難しいことだろう。しかし、展示会への参加を見送るという難しい決断をした中小企業から筆者のもとに入る連絡は増えている。

CESを運営する全米民生技術協会(CTA)は、米国時間1月5日(メディアデーは3日と4日)から始まるCESを断固として開催する姿勢を示している。

「CES 2022は、強力な安全対策を取って1月5日から8日までラスベガスで対面式で開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、または行けない人々のために、デジタルアクセスも用意されます」と、CTAは12月22日付の声明で述べている。「私たちの使命は、業界を結集し、直接参加できない人々にもCESの魅力をデジタルで体験してもらうことに変わりはありません」。

クリスマスの日、ラスベガス・レビュージャーナルは「CESはラスベガスで開催されるべき」という見出しのCTA代表Gary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏の論説を掲載した。その中で同氏は、メディアが「ドラマと有名企業のレンズを通してのみ物語を語る」と非難した。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードやBMWが支援するSolid Powerが上場、全固体電池開発の競争激化

Ford(フォード)やBMWが支援する全固体電池開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)が、米国時間12月9日に上場した。取引開始直後に株価は急上昇している。

Solid Powerは、電気自動車関連分野では数少ない、特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場した企業だ。同社は6月にSPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp III(ディカーボナイゼーション・プラス・アクイジション・コーポ III)との合併を発表。合併後の市場評価額は12億ドル(約1360億円)とされていた

この合併では、株主投票前償還が著しく少なかったため、最終的にSolid Powerに約5億4290万ドル(約615億円)の現金がもたらされた。これは事前に推定されていた6億ドル(約680億円)に非常に近い金額だ。この現金には、1億9500万ドル(約221億円)のPIPE(上場企業の私募増資)と3億4790万ドル(約394億円)の信託現金が含まれる。

この資金は、世界初の電気自動車用全固体電池の実用化を目指す同社にとって必要なものになる。全固体電池とは、液体ではなく固体の電解質を用いることからその名がついたもので、次のブレークスルーとなる電池技術として注目を集めている。開発者によると、可燃性の電解液を使用しないために、従来の電池にともなう火災のリスクを最小限に抑えることができ、さらにエネルギー密度(すなわち電池の重量や体積あたりの航続距離)にも優れているという。

Solid Powerは現在、コロラド州にある工場を拡張し、2022年初頭に商用品質の100アンペア電池セルを試験的に生産する準備を進めているところだ。この電池セルは、同社に出資しているフォードやBMWの自動車でテストに使われることになっている。Solid Powerは今回の上場で得た資金を、2026年と予想される車両への搭載までの運営資金に充てる計画だ。

関連記事:固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

同社の長期的なビジネスプランは、業界大手のLG Chem(LG化学)やSK Innovation(SKイノベーション)のような大規模な電池メーカーになることではない。最終的な目標は、メーカーや製造業者にセルのライセンスを供与することである。「長期的に考えれば、当社は素材メーカーです」と、同社CEOのDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏は、先日のTechCrunchによる取材に語っていた。「私たちは、固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。

Solid Powerは、SPACを通じて株式公開した唯一の全固体電池開発企業でもなければ、大手自動車メーカーから投資を受けている唯一の企業でもない。

実際、ライバルのQuantumScape(クァンタムスケープ)はVolkswagen(フォルクスワーゲン)の支援を受けており、Stellantis(ステランティス)とMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は新規参入のFactorial Energy(ファクトリアル・エナジー)に資金を提供するなど、大手自動車メーカーは全固体電池の開発競争に出馬する馬を選んでいるようだ。

QuantumScapeも、2020年11月にSPAC合併による上場を完了させた。他のモビリティ系SPACと同様、株価は変動が激しく、12月には114ドル(約1万3000円)まで上昇した後、20~25ドル(約2270〜2830円)程度で落ち着いている。Solid Powerの株価が同じような激しい変動にさらされるかどうかはまだわからない。同社の株は「SLDP」というティッカーシンボルで取引されている。

画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

BMW、Mの伝統とロックスターの美学を融合させたV8ハイブリッドSUVを開発

BMWは、高性能なMシリーズの50周年を、ありきたりなコンセプトカーで祝うことはできなかった。その代わりに、このドイツの自動車メーカーは、V8パワーとネクストレベルのMデザインを融合したプラグインハイブリッドコンセプトによって、David Lee Roth(デイヴィッド・リー・ロス)が誇りに思うようなロックスターの美学をとりいれた。

社内で「ロックスター」というコードネームで呼ばれている(これについては後述する)XM SUVプラグインハイブリッドコンセプトは、史上2番目のMシリーズ専用車だ。

2021年11月初めにTechCrunchがロサンゼルスで覗き見したXM SUVは、コンセプトカーで終わることはない。規制に準拠するために多少の調整を行った後、2022年に生産が開始する。同社によると、XM SUVは、11月初めにロサンゼルスで公開された奇抜なコンセプトカーにかなり近いものになるという。これは、外向的な人にとっては朗報だ。

BMW XMは、BMWのSUVラインアップとMシリーズの遺産からヒントを得ているが、それらのデザインを大胆に補完している。ラインはよりアグレッシブになっている。猫のようなLEDライト、ガラスに刻まれたBMWのロゴ、そしてMクワッド・エキゾーストを備えたこのコンセプトのリアエンドは、BMWの他のラインアップとは異なる。パイプが水平に配置されているのではなく、六角形のエキゾースト・チップがワイド・ディフューザーの両側に垂直に取り付けられている。また、フロントの大きなキドニーグリルには、LEDを使用した独自の処理が施されている。

このクルマのすべてが「俺を見ろ!」と叫んでおり、 それこそが、まさにBMWが目指していたものだ。

画像クレジット:BMW

「お客様からのフィードバックは、私たちのクルマを本当に愛しているということです。しかし、その次のステップは、彼らはさらに表現力のあるぜいたくさをクルマに望んでいるのです」と、BMW Mの取締役会長であるFranciscus van Meel(フランシス・ファン・ミール)氏は、このクルマの発表の際に述べた。

BMWによれば、これらの顧客は、外向的で表現力豊かな、型にはまらない人たちで、XMをランボルギーニ・ウルスやメルセデスGクラスと比較検討する可能性が高いという。ただし、BMWは現時点で価格を公表していない。

そして「俺を見ろ」と叫んでいる外観に勝るとも劣らないインテリアがある。

画像クレジット:BMW

内側で起きていることに比べて、外観は基本的に2000年代半ばのトヨタ・カムリだ。フロントローは、BMWが「ビンテージ・ブラウン」と呼ぶレザーで覆われており、パフォーマンスとドライバーの志向に特化したものになっている。リアシートは?Russel Brand(ラッセル・ブランド)のベッドルームを想像したら、それが、BMWがXMの後部座席に乗る人のために準備したものだ。後部座席とフロアは、それぞれブルーとグリーンのベルベットで覆われており、ラウンジのような雰囲気を醸し出している。欠けているのは、ラバライトと茶色を取り除いたM&Msのボウルだけだ。

運転席と助手席の上には、クリスタル構造のヘッドライナーがある。側面からの間接照明で、ライトアップされると、本当に芸術作品のような、いや、プラネタリウムのレーザーショーのような感覚になる。

もしBMWがTame Impala(テーム・インパラ)の最新アルバムに合わせてライトを点灯させることができれば、特定の音楽ファンやハーブサプリメントのファンを獲得することができるだろう。

画像クレジット:BMW

このローリングミュージッククラブのようなクルマは、BMWのV8エンジンとプラグインハイブリッド技術を融合させたものだ。パワートレインは、750馬力と737ポンドフィートのトルクを発揮する。BMWは、バッテリー容量については明らかにしていないが、EV専用モードでのEPAテストによる航続距離は30マイル(約48km)を目標としていると述べている。これは、トヨタの製品に匹敵するものではない。しかし、多くの関心を起こすことなく、静かに会場を後にするには、十分すぎるほどの機能だ。もちろん、誰かがデザインや輝くキドニーグリルに注目しなければの話だが。

画像クレジット:BMW

BMW Mデザインの責任者であるMarcus Syring(マーカス・シリング)氏によると、XMは常に特別なものになる予定だった。BMWの取締役会は、デザイナーに予想外のものでショックを与えて欲しいと具体的に要請した。

「BMWは継続的にこれらの特定のハイテクモデルをつくっており、i3やi8だけでなく、iXでも新しい分野を探求しています」と、シリング氏は夜の終わりにTechCrunchに語った。「私たちは何かを探求しています。あのクルマ(XM)も同じです。とてもユニークで、新しいことを試しています」。

自動車の販売でロックスターやその音楽を利用することが多い業界において、BMW Mは、元ヴァン・ヘイレンのフロントマンであるデイヴィッド・リー・ロスに相当するクルマを製作した。大声で、派手で「挑戦する」準備ができており、最後にはベルベットであなたを抱きしめてくれるのだ。

画像クレジット:BMW

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Yuta Kaminishi)

Miniの電気自動車の未来はどうなる?期待されるコンバーチブル化やさらなる小型化

1950年代後半に英国で起きた燃料危機をきっかけに生まれた、小型で意外と運転が楽しいクルマ、Mini(ミニ)がまた革命を起こしている。今回の革命の背後には、気候変動と親会社であるBMWが2030年までにすべてを電気自動車にするという計画がある。

Miniは、2008年にMini Eのパイロットプログラムを開始して以来、バッテリー駆動の電気自動車に取り組んできた。現行の電気自動車Mini SEは、2020年に発売されて以来、高い需要がある。しかし、それらは未来ではない。

「Mini EもCooper SEも基本的には、既存の内燃機関車を改造したものです。ですから、私たちはまだこの分野に本格的に参入していません」と、MINI of the Americasの副社長であるMike Peyton(マイク・ペイトン)氏はTechCrunchに語った。

ほぼすべての自動車メーカーがそうであるように、Miniも将来の自動車のために専用の電気プラットフォームに取り組んでいる。しかし、中心となるのは走行距離ではなく、その走り方だ。それはMiniらしくなければならない。

「楽しいクルマでなければならないんです。Miniのようなハンドリングでなければなりません。そして、私たちは、それが電動化の全体像にぴったりだと考えています」とペイトン氏は語っている。Miniの特徴であるゴーカートのようなフィーリングが、恐竜の死骸ではなく電子を動力源としている場合でも必要なのだ。

未来の電気自動車Miniがどのようになるかについて、ペイトン氏は次のように述べている。「それは間違いなく、人々がこれまで見てきたもの、期待していたものを、より現代的に解釈したものになるでしょう。初期の頃は、ミニマリズムとシンプルさを大切にしていました。未来の車にも、このテーマが見られると思います」。

未来のクルマには、レガシーとブランドアイデンティティを維持しつつ、テクノロジーを推進する電気自動車のコンバーチブルMiniが含まれる。同社は現在、そのような未来のブランド中心のEVがどのようなもので、今後どのように進化していくのかを検討している。

Miniはもっと小さく、もっと大きくなるかもしれない

よりエキサイティングなのは、電気自動車のSUVやクロスオーバーが急速に普及している世界で、まったく予想外のものが生まれる可能性があることだ。ペイトン氏は、将来「いかにもMiniらしい小さなフォーマットのクルマも登場するでしょう」と述べている。これらの未来の車両が、現在販売している車両よりも小さくなるのかという質問に対して、ペイトン氏は「可能性はあります」と答えた。

BMWに買収される前の、信じられないほど小さなMiniのファンにとって、電動化への移行は、米国に新しいマイクロビークル市場をもたらすかもしれない。

ペイトン氏は、現在走行しているMiniよりも大きなサイズのEV Miniを設計・販売する可能性もあると述べている。この「より大きな」Miniが何を意味するのかは不明だ。同社のコンセプト「アーバノート」への反応を見ると、このクルマはMiniというよりもVWのマイクロバスに近いかもしれない。

Miniは興味深い立場にある。小型で楽しく、都市向けの同社のクルマの特徴は、EVのパッケージに非常によく適合している。

Mini SE(ガソリン車に電気自動車のパワートレインを搭載したクルマ)は、同社の未来を示す前菜のようなものだ。200マイル(約321km)以上の走行が標準の世界で、110マイル(約177km)という笑ってしまう航続距離にもかかわらず、初年度の生産分は完売した。Miniによると、このクルマを購入する人の80%は、Miniが初めての人だという。

気候変動の危機を乗り越えるために、このブランドが成功するかどうかは、ある1つのことにかかっている。そのEVがどのように走り、どのように見えるかだ。その点についてペイトン氏は「それは常に紛れもなくMiniである」と語っている。

画像クレジット:Roberto Baldwin

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Yuta Kaminishi)

BMWの電動スクーター「CE 04」、同社幹部はスタイルと技術が新しい顧客をもたらすと信じている

この2年間に奇妙なことが起こった。何年もの間、落ち込んでいたオートバイとスクーターの販売が復活したのだ。これはBMWの二輪車部門であるMotorrad(モトラッド)とその最新の電動スクーター「CE 04」にとって良い知らせだ。

ロサンゼルスオートショーに先立つイベントで披露されたこのレトロフューチャーなバイクは、二輪車ルネッサンスの波に乗ることで、電動スクーターがより広く受け入れられる先駆けとなる可能性がある。

BMW MotorradアメリカのTrudy Hardy(トゥルーディ・ハーディ)副社長は、この二輪EVが単なるクールなバイク以上の存在になると考えている。「このカテゴリーにスクーターが入ることは、交通手段における課題の解決になるという点で興味深いと、私は思います」。

2022年初頭に発売予定のCE 04は、1万1795ドル(約135万円)から。BMWのすべての製品がそうであるように、この製品もプレミアムな価格が付けられている。しかし、その機能と電動であることを考えれば、実際にはお買い得と言えるかもしれない。

このスクーターは2人乗りで、42馬力のパワーと62Nmのトルクを発揮する。容量8.9kWhのバッテリーパックは、一度の充電で130kmの距離を走行できるという。最大6.9kWのレベル2充電に対応し、1時間40分でフル充電できる。

さらに、10.25インチの大型TFTディスプレイを搭載し、BMW Motorradアプリと組み合わせれば、ターンバイターンのナビゲーション機能が利用できる他、コーナーでどれだけ体を傾けたかといったライダーのデータや、車両の一般的な情報も把握することができる。

画像クレジット:Roberto Baldwin

電動二輪車の世界では、Harley-Davidson(ハーレー・ダビッドソン)から「Livewire(ライブワイヤー)」が登場し、Zero Motorcycle(ゼロ・モーターサイクル)が繁栄を続けているが、CE 04は電動スクーターだ。

ハーディ氏は、BMWにとってこれはスマートな戦略だと確信している。「モーターサイクルなんて検討していなかったような新しい人々をブランドに引き入れ、そういう人々にこれがフレンドリーなソリューションだとわかってもらえるでしょう」。

BMWが米国市場に初めて導入した電動スクーターは「C evolution(Cエボリューション)」だった。しかし、これは実質的にはパイロットプログラムに過ぎなかった。「実際には、下調べのためのちょっとしたテストでした。これ(CE 04)は、電動車市場に本格的に参入する当社の最初の試みです」と、ハーディ氏はTechCrunchに語った。

とはいえ、米国では人々がスクーターを過小評価する傾向があることに、ハーディ氏は神経質になっている。同氏のいう新しい顧客とは、オートバイやスクーターに初めて乗る人々のことだ。現在、電動アシスト自転車に乗っていて、CE 04のような電動スクーターにステップアップするような顧客には、見た目以上にパワフルであることを理解してもらえないかもしれない。スクーターというと、パワーが足りないという先入観から避けられることも多いが、実際には電気自動車を活発に走らせる強力な電動モーターのトルクが、このスクーターにも備わっているのだ。

これは玩具のような乗り物ではない。幸いなことに、BMW Motorradのラインナップでは、アンチロックブレーキなどの安全装備が全車に標準装備されている。

二輪車が初めての人にも、経験豊富な人にも、CE 04はちょっとした新しさを提供する。コンパクトでありながら活発に走るEV二輪車は、シティコミューターの答えになるかもしない。ハーディ氏は、これを会社全体の継続的な動きの一環として捉えている。「BMWはこれまで常に性能面と技術面で知られてきた会社です。そして今、電動化の領域を四輪から二輪へ拡げようとしているのは、すばらしいことです」。米国では現在、新しいバイクやEVを購入する人が増えていることも後押しするだろう。その双方の組み合わせは、ファンキーなCE 04を勝利に導くかもしれない。

画像クレジット:Roberto Baldwinn

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

循環経済を重視してCO2排出量の削減を目指すBMW Neue Klasseのラインナップ

BMW Groupは、米国時間9月2日、走行車両の全世界の二酸化炭素排出量を2030年までに、2019年レベルから50%、車両の全ライフサイクルの二酸化炭素排出量を2019年レベルから40%削減するという目標に向けて尽力する意向を発表した。これらの目標は、持続可能性の高い車両ライフサイクルを達成する循環経済の原則を重視する計画も含め、同社のNeue Klasse(新しいクラス)と呼ばれる新ラインナップ(2025年までに発売予定)で明らかになる。

3月に発表されたBMWの「新しいクラス」と呼ばれる計画は、同社が1962年から1977年までに生産したセダンとクーペのラインナップ、つまりBMWのスポーツカーメーカーとしての地位を確固たるものにしたラインナップを根本的に見直すものだ。同社によると、この新しいラインナップの目玉は「一新されたITおよびソフトウェアアーキテクチャ、新世代の高性能電気ドライブトレインとバッテリー、車両の全ライフサイクルに渡って持続可能性を達成するまったく新しいアプローチ」だという。

「Neue Klasseは、CO2削減の取り組み姿勢を一段と明確にし、世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標を達成するための明確な進路に沿って進むという当社の決意を表明するものです」とBMW AGの取締役会長 Oliver Zipse(オリバー・ジプス)氏は今回の発表で述べた。「CO2削減の取り組みは法人の活動を判断する大きな要因となっています。地球温暖化対策では、自動車メーカー各社の自社製車両の全ライフサイクルにおけるCO2排出ガスの削減量が決め手となります。当社がCO2排出量の大幅な削減について透明性が高くかつ野心的な目標を設定している理由もそこにあります。実際の削減量はScience Based Targets(科学的根拠に基づく目標)イニシアチブによって評価され、効果的で測定可能な貢献度として示されます」。

BMWによると、同グループのCO2総排出量の70%は、車両の利用段階で発生したものだという。これは、BMWの販売車両の大半が未だにガソリン車であるという事実からすると納得がいく。2021年上半期のBMWの総販売台数に占める電気自動車またはプラグインハイブリッド車の割合は11.44%であった(2021年上半期収益報告書による)。同社は、2021年末までに、ハイブリッド車を含め100万台のプラグイン(コンセント充電型)車両を販売するという目標を表明している。第2四半期終了時点で、約85万台を売り上げているが、車両利用段階でのCO2排出量を半分にするという目標を達成するには、CO2排出量が低いかゼロの車両の販売量を大幅に増やす必要がある。同社にはすでにi3コンパクトEVシリーズを販売しており、2021年後半には、i4セダンとiX SUVという2つのロングレンジ(長航続距離)モデルが発売され、2022年にはさらに別のモデルも投入される予定だ。GMやボルボと違い、BMWはガソリン車を廃止する計画をまだ発表しておらず、最初から電気自動車として設計されたラインナップの販売も開始していない。

今回の発表は、BMWが、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)など、ドイツの他の自動車メーカーとともに、1990以来、排出ガスカルテルに関与していたことを認めた2カ月後に行われた。これらのメーカーは、EUの排出ガス規制で法的に必要とされる基準を超えて有害なガス排出量を削減できるテクノロジーを持ちながら、共謀してそれを隠ぺいしていた。EUは4億4200万ドル(約486億円)の制裁金を課したが、BMWの第2四半期の収益が60億ドル(約6599億円)近くになることを考えると、軽いお仕置き程度に過ぎない。

関連記事:EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

また、2021年8月に発表されたEUの「Fit for 55」エネルギーおよび気候パッケージでは、世界全体のCO2ガス排出量の目標削減量が、2030年までに40%から55%に上方修正された。これは、自動車メーカーが電気自動車への移行ペースを早める必要があることを意味し、BMWもその点は認識している。欧州委員会では他にも、CO2ガス排出量を2030年までに60%削減し、2035年までには100%カットするという提案事項も検討されているという。これは、その頃までには、ガソリン車を販売することがほぼ不可能になることを意味する。

BMWによるとNeue Klasseによって、電気自動車が市場に出る勢いがさらに加速されるという。同社は、今後10年で、完全電気自動車1000万台を販売することを目標にしている。具体的には、 BMW Group全体の販売台数の少なくとも半分を完全電気自動車にし、Miniブランドは2030年以降、完全電気自動車のみを販売することになる。BMWは、循環経済重視の一環として、Neue Klasse計画による再生材料の利用率向上と、再生材料市場を確立するためのより良い枠組みの促進も目指している。同社によると、再生材料の利用率を現在の30%から50%に高めることが目標だというが、具体的な時期までは明言していない。

BMWによると、例えばiXのバッテリー再生ニッケルの使用率はすでに50%に達しており、バッテリーの筐体での再生アルミニウムの使用率も最大30%になるという。目標はこれらの数字を上げていくことだという。また、BMWは、BASFおよびALBAグループとの提携プロジェクトで自動車の再生プラスチックの使用量を試験的に増やす試みも行っている。

BMWが称する総合リサイクリングシステムの一環として「ALBA Groupは BMW Group製の寿命末期車両を解析して、車両間でのプラスチックの再利用が可能かどうかを確認している」という。「第2段階として、BASFは分類前の廃棄物をケミカルリサイクル処理して熱分解油を取得できないかどうか調べています。こうして得られた熱分解油はプラスチック製の新製品に利用できます。将来的には、例えばドアの内張りパネルやその他の部品を廃棄車の計器パネルを利用して製造できる可能性があります」。

リサイクリングプロセスを簡素化するため、BMWは、車両の初期段階設計の考え方も取り入れている。材料は、製品寿命が終わったときに容易に分解 / 再利用できるように組み立てる必要がある。BMWでは、再利用可能な材料に戻すことができるように車内インテリアを単一の素材で製造することが多くなっているという。

「例えば車内の配線システムは、車両内のケーブルハーネスで鉄と銅を混在させないようにして、容易に取り外しできるようにする必要があります」と同社は述べている。「鉄と銅が混在していると、再生鉄での鉄の必須特性が失われるため、自動車業界の高い安全性要件を満たすことができなくなるからです」。

また、循環経済では、高品質の車両を使用する必要がある。そうすることで、パーツを容易にリサイクルまたは修理できるため、結果として全材料数が削減されるからだ。

今回の発表で、BMWは車両のライフサイクルについて透明性を高めることを約束している。同社は、他のほとんどの大手自動車メーカーと同様、ライフ・サイクル・アセスメント(生産から回収再利用までの過程で環境に対する影響度を評価する手法)を公開しているが、業界の標準があるわけではない。このため、異種の車両を比較することが難しい場合がある。車両の全ライフサイクルを把握することは、CO2排出量の削減目標を達成するのにますます重要になっている。バッテリーと車両を製造するために必要なすべての材料を取得するためにサプライチェーンおよび製造段階で発生する排出ガスについての調査結果がようやく明らかになってきているが、この調査により、EV化の動きがライフサイクル全体のCO2排出量を却って増やす可能性があることが明らかになるかもしれない。

「内包二酸化炭素の数値化は大変難しく、特にEVでは非常に複雑で不確実です」とManhattan InstituteのシニアフェローMark Mills(マーク・ミルズ)氏は最近のTechCrunchの記事に書いている。「EVは走行中には何も排出しないが、生涯総炭素排出量の約80%は、バッテリーを製造する際のエネルギーおよび自動車を動かすための電力を発電する際のエネルギーから発生している。残りは、車の非燃料部品の製造によるものである。従来型の自動車の場合は、生涯総炭素排出量の約80%が走行中に燃焼した燃料から直接発生する二酸化炭素で、残りは自動車の製造とガソリンの生産にかかる内包二酸化炭素から発生する」。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

固体バッテリー開発のSolid Powerが生産能力拡大、2022年にフォードとBMWに試験用バッテリーを納入

Ford(フォード)とBMWが投資するバッテリー開発企業のSolid Power(ソリッドパワー)は、2022年初めの固体電池パイロット生産の準備のため、コロラド州にある工場を拡張する。

新しい生産施設は、同社の主力製品の1つである硫化物系固体電解質材料の生産に特化し、現在の最大25倍の生産量を見込む。また、この新施設には、商用グレードの100アンペア電池をパイロット生産する最初のラインを設置する。これらのパウチ型電池は、2022年初めにFordやBMWで自動車試験が行われる予定で、2020年代後半の自動車での実用化を目指す。

固体電池は、長い間、電池技術の次のブレークスルーだと考えられてきた。TechCrunchのライターであるMark Harris(マーク・ハリス)が説明しているように、固体電池には液体電解質がない。従来のリチウムイオン電池では、液体電解質が正極と負極の間でイオンを移動させる物質だった。固体電池の開発者によれば、この技術によって得られる利益は、エネルギー密度の向上、コストの削減、優れた電池寿命などだ。

また、開発者らによれば、固体電池はより安全だという。GMがChevrolet Bolt(シボレー・ボルト)を3回にわたってリコールしたように、火災の危険性を考慮すると、それは重要なポイントだ。Solid PowerのCEOであるDoug Campbell(ダグ・キャンベル)氏はTechCrunchの取材に対し「熱暴走を引き起こす火種」となるのは電解液であると述べた。「現代自動車とGMが現在直面しているこうした問題は、固体電池で解決できると強く信じています」。

同社は新しい電池のパイロット生産ラインを建設するものの、最終的には電解質材料のみを生産し、OEMや電池メーカーに電池のライセンスを提供する計画だ。

「長期的に見れば、当社は材料メーカーです」とキャンベル氏は話す。「固体電解質材料の業界リーダーになりたいと考えています」。そのため、今回の電池生産への進出は、同社にとって最後のものになるだろうとキャンベル氏はいう。予定しているパイロット生産ラインでは、複数のOEMメーカーに自動車の認定試験用の電池を供給するのに十分な量を生産し、より大規模な生産は自動車メーカーや電池セルメーカーが行う想定だ。

電池を自社で生産するのではなく、パートナーにライセンス供与するという決断は、常識的なアセットライトモデルだと同氏は語る。

「正直なところ、小さなSolid Powerが成長して、パナソニックやLG、CATLのような企業を駆逐する可能性がどれほどあるでしょうか」。スウェーデンのNorthvoltのようにそれに挑む企業もあるが、材料事業の利益率は高く、直接の競争相手となる大手はいない、とキャンベル氏は付け加えた。「資本的には軽いものの、現実的でもあります」。

このスタートアップは2021年6月に、白紙小切手会社であるDecarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの12億ドル(約1320億円)の逆さ合併により株式を公開すると発表した。キャンベル氏によると、この取引で約6億ドル(約660億円)の現金が得られる見込みで、2026年または2027年までの十分な資金となるという。

特に、2027年までに年間10ギガワット時の電池容量を支えるだけの電解質材料の生産を目指しているため、2030年まで乗り切るためには十分な資金が必要となる。そのためには、今回の発表と比べ「桁違い」の電解質生産能力が必要になるとキャンベルはいう(発表の内容自体が桁違いではある)。

Solid Powerは、電解液の生産だけに留まるつもりはない。キャンベル氏は、低コストの正極材の開発にも取り組んでいることを示唆した。この正極材は、電池の原材料の中でも最もコストのかかるニッケルやコバルトを含まないものだ。

「この業界は材料費に支配され、材料費はニッケルとコバルトを含む正極材のコストに支配されることになるでしょう」とキャンベル氏は話す。「2021年の終わりに公開するこの特定の化学物質は非常に低コストで、今日の(ニッケル・マンガン・コバルトの)陰極のコストの20分の1から30分の1になります」。

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画像クレジット:Solid Power

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ、BMW、ブリヂストンの迷い、環境に配慮したモビリティは必要だがそのコストは誰が払う?

国連が採択したSDGsや、ESG投資に注目が集まる中、自動車業界にも環境への配慮が求められるようになってきた。フロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」においても、今後のモビリティを考える上で「循環型経済」がテーマとして挙げられている。同サミットでは、トヨタ・ダイハツ・エンジニアリング&マニュファクチャリング上級副社長兼一般財団法人トヨタ・モビリティ基金アジア・パシフィック地区担当プログラムディレクターのPras Ganesh(プラス・ガネシュ)氏、BMW Groupサーキュラーイニシアチブ担当役員のIrene Feige(アイリーン・フェージュ)氏、ブリヂストンGサステナビリティ推進部門長の稲継明宏氏、フロスト&サリバンヴァイスプレジデントのVijayendra Rao(ヴィジャンドラ・ラオ)氏が対談。フロスト&サリバンでアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏をモデレーターとなり、循環型経済の重要性や実現可能性について語った。

本記事はフロスト&サリバン主催「インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション」中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる

循環型経済は何から手をつけるべきか

対談はヴァイジャ氏の「循環型経済にはどんな意味があるか?」という問いから始まった。

ガネシュ氏は「循環型経済は、トヨタで30年以上テーマとなっています。二酸化炭素の削減には部分的なアプローチではなく、より大きな視点での全体的なアプローチが必要です」という。さらに同氏は、トヨタが持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジ「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年に発表したことに触れ「循環型経済はトヨタにとっては新しいものではありません」と強調した。

では、循環型経済を実現するにあたり、何から着手すべきなのか。

稲継氏は「循環型経済はブリヂストンにとって、ビジネス機会だと捉えています。そこで重要になるのが資源の効率化です。当社のパートナーと協力し、必要なエコシステムを構築する必要があります」と話す。

一方、ガネシュ氏は車両寿命とリサイクルに注目すべきだと考える。車両寿命は地域ごとに差があり、アジアの車両寿命は10〜20年だという。同氏は「現状、使わなくなったクルマをリサイクルに出すよりも、売り払った方が所有者にとって得なことが多い。それでは循環が進まないので、政府のサポートを得ながら、リサイクルを促進したり、リサイクルしやすいように車体を分解しやすいデザインにしていくことが重要です」という。

フェージュ氏は、使用する材料を減少させるためのエコシステムの見直しの必要性を重要視している。同氏は「着手しやすいのは、金属の再利用です。もちろん、再利用品であれ、新品であれ、質が高くなければいけないのは大前提ですが、今後のクルマの生産では金属を再利用し、新品の金属を使用する際には、それを正当化するような仕組みが必要です」と語る。

リサイクルの壁

ヴァイジャ氏の次の質問は「循環型経済を考えた時、EV(電気自動車)はどういう意味を持つのか?」だった。

フェージュ氏は「持続可能性はEVによってもたらされます」と断言。車体やバッテリーの分解・再利用を視野に入れ、サプライチェーン全体を見直さなければいけないと見ている。

ガネシュ氏もリサイクルの重要性を認め「バッテリーのリサイクルモデルができ上がれば、クルマの価格を下げることに繋がります」と話す。しかし、同氏はリサイクルには壁もあると考える。例えば、アジアではほこりや湿度の関係で、バッテリーの再利用に限界がある。さらに、リサイクルに関わるテクノロジーはまだ発展途上で、変化が多い。生産からリサイクルまでのプロセスを最初から考えなければいけないという。

稲継氏は「ブリヂストンにとっては、クルマに関わるリサイクルというと、タイヤのリサイルを意味します。そしてタイヤリサイクルはビジネスだと捉えています。リサイクルとは、資源の循環ですので、やはりパートナーとの協力関係の構築と、エコシステムの見直しが鍵ですね」という。

循環型経済へのマイルストーン

ここまでで循環型経済に向けた課題が見えてきた。しかし、実現までのマイルストーンはどう設定していけば良いのか。

ガネシュ氏は先述の「トヨタ環境チャレンジ2050」を挙げ、トヨタは循環型経済の実現目標を2050年に定めていることに言及した。同時に、実現のために考えなければいけないことは多いとも語る。

同氏は「実現には戦略が不可欠です。例えば、カーボンニュートラルはどれくらいの規模でやるのか?トヨタだけでやるのか?政府と組むのか?何か他の組織と協力するのか?など考えなければいけません。トヨタには26カ国 / 地域に50の海外製造事業体があります。それぞれの国にはそれぞれの状況があります。つまり、カーボンニュートラルは一度やっておしまいではなく、それぞれの国でそれぞれの段階で進めなければいけません」と話す。

一方フェージュ氏は「カーボンニュートラルはBMWのゴールです」という。マイルストーンとしては、使用する金属の見直しや、市場の金属供給の精査がまず必要だという。

では、日本のモビリティにおけるカーボンニュートラルのマイルストーンはどうなのだろうか。

ガネシュ氏は、日本政府のサポートが強いことを指摘する。天然資源にそれほど恵まれていない日本では、循環型経済は喫緊の課題であるため、政府の支援も受けやすいという。

稲継氏は「日本の政府とコラボレーションするということは、規制のあり方を考えることでもあり、重要なことです」とガネシュ氏を補足した。

誰がコストを払うべきか

循環経済を実現するには、リサイクル技術の開発や、これまでと異なるプロセスを組み込むことでコストが発生する。ヴァイジャ氏は「こうしたコストや、コストによる自動車価格への影響はどうするべきなのでしょうか」と他の参加者に質問した。

稲継氏は「エコシステム全体でコストを分かち合う必要があると思います」と回答。

フェージュ氏は「素材の再利用で全体プロセスにかかるコストは下げられると思います。新品の素材でも再利用の素材でも、同じ質を担保することが課題となります」と答えた。

ガネシュ氏は「循環型経済のために自動車の価格が変動したら、その変動分を調整しないといけません。では誰が調整するのか?政府でしょうか?顧客でしょうか?自動車メーカーでしょうか?」と問題を提起。さらに、循環型経済は素材の再利用でコストが下がる可能性もあると指摘し「循環型経済で増加したコスト」と「循環型経済で下げられたコスト」のバランスがしばらく変化し続けるだろうと予測する。

さらに、同氏は発展途上国での循環型経済実現はより難しいであろうとも考える。そういった地域では、ロジスティクス用の車両を農業用に作り替えるなどして、1台のクルマに対し1回目の使い方、2回目の使い方、といったふうに複数回の用途を考えることが着手しやすいと指摘した。

「ただし、顧客がこういった車の使い方を望んでいるのか?お金を払いたいのか?というのも考えないといけません」とガネシュ氏は最後に付け加えた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタBMWブリヂストン循環型経済二酸化炭素リサイクル電気自動車

EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

環境問題が本格化した1990年代、ドイツの一部の自動車メーカーは、自社の自動車が温室効果ガス排出の点で確実に貢献し続けられるよう、秘密裏に会合を持っていた。欧州連合(EU)によると、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)、BMW(ビー・エム・ダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の親会社であるDaimler(ダイムラー)の5社が、違法に結託し、新型ディーゼル乗用車の排ガス浄化に関する競争を制限し、よりクリーンな排ガス技術の導入を実質的に遅らせていた。EUは現地時間7月8日、排出ガスカルテルに関与したVWとBMWに対し、10億ドル(約1110億円)の制裁金を科した

「Daimler、BMW、VW、Audi、Porscheの自動車メーカー5社は、EUの排出ガス規制が法的に要求する水準以上の有害排出ガスの削減技術を有していました」と、欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)上級副委員長は声明で述べた。「しかし、彼らは、この技術の可能性を最大限に活用せず、法が要求する水準を超えてクリーンであろうと競うことを避けました。つまり、本日の決定は、合法に行われた技術協力というものが、いかに間違っていたかということに関係しています。私たちは、企業が結託することを容認しません。これはEUの反トラスト規則で違法とされています。欧州が野心的なグリーンディール目標を達成するためには、自動車の汚染管理に関する競争とイノベーションが不可欠です。今回の決定は、この目標を危うくするあらゆる形態のカルテル行為に対して、私たちが躊躇なく行動を起こすことを示しています」と述べた。

すべての当事者が自社の関与を認め、和解に合意した。AudiとPorscheを所有するVWは約5億9500万ドル(約655億円)、BMWは4億4200万ドル(約484億円)を支払わなければならない。Daimlerは約8億6100万ドル(約947億円)を支払うが、同社は内部告発者であるため、罰金を免れた。つまり、Daimlerは無罪放免となる。

BMWの2020年の純利益は46億2000万ドル(約5080億円)、VWの2019年の純利益は約230億ドル(2兆5300億円)、2020年は約122億ドル(1兆3420億円)であり、今回の罰金はある意味、手首を平手打ちされる程度にすぎない。忘れてはならないのは、VWが排ガススキャンダルに巻き込まれたのは今回が初めてではないということだ。

米環境保護庁は2015年、VWがディーゼルエンジンにソフトウェアを意図的に追加して排ガス規制に従っているように見せかけていたが実際には法定量をはるかに超える排ガスを出していたとして、VWに大気浄化法違反の通告を行った。

今回の訴訟でEUが特に注目したのは、ディーゼル車の排気ガスに混ぜて有害汚染物質を中和する溶液「AdBlue(アドブルー)」のタンクの大きさについて、関係企業が合意したことだ。自動車をよりクリーンにする技術を持っているにもかかわらず、競争しないことで合意したのだ。

シュピーゲルがこのカルテルのニュースを最初に報じたのは2017年。各社はグリーンウォッシング(偽善的な環境への配慮)に着手した。同年、関係者全員とFord Motor(フォード・モーター)が手を組み「Ionity(イオニティ)」というEV用の高出力充電ネットワークを構築した。計画では、2020年までに欧州全域で約400カ所の充電ステーションを建設・運営することになっていたが、イオニティは欧州全域で300カ所しか設置できず、さらに2020年は充電料金を500%と大幅に値上げしていたようだ。

今週初めには、VWの大型トラック事業、Traton Group(トレイトン・グループ)、Daimler Truck(ダイムラートラック)、Volvo(ボルボ)グループが、約5億9300万ドル(約652億円)を投資し、欧州各地に電動大型長距離トラック・バス用の公共充電ステーションのネットワークを構築に向け協業することが決まった。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:制裁金EUVolkswagenAudiPorscheBMWMercedes-BenzDaimler

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWがレトロフューチャーな電動スクーター「CE 04」をついに生産開始、しかし132万円で買う人はいるのか?

BMW(ビー・エム・ダブリュー)の電動シティースクーターの話は何年も前から聞いている。電動キックスクーターのことではないので念のため。ドイツの自動車メーカーは2017年にBMW Motorrad Concept Linkという未来の高級マイクロモビリティを思わせるコンセプトバイクを発表した。2020年11月に最新のコンセプトスクーター「CE 04」を披露したBMWは、このほど本格的な生産に入った。

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現地時間7月7日、同社は2022年ラインアップにCE 04が正式に加わり、第1四半期に全世界で発売する計画を発表した。かわいらしい顔立ちでレトロフューチャーな雰囲気を醸し出すこのスクーターは、70年代、80年代の人々が「未来的」乗り物はこうなると思っていたものを彷彿させる。

これはBMWにとって初の電動スクーターではない。同社は2014年にC Evolutionを発売したが、米国内ではあまりうまくいかなかった。おそらく、時代より早かったためだろう。おそらく、価格が1万3000ドル(約144万円)だったからだろう。

CE 04の価格は1万2000ドル(約133万円)から。そしてBMW Motorrad Concept Link最大のポイントは「未来の都市環境にとって何が重要かというビジョン」を提供することであり、そうすればたとえ売上が伸びなくてもBMWは気にしないだろう。しかし、BMWがガソリン車よりもずっと安いものを作るまで((Vespaなら新車が5000ドル[約55万円]以下で買える)、この自動車メーカーの新スクーターが各都市を席巻することは保証されていない。

8.9 kWhのバッテリーパックを使うことで、Evolutionの12.7 kWhパックと比べてBMWはずっと少ない台数で利益を上げられるだろう。高品質のテクノロジーと5年前と比べて安くなったバッテリーを利用できることを考えればなおさらだ。

BMW Motorradの広報担当者はTechCrunchに対しれ、CE 04はバイク市場の中価格帯の値段であり、電気自動車よりずっと安いと語った。

「一部の人にとっては、電気モビリティへのはるかにコストのかからない入り口です」と広報担当者はいう。

もちろん、熱烈なファンは飛びつくだろう。私たちが笑いの種にしないようにかなり苦労しているBMWの奇妙なプレスリリースにでてくる架空の人物のように。

早朝。町は目を覚まし始めている。ガレージへ行くまでの間に私は冷たい空気を吸った。着ているのはファッション的にも機能的にもカジュアルにカットされたパーカー。プロテクターは目立たないが安心感を与えてくれる。1日が始まる準備ができた。

ちょっと待った、まだ続きがある。

早起き鳥がさえずり、都会のジャングルが目を覚ます。町の音が高まり始める。すべてが動き始める。人々も動く、互いにそして平行に。出会いが起きる。

新しい日は何をもたらすか?川沿いの小さなバーで友達と食べるタパス?あるいは近代美術館の展示?何よりも先に、会社の予定がある。ワークショップ、ミーティング、顧客訪問。これが人生というもの。

私はスマートフォンをスクーターとペアリングし、腕をひと振りしてパーカーをアクティベートする。LEDが点灯する。私は静かだが、誰かに見てもらいたい。すべてがこんなにシンプルでスムーズ。

とうとうまた出発の時が来た。朝食の間さえも待ち遠しかった。鳥たちでさえ私に気づかない。私はほとんど音をたてることなく近所を滑走する。再び私は町の一部になる。

街との一体感

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「新しいBMW CE 04は、BMW Motorradの電気モビリティ戦略の論理的かつ考え直された延長線上にあります」とBMW CE 04のプロジェクトマネージャーであるFlorian Römhild(フローリアン・レムヒッド)氏は声明で語った。「市街地はこのクルマの要素の1つです。ここが新たな基準を作る場所です。テクノロジーとビジュアルスタイルの両方で」。

ヨーロッパとアジアの市場では、CE 04は都市向けバイクとして販売されるが、そのカテゴリーがほとんど存在していない米国では、スクーターは都市通勤者にリーチしようとしている。

CE 04の最大出力は42馬力で最高速度75マイル/時(約120 km/h)なので、米国の詰まった動脈であるハイウェイを走ることができる。推定航行距離は80マイル(約128 km)で家庭用レベル2充電器または公共充電ステーションで2時間以内で充電できる。ライダーはエコモード、レインモード、ロードモードの中から効率よく走れるモードを選ぶことができる他、パワーアップしたい人のためにはダイナモックモードが、1650ドル(約18万2000円)のプレミアムパッケージの一部として用意されている。

アバンギャルドなフォームに、車両の中間部に置かれたフラットなバッテリーが実現したスムーズで低い車高という機能性が加わり、ヘルメットと充電ケーブルのためのストレージコンパートメントが乗ったまま手の届く位置にある自由なデザインだ。エネルギーをバッテリーに戻す再生式ブレーキングシステムは、市街地を走る際に数多く使われるだろう。

最近のどの車両も同じく、10.25インチのカラースクリーンがハンドルバーに設置され、ナビゲーションとスマートフォン接続を備えている。USB-C充電ポートもある。

標準カラーは「ライト・ホワイト」だが、もっとすごい「マゼラン・グレイ・メタリック・アバンギャルド」のカラーリングを望む人はアップグレードに225ドル(約2万9800円)必要だ。どちらもブライト・オレンジのアクセントが施されている。

今後の展開は?

「当社のCEOは、これは『04』であり『4』の下にも上にもスペースがあると言っています。それは当初の未来の電動スクーターのためのスペースだと申し上げておきます」と広報担当者はいう。

BMWは他に開発中のモデルや発売のタイミングについて何も口にしていないが、CE 04は、完全電動車を2025年までに約200万台、2030年までに1000万台販売するというBMWの全体計画の一部である。

「世の中の動きがあまりにも速いため、CEシリーズへの新規追加は1~2年のうちに起きるかもしれません」と広報担当者は述べた。

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BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

カテゴリー:モビリティ
タグ:BMW電動バイク

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

BMW i Venturesが持続可能な技術への投資を目的とした約336億円の新ファンドを発表

BMWグループのベンチャーキャピタル部門であるBMW i Venturesは、輸送、製造、サプライチェーンをより持続可能にする技術への投資を促進するため、新たに3億ドル(約336億円)のファンドを設立するとを発表した。

このファンドは、従来のコーポレートベンチャーキャピタルとしては運営されておらず、ドイツの自動車メーカーであるBMWの全面的な支援を受けながら、BMWから独立して活動している。2016年のシリコンバレー移転時に発表した1つ前の5億ユーロ(約660億円)のファンドは、新規投資の期間が終了した。今後、新規投資はファンドIIから行われる。

ファンドIでは、自律走行車やデジタル車両技術、カスタマーエクスペリエンス、先進的な生産に重点を置いていた。例えば、先週、BMW i Venturesからの投資を発表した自律走行トラックのKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、このファンドの投資先だった。ファンドIIでは、自動車のコア技術に特化して投資するのではなく、自動車の設計、製造、製造に至るすべての分野で、持続可能性とゼロエミッションをさらに重視していく。

「持続可能なサプライチェーンは、我々が今、本当に関心を寄せていることの1つです」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるMarcus Behrendt(マーカス・ベーレント)氏はTechCrunchに話した。「BMWは二酸化炭素排出量を大幅に削減したいと発表しました。そのため、自動車からの排出だけでなく、自動車の製造や開発の際に発生する排出も含めて、あらゆる形態の二酸化炭素排出を視野に検討しています」。

BMW i Venturesは、2019年末にこうした持続可能な投資に足を踏み入れ始め、スマートな電気モーターシステムを開発しているTurntide Technologies、固体電池技術のSolid Power、金属産業の脱炭素化を目指すBoston Metalに投資した。ベーレント氏によれば、最近の投資はファンドIIがもたらすものを示唆している。新ファンドの最初の投資先は、英国の中古車販売会社であるMotorwayだ。

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「我々には今、2つの目標があります。第1は財務的な目標で、これは我々の最も重要な原動力です」と、BMW i VenturesのマネージングパートナーであるKasper Sage(カスパー・セイジ)氏はTechCrunchに語った。「世の中のコーポレートベンチャーキャピタルには、投資収益率を気にせず、投資にともなう事業上の取引から利益を得ようとするところもありますが、それは実際には投資先のビジネスを傷つける可能性があります。我々の目標は、その会社をできる限り成功させることです」。

第2の目標は「母艦」であるミュンヘンのBMWグループに戦略的価値を提供することだ。主にアーリーステージの企業に投資することで、早期に市場のシグナルをつかみ、それをBMWに伝えることができる。

「場合によっては、こういう新しい技術が存在し、あなたにも関係のあることかもしれないということを認識してもらうだけです」とセイジ氏はいう。「例えば、当社はLimeに投資しましたが、これはマイクロモビリティであり、自動車との接点はありません。しかし、これは人々がAからBへ移動する方法に関する未来の一部であることを理解することが重要です」。

ベーレント氏とセージ氏はいずれも、BMW i Venturesは投資先を買収する意図はなく、将来的にBMWや他の業界と協力できる可能性の高い企業を見つけるために最前線に立っていたいと話した。

セイジ氏によると、同社はこれまでに12社のイグジットを行い、加えて現時点で6社の上場企業と、最近S-1を申請し、間もなく上場する予定の1社に投資しているという。

「投資をするのに会社の賛同は必要ありません」とベーレント氏はいう。「デューデリジェンスのためにエンジニアに相談したり、他のスタートアップとつながりを持ったりしています。我々は両方の良いところを組み合わせようとしています。つまり、当社はファイナンシャルVCのように行動し、取締役会に席を確保し、ラウンドをリードし、迅速な決断を下すことができます。また、当社は組織内のあらゆるコネクションを企業に提供しています」。

BMW i Venturesが投資するスタートアップ企業は、BMWのエンジニアや社員とのネットワークを築くことができ、また、自動車のエコシステムがどのように機能するかをレガシー企業から学ぶことができるというメリットがある。ベーレント氏によると、Solid Powerのように技術の確立がさらに4、5年先になる企業の場合、BMWの事業部門との間に、そうした企業の成長を支援する強い協力関係があるという。

「これはWin-Winの状況です」とベーレント氏は話す。「当社は彼らを紹介し、会社に連れて行きます。彼らは適切なエンジニアと話をすることになります。契約を獲得できるという保証はありませんが、一緒に仕事をして、模索して、サポートを得て、もしかしたらすばやい解決策で助けてくれるかもしれません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:BMW持続可能性二酸化炭素排出量二酸化炭素投資ファンド

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ

Ford(フォード)とBMWが出資する全固体電池デベロッパーのSolid Power(ソリッドパワー)が上場する。同社は米国時間6月15日、特別買収目的会社Decarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの合併を通じてNASDAQに上場し、取引後の時価総額は12億ドル(約1320億円)になると明らかにした。

取引では現金約6億ドル(約660億円)を獲得する見込みで、ここにはKoch Strategic Platforms、Riverstone Energy Limited、Neuberger Berman、Van Eck Associates Corporationなどの投資家からの1億6500万ドル(約181億円)のPIPE(上場企業の私募増資)が含まれる。Solid Powerは声明文の中で、調達した資金は成長とオペレーションにあてると述べた。

全固体電池はバッテリーテクノロジーにおける待望の次なるブレークスルーだと多くの人は考えている。この名称は、従来のリチウムイオン電池にある陰極と陽極の間をイオンが動くメカニズム、液体電解質を使用していないためだ。これについてはMark Harris氏が2021年初めにExtra Crunch記事で詳しく書いた。この液体の構成要素を取り除くことで、全固体電池はより安全で、エネルギー密度もはるかに優れているとSolid Powerは話す。同社は6月15日の投資家向け説明会で、同社のバッテリーが1回のフル充電で航続距離500マイル(約805km)を提供でき、寿命は従来のバッテリーの8年の2倍超となる見込みだと説明した。

Ford Motor CompanyとBMW AGはSolid Powerの出荷能力について強気の見通しを持っていることを明らかにしてきた。2社はSolid Powerの2021年5月の1億3000万ドル(約143億円)のシリーズBラウンドをリードし、試験的に生産される自動車規模のバッテリーを2022年初めに納品するという共同開発契約を結んだ。

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SPACとの合併は2021年第4四半期に完了する見込みだとSolid Powerは述べた。ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「SLDP」で取引される。

Solid Powerは、SPAC経由で上場する最新のバッテリー会社だ。主要ライバルの1社はVolkswagenが出資するQuantumScapeで、同社は2020年9月にSPAC合併経由で上場し、企業価値33億ドル(約3631億円)とした。2021年初めには欧州のバッテリーメーカーFREYRとパワーシステムデベロッパーのMicrovastもいわゆる「白紙小切手」会社との合併を発表した

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タグ:BMWFord全固体電池バッテリーSolid PowerSPAC

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi