CESに登場したEV充電企業は家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

EV充電企業各社はここ数年間、CESで自社商品を展示してきた。2022年は、利害関係、そしてオポチュニティの度合いが若干高まっている。

数年以内に数十車種もの電気乗用車や商用車が市場に投入されると予想されており、EVはメインストリームになりつつある。より大きな市場には価格がついてくる。メインストリームの消費者は、ガスの燃料補給時間に匹敵する充電時間を期待し、優れたユーザーエクスペリエンス設計には慣れている。そしておそらく、ピーク時とオフピーク時のエネルギーグリッド時間について考える必要性はなかったであろう。

2022年のCESに登場した充電企業や小規模スタートアップはこのシフトを認識しているようで、迅速性、コネクティビティ、利便性、設置の容易性、電力網との連携において向上が図られたプロダクトのピッチを行った。特筆すべき点として、この大きな顧客基盤へのリーチに注力するEV充電企業各社は、商用車の充電から家庭での充電、Vehicle-to-Grid技術から充電器の広告スペースの収益化に至るまで、あらゆるユースケースに対応できるように設計されたプロダクトを披露している。

世界のEV充電器市場は2020年の32億3000万ドル(約3721億円)から2025年には110億ドル(約1兆2671億円)近くに成長すると予測されている。業界にはまだ新規参入者のためのスペースが残されているものの、その多くはデモやニュースでCESを飾ることはなかった。CESで技術を顕示した小規模企業は、独自のソリューション、豊富なコネクティビティ、充電速度のアップグレードという点で際立っている。

Blink Charging(ブリンク・チャージング)

Blinkは2022年、4つの新しい充電プロダクトを発表した。1つはDC高速ウォールマウント充電器であり、残りの3つはレベル2充電器で、フリートおよびマルチユニット用、家庭用、広告ディスプレイの統合用にそれぞれ設計されている。すべての充電器には、4G LTEおよびWi-Fi接続に加えて、フリート管理統合、負荷共有技術、エネルギー使用管理などのスマート性能が備わっている。

Blink MQ 200、フリートEV充電ステーション用

フリート、ワークプレイス、マルチファミリー向けに特別に設計されたこの50アンペアの充電器は、プラグアンドチャージ機能が搭載されており、車両から充電ステーションへの一意かつ暗号化された情報の流れを通じて車両の識別を自動的に行う。この機能は、その名前が示すように、ドライバーがプラグインするだけで充電セッションを開始できることを意味する。

2022年の第1四半期末までに利用可能になる「MQ 200」には、複数の充電器にまたがる直接ユーティリティ通信およびローカル負荷管理のためのスマートグリッド機能が付属しており、一回線に2〜20台の充電器を設置することができ、夜間のフリート充電に理想的である。また、Blink充電器をクラウドに接続するソフトウェアであるBlink Network(Blinkネットワーク)や、CESでローンチされたBlink Fleet Management Portal(Blinkフリート管理ポータル)とも通信する。同ポータルでは、フリート管理者向けに、充電および負荷管理、充電器、車両、ドライバーを追跡するダッシュボードを提供している。

Blink HQ 200、次世代家庭用充電器

「HQ 200」はBlinkの最新の家庭用充電器で、前世代の30アンペアから50アンペアのレベル2充電器にアップグレードされた。他のEV充電企業でも見られるように、家庭での付加的な電力供給は、各社が充電時間を短縮する方法を求めて競い合う中、2022年のトレンドとなっている。

消費者は基本的な充電器を選ぶ傾向にあるとはいえ、このスマートなWi-Fi対応バージョンは、実に私たちを魅了するものである。HQ 200はBlink初のV2G(Vehicle-to-Grid)技術搭載充電器の1つであり、ピーク以外の時間帯にはEVを充電し、ピーク時にはEVのバッテリーに蓄えられたエネルギーを電力網に戻すことができる。

HQ 200はさらに、Blink Mobile App(Blinkモバイルアプリ)に接続することで、即時の充電開始、充電時間のスケジュール設定、リマインダーの設定も可能になる。2022年の第1四半期末までに利用可能になる予定である。

同時に2台充電できるDC高速ウォールマウント

50キロワットのDC高速ウォールは、壁に取り付けたり、台座に設置したりすることができ、さらに同時に2台の車を充電することが可能で、車両、小売店、街角での充電、交通量の多い場所での使用に最適なものとなっている。最大出力150アンペア、V2G技術、10インチのタッチスクリーンディスプレイ、そして時間、キロワット時、あるいはセッションごとに課金する機能を備えている。また、Blink Networkを介したリモート管理とエネルギー使用量レポートが可能となっている。メンバーカード、RFIDクレジットカード、またはモバイルアプリを持つユーザーは、RFIDリーダーを使用して充電を開始することもできる。

「DC高速充電の予算がないと感じている店舗にとって、プライスポイントも魅力的になるでしょう」とBlinkの広報担当者はTechCrunchに語っている。「現在の既存の機器は通常3万5000ドル(約400万円)からですが、DCウォール50キロワットのコストは2万ドル(約230万円)未満です」。

Vision IQ 200(ビジョンIQ 200)、広告用

このレベル2充電器には、ダイナミックデジタルメディアディスプレイ用の30インチLCDスクリーンが1つまたは2つ付属している。小売店、ホスピタリティ事業、自治体施設や交通量の多い場所に理想的なフルサービスの広告性能を備えている。不動産保有者には充電と広告収入の両方の収益分配機会が提供され、後者はサードパーティーベンダーを通じて管理される。

「Vision IQ 200」は、80アンペアのIQ 200の充電器を1つか2つ搭載しており、RFID、Apple Pay、Google Walletおよびすべての主要クレジットカードによる支払いが簡単にできる他、リモート管理やリアルタイムのエネルギー使用状況レポートなどのスマート機能も備えている。

Blinkによると、DC高速ウォールは年内に利用可能になる予定である。

E-Lift(Eリフト)

E-LiftはCESで、カスタマイズ可能な新しいポップアップ式充電ステーション「E-LIFT GS」を発表した。このオランダの会社は、近くこれを北米でローンチすることを目指している。この小さなステーションには同時充電用のプラグが最大4つ付属しており、E-LiftのSustainable and Smart Energy Management System(SENSE、持続可能でスマートなエネルギー管理システム)に接続するセンサーを装備することができる。

SENSEプラットフォームは、ユーザーのモビリティとエネルギーのニーズを管理するシステムとして機能する。同社は声明の中で、顧客は遠隔地からログインして、モビリティとエネルギー消費データのモニタリングと管理を行うことが可能で「費用対効果の高いエネルギー転換が実現し、再生可能エネルギー資源の利用によって将来を再構築しようとしている政府や企業にとって有益なものとなる」と述べている。

JuiceBar(ジュースバー)

コネチカット州を拠点とし、Made in America基準を本格的に推進しているEV充電会社JuiceBarは、CESで同社初の家庭用充電器「Cheetah(チーター)」を発表、この名称は迅速さに由来すると同社は述べている。

Cheetahは2022年中に販売される予定で、同社によると、新しい充電器と交換される古い充電器すべてに対して1000ドル(約11万4600円)ずつ支払われるという。JuiceBarは米国とカナダで数百台の商用充電器を取り扱っており、この新しい家庭用充電器も同じ市場に投入される。

Cheetahは16、32、40、48アンペア構成で、入力電圧は120、208、240ボルトとなっている。Blinkの出力を見る限り、JuiceBarは市場で最速のレベル2にはならないが、近いところにある。CheetahはBluetooth、イーサネット、Wi-Fi、クラウド接続にも対応しており、スマートグリッドの充電に役立つ。25フィート(約7.6m)のコードが付属しており、絡まないコードリトラクターもオプションで用意されている。

家庭で充電するときの安心のために、Cheetahは二重のセーフティリレーを装備している。第1のリレーが閉じてヒューズが切れた場合に、第2のリレーが回路を開閉する。JuiceBarによると、充電器の電力は、充電器のカーボンフットプリントをオフセットする、100%認証済みのカーボン削減プロジェクトによって支えられているという。同社は初年度分のカーボンオフセットを購入することになっている。購入者はその後も、週1ドル(約115円)未満の会費でカーボンオフセットを購入できる。

Cheetahは第2四半期の終わりか第3四半期の初めに消費者向けに提供されると広報担当者はTechCrunchに語っている。当初は米国やカナダにおいて、自動車ディーラー、住宅建設業者、電力会社などの第三者を通じて販売される。

Wallbox(ウォールボックス)

Wallboxは、2022年のCESで「Quasar 2(クエーサー2)」を発表した。これは電気自動車の所有者が自宅や送電網に電気自動車を充電したり、放電したりすることを可能にするだけではなく、停電時に、それが自然災害によるものであっても、自宅を送電網から隔離し、EVをバックアップ電源として使用できる機能を提供する。Wallboxによると、Quasar 2は停電中でも3日間以上家に電力を供給できるという。

Vehicle-to-Home(V2H)機能は、特に電力料金が需要に関係する州で、EV所有者が家庭のエネルギーコストを節約するのに役立つはずだと同社は述べている。ユーザーは、レートが低いときに充電セッションが実行されるようにスケジュールを設定できる。また、太陽光発電を設置しているユーザーは、使用率が低いときにEVに余剰のエネルギーを蓄えることができる。

Quasar 2は48アンペアの電力を供給し、Jaguar I-PaceやBMW i3などの急速充電車に対応するCCS互換で、Wi-Fi、Bluetooth、イーサネット、4G経由でmyWallbox app(マイWallboxアプリ)に接続する。

Wallboxは、Quasar 2の価格を明らかにしなかったが、約4000ドル(約46万円)のQuasar 1相当になると説明した。2022年末までにローンチする予定である。

Meredot(メレドット)

この市場に出回るクルマは電気自動車だけではない。マイクロモビリティのクルマにも愛が必要だ。それこそが、Meredotが電動スクーター、電動モペッド、そしてフードデリバリーロボットや車椅子などの乗り物向けに設計された初の商用ワイヤレス充電器を発表した背景にある。この充電器は、地面の上または下に設置できる物理的なパッドの形態をとっており、受信機を搭載した車両がその上に駐車したときに充電が行われる。

Meredotは、同社のワイヤレス充電器において、マイクロモビリティOEMとフリート事業者をターゲットにしている。同社は、車を充電するための斬新で手間のかからない方法を提供したいと考えている企業向けに、自社の技術を市場に出してライセンス供与する準備が整っている。特にマイクロモビリティのフリートにとって、交換可能なバッテリーを持っていたとしても、スクーターやバイクの充電は大きなコスト削減要因の1つであり、この種の技術はゲームチェンジャーになる可能性がある。

「Meredotのワイヤレス充電器は新しい分散アーキテクチャを提供し、サイトの資本効率とスケーラビリティを向上させ、エネルギーとコストを節約します」とMeredotのCEOで共同創業者のRoman Bysko(ロマン・ビスコ)氏は声明の中で述べている。「Meredotのワイヤレス充電器は、新しいマイクロモビリティ充電エクスペリエンスのインフラ基盤となり、オペレーターとライダーの双方にメリットをもたらします」。

同社によると、従来のケーブル充電システムに比べて、同じ表面で電動スクーターを50%多く充電できるため、充電サイトのコストを大幅に削減できるという。

画像クレジット:Blink Charging

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

LGがインキュベーター「LG Nova」の第1期候補企業を発表

韓国の大手テクノロジー企業であるLGは、テレビ(CESでいくつか新製品が発表された)、洗濯機、冷蔵庫など、あらゆるものを製造している。同社が関わっていないものを列挙する方が、おそらく時間がかからないだろう。そんなLGがイノベーションに強い関心を持っていても驚くことはない。LG Nova(LGノヴァ)は、カリフォルニア州シリコンバレーのサンタクララにある同社の比較的新しい北米イノベーションセンターで、ここではLGの中核となる成長分野でのミッションを推進するために、スタートアップ企業と協力する新たな興味深い方法を模索している。

2022年1月はじめにラスベガスで開催されたCESで、LGは同社との提携を希望し、その候補に入ることができた最初の企業の一群を発表した。これらの企業には共通点がある。LGのイノベーション分野における重点領域のいくつかを強調・強化する企業であるということだ。

LG Novaが目指しているのは、もちろんこれらの企業を含めたスタートアップエコシステム全体のベン図の中心になることだ。これを、より広い投資家層、大手テクノロジー企業 、学界、起業家コミュニティ、そしてLG独自の適切な販売・マーケティングチャネルなど、LG自身が持つ強みや優位性と一体化したいと考えている。

LG Novaが現在実施しているプログラムは「Mission for the Future(未来に向けたミッション)」というもので、これは本質的に、LGのエコシステムの中でビジネスを創造するために、LGの客員起業家と協力できる最も有望な起業家やスタートアップを見つけるためのろ過システムだ。

Mission for the Futureは、LG Novaが9カ月間にわたって実施するチャレンジプログラムで、より知的で健康的、そしてよりコネクテッドな未来に向けて、生活の質を向上させる最も優れたアイデア、コンセプト、ビジネスを世界中から探し出すために設けられた。

この分野におけるLGの大きなテーマの1つはコネクテッドヘルスであり、特に施設や家庭、またはその分野のサービスを通じて人々のウェルネスニーズを満たすことに特化したヘルスケアを倍増させることに重点を置いている。LG Novaは、その最初の候補企業として、遠隔医療サービスのためのVR治療室を提供するXR Health(XRヘルス)と、LGのテレビを活用して顧客に健康に関する積極的な会話を促すデジタルAIヘルスアシスタントのMaya MD(マヤMD)を発表した。

メタバースは、LG Novaが特に注目している2つ目の広範なカテゴリーだ。そこでは人と機械が新たなインタラクションモダリティ(相互作用)で、どのようにつながることができるかを、より広範に探求しているように見える。この分野においては、メタバースで製品トレーニングを行うための企業向けアプリケーションとサービスを手がけるiQ3と、超現実的な仮想旅行・観光体験を構築しているI3Mという企業が選ばれた。

LGが「Energizing Mobility(エナジング・モビリティ)」と呼ぶ持続可能なモビリティは、同社が推進するイノベーションの第3の柱である。SparkCharge(スパークチャージ)は、持続可能性を維持しつつ、電気自動車の充電をモバイル化するという興味深い企業だ。一方、Driivz(ドライブズ)は、電気自動車の充電管理のための一種のオペレーティングシステムを構築している。

LG Novaのイノベーション円グラフの最後の部分は、同社によると「Smart Lifestyles(スマート・ライフスタイル)」に関するもので、つまりこれはLGの言葉でいうスマートホーム技術のことらしい。この分野ではまず、ユニバーサルなスマートキー技術のEveryKey(エブリィキー)が選ばれた。これは1つのデバイスで車や電話、ドアのロックを解除したり、ウェブサイトのログインを安全に保つことができるようにするという技術だ。A.kin AI(エイキンAI)は、LGのハードウェア製品にバーチャルアシスタント技術を追加しようとしている会社で、特に神経多様性を持つ人々がいる家庭の在宅介護をサポートすることを目指している。そしてChefling(シェフィング)という企業が、必要栄養量に合わせて食事を計画、購入、調理するソリューションを提供し、スマート・ライフスタイルを完成させる。

今回発表されたスタートアップ企業を見れば、LG Novaがどのようなものを求めているかを少しだけ理解できる。次回の募集は2022年末に始まる予定だ。2022年のCESで筆者はこのプログラムの責任者に、LGが何を求めているのか、このプログラムがどのようにスタートアップと協力していくのか、また、選考委員会の目に留まるにはどうしたらいいのか、などについて詳しく話を聞いてきた

画像クレジット:LG Nova

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LGがインキュベーター「LG Nova」の第1期候補企業を発表

韓国の大手テクノロジー企業であるLGは、テレビ(CESでいくつか新製品が発表された)、洗濯機、冷蔵庫など、あらゆるものを製造している。同社が関わっていないものを列挙する方が、おそらく時間がかからないだろう。そんなLGがイノベーションに強い関心を持っていても驚くことはない。LG Nova(LGノヴァ)は、カリフォルニア州シリコンバレーのサンタクララにある同社の比較的新しい北米イノベーションセンターで、ここではLGの中核となる成長分野でのミッションを推進するために、スタートアップ企業と協力する新たな興味深い方法を模索している。

2022年1月はじめにラスベガスで開催されたCESで、LGは同社との提携を希望し、その候補に入ることができた最初の企業の一群を発表した。これらの企業には共通点がある。LGのイノベーション分野における重点領域のいくつかを強調・強化する企業であるということだ。

LG Novaが目指しているのは、もちろんこれらの企業を含めたスタートアップエコシステム全体のベン図の中心になることだ。これを、より広い投資家層、大手テクノロジー企業 、学界、起業家コミュニティ、そしてLG独自の適切な販売・マーケティングチャネルなど、LG自身が持つ強みや優位性と一体化したいと考えている。

LG Novaが現在実施しているプログラムは「Mission for the Future(未来に向けたミッション)」というもので、これは本質的に、LGのエコシステムの中でビジネスを創造するために、LGの客員起業家と協力できる最も有望な起業家やスタートアップを見つけるためのろ過システムだ。

Mission for the Futureは、LG Novaが9カ月間にわたって実施するチャレンジプログラムで、より知的で健康的、そしてよりコネクテッドな未来に向けて、生活の質を向上させる最も優れたアイデア、コンセプト、ビジネスを世界中から探し出すために設けられた。

この分野におけるLGの大きなテーマの1つはコネクテッドヘルスであり、特に施設や家庭、またはその分野のサービスを通じて人々のウェルネスニーズを満たすことに特化したヘルスケアを倍増させることに重点を置いている。LG Novaは、その最初の候補企業として、遠隔医療サービスのためのVR治療室を提供するXR Health(XRヘルス)と、LGのテレビを活用して顧客に健康に関する積極的な会話を促すデジタルAIヘルスアシスタントのMaya MD(マヤMD)を発表した。

メタバースは、LG Novaが特に注目している2つ目の広範なカテゴリーだ。そこでは人と機械が新たなインタラクションモダリティ(相互作用)で、どのようにつながることができるかを、より広範に探求しているように見える。この分野においては、メタバースで製品トレーニングを行うための企業向けアプリケーションとサービスを手がけるiQ3と、超現実的な仮想旅行・観光体験を構築しているI3Mという企業が選ばれた。

LGが「Energizing Mobility(エナジング・モビリティ)」と呼ぶ持続可能なモビリティは、同社が推進するイノベーションの第3の柱である。SparkCharge(スパークチャージ)は、持続可能性を維持しつつ、電気自動車の充電をモバイル化するという興味深い企業だ。一方、Driivz(ドライブズ)は、電気自動車の充電管理のための一種のオペレーティングシステムを構築している。

LG Novaのイノベーション円グラフの最後の部分は、同社によると「Smart Lifestyles(スマート・ライフスタイル)」に関するもので、つまりこれはLGの言葉でいうスマートホーム技術のことらしい。この分野ではまず、ユニバーサルなスマートキー技術のEveryKey(エブリィキー)が選ばれた。これは1つのデバイスで車や電話、ドアのロックを解除したり、ウェブサイトのログインを安全に保つことができるようにするという技術だ。A.kin AI(エイキンAI)は、LGのハードウェア製品にバーチャルアシスタント技術を追加しようとしている会社で、特に神経多様性を持つ人々がいる家庭の在宅介護をサポートすることを目指している。そしてChefling(シェフィング)という企業が、必要栄養量に合わせて食事を計画、購入、調理するソリューションを提供し、スマート・ライフスタイルを完成させる。

今回発表されたスタートアップ企業を見れば、LG Novaがどのようなものを求めているかを少しだけ理解できる。次回の募集は2022年末に始まる予定だ。2022年のCESで筆者はこのプログラムの責任者に、LGが何を求めているのか、このプログラムがどのようにスタートアップと協力していくのか、また、選考委員会の目に留まるにはどうしたらいいのか、などについて詳しく話を聞いてきた

画像クレジット:LG Nova

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

漕いで漕いで漕いでスマホを充電、トレーニングを電力に変えるSportsArtのジム用マシン

サプライチェーンからトレーニングジムのメンバー基盤まで、すべてをずたずたにしたパンデミックの中、プロフェッショナルグレードのジム用マシンメーカーのSportsArt(スポーツアート)が、電力網にエネルギーを戻せるローイングマシンを発売したのは、ちょっと夢のある話だ。風力発電やソーラーパネルと違うのは、動力が胸筋と三角筋と僧帽筋だというところだ。

このローイングマシンではマイクロインバーターで、ひと漕ぎごとの運動を携帯電話の充電に変える。同社の試算によると、放電状態のiPhoneをフル充電するには約2時間のボート漕ぎが必要だ。ちなみに私はバッテリーが切れそうな携帯電話をエクササイズマシンに乗るモチベーションに変えることにしばらくの間、興奮を覚えた。ハンドルバーのグリップには漕ぐ抵抗を増やすコントロールがあるので、ご想像のとおり、抵抗を増やせば発電力が高くなる。

同社はこのG260ローイングマシンを先週ラスベガスで行われたCESで披露し、漕手が出力したエネルギーの約74%を利用可能な電力に変換できると語った。私は今週、同社のCOOと話す機会があり、人力を使って電気を作ることになぜ意味があるのかを尋ねた。

「1時間のワークアウトで、概ね冷蔵庫の消費電力、約200ワット時が生み出されます」とSportsArtのCOOであるCarina Kuo(カリーナ・クオ)氏が説明した。ただし、ボートを漕いでTesla(テスラ)を充電するのはまだ無理だと彼女は認めた。ポイントはそこではない。「通常のトレッドミル(ランニングマシン)は1時間当たり約1000ワットの電力を消費します。ワークアウトするだけでなく、ワークアウトの消費電力を相殺する手助けができるというのが私たちの考えです」。

SportsArtは創業40年以上になる会社だ。本社は台湾で、米国の事業拠点はシアトルにある。さらに同社は、ドイツとスイスにも事業所を持ち、300人の従業員が世界に散らばり、80カ国で営業活動を行っている。主要なターゲットはトレーニングジムと体力をつけるためのリハビリテーション施設だが、現在ホーム市場も評価しているところだ。短期的には、マンションなどの共用ジムが同社にとって最適な対象だとクオ氏は言った。

「特にフィットネス業界では、新型コロナウイルス感染症のためにジムを稼働できないことが、家庭向け販売の爆発的増加につながっていることにまちがいありません。そこは競争が非常に困難な分野で、なぜならほとんどの購入者は安い製品のことを考え、必ずしも質を求めていないからです。これは当社が競争したい場所ではありません。私たちは品質の重要性を信じています」とクオ氏は説明し、同社が10~15年前に販売したエクササイズ器具を今でもメンテナンスしていること、今もジムや医療現場で業績をあげていることを話した。「私たちは最良の部品を使うことにこだわり、あらゆる部分を業界最高の保証で守っています。市場でこのような差別化要因を持てることは重要だと固く信じています」。

業務用マシンが主であることは、マシンがジムの片隅で95%の時間使われずにいるのではなく、発電し続けているほうがいいということを意味している。利用回数が大きく増えれば、マシンはジムの電気代にインパクトを与えられるかもしれない。

「私たちは家庭市場に進出しようとしているわけではありません。今は最適なターゲットを探しているところです」とクオ氏は説明し、同社の過去40年間のグリーンとリサイクルへの取り組みを強調した。「ジムでは特に違いが生まれます、なぜならサステナビリティのメッセージを発信できるからです」。

画像クレジット:SportsArt

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

CES 2022のビッグニュース

バーチャルであれ、対面であれ、あるいはそのミックスであれ、CESは怪物のような存在だ。展示会から洪水のようなニュースすべてに、どうしたらついていけるだろうか?無理だろう、本当に。大手メディアは、CESの報道を少人数で行い、その表面だけを取り上げている。

そのことを念頭において、CES 2022が終わった今、「今週のトップ記事」のようなもので、私たちが気づいたトレンドや、気に入った製品を取り上げた小さなまとめ記事が有意義ではないかと考えた。もちろん網羅的なものではないが、最近忙しくてそれどころじゃなかった方でも、ショーの雰囲気を感じていただけるだろう。

トップストーリー

TechCrunchは、CESの記事を山のように掲載した。そのすべてを読めない方のために、多くの方が読んでシェアした記事をご紹介しよう。

画像クレジット:BMW

BMW、ボタン1つで色が変わるクルマをCESで披露

まるでSF映画のようだ。ボタンを押すと、クルマの色が変わる。Eインクの技術をKindleの画面のように利用して、黒と白とグレーの濃淡にしか変わらないが、それでもすごい。予約ページを探しても無駄だ。現在は、デモのみである。

画像クレジット:NVIDIA

NVIDIAが249ドルのGeForce RTX 3050を発売

暗号資産の採掘者や転売屋、そして半導体不足という問題を抱えて、よほど大金を払える人でないかぎり良いグラフィックカードの入手は困難になっている。そのため、すごいカードが低価格で入手できるというニュースに多くの人が集まったのも当然だ。ただし転売屋も当然、狙うだろう。

画像クレジット:NVIDIA

NVIDIAがAT&Tやサムスンとの提携によりGeForce NOWクラウドゲーミングのリーチを拡大

新しいゲーム、AT&Tの顧客の一部に無料サブスク、そしてSamsungのテレビに統合する計画など、NVIDIAは、同社のゲームストリーミングサービスGeForce Nowに良いニュースがあった。

トップニュースには入らなかったが、Omniverseの技術をより多くのクリエイターに開放するという発表も注目を集めた。

画像クレジット:Daan Tech

小さな節水型の皿洗い機Bobには抗菌力もある

皿洗い機が欲しいけどスペースがない、戸棚を壊したくない、水道工事が面倒などと考えている人にとって、Bobならカウンターにも載るし、水は水差しで入れられる。しかも、水を使わないUVCモード(短波長紫外線による除菌)は、スマートフォンや鍵などの消毒にも使える。それに、とってもカワイイ。

画像クレジット:Scanbo

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つけずに血糖値を測定する

「あなたの血はどれくらい甘い?」なんて、TechCrunchライターのHaje Jan Kampsはいかにも彼らしいタイトルを書いた。まだ若いAI企業であるScanboは、痛くて疲れるし、いつまでも終わらない指刺し検査が不要な血糖値測定を目指している。

画像クレジット:Sony

ソニーがPS5向け次世代ヘッドセットPSVR2の情報を初公開

Sony(ソニー)がPS5用の新しいVRヘッドセットを開発していることは以前から知られていたが、CESではもっとたくさんのことがわかった。名称が「PSVR2」であり、ディスプレイがより改良されていてフォービエイテッド・レンダリングをサポートすることなどが明らかになった。

画像クレジット:GAF Energy

GAF Energyのソーラー屋根板の設置は専門チーム不要、テスラや他社製品の凌駕を目指す

「屋根素材の世界的大手企業の子会社であるGAF Energyは「同社新製品であるソーラー屋根板は極めてシンプルで、専門的な機器や知識が不要であるため再生可能エネルギーの家庭への導入がとても簡単に行える」とDevin Coldeweyはまとめている。

画像クレジット:Brian Heater

AirPodsを収納できるiPhone用バッテリーケース「Power1」

余計なモノを持ち運ぶより、いっそAirPodsをiPhoneに収めてしまいたいと思ったことのある人。このケースはそれを可能にする。TechCrunchのBrian Heaterは、ハンズオンのレビュー記事を書いている。

画像クレジット:Hyundai

現代自動車、メタバースにボストンダイナミクスのロボット「Spot」を送り込む

「ロボットをメタバースに接続して、我々はリアルとバーチャルの世界を自由に行き来できる」というHyundai Motor GroupのChang Song(チャン・ソン)社長の言葉は刺激的だ。ロボットのアバターになって火星旅行をすることが、未来のある日、当たり前のことになるのだろうか?

画像クレジット:Sony

ソニーがSUVの新型「VISION-S 02」披露、電気自動車会社「ソニーモビリティ」設立を発表

ソニーは数年前から自動車の実験をしてきたが、ここ2回のCESでプロトタイプを披露した。そして今回は、ソニーモビリティという新会社の設立を発表した。どうやってEVを商用化するのか、少しわかってきた。

トレンド

画像クレジット:Schlage / Schlage Encode Plus Smart WiFi Deadbolt

CES 2022でスマートホームデバイスの接続規格「Matter」に注目が集まっている理由

スマートホームデバイスはすばらしいものだ、ちゃんと動けば。ほとんどの人は、何と何が一緒に動くかを理解するだけでも大変なことだ。大手テクノロジー企業(Apple、Amazon、Googleなど)が一緒になって、Matterというプロトコルを作った。そしてTechCrunchのライターChristine Hallが、その現状を解説している。

画像クレジット:Yukai Engineering

ロボットのロールアウト

もうすぐ、ロボットのRosie(ロージー)がうちにも来るのかな?それとも、円盤型のロボット掃除機が私たちの靴下を食べることを、永遠に我慢するのか?先のActuatorニュースレターでBrian Heaterがコンシューマーロボティクスの現状を一望し、これまでの推移を語っている。しかも今では、なぜかあなたの指を噛むロボットの猫もいるんだ。

画像クレジット:Blink Charging

EV充電企業が家庭での充電を高速化、V2G、コネクティビティを推進

電気自動車はこのところ大きく扱われがちだが、そいつをつないでジュース(電気)をもらうための箱(充電器)はどうなんだ?この分野も競争が激化しており、各社の方法をRebecca Bellanがレポートしている。

画像クレジット:Cake

CES 2022に出展された電動自転車や電動スクーターは、よりパワフルに、よりスマートに

電動自転車やスクーターに、やれることはまだ残っているだろうか?自分のおしゃれな電動スクーターを、どうやって差別化すればいいのだ?TechCrunchのモビリティチームが、CES 2022のマイクロビークル関連のニュースをすべて教えてくれる。

画像クレジット:wacomka/GettyImages

VRとARはCES 2022でも「ブレイクの寸前」

特定のヘッドセットや大ヒットアプリがVRを一夜にしてすべてに普及してしまうのではなくて、これまでは漸進的な進歩だった。そして2022年のCESは、その歩みをさらに数歩進めた。

画像クレジット:Samsung

メタバースはメタバースをメタバースした

メタバース?メタバース!「メタバース」は、2022年のCESで最もバズった言葉だ。一部の企業の使い方は、まぁヘンだったけど。

画像クレジット:TP-Link

ガジェットもいっぱい

対象が電子製品だけじゃなくなっている現在のCESは、主催者もそれを「消費者向け電子製品ショー」(Consumer Electronics Show)と呼びたくないかもしれない。しかしそれでも、CESは相変わらず膨大な数の珍にして妙なるからくりが展示されていた。Brian Heaterは、その中からおもしろいものを厳選している。

画像クレジット:Yukai Engineering / BOCCO emo robot

高齢者に役立つテクノロジーはすべての人の役に立つ

そうじゃないふりをしていても、私たちはみんな歳をとる。インターネットを気軽に使えることを人類史上初めて知った世代が高齢化する。どうすればテクノロジーは、高齢者が快適に暮らせるサポートができるだろうか?Catherine Shuが、ロボットから小さな電球にまで、エルダーテック(高齢者テクノロジー)の現状を総括した。

私たちの個人的お気に入り

先週、私たちの脳がCES漬けになってしまった。しかもCESチームには、7、8回経験した者のいる。そんな私たちの心に、響いたものは何だろう?以下は、印象を深いものたちだ。

John Deereの自走トラクター

米国の農業者の平均年齢は57.5歳だ。農業は体にこたえる労働集約的な産業であり、最近さらに従事者が足りなくなっている。しかしながら農業は、自動化に最も適した産業の1つであり、John Deereは農業の自動化を完成すべく長年努力してきた。年内に米国市場で発売される8Rは、同社の人気トラクター系列に、完全な自動運転を導入する。現在、さまざまな機能を実装中だ。

— Brian Heater

メルセデス・ベンツが描く未来像

これは、決して日の目を見ることのない、単なるコンセプトカーではない。Mercedesは同社R&D部門のF1とフォーミュラEチームの高い技術力で、2024年以降の未来の車種で姿を現す先進的な部位を開発した。

注目すべきは、電池のエネルギー密度を向上させるために、陽極の化学的性質を「大きく進歩」させたことだ。この陽極は、ケイ素の含有量が高く、一般的に使用されている陽極よりもかなり多くのエネルギーを保持できる高度な組成になっている。つまり、より多くの航続距離をより小さなパッケージに詰め込まれている。2024年にはさらにバッテリーシステムに給電する超薄型ルーフパネルが導入され、航続距離の航続距離をさらに伸ばす。

— Kirsten Korosec

BMWの色が変わるコンセプトカー

BMWの色が変わるクルマを、すぐにでも買える人はいないと思うし、実用性もあまりない。スーパーの買い物でいっぱいになったカートを横からぶつけられたら、ドアパネルの修理代にいくらかかるだろう。でもリアルのCESで不満なのは、ばかばかしいものが1つもなかったことだ。しかし「技術を誇示するだけのために作ったもの」。そんなものが、たった1つだけ今回はあった。

— Greg Kumparak

介助ロボットを一般家庭へ

ロボットには、あれもできる、これもできるといった話が多い。しかし、最も人の役に立つロボットは、人間のかたちをしていない。

むしろ彼らは、Labradorのような形状をしているだろう。Labradorは要するに動き回るテーブルで、高齢者や日常動作が不自由な人を助ける。皿や飲み物をキッチンから食卓に運んだり、洗濯物かごの中身を洗濯機までもっていくといった作業をしてくれる。音声コントロールができるため、「寝室で待ってて」とか「私のそばにきて」と操作できる。多くの人の生活が楽にしてくれるはずで、私がロボット分野でもっとたくさん見たいと思っている種類もこれになる。

— Devin Coldewey

スマートホームデバイスの接続規格「Matter」

CESのスマートホームデバイスでおもしろかったのは、Mui LabsのMatter対応「muiPlatform」だ。それは、スマートホームデバイスを「もっと静かな」ものに変える。

家庭で次々とデバイスが増えると、家具の上やまわりが散らかってくる。Mui Labsでは、ミニマリストの生活ができるだけでなく、Amazon Alexaにビジュアルのインターフェースを付けて、それをまるで壁の美術作品のようにしてしまう。

— Christine Hall

節水型の抗菌皿洗い機Bob(未訳)

私にとってCESで関心があったものは、資源の有効利用に関する技術だ。特にカリフォルニアは今、慢性の干ばつであるためBobに目がいった。

Bobは、1人か2人世帯用の小さな皿洗い機で、手で皿を洗うよりも水の使用量が大幅に少ない。UV(紫外線)モードというのがあり、水を使わずにいろいろなものを清潔にできる。

— Haje Jan Kamps

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】CES 2022で、メタバースはメタバースをメタバースした

CESを前にして、CES 2012のトップテックを振り返る記事を書いた。10年前のバズワードを思い出すなど、その執筆はさまざまな理由から興味深いものとなった。

その年は、LTEとUltrabookが上位だった。一方は広く長く普及しているが、もう一方はそれほどでもなかった。つまり、その年のCESでの話題の大きさは、その寿命を表すものではない。2012年半ばには、Ultrabookの死が本格的に語られ始めていた。

2022年のCESでは、会場に人の気配はなかったが、見たところ数メートルも歩けばメタバースに行き当たりそうな雰囲気だった。FacebookがMetaにブランド名を変えてから2カ月ほど、CESのような展示会では、企業は良い製品と同じくらい良いフックに投資している。それは理解できる。例えば、Samsung(サムスン)やHyundai(ヒュンダイ)といった企業でなければ、目立つことは難しい。

中小企業の具体的な話は割愛する。Twitterのスレッドでは前述のメタにかなり精通したものだった。正直なところ、私は、スタートアップがその輝きを少しでも得ることを期待しており、それを台無しにしたくない(「Goart Metaverse」という言葉は、私が地球上で最後の瞬間を迎え、脳内にDMTが出るまで、私の精神に入り込んでいくものだ)。

CESが始まる前に、メタバースとは何であるかを知らなかった人にとって、今回のショーはあまり良いものではなかったが、メタバースには間抜けな顔のミー文字とVR機器がおそらく含まれているという事実だけは確かだ。そして、このワードをタイプしている今、おそらくメタバースの説明としてはこれ以上ないほど適切だということもわかった。

画像クレジット:Hyundai

Hyundai(現代自動車)は、CES 2022で、ロボティクスとメタバースを通じて「『人間の可能性を広げる』新たなメタモビリティコンセプトのビジョンを共有する」という同社のプレスリリースを受け取ったことが、私を突き動かしたのかもしれない。あるいは、Boston DynamicsのSpotが火星で奇妙なメタバース人形たちと一緒に過ごしている映像が添付されていたせいかもしれない。実際の火星に実際のロボットを送り込むという、SFの枠を超えた映像が、メタバースを軸に展開されているのはシュールだった。

Hyundaiのコンセプトは、メタバース的な交流のためにBoston Dynamicsのような先進的なロボットを、現実世界のアバターとして機能させるという、何とも興味深いものではないが、自動車会社である同社でさえ、このコンセプトを将来性を託しているかを物語っている。一方、Samsungは、本物が登場するまでのその場しのぎのメタバース(betaverse?)を提供した。そこは同社プロダクトの「バーチャルショーケース」となっていて、少なくともラスベガスに出向いてメタバースを実際に見せてもらうという皮肉を回避できた。

Samsungは次のように述べている

念願のライフスタイルテレビ、生活を豊かにする家電製品、スタイリッシュな最新スマートフォンが手に入りました。では、それらの革新的な製品を使って、自宅を飾ることができるとしたらどうでしょう?

これは興味深いシナリオであり、メタバースが稼働し始めれば現実のものとなる。Samsungは、メタバースでさまざまなイノベーションを起こしており、CES 2022に興味を持った人たちがオンラインでこのイベントを体験できるオプションを用意しました。

メタバースに対して強気な人たちの間では、混乱が起こっているのだろう。美容ブランドからウェアラブルまで、あらゆるところで。「メタバース」というコンセプトにまつわるこれほどの興奮を目の当たりにすると、希望に満ちた気持ちになると同時に、ダメなメタバースも現れ始めていることもいらだたしい。メタバースが確立する前に、メタバースがすべての意味を失ってしまわないだろうか。あなたのメタバースは、私のメタバースと同じくらい良いものだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アボットが、一般向けバイオウェアラブルの開発をCESで発表

米国の医療機器メーカーであるAbbott(アボット)は、一般消費者向けの多用途バイオセンシングウェアラブルの製造に乗り出そうとしている。

同社は、2014年から糖尿病管理用の持続血糖測定器(CGM)を製造しているが、米国時間1月6日にCESの会場で行われたヘルステックの基調講演で、アボットの会長兼CEOであるRobert B. Ford(ロバート・B・フォード)氏は、より一般的なフィットネスやウェルネスを目的としたコンシューマー向けバイオウェアラブルの新製品ライン「Lingo(リンゴ)」を開発していると発表した。

フォード会長は基調講演の中で「テクノロジーは、ヘルスケアをデジタル化、分散化、民主化し、人々と医師との間に共通言語を作り上げ、自分の手で自分の健康を管理する力を我々に与えてくれます」と語った。
「私たちは、あなたとあなたの大切な人に、よりパーソナルで正確なケアをもたらす未来を創造しています。それは今まさに起こっていることです。そしてその可能性は驚くほど膨大です」。

フォード氏によると、Lingoのセンシング技術は、グルコース、ケトン体、乳酸など、体内の「重要なシグナル」を把握できるように設計され、将来的にはアルコールレベルの確認にも使用できるようになるという。

アボットは2021年、アスリート向けのバイオセンサー「Libre Sense Glucose Sport Biowearable iii(リブレ・センス・グルコース・スポーツ・バイオウェアラブル III)」を発表し、欧州で販売を開始した。これは、マラソンの世界記録保持者であるEliud Kipchoge(エリウド・キプチョゲ)選手などがトレーニングのサポートに使用している。

アボットはLingoで目指す目標について、体重管理、快眠、エネルギー増進、思考の明晰化を求める人々に向けて、グルコースのモニタリングを拡大することだと述べている。

同社では、このような用途の拡大を支援するために、グルコース以外のバイオマーカーを測定できるバイオセンサーを開発しているという。

「ケトン体バイオウェアラブルは、ケトン体を継続的に監視し、自分がケトーシス状態に入る速さを確認したり、ダイエットや減量に関する洞察を提供することで、何が原因で今の状態が維持されるのかを正確に理解するために開発しているものです」と、プレスリリースには記載されている。「乳酸バイオウェアラブルは、運動中に蓄積される乳酸を継続的に監視し、運動能力の指標として利用できるようにするために開発中です」。

なお、アボットの広報担当者は、最初に発売されるバイオウェアラブルはケトン体を監視するための「Lingo Keto(リンゴ・キート)」で「2022年の後半」に欧州で販売が開始されることを認めた。

近年には、米国や欧州、アジアの多くのスタートアップ企業が、フィットネスに熱中している人々やダイエット目的の人々、または一般的な健康志向の高い消費者を対象に、医療目的以外のさまざまな用途に向けてCGMハードウェアの製品化を目指したり(アボット製の既存のセンサーもこれに含まれる)、リアルタイムの血糖値測定サービスを開始している。

早くからこの分野に参入したこアボットは、バイオセンシングを利用したコンシューマー向けウェアラブルが普及する可能性は非常に高いと見ているようだ。

CGMバイオセンサーを腕に装着した生活や、バイオセンサーが継続的に更新する生体プロセスの情報はどのようなものなのかを知りたい人は、先日TechCrunchに掲載したUltrahuman(ウルトラヒューマン)の「Cyborg(サイボーグ)」サービスのレビュー記事を参照していただきたい。

画像クレジット:Abbott

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CES 2022に出展された電動自転車や電動スクーターは、よりパワフルに、よりスマートに

ラスベガスで開催されたCES 2022の会場には「eMobility Experience(eモビリティ体験)」というテストコースが設置され、電動スクーターや電動自転車など、マイクロモビリティの試乗が行われた。

たくさんの製品が出展されたものの、その多くは実際にはまったく新しいものというわけではなかった。例えば、Bird(バード)社の「Bird Bike(バード・バイク)」「Bird Flex(バード・フレックス)」「Birdie(バーディ)」といった一般消費者向け新製品や、Zoomo(ズーモ)社のユーティリティー電動アシスト自転車、Euphree(ユーフリー)社のステップスルー型電動アシスト自転車「City Robin(シティ・ロビン)」、Arevo社(アレボ)やSuperstrata(スーパーストラタ)社の3Dプリントで製造されたカーボンファイバー製e-bike(イーバイク、スポーツ電動アシスト自転車)などだ。その他にも、電動スクーター、自転車、モーターサイクル、コネクテッド・テクノロジーの新バージョンを展示している興味深い企業がいくつかあった。

2022年のメインテーマは、いわゆるスマート・コネクテッド・ビークルだ。これらの小型電動車には、従来より強力なオンボード・コンピューターが搭載されており、アプリと同期することで、乗り手は自分の車両を見付けたり、フィットネスの目標を追求したり、鍵やライトなどの機能をコントロールしたりすることができる。

この記事では、CES 2022で発表された新しい自転車、スクーター、そしてコネクテッド・テクノロジーをまとめてご紹介しよう。

Segway(セグウェイ)

画像クレジット:Segway-Ninebot

個人向け車両の販売だけでなく、世界の多くのレンタル事業者に車両を供給している電動マイクロモビリティ・メーカーのセグウェイは、キックスクーターの新ライン「Pシリーズ」と、新しい原付クラスの電動スクーター「E110a」を携えてCESに参加した。

「P60」と「P100S」は、幅広のフットボードとハンドル、自動車グレードのオールシーズンタイヤ、前後にスプリングサスペンションを備える。ターンシグナルやテールライトも装備されており、複数の方法でロック/アンロックできる。E110aは2人乗りで、豊富な収納スペースとスマートな機能を備えているとのこと。セグウェイは、そのスマート機能が具体的に何であるかという詳細な情報を明らかにしなかったものの、もし前世代モデルと同じような機能なら、バッテリー管理システムと、スマートフォンに接続する機能、そしてそのためのSegway-Ninebot(セグウェイ・ナインボット)アプリなどだろう。

CAKE(ケイク)

画像クレジット:Cake

スウェーデンの軽量電動バイクメーカーが「CAKE :work(ケイク・ワーク)」シリーズを米国に初上陸させた。この仕事用電動バイクのシリーズは、欧州ではすでに発表されているが、米国ではまだだった。CES期間中に発表されたCakeのさらに大きなニュースは、コネクティビティ・アプリ「Ridecake(ライドケイク)」のアップデートだろう。このアプリには、企業の車両管理担当者が、各車両を監視・管理するための機能も含まれる。

新たなコネクティビティ機能は、データサービスに対応したCake Connect(ケイク・コネクト)モジュールを搭載している車両のすべてのライダーが利用できる。これにはすべての現行および次期モデルと、既存のCakeバイクの大部分が含まれる。今回のアップデートで、カスタマイズ可能なライドモード、リアルタイムのライディング情報、ライド履歴、盗難防止のセキュリティが、このアプリに追加された。

Cakeのクラウドベースの管理システムを使用している車両管理担当者は、リアルタイムでデータを取得することができる。これには、管理車両すべての現在位置、走行距離、航続距離、バッテリーの状態、診断データへのアクセスなどが含まれる。また、無線通信を介してファームウェアのアップデート、盗難防止機能へのアクセス、カスタムライドモードの設定なども可能だ。

Delfast(デルファスト)

画像クレジット:Delfast

米国とウクライナのスタートアップ企業であるDelfastは、1回の充電で最大200マイル(約322km)の距離を走行可能な電動バイク「Top 3.0」のアップグレードモデルを発表した。このスマートバイクにはコンピューターが搭載されており、ソフトウェアのアップデートを受信したり、盗難防止のために車両をロックすることができる。また、同社の新しいモバイルアプリと同期することで、スマートフォンからオンデマンド分析、バイクのロックとアンロック、盗難防止アラームの作動と解除、総走行距離と積算走行距離および走行速度の記録、バイクのパワー確認と航続距離の推定、車両の位置確認、照灯の制御などの機能が利用できる。

Niu(ニウ)

画像クレジット:Niu

中国の電動スクーター企業であるNiuは、2022年のCESに新型e-bike「BQi-C1」を出展した。この電動自転車は同社がすでに予告していたものだが、CESでついに価格と技術仕様が公開された。

ステップスルー型のフレームには、定格出力500W、最大出力750Wを発生するBAFANG(バーファン)製のハブモーターを後輪に搭載。米国では最高時速28マイル(約45km/h)を発揮することができるが、欧州ではe-bikeの規制が厳しく、モーターの出力は250W、最高時速は15.5マイル(約25km/h)に制限される。また、米国仕様ではスロットルとペダルアシストの両方が装備されているが、欧州ではペダルアシストのみとなる。BQiはアプリと接続して多くのスマートセキュリティ機能を利用できる。米国での販売価格は1499ドル(約17万3000円)と、このようなパワフルなe-bikeにしてはかなりお買い得だ。

Okai(オカイ)

  1. EB20-1

    Okui EB20 e-bike
  2. ES600

    Okui ES600 シェアリング向けキックスクーター
  3. ES800

    Okui ES800 オフロードキックスクーター
  4. SH10-1

    Okui SH10 スマートヘルメット
  5. SH10

    Okui SH10 スマートヘルメット
  6. SP10

    Okui SP10 スマートバックパック

Okaiも、多くの大手シェアード・モビリティ業者に車両を供給している中国のメーカーで、今回のCESには5つの製品を出展したが、乗れるのはそのうち3つだけだ。まずはそちらから見ていこう。e-bike「EB20」は、プロ用グレードのマウンテンバイクの部品を使用し、軽量なカーボンファイバー製フレームを採用。12段変速で、750Wのモーター、交換可能なSamsung(サムスン)製バッテリー、2.8インチの大型LEDタッチスクリーンを搭載する。

Okaiはまた、成長する電動キックスクーター・シェアリング業界の需要に対応するために「ES600」も発表した。このシェアリング向け電動キックスクーターは、交換可能なバッテリーシステムと、各バッテリーに備わるハンドル、最適化された重量配分、低重心、油圧式サスペンションシステムなどを特徴とする。サイドとフロントにはウインカー、LEDヘッドライトとテールライト、そして車体サイドにリフレクターを装備する。そして「ES800」は、本格的な1800Wのモーター、12インチのオフロード用タイヤ、デュアルショックアブソーバーを装備するオフロード・パフォーマンス・キックスクーターで、最大35%の勾配を登坂できる。重量は一般的な電動キックスクーターより30%重く、高い安定性を誇るヘビーデューティーな一台だ。

さて、それでは乗ることができない製品の話に入ろう。Okaiはより安全で衛生的な移動のために、抗菌素材を使用したスマートヘルメット「SH10」を発表した。これは、都市部でヘルメットの装着が義務付けられつつあるシェアード・キックスクーターのユーザーにも向けたものだろう。

このヘルメットにはBluetoothが内蔵されており、Okaiアプリに接続すると、ライダーはフロントとリアのLEDディスプレイをカスタマイズ設定して、視認性を向上させることができる。また、内蔵されたスマートスピーカーにより、ライダーは路上で聴覚による認識力に影響を与えることなく、音楽を聴くことも可能だ。

そしてもう1つ、Okaiがラスベガスで発表した製品は「SP10」と名付けられたスマートバックパックで、これは紫外線殺菌機能、セキュリティロックを解除する指紋センサー、デバイス充電機能、バイクとカラーを同期できるカスタマイズ可能なRGBストリップを備える。

Bosch(ボッシュ)

ボッシュは、e-bike用のコネクテッド・スマート・システムを2022年のCESに出展した。厳密にいうとこれは新しい製品というわけではないが、CES Innovation Awards(CESイノベーションアワード)で栄誉ある賞を受賞した。

このシステムは、キーの役割を果たす「eBike Flow(eバイク・フロー)」アプリと、コントロールユニット、ディスプレイ、充電式バッテリー、ドライブユニットで構成される。CESで発表された他の製品と同様、このシステムを装備したコネクテッド・バイクは、無線によるアップデート、個人の走行情報やフィットネスデータの記録、ライディングモードのカスタマイズが可能で、バッテリーの充電状態や次回のサービス予約などの情報をホーム画面に表示することができる。

Moonbikes(ムーンバイクス)

画像クレジット:Moonbikes

そろそろ飽きてきた読者の興味を惹き付けるため、最後にご紹介するのは、Moonbikesだ。

この会社の電動雪上車も、決して新しい製品というわけではないが、多くの人々が実物を見ることができたのは今回のCESが初めてだろう。これは3kW(4馬力)を発生する電気モーターを搭載したシングルトラックのスノーモービルで、最高速度は時速26マイル(約42km/h)に達する。

重量は182ポンド(約82.5kg)と、一般的なスノーモービルよりもはるかに軽いので、より簡単に操縦して遊ぶことができそうだ。リアには雪上トラックベルト、フロントにはシングルスキーが装備されており、バッテリーはスポーツモードで約12マイル(約19.3km)、エコモードで約22マイル(約35.4km)の距離を走行できる。フル充電には約5時間ほどかかる。

画像クレジット:Delfast

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(文:Rebecca Bellan, Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ダブルユニコーンとなったFormlabs、新型3Dプリンターで最大40%のスピードアップを約束

FormlabsがKickstarterに登場したのは約10年前のこと。当時、混雑していた3Dプリンティング分野のスタートアップの中で、高解像度の光造形を身近に楽しめるアプローチを提供したことで注目を集めた。

それまで高価な工業用機械にしか使われていなかった技術をより手軽に導入できるようにしたことは、大きな話題となった。これが功を奏し、競合他社の多くが撤退していく中、同社は2022年初めにダブルユニコーンの地位を獲得した。同社によると、これまでに9万台以上のプリンターを販売しているという。

米国時間1月4日のCESで、MITからスピンアウトした同社は「Form 3+」と「Form 3B+」という2つの新しいプリンターを発表した。その名が示すように、新しいプリンターは、2019年に発表された「Form 3」と「3B」のアップデート版だ。ここでの主な更新点はスピードで、露光と印刷が初期モデルよりも最大40%速くなることを約束している。これは、レジンの硬化プロセスに使われるレーザーがよりパワフルで高出力になったことによるものだ。また、新しい「Build Platform 2」ベースで、プリントの取り出しがより速く簡単になった。

CEOのMax Lobovsky(マックス・ロボフスキー)氏は、CESのニュースに関連したリリースの中でこう述べている。「Formlabsはプロフェッショナル向けのデスクトッププリンター市場を創造し、当社のForm 3はベストセラーになりました。Form 3+は、ユーザーがアイデアからパーツを手にするまでのプロセスを、可能な限り迅速かつ簡単に行えるように設計された次の世代の製品です」。

また、今回の展示会では、電子機器製造、自動車、航空宇宙などの用途に特化した、プリンティング用の新しい静電放電(ESD)レジンも発表された。

画像クレジット:Formlabs

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

VRとARはCES 2022でも「ブレイクの寸前」

最初のOculus RiftがKickstarterで登場してから、信じ難いことにほぼ10年が経った。

10年間の進歩を経て、VRヘッドセットはずいぶん改善された。しかし現時点では、VRの普及は段階的と言っていい。誰もがヘッドセット(VRかAR、あるいはその2つを組み合わせたもの)を顔に装着するようになるとしたら、それは1つの大きな出来事(※)というよりはたくさんの小さなステップの結果だろう。OculusのVRリズムゲーム「Beat Saber」もあれば、Oculus Questで使えるVRフィットネスの「Supernatural」もある。ヘッドセットは徐々により良く、より軽く、より処理速度が速くなっている。職場でのトレーニングでヘッドセットを使うことに慣れている人もいるだろう。ある日突然、誰もがメタバースのあり方に同意するかもしれない。

この少しずつの進歩は2022年のCESでも変わらなかった。VRやARに関するニュースはたくさんあったが、どれも世間を揺るがすようなものではなかった。しかし1つ1つのステップは進歩している。

※もしAppleが積極的にこれから参入し、製品を投下してこのカテゴリーをひっくり返すようなことがあれば、衝撃的な出来事になる可能性がある。これは、ここ最近噂になっていることだ。

2022年CESのVRとARの大きな話題を、ここでまとめよう。

ソニーのPSVR2

画像クレジット:Sony

Sony(ソニー)は2016年にPS VRヘッドセットをリリースし、その後PlayStation 5用の次世代ヘッドセットを開発していることは以前から知られていた。しかし2021年前半に「開発中」であることをちらっと発表し、数カ月後にコントローラの詳細を若干公表したが、詳しい仕様は発表していなかった。

全容はまだ明らかにされていないが、PSVR2という正式な名称と以下の内容が発表された。

  • 解像度は片方の目につき2000×2040
  • 初代ヘッドセットの視野角が96度であったのに対し、110度に拡張
  • リフレッシュレートは90/120Hz
  • 目の動きをトラッキングし、インターフェイスの項目を見るだけで選択されるといったことができるようになる模様
  • 視界の中央にあるものを優先的にレンダリングして処理の効率を上げるフォービエイテッドレンダリングに対応
  • 指を検知し、PS5の臨場感にあふれるアダプティブトリガーを搭載する専用の新コントローラ(下図)を開発中

画像クレジット:Sony

ヘッドセットがどのような外観になるかは、まだわからない。いつ出荷されるかもわからない。しかしPS VRヘッドセットが使いやすさの点でOculus改めMeta Questの数少ないライバルの1つであることを考えると、ソニーが開発を続けているのは好ましい。

HTCのリストトラッカー「Vive」

画像クレジット:HTC Vive

VRの入力に最も適した方法は何だろう。一般的なヘッドセットのほとんどは、両手にそれぞれ何らかのコントローラを持って使う。その代わりに、手そのものをコントローラにするというのはどうだろうか。

もちろん、ハンドトラッキングのアイデア自体は新しいものではない。さまざまな企業がハンドトラッキングに重点的に取り組んでは消えていった

しかしHTCのアプローチはちょっと違う。カメラに完全に頼るのではなく、センサー内蔵のバンドを両手首に巻いて、カメラでは捉えられないものをトラッキングしようとしている。例えば一方の手がもう一方の手を覆い隠しているとか、ゴルフのスイングをしたときに腕が背中側に回るといったケースだ。同社は卓球のラケットやNERFというおもちゃのシューティングガンなどの物体に取り付けたセンサーが動作している様子も披露した。

HTCはこのセンサーを2022年後半に129ドル(約1万5000円)で出荷する予定としている。対象者は誰? 少なくとも現時点では、このセンサーはHTCのVive Focus 3ヘッドセットとの組み合わせのみで動作する。

ShiftallのMeganeX

画像クレジット:Shiftall

近年、VRヘッドセットはかなりすっきりしてきたが、それでもまだゴツい。実際のところ、どれほど小さくできるのだろうか。

Panasonic(パナソニック)の子会社であるShiftallは「超軽量、超高解像度」のヘッドセット「Meganex」を開発している。フレームにスピーカーが内蔵され、ディスプレイは片方の目につき1.3インチ(2560×2560)で、ヘッドセットというよりはスチームパンクの大きいサングラスのように見える。軽量で折りたたみ可能とはいえ、それほど動き回れるわけではないようだ。重いグラフィックスを処理するにはUSB-Cでコンピュータに接続する必要がある。

Shiftallはこのヘッドセットを2022年に「900ドル(約10万4000円)以下」で出荷するとしている。

MicrosoftがARチップに関してQualcommと協業

画像クレジット:Qualcomm

Microsoftは同社のHoloLensヘッドセットにQualcommのチップをすでに採用しているが、この両社がCES会期中にさらに正式な取り組みを明らかにした。Qualcommの基調講演で、両社がARヘッドセット専用チップの開発で協力することが発表された。このチップは両社のAR開発プラットフォーム(Microsoft MeshとSnapdragon Spaces)に対応する。

NVIDIAのOmniverse

画像クレジット:Nvida

派手なハードウェアではないが、ソフトウェア関連としては重要である可能性が高い。NVIDIAは、3Dコンテンツのクリエイターがリアルタイムで共同作業をするのに役立つプラットフォーム「Omniverse」を公開した。

これを報じる記事の中でFrederic Lardinois(フレデリック・ラーディノイス)は次のように述べている。

Omniverseはクリエイターやデザイナー、エンジニアが共同作業でバーチャルワールドを作るためのNVIDIAのプラットフォームだ。NVIDIAや他社アプリのデザインツールやアセットを、ハードウェアとソフトウェアの1つのエコシステムにまとめる。これまでOmniverseとこれに対応するNVIDIAのさまざまなツールはベータ版だったが、米国時間1月4日のCESで同社はベータのラベルを外し、Omniverseはクリエイターに広く公開された。

TCLのARメガネ

これは今のところほとんどコンセプトなので、好きになるにはまだ早すぎる。テレビやスマートフォン、エアコンのメーカーであるTCLがARメガネの分野に参入し、ほぼ普通に見えるメガネにGoogle Glassに似た機能を搭載した製品を紹介している。「ホログラフィック光導波路テクノロジー」により画像をレンズと視界に映し出すもので、上に示したコンセプトビデオではメガネのフレームにタッチ式のコントロールが内蔵されている。

画像クレジット:wacomka / Getty Images

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Kaori Koyama)

トラッカー、プロジェクター、ロボット、可動するルーター、CESのガジェットについて語ろう

CESが真の意味で「Consumer Electronics Show」(消費者向け電気機器展示会)の略だった時代はとうに過ぎ去った。主催のCTA(全米民生技術協会)は、そのことを小さく表記することであれこれ配慮している。スマートフォンなどが主役だった時代を振り返るには、先日の「10年前のCESベスト」記事がおすすめだ。各社が自社イベントでフラッグシップモデルを発表する傾向が強まり、Mobile World Congress(モバイルワールドコングレス)がCESの勢いを削いできた。

2022年は並行して開催されたイベントで、Samsung(サムソン)の廉価版フラッグシップとOnePlusの最新機種のプレビューが行われた。もちろん、LGとHTCも今回のショーに参加はしていたものの、スマートフォンのゲームからほとんど、あるいは完全に撤退してしまっていたことは状況の改善には良い影響を与えなかった。また、ほんの数年前まではショーで大きな存在感を示していたHuawei(ファーウェイ)も、すぐにはCESに復帰することはないだろう。

こうした空白の多くは「輸送技術」によって埋められた。この10年間で、CESは主要な自動車ショーへと変貌を遂げた。自動車メーカーは、自動運転や車載システムをはじめとして火星のメタバースへのロボットの派遣など、最先端の技術を世界に証明しようとしている。もちろんこのショーのおかげで、Kirsten(カーステン)記者とRebecca(レベッカ)記者は今週とても忙しかった

CESは、かつてのように携帯電話が多くないにもかかわらず、コンシューマーハードウェアの面でも大きなイベントであり続けている。PC、コネクテッドヘルス、スマートホームガジェット、アクセサリー、さらにはロボットの主要な展示会であることに変わりはない。また、業界がどのように進化しているかを知ることができるのも魅力だ。フィットネスを例にとると、ウェアラブルの数は減少しているものの、各社はリング(指輪)のような新しい形状を試している。一方で、Peloton(ペロトン)やMirror(ミラー)のような企業に対抗しようとする企業も急増してる。

画像クレジット:Garmin

ウェアラブル製品の展示はかなり控えめなものではあったが、Garmin(ガーミン)はハイブリッド型スマートウォッチSport(スポート)で注目を集めた。ハイブリッドスマートウォッチは、確かに長年にわたってさまざまな課題を抱えてきたが、Garminはウェアラブルカテゴリーにおいて驚くほど強いブランドであることを証明してきた。そしてVivomove Sport(ビボムーブ・スポート)は、派手なスマートウォッチを敬遠している人にもアピールできるすっきりとしたデザインで、かなり見栄えがする時計だ。

Tile(タイル)やApple(アップル)のAirTag(エアタグ)といった製品の人気を受けて、トラッカーはちょっとしたブームになった。2022年は、Tileが新しいPCパートナーを獲得した。ThinkPad X1(シンクパッドX1)がTileトラッキングに対応し、電源を切った状態でも最大14日間、紛失したノートPCを探すことができるようになった。一方、Targus(ターガス)は、AppleのFind My(探す)サポートを 最新のバックパックに直接組み込んでいる。

画像クレジット:Chipolo

しかし、CARDを発表したことで、Chipolo(チポロ)が一歩先に踏み出した。このデバイスは、クレジットカードよりもわずかに大きく、財布の中に入るようにデザインされていて、Find Myにも対応しているため製品を置き忘れると警告が表示される。現在、私はAirTagを1つ所有しており、鍵に使用している。大人になってから何度も財布を失くしたことがある私にとって、これはもう1つの購入しようと思わせる、かなり説得力のあるユースケースだと思う。

画像クレジット:TP-Link

Devin(デビン)記者は、「もし私が独立して裕福になったら、自宅での仕事のセットアップはどのようになるだろうか」(これは私の言い換えだが)という記事の最後に、AXE11000 Tri-Band Wi-Fi 6E Routerを紹介している。この製品は、ルーターの世界ではかなり異色な存在だ。このシステムには、より強い信号を得るために調整できるモーター付きのアンテナが搭載されている。価格は未定だが、今でも高価なTP-Linkの価格にこの贅沢さを上乗せすることになるだろう。しかし、より速いWi-Fiに値段をつけることができるだろうか?

画像クレジット:Anker

それよりもはるかにリーズナブルな価格で提供されるであろうリモートアクセサリーに拍手を送りたい。とりわけAnker(アンカー)はコストを抑える方法を知っている。220ドル(約2万5400円)で手に入るVideo Bar(ビデオバー)は、一種のオールインワンのウェブカムソリューションだ。これはAIによるピクチャーフレーミング機能を備えた2Kカメラと、内蔵のライトバーとスピーカーを搭載している。高度なスタジオ設備(あるいはOpal[オパール])に取って代わるものではないが、(比較的)安価にホームビデオのレベルアップを図りたい人にとっては、堅実なプラグ・アンド・プレイ・ソリューションと言えるだろう。

画像クレジット:Labrador Systems

今週初めには、ロボットショーとして進化しているCESについての記事を書いた。最大の難点は、家庭用ロボットは、ルンバをはじめとするロボット掃除機以外には、実用的なものがないことだ。しかし、今週Labrador(ラブラドール)のシステムを詳しく見ることができたのは幸いだった。なぜならこのシステムは、特に動きが不自由でありながら独立した生活を模索しているひとたちの、非常に現実的なニーズに対応しているからだ。このシステムは実質的に、家庭用のモバイル・ヘルプ・ハンドだ。

画像クレジット:Asus

楽しく新しい形状が登場しなければCESとはいえないが、2022年のCESでは、折りたたみ式の携帯電話の形状をノートPCにとりいれたAsus Zenbook 17 Fold OLED(エイスース・ゼンブック17・フォールドOLED)が圧倒的な存在感を示している。何よりも驚かされるのは、同社が実際に発売を予定しているということだ。レンダリング画像を最初に見たときに、この製品は単なるコンセプトだと思ったのは私だけではないと思うが、Asusはこのシステムを2022年の第2四半期に発売する予定だ。この写真にどれほど近いものが商品化されるかは、ほどなくわかるだろう。

画像クレジット:Samsung

Samsungは2022年、いつものような五感を刺激するような演出をしなかった。ロボットはなく、特注の洗濯機や格安の電話機などがあったが、楽しいプロジェクターが紛れ込んでいたのが良かった。比較的限定的な魅力しかないものの、各社はプロジェクターを実現しようと努力を続けている。少なくともこのプロジェクターは、小さくて、よくできていて、見た目も良い。ただ価格が900ドル(約10万4000円)であることから、ニッチな分野にとどまる可能性が高い。

画像クレジット:ROBYN BECK/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

ゲーミングノートPCに-15°Cの冷気を送り込むクールなデバイス「Line Frzr」

LinedockCESの常連で、アルミ削り出しのハイエンドなドッキングステーションを出展している。2022年は、明確にゲーマーに狙いを合わせたアクセサリーを携えてラスベガスに戻ってきた。この「Line Frzr(ライン・フリーザー)」は、ゲーミングノートPCに流入する空気を事前に冷却するサーモエレクトリックアクティブクーリングデバイスだ。

従来のノートPC冷却ソリューションは、PC内部を通り抜ける空気の流れを増加させるものだったが、Linedockのソリューションは、その戦略をさらに2、3歩進めたものだ。Line Frzrはその空気を、室温から冷凍庫並みの-15°Cまで冷却してから、その凍てつくような冷気をノートPCに注入する。これによってコンピューターのCPUとGPUはより低い温度に保たれ、より高クロックでより高いパフォーマンスをより長く発揮できるようになるという理論だ。

このクールな技術は熱電冷却を利用するものだが、ペルチェ素子をプロセッサに直接接合するのではなく(これは散々実証されている酷いアイデアだ)、Linedockのチームは別のアプローチを考え出した。それは一対の小さな冷却塔で空気をあらかじめ冷却し、そこからラップトップに空気を送り込むというものだ。そのデザインは、ゲーミングノートPCの最も一般的な設計アーキテクチャに基づいているという。バッテリーはキーボードの下に収まり、ノートPCは小さな足で持ち上げられて空気の循環を最大に高め、空気を大量に掻き込む2基のファンが搭載されている。

「電子部品には推奨動作温度というものがあります。CPU / GPUのサーマルペーストについても同じことが言えますし、それが最も重要なのはバッテリーです」と、Linedockの共同創業者であるNancy de Fays(ナンシー・デ・フェイ)は、氷点下の空気をノートPCに吹き付けても害がない理由を説明する。「Line FrzrはノートPC全体を凍らせるのではなく、ノートPCの吸気口に氷点下の空気を送り込みます。その空気はファンに流れ込み、最終的にヒートシンクのラジエーターを通過します。ノートPCのファンは氷点下の温度に対応しており、さらにノートPCの温度を監視する赤外線センサーによってこのシステムは制御されています。GPU/ CPUが50℃以下になると、システムは冷却を停止します」。

CESで発表されたLine Frzrの試作品。穴はゲーミングノートPCの吸気口に合わせてデザインされており、小さな三芒星は温度センサー(画像クレジット:Linedock)

「ノートPCの電子機器ではなく、ファンに空気を送り込むように、私たちはデザインしました。Frzr自体は携帯用ではありません。自宅でゲームをプレイするときにゲーミングノートPCに大量の冷却を加え、本物のデスクトップPC並のパワーを利用するためのものです」と、LinedockのCEO兼共同設立者であるQuentin Malgaud(クエンティン・マルゴード)氏は説明する。「実は私たちは、(2017年に)最初のIndiegogo(インディゴーゴー)キャンペーンに取り組んでいたときに、このコンセプトには着手していたのですが、バッテリー駆動にできるほど効率が良くなかったので、後回しにしていました。(マルゴード氏はCESの同社のブースで技術プロトタイプをジェスチャーで示し)この不良少年でのテストでは、最大25%のCPUスコアの改善が見られました」と語った。

「ゲーミングらしい外観にしたかったので、このように小さな冷却塔が備わったデザインにしました」と、デ・フェイ氏は説明した。

そもそも、この製品が良いアイデアなのかどうか、私には少し疑問に感じられた。素人考えでは、熱特性の異なる部品を急速に加熱・冷却すると問題が生じるのではないかと思ったからだ。しかし、同社によると、そんな心配は杞憂であるようだ。Frzrの上に置かれたノートPCの温度を監視する赤外線サーモスタットシステムを使うことで、問題を未然に防ぐことができるという。冷却は必要に応じて自動的に行われ、ドライバーのインストールも不要だ。Frzrは温度センサーからのデータを平均化することで、独自に冷却を管理する。

Linedockはこの冷却システムの機能を、実際に作動する試作品で実証した。今回は空気を-13.5℃まで冷却している(画像クレジット:Line, Inc.)

LineはノートPCの温度を観測するIRセンサーに関する特許を取得しており、その他にも多数の特許を出願している。

この製品の価格はまだ正式に決まっていないが、マルゴード氏はエンドユーザーが300ドル(約3万5000円)以下の価格を期待するはずだと思っており、同社では最終的な製品が完成するまでに200ドル(約2万3000円)以下にしたいと考えていることを示唆した。2022年10月には、熱心なセミモバイルゲーマーに向けて出荷を開始できる見込みだという。

画像クレジット:Line, Inc.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】パンデミックで再び変化したCESを振り返る、テックの進化に合わせて家電ショーの進化も必要だ

CES開催までの数週間、私たちは難しい決断を迫られた。年末年始の旅行シーズンに向けて、オミクロンの感染者が全米で急増したため、飛行機をキャンセルして戦略を練り直したのだ。そのため、年末の数週間は混乱した。しかし、CESが毎年第1週に開催され続ける限り、ハードウェアに関する記事を生業とする私たちは、今後どちらにしても年末年始にあまり休みを取ることはできないだろう。

確かに、数字を見てこの決断に至ったのは我々だけではない。Engadget、The Verge、PCMag、CNETなど、2022年はリスクに見合うリターンが得られないと判断した企業が続々と登場した。決して簡単な選択ではなかった。CESの仕事は大変で、ストレスが多く、時には悲惨なこともあるため、私たちもよく不満を漏らす。しかし、CESは長い間、その年のトレンドを直接見て、触ることができる貴重な機会なのだ。

それは、近い将来やってくるコンシューマー向けテクノロジーと空想的なSFが混在する魅力的なイベントで、エウレカパークのスクラムの中で業界のリーダーと会ったり、スタートアップと交流したりする機会でもある。風邪やインフルエンザにかかるかもしれないし、スーツケースいっぱいに洗濯物や業界グッズ(コミック業界の友人たちは、愛情を込めて「the con crud(コン・クラッド)」と呼んでいる)を詰め込んで持ち帰ることになるだろうが、それは真冬のコンベンションセンターに大勢の人が詰め込まれた結果だ。

もちろん、パンデミック時には、費用対効果の分析が大きく変わる。現在までに、米国内だけで5700万人の感染者が報告され、83万1000人が死亡している。そしてもちろん、後者の数字だけを見ていると、新型コロナウイルスが人体に与える永続的な影響などは考慮されていない。また、休暇を利用した旅行が感染者の総数に与える影響も、まだ十分に見えていないようだ。結局のところ、私たちにとって意味のある決断はただ1つ、CESをリモートで取材し、再び取材することだったのだ。

CESに参加することを選んだ人たちを恨むつもりはない(確かに、比較的参加者の少ない展示会について記録することが、どれほど魅力的なのかを考えていた)。 パンデミックも3年目になり、このウイルスが何であるか、どのように広がるかについて、前回CESが直接開催された2020年1月よりもはるかによくわかるようになった。今はワクチンやブースターもある。ショーの運営団体であるCTAは、義務づけやマスクのルールなどを規定した。しかし、私たちだけで決断したわけではなかった。

参加を見送ったメディアに加え、多くの大手企業が訴訟に参加した。その不完全なリストには、GM(ゼネラルモーターズ)、Google(グーグル)、Lenovo(レノボ)、Intel(インテル)、T-Mobile(Tモバイル)、AT&T、Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Peloton(ペロトン)、TikTok(ティックトック)、Mercedes(メルセデス)、BMW、Velodyne(ベロダイン)、IBM、Proctor & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)、OnePlus(ワンプラス)、Pinterest(ピンタレスト)などが含まれている。数週間にわたり、CESから発信される主要なニュースは、有名企業の辞退についてだった。テクノロジーカンファレンスの凱旋となるはずだったCTAが、このような報道を期待していたわけではないことは、ほぼ明らかだろう。

CTAの会長であるGary Shapiro(ゲーリー・シャピロ)氏は、クリスマスの日にLas Vegas Review-Journal紙に「CESはラスベガスで継続されるだろうし、継続しなければならない」という見出しで、激しい論説を寄稿した。もちろん、シャピロ氏のいう「go on(継続)」とは、直接会うという意味である。イノベーションは我々の未来に必要であり、そのイノベーションを促進するために対面式のCESが必要である、という一線を引いたのである。シャピロ氏は、CESの辞退者を「事件や有名企業のレンズを通してしか語れないマスコミや評論家の太鼓持ち」と一蹴し、直接参加しないことを選んだ人たちに同情を示した後、対面式のイベントを中止する考えを「恐怖の中で生きること」と同等だと表現した。

CTAのような組織はコンシューマー向けテクノロジーにとって重要であり、CESのようなショーはその存続のために必要である、という現実的な議論も可能だったはずだ。しかし、この論説は、CESのようなイベントに対して、ありえないほど高いハードルを設定した。バーチャルカンファレンス全盛の時代にCESは必要なのか、という疑問はすでにあっただろうし、このような論説で語られるような、人生を変えるような期待を抱かせることができなかったことは、その疑問をさらに深めるにすぎない。

実は、テクノロジーというものは、ほとんどが反復的なものだ。CESのようなイベントでは、少なくとも理論上、市場に出ることを前提とした製品に焦点が当てられるので、なおさらそうだ。つまり、毎年目にする製品のほとんどは、少し速くなったプロセッサーや、少し解像度が高くなったスクリーンなのだ。私は長い間この業界を取材してきたが、毎年革命に期待していると、失望する人生を送ることになると断言できる。

これは、私たち全員が本質的に認識していることだが、多くの流行語(「メタバース」という言葉を目にするたびに、会場のホール1から出られるかどうか試してみて欲しい)やHyundai(現代自動車)のような空想的なSFのプレゼンテーションによって見えなくなってしまっているのだ。最終日に向けて、私は午前中、このショーで「人生を変える」と思えるような何かを最後に見たのはいつだっただろうと考えていた。しかし、今のところ、そのようなものは見つかっていない。

結局のところ、CESが始まると同時に、出展を見合わせた企業の話題が実際のCESのニュースより多くなるのではという懸念は払拭された。CESを取材するメディアは、多くの場合、遠隔地からではあるが、CESを取材した。これまで多くのCESに直接参加してきた身としては不思議な体験だったが、2021年のオールバーチャルショーで予習していたことでもある。

しかし、その結果はやはり賛否両論なものだった。ありがたいことに、オンライン版のショーは、2021年よりも混乱が少なかった。プレスカンファレンスは、プラットフォーム上でより見やすくなった。しかし「真の発見」という点ではまだ問題があり、それがオンラインに移行したときに結局不足している点だ。突然、エウレカパークでおもしろいスタートアップに出くわす機会が、底なしの受信トレイに投げ込まれるただのメールへと姿を変えてしまうのだ。

これは、私がCTAに同意する点だ。私たちが対面式のイベントから完全に離れた場合、プラットフォームを持たないスタートアップ企業が最終的に最も多くを失うことになってしまうのだ。そのため、私も、直接会って話をする必要性を感じている人たちに確実に共感することができる。それに、デポジット代やホテル代、飛行機代は、GMやGoogleよりも、新しいスタートアップ企業の収益に大きな影響を与えるという事実もある。

その数週間の間に、私は、スタートアップ企業から、彼らもまた出席しないことを選択したというメールを何通も受け取った。また、参加する企業からも発表を延期するというメッセージが届いた。製品が発表されても、それをカバーする人がいなければ、それは本当に発表と言えるのだろうか?1年で最も忙しい週に製品を発表することに疑問を持つ人は多く、その疑問は、それをカバーする人がいないとなると、さらに顕著になる。このようなことから、従来はCES後の数週間が不作であったのが、2022年はそうでもなくなりそうな気がしている。

CESの真実は、常に進化しているということだ。間近で見るのは難しいが、一歩下がって見ると、そのマクロなトレンドがはっきりと浮かび上がってくる。CES 2012の最大のニュースを振り返ることは、そうしたトレンドを追う上で興味深い訓練となった。中でも、モバイル中心の展示会から脱却し、自動車関連の展示が大きな比重を占めるようになったことが大きな特徴だ。今やショーのかなりの部分を占めている。

CTAの細則には「世界的なテクノロジーイベントの正式名称は『CES』です。このイベントを指すのに、『Consumer Electronics Show』や『International CES』は使わないでください」と記されている。このように、Consumer Electronics AssociationからConsumer Technology Associationへの変更も、このショーがそれまでの枠を超えて成長しようとしていることを明確に示している。そして、正直なところ、その試みは成功していたと言っていい。

13年前、私は「CES 2009、来場者数22%減」という記事を書いた(この記事は長くなってしまったが)。その2012年の回顧録で述べたように、その年のショーは最高の参加者数だった。この成長はその後数年間続き、2019年にピークを迎えることになる。

以前にもCESは死んだと宣言した人がいる。実際、彼らは何度もそう言ってきた。しかし、CESを成長させ続けるということは、進化し続けるということであり、ショーのあり方に関する期待の変化に対応することでもあるのだ。2022年、私は友人や同僚に会うことができなかった。エウレカパークのホールを歩いたり、コンベンションセンターの向かいにある、金曜と土曜に女優のPia Zadora(ピア・ザドラ)がショーを行う暗い小さなイタリアンレストランで食事をしたり(ラスベガスは実に不思議なところだ)することもできなかった。

しかし、今週は毎晩10時(東部標準時)には家でベッドに入れているのも嫌じゃなかった。また、2022年のショーに直接参加しなかったことで、私たちや他のサイトの取材が必ずしもうまくいかなかったと言えるかどうかもわからない。これまで述べてきたように、私のCESの楽しみ方は他の参加者とは違う。もし、このパンデミックが終息したら、またいつか行ってみたいと思っている。しかし、1月初旬の寒い冬の日に、ミラージュでiPhoneケースを見ている自分がいないとしても、それについてもそれほど怒ることはきっとないだろう。

画像クレジット:Alex Wong / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「高齢者に役立つテクノロジーはすべての人の役に立つ」とスタートアップはCESで示す

2022年のCESではエイジテックのスタートアップが可能性の広さを示した。テクノロジーが高齢者の生活をもっと快適にする助けになるなら、他の多くの人々の助けにもなるだろう。移動のサポート、健康状態をモニタリングするプラットフォーム、長期的な資金計画などが役に立つのは高齢者に限ったことではない。

米国時間1月5日、筆者はAARP Innovation Labsのバーチャルプレゼンに登場したスタートアップの記事を公開した。このプレゼンではファイナンスのリテラシーに関するプラットフォームから更年期対策プロダクトを開発するD2Cのスタートアップまで、さまざまなテーマが取り上げられた。

TechCrunchでは他にも、開閉式のトレイシステム、棚、オプションの冷蔵庫を備えたLabrador Systemsのロボットカート「Retriever」を紹介した。最大25ポンド(約11.3kg)を運搬できるRetrieverは移動に制限のある人の助けとなり、家庭で洗濯物や食事などを運ぶことができる。このカートはAlexaの音声コントロールにも対応している(同社はAmazon Alexa Fundの支援を受けている)。

関連記事:Labrador Systems、高齢者や不自由がある人を助ける支援ロボットの手を2023年までに家庭へ

Sengledは心拍数や体温、睡眠の記録などをレーダーでセンシングして健康状態を把握できるスマート電球を発表した。スマートモニタは新しいアイデアではないが、Sengledの電球は極めて控えめだ。TechCrunchのハードウェア担当編集者であるBrian Heater(ブライアン・ヒーター)は「転倒検知など、高齢者介護に役立つ可能性のあるアプリケーションを搭載している」と記している。

関連記事:この電球はユーザーの健康状態をモニターする

テック大手が家庭用ヘルスモニタリングに参入する傾向も続いている。LGは、2021年と2022年の同社の全スマートテレビにリモートヘルスプラットフォーム「Independa」のアプリをインストールすると発表した。これにより、ユーザーはLGのテレビで遠隔治療の予約を取り、薬剤給付のプランを利用できる。

医療機器スタートアップのEargoは、最新の補聴器「Eargo 6」を発表した。新機能として自動で設定を調整する専用アルゴリズムの「Sound Adjust」を搭載し、ユーザーは騒がしい環境で手動で切り替えをして会話を聴きやすくする必要がなくなる。また、Eargoのアプリで選択できる環境設定の「マスクモード」も追加され、マスクをつけている人の話がこれまでよりクリアに聞こえるようになる。

Sensorscallは、Apple WatchやFitbitなどのヘルストラッキングデバイスと統合されたリモートモニタリングアプリ「CareAlert」のアップデートを公開した。家族や介護者は新しい健康状態ダッシュボードを通じて、毎日のルーティン、睡眠パターン、衛生の状況、キッチンの使用に関する傾向を見ることができる。CareAlertを開発したのは、自立して生活する(つまり住み慣れた家で生活し、その多くは家族と離れている)高齢者だ。

BOCCO emoロボット

BOCCO emoは介護施設での見守り用に作られた最新のロボットだ。開発したのはクッション型ロボットのQooboを作ったユカイ工学で、テーブルに置ける小型のBocco emoは医療用のIoTデバイスと接続して患者のバイタルを監視し、状態を看護師に通知する。患者が助けを必要とする場合は、看護師が到着するまでBOCCO emoが患者に話しかける。患者の状態を家族に知らせることもできる。BOCCO emoはすでに日本で試験運用を実施し、現在は日本国内の病院で使われている。この小さなロボットは「emo言語」を使う。ユカイ工学はこれについて、ユーザーの話と感情を理解し、それに応じて「効果音、顔の表情、ジェスチャー」で反応するものと説明している。

IoTセンサーを活用して自立した生活を支援するスタートアップには、Nodeus SolutionsのKoKoonがある。これはモバイルアプリに接続された小さなIoTセンサーのネットワークで、介護者や家族を対象としている。アルゴリズムが個人の習慣を学習し、行動に変化があれば介護者に知らせる。

IoTセンサー、AI技術、モバイルアプリを組み合わせたスタートアップとしては他にCaregiver Smart SolutionsUnaideSmart Macadamがある。

画像クレジット:Marko Geber / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

蚊をやっつけるのではなくただ居場所を指し示すだけのBzigoのレーザーポインター、本当に必要?

蚊は地球上の他のどんな生き物よりも多くの人を殺しているいる生物であり、テクノロジーによる解決策には事欠かない。そのような解決策の1つがBzigo(ビジーゴー)から発表された。同社が売り込もうとするデバイスは家の中の蚊を見つけてレーザーで照射し、蚊の音が聞こえるときには携帯電話に通知してくれる機能を持っている。

CESの会場を歩いていると、自分の皮肉癖を深く押し殺さなければならないような会社に出会うことが多い。TechCrunchは直接参加しないことを発表したが、たとえバーチャルに会場を「歩いた」としても、トレードショーの文脈の中で「ちょっと待て、これは何だ?」という奇妙な瞬間を、気のいい特派員が避けることはできないということが判明した。この場合、レーザーポインターで蚊を指し示すというマジックは、非常に優れた技術的挑戦であり、自動蚊取り器の製品化に向けた最初のステップになることは間違いないだろう。

デバイス自体は、光源(赤外線LED)、高解像度ワイドカメラ、そして残りの仕事を引き受ける、小さなパッケージに詰め込まれた電子頭脳で構成されている。同社によれば、このデバイスに組み込まれたAIは、害虫かもしれない物体の動きのパターンを分析することで、人間の最悪の友人(蚊)と浮遊する塵の違いを見分けることができるという。

このような興奮を、CES会場のにぎやかな(仮想)雑踏の中で受け流すこともできるが、2つの問題がある。

第1の問題は、CESで見た他の製品と違って、このデバイスは昆虫を駆除するために実際には何もしないということだ。ただ、携帯電話に向かって、あなたのシューティングゲームガン(あるいは好きな蚊の駆除方法)の準備をする時間が来たことを通知し、小さな赤いレーザーポインターで小さな空飛ぶ敵を指し示すだけだ。同社は私に、これはクラス1の「絶対安全」なレーザーだと断言した。同社がそれを選んだ理由は理解できる。私には、飛んできた蚊を実際に撃ち落とせるほどの十分なパワーを持ったレーザーを使用した場合の、法的ならびに健康的なリスクに関してはとても想像することができない。しかし、それはこの製品に対する根本的な疑問を呼び起こすものでもある。

関連記事:生き物であるかのようなサインを出して蚊をおびき寄せる捕虫器「モスキッター」

BzigoのプロダクトマネージャーであるBenjamin Resnick(ベンジャミン・レズニック)氏は、同社のデモビデオを見せながら「蚊の位置を特定するのはとても難しいことですが、蚊を殺すのは簡単なことです」という。「Bzigoがレーザーポインターで蚊の着地点を示してくれれば、ユーザーが自分で簡単に蚊を殺すことができます」。

正直なところ、蚊が小型プロペラ機ほどの大きさの国で育った者として、私はこれまでにそのような(蚊のいる場所を特定する)困難に直面したことがない。

2つ目の、そしてもっと大きな問題は、同社がこれまでに開発してきた製品を一般消費者向けの製品として出荷しようとしていることだ。Bzigoは、何千人もの顧客がこの199ドル(約2万3000円)のデバイスを予約しており、製品の発売と予約者への配送は「2022年の後半」になるとしている。

蚊の位置を特定するための、199ドル(約2万3000円)もするレーザーポインターを売ることのできる会社のマーケティングチームには心から敬意を表するが、大局的に見れば、それは本質的に役に立たない製品だ。蚊は薄明薄暮性(夜明けと夕暮れ時に栄養を摂取する)の生き物なので、その時間帯に人間が蚊をやっつけるために起きている可能性は最も低い。さらに、目を見張るような効率的な解決策がすでに存在している。「長持ちする殺虫剤付きベッドネット(Long-lasting, insecticidal bed nets、LLINs)」は、寝ている家族をマラリアから守ることができる、シンプルで費用対効果の高いソリューションだ。価格は一式で10ドル(約1157円)で、マラリアを媒介する蚊に対して物理的な防壁を作り、ネット(蚊帳)に織り込まれた殺虫剤は、1人の人間から他の人間へと病気を伝染させる前に蚊を殺すのだ。

誤解しないで欲しいのだが、私は他の人と同様に筋金入りのオタクだし、優れた科学実験や創造的なプロトタイプが大好きだ。私の疑問は──蚊を1匹も殺したり、1人の命も救ったりすることなく、今後10年のうちにきっと埋め立て地行きになる高性能レーザーポインターを、何千台も世界中に出荷することの経済的、環境的影響は、本当に利益を上回るのだろうか?というものだ。

蚊を殺す何らかの技術を搭載したバージョンの登場を私は期待している。それができるまでは、創業者にはこのプロトタイプを消費者向け製品として出荷する計画を再考して欲しいと願う。世の中には解決すべき現実的な問題がたくさんある。数匹の蚊のために深夜のサイレントレイブレーザー光線ショーを行うことは、それには値しない。

画像クレジット:Bzigo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

リラックス効果を3倍にしてくれるガジェットMorphéeの「Zen」、約9250円

ジャーナリストであり投資家でもある筆者は、単一製品のみの超ニッチな企業には常に少々疑問を感じている。うまくいかないことがたくさんあるし、消費者直接取引ブランドがうまくいく方法の1つは、顧客にクロスセルする(関連製品を売り込める)力を持つことだからだ。

Morphée(モーフィー)はそんなブランドの1つだった。同社がはじめて発売したのは、率直にいって滑稽なほど過剰なデザインの(しかし驚くほど美しい)99ドル(約1万1500円)の非デジタルの睡眠・瞑想用製品だった。その後、子ども向けの製品を追加した同社は、さらに今回のCESで「Morphée Zen(モーフィー・ゼン)」と呼ばれる新製品を発表した。これは、小さな丸い石のような旅行向けのリラクゼーション機器だ。

同社が「リラクゼーション・ペブル」と表現するMorphée Zenは、まさに小石のように見える超ポータブルなデバイスで、心を落ち着かせる音や音楽、音声によるセラピーなど、メンタルウェルネスのトレーニングや睡眠のために特化したリラクゼーションセッションを受ける(聴く)ことができる。ダイナミックリラクゼーション、ディープリラクゼーションなど、6つのテーマに基づく72の音声セッションの中には、自然音やリラックスできる音楽の他、心拍数をより管理しやすい状態にするための2分間の「インスタント・リリーフ」セッションも用意されている。

もちろん、ここでの本当の問題は、Morphéeがブランドをほんの少しだけ拡大し過ぎているのではないかということだ。確かに「My Little Morphée(マイ・リトル・モーフィー)」を与えて子どもたちからスマートフォンを遠ざけることには意味があるかもしれないし、オリジナルのMorphéeは、瞑想装置であると同時に芸術品でもある。

しかし、年間69.99ドル(約8090円)で「Calm(カーム)」のような瞑想アプリを利用でき、Spotify(スポティファイ)やYouTube(ユーチューブ)など、想像できる限りのあらゆる場所で瞑想や睡眠導入音、集中力を高めるための音楽などが、ほぼ無限に提供されているこの世界では、Morphée Zenはあまり意味をなさないのではないかと私には思える。純粋なソフトウェアソリューションで基本的には同じことができるのに、遅かれ早かれどこかの埋め立て地に行き着くであろう製品を、我々は本当に必要としているだろうか?

この製品は2022年第3四半期に発売予定で、価格は79.99ドル(約9250円)となっている。


画像クレジット:Morphée

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

GMが次世代のハンズフリー運転支援システムにクアルコムの自動車用プラットフォームを採用

GMが2023年に、まずはCadillac(キャデラック)から導入を開始する新しいハンズフリー運転支援システム「Ultra Cruise(ウルトラクルーズ)」には、Qualcomm(クアルコム)の最新のSnapdragon(スナップドラゴン)システム・オン・チップ(SoC)が採用される。2022年のCESで行われたこの発表は、Qualcommが自動車分野、特にADAS(Advanced Driver Assistance System、先進運転支援システム)で多くの市場シェアの獲得に成功していることを示している。

「Snapdragon Ride Platform(スナップドラゴン・ライド・プラットフォーム)」と呼ばれるこのSoCは、ADASおよび自動運転向けに開発されたもので、Qualcommが提供する自動車用クラウド接続プラットフォーム群の1つ。自動車メーカーはこれらのプラットフォームの中から、使いたいものを選んで採用することができる。

GMのUltra Cruiseシステムは、2017年に初めて導入された同社のADAS「Super Cruise(スーパークルーズ)」をさらに高度化したものと考えられる。

GMによれば、Ultra Cruiseは運転中に予想されるあらゆる事態の95%に対応でき、最終的には米国とカナダのすべての舗装道路で使用可能になるという。これは大変な仕事だが、この目標を達成するために、同社はカメラ、レーダー、LiDARという3種類のセンサーを使用し、独自のソフトウェアとQualcommのプロセッサを組み合わせた。このシステムはまず、2023年に発売予定の高級電気自動車「Cadillac Celestiq(キャデラック・セレスティック)に搭載されることになっている。

もう少し掘り下げて説明すると、Ultra Cruiseのコンピュートユニットはノートパソコン2台を重ねた程度の大きさで、2基のSnapdragon SA8540P SoCと1基のSA9000P AIアクセラレータで構成されている。16コアのCPUで低レイテンシーの制御機能を提供し、カメラ、レーダー、LiDARの処理には毎秒300テラ以上のAIコンピュートを実行できるという。

このSnapdragon SoCは、5nmプロセス技術で設計されており、コンピュートユニットには、システムの安全性を確保するためのInfineon(インフィニオン)のAurix(オーリックス)TC397プロセッサも搭載されている。Aurix TC397は、自動車安全水準で最高レベルとされるASIL-Dに分類されている車載用マイクロコントローラーだ。

これらをすべて組み合わせると、数百台のパーソナルコンピューターに匹敵する処理能力を持つコンピュートシステムになる。GMの電気自動車・自動運転車・燃料電池車プログラム担当バイスプレジデントのKen Morris(ケン・モリス)氏は、このシステムが2017年に発表された同社の先進運転支援システムを「次のレベルに引き上げ、出発地のドアから目的地のドアまでのハンズフリー運転が可能なる」と述べている。

Qualcomm Technologies, Inc.(クアルコム・テクノロジーズ)のシニアバイスプレジデント兼オートモーティブ担当GMを務めるNakul Duggal(ナクル・ダガル)氏は、キャデラック車に搭載されるSnapdragon Rideを使ったUltra Cruiseシステムは「自動車業界にとって経験的にも技術的にも飛躍的な進歩となる」と述べている。

Super CruiseとUltra Cruiseの比較

Super Cruiseは、LiDARによるマッピングデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサーを組み合わせて使用する他、運転者が注意を払っているかどうかを監視するドライバー・アテンション・システムを備える。Super Cruise使用中にドライバーはハンドルに手を置いておく必要はない。しかし、目線はまっすぐ前方に向けていなければならない。

Ultra Cruiseは、より安定性が高く、より多くの道路で利用できるようになるかもしれないが、ドライバーが常に注意を払う必要があることに変わりはない。つまり「完全な自動運転」が可能なレベル4のシステムではないということだ。レベル4システムとは、特定条件のもとであれば、人間の介入を一切必要とせず、すべての運転操作を自動で行うことができる機能レベルのことで、GMの子会社であるCruise(クルーズ)などの企業が、ロボットタクシーへの適用を通じて実用化に取り組んでいる。

Ultra Cruiseは、Super Cruiseシステムの能力をさらに高めるように設計されている。また、Ultra Cruiseはカメラ、レーダー、LiDAR(LiDARのマッピングデータだけではない)の組み合わせを通して、車両周辺の環境を正確に360度、3次元で統計的に把握し、重要なエリアには冗長性を確保している。GMによればこの新システムでは、マッピングよりもセンサー類に大きく頼っているという。

これによってUltra Cruiseのシステムは、信号機への反応、ナビゲーションルートへの追従、制限速度の維持・遵守、自動およびオンデマンドによる車線変更、左折・右折、物体の回避、住宅地のドライブウェイへの駐車などを自動で行えるようになるということだ。

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つずに血糖値を測定する

糖尿病の人やその疑いを持たれたことのある人なら、指に針を指し血を1滴とって棒に付ける作業を、指がしびれるまでやったことがあるだう。指先穿刺式血糖値検査は事実上の標準だが、AI企業の Scanbo(スカンボ)はこれを終わりにして、その1滴の血液を市販の診断ツールと強力なデータ分析で置き換えようとしている。

この会社が開発したプロトタイプは、3電極の心電計(ECG)とフォトプレチスモグラム (PPG)を組み合わせた装置だ。60秒間の測定結果を一連のアルゴリズムに送り込むことによって、非常に信頼できる測定値を得られる。装置は非侵襲的に血糖値のモニタリングを行うが、同社のファウンダーは、同時に血圧測定も行うことができると言っている。

私はTechCrunchのバーチャルCES特集取材の一環で、同社ファウンダーでCEOのAshissh Raichura(アシーシ・ライチュラ)氏からテクノロジーの詳細を聞いた。彼はデモンストレーションもしてくれて、まず自身の血液を市販の指先穿刺血糖値検査器で測定し、つぎに同社のプロトタイプを使った。測定値はそれぞれ6.2と6.3mmol/Lで、両者の差は数%以内だった。

「3本の電極はECGデータおよびPPGの追加測定に使用します。60秒間測定したら、原データを機械学習畳み込みニューラルネットワークとディープ・ニューラルネットワークで分析します。すべてのデータを合わせ、3種類の機械学習アルゴリズムを使った結果から血糖値を分析します」とライチュラ氏がデモの準備をしながら私に話した。「私たちの製品を商品化したいので、現在、FDA(米食品医薬品局)とカナダ保健省の認可を取得するつもりです」。

動作中のScanboプロトタイプ(画像クレジット:Scanbo)

血糖値の非侵襲測定が可能だと知って私は驚いた。いわゆる非侵襲的方法の多くは、体内埋め込みセンサーフィラメントセンサーワイヤーを使用して測定している。Scanboが使用している方法は、医学論文誌で研究結果が報告されている。この手法を使った製品をこれまでにFDAが認可したことはないようなので、製品を市場に出すためには時間のかかる医療承認プロセスに直面することは間違いない。

同社は、血圧測定も可能だという。通常は診療所や自宅でカフを巻いて測定するものだ。

「心電図データを取得した後、それをshort wave transmission lengthというものに変換します」と、ライチュラ氏は血圧データを取り出す方法を説明した。「それに基づいて、非侵襲的でカフ不要な方法で血圧を計算します。このアルゴリズムも特許出願中です」。

これらのテクノロジーを手にしている同社には、楽しみな選択肢がある。自身でハードウェア装置を製造するか、アルゴリズムとテクノロジーを、PPGやECG機能のあるデバイスをすでに販売している企業にライセンスするかだ。

「現在出願中の特許が2件あります。純粋なハードウェア、設計方法、電極の合金化方法、あらゆるパラメータを一度に取得できるセンサーなどに関するものです」とライチュラ氏は説明し、あらゆるデータを一度に測定しようとしていることをほのめかした。「従来の機器を見ると、1度に1つのものを測定していて全部まとめてではありません。私たちの場合、装置に指を4本置いてもらえれば、全データを取得して、アルゴリズムを使って患者の健康に関するさまざまな側面から結果を報告できます」。

Scanboはこのテクノロジーを、自宅で現在使われている医療に関する技術や技法のいくつかを置き換えるものになると期待している。

「私たちはAIとMedTechを組み合わせた会社です」とライチュラ氏は述べ、市場が注目し始めていることに言及した。「このプロダクトを手に、会社はまさにスタートを切ったところです。Medtronic(メドトロニック)、Samsung(サムスン)、LG(エルジー)などの企業がすでに当社との協業ができないか声をかけています。私たちは世界でさまざまな市場に進出するための戦略的提携をいくつか結ぶつもりてす。世界で4億人の2型糖尿病患者が「血糖値測定器」を必要としていますが、ほとんどの人たちは買うことができません。継続的な血糖値測定など考えられません。私たちのコスト削減効果は膨大です。価格は月額20ドルまで下げられます。生物学的廃棄物も使い捨て器具もありません、検査紙も何もいりません、純粋な機械学習アルゴリズムと充電式デバイスだけです」。

会社はまもなくこのプロトタイプと臨床試験結果を武器に、シードラウンドを実施して、認可を取得し最終的に商品を市場に出すためのスタートを切ろうとしている。

画像クレジット:Scanbo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

生き物であるかのようなサインを出して蚊をおびき寄せる捕虫器「モスキッター」

先の記事で別の蚊取り器を揶揄したが、バランスのためにも、今回のCESで展示されていた虫対策技術をもう1つ紹介しておこう。「Mosqitter(モスキッター)」は、蚊が産卵するチャンスを得る前にメスの蚊を引き寄せる、工業規模の蚊の殺虫器だ。そこから短期間で、見事に虫を退治することができる。

同社の説明によると、蚊が吸血活動を開始する前に誘引される自然要素は4つある。呼吸によるCO2、人間の体から出る熱のサイン、哺乳類が発する特定の波長の紫外線、そして香りだ。Mosqitterの製品は、魅力を最大限に引き出すようこれら4つの要素をさまざまなサイクルで駆使して、蚊を惹きつける。同社の製品は、どんな天候でも作動するように設計されているという。アプリを使って遠隔操作ができ、オプションでソーラーパネルを追加すれば、24時間365日の稼働も可能だ。

蚊を機械におびき寄せた後は、毒物を使用せずに殺すことができる。

「Mosqitterは生き物を模したもので、メスの蚊をおびき寄せ、装置の中に引き込みます。その結果は、初日から見ることができます。2〜3週間後には、蚊の繁殖サイクルが破壊され、テリトリーから蚊がいなくなります」と同社のCOOであるOlga Diachuk(オルガ・ディアチュク)氏は説明する。ただし厳密には、この機械は蚊を直接殺すのではなく、蚊を閉じ込めておくネットがあり、そこで結果的に蚊は餓死または乾燥死すると同氏は明確にした。

同社は2020年に販売を開始し、これまでに250台以上を販売したという。今後は、イタリア、インド、ジンバブエなど、この捕虫器が最も必要とされる地域で製造規模を拡大していくことを検討している。おそらく最も印象的なのは、同社がわずかな予算でこれらすべてを達成したことだろう。2019年に設立されて以来、同社は製品販売から得られる収入に加えて、Ukrainian Startup FundCRDF Globalからの8万5000ドル(約985万円)相当の助成金と、10万ドル(約1160万円)のエンジェル投資で運営してきた。

Mosquitterは現在、3つの異なるバージョンの製品を販売しており、家庭用の最も小さいバージョンは950ドル(約11万円)。ビジネス向けのバージョンは1150ドル(約13万3000円)で、公園や地方自治体などのより広い範囲を対象とした大型バージョンは2100ドル(約24万3000円)で販売されている。

画像クレジット:Mosqitter

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

韓国Doosanがコンテンツクリエイター向けロボットカメラを発表、さらに約39億円を調達

Doosan Robotics(斗山ロボティクス)は韓国時間1月4日、Praxis Capital PartnersとKorea Investment Partnersが主導して3370万ドル(約39億円)を調達したことを発表した。この資金調達のニュースは、ソウルを拠点とする同社が、ラスベガスで開催中のCESに新製品を出展するのと時を合わせ発表された。

同社はこの資金調達により、研究開発を強化し、新しいパートナーを獲得して、世界的な事業拡大を目指すとしている。また、Doosanはリリースの中で、同社の協働ロボットシステム(コボット)が年間販売台数1000台に達し、韓国以外の地域(主に北米と西ヨーロッパ)での販売がその約70%を占めるようになったと述べている。同社はIPOも視野に入れているとのこと。

Junghoon Ryu(リュウ・ジョンフン)CEOはリリースでこう述べている。「今回の資金調達により、事業の成長を加速させたいと考えています。当社独自の技術を搭載した新製品やソフトウェアの競争力をさらに高め、世界のコボット市場でシェアNo.1の地位を獲得することを目指します」。

Doosanは協働ロボット(collaborative robot=cobot)で知られており、その用途は製造業や研究機関から、2021年末にデビューしたコーヒーを作るバリスタロボット「Dr. Presso」まで多岐にわたる。

今回の発表では、資金調達の他に「NINA(New Inspiration. New Angle)」カメラシステムも発表された。数週間前にCESイノベーションアワードを受賞した際の記事で言及したが、今週、3月に発売予定の同ロボットシステムの情報をさらに得られた。

同社はNINAを「プロシューマー」システムと呼んでいるが、複雑な撮影を比較的簡単にボタン操作だけで行えるようにするためだろう。その一部は、オブジェクトトラッキングなどの機能に加え、ユーザーがさまざまなショットをプログラムできるオープンプラットフォームによるものだ。

リュウCEOは別の声明で、次のように述べた。「NINAは、Doosanがエンターテインメントとコンテンツのジャンルにラインアップを拡大していく中で、当社にとってまったく新しい時代の到来を告げるものです。私たちの目標は、エンターテインメント、広告、ソーシャルメディア、その他の関連業界のプロのコンテンツクリエイターに、親しみやすく、かつ革新的なものを提供することでした。NINAはそれらすべての面で大きな成果を上げてくれると確信しています」。

画像クレジット:Doosan Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)