アマゾンのアラバマとNYスタテンアイランド物流拠点の組合票の集計が来週から始まる

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマーにあるフルフィルメントセンター(FC)での労働組合結成への道のりは、予想通り険しいものであった。苦闘の末、2021年4月、小売業界の巨人は勝利を収めた。労働者たちはBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員から共和党所属のMarco Rubio(マルコ・ルビオ)上院議員までさまざまな政治家の支持を得ていたが、結果は一方的な勝利であり、組合代表者は直ちに異議を唱えた。

Amazonが「悪質であからさまな違法行為」によって従業員を「心理的操作」してきたという告発を受けて、全米労働関係委員会(NLRB)が再投票を行うことに同意したため、小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)は年末に何とかカムバックを果たした。1月、NLRBは無記名投票の開始を2月4日と発表した。米国時間3月28日(月)に、これまで歴史的な取り組みとなってきた投票の集計が始まる。

Amazonのニューヨーク州スタテンアイランド倉庫も、比べるとかなり短い投票期間ではあるが、同様の取り組みに直面している。米国時間3月25日から始まる投票は3月31日まで行われ、その時点で集計が開始される予定だ。アラバマ州の郵便投票とは異なり、こちらは対面式で行われる。先の(ベッセマーでの)投票では、その方式が緊張の種となっていた。

この労働運動の推進は、すでにいくつかの論議を呼んでいる。元JFK8職員で組合支持者となったChristian Smalls(クリスチャン・スモールズ)氏は、2月下旬に他の2人とともに不法侵入の容疑で逮捕された。スモールズ氏は、同氏を含む3人はAmazonの従業員に食料を届けるために現場にいたのだと反論している。「これは単にAmazonが状況を作り出しているだけだ」と彼は報道陣に語った。会社側は独自の声明で反論し、同氏は「何度も警告を受けたにもかかわらず、不法侵入を繰り返した」とメディアに伝えた。

Amazonは以前から組合を弾圧する戦術で非難されており、労働者の扱いが長年にわたって厳しい批判にさらされてきた同社にとって、組合の推進が成功すれば、それが試金石となることを懸念しているのだろう。労働組合の結成が成功すれば、より多くの倉庫で働く労働者たちが勇気づけられることは間違いない。パンデミック中の状況も、多くの労働者にとっての動機づけの要因となっている。

Amazonの広報担当者であるKelly Nantel(ケリー・ナンテル)氏は、TechCrunchの取材に対し「従業員の声を反映していけることを楽しみにしています」と述べている。「Amazonがすばらしい職場であることを継続するために、チームと直接協力することに引き続き注力してまいります」。

注目すべきは、同社が労働者組織化に対する関心の高まりに直面しているいくつかの米国大手ブランドの1つであることだ。3月初めには、マンハッタンにあるREIの店舗で働く従業員が、組合結成に投票した。また、ニューヨーク州バッファローの店舗を皮切りに、全米のStarbucks(スターバックス)で一種のドミノ効果が展開されつつある。ニューヨーク州バッファローの店舗から始まり、アリゾナ州メサの店舗、そして今週初めには、同コーヒーチェーンの本拠地であるシアトルの店舗がこれに続いた。

画像クレジット:PATRICK T. FALLON/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

スタテンアイランドFCのAmazonワーカーの組合投票は2022年3月の予定

計画どおりいけば、来月、2022年3月下旬にAmazonのスタテンアイランドFC(フルフィルメントセンター)の労働者が待望の組合投票を行なう。対面式の選挙は、アラバマ州ベッセマーにある同社の倉庫で行われている郵便による再投票の集大成と同じ3月25日から30日に予定されている。

元ニューヨーク市ニューヨーク区のJFK8倉庫の従業員で、現在はAmazon労働組合(Amazon Labor Union)の議長であるChristian Smalls(クリスチャン・スモールズ)氏が認めるのは、Amazonがこの投票に関して全国労働関係委員会(National Labor Relations Board、NLRB)と合意に達したことだ。同社はその経過をテキストメッセージで社員に確認し、1カ月以上前から「ノー」と投票することを勧めていた。

それは、今後確実にこのリテール大手の強力な反組合運動となるものの始まりだ。Amazonは2021年4月の投票に向けて攻撃的な戦術をとった。そして結局は、社内メールボックスや「ノーに投票しよう」の看板などが小売卸百貨店組合の異議不服を買うに十分となり、今回の再投票に至った。スタテンアイランドの投票は、JKF8の従業員独自の長期的活動の成果だ。

時間を無駄にするな‼

その巨大な倉庫では2020年に事態が過熱し、ニューヨーク市における新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの最初の波が高まっている間、エッセンシャルワーカーの労働条件に従業員たちが抗議した。当時アシスタントマネージャーだったスモールズ氏は、ストライキを率いた日に解雇された。同社は彼のことを、新型コロナウイルス感染症の安全規約に違反したと非難した。噂によると同社は、その直後にスモールズ反対キャンペーンを開始した。

10月にAmazon労働組合は、すでに同社のスタテンアイランドのすべての倉庫を含む投票を推していたが、署名が得られず撤回した。代わりに、今回の最新の投票は同区の最大のFCであるJFK8に集中する。12月にはシカゴのFCのワーカーたちが、倉庫の労働条件に対する反発の盛り上がりの一環として独自のストライキを主催した。

実質的に、この国の2つの異なる場所で大規模な投票が行われるようになったことが象徴的に示すものから、確かにAmazonは逃げられなかった。同社は長年組合の結成に抵抗し、長年の否定的な報道にもひるまず、FCの労働者は公正に扱われていると主張していた。2つの投票までの数週間は大量の激論が続くだろうが、特に激しいのは、リアルで行われるニューヨークの投票だろう。

TechCrunchはAmazonとAmazon労働組合とNLRBにコメントを求めている。

画像クレジット:ANGELA WEISS/AFP/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ウォルマート提携のロボット企業SymboticがソフトバンクSPAC経由で株式公開へ

Walmart(ウォルマート)は、Amazon(アマゾン)のオンライン支配に対抗するためにあらゆる優位性を追求し、ロボティクス分野で浮き沈みを繰り返してきた。巨大な小売企業のWalmartは2021年7月、マサチューセッツ州を拠点とするオートメーション企業Symbotic(シンボティック)と契約を結び、同社との関係をさらに強化した。この新しい契約は、2017年に初めて試験的に実施された、Walmartの25の地域配送センターにロボットを導入するという提携を拡大した。

関連記事:ウォルマートが25の配送センターにSymboticのロボットを導入

完成までには「数年」を要する予定のこの提携は、Albertsons(アルバートソンズ)やC&S Wholesale Grocers(C&Sホールセールグローサーズ)とのパートナーシップに続くものだ。Symboticによると、現在導入しているのは「16州とカナダの8つの州の1400超の店舗」で、これはおそらく配送センターの影響を直接受ける場所を指している。同社の自律型ロボットシステムは、既存の倉庫構造を増強する。当然のことながら、同社は現在も続くサプライチェーンの問題に影響を与える方法にも積極的に取り組んでいる。

同社は米国時間12月13日、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のSVF Investment Corp.3との合併により、SPAC経由で株式公開する計画を発表した。この取引により、Symboticのプロフォーマの株式価値は約55億ドル(約6250億円)となり、ソフトバンクからの2億ドル(約230億円)を含む7億2500万ドル(約820億円)の総資金を調達することができる。また、ソフトバンクにとっては、ロボットへの投資が非常に実り多い年として2021年を締めくくるものになる。

CEOのRick Cohen(リック・コーエン)氏は、リリースの中で次のように述べている。「ソフトバンクは、最先端の人工知能やロボティクスのイノベーターに投資してきたすばらしい経験を持っています。彼らとの提携は、当社の可能性を最大限に実現するための新たな洞察力、関係性、資本を提供してくれるでしょう。ソフトバンクとともに、Symboticがサプライチェーンの近代化において強力かつ長期的な力を発揮し、すべての人に利益をもたらすことを確信しています」。

想定どおり2022年上半期に取引が完了すれば、Walmartはロボット・AI企業の9%を所有することになる。Amazon Robotics(アマゾン・ロボティクス)の基盤となったKiva Systems(キヴァ・システムズ)のような企業の全面的な買収とまではいかないが、ロボットを使ったフルフィルメントセンターへの取り組みは将来に向けて不可欠なステップだとWalmartが判断したことは明らかだ。

画像クレジット:Symbotic

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

全米労働関係委員会がアマゾン労働者による新しい組合投票を認可

全米労働関係委員会(NLRB)の第10地域のディレクターが、アラバマ州ベッセマーのアマゾンフルフィルメントセンターで働く労働者の新たな組合選挙を許可した。NLRBの代表者がTechCrunchにこの決定を確認したところによると、小売・卸売・百貨店労働組合(RWDSU)は2021年4月に敗北した後、同センターで働く労働者を組合に加入させる2度目のチャンスを得ることになる。

関連記事:アマゾンが労働組合結成をめぐる投票で勝利確定、RWDSUは結果に異議

その勝利はAmazon(アマゾン)の一方的なものだったが、RWDSUは、技術系ブルーカラー労働者の組合結成活動にとって大きな試練となることが予想されていた中、すぐにこの勝利はごまかしだと訴えた。当時、RWDSUはAmazonが「ひどく露骨な違法行為」によって従業員を「ガスライティング」していると非難した。

Amazonは当然ながらこの非難を否定し、次のように述べた「Amazonがこの選挙に勝ったのは、私たちが従業員を脅したからだと、組合がいうことは容易に予想できますが、それは事実ではありません。私たちの従業員は、私たちから聞いたことよりも、組合や政策立案者、メディアからはるかに多い反アマゾンのメッセージを聞いたのです」。

RWDSUの責任者であるStuart Appelbaum(スチュアート・アッペルバウム)氏は米国時間11月29日日の声明で、今回の判決がこれまでの主張を裏づけるものであると述べている。「本日の決定は、我々がずっと言っていたことを裏付づるものです。アマゾンの脅迫と妨害によって、労働者が自分の職場に組合を作るかどうかについて公正な発言をすることができなくなったということであり、地域局長が指摘したように、それは受け入れがたいことであり、違法なことです。アマゾンの労働者は職場で自分自身の声を持つべきであり、それは組合でなければできないことなのです」。

新たな選挙の日程はまだ決まっていない。しかし、パンデミックとそれに続く経済不況の中で勢いを増した組合活動にとって、新たな全国的な火薬庫となることは間違いない。

「NLRBは、単位従業員の間で2回目の無記名投票による選挙を行う」と判決で述べた。「従業員は、団体交渉のためにRWDSUによって代表されることを希望するかどうかを投票します。選挙の方法、日時、場所は、第二次選挙の通知に明記されます」。

Amazonは、本日の判決に不快感を示しめしている。広報担当のKelly Nantel(ケリー・ナンテル)氏は声明の中で次のように指摘している。

当社の従業員は常に組合に加入するかどうかの選択権を持っており、2021年初めにはRWDSUに加入しないことを圧倒的多数で選択しました。今回、NLRBがこれらの票を数えるべきではないと判断したことは残念です。会社としては、組合が従業員にとって最良の答えであるとは考えていません。私たちは日々、従業員が自分の仕事を改善する方法を見つけられるようサポートし、それが見つかった時には、その変化を早く起こしています。このような継続的な改善は、労働組合が介在すると迅速かつ軽快に行うことができません。マネージャーと従業員が直接関係を持つことのメリットは、いくら強調してもし過ぎることはありません。この関係によって、一部の人の声だけでなく、すべての従業員の声を聞くことができます。賃金や安全性などの重要な分野では大きな進歩を遂げていますが、フルフィルメントセンターでもコーポレートオフィスでも、毎日をよくするために従業員と直接協力し、より良い方法を続けることができるものがたくさんあることを知っています。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Yuta Kaminishi)

欧州でAmazon流のフルフィルメントと物流をeコマース企業に提供するByrdが約21億円調達

新型コロナウイルスをきっかけに始まったオンラインショッピングの盛り上がりは衰える気配がなく、ヨーロッパのeコマースは2021年30%の成長が見込まれている。このような需要に対応するため、欧州でインフラを構築して販売業者の受注や配送をサポートし、Amazonに代わるフルフィルメントサービスを提供しているスタートアップ企業が、事業拡大のための資金調達を発表した。

倉庫や物流業務を管理するソフトウェアを構築したり、オンラインストアの商品の保管、集配作業をサポートするサービスを行ったりしているByrdは、シリーズBとして1600万ユーロ(約20億9200万円)を調達した。すでに活動している5カ国に加え、東欧、北欧、南欧の5つの市場に拡大するために使用する予定だ。2016年にオーストリアのウィーンで設立されたByrdは英国、ドイツ、オランダ、フランスにも進出し、合わせて約15のフルフィルメントセンターと200の顧客を抱えており、その中にはDurex、Freeletics、Scholl、Your Superfoodsなど、ヘルス&ウェルネス、消費財、化粧品、ファッションなどのD2Cブランドが含まれている。

銀行大手のSantanderから2020年スピンアウトしたフィンテック / eコマース関連の戦略的ベンチャーキャピタルであるMouro Capitalが今回のラウンドをリードし、Speedinvest、Verve Ventures、Rider Global、VentureFriendsも参加した。Byrdは評価額を公表していないが、現在までで約2,600万ユーロ(約33億9900万円)を調達している。

Byrdが狙っている市場機会は成長しつつあり、規模だけでなく、小売業者の需要やフルフィルメントパートナーに求めるものも大きくなってきている。

eコマースは見かけによらず複雑なビジネスである。見かけによらずというのは、私たちが消費者として実際に目にするのは、欲しい商品を適切な価格で見つけることができ、クリックしてあまり面倒な手続きなしに購入し、理想的にはすぐに手元に届くという機能だけだからだ。

しかし、これらのことを可能にするためには裏方で多くのステップが必要で、そのほとんどが複雑であり、通常、一般的な小規模小売業者のコアコンピタンスではない。そのような業者はたとえ人々が欲しがっていると思われる製品を知っていても、それをどうやって届けるかがわからないのだ。そのようなステップには、マーケティング、決済、ユーザーインターフェースのデザイン、パーソナライゼーション、製造、その他のサプライチェーン、そして注文商品を顧客に届けるための物流やフルフィルメントなどがある。eコマースがより大きなチャネルへと成長していく中、これらのサプライチェーンに含まれるすべての部門がかつてないほど大きな可能性を秘めている。

一般的に、小売企業はこれらのサービスを提供するために第三者のテクノロジー企業を利用するが、ここでByrdが、企業の物流とフルフィルメントを扱う外注パートナーとして登場する。Byrdは、小売企業がフルフィルメント業務全体をByrdに委ねることができるよう、一連のAPIを構築している。

これには商品の受け取り、保管、集荷を行うByrdの倉庫との連携や、企業の販売ネットワークとの連携が含まれる。販売ネットワークには、企業のオンラインストアだけでなく、Amazonやその他のマーケットプレイスで商品が販売されている場合も含まれる。注文が入り商品を集荷して発送する際には、Byrdが自社の技術を駆使して、UPS、DHL、Amazon、postNLなどのさまざまな運送会社のネットワークを活用し、商品を購入者に届けるための最も安くて簡単な方法を見つけ出す。

このような事業を行っているのはByrdだけではない。Byrdと競合する他の独立系企業(最大手の1つであるShipBobは、先に10億ドル(約1101億2800万円)の評価額で2億ドル(約220億2520万円)の大型ラウンドを実施した)と並んで君臨しているのがAmazonだ。巨大eコマース企業であるAmazonは、(FBAによる)フルフィルメントだけでなく、オンラインストアでの視認性やマーケティングなど、さまざまなサービスを提供しており、売り手にとってのワンストップショップのような存在となっている。

Byrdの共同設立者兼CCOであるPetra Dobrocka(ペトラ・ドボロッカ)は、インタビューで次のように述べている。「Amazonは一般的に大きな市場シェアを占めているため、多くの販売店は、たとえ主に顧客獲得のためのチャネルとして使用するのであっても、Amazonを使わないというわけにはいきません」。

しかし問題は、Amazonのオプションや他の第三者プロバイダーの中には、パーソナライゼーションにそれほど対応していないものもあるということだ。実際、eコマースが成熟し、厳しい競争にさらされるようになると、eコマース事業者は自分たちが優位に立ち、他社と差をつけるための方法を模索するようになる。この問題についてもByrdが登場し、パッケージをカスタマイズすることで、実際にはByrdが提供するサービスであっても、顧客が直接サービスを体験できるようにしたり、持続可能な配送方法などのオプションも提供している。

これによりスタートアップ企業のスケールアップの速度が遅くなる可能性もあるが、サービスは品質の高いオプションとして提供されている。このことは、品質管理がまったく不十分であったり、市場の中で明確なアイデンティティが欠如していたりする場合には重要な意味を持つ。とりわけスケールアップを続けている場合はそうである。

「私たちはAmazonの代替サービスともいえますが、まったく違うものでもあります。当社の販売者は、ブランドを重視し、お客様にトータルな体験を提供したいと考えています。また、この点を評価してくださる小規模のお客様もいらっしゃいます」とドボロッカは語る。確かに、中小企業は大企業に比べるとサービスレベルを下げられてしまうことがよくあり、小規模な小売業者でも大企業のように扱ってくれるフルフィルメントサービスがあることはプラスだ。

これは、小売業者がよりはっきりとしたオンライン販売での存在感を出し、パーソナライゼーションを構築するのをサポートするテクノロジー企業が次々と登場しているという大きなトレンドの一環でもある。(2021年6月に資金調達を発表したオンラインストア・デザイン・プラットフォームのShogunも、このトレンドに乗ったスタートアップ企業の一例だ)。

これらすべての結果として、Byrdは非常に大きな成長を遂げ、収益は1年前に比べて300%増加し、月に数十万個の小包を取り扱うようになったという。

ByrdはB2Cを中心としたビジネスを展開しているが、それに近い領域であるB2BでもByrdは活躍できると考えており、ドボロッカによれば、今後数カ月のうちにB2Bビジネスもオンラインで登場する予定だ。また、次にどの国でフルフィルメントを構築するかは明らかにしていないが、Mouroの関与を考えると、スペインが次の国の1つになるのではないかと思われる。

Mouro CapitalのゼネラルパートナーであるManuel Silva Martínez(マニュエル・シルバ・マルティネス)は以下のように声明で述べている。「特に新型コロナウイルスの影響で、柔軟なデジタルeコマースフルフィルメントソリューションの必要性が高まっている中、ByrdのシリーズBの資金調達を主導できたことをうれしく思います。Byrdのエンド・ツー・エンドの能力、持続可能性への注力、そして有名ブランドの顧客は、競合他社とは一線を画しており、今回の投資による地理的拡大がもたらす成功を期待しています」。

画像クレジット:chain45154 / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

米スーパーKrogerが初の大規模ロボット化フルフィルメントセンターをオハイオに開設

ほぼ3年前、提携の契約を交わした米国のスーパーチェーンKroger(クローガー)と英国のオンライン食料雑貨販売店Ocado(オカド)は米国時間4月15日、この契約による最初の主力製品を公開した。Krogerは、Ocadoの技術を使った顧客向けフルフィルメントセンターを、オハイオ州シンシナティの郊外、モンローに開設した。約3万5000平方メートルにおよぶその巨大な倉庫では、Krogerのオンライン店舗で受けた注文に応じて、何千種類もの商品を梱包して消費者に配達する。

Ocadoは自社の倉庫のことを「Shed」(シェッド、納屋)と呼んでいるが、ここでも他のシェッドと同様に、床には巨大なグリッドが描かれ、その上で1000台ほどのロボットと400人の従業員が、商品の棚出し、分類、移動を行うことになる。年間、実店舗20件に相当する7億ドル(約760億円)の売り上げにつながる処理が見込まれている。

注文を受けた商品は、Ocadoのバンをモデルに米国で製造されたKroger Delivery(クローガー・デリバリー)バンで配達される。これは温度管理が可能で、一度に20件分の荷物を積むことができる。この車両はまた、マッピング・アルゴリズムで最も早く、最も燃料を節約できるルートを割り出し、配達を最適化するOcadoのソフトウェアによって制御される。

画像クレジット:Kroger

KrogerとOcadoの提携関係は長い時間をかけて築かれてきたが、そこから生み出されるもへの関心は、2020年のオンラインショッピングの激増を受けて、今、最も熱くなっているに違いない。新型コロナウイルスのパンデミックと、社会的距離の確保を強要される事態から、実際の店舗へ出かけるより、食料品も生活必需品も丸ごとオンラインで注文したいと考える大勢の人々が、インターネットへ駆け込んだ。

その傾向は、この分野での競争も激化させた。Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)をはじめ、昔ながらの食料雑貨販売業者もデジタル戦略を着々と進め、オンライン業界のプレイヤーたちは、今やオンラインでの買い物を受け入れるようになった消費者の市場をわずかでも確保しようと奮闘している。

この潮流はKrogerの船も浮き上がらせた。本日開催された記者発表会で、Krogerの会長兼CEOのRodney McMullen(ロドニー・マクマレン)氏は、Krogerの配達事業は、2020年150パーセントの成長を見せたと話した。

新型コロナが終息すれば(そう願いたい)、実店舗でのショッピングに戻る人もいるだろうが、業界では、壷から魔人が現れたと信じる向きは多い。オンラインショッピングに接した人の多くは、少なくとも一部はそのまま残るため、その新しい需要に応えるための新たなインフラを構築する時期に来たというのだ。

これを裏づけるデータはいくつもある。OcadoのCEOで共同創設者のTim Steiner(ティム・スタイナー)氏は、パンデミック以前のOcadoでの平均注文金額は105ポンド(約1万6000円)だったが、2020年は180ポンド(約2万7000円)となり、現在は120ポンド(約1万8000円)だと述べている。

多くの実店舗プレイヤーと同じく、Krogerもデジタル戦略における前線を複数築いている。同社はOcadoと協力して、たとえばShelf Engine(シェルフ・エンジン)などの企業と提携するなどして、倉庫内の業務の効率化を高める技術に投資してきた。さらに、Instacart(インスタカート)と食料雑貨の配達で手を結んだ。

KrogerとInstacartとの提携はまだ続いている。特に、Ocadoのアプローチよりもずっと広いエリアをカバーしているからだ。Ocadoは現在シンシナティで活動しており、フロリダに進出するという話も聞く。Krogerは本日、消費者向けフルフィルメントセンター(CFC)の規模はそれぞれ異なり「モジュール」という考え方に基づいて建設されると話していたが(ちなみにモンローの倉庫は7モジュールで構成されている)、これは、Instacartのモデルと比較するとまだ資本集約的なアプローチであるため、全体的に展開が遅く、おそらくその有効性が発揮されるのはKrogerの密度の高い市場に限られる。

「この2つの提携は、Krogerと私たちのお客様にとって極めて重要なものです」とKrogerのCIOであるYael Cosset(ヤエル・コセット)氏は本日の記者発表で語っていた。「私たちは、InstacartとOcadoとの戦略的パートナーシップで密接に協力できることを期待しています」。

Ocadoは、英国で2000年にスタートした初期のプレイヤーであり、多くの人たちからは、オンライン専用の食料雑貨販売ビジネスの構築と運用の業界標準と見られている。

だがOcadoは、食料雑貨直販ビジネスを英国外で展開して成長を目指すことはせず、むしろ自社のために開発したテクノロジーを活かし、それを商品化することでリーチを伸ばしてきた。商品化については、今も進行中だ。現在は、棚出しのロボット化やその他の自動化システム、さらには配達サービスの高効率化のためのテクノロジーの開発を進めている。

自社用に開発したテクノロジーを商品化して他社に販売するというOcadoの「AWS」戦略は実を結んだ。今では、オンライン食料雑貨販売サービスと、特にフルフィルメントセンター(日本ではイオン、フランスではCasino、カナダではSobeysと提携)でのパートナーシップが実現している。これは、Krogerの展開モデルが実証されたことを意味する。しかし、同社にとって米国進出は極めて重要な一手であり、同時に、WalmartやAmazonといった同国の巨大プレイヤーたちと戦うにはどうしても欠かせないインフラの一部をKrogerにもたらすものとなる。

そこに関しては、Ocadoの支援による巨大なインフラを、Krogerは他のプロジェクトにも応用するのか、するとしたらどんなかたちになるのかには大変に興味が湧く。同社は、Mirakl(ミラクル)と共同でサードパーティーの小売り業者のための独自のマーケットプレイスを開発中だ。これは同様のサービスを展開している企業、そう、AmazonとWalmartとの真っ向勝負となる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:KrogerOcadoeコマース倉庫フルフィルメント物流ロボットオハイオ

画像クレジット:Kroger

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)

倉庫から歩道まで、Amazonに対抗するロジスティックス実用ロボットの最新動向

先回りしておくと、ロボティクスの分野には注目すべき動きや製品が多数ある。しかし現在、全員が熱中しているのは倉庫でのフルフィルメントをはじめとする物資移動業務だ。これはAmazon対大勢という構図になっており、多くの面でAmazonが一歩先を行っている。労働者の管理、処遇に関する問題はまったく別の話となる(それはそれで別に議論したい)。

フルフィルメントロボットのトップ企業の幹部を取材すると、概ね話は共通していることがわかる。「どうすればAmazonとの競争に負けずにいられるか?」だ。これはビジネスの存在を賭けた真剣さを含んでいたのでので単なるロボット関連記事にまとめてしまうのはためらわれる。しかし、とりあえず簡単な答えを出しておくなら「自動化の提供」だろう。

ともあれBoston Dynamicsの最新ロボットが倉庫用であるのは理由がある。2021年夏に登場する予定のSpotは同社にとって2番目の市販ロボットだが、多くの意味で同社として最初初の特定目的型ロボットだ。SpotはBoston Dynamicsが創業以来取り組んできた四足歩行ロボットを拡張したものだ。同社はSpotをプラットフォームと表現してきたがその用途は当然極めて広範囲なものとなる。

関連記事:ボストン・ダイナミクスの次期商用ロボットは退屈な倉庫仕事をこなす「Stretch」

画像クレジット:Boston Dynamics

StretchはHandleから進化し、HandleはAtlasから進化した。このシリーズのロボットは「箱を運ぶ」という非常に限定された目的を果たすためにデザインされた。もちろん倉庫作業にはさまざまな側面があり、Boston Dynamicsは将来、多様な作業に対応していくだろう。しかし今のところはトラックからの荷降ろしやパレット上に注文された品々がはいった箱を積み上げることに集中している。これは明らかに巨大な成長市場であり、Boston Dynamicsのような組織がどのように規模を拡大していくのか注目していきたい。この点でHyundaiからの大口の引き合いが実現するかどうかが重要だ。

このカテゴリでは、いくつかの注目すべき発表があった。我々は中国がフルフィルメントロボットの分野でも注目されていることを報じているが、さきごろ北京を拠点とするForwardX Roboticsが6300万ドル(約69億5000万円)を調達して話題となった。CDH、Eastern Bell、Dohold CapitalがリードしたシリーズBでは地元中国に加えて米国、日本、英国、ドイツを含む国際市場への拡大を目指している。

ファウンダーでCEOのNicolas Chee(ニコラス・チー)氏はこのラウンドについて次のように書いている。

当社にやってくる倉庫や製造に携わるユーザーは業務を改革し、これまで達成できなかった新しいレベルの効率性を引き出すことが目的だ。ForwardX Roboticsの柔軟な自動化プラットフォームは、サプライチェーンで働く労働者のパフォーマンスを向上させ、増大する人件費の圧力を軽減し、市場の変化に迅速かつ効果的に適応することを可能にする。

画像クレジット:Ambi Robotics

このブームを機にステルスからの脱却を図っているAmbi Roboticsにもそれなりの規模の資金資金調達ラウンドを実施している。カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、TechCrunch主催のロボティクスのセッションのゲストににもなったKen Goldberg(ケン・ゴールドバーグ)氏が設立したこの会社は610万ドル(約6億7000万円)の資金を調達したことを発表した。この会社は、いわゆるピック&プレース型のロボットに特化しており、AmbiSortとAmbiKitという2台のマシンでスタートを切っている。この分野ではゴールドバーグ氏には熱心な支持者がいる。これは間違いなく注目すべき企業だ。

画像クレジット:Skycatch

TechCrunchは最近、Skycatchが2500万ドル(約27億6000万円)を調達したというニュースを報じた。我々はこのドローンを提供するスタートアップについて何度も取り上げてきた。現在、多数の企業が実用ドローンのビジネス化のために多大な努力を払っている。その中でもSkycatchはコンセプトの現実化で一歩先を行くグループに属する。同社の3Dイメージング用ドローンはすでに世界中の何千もの現場で活躍中だ。

関連記事:ドローンを使い建設、採掘現場での高精度3Dスキャンサービスを提供するSkycatchが27.3億円調達

画像クレジット:REEF Technologies

もちろんロボットテクノロジー人間の配送要員に全面的に取って代わるような自体は当分ありえない。しかし多くの企業や都市が積極的にテストに取り組んでいる。そのスタートアップの1つがCartkenだ。ファウンダーは元Googleのエンジニアでマイアミでテストを開始している。この都市の宣伝文句は数えきれない。マイアミを推薦するWill Smith(ウィル・スミス)の歌さえある。

関連記事:元Googleのエンジニアによる自動運転ロボットがマイアミで料理配達業務を開始

画像クレジット:Toyota

一方Nuroは新たな投資家からの激励がなくても盛り上がりに欠けることはない。同社は2020年11月に5億ドル(約551億2000万円)のシリーズCを発表した。またトヨタ自動車が出資するWoven Capitalがこのラウンドに参加したことを発表し、詳細が明らかになった。Woven Capitaの投資・買収担当責任者であるGeorge Kellerman(ジョージ・ケラーマン)氏はTechCrunchに次のように語っている。

Nuroは我々の出発点として好適です。我々は乗客を運べる自動走行車の開発に焦点を当てているので、Nuroは地域におけるグッズの配送に焦点を絞り込んでいるので同社との提携は我々が多くのことを学ぶための第一歩となります。Nueoから学ぶべきことは多く、将来的には同社の世界的展開を支援することも可能性となります。

関連記事:トヨタの投資ファンドWoven Capitalが自動配送ロボティクスNuroに出資

カテゴリー:ロボティクス
タグ:フルフィルメント物流倉庫Boston DynamicsForwardX RoboticsAmbi RoboticsCartkenToyotaフードデリバリー

画像クレジット:Boston Dynamics

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(文:Brian Heater、翻訳:滑川海彦@Facebook

フォークリフトに取って代わるFetchの最新の倉庫ロボット

サンノゼを拠点とするロボット企業Fetchは、米国時間1月28日の朝、最新のロボットを発表した。PalletTransport 1500は、倉庫のフォークリフトを置き換えるために特別に設計された自立型ロボットだ。このロボットはパレットをピックアップして配送するように設計されており、最大2504ポンド(約1140kg)まで運ぶことができる。

このデバイスは、Toyota(トヨタ)を含むさまざまな企業が提供する多様なロボット式フォークリフトソリューションに参加している。Amazon(アマゾン)が所有するKiva Systems製のロボットは、業界で最もよく知られたパレット移動ロボットだが、このシステムはHoneywellと共同開発したものである。

このシステムは、Honeywellにより統合されたMomentumの倉庫ソフトウェアを使って開発された。もちろん、Fetchはすでにいくつかの倉庫ロボットソリューションを提供しており、一種の自律型エコシステムを構築している。同社のシステムは、他の本格的なソリューションに比較して柔軟性が高いことで注目されている。

プレスリリースによると、この新しいロボットはパレット移動システムから人間がいなくなるように設計されている。なお、アクションには次のものが含まれる。

  • クロスドッキング:AMR(自律走行型移動ロボット)はパレットを入庫エリアから出庫エリアへ直接輸送できる。トラックからパレットが降ろされた後、AMRは入庫トレイラー / コンテナから送られてきたパレットを、入庫エリアの場所までそれぞれ直接搬送する。
  • 返品:入荷した商品が製品タイプやベンダー別に分類された後、AMRはパレットを適切な返品ステーション(在庫、リサイクル、チャリティーなど)に搬送する。
  • 倉庫輸送:入荷した製品が荷降ろしされパレット化された後、AMRはビジネスニーズに基づいて在庫を保管場所に移動する。

フォークリフトによる事故が多発していることを考えると、この製品カテゴリーが最も需要の高い製品の1つであることは間違いない。OSHAのデータは「フォークリフトによる死亡事故は年間約85件で、3万4900件の重大災害を引き起こし、6万1800件の非重症事故が発生している」としている。これは労働災害の大きな原因だ。同調査機関は1台のフォークリフトにつき1件の事故を想定した場合、米国のフォークリフトの11%が事故に巻き込まれていることを意味すると付け加えている。

これらの懸念に加えて、新型コロナウイルス(COVID-19)関連のシャットダウンによって、自動化されたフルフィルメントシステムへの移行がこの1年間でますます魅力的になったことは間違いない。

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タグ:Fetchフルフィルメント

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter