Apple(アップル)とAndroid(アンドロイド)の時代に忘れられがちだが、かつてBlackBerry(ブラックベリー)がビジネス向けスマートフォン市場を独占していた時期があった。Motorola(モトローラ)、Nokia(ノキア)、Samsung(サムスン)もあった。しかし、ビジネスではBlackBerryが圧倒的だった。頑強で安全、機能的だった。
TechCrunchが米国時間1月3日朝報じたように、BlackBerryは残りのサービスを終了する。BlackBerry OS 7.1とBlackBerry 10を搭載したBlackBerryデバイスを使用しているユーザー(一体何人残っているのか疑問だが)は、データだけでなく、かつて有名だったBlackBerryメッセージサービスなどにもアクセスできなくなる。明日(米国時間1月4日)にはすべてが停止されるのだ。
その運命のシャットダウンの日が近づいているが、iPhoneやAndroidが登場する前のBlackBerryがいかにユビキタスであったか、そしてその市場シェアの落ち込みがいかに急激だったかを理解するのは難しいかもしれない。物理キーボードとメッセージングサービスを組み合わせたBlackBerryは、社外の同僚とコミュニケーションを取る手段として、人々に愛用された。良くも悪くも、BlackBerryは多くのビジネスパーソンにモバイル時代の到来を告げた。
Comscoreは、2010年にBlackBerryが43%のシェアを獲得した当時のモバイル市場シェアのデータを追跡した。BlackBerryがスマートフォンのトッププラットフォームとして絶頂期を迎えた頃だ。その数字は同社にとって高水準だったと言えるだろう(その数字はプラットフォームの普及率を示すものであり、販売台数ではないことに注意)。
月/年 | 市場シェア(上位スマホプラットフォーム別) |
Jan 2010 | 43% |
Jan 2011 | 30.4% |
Jan 2012 | 15.2% |
Jan 2013 | 5.9% |
見てのとおり、BlackBerryは、スマートフォンの頂点の座から、瞬く間に一桁台にまで落ち込んだ。AppleとAndroidのタッチスクリーンに完全に打ちのめされ、マーケットシェアの大部分を失った。BlackBerryは最終的にこうした変化に対応し、2011年にはBlackBerry Torchをリリースした。だが、それはあまりにも小さく、あまりにも遅すぎた。さらに、ディスラプション理論の典型的な例として、物理キーボードを愛用していた人々は、BlackBerryのタッチスクリーンになじめなかったのだ。
2011年にMicrosoft(マイクロソフト)と提携し、BlackBerryのデフォルトの検索エンジンをBingにしたことも、今にして思えば絶望的な行動だったが、当時は同社がいろいろ試していることがより肯定的に受け止められた。しかし、何をやってもうまくいかなかった。
社運が傾くなか、2013年にCEOとしてJohn Chen(ジョン・チェン)氏を迎えた。チェン氏は、電話からセキュリティソフトウェアへと同社をシフトさせるプロセスを始めた。
なぜセキュリティなのか。BlackBerryはセキュリティに関しては絶対に磐石との評判だったため、合理的な転換だと思われたのだ。同社は2016年にこの変更を正式に発表した。同社は現在、企業や政府機関へのセキュリティソフトウェアの販売に全面的に注力している。時価総額は50億ドル(約5750億円)程度と控えめだが、まだ存在する。
同僚のBrian Heater(ブライアン・ヒーター)が先の記事で指摘したように、BlackBerryスタイルのデバイスはまだ存在するが、古いBBオペレーティングシステムは動いていない。
もちろん、選択肢はたくさんある。ただし、5G BlackBerryブランドのデバイスを約束したOnwardMobilityは、2021年に発表するとの約束にもかかわらず、現在まだMIA(音信不通)のままだ。カナダの血統を引くOSOMのデバイスもある。やはりプライバシーに焦点を当てたその製品も、2022年2月末のMobile World Congressまで発表されないだろう。
だが、かつてビジネスパーソンや政治家の変わらぬ伴侶であった愛すべきBlackBerryは「ネクスト・ビッグシング(次の大きなもの)」に破壊された別のデバイスとして、歴史に残ることになりそうだ。
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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi)