トヨタがAIスタートアップのPreferred Networksと提携 支援サービスロボット開発へ

トヨタは2014年に設立された人工知能とディープラーニングを専門とするスタートアップのPreferred Networksと提携し、人々の日常生活を支援するサービスロボットの開発をすすめる。

両社は8月7日、トヨタのヒューマン・サポート・ロボット(HSR)のプラットフォームを利用した共同研究開発について発表した。トヨタが2012年に開発したこのプラットフォームは、日常生活の中で人々と一緒に仕事ができるように設計された基本的なロボットだ。主な用途は、介護における基本的なケアとアシスタントだ。ロボットは1本のアーム、ディスプレイ、カメラ、車輪付きベースを備え、アイテムを片付けたり、遠隔操作や通信機能を提供する。

Preferred NetworksはすでにすでにトヨタのHSRに関する経験があり、2018年に日本で開催されたロボットカンファレンスのCEATECにて、自動で部屋を掃除するようにプログラムされたロボットのデモを展示した。システムは物体を認識し、人間からの特定の指示に従い、データベースから定義できない物体を片付けることができた。

トヨタはPreferred Networksのために数十台のHSRユニットを貸与し、今後3年間にわたり研究成果と知的財産を共有しながら、成果の活用に制限をもうけずに研究開発を進める。

トヨタの目標は、地域の人々と一緒に働ける商用ホームロボットを開発することにある。同社は複数の学術研究機関と提携している子会社のトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)での研究を含め、さまざまなプロジェクトを進めている。トヨタはまた、2020年の東京オリンピックに向けていくつかのロボットプロジェクトを公開しており、いくつかのフィールドテストを実施する予定だ。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

Preferred Networksが中外製薬と東京エレクトロンから9億円を調達、深層学習技術を用いた共同研究へ

深層学習技術、機械学習技術の研究開発を行うPreferred Networks(PFN)。これまでもトヨタやファナックを始めとした大企業から出資を受け、各業界の課題解決に向けて共同研究を進めてきたこのAIスタートアップが、また新たな企業とパートナーシップを組むようだ。

同社は7月26日、中外製薬と東京エレクトロンから総額で約9億円を調達することを明らかにした。内訳は中外製薬から約7億円、東京エレクトロンの子会社から約2億円。2018年8月に出資を受けることで合意したという。

調達した資金を基にPFNでは組織体制や財務基盤の強化、計算環境の拡充を進める計画。また中外製薬とは医薬品研究の分野において、東京エレクトロンとは半導体製造分野において深層学習技術(ディープラーニング)を用いた共同研究に取り組む。

PFNは2014年3月の設立。これまでも何度か紹介しているが、代表取締役社長の西川徹氏が2006年に立ち上げたPreferred Infrastructure(PFI)からスピンオフする形で始まったスタートアップだ。

2017年10月にトヨタから約105億円の資金調達を実施した際には話題となったが、それ以前にも日本電信電話(NTT)やファナックから出資を受けているほか、直近では2017年12月に博報堂DYホールディングス、日立製作所、みずほ銀行、三井物産にファナックを加えた5社から20億円を超える資金を集めている

PFNではこれまで「交通システム」「製造業」「バイオヘルスケア」という3つのドメインを重点事業領域として設定。トヨタやファナック、日立、国立がん研究センターなどと各分野の研究開発を進めてきた。具体的には自動運転やコネクテッドカーに関する技術、ロボティクスや工作機械への応用、医用画像の解析や血液によるガンの早期診断技術といったものだ。

今回出資を受けた2社とも同様に事業面での連携を進めていく方針。東京エレクトロンとは半導体製造分野で最適化・自動化などをテーマに深層学習技術を用いた共同研究をすでに開始している。

中外製薬とも革新的な医薬品・サービスをはじめとする新たな価値創出を目的とした包括的パートナーシップ契約を締結。深層学習技術を活用して医薬品研究開発の解決を目指すとともに、より探索的な取り組みも含めて複数の共同プロジェクトに取り組む方針だ。

DeNA、Preferred Networksと組んでAIベースのソリューション事業に参入——合弁会社「PFDeNA」を設立

screenshot_594

1年ほど前にはZMPと組んで、自動運転技術を使ったタクシーを手がける「ロボットタクシー」を設立したディー・エヌ・エー(DeNA)。新領域のビジネスを続々と手がける同社が、今度はAIをベースにしたソリューション事業に参入する。

DeNAとPreferred Networks(PFN)は7月14日、合弁会社「PFDeNA(ピー・エフ・ディー・エヌ・エー)」を設立したことを発表した。資本金は3000万円で(出資比率はDeNA:50.0%、PFN:50.0%)、代表取締役社長にはDeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏が就任。取締役にはPFN代表取締役社長 CEOの西川徹氏、PFN取締役副社長の岡野原大輔氏、DeNA取締役の川崎修平氏ほか1名が就任する。

PFNは検索やレコメンドなどを開発するPreferred Infrastructureから2014年にスピンオフした技術系のスタートアップ。現在はIoT領域を中心に機械学習技術を用いたソリューションを手がけている。2015年12月にはトヨタ自動車が出資。モビリティ領域でのAI技術の共同研究を行うと発表したことでも話題を集めた(提携自体はPFN設立時の2014年に発表されていた)。

PFDeNAでは、AIを活用した企業向けのソリューション提供をする予定。対象領域はゲームやヘルスケア、自動車・交通関連をはじめ、大規模データを扱うあらゆる産業としている。両社は発表で「DeNAがインターネットサービスの運営を通じて蓄積してきたデータや複数事業領域での経験と、PFNのAI技術を組み合わせることで、DeNAあるいは顧客企業の持つ様々なデータの価値の最大化を図る」とコメントしている。

“企業向けのソリューションを提供”なんて聞くと、「DeNAがSIerにでもなるの?」なんて疑問も出たりするのだけれど、PFDeNAのサイトを見る限りはまだ具体的な内容は何も分からない状態。まずは今後の展開を待ちたい。