近年の評価額上位のスタートアップは慣習に反して非上場を続けている

Bessemer Venture Partnersは2020年のCloud 100 Benchmarkレポートを最近発表し、TechCrunchのAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)がその大まかなトレンドに着目している(未訳記事)が、そのデータを見ると評価額上位の企業に注目すると、近年のトップ企業は何らかの理由で慣習に反していることがわかる。

このレポートはプライベート企業を対象としたもので、上場すると掲載されなくなり、毎年、企業の入れ替わりがある。たとえば初期のレポートでは、2016年と2017年にはDropboxが100億ドル(1兆円)規模の評価額で断然トップだったが、2018年に上場(未訳記事)して以降はいなくなった。

100億ドルという指標は、クラウド企業に対する投機的でない堅実な評価額としてはかなり大きめの額だが、評価額でそれを吹き飛ばした企業がいる。その並外れた大きさは、2020年9月初めの上場(未訳記事)の前に120億ドル(約1兆2700億円)を超えた(未訳記事)Snowflakeさえ小さく見えてしまうほどだ。

その企業は、360億ドル(約3兆8000億円)という途方もない評価額のStripeだ。同社の、トップを目指す快進撃は2016年と2017年に始まったが、2016年には60億ドル(約6300億円)、2017年には約80億ドル(約8400億円)でDropboxの背中を見ていた。2018年にDropboxがこのチャートを去ると、評価額は200億ドル(約2兆1100億円)に跳ね上がり、Dropboxがいたとしても抜かれていただろう。2019年は230億ドル(約2兆4200億円)にまで駆け上がり、2020年には360億ドルと大きく飛躍した。

Stripeが並外れているのは評価額の大きさだけでなく、それでもまだ上場していないことだ。TechCrunchのIngrid Lunden(イングリッド・ランデン)が2020年4月に指摘していた(未訳記事)ように、同社はその意図について沈黙を守っているが、最近ではIPOが近いという推測もある(Forbes記事)。

Stripeがそのクレイジーな評価額を稼いだ主因は、インターネット上における最大の企業の一部がクラウド決済のAPIとしてStripeを使っているからだ。今やAmazon(アマゾン)も、Salesforceも、Google(グーグル)も、ShopifyもStripeの顧客であるため、これだけ大きな評価額になっても不思議ではない。

Stripeは、誰もが自分のアプリやウェブサイトに決済の仕組みを簡単に導入できるサービスとして登場した。決済の部分のコードを自分で書くとしたら、ものすごく時間がかかってしまう。しかしStripeを使えば、開発者がやることはそのサービスのタイプを選ぶだけだ。あとは誰かがその決済のゲートウェイを通るたびに、Stripeが少額の手数料を徴収する。

世界最大の企業の一部が使っており、大小さまざまな企業もStripeを使って決済を実装しているため、その売上の合計(手数料の合計)は膨大な額になっている。それが、驚くべき評価額に繋がっている。

ここでもうひとつ注目したい企業は、RPAサービスのUIPathだ。同社は100億ドルを超える評価額でSnowflakeの次に位置している。レガシーなワークフローを自動化するRPAが、決済のAPIと並ぶほど長寿なものか、それはまだわからないが、この2年間はとても強かった。

レポートに登場する企業の多くが、初登場から2年後にはユニコーンになり、評価額が高騰し最終的に上場している。Stripeは現時点でその道を選んでいないため、相当に異例な企業だといえる。

関連記事:評価額1.1兆円超に急増した業務自動化のUIPathがシリーズEで約241億円を追加調達

カテゴリー:その他

タグ:Stripe UIPath

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが経済効果を示す報告書を提出、経済的影響は6.8兆円と31.2万人の雇用

米航空宇宙局(NASA)が、連邦政府からの予算削減を予想して、初めて連邦政府全体の経済報告書を発表した。NASAが影響力を持っていることは誰もが知っていたが、2019年度には約640億ドル(約6兆7600億円)と30万人以上の雇用に相当する影響力があることが明らかになった。

2670ページにおよぶ報告書には、NASAが国にとってどれだけ価値のある機関であるか、それがいかに経済への投資であるかを示す内容になっている。一部の人が言うように、私たちがお金を投げ込んで科学を引っ張り出すような穴ではないことは明らかだ。主なポイントは次のとおりだ。

  • NASA自身は1万8000人以上の公務員を雇用しており、それに加えて17種類の「追加的な仕事」が正社員に提供されており、合計で約31万2000件の仕事がある。
  • NASAは年間約240億ドル(約2兆5300億円)の労働所得と643億ドル(約6兆8000億円)の総経済生産を支えている。
  • 69億ドル(約7300億円)の追加税収は、NASAの仕事によるものである。
  • この全体的な効果の約22%は、10年ほど前から計画されていた「Moon to Mars」(月から火星へ)プログラムによるもの。
  • NASAのMoon to Marsプログラムは、全体の雇用への影響の2.4%しか占めていないが、関連する調達がその約20%を占めている(言い換えれば、同プログラムは請負業者に大きく重点を置いている)。

「追加的な仕事」 は広く解釈されがちがだが、必ずしもそうではない。NASAの関係者によると、これは70年にさかのぼる常識的な内容だ。NASAの人件費や調達予算は基本的には1つだが、一般的には物品やサービスに対する需要の増加や、企業、消費者、地方自治体による支出の増加につながる可能性がある。そのため、NASAの請負業者が500万ドル(約5億2800万円)相当の複合材の仕事をしていると、同市の物流、ビジネスサービス、食料、その他の日常的なニーズにも需要が生まれ、おそらくNASAが実際に費やした金額の2倍にもなる。

報告書では、複合材が直接的、間接的に支えている数千もの産業について、驚くほど詳細に説明されている。例えば、全体493ページの付録の138ページには、NASAが板金製造業で66社の雇用を支援しており、労働力として約400万ドル(約4億2200万円)の価値があり、それ自体が約600万ドル(約6億3300万円)の価値をもたらし、合計で約1400万ドル(約14億8000万円)のプラスの経済効果を生み出していることが書かれている。金属加工構造物の91社の雇用、ヘビーゲージ金属タンク製造の13社の雇用、カトラリー、調理器具、鍋、フライパン製造の7社の雇用など何ページにもわたって雇用関連の情報がある。

このようなつながりは、ときにはやや希薄なものに思える。NASAはどのようにして小型武器の製造を支援し、400万ドルの経済的影響を生み出し、あるいはトルティーヤ産業を同程度に支援しているのだろうか?これらは、NASAのプロジェクトが町に存在することの間接的な影響として推定されているようだ。主要な研究センターは、多くのタコトラック(キッチンカー)を受け入れることができる。

しかし、最終的なイメージは十分に単純です。NASAは私たちの経済にとって巨大な力であり、宇宙を探索し理解するという「価値」を考慮に入れなくても、その投資は何倍にもなって報われている。

また、州別に分類されているので、議員が納得のいく説明が必要な場合にはNASAの予算を有権者に正当化するのに便利だ。何十億ドルもの資金の一部をPPE(個人防護具)や新型コロナウイルスの感染蔓延対策に使うことができれば、すぐには実用的な効果が得られない研究やプログラムと考える人もいるかもしれないが、その場合には政府機関が単なる経費以上のものであることを示すことが重要となる。

画像クレジット:imaginima / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

中国の電子タバコ最大手Relxが米国市場参入へ、2021年末までに米国品医薬品局への申請を準備中

米国での電子タバコ批判は、中国企業の世界最大の電子タバコ市場(BBC記事)ヘの参入を思いとどまらせるものではないようだ。

中国最大手の電子タバコ企業、Relx(リラックス)は、2021年末までに米食品医薬品局(FDA)に発売前タバコ製品申請(PMTA)を提出することを目指している。審査は180日以内に終了し、FDAはマーケティングの承認、さらなる情報提出の要求、却下いずれかの「アクション」を取る。

RelxはFDAに対し提出前のミーティングを要望し、10月にも当局と話し合いの場を持つ、と創業2年の同社の北米科学担当責任者Donald Graff(ドナルド・グラフ)氏は述べた。同氏は先日深センで開催されたプレスイベントでビデオで登場した。

グラフ氏は臨床研究企業のCelerion(セレリオン)で13年間タバコ研究を監督したのち、Juuls Labs(ジュール・ラボ)にもわずかの間在籍した。

同氏はいま、RelxでPMTAを担当している。Juuls出身のもう1人の科学者、Xing Chengyue氏も中国の電子たばこ業界に加わり、自前のスタートアップMyst(ミスト)を創業した(未訳記事)。

PMTAは、米国で販売される前に「公衆の健康保護に適切」と認めてもらうための広範にわたる細々としたことが多い、またコストもかかる官僚的な手続きだ。世界の電子タバコ製造ハブである深センに本社を置くRelxはこの申請手続きのために、サードパーティのコンサルサービスや申請に必要なデータを取るための臨床試験を行うパートナーなどを含む専属のチームを設置した。

米国マーケットで現在事業を展開するすべての電子たばこ企業は今年9月10日までにPMTAを提出する必要があった。これまでにFDAにマーケティング承認を受けた製品はない。

PMTAにかかるコストの高さは、中小企業の米国マーケット参入を阻んでいる。しかしRelxは費用を賄う財政的余力がある。同社はプロセスにかかるコストは2000万ドル(約21億円)を超えると予想している。Relxが委託したNielson(ニールセン)の調査では、4月時点でRelxは中国の電子タバコ市場のシェア70%を握っていることが示された。

電子タバコに伴うリスクが世界中の当局の注意を引くにつれ、Relxは電子タバコの公衆の健康への影響を調べる研究に資金を注いできた。今週あったイベントで、CEOのKate Wang(ケイト・ワン)氏は、同社がフォーカスしているものとして繰り返し「科学」を強調した。同氏は中国の主要テック企業では珍しく女性の創業者であり、以前はUber Chinaのゼネラルマネジャーだった。

同社は最近、深センに生物科学ラボを開所した。生体そして試験管でのテストを通じてRelxの電子タバコの影響を測定し、また臨床前安全評価を行う。

従来タイプの喫煙から電子タバコへの切り替えのメリットを証明するための取り組みを続けているにもかかわらず、Relxとライバル企業はさまざまなマーケットで規制の変更に直面している。トランプ政権はフレーバー付きの電子タバコを昨年禁止した。なお、RelxはFDAの審査にフレーバーが付いていない製品を提出する計画だ。一方、インドは若年層の健康に悪影響を及ぼすとして電子タバコ自体を禁止した。

変わる規制にどのように対処するのかイベントで尋ねられたRelxのCEOは「当社はさまざまな国の当局と良い関係を保っている」と述べた。

「まだプロセスの最中である物事について結論を下すことはできない」と話し、電子タバコ業界が初期段階にあることに言及した。

画像クレジット:Relx’s new bioscience lab in Shenzhen / Relx

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

建設・土木の生産支援サービスのフォトラクションが「建設テック カオスマップ 2020年9月版」を公開

建設・土木の生産支援サービスのフォトラクションが「建設テック カオスマップ 2020年9月版」を公開

建設・土木の生産支援サービス「Photoruction」(iOS版Android版)を開発・運営するフォトラクションは、国内で展開されている建設業向けITサービスをまとめた建設テックのカオスマップ 2020年9月版を発表した。

建設業の方が、ITソリューションを導入する最初のステップとして、どんなサービスがあるのか参考にできるように、国内開発および業務で役立ちそうなサービスを中心にまとめているという。

主な11カテゴリーの概要は以下の通り。

  • プロジェクトマネジメント(戸建・リフォーム): 小規模な建築を建てる際の生産性向上を目的としたサービス
  • プロジェクトマネジメント(建設・土木): 建設プロジェクトの生産性を向上させるための事業者向けサービス
  • コストマネジメント: 見積や積算など、建物のお金に関することを扱うサービス。原価管理なども可能で、会計ソフトと連携するものも多い
  • マッチング: 建設産業に関連してニーズがある法人や個人をマッチングするサービス
  • 工程管理: いつ誰がどんな作業をするのか、建物を建てるための工程表を作成したり管理するためのサービス。日本ではネットワーク工程表という特殊な表現手法があり、独自な進化を遂げたものが多い
  • ドキュメント作成・管理: 膨大な書類を整理したり、作成を効率化するためのサービス。現場においてモバイルで書類作成できるサービスや、元請・協力会社間でグリーンファイル(労務安全書類)をやり取りできるものがある
  • 検査: 検査を効率化できるサービス。建築には「配筋検査」と「仕上検査」が存在しており、それらの業務フローに特化した機能を有していることが多い
  • 工事写真管理: 工事現場では正しく施工されたか確認するため、写真が唯一の証拠として使われている。大きい工事では数十万枚と撮影するケースがあるため、効率化するサービスが存在する
  • 図面管理: モバイル端末が普及したことで、現場で図面を持ち運びたいニーズに応えるために生まれたサービス
  • チャット: 工事現場のコミュニケーション向けサービス。建設業に特化した機能が付いたチャットも出てきている
  • EC・マーケットプレイス: 建材や建機などをインターネットで選べるサービス。日本では材工共と呼ばれる、建材と労務とセットで提供するのが基本なため、なかなか出てこなかった
  • カタログ: 建材検索サービスや、建材・設備の3DモデルにあたるBIM(Building Information Modeling。ビム)オブジェクトの検索サービス。建築建材BIMオブジェクトは、設計図面に載せると完成予想3D CGを制作できるシステムに利用できる

関連記事
建設・土木の生産支援サービスのフォトラクションが5.7億円調達、AI導入で業務効率向上を目指す
建設業界に革命を起こすConTechスタートアップまとめ

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

バーチャルヒューマン「imma」や「plusticboy」「Ria」のプロデュースを行うAwwは9月3日、シードラウンドにおいて1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はCoral Capital。

バーチャルヒューマンとは、フォトリアルな3D CGクオリティで制作されたキャラクター。バーチャル・ビーイング、デジタルヒューマンとも呼称される場合がある。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

同社は、世界最高クオリティのバーチャルヒューマンをプロデュースするため、バーチャルヒューマンに最適化された基礎技術の結晶体「MASTER MODEL」を開発し、自社のバーチャルヒューマンだけではなく、パートナー企業や著名人とのバーチャルヒューマンプロデュースを積極的に行うとしている。

また、Epic GamesのMegaGrantプログラムのサポートを受け、同社Unreal Engineを用いた「リアルタイム3DCG」や「デジタルファッション」といった、「5G」「XR」「AI」「デジタルトランスフォーメーション」といったバーチャルヒューマンに関連する新規事業領域について、自社およびパートナーシップの双方から新規事業を推進。

具体的には、フォトリアルな3DCGをリアルタイムで動かすための「リアルタイム3D CG」の開発、デジタルファッション領域、また、AIや5Gを用いたバーチャルヒューマンの開発も行うとしている。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

同社は、⽇本初のバーチャルヒューマンカンパニーとして、2018年より複数のバーチャルヒューマンをプロデュース。2018年展開開始の「imma」は、Porsche、SK-II、IKEA、Salvatorre Ferragamo、Valentino、Amazon Fashionなどの著名なグローバルブランドのキャンペーンに起用。2020年には、アイスクリームのグローバルブランド「Magnum」のTVCM中に登場し、中国全土で放映された。

フォトリアルな3D CGによるバーチャルヒューマンのプロデュースを展開するAwwが1億円を調達

 

検索エンジンがWebサイトに”ペナルティ”を与える理由とは?

かつてほどではなくなりましたが、検索エンジンによる”ペナルティ”(あえて、こうした表現を使用しますが、Googleは”ペナルティ”という表現を用いません)は多くの議論を呼ぶトピックでした。特にSEOへの知識が乏しいWebマスターなどにとっては、大きな脅威であり、絶対に避けるべきものという認識があったと感じています。

しかし、ブラックハットの手法が蔓延していた時代は過ぎた今、”ペナルティ”はどう捉えられるべきなのでしょうか? 以前、GoogleのSearch Qualityチームにも属していた、カスパー・シマンスキー氏の記事を紹介します。

ペナルティは文字通り、応急処置として見られるべきだ。

検索業界で発生する討論において、検索エンジンのペナルティほど、反響を呼ぶ議題は他にない。

この繊細な話題に対する意見を一定の角度からしか持たず、少数のWebサイトを除き、全てのWebサイトがペナルティを受けているようだとする主観的な見解が強まっている。

しかし、情報が溢れているにも関わらず、確信よりも多くの誤解が蔓延しているようだ。

その結果、根拠のない恐れが、Webサイト運営者の間で拡大している状況を招いている。

Webサイトにペナルティを与えることを含め、Google検索に関わる仕事を経験してきた著者による個人的な見解に強く影響されている意見ではあるが、検索エンジンがペナルティをなぜ、そして、どのようにして与えるかを明らかにしたいと思う。

注視すべきは、検索市場の鍵となるプレイヤーである。今回の記事は、 DuckDuckGoEcosiaなどを含めた全ての検索エンジンを対象とした内容の提供は目指していない。

彼らは皆、ともすれば無気力な競争や散発的なイノベーションにとどまるようなものに対し、勇敢な努力を持って貢献しているが、これらの検索エンジンによるWebサイトへのペナルティを与えるアプローチは、今回の記事の主題を変えうるものではない。

多くの場合、検索エンジンによるペナルティは大きく恐れるものではないのだ。

なぜ検索エンジンはWebサイトにペナルティを与えるのか?

そもそも、検索エンジンは営利企業であり、彼らの主目的は、収益を作り出すことだ。

この目的を達成するためには、ユーザーの満足度を高く保ちつつ、運営費用は低く抑えなければならない。

同時に、製品としての検索は非常に複雑であると覚えておくことは重要だ。

ランキングをつけるための処理能力はもちろん、クローリングと処理の初期段階で求められるデータは大量であり、常に増加し続けている。

いかなる時も、全世界の利用可能なデータの約20%はすぐに消え去り、別の20%は変化の過程にあり、さらに別の20%は全く新しい、もしくは、誕生して間もないデータである。

逆説的には、変動は、検索におけるたった一つの定数要素である。それゆえ、拡張性のあるアルゴリズム的な解決が好まれることは、大きな驚きではない。ここで、検索エンジンのペナルティについてのよくある誤解の一つが生まれる。

検索エンジンの「アルゴリズムによるペナルティ」に影響を受けたサイトを紹介する実体験のレポートや数え切れない記事がある。どれもが、根本的に間違っている。

「アルゴリズムによるペナルティ」に影響を受けたWebサイトは、いまだかつて存在しない。アルゴリズムは、情報を計算し、結果を返すために設計された、純粋なインプット派生型の数学的公式なのである。

検索エンジンが理想通りに作用し、あらゆるインプットを十分に読み込めるほど完ぺきに近くなれば、この話は終わりである。こうした夢想的なシナリオでは、ペナルティなど存在しない。

しかし、そのようなことは起こり得ないことを我々は知っている。アルゴリズムは、常にテストを繰り返し、試行錯誤をしているにも関わらず、失敗することもあるからだ。

これが起こった場合、ペナルティは現実となる。アルゴリズムではなく、ルールの例外なのだ。

モチベーション、最も重要な目的、コスト意識などから、検索エンジンはペナルティを与えることに積極的ではない。

ペナルティを与えることはコストが掛かり、個別的で、限定的であり、再現が難しい(または不可能)。そして、最悪なことに、製品の改善に寄与しないのである。検索エンジンは、ペナルティを与えることを嫌う。

なぜなら、純粋なビジネスの観点からすれば、報酬を得られないからである。一般的なイメージと異なり、法的な問題はペナルティがまばらに与えられ、全ての事実が考慮されている理由とならない。

結局の所、検索エンジンに対する訴訟に成功し、裁判所の命令に基づき順位が回復した個人や組織はいないのである。検索エンジンとインデックスは私的な所有財産なのである。

なぜ、ペナルティのアプローチは異なるのか?

一言で言えば、ペナルティを与えることは、リソースの再設置を要する小規模なシステム障害の表れであり、あらゆる類の報酬が約束されない。

こう考えると、多くの検索エンジンが自身のリソースをペナルティの賦課に費やすことに積極的でないことがわかるだろう。

かつての巨大企業の中でも、検索の忘却へと徐々にスライドしていく前、別の時代の話として、Yahoo!は歴史的な例として挙げられる。

まだYahoo!がマーケットシェアを大きく獲得していた頃、完全にどちらか一方の戦略でなかったにせよ、厳格なアプローチを採用していた。

ガイドライン違反が発覚したWebサイトは、「ランキングの降格を受ける」、もしくは「違反内容が悪質であった場合は完全にインデックスから削除される」のどちらかであった。

これらの、いわゆる”判決”は、EDBと呼ばれるデータベースに、内部的には永久に格納された。”最悪なWeb”(WOW:worst of web)のロングテールのインデックスと同義ではないが、品質の低いコンテンツとして保存された。

EDBに格納されたWebサイトは、復活の期待もあった。「検索結果から消えたWebサイト」や「特定のキーワードで順位が改善されたWebサイト」などの状況を示す複数の熱心に作られたフォームがあり、悔い改めたWebサイトの運営者にとっての、救済を約束したものであった。後に、Yahoo! Site Explorerは、同様の双方向のコミュニケーションと解決機会を提供している。

より最近ではBing、特にGoogleは、よりニュアンスのあるアプローチを採用しているようだ。

BingのWebマスターガイドラインを違反したWebサイトに取るアクションは、ブラックハットSEOのテクニックがもたらす、望まれない影響を和らげるようにしている。それが実用的、もしくは、効果的でなかった場合、悪質なWebサイトのランキングは下げられ、もしくは、Bingの検索結果から完全に消去されてしまう。

しかしながら、Bing Webmaser Toolsからの事前の警告は期待できない。

究極的には、Bingのペナルティは永遠に残るようだが、自身の考えを後悔するWebサイト運営者に対しては、希望の光もある。

Bingは、Support Formを通して、双方向のコミュニケーションを提供している。返信までの期間は保証されていないが、個々のWebサイトのペナルティについて、Webサイト運営者が問い合わせることができるという事実は称賛に値する。

時間と努力は要するが、Bingによるペナルティは解消されうる。

Googleはきめ細かく、選択的で、違反内容によって固有の、より洗練されたアプローチを採用している。また、Google Search Console経由で、Webサイトの運営者へ積極的にアプローチしている。

ペナルティの影響に対する準備がないため、紛らわしいネーミングにも関わらず、メッセージは警告とは違うものとなっている。

Googleからのメッセージを受けとった時点で、そこに言及されているペナルティは、例えまだ実感できずにいようとも、すでに発動している。

公式には手動スパムアクションとして呼ばれる手動ペナルティに対し、Googleは一定の期間が経過した後の解除を容認している。

また、他の検索エンジンと異なり、Webマスター向けガイドラインに快く従う意志のあるWebサイト運営者に対し、良好な状態に戻すための、再審査リクエストと呼ばれる公式のプロセスを採用している。

ここで重要なことは、前述したドキュメントの中には、アルゴリズム的な実験の評価を行うエンジニアをアシストし、雇用された契約者によって排他的に使用される品質評価ガイドラインは何も関係していないということだ。

再審査リクエストには、より良く理解するだけの価値はあるが、公式な返答期間は存在しないと認識することが重要である。返信を受けるまでに、数ヶ月間かかる場合もある。それにも関わらず、Googleは送付されたリクエストの手動レビューを経験のある雇用者に委ねる方法を選んでいる。

Google Search Consoleから送られる情報は乏しく、再審査リクエストを送付しても、ガイドライン違反が解消されている限り、Googleの手動ペナルティの全てを抹消することは可能である。

なぜ、検索エンジンはWebサイトを気にかけるのか?

BingとGoogleはWebサイトのオーナーに対し、労働集約的で親切なアプローチを採っているが、一般の人々は検索エンジンの一部にある厳しいアクションのみを見ようとする。

フォーラムに投稿される「ペナルティを受けた」Webサイトの誇張された愚痴の99.9%が、SEOにおける不十分なシグナル(最適化されていないこと)が理由で生き残ることが難しくなっているという事実はほとんど知られていない。こうした議論の殆どのケースが、実際にはペナルティを受けていないサイトを指している。

一貫した悲観的な意見は、検索エンジンが個々のWebサイトを気にかけている可能性を、あらゆるオンライン業界について示唆している。気がつけば、検索エンジンを感情的に好いたり嫌ったりする意見が芽生えてきた。これは根本的に間違っている。

なぜなら、検索エンジンは個々のWebサイトや、それらの検索結果でのパフォーマンスに対して、全く関心が無いからである。

検索エンジンの興味は、ユーザーの満足度のみである。特定のクエリに対する個々のWebサイトのビジビリティは、結果には影響しない。これが、検索エンジンがWebサイトにペナルティを与えることや、過去に与えたペナルティを解除することに、一部のリソースしか割いていないことの理由となる。

この冷静な姿勢に対する裏返しが存在する。ペナルティの解除や回復のみならず、不正行為を防ぐこともできるのだ。

既知の不正行為との関連という理由でペナルティを与えられることはなく、こうしたWebサイトの検索結果におけるビジビリティは、過去の水準以上に達することもある。

ペナルティをどう捉え、対処するか?

ペナルティは文字通り、応急処置として見られるべきだ。

ペナルティは時折、ほぼ例外的な規模の場合がある。検索エンジンにとっては、反響を呼ぶ議論などではなく、痛い点であるのだ。迅速に対処すべきものではあるが、運営におけるメインステージでは決して無い。

検索エンジンが、オンラインマーケターのような小規模な特定のグループのために、ペナルティの問題へ僅かながらでもリソースを割り当てたことは、信用に値する。

しかし、発生頻度は稀であることから、ウェブマスターのコミュニティ内で不当な注目を集めていると言えるだろう。

検索エンジンのペナルティは、非常に恐ろしい恐怖ではなく、オンラインでの生活と商業における事実として見られるべきだろう。

ドライバーが車を運転するたびにタイヤがパンクしてしまうことなど無いように、例えタイヤがパンクしてしまったとしても、それがそのドライバーに永久的に影響することはないはずだ。

技術の優れたWebマスターやサイト運営者でも、どこかの時点で、検索エンジンのペナルティに対処した経験はあることだろう。プロとしてのキャリアの中で、複数のペナルティを経験したこともあるかもしれない。

そうだとしても、これらがキャリアにおける致命的な瞬間になることは考えにくい。それらは、わくわくする冒険の中で出会ったデコボコの道に過ぎない。

そして、ペナルティに対処する中で得られた経験が、今まで経験したことのないオンラインでの成長を導くことになるはずだ。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Search engines penalize websites – but why?」を翻訳した内容です。
「検索エンジンはWebサイトにペナルティを与えることに積極的ではない。なぜなら彼らの注力はユーザーの満足度であるからだ。」という意見は非常に説得力があると思います。

検索エンジンは好んでペナルティを与えるのではなく、ガイドラインを違反したサイトに対し、それがユーザーの満足度に悪影響を与えるため、然るべき処置を行う、といった形でしょうか。

また、あくまでユーザーの満足度を第一としたアルゴリズムの作成に取り組んでおり、その結果として順位が下降するWebサイトも存在する、ということでもあると思います。

こうした背景を考えたところで、Webサイトに対する施策(より良いWebサイトを作る)が変わることはありませんが、その重要性をより実感できた記事でした。

メールマガジン購読・SEO Japan Miniのご案内

SEO Japanの記事更新やホワイトペーパーのリリース時にメールにてお知らせいたします。

SEOを始めとしたWebマーケティングの情報を収集されたい方はぜひご購読ください。

>>SEO Japanのメールマガジンを購読する

投稿 検索エンジンがWebサイトに”ペナルティ”を与える理由とは?SEO Japan|アイオイクスのSEO・CV改善・Webサイト集客情報ブログ に最初に表示されました。

法人向け無線メッシュネットワーク技術のPicoCELAが資金調達を完了

法人向け無線メッシュネットワーク技術のPicoCELAが資金調達を完了

PicoCELA(ピコセラ)は8月18日、第三者割当増資および長期投資による資金調達を完了したと発表した。調達額は非公開。引受先は、清水建設、双日、日本郵政キャピタル、岡三キャピタルパートナーズの4社。調達した資金は、事業の拡大、独自の無線通信技術を基盤としたエッジクラウド連携ソリューションの拡充に利用する。

PicoCELAは、2008年の創業以来、世界最高の無線メッシュ技術の開発と実用化を目指してきた。国内外で200サイト以上の運用実績を有しており、年間のべ利用者数は100万人以上に達するという。多くの導入箇所で7割以上のLANケーブル削減に成功し、建設現場や物流倉庫などのIoT普及を促進させる技術のひとつとして注目されているとしている。

また、コロナ禍におけるテレワーク環境の早期構築実現を支援する「ケーブルいらずを提供。これらのエンタープライズ無線メッシュ製品群は、VPN接続によるセキュアなテレワーク環境を、本社オフィスでのWi-Fi環境と同等レベルで構築可能としている。

またクラウド管理システム「PicoManager」を活用することで、テレワーク環境下の労務管理にも利用できる。

今後も人々の生活空間に偏在する情報とインターネットを今以上にフレキシブルに結びつけて、情報通信産業に革新的な数々のサービスをもたらす立役者となるよう努めるとしている。

 

デジタル画像の父ラッセル・キルシュが91歳で逝去

1950年代からデジタル画像の研究を始め、現代のデジタル画像分野全般の基礎を築いたRussell Kirsch(ラッセル・キルシュ)氏が91歳で亡くなった。キルシュ氏の功績には、いかなる誇張も及ばない。その研究は、世界初のデジタル画像スキャンを実現させ、私たちがピクセルとして親しんでいるものを生み出した。

1929年、ロシアとハンガリーの移民の両親から生まれたキルシュ氏は、ニューヨーク大学、ハーバード大学、MITで学び、やがて米国規格基準局(後の米国立標準技術研究所、NIST)に就職し、引退するまで同研究所に勤務した。

50年間にわたり、さらに引退後も継続して研究、コード作成、理論構築を続けてきたが、もっとも有名な功績は、なんと言っても世界初のスキャンニングによるデジタル画像だろう。最初のデジタルカメラが登場する数十年も前のことだ。

その研究は、コンピューター(もちろん当時は部屋を満たすほどの大きさだった)はいずれ人の心や知覚をシミュレートするようになるという観点から出発している。私たちはいまだにその課題に取り組んでいるわけだが、キルシュ氏が1957年に達成した視覚のシミュレーションは、大きな一歩となった。

SEACスキャナーと後ろにコントロール・コンソール。キルシュ氏の同僚R.B.トーマス氏がスキャナーを使っているところ(画像クレジット:NIST)

キルシュ氏の研究グループが使用したのは、「小さな画像を固定した回転ドラムと、その反射光を感知する光電子倍増管」だ。彼らはグリッドを使った画像サンプリングに代えて、周期的に穴を開けた、ピクセルを構成するマスクをあてることにした。もっともピクセルという名称が用いられるようになるのは、まだ数年先のことだが。

装置から見える画像の各部分の反射率を測定し、その結果を米国初のプログラム内蔵型電子コンピューターSEACが管理するデジタルレジスターに保存することで、システムは、実質的に外の世界が見えるようになった。設定を変えて繰り返した数回分のスキャン結果を組み合わせれば、グレースケール画像の保存と表示が可能になった。

その画像がキルシュ氏の当時3カ月になる息子Walden(ウォールデン)の写真だったというのは、感動的な話だ。オリジナルの解像度は縦横179ピクセル。60年以上も前のものにしては、決して悪くない。下の画像は少し見栄えを良くしたバージョンだ。当時どう見えていたかがわかるよう、高解像度画像にしてある。

画像クレジット:NIST

この基礎研究は、デジタル画像の手法、アルゴリズム、保存技術の確立に直接貢献し、その後数十年間のコンピューター科学に影響を与えた。キルシュ氏は、引退の直前まで初期のAI研究を行っていたが、引退後も続けて、低解像度でも鮮明に見える適応型ピクセルという概念の研究に取り組んでいた。この考え方にはそれなりの長所はあるものの、今はもう当時と違い、メモリーや通信速度のボトルネックはさほど問題ではなくなってしまった。

キルシュ氏と、今も子供たちとともに健在な妻は、生涯を通して旅行家であり、登山家であり、アーティストでもあった。そうした豊かな人生が彼の重要な研究に貢献し、逆にその研究が彼の人生を豊かにしていたことは疑いようがない。

ラッセル氏の追悼記事と弔問記帳はこちら

画像クレジット:Russell Kirsch / NIST
[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

本田圭佑氏・元ネスレ高岡氏・元FiNC溝口氏率いるファンドが完全審査制シェアオフィスの入居者募集

本田圭佑氏・元ネスレ高岡氏・元FiNC溝口氏率いるWEIN挑戦者FUNDが完全審査制シェアオフィスの入居者募集

WEIN挑戦者FUNDは8月12日、夢や志が社会に向き、その実現にむけて邁進する「挑戦者」と、その挑戦を⽀える「⽀援者」限定の完全審査制シェアオフィス「WEIN 挑戦者STUDIO」の入居者の募集を開始した。

WEIN挑戦者FUNDは、サッカー選手であると同時にスタートアップ界隈では投資家としても知られる本田圭佑氏、2020年3月末までネスレ日本の代表取締役社⻑兼CEOを務めていた高岡浩三氏、ヘルスケアスタートアップFiNC Technologies創業者の溝口勇児氏の3人が共同ファウンダー兼代表パートナーとなっているファンド。事業概要は大きく「スタートアップ投資」「自社事業」「共同事業」の3つで、共通キーワードはWEINの由来である「Well-Being」(ウェルビーイング)という概念(WEINはWell-Being+LINKの造語)。

WEIN挑戦者STUDIOは完全審査制のシェアオフィスで、所在地は東京都港区海岸1-4-22 SNビル。⾦銭⾯における⽀援の一環として、⼊居時の初期費⽤は無料。利用者の⽉々の⽀払いは家賃のみで、会議スペースの利⽤料、通信費、備品費などのコストも発⽣しない。また最短1ヵ月のみの契約も受け付けている。

本田圭佑氏・元ネスレ高岡氏・元FiNC溝口氏率いるWEIN挑戦者FUNDが完全審査制シェアオフィスの入居者募集

入居者の審査は代表パートナーが担当し、このオフィスから新たな挑戦に挑む挑戦者とそれを⽀える⽀援者が集うコミュニティを⼊居者の皆様とともに創り上げる。審査を通過した挑戦者と⽀援者には、WEIN 挑戦者STUDIOが⼈材・ノウハウ・つながり・お⾦といったあらゆる⾯でサポートするという。

本田圭佑氏・元ネスレ高岡氏・元FiNC溝口氏率いるWEIN挑戦者FUNDが完全審査制シェアオフィスの入居者募集

WEIN挑戦者STUDIOには、挑戦者を⽀える各ビジネス領域の専⾨家が在籍。資⾦調達の戦略、プロダクト初期のマーケティング戦略、コアメンバーの採⽤活動など、挑戦者たちの悩みを解決し、事業成⻑を⽀援する各ジャンルの専⾨家が、戦略からオペレーションまで⼀気通貫でサポートを行う。専⾨家への相談はオフィスナビゲーターが無料でコーディネートする。

本田圭佑氏・元ネスレ高岡氏・元FiNC溝口氏率いるWEIN挑戦者FUNDが完全審査制シェアオフィスの入居者募集

また、新たな挑戦のきっかけとなる⼊居者同⼠の交流イベントや、各ビジネス領域を代表する経営者や起業家などによる⼊居者限定セミナーを定期的に開催。同じオフィスで共に挑戦する同志の⽬標を共有したり、最先端のビジネストレンドを学べるため、WEIN 挑戦者STUDIOから次世代を担う企業が同時多発的に⽣まれていくことを目指す。

その他、WEIN挑戦者FUNDが運営する21世紀の課題解決に挑戦する仲間が集うクローズドコミュニティ「WEIN 隊」のメンバーも、WEIN 挑戦者STUDIOに集結。⼊居企業のプロジェクトやWEIN主催イベントなど様々な挑戦に向け共に挑むとしている。

関連記事
本田圭佑氏、元ネスレ高岡氏、元FiNC溝口氏が新ファンド設立で「21世紀の課題に挑む挑戦者」支援へ
「本田圭佑に限界なし」ケイスケ・ホンダ、YouTuberになる

不動産管理会社・不動産投資家向け資産運用・管理のWealthParkが9億700万円を調達

不動産管理会社・不動産投資家向け資産運用・管理のWealthParkが9億700万円を調達

WealthParkは8月5日、シリーズBラウンドとして総額9億700万円の資金調達を完了したと発表した。累計調達額は計18億9800万円となる。引受先は、SBIインベストメント(SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合)、みずほキャピタル(みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合)、あおぞら銀行、日本政策金融公庫、国内外複数の個人投資家。

WealthParkは、主力事業として、不動産領域における資産運用・管理プラットフォームを不動産管理会社向けを中心として展開。2020年7月末現在、70社超の不動産管理会社、1万3000名以上の不動産投資家がサービスを利用しているという。また複数の海外管理会社にもサービスを提供しており、不動産投資家のニーズに対応したクロスボーダー展開も進めている。

不動産管理会社・不動産投資家向け資産運用・管理のWealthParkが9億700万円を調達

今後は、金融機関との連携による電子取引利便性の向上や各種手続きのオンライン化を計画しており、不動産管理会社、不動産投資家により多くの機能をオンラインでデジタルに提供することを計画。また同社提供のプラットフォームは「不動産」の領域にとどまらず、「テクノロジー」をキーワードに、不動産管理会社とともに、「ウェルスマネジメント」の領域へと事業領域を拡大していくという。

WealthParkは、不動産管理会社向けに、業務効率化・管理支援ツールを提供。また不動産管理会社と、その顧客である不動産オーナー間のコミュニケーションツールとして、4言語(日本語・英語・繁体字・簡体字)対応のモバイルアプリ(iOS版Android版)を用意。6ヵ国・地域でサービスを展開している。

倫理的データ慣行の青写真を描くための4つのステップ

編集部注:本稿を執筆したJoel Shapiro, JD, Ph.D.(ジョエル・シャピロ、法務博士、医学博士)氏はケロッグ経営大学院でデータ分析研究を行う臨床准教授であり、ケロッグの分析コンサルティング研究室の運営にあたっている。

もう一人の執筆者であるReid Blackman, Ph.D.(レイド・ブラックマン、医学博士)氏は、 Virtue(バーチュー)の創設者兼CEOであり、 企業と協力し、新たなテクノロジー製品の開発、展開、調達と倫理的リスクの低減を統合させる取り組みを行っている。

2019年、UnitedHealthcare(ユナイテッドヘルスケア)のヘルスサービス事業部門、Optum(オプタム)は、50の医療機関に機械学習アルゴリズムを展開した。医師と看護師はこのソフトウェアを用いて糖尿病、心臓病、その他の慢性疾患を持つ患者をモニターし、また患者が処方箋を管理したり受診予約を入れたりするのを支援することができるようになった。しかし、研究の結果、このアルゴリズムがより症状の重い黒人患者よりも白人に注意を払うよう推奨していたことがわかり、Optumは現在調査を受けているところである。

今日、データや分析を主導する責任者は、データに基づき価値を生み出すことを任されている。彼らの技能や権限を考えると、彼らは社内で倫理的データ慣行を推進する責務を持つ特殊な立場にある。運用化可能で、かつ拡張性および持続性を備えたデータ倫理フレームワークが欠如していると、質の劣ったビジネス慣行、関係者からの信頼に対する裏切り、ブランドに対する評判の低下、規制当局による調査、訴訟などのリスクを招く。

以下に、データ責任者/サイエンティストおよび分析責任者(CDAO)が社内で倫理データ慣行およびビジネス慣行のフレームワークを構築する際に実践すべき4つの重要なポイントをまとめた。

組織内の既存の専門家グループを見出し、データリスクの処理にあたらせる

CDAOは分析の経済的機会を見出し実行する責任があるが、機会にはリスクが伴うものである。データが、顧客保持やサプライチェーンの効率を高めるなど、社内向けの取り組みに使用されることもあれば、顧客向け製品やサービスの開発のため使用されることもあるだろう。しかしどちらにせよ責任者はデータの使用に伴うリスクを特定し低減する必要がある。

倫理的データ慣行を打ち立てるにあたり最善の方法であるのが、データガバナンス委員会など、データ倫理フレームワーク構築のためにプライバシー、コンプライアンスやサイバーリスクの問題に既に取り組んでいる既存のグループに目を向けることである。倫理フレームワークを既存のインフラストラクチャーに組み合わせると、導入を効率良く進めることができ、成功の確率も高まる。あるいは、そのようなグループが存在しない場合は、組織内から関連知識を持つ専門家を募り新たなグループを立ち上げる必要がある。データ倫理を管轄するこういったグループが、データ倫理における原則を公式化し、開発中または既に展開されている製品やプロセスにこれらの原則を適用することに対しての責任を担うべきなのだ。

データ収集および分析における適切な透明性とプライバシーの保護を確保する

あらゆる分析やAIプロジェクトには、データ収集と分析戦略が必要である。倫理的にデータ収集を行うには、人々からデータを取る際十分な説明を行い同意を得たり、GDPRへの準拠など法的コンプライアンスを確保したり、個人を特定することが可能な情報を匿名化処理し、逆行的手法で個人が特定されないように対処してプライバシーを保護するなどの実践が必須である。

プライバシー保護などのこれらの基準の一部は、必ずしも厳格な要件を提示しているわけではない。CDAOは、倫理的な正しさと彼らの選択がビジネスに与える影響について、適切なバランスを見極める必要がある。その後、これらの基準は製品管理者の責務へと置き換えられ、今度は彼らが、現場でのデータ収集がこれらの基準に従って行われるよう責任を持って管理することになる。

またCDAOは、アルゴリズム上の倫理や透明性を重視する姿勢を取らなければならない。例えば、AI駆動形の検索機能または推奨システムの予測精度を最大限に高めるよう努め、ユーザーが知りたいと望んでいることに対し最善の予測を提供すべきだろうか?マイクロセグメンテーションを行って、結果や推奨を他の「類似の人々」が過去にクリックしたものに限定するのは倫理的と言えるだろうか?実際には予測的性質はないが、第三者にとって利益が最大化される結果や推奨を含めるのは倫理上問題がないだろうか?アルゴリズムの透明性はどれほどのレベルが適切なのか、そして、ユーザーはどの程度それを気にかけているのか?堅牢で倫理的な青写真を描くには、こうした決定を行うための訓練や経験を十分に経ていないデータサイエンティストや技術開発者個人に判断を押し付けるのではなく、こういった課題に体系的かつ細心の注意を払って取り組む必要があるのだ。

不公平な結果を予測し、回避する

部門責任者や製品責任者は、不公平で偏りのある結果を予測する方法についての指針が必要である。不公平や偏りは、単に収集時にデータのバランスが取れていないことが原因で発生することがある。例えば、10万人の男性の顔と5000人の女性の顔を使用して訓練された顔認識ツールでは、性別で効果に違いが出る可能性が高いだろう。CDAOはバランスの取れた代表的なデータセットを確保しなければならない。

もう一つの偏りは、それほど目立たないが、今述べた偏りと同様に重要である。2019年、 Apple Card(アップルカード)とGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)はクレジットの貸付額増額の判断において、男性を女性より有利に扱っているとして非難を受けた。Goldman Sachsは、貸付金額の決定要因は性別ではなく、あくまでも信用度であると主張したが、女性が信用を構築する機会が男性に比べ少なかった歴史的事実は、アルゴリズムが男性に有利に働く可能性が高いことを意味した。

不公平を緩和するため、CDAOは技術開発者や製品責任者をサポートし、公平性についての認識を高める必要がある。コンピューターサイエンスの文献には公平性についての指標や定義が数え切れないほど提示されているが、データが最終的にどう使用されるのかを詳しく説明できる事業責任者や外部の専門家からの協力無しに、開発者が適切な指標を選ぶのは難しい。公平性についての基準が選択されたら、データ収集者が確実にこの基準を満たすよう、効果的に伝達される必要がある。

倫理的リスクの特定プロセスと組織構造を調整する

CDAOは多くの場合、次の2つのうちどちらか1つの方法を用いて分析機能を構築する。1つは、中核となる拠点を介し組織全体にサービスを提供する方法。もう1つは、データサイエンティストや分析のための投資がマーケティング、ファイナンス、運用など特定の部署に配置される、分散型モデルに基づいた方法である。組織構造を問わず、倫理的リスクの特定に向けたプロセスと規範が明確に伝達され、適切に奨励される必要がある。

重要なステップは以下の通りである。

  • データ倫理を扱う組織と部門やチーム間の結びつきを構築することにより、説明責任を明確に確立する。これは、各部門やチームが倫理問題に目を配る「倫理責任者」を各々指定することで実現可能だ。責任者はデータに対する懸念をデータ倫理組織に報告し、組織は既存のデータの増強、透明性の向上、新たな目的関数の作成など、緩和戦略について助言を行う。
  • データやAI倫理に関する教育とトレーニングを通し、一貫した定義とプロセスを各チーム内に浸透させる。
  • 社内チーム間の協力関係を促進し、他の分野の例や研究を共有することにより、倫理的問題の特定と修正に対するチームの視野を広げる。
  • 金銭的な報酬、または他の手段を用いてインセンティブを付与し、倫理的リスクを特定し緩和することに価値を置く社風を醸成する。

CDAOはデータを戦略的に使用し展開することで新製品の収益を促進し、社内における一貫性を高める責任を持つ。現在、あまりに多くの事業責任者やデータ責任者が倫理的問題が持ち上がった際、単純に決定の良い点と悪い点を比較することで「倫理的」であろうとしている。この近視眼的視点は不必要な評判低下のリスクや、金銭的および組織的リスクを生み出す。データへの戦略的アプローチがデータガバナンスプログラムを必要とするのと同様に、優れたデータガバナンスには、倫理プログラムが必要なのである。つまるところ、優れたデータガバナンスとは倫理的データガバナンスなのである。

関連記事:2020年の変化に人は適応し始めているがAIは苦労している

カテゴリー:その他

タグ:倫理 コラム

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

インテルとボーイングという米国を支える2本の大黒柱は政府から延命処置を受けるも予後に暗雲

Intel(インテル)とBoeing(ボーイング)。米国工業界を支える2本の大黒柱だ。

Intelは世界最高水準のチップをいくつも製造し、数十年にわたってコンピューターの性能を限界まで高めつつ、時価総額2000億ドル(約21兆2000億円)という組織を維持し、11万人の従業員の生活を支えてきた。一方、Boeing747型機の引退(The New York Times記事)を経てもなお、航空業界のグローバルリーダーの地位を保ち続け、660億ドル(約7兆円)の収益で、900億ドル(約9兆5300億円)の時価総額と15万3000人を超える従業員を支えている。

だが古代ローマの石の柱と同様、これらの柱もかつての機能を支える単なる骨組みと化してしまった。風雨に浸食され、疲労し、崩れかけている。どう見ても、前の世代で頑張ってきたように米国の経済を支え続けるのは無理なようだ。今後もイノベーションの先陣を切って走り続けられるように、米国のこの極めて重要な産業を支持していくのはもう難しい。

この数十年の長きにわたり、米国は産業空洞化の嵐に吹きつけられてきた。まずそれは繊維、消費者向けの小型機器、家電品といった軽いものから始まったのだが韓国、ドイツ、台湾、中国、タイ、トルコなどの輸出主導型の国々が高度な能力を持つようになり、その製造の幅を拡大し、海外にどんどん進出するようになった。

今や、米国工業界の例外主義の象徴である絶対にして最強の二本柱は、根深い脅威にさらされている。とりわけインテルは、最悪の立場にある。次世代の7ナノメートルノードの製品化は2021年に持ち越される(BBC NEWS記事)こと、さらに一部の製造を外注に回すという残念なニュースが報じられると、ウォールストリートに荒波が立ち、わずか2週間でインテルの株価は20%も下落した。台湾のファウンドリー業者であるTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の技術は、インテルよりも数年進んでいる(Financial Times記事)と信じるアナリストも増えている。

かたやボーイングは、2018年10月に最初の墜落事故を起こした737 MAXの大失敗がいまだ尾を引いている。それだけでも十分にこの企業を弱体化させている(The New York Times記事)が、そこに新型コロナウイルス(CNBC記事)と、国際運輸の崩壊(BBC記事)が追い打ちをかけた。ボーイングの前途は、2年前の予測をはるかに上回る危機に見舞われている。

このスローモーションの大惨事への米国最初の対処策が、経済支援という昔ながらの政策危機ツールだった。インテルは米国の半導体産業の死を最も明確に表しているが、これはインテルに限った話ではない。この穴を埋めようと、米連邦議会は半導体業界に対して大きな奨励策を打ち出した。2週間前、テキサス州選出の共和党のJohn Cornyn(ジョン・コーニン)上院議員は、2020年度の防衛予算法案の補正案に、超党派の幅広い支持(米国議会資料)を得た。これにより、米国のチップ産業推進のために数十億ドル(数千億円)の資金とインセンティブが供与されることになる。

それに対してボーイングは、民間投資家による負債コンソーシアムに資金運用を依頼する(Bloomberg記事)前に、600億ドル(約6兆4000億円)の経済支援を政府に求めていた。だが、ボーイングは米国政府から別の形の支援(Mother Jones記事)も受けている。同社の収益の3分の1は防衛関連だ。つまり、ペンタゴンに大きく支えられているわけだ。製造業者への政府の経済支援は、2020年もまったく問題なく進められることになる。

だが、これの企業へ潤沢な資金を投入したところで、内部に広がる腐食を止めることはできない。どちらも激しい国際競争によって優位性を削り取られてゆく中、企業文化はエンジニアリング中心から利潤最大化型へと転向している。繰り返しになるが、ボーイングはインテルよりはまだ安全だ。Airbus(エアバス)は、イノベーションにおいて以前からそれほど優れていたわけでなく、A380型機のような戦略ミス(BBC記事)もあった。中国の機体メーカーであるCommercial Aircraft Corporation(中国商用飛機)は着実に進歩はいているものの、まだ第一線で戦える企業ではない(Reuters記事)。

これは業界の方針が間違っていたのではなく、米国の産業政策が目を覆いたくなるほど無能だったということだ。

台湾は、その半導体の卓越性を国の経済の要と位置づけた(Harvard Business School記事)。韓国は、K-POPや韓流ドラマといった文化製品を政府の最優先産業に定め(American Affairs記事)、今では世界中で大きな伸びを見せている。なかでも中国が経済発展の基盤として主要産業を支援していることはよく知られているところであり、この3年間は大成功を収めた。例を挙げればキリがない。

その違いは何なのだろう?ひと言でいえば戦略だ。どの成功例を見ても、政府がインセンティブと政策変更によって新規産業の立ち上げを支援し、さらにこれらの産業が、与えたインセンティブに対して確実に利益を戻してくれることになる他に類のない知的財産を築き上げられるように仕向けている。

それに引き換え米国は、常に最悪のタイミングで資金のばらまきを行っている。新規産業の創出を奨励せず、倒れかけた産業に駆け寄り、荒れ地や枯れ木林に現金の肥料をばらまいているのだ。

チップ産業を立て直そうと議会が数十億ドル(数千億円)を投入する一方で、トランプ政権は7500万ドル(約80億円)の量子コンピューター戦略(THE HILL記事)を発表した。米国を高度なコンピューターの開拓に駆り立てようという狙いだ。中国は5G無線技術に数十億ドルを投資している(Bloomberg記事)が、それに対して米国が拠出したのは、農村部の無線通信テストベッドに数十万ドル(数千万円)だ

経済超大国である米国は、単純にあらゆるものが世界最高で、国民は望めば最高の職業に就けるのが当たり前という世界に生きてきた。産業は崩壊することもある。政府の政策はうまくいかないこともある。学校も大学は、教育がまるで非効率になってしまうこともある。だが、この巨大な産業界に太刀打ちできる国など今までほとんどなかったため、そんな問題を気にする者はいなかった。

今や、多くの国々が工業製品や文化製品で大きな競争力を持つようになった。競争力が付いただけではない。彼らはその分野の勝利を確実にするために、全力で当たってくる。台湾はさまざまな不確定要素のために半導体ではあまりうまくいっていないが、素晴らしいのは経済のグローバル化や中国の台頭といった変化を乗り越えるべく、その得意分野を最優先させるよう経済、教育システム、政府を全体的に動かしたところだ。

もちろん、今でも資金や才能を備えた巨大企業であるインテルとボーイングには、まだチャンスがある。しかし米国の製造業界で倒れていった企業の歴史をひとつずつ振り返ると、不吉なデジャブを感じざるを得ない。あのとき、私たちはやり方を間違えた。果たして私たちには、それを正しくやれる素質があるのだろうか?

画像クレジット:Douglas Sacha / Getty Images

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

自社株を売れない創業者たちへ、分散化のすすめ

編集部注:本稿を執筆したPeyton Carr(ペイトン・カー)氏は、創業者や起業家およびその家族の財務アドバイザーとして、財務計画や投資に関するアドバイスを行っている。Keystone Global Partners(キーストーン・グローバル・パートナーズ)の代表取締役社長。

シリーズ前回の記事では、自社株集中型の投資を自分の投資計画全体の中でどのように位置づけるべきかを熟考する方法について考えた。今回は、自社株をなかなか売れない人がいるのはなぜなのか、その理由について詳しく見ていきたい。

初めて自社株集中型の投資をする人の多くが、「自社株に集中的に投資すれば、いずれ莫大な利益を手にできる」という神話のような思い込みをしている。本記事では、集中型投資の実情を紐解くとともに、ポートフォリオの分散化が堅実な選択肢である理由を説明する。

ポートフォリオ分散化にはどのようなメリットがあるのか、自社株をどの程度保有すると過剰集中になる得るのか、さらに、ポートフォリオを戦略的に分散させるためにどのような選択肢を検討できるのか、といった点について学べる記事になっているので、ぜひ最後までお読みいただきたい。

自社株集中型の危険性

自社株集中型のポジションを継続するか否かを検討する際に、いくつかの厳然たる事実を心に留めておく必要がある。

  1. 言うまでもなく、すべての株をアップルやアマゾンの株と同じように考えてはならない。Hendrik Bessembinder(ヘンドリック・ベッセンビンダー)氏が発表した研究によると、1926年以降の米株式市場全体の上昇のほとんどを、上場銘柄のうちパフォーマンス上位4%の企業が担っていたことが判明したという。残りの96%の銘柄の合計収益率は、米国短期国債の収益率とほぼ同じだ。1926年以降、上場全期間の利益率が米国1か月短期国債の利益率より低い銘柄は、米国株式市場の58%を占める。また、ラッセル3000指数(米国企業株のうち時価総額上位3000銘柄からなる株価指数)に登録されている全企業のうち40%の企業の時価総額が、1980年以降、各々の最高値から少なくとも70%は下落している。
  2. それでも、ブロードベースの銘柄では他の大半の資産クラスを上回る年間9%強のリターンを生み出しているのは、前述の上位4%企業の利益率が高いためだ。将来上位4%に入る企業を確実に言い当てることは誰にもできないが、分散化すれば上位4%の企業の株を必ず所有できる。
  3. 仮に、現在集中的に保有している特定の銘柄がアップルやアマゾンに匹敵する銘柄になるとしよう。しかし、どちらの株価もこれまでに90%を超える下落を経験しているという事実を忘れてはならない。それでも、大半の投資家はそのような下落が起こるという確信が持てず、同じ銘柄を保有し続ける。その銘柄がポートフォリオの運用益と純資産の大部分を占めている場合はなおさらだ。大暴落は、その企業自体とは関係のない業界または既存の脅威によって引き起こされることもあれば、その企業固有の事情によって引き起こされ、外部要因は一切無関係という場合もある。

新規IPOを達成した企業が上位4%に入る確率はルーレットで自分のラッキーナンバーに玉が入る確率よりもわずかに高い程度だ。あなたは、成功する投資ポートフォリオと、長期的な財政目標を達成する確率を、ルーレットを回すような方法で決めたいと思うだろうか。

分散化の利点

ボラティリティ(株価の変動率)が極度に高いと、運用益が低下することがある。以下の例は、ボラティリティの低い分散型ポートフォリオとボラティリティの高い集中型ポートフォリオを比較したものだ。単純平均利益率は同じであるにもかかわらず、低ボラティリティのポートフォリオの方が高ボラティリティのポートフォリオよりも実質的に高いリターンを生み出している。

Image Credits: Peyton Carr

単純に計算することはできないが、予期せぬ時にボラティリティが急上昇すると大幅な価格低下が起こることがある。価格が乱高下すると、投資家が感情的に反応して、賢明でない投資判断を下す可能性が高くなるためだ。このような「行動ファイナンス」の側面については記事の後半で説明する。ポートフォリオのボラティリティを低下させるのは簡単だ。ポートフォリオの分散化を進めるだけでよい。

米国の大手上場企業3000社で構成される株価指標であるラッセル3000指数は、95%強に属するどの単一銘柄よりもボラティリティが低い。では、ボラティリティを低く抑える代償としてあきらめるべき利益はどの程度のものなのだろうか。

Northern Trust Research(ノーザン・トラスト・リサーチ)によると、ラッセル3000株の利益率は年間平均5.96%で、中央値の利益率5.23%よりも0.73%高い。つまり、単一銘柄ではなくラッセル3000株を保有することで、壊滅的損失を被る可能性を排除できるということだ。ちなみに米国株式市場では、20%以上の銘柄が、20年間で年間平均10%を超える損失を出している。

この事実が過度の集中型ポートフォリオを避けることの重要性を証明しているとしたら、「過度の集中型」とは、特定銘柄をどの程度保有することを意味するのだろうか。また、そのような株はどの程度の価格で売るべきなのだろうか。

「自社株集中型」の定義とは

この記事では、保有している特定銘柄のポジションがポートフォリオの10%を超える場合に「集中型」のポジションとみなすことにする。厳密に定義する具体的な数字はない。集中度が適切なレベルかどうかは、必要な流動性の程度、全体的なポートフォリオ価値、リスク選好度、長期の資金管理計画など、いくつかの要因に左右される。ただし、10%を超えて、その単一ポジションのリターンとボラティリティがポートフォリオのパフォーマンスを左右し始めたら、ポートフォリオのボラティリティが高い状態と言ってよいだろう。

ポートフォリオを構成する自社株は、会社全体の財務リスクのわずかな部分にすぎない場合が多い。自社株以外のリスク源としては、制限付き株式、RSU(譲渡制限株式ユニット)、株式オプション、従業員株式購入制度、401k、その他の株式報奨制度、および会社の成功に応じた現在および将来の給与動向などが考えられる。大抵の場合、財務目標を達成するための賢明な方法は、ポートフォリオを適度に分散させることだ。

売りたくないと感じる理由

事実はどうあれ、より計画的なアプローチをとるよりも、自社株を集中的に持つことに魅力を感じるのは自然なことだ。現実を示す退屈な論拠よりも、ザッカーバーグやベゾスなどの数少ない成功例の方が輝かしく思えるし、実際、自分自身に賭けて莫大な利益を得る可能性がないわけではない。つまり、感情に負けてしまうわけだ。

しかし、ここで株に関する投資戦略と意思決定の根拠とすべきなのは、感情ではなく、自分の投資目標である。投資ポートフォリオとそれに含まれる自社株は、その目標を達成するためのツールとして使用するべきである。

そこでまず、意思決定に影響を与える行動心理学について詳しく見てみよう。

あらゆる証拠が「売り」を示しているにも関わらず、こんな心の声が聞こえることがある。

「この株は売りたくない」

こうした気持ちに抗いがたいのはなぜだろうか。これは人の自然な性である。筆者も同じ気持ちになることがある。人は、偏った見方を正当化し、そうした見方に影響を受けやすいことを信じまいとする、強い衝動を感じることがある。

自分が立ち上げた会社に執着するのは当然だ。何といっても、その株こそが今の自分に富を授けてくれたものであり、今後もそうしてくれる可能性があるのだ。確かに、集中的に保有している自社株を売って分散化するのはなかなか難しいものだが、大抵はその方が合理的な判断である場合が多い。

多くの研究によって、投資行動と心理学の間の相互関係について深い考察が行われてきた。データは自社株を集中的に保有すべきでないことを示しているのに、無意識のうちに発生している心理的障害と行動的バイアスに影響されて、集中的な保有を続けてしまうことがある。

このようなバイアスについて理解しておくと、株を売るかどうかを判断する際に役立つ。こうした行動的バイアスは気づくことさえ難しく、克服するのはなおさら困難だが、まずはその存在を認識することが克服への第一歩である。以下に、一般的な行動的バイアスをいくつか挙げてみる。自分に当てはまるかどうか、確認してみよう。

親密性バイアス:非常に多くの創業者たちが自社株を集中的に保有し続ける理由はおそらくこれだ。自分の知っているものは危険性が低いと考えるこのバイアスのゆえに、自社株は安全だと勘違いしてしまいがちだが、両者は別の問題だ。株式市場では、親密性と安全性は必ずしも連動しない。優良な(安全な)会社であっても株価が危険なレベルまで過大評価されることはあるし、ひどい会社でも株価が不当に過小評価されることもある。会社の質だけを見て、その会社の株が将来高い利益率を達成するかどうかを判断することはできない。重要なのは、その会社の質と株価との関係性である。

もう1つ、このバイアスが顕著に表れるのは、創業者が株式投資に疎く、所有している株は自社株のみ、というケースだ。このような創業者は、市場で取引するより自社株を自分で持っていた方が安全と考えるかもしれないが、実際は、自社株のみを保有するより市場で取引した方が安全であることが多い。

自信過剰:特定の個別銘柄を過度に集中的に保有する投資家は例外なく自信過剰になっていると言える。創業者たちは自分の会社を信じやすい。何といっても、IPOを達成するまでに成長してきた会社なのだから、自信を持つのも当然だ。しかし、この自信が株に関しては見当違いを生む。創業者は多くの場合、値が上がっている自社株を売るのを嫌がる。さらに上がると信じているからだ。自社株が売られている時でもやはり同じで、値が戻ると信じて疑わない。会社に対する強い愛着感が先に立って、客観的になるのが難しい創業者は多い。大抵の創業者は、自分は一般には知られていない独自の情報を持っており、自社株の「本当の」価値を知っている、と信じている。

アンカリング効果:一部の投資家は、過去に体験したことを固く信じ込む。集中的に保有している銘柄の株価が下がっても、その株には直近の高値が付くだけの価値があると信じて、売ろうとしない。しかし、この直近の高値というのは、本当の価値を示すものではない。本当の価値を示しているのは現在値である。買い手と売り手が現在入手可能なすべての情報を考慮した上で取引した結果として付いた値だからだ。

授かり効果:多くの投資家は、自分が所有している資産に対して、その資産を所有していない場合に付ける値よりも高い価値があると考える傾向がある。これが、売るのをさらに難しくする。授かり効果が発生しているかどうかをチェックするいい方法がある。「この株を今持っていなかったら、今日この価格で買うだろうか」と自問してみることだ。今日この価格では買わないとしたら、授かり効果が発生しているためにその株を保有し続けているだけ、という可能性が高い。

これを別の視点から見るには、IKEA効果の研究について調べてみると面白い。この研究では、自分が作ったものに対して、その価値を潜在的価値よりも高く評価することが証明されている。

このような背景を合わせて考えてみると、投資家は集中的に保有している銘柄を売るかどうかを判断する際に、かなり恣意的になる可能性があるということがわかる。こうしたバイアスはなかなか気づきにくいものだ。相談できる人、共同経営者、アドバイザーなどがいると有効なのはそのためだ。

大切なのは「流されない」こと

特定の銘柄を集中的に保有できている皆さんにはおめでとうと言いたい。簡単にできることではないし、将来大きな富につながる可能性があるからだ。ただ、集中型のポートフォリオを管理する方法にいわゆる「正解」はないと心得てほしい。人によって状況は異なるため、自分の状況に合った選択肢について専門家に相談することが絶対に必要だ。

まずは、達成したい具体的な投資目標を盛り込んだ財務計画を立てよう。何を達成したいのかを明確に理解できると、事実を新しい観点から見ることができるようになる。さらに、合理的な意思決定と投資行動がもたらすあらゆる影響と機会について考慮することにより、自社株を集中的に保有することの危険性とポートフォリオ分散化の利点に対する理解が深まるだろう。

戦略的に分散化するには

自分の株を普通の方法で単に売るだけなら誰にでもできる。しかし、分散化には他にもさまざまな戦略がある。最大限の節税に効果を発揮する戦略もあれば、望み通りのリスク・報酬バランスを達成するのに適した戦略もある。いつ売るのがベストかを知りたい人もいるだろう。シリーズ最終回となる次回の記事では、こうした点について説明する。

関連記事:スタンフォードの院生はVCに頼らずクラスメートから投資を受ける

カテゴリー:その他

タグ:投資 コラム

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

グーグルは新型コロナによる在宅勤務を2021年6月末まで認める方針

CNNによる報道を受けて、Google(グーグル)は来年、2021年6月末まで社員の在宅勤務を続けることを認めた。同社がTechCrunchに伝えたところによると、Sundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏はこの計画を米国時間7月27日に、従業員にメールで発表したという。

「従業員に先を見越した計画を立てられるように、オフィスにいる必要のない立場のための在宅勤務を、グローバルに2021年6月30日まで延長する」とCEOはメールに記載している。

この動きはグーグルにとって、これまでで最も積極的なリモートワークポリシーの延長となる。他の多くのテック企業と同様に、同社は数カ月後に事態が通常の状態に戻るかもしれないと、慎重ながらも楽観視していた。しかし最近では、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの脅威はすぐになくなるわけではないことが、明らかになっている。

ピチャイ氏は2020年5月に、社会的な距離感を維持し建物の稼働率を約10%に維持しながら、7月には少数の従業員がさまざまなオフィスに戻ることができるようにする計画を声明していた。同月、Twitter(ツイッター)は従業員が在宅勤務を継続できるようにするというメモを送っている

パンデミックがいつまで続くかにもよるが、最大級のテクノロジー企業でさえ、リモートワークへのアプローチを考え直しているようだ。

原文へ
(翻訳:塚本直樹 Twitter

「TENET テネット」が米国に先立ち8月に世界70カ所で先行公開、新型コロナの感染が抑えられない米国は9月から

「TENET テネット」は、映画ファンが劇場に戻ってくる指標になることをずっと期待されてきた。Christopher Nolan(クリストファー・ノーラン)監督は大ヒットメーカーであり、最悪のパンデミックの中で観客を夢中にさせられる人がいるとすれば、おそらく彼だろう。そして実際に、この作品は一種のリトマス試験紙の役割を果たしたが、それはWarner Bros.(ワーナー・ブラザース)の望んでいたものではなかった。

度重なる延期を経て、Tenetの新たな公開日が決まった。ただし、最終公開日ではない。新型コロナウイルス(COVID-19)に教えられたことがあるとするなら、物事は常に悪くなりうるということだ。しかし今のところ、このミステリアスなSFスリラーはレイバーデー週末の9月3日に北米の一部都市で公開される予定だ。

しかし、なんと同作品は世界70カ所の国と地域で来月、8月に公開される。そこにはオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、ロシア、英国などの名前がある。米国の映画館主が公開を熱望している一方、多くの主要都市の封鎖によって大々的な公開は現在でも許される状況ではない。一連の状況は、ウイルスの感染拡大を抑えきれない米国に対する一種の非難と見ることもできる。

Variety誌が指摘するように、世界同時公開はこの種のヒット作品では前例がないわけではないが、Tenetの魅力の大部分は作品のミステリー要素にある。そのため、これまでに公開された予告編でも意図的に内容がぼやかされていた。米国に先立つワールドワイドな公開が、海賊行為やネタバレ投稿によって作品のミステリー要素を奪ってしまうことはほぼ間違いない。

同じく近日公開予定の「ムーラン」と「クワイエット・プレイス PART II」も、最近再延期が決まった。

画像クレジット:Warner Bros.

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「異分野融合」なくしてイノベーションは望めない

スタートアップの世界で起きていることを一通り見られることは、この仕事をしていてよかったと思う理由の1つだ。同時に、この仕事をしていて落胆する瞬間の1つは、世に出ているアイデアのうち本当の意味でオリジナルなものはそれほどないことを見るときである。

筆者のメール受信ボックスには毎週、新しいノーコード・スタートアップが設立されたことを知らせるメールが届く。他にも、決済・クレジットカード・パーソナルファイナンスなどのサービスを提供するフィンテック、リモートワーク、オンラインイベント、大麻、暗号通貨、職場の機能を分析するツール(清掃員の生産性分析をサービスとして提供する、なんていうものもある)などに関連したスタートアップが次々に誕生している。

正直言って、ときどき手詰まり感を覚えることがある。例えば、「ノートテイクアプリ自体は目新しくありません。でもこのノートテイクアプリはKubernetesで動くんです!」というように、従来のソフトウェアを大差なく作り直したものが理論上は「改良された」ということになっている。実際のところ、「また同じことを繰り返している」、「真のイノベーションは遅々として進んでいない」と感じているのは、筆者だけでも、読者のみなさんだけでもないようだ。そのことは科学者や研究者によってすでに証明されており、イノベーションの経済学という分野における重要課題として議論が続けられている。

もちろん、新たな展望が開けている分野は数多くある。合成生物学とオーダーメイド治療、衛星・宇宙開発テック、暗号通貨と金融、自律運転車と都市開発テック、半導体のオープンプラットフォームとシリコンの未来などがその例だ。実のところ、無限の可能性を秘めた展望がこれほど多くの分野で開けているのに、独創性を(最終的には)利益につなげる機が熟した新境地を自分のものにしようと起業家や投資家が先を争って走りだす事態になっていないことに、筆者は驚いている。

このジレンマに対する答えの端緒をつかむには、前述のような最先端分野に参入するための必要条件を理解しなければならない。

われわれはこれまで、高校や大学の中退者がPHPスクリプトからソーシャルネットワークをハッキングしたり、地元のパソコンマニア仲間から手に入れたパーツで自作コンピュータを組み立てたりしてスタートアップを立ち上げる世代を見てきた。一方で、電気工学や生物学、あるいはイノベーションの源泉となる他の科学・工学分野の博士号(PhD)を必要とするスタートアップが創業されるところも見てきた。

そして今、われわれの前には、「1つの分野のみならず、同時に2つ(場合によってはそれ以上の数)の分野を究めないと実現できないアイデア」という新たな障壁が迫りつつある。

合成生物学と医薬品開発の未来を例にとって考えてみよう。潤沢な資金をかけて研究された結果をまとめて高い評価を受けているある論文は、機械学習と生物学・医学を横断的に組み合わせて次世代の薬品治療法および臨床治療法を開発できるとしている。データセットが整っており、患者もその治療法を受け入れる用意ができている中で、従来の方法で治療法の新たな候補を探すのはまったく時代遅れに思える。最新のアルゴリズムによってより計画的かつ自動的なアプローチが可能になっているからだ。

このような場合に意義ある進歩をわずかでも遂げるには、それぞれが非常に奥深く、互いにまったく異なる2つの分野に関する膨大な知識が必要とされる。AIと生物学の領域は途方もなく複雑で、とてつもない速度で進歩する。さらに、研究者と創業者があっという間に知識の限界に到達する分野でもある。いくら想像力をたくましくしても、これらは「解決済み」の分野ではなく、ある問題について「誰も本当のところはわからない」という答えにすぐ達してしまうことも珍しくはない。

これこそ、昨今のスタートアップが直面する「デュアル博士号(異分野融合)」の問題だ。誤解のないように言うと、これは資格の問題でもなければ、大学院を卒業したかどうかの問題でもない。これは、その学位によって象徴される知識と、次世代のソリューションを創出するのに2つのまったく異なる分野についてそれだけ高レベルの知識が必要とされるのはなぜか、という問題である。

おっと、怒ってわめき出す前に、「チーム」について少し話そう。適切な専門知識を持つ人が集まってチームになればこれらの問題を解決できる、という言い分は筋が通っている。1人の創業者が生物学とAI、あるいは暗号学と経済学、またはコンピュータビジョンとモビリティハードウェアなど、同時に2つの分野の専門家である必要はない。イノベーションを実現したいなら適切な人材をチームに入れればよいだけの話だ。

確かにそれは真実である。そして、そのような分野に属する多くの企業が「チーム」を組むという方法でプロジェクトを進めていることも事実だ。

しかし今、まさしくそのことがイノベーションのさらなる推進を阻害しているようにも思える。昨今のスタートアップの社内では、生物学者がウェットラボについて話しているかと思えば、そのすぐ近くでAI専門家がGPT-3(大規模言語AI)について熱く語っていて、彼らの主張について暗号技術の専門家が証券弁護士と交渉を進めている、というような光景が見られる。そして、それぞれの分野についてお互いが理解するためには、かなり高度な翻訳が常時行われなければならない。その翻訳が、新たなスタートアップの設立に必要な異分野の融合を阻む(おそらく大きな)原因になっていると思われる。

複数の領域が同時に必要とされる事例として、新型コロナウイルス感染症への対策ほど大規模でわかりやすい例はないかもしれない。数多くの専門性が同時に必要とされるという意味でもっとも手ごわいのはおそらく疫学と公衆衛生の分野だろう。同感染症の病因を理解するには医学と人間生理学に精通していなければならず、人間が個人および集団としてどのように関わり合うかを理解するには社会科学の知識が必要とされ、さまざまな予防薬が経済および公共政策に及ぼす影響を理解して初めてどのような代償がともなうかを把握でき、最後に、データモデルの読み取りと理解およびその正確な構築には統計学の習得も必要である。

これらすべてが同時に必要とされるのである。必要とされるこれだけ多くのスキルをすべて持つ人は皆無に近いのだから、コンセンサスが醸成されないのも当然だ。

チーム型のアプローチがうまくいかないと考えられる理由は、チーム内の他の専門性が持つ制約を理解すると同時に、何が真の障壁となっているか、破っても問題ないルールがあるのかどうかを見きわめられるくらいチーム全体の機微を感じ取る能力が各人に必要とされるからだ。テック素人のプロジェクトマネジャーがAI製品のプロジェクトを取り仕切ることはできない(「それは単にTensorFlowを使えばいいだけの話じゃないの」などと言い出しかねない)。あるアイデアが腑に落ちない理由をお互いに語り続けるような相性が合わない専門家が協力して会社を興すことも、それと同じくらい無理な話なのである。

われわれはこの種の認知的挑戦に慣れていない。ソフトウェアが社会の隅々まで普及したせいで、その他のあらゆる分野においては人間の取り組みを始めることすら猛烈に難しいということをわれわれは忘れがちだ。何せ今は、中学生が(インターネットから誰でも簡単に入手できるリソースを使って学習した)数行のコードと、新規ユーザーでもすぐに習得して使えるよう設計された簡単なクラウドインフラストラクチャツールを使って、何百万人ものユーザーに対応する規模までスケール可能なウェブサービスを構築して展開できる時代である。

同じことを、ロケット工学、製薬分野、自律運転車、はたまた先駆者が来るのを待っている手付かずの他の未開分野でできるだろうか。

世界がさらに進歩していくには、より多くの分野を融合させ、多くの人々が必要な知識をより迅速かつ早期に学習できるようにすることが必要だ。25年間の学生生活の後、中年40歳で卒業してやっとそれらの分野を融合させる興味深いプロジェクトを始めるまでなど、待つことはできない。イノベーションがまだ実現していない欠落分野が発展できるようスリップストリームを作り出す必要がある。

そうしなければ、「参入障壁がまったくない中で〇〇アプリの第30世代を開発しました」なんていう現在と同じパターンを、今後もずっと目にし続けることになる。それでは進歩は望めない。

関連記事:新たな学校

カテゴリー:その他

タグ:コラム

形などが不細工な規格外の果物や野菜を販売するMisfits Marketが91億円調達

形などが不細工で規格外の農産物を販売する電子商取引プラットフォームのMisfits Market(ミスフィット・マーケット)は米国時間7月22日、8500万ドル(約91億円)のシリーズBラウンドをクローズしたと発表した。この投資はValor Equity Partnersが主導し、Greenoaks Capital、Third Kind Venture Capital、Sound Venturesが参加している。

Misfit Marketは、形の悪い安価な農作物をパッケージにして消費者に届けるサブスクリプションサービスとして事業を開始した。扱うのは、流通業者や食料品店の手に渡る前に農家が廃棄してしまったかもしれない作物だ。なぜなら形の悪い作物は、店に並べたところで結局は捨てられることが多いからだ。

そうした農作物には質が劣るわけではない。ただ、形のそろったものが山積みされた中から、あえてそれを選ぶ消費者がいないという問題があるだけだ。

Misfit Marketは、シリーズA投資を獲得してから取り扱い商品の幅を広げる努力をしてきた。現在は、チョコレート、スナック、チップス類、コーヒー、ハーブ、穀物、レンズ豆、ソース、スパイスも買える。利用者は、週1回配達されるボックスに、これらの商品をお好みでで加えることができる。どれも、通常の小売り価格の20〜25パーセント安い。これらの製品は、週に1日(木曜日)だけ提示され、ボックスに入れることができる。

Misfit Marketの基本理念は、食料品サプライチェーンの数々の構造的な非効率性に着目し、作物を安く手に入れ、節約できた経費を消費者に還元するというものだ。この非効率性には、販売期限の問題も含まれる。一部には販売期限の9カ月も前に陳列しなければならない商品もある。また無駄なミスもある(Misfit Marketと契約しているオリーブオイルのメーカーには、缶のラベルを上下逆さまに貼り付ける悪い癖があった)。

期限が重要になる商品でも、Misfit Marketは消費者に直接届けることができるため、流通業者や食料品店と同じルールに縛られることがない。それにより、物流業務をうんと高速化できる。

今回の資金調達の公表にともないMisfit Marketは、ニュージャージー州デランコに新しい倉庫を開設し、米東海岸、南部、中西部への対応能力が倍になるということも発表した。これにより、アラスカ、ミシシッピ、ルイジアナの各州にも配達の足がかりが広がり、さらにウィスコンシン、ミネソタ、アイオア、ミシガンの各州でのサービスが間もなく開始される予定だという。

画像クレジット:Misfits Market

画像クレジット:Misfits Market

膨大な食品廃棄問題を抱えた食品業界も、非効率のままでいたいと望んでいるはずがない。データ科学の面からこの問題に取り組むCrisp(クリスプ)などのスタートアップもある。私はMisfit Marketの創設者でありCEOのAbhi Ramesh(アビ・ラメッシュ)氏に、今後のサプライチェーンの効率化と、Misfit Marketの継続的な成長を妨げるものは何かと尋ねてみた。

「これだけテクノロジーが発達していながら、廃棄される農作物の量は絶対的にも相対的にも毎年増加しています」とラメッシュ氏。「この5年間と、それ以前の5年間の食品廃棄量を比較しても増えています。これは超長期的なリスクの1つですが、少なくとも私たちが目にしていること、そしてデータが示している食品廃棄物に関する方向性は、食品廃棄物の規模が大きくなっているということです」と語る。

Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の研究によれば、今後10年間の食品廃棄量は210億トン、金額にして1兆5000億ドル(約160兆円)相当となり、これから10年で3割増えることになる。

今回の投資を受け、Misfit Marketは新型コロナウイルスのパンデミックの最中にも急増させた人員の拡充を継続することにしている。同社は3月から400人を雇い入れている。それ以前の3カ月間では150人だった。現在の社員数は総勢750人。男女比も均衡が保たれている(男性51%、女性49%)。幹部チームは30%が女性で、20%は人種が混在している。

Misfit Marketは、総計で1億150万ドル(約109億円)を調達した。
画像クレジット:Misfits Market>

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Sunrunが3440億円でVivint Solarを買収しTeslaのエネルギー事業に戦いを挑む

2014年にTesla(テスラ)がSolarCity(ソーラーシティー)を買収したことで、この電気自動車メーカーは住宅用太陽光発電の世界でも誰もが認める強力なプレイヤーとなったわけだが、そのリードは攻撃的な計画で突進してくる最大のライバルSunrun(サンラン)により着実に縮められてきた。現在、住宅用太陽光発電設備の設置業者Vivint Solar(ビビント・ソーラー)を32億ドル(約3440億円)で買収したSunrun(Sunrunリリース)は、トップの地位を固めたように思われる。

Teslaの創設当初、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は同社を単なる電気自動車のメーカーではなく、エネルギー企業として位置づけたいと努力していた。Teslaが26億ドル(約2800億円)の値を付けSolarCityを買収(未訳記事)したとき、その動きは「ゼロエミッションの発電オプションを提供する」という同社の「基本計画」の第1段階が最高潮に達したものと見られていた。

その計画が今、住宅用太陽光発電を専業とし、規模の効率性により安価なパネルを提供できるライバルの上場企業から、大きな試練を突きつけられていると太陽光発電分野に詳しいアナリストたちは話す。

Sunrunは恐ろしいほど大きくなります」と、JMP Securities(JMPセキュリティーズ)のJoe Osha(ジョー・オシャ)氏はBloomberg Newsに語った。「彼らは明らかに規模と効率を追求しています」。

事実、Sunrunの声明によれば、企業合併による事業の効率化で年間およそ9000万ドル(約97億円)の節約になるという。また規模の経済により、送電網に電力を供給するための電力会社との契約をさらに有利に進めることができる。

SunrunはBlackstone(ブラックストーン)の支援を受けたVivintの買収を発表した際に、50万世帯という合算顧客ベースは3ギガワットを超える太陽光発電アセットに相当すると認めている。この数値は米国の住宅用太陽光発電市場全体から見れば、3パーセントの占有率に過ぎない。

Bloomberg NEFのデータによれば、Sunrunはすでに住宅向け太陽光発電設備の設置事業でTeslaを抜き、四半期ごとの両社を合わせた住宅用太陽光発電設備の新規リース件数は、全体の75パーセントを占めているという。

「米国人はクリーンで災害に強いエネルギーを求めています。Vivint Solarは重要で質の高い販売チャンネルを追加したことで、合併した両社がより多くの世帯への認知を広げ、家庭での太陽光発電と蓄電の利点に理解を深めてもらうことが可能になりました」と、SunrunのCEOで共同創設者のLynn Jurich(リン・ジュリック)氏は声明の中で述べている。「今回の取引により、私たちの規模は拡大し、中央集中型の公害をまき散らす発電所に取って代われるよう、そして完全なクリーンエネルギーの未来に向けて加速できるよう、私たちの電力供給ネットワークを成長させることができます」。

14億6000万ドル(約1570億円)全額株式交換による買収(およそ18億ドル、約1940億円が負債と想定)を行ったSunrunはTeslaの太陽光発電事業の強力なライバルとなるが、Teslaにはこの住宅用太陽光発電のライバルを通じて、より多くの蓄電池を販売できるというチャンスもある。

SunrunとVivintは、太陽光発電パネルを設置する際に顧客に蓄電池も勧めるだろう。となれば、Tesla製のPowerwall(パワーウォール)か、LG Chem(LG化学)と共同で製造している自社製のBrightbox(ブライトボックス)のいずれかを扱うことになる。

投資家たちはこのSunrunの最新の行動に反応して、同社株に資金を投入している。Sunrunの株価は、正午の取引で5ドル上昇した。

画像クレジット:Yahoo Finance

「Vivint SolarとSunrunは、長い間、クリーンで手頃な価格の災害に強い住宅向けエネルギーの供給という共通の目標を掲げてきました」とVivint SolarのCEOであるDavid Bywater(デイビッド・バイウォーター)氏は声明の中で述べている。「Sunrunと力を合わせることで、より幅広い顧客へのリーチが可能になり、クリーンエネルギーの受け入れと送電網の近代化のペースを速めることができます。今回の取引は、私たちのお客様、株主、そして私たちのパートナーに価値をもたらすと信じています」。

画像クレジット:Vivint Solar

原文へ
(翻訳:金井哲夫)

大分県が高校生と連携・協働しシビックテックに挑戦する地元企業を募集

OITA TECH WAVE

大分県は7月7日、オートバックスセブン協力のもと、大分県立情報科学高等学校の高校生の感じる身近な生活課題に対して、高校生と連携・協働しソリューションの開発や展開に挑戦する地元企業を募集する「OITA TECH WAVE~2ndwave~」を発表した。

大分県では、県民・民間事業者が主体となり、テクノロジーを活用し地域の課題解決を図るCivic Tech(シビックテック)を推進するべく、「OITA TECH WAVE」(オオイタ テック ウェーブ)を展開。

今回の募集は、大分県立情報科学高等学校商業科3年生の授業「課題研究授業」において、高校生が提起した身近な課題に対し、提案者(地元企業)がITやIoTなどのテクノロジーを用いたソリューションの開発・展開を行うというもの。提案者(地元企業)は、高校生5チームが提示した課題の中から取り組みたいものひとつを選び、具体的な解決策を提案する。課題としては、「学校に行くとき、荷物が重く疲れる」、「道端のごみを減らしたい」、「電車やバス以外の移動しやすい手段を見つける」などが挙げられている。

  • 参加資格: 大分県内に事業所を有する事業者など
  • 課題:
    ・高校生チーム(5班)が示すものからひとつを選び、具体的な解決策を提案すること
    ・課題解決に向けたITおよびIoTソリューションを開発し、年度内にリリースすること
  • 条件:
    ・「課題研究授業」に月1回程度参加すること(毎週火曜日午前または金曜日午後)
    ・令和3年(2021年)1月末実施予定の発表会に参加すること
    ・課題解決にあたっては、情報科学高校の授業の中で、生徒達と意見交換・連携しながら進めること
    ・ソリューションは、県に納品し県が展開するわけではない点に留意すること。また、課題を解決するものであれば必ずしも開発が必要なわけではなく、既存技術の組み合わせでもよい
    ・次年度以降も、当面の期間(1年間程度)は、県民や県内事業者が無料あるいは廉価で使えるなど、県内の課題解決および普及拡大に向けた措置をとること など
  • 提案募集期間: 8月4日午後5時15分必着
  • 提出方法: 「『OITA TECH WAVE~2nd wave~』高校生との共創による新時代の課題解決推進委託業務企画提案協議のお知らせ」掲載の提出先に、直接持参または簡易書留郵便などにより提出
  • 採択: 予算額(250万円)の範囲内で採択

大分県立情報科学高等学校では、大分県とオートバックスセブンとが締結した包括連携協定のひとつ「女性活躍推進・青少年の育成」の一環として、2020年4月から日本初の民間企業による公立高校「常駐」という連携体制を実施。校内に最新ICT機器・技術に触れられるラボ「WEAR+i(ウェア アイ)コミュラボ」を開設している。地域の課題を地元高校生ならではの発想を生かしながら解決するプロセスを学び、地域社会との連携・協働により産業で必要とされるスキルを備える人材を育成する授業「課題研究授業」を展開している。

関連記事
2016年、市民により良いサービスを提供するために行政はいかに変わるのか

角川ドワンゴN高が課題解決型学習を実施、JR東日本都市開発に高架下活用プランをプレゼン

角川ドワンゴ学園 N高等学校 ジェイアール東日本都市開発

角川ドワンゴ学園 N高等学校(N高)ジェイアール東日本都市開発は7月3日、N高通学コース課題解決型プロジェクト学習(PBL)「プロジェクトN」の授業において、高架下エリアを活用する商業施設プランを提案する「SMART×STREET開発プロジェクト」の実施を発表した。

授業内容は以下のとおりで、期間は9月30日までとなっている。

  • エリア開発について学習
  • 開発計画提案に向けたグループワーク(エリア選定・調査、来街者調査、ペルソナ設定、コンセプト開発、デザイン、デジタル施策研究、店舗候補選定など)
  • 仮想の誘致したい店のオーナーに向けた開発計画提案

近年、様々な人や物がインターネットを介したコミュニケーションで広くつながる一方、商業施設におけるデジタルコミュニケーションの場は、クーポンやチラシ、館内ガイドやインフォメーションなど、一方通行な情報提供にとどまっているという。

そこで、デジタルネイティブ世代の高校生がデジタルとリアルを融合させ、デジタル施策を通して、もっと楽しく、あるいは快適に過ごせる「行きたくなる商業施設」の企画提案に挑戦する。

9月25日には集大成として、JR東日本都市開発の役員・社員、デジタル分野に詳しい方を審査員としてプレゼンを行う。