Sunrunが3440億円でVivint Solarを買収しTeslaのエネルギー事業に戦いを挑む

2014年にTesla(テスラ)がSolarCity(ソーラーシティー)を買収したことで、この電気自動車メーカーは住宅用太陽光発電の世界でも誰もが認める強力なプレイヤーとなったわけだが、そのリードは攻撃的な計画で突進してくる最大のライバルSunrun(サンラン)により着実に縮められてきた。現在、住宅用太陽光発電設備の設置業者Vivint Solar(ビビント・ソーラー)を32億ドル(約3440億円)で買収したSunrun(Sunrunリリース)は、トップの地位を固めたように思われる。

Teslaの創設当初、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は同社を単なる電気自動車のメーカーではなく、エネルギー企業として位置づけたいと努力していた。Teslaが26億ドル(約2800億円)の値を付けSolarCityを買収(未訳記事)したとき、その動きは「ゼロエミッションの発電オプションを提供する」という同社の「基本計画」の第1段階が最高潮に達したものと見られていた。

その計画が今、住宅用太陽光発電を専業とし、規模の効率性により安価なパネルを提供できるライバルの上場企業から、大きな試練を突きつけられていると太陽光発電分野に詳しいアナリストたちは話す。

Sunrunは恐ろしいほど大きくなります」と、JMP Securities(JMPセキュリティーズ)のJoe Osha(ジョー・オシャ)氏はBloomberg Newsに語った。「彼らは明らかに規模と効率を追求しています」。

事実、Sunrunの声明によれば、企業合併による事業の効率化で年間およそ9000万ドル(約97億円)の節約になるという。また規模の経済により、送電網に電力を供給するための電力会社との契約をさらに有利に進めることができる。

SunrunはBlackstone(ブラックストーン)の支援を受けたVivintの買収を発表した際に、50万世帯という合算顧客ベースは3ギガワットを超える太陽光発電アセットに相当すると認めている。この数値は米国の住宅用太陽光発電市場全体から見れば、3パーセントの占有率に過ぎない。

Bloomberg NEFのデータによれば、Sunrunはすでに住宅向け太陽光発電設備の設置事業でTeslaを抜き、四半期ごとの両社を合わせた住宅用太陽光発電設備の新規リース件数は、全体の75パーセントを占めているという。

「米国人はクリーンで災害に強いエネルギーを求めています。Vivint Solarは重要で質の高い販売チャンネルを追加したことで、合併した両社がより多くの世帯への認知を広げ、家庭での太陽光発電と蓄電の利点に理解を深めてもらうことが可能になりました」と、SunrunのCEOで共同創設者のLynn Jurich(リン・ジュリック)氏は声明の中で述べている。「今回の取引により、私たちの規模は拡大し、中央集中型の公害をまき散らす発電所に取って代われるよう、そして完全なクリーンエネルギーの未来に向けて加速できるよう、私たちの電力供給ネットワークを成長させることができます」。

14億6000万ドル(約1570億円)全額株式交換による買収(およそ18億ドル、約1940億円が負債と想定)を行ったSunrunはTeslaの太陽光発電事業の強力なライバルとなるが、Teslaにはこの住宅用太陽光発電のライバルを通じて、より多くの蓄電池を販売できるというチャンスもある。

SunrunとVivintは、太陽光発電パネルを設置する際に顧客に蓄電池も勧めるだろう。となれば、Tesla製のPowerwall(パワーウォール)か、LG Chem(LG化学)と共同で製造している自社製のBrightbox(ブライトボックス)のいずれかを扱うことになる。

投資家たちはこのSunrunの最新の行動に反応して、同社株に資金を投入している。Sunrunの株価は、正午の取引で5ドル上昇した。

画像クレジット:Yahoo Finance

「Vivint SolarとSunrunは、長い間、クリーンで手頃な価格の災害に強い住宅向けエネルギーの供給という共通の目標を掲げてきました」とVivint SolarのCEOであるDavid Bywater(デイビッド・バイウォーター)氏は声明の中で述べている。「Sunrunと力を合わせることで、より幅広い顧客へのリーチが可能になり、クリーンエネルギーの受け入れと送電網の近代化のペースを速めることができます。今回の取引は、私たちのお客様、株主、そして私たちのパートナーに価値をもたらすと信じています」。

画像クレジット:Vivint Solar

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(翻訳:金井哲夫)

Googleは新たに18の再生可能エネルギー関連の契約を発表

Google(グーグル)は米国時間9月19日、これまでで最大となる再生可能エネルギー購入の契約パッケージを発表した。これは、合計で1600MW(メガワット)にも達するパッケージで、米国、チリ、ヨーロッパにおける18件の契約にまたがるもの。この結果、Googleの風力と太陽光発電を合わせた最新の購入量は、約5500MWに達する。また、同社が関わる再生可能エネルギープロジェクトの総数は52になる。Googleによれば、今回発表した新しいプロジェクトが、新しいエネルギーインフラへの約20億ドル(約2160億円)の投資を促進するという。

米国では、ノースカロライナ、サウスカロライナ、そしてテキサスにある太陽光発電所から、合計720MWを購入することを明らかにした。チリでは、現地のデータセンターに電力を供給するために、追加として125MWを購入する。Googleの広報は、その理由を明らかにしていないが、 ヨーロッパ地域での詳細は、まだ明らかにしていない。それについては、同社CEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏も登壇するフィンランドのイベントで9月20日に発表する予定だとしている。

今回の発表でピチャイ氏が明らかにしたところによれば、これまでのGoogleの投資の多くは、風力発電に対するものだっという。それに対し、今回発表した米国内の投資は、ほとんどが太陽光発電となっている。その理由は、太陽光発電のコストが下がってきているからだという。チリでは、同社は初めて太陽光と風力のハイブリッド発電に投資した。「風が吹くのは、太陽が照っているときとは異なる時間帯となることが多いので、それらを組み合わせることで、チリのデータセンターの電力は、毎日の大部分、二酸化炭素を排出しない発電で賄うことができます」とピチャイ氏は書いている。

Googleの発表の背景には、すでにAmazonが、2030年までに100%再生可能エネルギーで事業を運営し、10万台の電動ワゴン車を購入すると宣言したこともある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ウガンダの王子と仮想通貨スタートアップが起こすアフリカの金融革命

仮想通貨とブロックチェーンの愛好家は、何年もの間、銀行の中央集権的な世界を批判してきたが、発展途上国の銀行の多くは、その特権的な場所に立ち、それを続けている。しかし、ブロックチェーン技術が発展途上の経済にとって、もっとも画期的であると判明したら、どうなるだろう。

たとえばアフリカだ。アフリカ諸国の消費者たちは、プリペイド式携帯電話の料金をチャージするための銀行取り引きだけでも、いちいち手数料を取られることに不満を募らせている。通信時間が、事実上、お金として扱われている。すでに経済発展をした国々で生まれた、そうした銀行のやり方は、銀行手数料が携帯電話のチャージ料金を上回るような発展途上国ではうまく機能しない。

南アフリカに拠点を置くスタートアップWalaは、それを早期に実現している。既存の銀行インフラを利用して顧客取引を促進しようと、ウォレットのように機能するスマートフォンアプリを開発した。しかし、ほぼすべての取り引きに高額な銀行手数料がかかるため、Walaの顧客基盤も、スマートフォン世代にモバイルウォレットを提供するというWalaの初期のビジネスモデルも、痛手を被った。

料金のかからないソリューションが必要だったが、既存の金融システムでは難しい。そのとき、彼らは仮想通貨に切り替えることができると気がついた。そうすれば、業者同士のピアツーピア・ネットワークでの支払いが可能になり、通信料金、データ料金、電気料金、さらには学校の学費までこれで支払うことができる。

昨年の12月、イーサリアム・ベースの$DALAトークンを新規仮想通貨公開(ICO)で売却して120万ドル(約13億7000万円)を調達したWalaは、現在、ウガンダ、ザンビア、南アフリカで数千件の取り引きを助けている。そのほとんどは、1ドル以下のマイクロペイメントだ。

2018年5月に彼らの通貨$DALAをローンチしてから(現在はWalaのモバイルアプリからアクセス可能)、10万を超える$DALAウォレットが利用され、同社によれば、250万$DALAを超える取り引きが行われているという。この(少なくとも今のところは)マルチチェーンの暗号資産は、ウォレットにEther、取り引きにはStellarを使用している。しかし、ひとつのプラットフォームに固定されているわけではない。

$DALAのプロトコル(Kopa、Soko、Kazi)を通して、消費者は、国境を超えた、低コストの、高効率な独自の金融サービスにアクセスできるようになり、新しい非中央集権型の金融システムでの利益の獲得、貯蓄、貸し借り、鳥時期が可能になる。

だが、それはWalaの最終目標ではない。

10月2日、Walaは、ウガンダのギガワット規模の太陽光発電計画と手を組み、ブロックチェーンによるクリーンエネルギー経済を構築すると発表した。

仕組はこうだ。

エネルギーの老舗企業であるCleanPath Emerging Markets Uganda(CPEM)は、ウガンダ政府、ウガンダ・エネルギー鉱物開発省と共同でこのプロジェクトを進めている。つまりウガンダ人は、この巨大な新規インフラ建設プロジェクトから生み出される太陽光エネルギーを、$DALAで使えるようになるということだ。

CPEMは、DALAブロックチェーンのプラットフォームを使って、台帳、業務委託契約、パートナー契約を管理する。同社はすでに、1万1000メガワット以上の再生可能エネルギーを作り出した経験を持っている。

ウガンダに新しいクリーンエネルギー経済を創出することを目的としたこの15億ドル(約1710億円)規模の計画は、新たな雇用を生み、クリーンエネルギー経済を立ち上げるだけでなく、ウガンダに新しい経済発展をもたらす。ウガンダの消費者は$DALAで太陽光発電された電気を購入でき、労働者は$DALAで賃金を受け取り、この計画自体が$DALAで推進されるのだ。

Walaの共同創設者でCEOのTricia Martinezは、オスロで開かれたPathfounderの会場で、私にこう話してくれた。「$DALAをローンチして以来、私たちが見てきた数字は驚異的なものです。現在の利用者は大半がウガンダ人なので、今回の提携関係は、$DALAを使うことで、さらに利益が増すようになるという自然な流れでした。利用者間には大量のトラフィックがあり、それはウガンダ人が、日常の取り引きに暗号資産を使う準備ができていることを示しています。

しかしこの物語は、映画『ブラックパンサー』の幻の王国ワカンダから歩み出てきたような、聡明なアフリカの王子の存在なくしては実現しなかった。

なぜなら、CPEMの創設者はブガンダ王国(ウガンダの王族のひとつが治める地域)の王子、Kudra Kalemaだからだ。その家系の歴史は、少なくとも14世紀にさかのぼる。現在、ブガンダは、ウガンダから大幅な自治権を与えられた君主制の王国となっている。

「この計画とDalaとの提携に、私たちは大変に興奮しています」とブガンダ王国のKudra Kalema王子は話す。彼はCPEMの経営パートナーであり共同創設者でもある。「$DALAでウガンダ人にクリーンエネルギーを提供できるようになることで、私たちはより開放的な非中央集権型の金融システムを育てることができます。それは古い技術では不可能なことでした」

TechCrunchの独占インタビューで、Kalema王子は私にこう話している。「私たち一族は、自分たちがこの土地の管理人だと考えています。そこで私は、ほぼ10年をかけて、この国を良くする方法を探ってきました。しかし、人々がスイッチをひねって明かりを点けることすらできないような状態で、何ができるでしょうか」

最大の課題は、安価な電力の供給だと彼は悟った。それを再生可能な形で実現する。それは太陽光発電でなければいけない。マイクログリッドでは解決できないことがわかった。もっと大規模にする必要がある。

しかし、なぜ彼は仮想通貨の導入を思いついたのだろう。

「ウガンダの財政構造には十分な力がないことが明確になったので、$DALAを使い始めました。何かが必要であることは明らかでした。私たちが行おうとしていた計画に役立つまでに、ウガンダ・シリングを安定させる道はありせんでした。Walaは、すでにウガンダに投資し、発展途上の市場に仮想通貨を持ち込もうと考えていただけでなく、この国にとって最良の金融機関の形を作ろうとしていました。それは、私たちがやろうとしていたことと一致します。ごく自然な成り行きです」

「今あるものは使い物にならないと、
ウガンダの人たちは言っています」
—Kudra Kalema王子

$DALAと太陽光発電計画を組み合わせるのは、アメリカなどの国よりも、ウガンダのほうがやりやすいと彼は言う。「ウガンダ人の80パーセント以上が35歳以下の若者で、高い教育を受けています。リープ・フロッギングという言葉は好きではありませんが、まさにそれが起きています。彼らは、昔に習ったことを捨て去る必要がないのです。彼らは、自分たちのためになる解決策を学ぼうと、必死になっています。ウガンダで、いかに早くモバイル・マネーが浸透したかを見ればわかります。外から押し付けられたからではなく、人々が自ら欲していたから、それだけの力を持てたのです。今あるものは使い物にならないと、ウガンダの人たちは言っています。銀行の手数料や送金のコストなどです。もう使えないとわかっているものに力を入れるこどなど、ウガンダ人はしません」

ウガンダは、今後も新しい技術を貪欲に求める市場でいるだろう。先日、Binanceが法定通貨と仮想通貨の取引所をウガンダに開設すると発表したが、それもそのひとつだ。

彼はこうも言っている。「ウガンダは、常にこうしたものの先頭にいました。大英帝国の保護領になる前から、ウガンダは、アフリカで新しい商売を始める道を探しに人々が集まる場所でした。私たちには複雑な部族制度がありました。そのために、イギリスはウガンダを侵略するのではなく、保護領としたのです」

この計画の詳細は野心的だ。Kalema王子のCPEMは、ギガワット規模の太陽光発電所建設計画により、人口の25パーセントにクリーンエネルギーを届け、20万人分の雇用をクリーンエネルギー経済の中に生み出すことを目指している。

この発電所で作られる電気は、現在のウガンダの総発電量の2倍に相当する(平均的なアメリカの石炭火力発電所のおよそ2基分だ)。現在は、国民の75パーセントが電気を使えない状態にある。

$DALAを使えば、ウガンダ人は手数料なしに電気が使えるようになる。毎日の買い物にも使え、政府機関、業者、仮想通貨取引所などでウガンダの法定通貨に交換することもできる。

さらに、CPEMとウガンダ政府は、貧しい人たちに電気を無料で与える助成制度を作ることができる。しかも、そうした助成の記録は、完全な監査が可能で、改ざんの心配もない。

アフリカの市場に嵐を起こそうとに、小さなスタートアップがやって来た話は2014年に始まる。

そもそも、アメリカのエンジェル投資家とソーシャルインパクト・ベンチャー投資企業(Impact Engine)に支援されていたTricia Martinez(上の写真)のWalaだが、2016年、ロンドンのアクセラレーターBarclays Techstars Acceleratorに加わった。その後、南アフリカのケープタウンに事務所を開設し、社員を増やしていった(現在は12名)。

間もなく、南アフリカのベンチャー投資企業Newtown Partnersから投資を受け、Walaは$DALA暗号資産を発行し、Dala財団を設立した。Newtown Partnersのトップに、Civicとイーサリアム・ベースのプロジェクトで知られるVinny Linghamがいるのは、おそらく偶然ではない。

Martinezは、仮想通貨が、アフリカのような新興市場が長年欲していた解決策になると情熱を燃やしている。「この計画の価値尺度と価値貯蔵が$DALAであることが、その実用性を証明していて、新興市場での望ましい金融システムになる可能性を示しています。立ち上げの時期から関ることができて、とても嬉しく思うと同時に、消費者のための的確で使いやすい金融システムの構築を手伝えることを、とても楽しみにしています」

彼女はこうも話している。王子もウガンダ政府も「金融包摂を促進して、人々にとって、金融をより効率的なデジタルシステムにするためのパートナーを探していました。そのとき、私たちのことを聞いたのです。話をしてみると、私たちは互いに、暗号資産の上にエコシステム全体を構築できると感じました」

「消費者が単にエネルギーを仮想通貨で購入するというだけでなく、エネルギーグリッドを建設する人たちの賃金も仮想通貨で支払われるということなのです。そのため、とくにエネルギーの観点から、みんなはブロックチェーンで透明化を果たそうと、大変な関心を持つようになりました。政府と一緒に、より信頼性の高い記録を付けることで、汚職の可能性も低減できます」

Martinezはこう指摘する。「ウガンダの10万人以上の利用者が見守る中で、人々はすでに電気や製品やサービスを買っています。この計画の目標は、電気を買う人々が、私たちが提供する他のすべてのサービスも利用してくれるようになることです。私たちは、現金の交換所の開設も予定しています。人々が、街でモバイル・マネーを現金に、また現金をモバイル・マネーに交換できるようにするのです」

これは本当に大きな計画だ。「ウガンダ」と「仮想通貨」という言葉が同じ文章の中に登場するのを見て、陳腐で否定的な評価を下す人もきっといるだろう。

しかし、新興国の渇望、熱心な王子、住民の団結と結びついたWalaの現地での活動は(西欧諸国でのブロックチェーンの会議によくいる肘掛け椅子にふんぞり返った評論家と異なり、その重要さはどんなに誇張しても物足りないほどだが)、決して見くびってはいけない。

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(翻訳:金井哲夫)

東大発の技術で太陽光パネルの異常検知を自動化、ヒラソル・エナジーが数千万円を調達

太陽光IoTプラットフォームを開発する東大発ベンチャーのヒラソル・エナジーは12月1日、ANRIおよびpopIn代表取締役CEOの程涛氏、同社CFOの田坂創氏から総額で数千万円の資金調達を実施したことを明らかにした(popInは2008年創業の東大発ベンチャー。2015年にバイドゥが買収している)。

ヒラソル・エナジーが開発するのは独自の電力線通信技術を活用した、太陽光発電所向けのIoTプラットフォーム「PPLC-PV」。発電モジュール(「パネル」という名称の方がなじみがあるかもしれない)にとりつけたセンサーからデータを収集し解析することで、遠隔からモジュールの異常を自動で検知できることが特徴だ。

2016年に東京大学准教授の落合秀也氏が発明した通信技術を実用化する形でプロジェクトをスタート。2017年2月に東京大学産学協創推進本部の元特任研究員である李旻氏、情報理工学研究科の池上洋行博士がヒラソル・エナジーを創業し、李氏が代表取締役を務めている。同年3月には東京大学協創プラットフォーム開発の支援先にも選ばれている。

業界の課題である「発電量の保守維持」を効率的に

世界的にみて現在盛り上がってきている太陽光発電産業。基本的には金融アセットとして投資をしている人が多く、発電した電力を売ることで約20年かけて回収する。そのため投資回収においては、長期的に安定して売電収益をあげていくことが大前提だ。

そこで欠かせないのが発電量の保守維持。特にモジュール1枚が劣化するだけで全体の発電効率に影響を及ぼすため、いかにモジュールの状態を正確に把握するかがポイントとなる。

李氏によると「日本製のパネルでは7年で23%のパネルに深刻な劣化が生じ、個々の発電量が2〜4割低下している」というデータもあるそう。これは小規模な調査のためあくまで参考レベルにはなるが、たとえば100枚のパネルがあればそのうち23枚は劣化が生じていることになる。

すでに太陽光発電所向けのIoTプラットフォーム自体はいくつかの企業が手がけているものの、どれもストリング(複数のモジュールを直列に接続したもの)単位でしか異常を検知することができず、改善の余地があった。そこに独自の技術で切り込んでいるのがヒラソル・エナジーだ。

太陽光発電所のレイアウト

「これまでモジュール1枚1枚の状態を観られる技術はなかった。ストリングごとでしか異常が検知できなければ、最終的には現地へ人を派遣して、どのモジュールで異常が発生しているかを特定する必要がある。PPLC-PVの場合は異常が発生しているモジュールを自動で検知できるのが特徴」(李氏)

PPLC-PVでは各モジュールに外付できるセンサーを設置し、モジュールの稼働データを収集。そのデータを解析して異常点を自動で検知する。それを可能にしているのが、ノイズ耐性に強い独自の電力線通信技術だ。

もちろんモジュール1枚1枚にセンサーを設置するのにコストはかかるが、従来の方法では部分的に異常を検知したあとは人力で対応する必要があり、そこに多額のコストがかかっていた。

李氏によると顧客として見込んでいるのは、50キロワットから数メガワット規模の商業用発電所を大量に管理しているような事業者。そのような企業には「全国に点在する発電所の管理に困っている」「人件費を主とした異常発生時の検査コストを抑えたい」というニーズがあり、PPLC-PVの概念にも興味を持つことが多いそうだ。

保守維持の分野から産業をリードするチャレンジを

ヒラソル・エナジーのチームメンバー。左から3人目が代表取締役の李旻氏、左から4人目がANRIの鮫島昌弘氏

2016年の時点で、日本国内の太陽光発電所の導入量は累積で42.8ギガワット。これはモジュールに換算すると約1.6億枚になる。PPLC-PVの顧客となるような企業は日本国内だけでも約200〜400社は存在し、数千億円の市場規模を見込んでいるという。

海外にも目を向けると、現時点で日本の約6倍ほどの規模がありすでに世界に存在するモジュールは10億枚ほど。今後市場はさらに拡大することが見込まれる。関連企業のエグジットの事例もでてきていて、2014年にアメリカの大手パネルメーカーのFirst Solarが保守維持事業を手がけるドイツのskytron-energyを買収。2015年には独自技術で発電量の最大化に取り組むイスラエル発のSolarEdgeがNASDAQに上場した例がある。

「PPLC-PVも正しく製品化を進めることができれば、太陽光発電産業をさらに持続可能なものにできる可能性がある。日本はかつて部材事業でこの産業をけん引していた。今度は保守維持の分野から再び世界をリードしていけるチャンスがある」(李氏)

今回李氏の話で興味深かったのが、保守維持事業を進めるにあたって日本は今いい環境にあるということ。李氏によると日本には運営30年になる発電所など古いものも多く残っていて、これは世界的にみても珍しいそうだ。保守維持の課題は運営開始から数年たって直面することも多いため、新しい発電所が多い海外よりもチャンスがあるという。

合わせて日本はFIT価格が比較的高く(固定価格買取制度で決められた買取価格のこと。中国の3倍ほどだという)、かつ人件費も高いため自動化のニーズが大きいというのが李氏の見立てだ。なんでも世界の発電所のアーキテクチャは約9割が同じだそうで、日本でいいソリューションを開発できれば、世界のほとんどのところに展開できる可能性もある。

今回ヒラソル・エナジーに出資したANRIの鮫島昌弘氏も「大きなペインポイントとそれを解決できる技術があり、かつ市場が大きくグローバル展開も見込めるプロダクト、チームである」ことが決め手になったという(ANRIはシードに加えてハイテク領域のスタートアップを対象にした3号ファンドを8月に立ち上げ、北大発のメディカルフォトニクスなどにも出資している)。

ヒラソル・エナジーでは取得したデータを用いた発電量の価値評価や発電所向けの保険、モジュールのリサイクルといった事業展開も将来的に検討していくが、当面は保守維持の分野に注力していく。

TeslaによるSolarCityの買収が正式に決定

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現地時間21日の朝、TeslaがSolarCityを買収することが正式に決定した。Elon Muskが率いる電気自動車企業と、彼の従兄弟であるLyndon RiveとPeter Riveが率いる太陽光エネルギー企業がこれで1つになる。この買収がTeslaとSolarCityのシェアホルダーから承認されたのは先週のことで、最初にこの買収案が提案されたのは今年6月のことだった。

買収の正式決定に際し、Teslaは簡単なコメントを発表している。

TeslaによるSolarCity買収が今朝正式に決定し、それを皆様に発表できたことを私たちは嬉しく思います。

Muskが今年6月にこの買収を提案して以降、彼は頻繁にSolarCity買収の重要性を主張してきたことを踏まえると、このコメントは簡潔かつ控えめなものだと言えるだろう。この2社の統合は、消費者にエネルギーの生産方法、貯蓄方法、そして消費方法のすべてを提供するというMuskの「マスタープラン」を実行するうえで欠かせない要素だった。

先日、Teslaは屋根に取り付けるソーラーパネルをローンチしている。これによってMuskは、この2社はTeslaブランドの「一つ屋根の下に収まる企業なのだ」ということを表したかったのだろう(僕は今朝とても早く起きた。だから、これくらいのジョークは許してほしい)。Muskにとって、電力をクリーンな方法で発電することと、その電力を使用した電気自動車をつくることは、本質的には同じことなのだろう。全体の二酸化炭素排出量を減らすうえで、低コストでクリーンな発電方法を普及させることは、クリーンなクルマをつくることと同じくらい重要だ。それを踏まえれば、彼のその考えは筋の通ったものだと言えるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

だれでも全米でソーラーエネルギーに投資しながら利用できる、Arcadia Powerの新サービス

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再生可能エネルギーサービス会社のArcadia Powerは、全米の賃借人たちに再生可能エネルギーの購入を可能にする、新しいサービスを発表した。

これは、カーボンオフセットプロバイダーでありロードマネジメントとして電力会社と協業していた同社にとっては、再生エネルギープロジェクトの開発運営会社へ向けての重要な一步である。そして、これは潜在的に再生可能エネルギー運動のゲームチェンジャー(これまでのやり方を変えてしまう存在)なのだ。

少し分かりにくいと思うので、この話をもう少し解説しよう。この発表以前には、Arcadiaは顧客のエネルギー利用を、同量の再生エネルギープロジェクト(主に風力発電)に投資することによって、カーボンオフセットを行うサービスを提供していた。

現在同社は、さまざまな電力会社たちとの提携と、プロジェクトデベロッパとしてのポジションを利用して、プロジェクトの小さなグループを集め、そこを通して全国のソーラーをインストールしたくてもできない人たちのために再生可能エネルギー投資を提供しようとしている。

Arcadiaのロジックは単純だ。持続可能エネルギーに投資したいと思っているものの、その手段を持つことができない、多くの賃借人あるいは非住宅所有者がいるということである。

太陽と雲ひとつない青空を反映赤い屋根上のソーラーパネル

「それが私たちがやろうとしていることを支える、最も重要な部分の1つなのです」とArcadia PowerのCEOであるKiran Bhatrajuは語った。「アメリカ人の大多数は、ルーフトップソーラーを実施できません。アメリカ人のおよそ8パーセントだけが可能なのです」。

多くの人びとは、複数の賃貸物件の入っている建物に住んでいて、自由にソーラーパネルを設置できないので、ソーラープロジェクトに対する直接的な投資を阻まれている。

Arcadiaを使うことによって、こうした環境指向の消費者は米国全土のプロジェクトに投資し、あたかも自分の家から得られたかのように生成エネルギーから得られた収益を手にすることができる。

「私たちは、過去数年に渡って、顧客の電力請求書にクレジットを戻すことのできる技術を開発してきました」とBhatrajuは語る。「私たちはリモートで、顧客を分散型発電資産に接続することができるのです。そしてソーラーが電気を生み出したら、局所的に集められたその代金を広く分配することができるのです」。

Arcadiaの現在のプロジェクトは巨大なものではないが、商業顧客や政府機関が彼らの主張が受け入れられることを証明している ‐ 賃借人に再生可能エネルギー発電を提供すれば – 彼らは購入するのだ。

日で再生可能な太陽エネルギーを使って発電所

同社は、消費者たちは再生可能エネルギー発電のための意志がありながら、まだ太陽光発電への切り替えを行うための十分に便利な方法を持っていないのだ、と仮定している。Arcadiaのサービスは、それを変える。

これまでのところ、Arcadia Powerは、ワシントンD.C.、マサチューセッツ州そしてカリフォルニア州でプロジェクトを運営している。「私たちはプロジェクトを集め、顧客にプログラムに対する賛同を得られるように努力しています」。

Bhatrajuにとっては、この新サービスは、5月に動きが始まっていたBoxGroupWonder Venturesからの350万ドルの調達の際に、同社が考えていた戦略の一手に過ぎない 。

資金調達が8月に発表されたときには、Arcadiaは顧客の使用状況を再生可能エネルギーとマッチングしてキロワット時当たり1.5セントの上乗せで提供するプレミアムサービスを、1万の顧客に提供していた。同社はまた、伝統的な発電(通常は石炭と天然ガス)と風力発電の間で請求書を分けたいと望む顧客のために、50パーセントまでなら風力発電のプレミア分を請求しないオプションの提供も開始した。

次に控えている同社のサービスは、スマートサーモスタットやLEDといったエネルギー効率のよい製品に対するオンビルファイナンシング(on-bill financing : エネルギー効率を良くする製品を購入する際に融資を受け、それを月々の電気代に上乗せして返済していく方式)である。Arcadiaはこれによって顧客は年間10から30パーセントのエネルギーコストを節約できると言っている。

今日、同社は約250キロワットの規模(Solar Energy Industries Association=太陽エネルギー産業協会の推計によると、およそ41家庭に電力を供給するために十分なエネルギー)でサービスを開始した。Bhatrajuによると、現在他に2.5メガワットの電力が控えているということだ。

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(翻訳:Sako)