H-1Bビザ停止で進むニアショアリングはスタートアップにとって好機になる

著者紹介:Andrés Vior(アンドレ・ボワール)氏はintive(インティブ)のVP兼アルゼンチン担当マネジャー。コンピューターエンジニア、ブエノスアイレス大学(UBA)卒。アルゼンチン・ソフトウェア・コンピューターサービス企業会議所(CESSI)会員。

今年6月、ドナルド・トランプ大統領はH-1B就労ビザの発給を一時停止する大統領令に署名した。このビザの対象者には、ソフトウェア開発に従事する専門職も含まれる。

シリコンバレーや、テック企業が集まるその他の拠点において、労働者の71%が外国人であることを考えると、この大統領令により、スタートアップは物流面とビジネス面の両方でいくつもの困難に直面することになる。

ニアショアリングは、パンデミック前から選択肢の1つとして存在していた。しかし、就労ビザの発給停止にリモート革命の進行が重なってその緊急性が増し、企業はニアショアリングをソリューションとして再考し始めた。その結果、今回のビザ発給停止は、企業はソフトウェア開発能力を海外から調達する好機となっている。

ニアショアリングとは、距離または時間帯が近い地域から人材やチームを採用することだ。ニアショアリングにより、米国企業は、優れた人材が見つかりやすく、就労環境や給与もより良好な近接地域からサービスを調達できる。これにより、企業はコストを最大80%削減できる可能性があり、同時に、柔軟で自由が利く、より良いキャリア開発オプションを従業員のために用意できる。

ニアショアリングはビザ発給停止への実際的な対応策であるだけでなく、企業にとって長期的な人材採用方法になる可能性がある。ニアショアリングの具体的な手順について、以下に説明してみようと思う。

リモートチームの基礎を築く

パンデミックの最中でも開発者の需要が下がることはなかった。多くの企業がサービスのオンライン化に向けてチームデジタルプラットフォームを構築、運用、最適化するチームを必要としているためだ。ビザの発給が停止されたということはつまり、米国外の企業が開発者ニーズを満たせること、特に、企業が問題を新たな方法で解決するのを助けるフレッシュで多様なスキルセットを持つ外国人のテック人材を調達する方法があることを意味している。

かつては、米国に移住してアメリカンドリームをつかむことが外国人プロフェッショナルたちの目標だった。しかし、その流れは変わった。パンデミック前から、米国は「外国人が住みやすいと思う国ランキング」で順位を46位から66位に落とし、移住先として人気を失いつつあった。コロナ後にはその人気低下が加速する恐れがある

世界中がかつてなくオンラインでつながっている現在、企業も個人も、世界トップレベルのテクノロジースタック、話題の企業との付き合い、世界トップレベルの研究など、米国が提供するチャンスから移住せずして恩恵を受けられる。そういう意味では、ニアショアリングとは、外国人メンバーが、母国の快適さと世界的な大手企業とのつながりという、両方のいいとこ取りができる環境だと言える。

リモート勤務へのシフトが進んでいることは、メンバーが互いに離れた場所で働いていてもチームが十分に機能することを実証している。リモート勤務の方が生産性幸福度が向上する、という研究結果もあるくらいだ。世界的にリモート勤務へのシフトが進む中で、ニアショアリングは現在、適切かつ有益な方法だとみなされるようになっている。ビザ発給停止をうけてニアショアリングを選択する企業は、この波をうまくとらえて活用し、リモートチームの働き方に関するベストプラクティスを確立する機会とすることができる。例えば、コミュニケーション、進捗状況の追跡、休暇、開発計画などに関する方針を、新たな状況と明確な経営理念に基づいて決めることができるだろう。そうすれば、開発者たちとのパートナー関係をスムーズに築くことができる。

ニアショアリングの別の利点は、柔軟なチームが、スタートアップのスケールアップモデルに役立つことだ。さまざまな国にいる開発パートナーと協力できるため、より広いネットワークを構築でき、それぞれの現地市場でより早く成長できる。ゼロから海外展開する場合とは異なり、ニアショアリングを行っていれば、どんなに小さくてもすでに現地に拠点があるため、それを足掛かりとして海外展開を進めていくことができる。

投資家の注目を集める

スケールアップモデルの場合と同じく、H-1Bビザの発給停止がきっかけで、ニアショアリングは海外の開発スタジオと戦略的なパートナー関係を築くための現実的な方法となっている。オフショアリングとは対照的に、ニアショアリングのパートナーは、時差がなく、より緊密かつ迅速に動けるため、オフショアリングの場合よりも重要な役割を任されることが多い。アジャイル開発のように、製品やサービスのテスト、反復、修正という一連の工程を短い期間にまとめて何度も繰り返すことが必要なスタートアップにとって、そのような敏しょう性は非常に重要だ。これがアウトソーシングのチームになるとアウトプットが限定的になるし、フリーランサーは複数社のプロジェクトを同時に抱えるため、企業のビジョンに深く共感して働くことはない。

ニアショアリングであれば、スタートアップは特定のビジネス分野やテクノロジーに関する専門性を備えたパートナーを見つけることによって、市場投入までの時間を短縮できる。システムをゼロから構築するのではなく、バージョン2.0を投入するところから始められる。なぜなら、より幅広い選択肢から専門家を選べるということは、業界の仕組みをすでに理解しているチームと提携できる可能性が高まることを意味するからだ。ニアショアリングのパートナーには、さまざまな産業分野に関して、企業が直接採用する人材では知り得ないレベルの膨大な知識がある。そのため、ニアショアリングのパートナーという心強い相手がいれば、企業は優秀なチームをゼロから集めるという難しい仕事にわざわざ取り組む必要はない。

資金調達の面でも、ニアショアリングが持つ同時性、敏しょう性、即応性はスタートアップにとって追い風となる。投資家は、ニアショアリングを行っている企業は、挑戦しようとしている潜在市場について現場からインサイトを得ており、リモートチームを活用して成功するビジネスモデルを持つ企業だと考える。世界全体が完全デジタル化へと向かう今、成長を促進するリモート開発をすでに導入しているスタートアップは間違いなく投資家を振り向かせることができる。

チームの多様化を促進する

ニアショアリング先を探す米国企業がまず目を向けるのは中南米だ。中南米は米国から近く、インターネットの普及率も向上しており、高度なスキルを持つ開発者が非常に多くいるため、ニアショアリング先として非常に魅力的な場所である。

ニアショアリングではダイバーシティ(多様性)が中核的な役割を担うことも注目すべき点だ。現在、テック業界ではヒスパニック系従業員の割合が突出して低く、全体のわずか16.7%にすぎない。物理的に離れているとはいえ、中南米にニアショアリングすれば、異なる社会的・経済的背景を持つ人材を社内に迎えることになり、業界全体における彼らの存在感が目に見える形で向上し、平等化への確かな基盤が据えられる。

一部の研究でも、多様性はチームの創造性に影響を与え、企業の利益増加にもつながることが証明されている

さらに、ニアショアリングは、より自然な形で多様性を向上させる。外国人のチームメンバーはキャリアを築くために、自宅、友人、家族を後にする必要がない。海外で働いたことがない人にとって、米国に移住するというのは気が遠くなるような大仕事だろう。生活水準が変わり、新しい文化に慣れなければいけないのだから、当然だ。ニアショアリングであれば、慣れ親しんだ場所で働くことができるため、ビジネスプロセスのスピードに慣れるまでに必要な時間も少なくて済む。地元の人間関係から感情的なサポートを得ることもできる。これは今のような状況において、職場でもプライベートでも従業員の福祉を守るために重要なことだ。

適切なパートナーを見つける

適切なニアショア先を見つける鍵はリサーチだが、スタートアップには、候補地の場所や現地のエコシステムについて詳細な分析を行う時間もリソースもないことが多い。適切な人材をニアショアで見つけるには、ニアショアリングパートナーに、現地人開発者のスカウト、調査、彼らとのコミュニケーションを担当してもらうことが、最も実際的である。

適切なニアショアリングパートナーを見つけるには、該当する業界における実績があり、ニアショア元にあるスタートアップから良い評価を受けているかどうかを確認することが必要である。そのパートナーが拠点とする地域で高い知名度を持っているかどうかも重要なポイントだ。インターネットでそのパートナーのプレスリリースや、主催イベント、ウェブサイトの全体的な内容をチェックして、顧客からの依頼が途切れない、評判の良い企業かどうかを確認する。

適切なニアショアパートナーが見つかったら、希望する場所に置くチームが文化的な面で何を必要としているかを理解するために、彼らから情報を収集する。ニアショアパートナーはあなたの会社のいわば開発パートナーになるのだから、彼らを自社の研究開発部門として活用できる。彼らは、あなたの会社をテック面でサポートし、適切なタイミングで適切なチームを編成できるようアドバイスし、スタックや手法について指針を与え、チームが生産的に働ける環境を整えてくれる存在だ。対照的に、フリーランサーを使うことにはリスクがある。なぜなら、現地の具体的なニーズを把握することができるとは限らないからだ。文化面での理解が欠けると、パートナーを見つけることはできない。代わりに、あなたのスタートアップが真に目指すものではなく、表面的な部分だけに注目するベンダーが見つかってしまうので、注意が必要だ。

相性が良いニアショアパートナーが決まったら、詳細な契約と秘密保持契約をすべてのチームメンバーと締結することが必要だ。ニアショアリングの場合、ある程度は相互に信頼することが必要だが、スタートアップのライフサイクルの中で極めて初期段階にあるこの時点では、自社のプロセスやデータが競業他社に漏れないようにすることが重要である。ニアショアパートナーの財務状況が健全であり、長期的なモデルに耐えうる状態であることも確認しておく。それに応じて、職責や成果物を測る基準をサービスレベル契約で定義する。これらの手続きをすべて完了したら、いよいよ、有意義で長期的なパートナーシップの構築に専念できる。

新しいノーマルに順応する

新型コロナウイルス感染症により、人材採用はリモート優位の領域になった。従来型の採用方法は見直されており、生産的に働くために必ずしもオフィスに出勤する必要はないことに企業も気づき始めている。実のところ、外国人従業員のビザ費用や管理費が不要になることで、企業のコストは大幅に削減される。

リモート勤務に最適化された慣行を時間の経過とともに企業が確立していけば、ニアショアリングはさらに増えていくだろう。人々は、キャリア開発、福祉、倫理すべてが守られるチームで働きたいと願っており、ニアショアリングは、生活環境を変えずにそれらすべての条件を満たすことができる。

創業初期からニアショアリングを行うスタートアップは、採用制限に苦しむ大手テック企業と競合することになるかもしれない。パンデミックがいつ終息するかわからない今、ビザの発給再開の時期を予測することは難しいため、テック企業は別の方法で開発チームを構築しなければならない。スタートアップには、ワークフローを大幅に変えることなく製品のリモート開発アプローチを調整できるという強みがある。また、より幅広い人材を引きつけるフェアで革新的な職場を整えるという意味でも、スタートアップは大手企業の先を行っている。

開発者は仕事のチャンスをつかむために自分の文化から離れる必要がなく、企業は多様性から恩恵を受けられるニアショアリングは、双方にとって有益だ。結局のところ、H-1Bビザ発給停止は、テック業界おいて、世界中のリソースを活用して最善の成果を生み出すという真のグローバル化を促進したのかもしれない。

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(翻訳:Dragonfly)

Axonが警察向けの新製品を発表、だが今の警察に本当に必要なのは新しいツールなのか

ボディカメラでシェアトップのAxon(アクソン、旧称Taser)が警察向けの新しいテックツールをいくつかリリース予定だ。これにより、警官がペーパーワークにかける時間が削減され、応答時間の短縮が見込める。しかし、警察の基本的な使命とそれを果たすための手段とが疑問視されている今、本当に必要なのはこうしたテックツールなのだろうか。この点については、アクソンのCEOであるRick Smith(リック・スミス)氏でさえ懐疑的である。

アクソンの新製品が、米国の警官と救急隊員にとって役に立つものであることは間違いない。まず、ボディカメラに記録された音声を自動的に文字起こしできる機能がある(当然、機械学習を利用したものだ)。筆者自身、仕事で大量の話し言葉を扱う必要があるので、こうしたツールの便利さはよくわかる。

ボディカメラの役割の1つは、警官と他の人とのやり取りを記録することだが、そのような記録は分類し、整理された形で参照する必要がある。そのためには、ビデオを再生しては止めるという操作を手動で繰り返しながら、どの時点でどのようなやり取りがあったかをメモしていく面倒な作業が必要となる。大まかな文字起こしがその場でできれば、重要な出来事を見つけて手早くリストアップできるので時間と労力の節約になる。

ビデオに記録された単語やフレーズを検索して、対応するタイムコードを関連付けることができる。画像クレジット:Axon

 

ここで重要なのは「大まかな」という言葉だ。これはあくまでも文字起こし用であって、法廷で使える文書を作成するものではない、とスミス氏は明言する。しかし、アクソンは「高精度が期待される現在の市場でも価値のある製品を設計することを目指した」と同氏は言う。

筆者が気になったのは、このサービスも、他のサービスと同様、機械学習用のトレーニングデータに含まれていない話し方をする人については、誤差の発生率が高くなる可能性があるという点だ。プエルトリコ訛りや南部訛りのある人、あるいは地域独特のスラングや方言を使う人の話し方がトレーニングデータに含まれていない場合、そうした人たちの会話はアルゴリズムでうまく処理されない。スミス氏によると、アクソンは自社の音声認識アルゴリズムをライセンス供与して、リアルワールドデータでテストしてから採用したのことだが、バイアスを早いうちに取り除くために多様なデータセットを保持することついては、同氏は多くを語らなかった。たとえアルゴリズムを書いたのがアクソンではなかったとしても、これは倫理的にも実用的にも重要な点であるため、同社の今後の対応に期待したいところだ。

Image Credits: Axon

アクソンのもう1つの新製品は、911番緊急通報時の警官派遣や、警察犯罪処理センターの業務で使用されるさまざまなツールを統合するシステムだ。

スミス氏はこう語る。「無線システム、転送用コールシステム、警官派遣用ソフトウェアなどがある。緊急通報に応対する通信指令係は通常、ソフトウェアのコマンドラインインターフェースのような画面に猛烈な速さでメモを打ち込みながら現場の警官とはプッシュ・トゥ・トーク 式の無線で話す。しかもこの無線は専用チャンネルを使用していない。こんなに非効率的な環境で重要な任務を遂行してきた彼らはすごいと思った。これらのシステムは統合されておらず、各システムが別々の建物に配置されている場合もある。バラバラなシステムをつなげる接着剤のような役割を人間が担っているため、人件費がかさみ、物事は複雑になる。新製品によってすべてのツールが1つのシステムに統合されることになる」。

この新製品「Axon Respond」ソフトウェアにより、通信指令係は手元ですべての作業を一括して行えるようになり、急行できる警官が現場近くにいるかどうか、その警官の専門スキルは何か、といった関連データも同時に確認できるようになる。もちろん、911番通報がよりスムーズに処理され、適切なリソースを適切な場所に配分できるのであれば、どのようなツールでも大歓迎だ。

以下のコンセプト動画でアクソンの構想がどんなものかを見ることができる。動画内のツールは開発中であり、まだ実写の紹介動画を撮れる段階ではないようだ。

このツールの目的は、単により多くの警官をより早く現場に向かわせることではない(もちろん、それも可能ではある)。

スミス氏はこう説明する。「当社のライブストリーム配信サービスを、戦術的な目的以外で利用したいという顧客がいる。メンタルヘルスの専門家をライブでつなげて対象人物の精神状態を評価してもらうという使い方を検討しているようだ。銃と警棒を持った警官ではなく訓練を受けたメンタルヘルス専門家が対応すれば、まったく違う結果になる可能性がある」。

乱用はツールのせいではない

これまで紹介したツールはどれも優れた製品のようだ。しかし、米国は今、警察官による権力と装備(銃、警棒だけでなく、ボディカメラも含まれる)の乱用が引き起こした大きな危機の中で苦闘している最中だ。

ボディカメラは、表向きは説明責任を果たすためのツールに見えるが、実は警察はボディカメラとその録画映像の使用について非常に慎重で、警官が悪者に見える場合は公開せず、警察に対する印象が向上する場合は公開する、というのがボディカメラに対する批判の大部分を占める。実際にそうしたことが行われているのを目にしたことがある筆者にとって、これは仮定の話ではない。この点についてどう考えているのか、スミス氏に尋ねてみた。同氏は、そのようなことが実際にあったことを否定はしなかったが、テクノロジーを悪者扱いすることには異論を唱えた。

スミス氏は次のように語る。「テクノロジーは万能薬ではない。テクノロジーによって警察が抱える問題が解決されることはない。とはいえ、ボディカメラなしでは解決できない問題もある。ボディカメラはジョージ・フロイド氏の死を防ぐことはできなかったと人は言う。確かにその通りだ。しかし、ジョージ・フロイド氏の事件が継続的な変化を引き起こせるのは、ボディカメラがあったおかげだと思う。ボディカメラがなければ、今のように米国全土の警察幹部が懸命に対応することはなかっただろう。法執行機関の幹部たちが米国全土で、『あれは間違いだった。ジョージ・フロイド氏は警官に殺された』と言っている。こんなことは普通ではあり得ない。警察が公の場で同胞を批判するなど、あり得ないことだ。だが、今回のケースでは、十分な証拠が残されていた」。

確かに、ボディカメラの映像のおかげで、フロイド氏を殺害した警官の行為はより明白となった。しかし、これに対しては、近くにいた一般人が事件を撮影していなければ、ボディカメラの映像も公開されなかった可能性は十分にある、というもっともな反対意見がある。米国民の半数が公開を求めていたが、問題の映像は事実上、警察の担当部門の手から力ずくで取り上げる必要があった。

アクソンは、自社のツールを今、警察に売り込むことによって、将来的に法執行機関にとって重要な存在になるための準備をしているようだ。しかし、仮に主要な警察部門の多くが資金不足、大幅な人員削減、組織再編に直面したら(実際、10年以内にそうなる可能性は高い)、アクソンの立ち位置はどうなるのだろうか。筆者はスミス氏に想像を促してみた。

スミス氏は次のように語った。「当社は、同業他社よりも高い順応性を持つ企業でありたいと思っている。政府はこれまで、テクノロジーを調達する際に、すばやく臨機応変に対応する企業ではなく、複雑な調達システムを管理することに長けている企業を優遇してきた。後者のような企業になれば、今抱えているのとまったく同じ問題を作り出してしまうため、当社はそうなることを意図的に避けてきた」。

スミス氏はこう続けた。「それで『リスクを恐れずに、まったくの白紙から思い切ってやってみたらどうか』と提案してみた。それが成功すれば、顧客の方から当社の製品を欲しいと言ってくるだろう。当社が2009年にクラウドソフトウェアの販売を始めたとき、当時の顧客は、クラウドソフトウェアを使うのは違法だと言い、その後数年は、『そんなものを使うなど、とんでもない』という反応ばかり返ってきた。しかし、今や90%の政府機関にとって、クラウドの方がはるかに安全だ。当社は、その姿を現し始めたばかりの新しい世界に向けてモノを作る。こうして作られる新しいモノは化学反応を促進する触媒のようであり、そのせいで難問に直面する場合もあるが、それは同時にチャンスでもある」。

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(翻訳:Dragonfly)

黒人女性起業家のための資金調達への道を拓く「When Founder Met Funder」イベント

救急救命士の黒人女性・Breonna Taylor(ブレオナ・テイラー)氏を就寝中に射殺した警察の残虐行為など数々の事件を受けて人種的正義が叫ばれる中、テック業界の企業や投資家は「Black Lives Matter」を叫ぶだけでく、黒人の命が重要であることを示すべきときが来ている。クラウドファンディングやコミュニティ構築などの事業を手掛けるHuman Utility(ヒューマン・ユーティリティ)のCEOを務めるTiffani Ashley Bell(ティファニ・アシュレイ・ベル)氏の言葉を借りれば、「雇用して、送金せよ」ということになる。

黒人女性は資金不足でテクノロジー業界での評価が低い。digitalundividedの2018年の報告書によると、2009年以来黒人女性が受けてきたのは全ベンチャー資金の6%だ。アメリカン・エキスプレスによると、2014年から2019年にかけて黒人女性が所有する新しいビジネスが50%増加したにもかかわらず、依然低い数値になっている。

All Raise(女性起業家や資金提供者の成功を支援する非営利団体)が主催する黒人女性起業家(BFFs)のためのイベント「When Founder Met Funder」は、コミュニティを育成し、BFFsへの投資をさらに促進することを目的としている。2年目を迎えた同イベントは、Incredible Healthの共同創業者兼CEOであるIman Abuzeid(イマン・アブゼイド)氏、Slutty Veganの創業者兼CEOであるPinky Cole(ピンキー・コール)氏、Y CombinatorのCEOであるMichael Seibel(マイケル・セイベル)氏、Cake Venturesの創業パートナーであるMonique Woodard(モニーク・ウッダード)氏などが参加した。

このイベントの共同企画者であるDomonique Fines氏(ドミニク・ファインス)はTechCrunchに対し「さまざまな内容の講演ができることはとても重要でした。私は、黒人女性の起業家がいることを知ってもらいたかったのです。彼女たちがみんな同じ道を歩んでいるわけではないかもしれませんが、同じ道を歩んでいないからといって同じ成功を収められないわけではありません」 と語った。

All RaiseのEngagementディレクターで、When Founder Met Funderの共同クリエイターを務めるDomonique Fines(ドミニク・ファインス)氏(画像提供:All Raise)

ファインズ氏は、このAll Raise主催イベントに参画する前、シリコンバレーのアクセラレーターであるY Combinatorでイベントのディレクターを数年間務めていた。「バッチが大きくなるにつれ、黒人女性の数が少なくなってきた」と同氏は振り返る。

Y Combinatorの最新のスタートアップのバッチでは、起業家の9%が女性で16%の企業に女性の起業家がいたが、黒人の起業家はの4%、企業に黒人の起業家がいたのは6%だった。しかし、Y Combinatorは黒人女性起業家の統計を出さなかった。

「私にとって重要だったのは、人々と話しているのを心地よく感じるという経験を彼女たちに与えることでした。私はこれまでそのような光景を見たことがありませんでした」とファインズ氏。

同氏によると、YCのイベント後にオークランドに戻ったとき、周りには多くの黒人女性が集まったそうだ。その中の黒人女性の起業家たちは「自分が劣っていると感じることなく、自分たちが答えを必要としている質問をしてもその回答がなかっただけです」と振り返ったそうだ。

「それが彼女の情熱だった」とファインズ氏。なお、名門VCであるAndreessen HorowitzのCultural Leadership FundのMegan Holston-Alexander(ミーガン・ホルストン-アレクサンダー)氏とPlanet FWDの創業者であるJulia Collins(ジュリア・コリンズ)氏は、すでにAll Raiseにボランティアとして参加していた。

「私たちの頭の中にある考えを1つにまとめてみました。戦術的で役に立つようなことができるようにしたいと思っていましたが、When Founder Met Funderはただのイベントではありませんでした。これは経験であり、私たちは黒人女性が1年中必要な助けを受けられるようにしたいと思っています」とファインズ氏。

イベントに加えて、今年はコミュニティの次のステップを決めるためにSlackグループが結成された。現在、いくつかのアイデアも出始めている。具体的には、起業家のブートキャンプ、イベントへのスピーカーの追加、より良いネットワーキングやワークショップの促進などだ。もちろん、最終的にはグループ全体の方針次第だ。

「いま何が必要なのかを正確に知るために彼女たちを調査する予定です。調査内容は、世界で何が起こっているかによって毎日変化します。私たちが彼女たちのためにやっていることが、非常に役に立つものであることを確認したいと思っています」と同氏。さらに資金調達やデッキ構築についての小規模なクラスを開催することも想定している。

「これらは人々が多くの援助を必要としています。しかし、彼女たちはまたそれについて本当に正直に話してくれる人を必要としています」と続ける。セイベル氏はイベント中のコリンズ氏との会話の中で、この正直さの要素に触れ、彼はスタートアップの資金調達をしていたときの話をしてくれた。

「私がスタートアップを始めたのは2006年で、私たちのようにスタートアップをやっている人はほとんどいませんでした」と彼は聴衆に語った。「あなたが予想していたのは明らかな差別だったと思いますが、実際にはフィードバックのない別のものを得ました」と続けた。

彼は続けて「人々は批判的になることを恐れている」と語り、それは、ある方法で見られることを恐れているからだと説明した。つまり「人々は私に批判的になることを恐れている」ということだ。こういった経験を経てセイベル氏は「自分が創業者に誰もが考えていることを伝えるタイプになった」と語った。「賛成であろうと反対であろうと、人々が何を考えて何を言わないのかについて、いい行動のイメージを持ってほしい」とセイベル氏。

When Founder Met Funderイベントには、1日を通して120人の起業家と40人のVCが参加した。ファインズ氏の次のステップは、彼らの連絡先をベンチャーキャピタリストに提供することに同意を得ることだ。「多くのVCが会話を続けたいと思っていることに気付きましたが、起業家の皆さんにもそれを快く感じてもらえるようにしたい」と同氏は語った。

来週には、起業家のニーズをよりよく理解し、どこでイニシアチブを取るべきかを理解するために起業家に追加調査を実施する予定だ。「私は、コミュニティの結びつきを維持していきたいと思っています。これは簡単なことではないので、彼女たちには継続的にプッシュしてもらいたいと思っています」と同氏は締めくくった。

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画像クレジット:All Raise

(翻訳:TechCrunch Japan)

AIが描いた選挙区はゲリマンダーを止めるのに役立つ可能性がある

ゲリマンダー(ジェリマンダーで)とは、政治プロセスに影響を与える最も陰湿な方法の1つだ。票の集め方や数え方を合法的に変えることで、結果に影響を与えることができる。解決策は、公平な手で投票区を描くAIシステムかもしれない。

通常、州内の選挙権に対応する選挙区は人間が決めている。会派の両側にいる党派的な工作員は、このプロセスを利用して敵対的な有権者を排除して自分たちの有権者を囲い込むような歪んだかたちを作り出そうとしてきた。それはとても効果的で、いまでは当たり前のことになっている。実際に文字のような形をした選挙区を集めて作られたフォントもあるほどだ

この問題は、いったどう解決すればいいだろうか?Wendy Tam Cho(ウェンディ・タム・チョー)氏とBruce Cain(ブルース・カイン)氏は「民主主義」 をテーマにした特集記事 「Science」 の最新号で、少なくとも部分的には選挙区の区割りを自動化するべきだと主張している。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で教鞭をとるチョー氏は、何年にもわたってコンピュータによる区割りを変更を要求してきたが、ちょうど昨年ACLU(米自由人権協会)の訴訟で専門家の証人となった。

彼らの研究を説明するエッセイの中で、彼らはこのアプローチを次のように要約している。

今後は、ほかの方法では不可能な結果を生み出すために、人々が機械と協力して作業できるようになる。そのためには、人工知能(AI)と人間の知能の長所を生かし、短所を最小限に抑える必要があるだろう。

機械は、人間が想像を絶するほど大きく複雑な情報量をうまく処理することで合理的な意思決定を強化し、適切な情報を提供してくれる。一方人間は、その地形の中で自分の考えに合った偏った経路にしたいという誘惑に抗し切れないことを示してきた。

選挙区割りを分割する方法は事実上無数にあるため、AIエージェントはこれらの形状を制限する基準に優先順位を付ける必要がある。例えば、150平方マイル以上の区域を設定したくない州があるとしよう。この場合、実際にゲリマンダーエリアでしばしば起こるのだが、蛇のようないびつな区分け地区が他の地区の端にずらりと並ぶことを回避することも考慮しなければならない。そして、数え切れないほどの歴史的、地理的、人口統計学的な考察についても検討する必要がある。

ChoとCainの記事に掲載されているこのイラストは、区割り問題を簡略化したもので、誰が描くかによって党派的な選挙区がどのように作られるかを示している(画像クレジット: Cho/Cain/Science)

言い換えれば、区分けの根拠は人によって証明されなければならないが、「天文学的な数が存在する区分け方法について綿密な調査」をしなければならないのは機械ということだ。

これをどのように機能させるかは個々の州に委ねられており、区分けは各州が独自の規則と権限を持つ。問題は明らかだろう。政治の世界に入ると、人間は「偏った道筋を描く」傾向があるという複雑な状況に陥ってしまうのだ。

チョー氏はTechCrunchの取材で、区割りの自動化はほぼすべての州のプロセスに潜在的な利益をもたらすが、「その過程における透明性は、国民の信頼を醸成し維持し、偏見の可能性と認識を最小化するために不可欠です」と強調した。

「いくつかの州はすでに区割りの自動化を採用している」と同氏は指摘した。ノースカロライナ州では、コンピューターで描かれた1000枚の地図から無作為に選んでいるそうだ。しかし、自動区割りを広範な地域に適用するにはさらなる国民の信頼を得る必要があるだろう。

テクノロジーと政治を融合させるのは簡単なことではない。その原因の1つは、選挙で選ばれた役人のテクノロジーに対する無知がある。また、一部にはシステムに対する漠然とした不信感がある。それは、必要であれば正しいものに変えられるが、一般市民には理解しにくい。

「これらのモデルの詳細は複雑で、統計学、数学、コンピュータサイエンスの知識をかなり必要としますが、政治制度や法律がどのように機能しているかについても同様に深い理解が必要です。同時に、すべての詳細を理解するのは大変なことですが、一般市民や政治家がこのレベルの理解を必要としているとは思えません。一般の人々はワクチンやDNA検査、航空機の飛行などの技術的な詳細を理解することなく、その背後にある科学を信じている」とチョー氏は語る。

確かに、飛行機が落ちるかどうかを心配する人はほとんどいないが、飛行機は1世紀ほどの間にその信頼性を実証してきた。一方、ワクチンにとっての最大の課題は、新型コロナウイルスの感染が蔓延している現在の先にあるのかもしれない。

「社会は現在大きな信用不足を抱えています。信頼は獲得されるべきであり、獲得されなければならない。私たちは信頼を生み出す過程を発展させなければならない」と同氏。

しかし重要なのは、統計学者や機械学習の専門家でなくても、これらの方法で生成された専門家チェック済みの地図を見られること。その地図は、さまざまな思惑で決められた区分けよりも公平になるはずだ。

国民が何かを受け入れるための最善の方法は、それがきちんと動作することを確認することだろう。我々は郵便投票のように、すでに有効な手段をいくつか持っている。第1に、ノースカロライナ州のシステムがある。同州のシステムは公平な選挙区をコンピュータで確実に区分けできることを示している。実際に1000枚の公平な地図を簡単に作成できるので、いい所だけを切り取る「チェリー・ピッキング」の問題はない。

第2にオハイオ州の事例は、選挙に有利な区割り(ゲリマンダー)と事実との対比を示している。この区割りは、無作為性や人口統計学的な条件ではなく、党派の干渉によってのみ説明できるからだ。

AIがあれば、普通は人間が輪の中にいるのが賢明だし、政治の世界ではAIがあれば二重にそうなる。
自動化されたシステムの役割は慎重に制限されなければならず、その限界は適切に説明されなければならない。そして既存プロセス内での役割は、便宜性よりも慎重な考慮の結果であることが示されなければならない。

「一般の人々は、これらのアルゴリズムを生み出した科学界の中での熟考や熟考の感覚を持つ必要があります」とチョー氏は言う。

これらの手法がすぐに広く使われることはなさそうだが、今後数年のうちに、他の理由で地図が書き直されるにつれ、公平なシステムをプロセスに参加させることが、おそらくプロセスの標準的な部分になるかもしれない。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

TwitteとFacebookがトランプ大統領の「2回投票せよ」発言に強く抵抗

ノースカロライナ州の有権者は複数回投票すべきだと示唆したトランプ大統領による発言は、Twitterの選挙健全性規則に違反している。米国時間9月3日に発信した一連のツイートで、大統領は郵便投票システムを「チェック」するために2回投票するよう米国市民に推奨した先の発言を詳しく説明した。

トランプ氏は最初のコメントを、9月2日に地元テレビ局のインタビューで発言した。「投票したらそのあと投票所に行って自分の投票結果をチェックすること、なぜなら集計されてからではできないから」と同氏は言った。

「つまりまず郵送して、それから投票に行く。もしシステムが言われているようにちゃんと作られていれば、当然投票できないはずだ」。

Twitterは9月3日、このコメントに関連する大統領の2件のツイートに「公共の利益に関する警告」を付加し、市民および選挙の健全性に関わる規則を説明した。問題のツイートが違反したのは、「個人の投票の健全性を阻害する可能性のある行為を推奨する」ことに関する部分であるとTwitter広報担当者のNick Pacilio(ニック・パチィリオ)氏は語った。Twitterはこれらのツイートの配信先を制限し、いいね!、リプライ、およびコメントのないリツイートを禁止した。

トランプ氏の郵便による投票に対する攻撃は、Facebook(フェイスブック)にとっても一線を超えるものだった。同社は最近のトランプ氏の選挙に関するコメントの動画が説明なくシェアされた場合や大統領の発言を支持している場合は削除すると言っているが、現時点ではまだ見つかっていない。

「このビデオは選挙詐欺を禁止する当社のポリシーに違反しているため、記録を訂正するためにシェアされるもの以外は削除する」とFacebookポリシー・コミュニケーション担当ディレクターのAndy Stone「アンディ・ストーン)氏は語った。

FacebookはTwitterが自社ルールに反するとみなしたのと同じ発言に、独自の事実確認警告を付加した。現在トランプ氏のFacebook投稿の末尾につけられたラベルには、米国人は「郵送システムが正しく機能している」ことを確認するために二度投票するべきであることを示唆する大統領の発言を否定する内容が書かれている。

この事実確認ラベルには「米国における郵便による投票は信頼に値するという長い歴史を持っており、今年も同様であると予測されている」と書かかれており、同社が他の選挙関連投稿に付加している一般選挙情報ラベル(未訳記事)よりも具体的だ。

一連のコメントは、米国が11月の選挙で採用を予定している郵便による投票に疑問を投げかけようとするトランプ氏による最新の行動だ。この数カ月、同氏は郵便投票の安全性を批判する根拠のないあるいはまったく誤った主張を繰り返している。郵便による投票システムは米国ですでに不在者投票に利用されている。11月を間近に控え、そうした発言は投票権利団体の懸念材料となっている。

「これは正しい方向への第一歩ではあるが、ドナルド・トランプ大統領に関してFacebookが自身の利用規約の強制を拒んでいる事実は残る」とVoteAmericaの創業者であるDebra Cleaver(デブラ・クリーバー)氏は語った(未訳記事)。

「昨日トランプ氏はノースカロライナ州の有権者に公然と不正投票を促した。これはソーシャルメディアや他のプラットフォームを使って虚偽情報を広めようとするトランプ氏の大がかりで危険なやり方の1つであり、米国の選挙に対する信頼を覆すことが最終目的と思われる」。

新型コロナウイルス危機は、これまでになく多くの米国人が郵便による投票を利用しようとしていることを意味しており、この投票方法の安全性と信頼性は専門家によって広く認められている。

トランプ氏の発言を受けノースカロライナ州選挙管理委員会は、2回投票することは同州の第1級重罪であるという声明を発表した。

「1回の選挙で2回投票することは違法である」とノースカロライナ州選挙管理委員会のKaren Brinson Bell[カレン・ブリンソン・ベル)委員長は語った。

「選挙で2回投票しようとする、あるいはそのような行動を示唆する行為はノースカロライナ州法に反する」。

画像クレジット:Chip Somodevilla

関連記事:Facebook to block new political ads 1 week before Nov 3, adds more tools and rules for fair elections(未訳記事)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国家安全保障局の通話記録収集は違法と控訴裁判所が判決

米国家安全保障局(NSA)が米国の通話記録の詳細数十億件を収集したプログラムが、米国時間9月3日に連邦控訴裁判所で違法と裁定された。

第9巡回区控訴裁判所は、NSAによる通話記録の「一括大量収集」は違法であると判決したが、判事団は同プログラムを違憲とは判断しなかった。

NSAは、第215条として知られている(未訳記事)、911テロ攻撃を受けて作られた新法を根拠に、日々の通話記録を提出するよう米国大手電話会社を説得し、毎年数十億件の通話記録を集めた。同局はこのデータを元に捜査対象間の繋がりを調べた。通話記録には誰が誰にいつ電話をかけたかが記録されているが、通話内容は含まれていない。

プログラムの詳細は、元NSA請負業者だったEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏が2013年に暴露(未訳記事)した。しかしその通話記録プログラムは、過剰な収集、合法性への疑問などさまざまな問題を指摘され、昨年中止された。

米国自由人権協会(ACLU)のPatrick Toomey(パトリック・トゥーミー)上級法務顧問は、今回の判決をプライバシー権利の「勝利」であると表明した。

「判決はNSAによる米国通話記録の一括大量収集が憲法違反であることを明らかにした。またこの決定は、政府が個人を訴追する際、証拠を集めるため秘密の調査を行ったことを通知しなければならないことを認めた」とトゥーミー氏は語った。「こうした保護は政府による新奇なスパイ道具の使用が蔓延する今日には不可欠だ」。

第9巡回区の裁判には、Bassaly Moalin(バサリー・モーリン)氏ほか3名が関わっており、2013年にアル・シャバブの武装グループに送金した罪で有罪判決を受けた。モーリン氏の判決理由の一部は、NSAが収集した通話記録によるものだったが、このデータが果たした役割はごくわずかであったため、彼らの有罪を覆すことはなかったと報じられた(Politico記事)。

NSAは長年にわたり同プログラムはテロ攻撃を阻止(ProPublica記事)し、米国国土を防衛するために不可欠である(Washington Post記事)と主張してきた。過去の政権は同プログラムが50以上のテロ攻撃を防いだと主張した。しかし、議会による精査の結果(ProPublica記事)、その数値は識別された個人であるモーリン氏1名へと下方修正された(ProPublica記事)。

裁判所はモーリン氏の有罪を破棄しなかったが、3名の判事団はプログラムの有用性と有効性に関する政府の過去の発言を批判し、「機密文書の内容と整合性がない」と指摘した。

人権の専門家でCato Institute(カト研究所)上級研究員のJulian Sanchez(ジュリアン・サンチェス)氏はツイートで、「この第9巡回区の結論は、NSAの通話記録一括収集は違法でありおそらく違憲であるということだが、同プログラムは役に立たないのでどちらでもいい」と投稿している。

NSAは以前の主張を維持するのか尋ねたところ、Mike Dusak(マイク・ドゥサック)広報官はコメントを拒んだ。

画像クレジット: Saul Loeb / AFP/ Getty Images

関連記事:NSA improperly collected Americans’ phone records for a second time, documents reveal(未訳記事)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Oracleまた敗訴、米連邦高裁は国防省の1兆円のJEDIクラウド契約は合法と判決

Oracleは当初から単一企業による1兆円、向こう10年に渡る国防省クラウドネットワーク(JEDI)の契約先選定プロセスを嫌っていた。Oracleは「この選定プロセスはAmazonをえこひいきするものだ」と聞くものがあろうとなかろうと誰彼構わず主張し続けた。

しかしこの件の訴訟でOracleはまたも敗訴した。8月2日、連邦控訴裁判所は「単一企業を受注先とするこの選定基準は根本的に欠陥があり不当だ」とする Oracle の訴えを退けた。また同裁判所は国防省の募集要項(RFP)作成者に Amazon の元社員が含まれていたことが利益相反にあたるとするOracleの主張も認めなかった。

後者の点について裁判所は「契約担当者に含まれていた(Amazonの)元従業員が利益相反の可能性について適切な評価を行ったかどうかという点について、当裁判所はそのような評価が行われたと判断する」と判示した。

裁判所はさらにOracleは契約に応募するために必要とされる基本的な要件のいくつかを欠いていたとして、同社の主張の一部は訴えの利益がないと判断した。また主張の他の部分についても「入札過程における調達法規に関するいかなる違反も国防省には認められなかった」とした。

今回の控訴は調達契約を白紙に戻そうとするOracle の試みとして3回目、トランプ大統領の介入も含めれば4回目だった。実のところ2018年4月に募集要項が公開される前にOracleのサフラ・カッツCEOが「これはAmazonを不当に利するプロセスだ」と大統領に訴えている。2018年11月には、政府説明責任局(GAO)がOracleの抗議をすべて却下した。翌月、同社は連邦裁判所で1兆円の訴訟を起こしたが、昨年8月に敗訴した。昨日の判決はその判決に対する控訴に対するものだった。

これらの訴訟は全てAmazon に対する不当な優遇があったと主張するものだったが、実際に契約を得たのは Microsoft だった点は注目に値する。このような結果であっても契約は現在も多数の訴訟に悩まされている。Amazonは「契約を失ったのは大統領の干渉が原因であり、本来この契約はAmazonが得るべきものだった」と主張している。

数々の訴訟も含めて、この巨大契約に関連するドラマは一向に終わりそうもない。

画像:Bloomberg / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

GMとフォードが新型コロナで米政府と契約していた人工呼吸器生産を完了

米国内での新型コロナウイルスの広がりを受け、数多くの自動車会社やメーカーが個人防護具や人工呼吸器の不足を補おうと工場を改造する計画を発表した。

そしていま、米自動車メーカー2社がそれぞれ結んでいた数百万ドル規模の人工呼吸器製造の契約を完了した。2社合わせて8万台を米政府に納入した。

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は9月1日、3万台の救命救急人工呼吸器を国家戦略備蓄向けに製造するという米保健福祉省(HHS)との契約を完了させたと発表した。GMは人工呼吸器の多くは病院に配備されたと述べた。Ford(フォード)でも契約の人工呼吸器5万台の製造が完了したBloomberg記事)

GMとフォードは単独で取り組んだわけではなかった。両社ともまったくゼロの状態から5カ月以内に数千台の製造体制に加速させるのにパートナー企業と力を合わせた。GMはインディアナ州ココモのエンジンプラントで従業員1000人体制で人工呼吸器を製造するのにVentec Life Systems(ベンテック・ライフ・システムズ)と提携した。GMとVentecの提携は、新型コロナ問題への対応としてし企業のマッチングをコーディネートするStopTheSpread.orgの取り組みから生まれたものだ。

一方、フォードはGE Healthcare(GEヘルスケア)と提携して、ミシガン州ローソンビルロードにあるプラントで人工呼吸器を製造した。フォードの3億3600万ドル(約357億円)の契約は、8月28日にモデルA-E人工呼吸器の最終ユニットを出荷して完了した。フォードの契約は当初7月中旬に完了するとされていたが、Bloombergによると、パーツ生産の新規サプライヤーの影響で遅れが生じた。契約の延長はHHSに認められた。

契約初期に両社はトランプ大統領に批判され、攻撃さらされたが、結局大統領は両社の取り組みを称賛した。

両社の生産は拡大し、車両やパーツの組み立てに使われていたかなりの工場を医療機器製造施設へと変換できることを示した。GMはVentecとの提携を発表する前に、VentecのVOCSNという救命救急人工呼吸器の製造に必要な700以上の部品を確保できるかどうか調査しさえした。VOCSNは2017年にFDA(米食品医薬品局)に承認された多機能人工呼吸器だ。

GMは当初、製造費用を7億5000万ドル(約797億円)と見積もった。ここには、エンジンプラントの改造、人工呼吸器製造のための材料購入、製造に従事する労働者1000人の賃金などが含まれる、と情報筋は話した。しかし、トランプ政権は見積もり額に尻込みし、契約を保留した。最終的にGMは8月末までに人工呼吸器3万台を製造するという4億9000万ドル(約520億円)の契約を政府と結んだ。この契約のもとで、GMは400種類パーツから構成される、VOCSNよりもシンプルなタイプのVOCSN V+Proという別の人工呼吸器を製造した。VOCSNのほうが高価で多機能性を備えた複雑な機器だ。

フォードとGMはまた他の医療用品も手掛けた。Apolloというプロジェクトを展開したフォードは3M(スリーエム)とのコラボレーションで、フェースシールド1900万個、フェースマスク4200万枚、洗濯可能な予防衣160万着、電動ファン付き呼吸用保護具3万2000点を生産した、と述べた。

GMはウォーレンにある施設にフェースマスク生産ライン2つ、N95医療用マスク生産ライン1つを稼働させていると話した。これまでにマスク1000万枚を生産し、GM施設で働く従業員向けと地域組織への寄付用のマスクの生産を続けている、と述べた。

画像クレジット: AJ Mast / GM and Ventec

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(翻訳:Mizoguchi

GoogleがAIを利用した洪水警報システムをインド全土とバングラデシュの一部で展開

世界で2番目に人口の多い国であるインドは、世界の洪水関連死者の20%以上を占めている。毎年氾濫した川が数万の家を押し流す(ロイター記事)ことが原因だ。2年前、Google(グーグル)は支援を申し出た。

2018年に同社は、インドのパトナで洪水予測パイロットプロジェクトを開始した(Googleブログ)。パトナは歴史的に最も洪水に襲われやすかったビハール州の州都で、毎年100人を超える死者を出してきた。このプロジェクトは同地域に住む人たちに向けて正確なリアルタイム洪水予測情報を提供する。

同社のAIモデルは、世界のさまざまな河川流域から収集された、過去の洪水データを分析して、あらゆる河川流域に対する正確な予測を行う。

このプロジェクトにおいて、グーグルは単独で働いているわけではない。インドの中央水道委員会、イスラエル工科大学、バーイラン大学と協力している。またインド政府と協力して、ニューデリーの水位データ収集方法の改善も行っている。彼らは自動的にデータを水道当局に送信する新しい電子センサーを設置した。

当時得られた最初の結果は感銘を与え、同社の洪水予測イニシアチブは現在、インド全土をカバーしている、とグーグルは米国時間9月1日に発表した(Googleブログ)。

グーグルはまた、世界のどこよりも洪水が多いバングラデシュの水開発委員会と提携して、その取り組みをインドの隣接国であるバングラデシュの一部へと拡大していると語っている。グーグルが洪水予測イニシアチブをインド外に導入するのはこれが初めてだ。

洪水予測アラート

このイニシアチブの目的の1つは、生活を変容させてしまうかもしれない情報を、人々に届けることだ。インドでは、洪水の被害を受ける地域に対して、これまでに3000万通を超える通知を送信したとグーグルは語っている。また同社によれば、このイニシアチブは、25万平方キロメートル以上のエリアに広がる、2億人以上の人達のより良い保護に役立つと述べている。バングラデシュでは、グーグルのモデルは4000万人以上をカバーすることが可能で、同社はこの取り組みを全土に拡大するために取り組んでいる。

「私たちはどれくらいの規模の洪水になるかの情報を提供しています。つまり、いつどれくらいの規模の水位上昇があるかという予測です。また、氾濫原全体に洪水深度マップを作成できる地域では、ユーザーの村または地域での洪水深度に関する情報を共有しています」と書いている(Googleブログ)のは、グーグルのエンジニアリング担当副社長で危機対応責任者のYossi Matias(ヨッシ・マティアス)氏だ。

この過程で、同社はイェール大学と協力(イェール大学リリース)を行っており、さらに改善の余地があることが発見されている。

2020年にグーグルは、アラートのデザインと機能を見直し、より使いやすいものとした。またヒンディー語、ベンガル語、およびその他の7つのローカル言語のサポートが追加され、アラートのメッセージングがさらにカスタマイズされた。また、多くのアラートの警告通知時間を2倍早める新しい予測モデルも導入した。

また同社は今後、慈善部門であるGoogle.orgが、国際赤十字ならびに赤新月社連盟との協力を開始して、ローカルネットワークを構築して、スマートフォンのアラートを直接受信できない人にアラートを配信すると発表した。

「被害を受けやすい非常に多くの人たちが頼りにしているシステムを強化し、洪水被害地域のより多くの人たちに届けるための拡大を行うには、今後さらに多くの作業が必要です。私たちは、世界中のパートナーとともに、ミュニティの保護と人命救助に役立つテクノロジーとデジタルツールの開発、維持、改善を継続していきます」とマティアス氏は書いている。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:インド Google

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(翻訳:sako)

Twitterが共和党幹部の投稿したALS患者活動家の発言を改変した動画に「操作されたビデオ」ラベルを付加。

Twitter(ツイッター)は共和党院内幹事のSteve Scalise(スティーブ・スカリス)下院議員の扇動的ビデオが、改革派活動家のAdy Barkan(アディ・バーカン)氏とJoe Biden(ジョー・バイデン)氏の会話の一部を改変したとして、警告ラベルを付加した。ビデオにはScalise氏のツイートの中で “manipulated media”[操作されたビデオ]のラベルが付加されたが、今もアクセス可能である。

その扇動的ビデオは、民主党員と活動家の発言を文脈を無視して切り取り、Barkan氏の警察改革に関する会話の一部を改変するという越えてはないなら一線を超えた。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者であるBarkan氏は視線追跡補助装置を利用して会話している。

「これは私の言葉ではない。私は発声能力を失ったが、主体性や思考は失っていない」とBarkan氏がツイートで応答した。「あなたは身体障害者コミュニティー全体に謝罪しなければならない」

引用されたビデオは、警察と社会福祉に関する長い会話から切り取ったものだった。Barkan氏は “Do we agree that we can redirect some of the funding for police?”(警察ための資金の一部を振り替えることに同意しますか)と言ったかのように見える。しかし実際には、Barkan氏はBaiden氏の会話を遮り、 “Do we agree that we can redirect some of the funding?”(資金の一部を振り替えることに同意しますか)と言っていた。

ビデオでは改変されたBarkan氏の発言の後、ドラマチックな黒の背景に「警察のない。大衆が支配する。完全なカオス。あなたの街にやってくる」という文字が表示された。この脅迫的文言の後には、Scalise氏の再選キャンペーンのロゴが映し出された。

Barkan氏の発言に付け加えられた2つの単語は、質問の意味を著しく変えたわけではないが、一線を越えた編集だった。Twitter広報担当者は、当該ツイートが同社の「合成または操作されたメディア」に関するポリシーに違反したと正式に表明したが、ビデオのどの部分がルールに違反したかは指摘しなかった。

合成または操作されたメディアに関するポリシーは、Twitterが「合成されたメディアや操作されたメディアが含まれるツイートをラベル付けし、ユーザーがツイートの信憑性や文脈を把握するのを支援する場合があります」と謳っている。同ポリシーでTwitterは、「新しいビデオフレームの追加、音声の重ね録り」などは、ユーザを欺くことを意図した著しい操作であると判定する、と具体的に記載している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

韓国内での新型コロナ感染再蔓延を受けサムスンがリモートワークの準備を進める

サムスンは一部の従業員を対象に、リモートワークのトライアルを始めると報じられている。これは3月以来最大の、新型コロナウィルスの感染拡大を受けてのことだ。同社の代表者の1人によると、このパイロットプログラムはサムスンの携帯電話および家電部門の一部の従業員を対象に行われる予定(ロイター記事)で、トライアルの評価後にさらに広範に実施される可能性があるとのこと。

韓国内で確認された新型コロナウィルス感染者数は、4月に一度安定した後、この数週間のうちに再び上昇を始めている。ジョンホプキンス大学のデータによれば、8月27日の時点で過去1か月で4503件の新規症例と13件の死亡が記録され、韓国内で確認された症例の総数は1万8706件、死亡は313件となった。

これまで韓国政府は、広範囲にわたる検査、接触者追跡、および移動制限命令を通じて、病気の蔓延をほぼ阻止することに成功(ウォール・ストリート・ジャーナル記事)していた。

しかし、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「新型コロナウイルスが我が国に入って以来最大の危機」と表現した最近の流行は、韓国が新型コロナウイルスに向けての緊急対応システムを再稼働させる(ウォール・ストリート・ジャーナル記事)ことを意味する。つまり、すべての集会を10人までに制限する、より厳格な物理的距離確保命令の再発令だ。

6月に、サムスンの韓国内研究センターの1つが閉鎖され、そしてある従業員の子供が新型コロナウイルスの検査で陽性となったことを受け、1200人の従業員が自宅で仕事をするように命じられた(Business Korea記事)。4月に同社は、世界中の従業員のために地域対応チームを設置したことと、「可能な限り在宅で働くよう従業員に強く助言した」ことを発表した(サムスンプレスリリース)。

TechCrunchはサムスンに対してコメントを求めている最中だ。

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(翻訳:sako)

「ふるさとチョイス」のトラストバンクが自然災害発生時の復旧力強化を包括支援する自治体向け新サービス

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」のトラストバンクが自治体の災害復旧力強化を包括支援する新サービス

ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」運営のトラストバンクは8月27日、自治体の災害時におけるレジリエンス(災害復旧力)強化を包括的に支援する新サービス「トラストバンク レジリエンス パッケージ」の提供開始を発表した。

同サービスは、災害支援寄付(資金調達)に加えて、「減災・BCP(事業継続計画)」から「復興」までの水資源、緊急医療、エネルギーの3つのインフラ領域のレジリエンス(災害復旧力)強化を図る支援パッケージ。自治体が財源を確保しやすいように、有事のみならず平時にも活用でき、万一の際にそれぞれ有機的に即時対応できるとしている。

トラストバンクは、ミッションである「ICTを通じて、地域とシニアを元気にする」こと、ビジョンである「自立した持続可能な地域をつくる」ことを目指し、地域経済の活性化のためヒト・モノ・お金・情報の循環を促すことに注力。今回発表の「トラストバンク レジリエンス パッケージ」においても、この4資源を軸に被災自治体にサービスを提供する。

ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」のトラストバンクが自治体の災害復旧力強化を包括支援する新サービス

災害支援寄付(資金調達)では、ふるさと納税制度を活用した災害支援寄付「ふるさとチョイス 災害支援」を活用し、被災地の資金調達を支援。すでに全国1788の全自治体にプラットフォームを無償開放しており、2020年7月時点で過去約30件の災害で累計66億円超を被災地に届けているという。

水資源支援では、WOTAとの連携を通じて、災害時でも安全で清潔な水を簡単に扱えるWOTA BOXを提供。税別費用は、1台498万円。WOTAのAI水処理技術によって、一度使った水の98%以上が再利用できるようになる。

避難所での活用に加えて、排水ができない場所でも、温水シャワー・入浴・手洗いなどが可能になり、衛生環境の向上や被災者の精神的なケアにもつながるとしている。また平時では、自治体にとっても大きな投資となる水道敷設の設置が難しい地域でも利用可能。

緊急医療支援は、ふるさとチョイスにおけるクラウドファンディング型の仕組み「ガバメントクラウドファンディング」を通じて、トラストバンクと災害支援における連携実績がある空飛ぶ捜索医療団「ARROWS」とともに提供。

ARROWSは、災害発生時に被災地にいち早く駆け付け救助・救命活動を行うほか、医療・物資配布・避難所運営まで被災地が必要とする現地の医療支援を行う。平時においては、医師の高齢化や後継者不足で医療体制の維持が難しくなった地域への医師派遣や、離島過疎地の巡回診療なども行える。有事には無償支援。

エネルギー支援では、トラストバンクの地域エネルギー事業が独自に、災害時の独立運転が可能な「防災拠点向けの電力インフラ」を提供。同サービスでは、太陽光パネルと蓄電池(テスラ製Powerwall)を防災拠点に設置し、防災拠点において冷暖房だけでなく避難生活に必要な電力を賄える環境を展開する。

また平時には、設置した防災拠点で自家消費できるほか、余剰電力を地域へ売電できる仕組みを構築。エネルギー支援のサービス範囲は、防災拠点の重要な電力(冷暖房や照明など)の自立化から、施設全体の自立電源化まで対応可能。

さらに今後は、地域のレジリエンス強化につながるマイクログリッド事業においても、地域の要望に合わせて検討~運用までの支援が可能な体制を構築する。費用は、対象施設などによって変動するため個別見積もり。マイクログリッドは、送電線を通じて電力供給する従来型システムではなく、地域内に小規模分散型の発電施設や蓄電設備を設置することで、地域内で自立したエネルギーネットワークを構築する仕組み。

2012年4月設立のトラストバンクは、ふるさとチョイスを同年9月開設。同サイトは、2019年12月現在で約2億の月間PV数に到達。2020年7月現在で、契約自治体1570団体、お礼の品登録数28万点超を有する国内最大のふるさと納税総合サイトに成長。

2013年9月、ふるさと納税の制度を活用したプロジェクト型課題解決支援「ガバメントクラウドファンディング」をスタート。2014年9月には災害時にふるさと納税の寄付金を被災地に届ける「ふるさとチョイス災害支援」の仕組みを立ち上げ、全国の自治体に無償でプラットフォームを提供している。

2019年11月には、「LGWAN-ASP」を活用した自治体専用ビジネスチャットツール「LoGoチャット」を開始。2020年8月現在450超の自治体が導入しており、災害時における庁内や自治体間の情報連携など迅速な情報のやり取りが可能な環境を提供している。

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リークしたS-1書類によるとPalantirは政府の暗号化キー要求と戦う構え

億万長者の投資家であるPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が創立した秘密データ分析のスタートアップ「Palantir(パランティア)」は、同社の暗号化キーを要求する政府の命令に対抗する姿勢であることが、リークした文書からわかった。

TechCrunchは、Palantirが上場に向けて米国当局に提出したS-1書類のリーク情報を入手した。資料に基づき本誌はこれまでにPalantirの財務状況顧客情報および同社自身が認識しているリスク要因(未訳記事)などについて報じた。

そして警察や米国政府を含む政府関係顧客と密接な関係にありながらも、Palantirは自社のデータに対する法的要求がなされた際にどこで線引きするかを表明した。

リークしたS-1申請書類より。

時折、政府機関は当社顧客に関する情報を入手するために当社の協力を要請したり、アクセスや監視を可能にするために当社プラットフォームを改造するよう要求をすることがある。当社の機密およびプライバシーに対する誓約に基づき、警察その他の政府機関による情報提供、暗号化キーの取得、ないしは暗号化の改変あるいは弱体化の要求に対し、我々は法的に戦う可能性がある。

同S-1書類が言及しているのは米国における特に繊細な問題だ。なぜなら現在トランプ政権は、警察当局の要求に基づき繰り返し暗号の弱体化(未訳記事)を試みているところだからだ。警察は、米国のテック企業やインターネット巨人が使っている暗号化は犯罪捜査を困難にしていると主張している。

しかし、Palantirの共同ファウンダーであるPeter Thiel(ピーター・ティエル)氏と政権との緊密な関係(未訳記事)をよそに、暗号化に関するPalantirの立場は、他のシリコンバレーのテック企業と一致しており、強力な暗号化はユーザーと顧客をハッカーやデータ侵害から守るためであるという。

2020年6月に政府は、もし成立すればテック巨人に対してシステムに暗号のバックドアを作ることを強制できるようになる法案2件を提出し、反暗号化の立場を改めて明確にした。

Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)およびTwitter(ツイッター)といったテック企業は、法案に強く反対(Reform Goverment Surveilanceリリース)し、バックドアは「すべての米国人、企業および政府機関を犯罪者や海外敵対者によるサイバー脅威の危険に曝すものである」と訴えた」(TechCrunchの親会社であるVerizon Mediaも同盟に参加している)。

企業の暗号化キーを要求する命令は稀ではあるが前例がないわけではない。

2013年、政府は暗号化メールプロバイダーのLavabitに対し、同サービスの暗号化キーを提出(未訳記事)するよう命じた。その後、長年の憶測どおり、政府がアクセスしたかったのはNSAの密告者であるEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏の所有するLavabitアカウントだったことが確認された(WIRED記事)。

それ以降では、FBIが2016年に訴訟を起こし、サンバーナーディーノ事件の射撃犯が所有する暗号化されたiPhoneを調べるために、特別なバックドアを作るようアップルに要求した。犯人のSyed Rizwan Farook(サイード・リズワン・ファルック)は妻のTashfeen Malik(タシュフィーン・マリク)とともに14名を殺害、22名を負傷させた。FBIはその後ハッカーを雇い(未訳記事)、アップルの助けなしに犯人のiPhoneに侵入した後、訴訟を取り下げた。

Palantirは、同社がこれまでに法的命令を受けたかどうかについてS-1では言及していない。しかし書類は、法廷で法的命令を受けるかどうかに関わらず、「政治、ビジネスおよび評判に関わる悪影響」のリスクと戦うと述べている。

Palantir広報は、本誌のコメント要求に返信しなかった。

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Palantirの上場申請書の一部がリーク、2019年の損失は約612億円で政府依存率上昇

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Palantir

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

コンピュータを生みエニグマを解読した英国の施設が新型コロナウイルスの影響で存続の危機に陥っている

Bletchley Park(ブレッチリー・パーク)は英国のカントリーハウスで、第二次世界大戦中に連合国の最も重要な暗号解読活動の中心として利用された。ここで世界初のプログラム可能なデジタル電子計算機が作られ、エニグマの暗号を解読し、その結果ナチス・ドイツとの戦いの形勢が変わった。そして今、こうした歴史を保存する施設が危機に瀕している。

英国の国立コンピューティング博物館も置かれているこの施設を運営しているブレッチリー・パーク・トラストは、新型コロナウイルス(COVID-19)ウイルス感染拡大の影響により財政が厳しくなっている。現在、収入の95%が失われ、年間予算が大幅に足りない。

何らかの措置、または外部からの支援がなければ、ブレッチリー・パーク・トラストは今年、感染拡大により200万ポンド(約2億8000万円)の減収となり、存続のために従業員のおよそ3分の1にあたる35人を解雇しなくてはならない。

ブレッチリー・パークのCEOであるIain Standen(イアン・スタンデン)氏は声明で次のように述べている。「たいへん残念なことだが、トラストでは人員削減を実施せざるを得ない。我々はブレッチリー・パークで重要な遺産の展示と博物館の構築に大きな成功をおさめてきた。その最も重要な強みは人材だ。しかし現在の危機による経済的な打撃はトラストの存続に深刻な影響を及ぼしている。あらゆる手段を講じてきたが状況は改善せず、トラストを存続させ未来に残すために今、行動しなくてはならない」。

ブレッチリー・パークは2020年3月19日に公開を中止し、7月4日に再開した。しかし有料入場者数はきわめて少なくなっている。

画像クレジット: Wikimedia Commons

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(翻訳:Kaori Koyama)

テクノロジー企業と法執行機関との協力の停止を訴える「テクノロジーは中立ではない」キャンペーン

法執行機関と協力したり、彼らに技術を提供している企業は少なくない。Amazonのドアベルカメラ企業Ringは1300以上の警察とパートナーしているし、Amazon Web Services(AWS)はそのプロダクトを移民税関取締局(ICE)に売っている。また、GoogleはG Suiteツールを警察に売り、Microsoft(マイクロソフト)にはシアトルの警察との契約があって、同社のGitHubにはICEとの契約がある。そしてNextdoorは、そのAgenciesアプリで警察とパートナーしている。

このようなパートナーシップを警戒する人びとによって、Tech Is Not Neutral(テクノロジーは中立でない)と名乗るキャンペーンが生まれた。創始者はチャリティNPOのKairos Fellowshipで、これにThe Movement for Black LivesやMedia Justiceなどの団体がパートナーしている。

Kairos FellowshipのキャンペーンマネージャーJelani Drew-Davi氏は、TechCrunchに次のように語った: 「Black Lives Matterのような黒人解放運動が起きると、テクノロジー企業とそのCEOたちは一応賛意を示すが、しかしテクノロジー企業は実際には、人の命や民主主義ともっと深く関わっている。テクノロジー企業の製品は人びとに現実的な結果をもたらし、それが良くない結果であるときには黒人などの有色人種がいちばん被害を受ける。このキャンペーンは、テクノロジーのこのような不公平をなくすことが目的だ」。

このキャンペーンは7月初めに立ち上がり、まず大手テクノロジー企業のCEOらに公開書簡を送った。その書簡の宛先は、AmazonやMicrosoft、Nextdoor、およびGoogleのトップで、Black Livesのためのアクションを要求している。しかしDrew-Davi氏によると、キャンペーンの現在のフォーカスはNextdoorとMicrosoftだ。6月にはNextdoorが、情報を警察に送る機能を無効にしたが、Tech Is Not Neutralキャンペーンの人たちは、ほかにもやるべきことがある、と言っている。

Drew-Davi氏はこう言う: 「Nextdoorは近隣社会の何千人もの人びとを結びつけるが、その人種差別問題は何年も前から詳しくドキュメントされている。それは、警察とのパートナーシップにより人びとが一方的に黒人を悪人として通報できることだ。それが、問題なのだ。Nextdoorはモデレーターを教育訓練すると言うが、警察との関係を断つとは言わない。彼らのプラットホームの上で黒人を保護するために、第一番にやるべきことがそれなのに」。

Microsoftの場合は、シアトル警察との契約に加えて、同社は米国防総省との100億ドルの契約を他社と競っている。またMicrosoftには2016年以来、国防総省やそのほかの法執行機関との5000件を超える下請け契約がある

Drew-Davi氏は曰く、「Microsoftには、国と州の両方のレベルで政府との深く絡み合った関係があり、それに関する情報の公開はない。われわれも、あの記事を読むまでは知らなかったのだ。Microsoftは、監視を要する重要な企業だ。Microsoftに光を当てれば当てるほど、このおなじみの名前の企業が私たちに害を与えていることが、分かってくる」。

Kairos Fellowshipのこのキャンペーンの直近のステップは、これらの企業との会話と、具体的な要望の提出、そして要望に彼らが同意しなければこれらの行為を一層強化していくことだ。Kairos Fellowshipの常務取締役Mariana Ruiz Firmat氏は、TechCrunchにそう語った。

Firmat氏は曰く、「これまでは、テクノロジーは中立であるという主張を隠れ蓑にして、テクノロジー企業は人種差別を許容し、権威主義を広め民主主義を破壊するやり方で彼らの技術が使われてきた。私たちがとても重要と感じているこの戦いは長期戦になると思うが、これまでテクノロジー企業に対して漠然と想定してきた中立的という見方を一掃して、実際には偏向があることを私たちは認めるべきだ」。

Microsoft(マイクロソフト)は、この記事に対するコメントを拒否した。そしてNextdoorとGoogleとAmazonは、本誌のコメントの求めを無視した。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

大麻のオンライン販売急増で、大麻薬局と顧客を結ぶDutchieが絶好調

左からロス・リプソン氏とロス氏の兄弟で共同創業者かつ最高製品責任者のZach Lipson(ザック・リプソン)氏。

Dutchie(ダッチー)は、オレゴン州ベンド拠点の設立約3年のソフトウェア会社で、消費者と大麻薬局を結びつけることに焦点を当てている。大麻薬局は同社に月額料金を払ってウェブサイトの作成、維持、注文処理などのサービスを受ける。このほど同社はシリーズBラウンドで3500万ドル(約36億8000万円)を調達した。Thrive Capital、Starbucks(スターバックス)の創業者であるHoward Schultz(ハワード・シュルツ)氏の両新規投資家の他、既存の投資家であるKevin Durant(ケビン・デュラント)氏のThirty Ive Venturesおよび大麻に特化したファンドのCasa Verde Capital が参加した。

Dutchieは初めての資金調達ラウンドを2019年9月に完了し、1500万ドル(約15億8000万円)を集めてから間もないことから、大麻業界は他の業界と比べて新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックへの対応に成功していることをうかがわせる。

米国時間8月17日に本誌は、Dutchieの共同創業者でCEOのRoss Lipson(ロス・リプソン)氏と話す機会があり、最近の会社の状況を聞いた。

TC:最近Dutchieは非接触支払いを追加しましたね。

RL:その通り。パンデミック以降、ほぼ全部の薬局が路上受け渡しモデルに移行しました。顧客がチェックアウト時に路上受取りを選べるようにした他、到着時刻と車の見つけ方を店に伝える方法も追加しています。

TC:1年前に30以上の州が大麻の医療利用あるいはマリファナの娯楽利用を合法化しました。それで何かが変わりましたか?

RL:現在32の地域で1300以上の大麻薬局と仕事をしています。1年前はわずか9地域でした。全米50州のうち47州で何らかの形で合法大麻が許可されており、2020年にはニュージャージーやアリゾナなどの主要市場で完全合法化される可能性があります。

TC:関連付けて説明してもらえますか? 米国にはどれだけ大麻薬局がありますか?

RL:Dutchieは全世界の合法大麻の10%を取り扱っており、25%以上の薬局にサービスを提供している。1日に7万5000件以上の注文があります。

TC:前回聞いたときは社員は36人とのことですが、今は何人ですか?

RL:現在社員は102人で、2021年末までに2倍にするのが目標です。

TC:薬局の路上受け渡しモデルへの転換以外に、パンデミックがビジネスに与えた影響は何かありますか?

RL:事実上すべての州が大麻薬局を生活に不可欠な事業であると認識しています(新型コロナウイルス感染拡大後)。ただし多く薬局が州法に従わなくてはならず、実店舗を閉鎖しオンライン注文が唯一の選択肢として残っています。Dutchieの売上に占めるオンラインの割合は約30%から100%になり、売上は1カ月で600%成長しました。

結局、売上はパンデミック中に700%増加しました。システムが6倍の負荷に耐えられるよう、急いで対応しなければなりませんでした。

TC:こうした数字は、一部地域で封鎖が解除されることで変わると思いますか?

RL:大麻薬局はオンライン販売を続ける用意があり、eコマースは今後も提供されます。なぜなら顧客がそれを望んでいるからです。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Dutchie 大麻

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Pinterestが初の黒人ボードメンバーを発表、不動産会社社長でマルチメディア制作会社の元幹部

Pinterest(ピンタレスト)は、不動産会社のSkywalker Holdingsの社長で、マルチメディア制作会社のHarpo Studiosの元幹部であるAndrea Wishom(アンドレア・ウィショム)氏を取締役に任命した。今回の任命により、彼女はPinterest初の黒人役員、女性役員としては3人目となる。

同社は2016年に、元Amazon幹部のMichelle Wilson(ミシェル・ウィルソン)氏を女性としては初の取締役会メンバーに起用した。ウィルソン氏は、同社初の社外取締役でもある。

ウィショム氏は声明の中で「私は、創造的にも文化的にも挑戦することにインスピレーションを受けてキャリア全体を過ごしてきました。Pinterestのコンテンツとメディアへの拡大に特に興味を持っています。従業員と経営陣の間で新しい対話の機会を設けるというベンのビジョンにも同様に興味があります。予想外のことに目を向けつつ、異なる視点を議論に持ち込みたいと考えて。取り組むべき真の課題についての責任は私にもあります。Pinterestが前進し続ける中で、意見に耳を傾け、自分の視点を共有し、指導を提供することを約束します」と述べている。

PinterestのCEOであるBen Silbermann(ベン・シルバーマン)氏は声明の中で「数カ月におよぶ候補者との会議を経て、ウィショム氏の就任が決定した」ことを明らかにしている。また「いくつかの理由からウィショム氏が際立っていた」とも述べている。

「彼女は、世界中のオーディエンスに向けてポジティブでインスピレーションを与えるコンテンツを作成する専門家であり、尊敬、誠実さ、包容力、サポートなどの企業文化を構築することを強く支持しています。アンドレアはシリコンバレーの外でキャリアを積み、役員と従業員の関係を再構築するビジョンを持っています」とシルバーマン氏。

この発表は、Pinterestの従業員が性別や人種差別に関連した制度変更を要求するために仮想的なウォークアウトを行った数日後だった。このウォークアウトは、Pinterestの元従業員がジェンダーと人種差別に反対する発言をしたことに直接反応した運動だった。先週、元Pinterest COOのFrançoise Brougher(フランソワーズ・ブローガー)氏は、性別差別、報復、不当解雇を主張して同社を訴えた(未訳記事)。それに先立ち、Aerica Shimizu Banks(エリカ・シミズ・バンクス)氏とIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏もまた、Pinterestの差別を訴えてい

「これらの差別は個別のケースではありません。むしろ、これらの差別はPinterestの従業員を傷つけ、愛する人生を創造するためのインスピレーションをすべての人にもたらすという私たちの使命の達成を妨げている組織文化を代表するものです。私たちは、Pinterestが新規採用者に向けたダイバーシティ(多様性)目標を掲げ、ダイバーシティとインクルーシブ(機会均等)雇用のリーダーであることを認識しています。しかし、それだけでは十分ではありません。ダイバーシティ目標はボトムアップだけではなく、トップダウンから適用する必要があることが明らかになってきました。多様で包括的なリーダーシップは、従業員の差別やハラスメントを防ぐだけでなく、世界規模で通用する製品を構築するのにも役立ちます」と同社の従業員は嘆願書に書いている。

同社の従業員は、昇進レベルと定着率に関する完全な透明性、従業員の総報酬の透明性、CEOに報告できる2つ階層の役職についている従業員は、少なくとも25%の女性と8%の少数派代表の従業員を含めること、CEOに報告する第3階層のダイバーシティ目標への約束を要求している。

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タグ:Pinterest 差別

画像クレジット:Erika Dufour

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Pinterest社員が人種差別と性差別を訴えてストライキを実施

米国時間8月14日、Pinterest(ピンタレスト)の社員が会社の変革を求めてストライキを行った。ストライキは最近同社が非難を浴びている人種差別と性差別を直接受けたものだ。

ストライキの主催者は社員に対して、以下のメッセージをSlack の#qandaおよび#pinployees-global チャンネルに投稿するよう働きかけている。「私はPinteresで起きている人種差別と性差別について「憤り、怒り、ショック、悲しみ、その他どんな気持ちでも」を感じ、本日早期退社する。ともに行動を。changeatpinterest.com 」。

ストライキに加えて、 構造的変革を要求する嘆願書が会社中で回覧されている(coworker.org記事)。彼らが求めている変革は、昇進、定着に関する完全な情報公開、報酬システムの透明性、CEOから2階層以内の社員の25%以上を女性に、8%以上を少数派の人たちとすることなどだ。

2日前の8月11日、Pinterest前COOのFrançoise Brougher(フランソワーズ・ブローアー)氏は、性差別、報復、不当解雇があったとして会社を訴えた(未訳記事)。それ以前にも、Aerica Shimizu Banks(エリカ・シミズ・バンクス)氏とIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏がPinterestの差別行動を告発した。

「これらは例外的なケースではない」と社員らは嘆願者に書いた。「そうではなく、それは全Pinterest社員に害を及ぼす構造的文化の象徴であり、全員に自分の愛する生活を営むひらめきを与えるという私たちの使命の遂行を妨げるものだ。私たちはPinterestが雇用の多様性と公平性におけるリーダーであり新規採用の多様性目標を定めていることを認識している。しかしそれだけでは十分でなく、多様性目標はボトムアップだけでなくトップダウンに適用される必要があることは明白だ。多様性と公平性のある経営チームは、社内における差別とハラスメントを防ぐだけでなく、世界規模で重要なプロダクトを作るためにも役立つ」。

ストライキと嘆願書のほかに、主催者は社員に対して、Slackのプロフィール写真にオゾマ氏、バンクス氏、ブローアー氏の写真を重ねるよう依頼している。

「Pinterestの経営チームと社員は、我々が誇りを持てる会社を付くって育む共通の目標を持っている」とPinterest広報はTechCrunchに話した。「やるべき重要なことがあることはわかっており、多様性、機会均等、公平性のある環境を全員に提供することが我々の仕事であると認識している。行動に対する明確な誓約を求める社員を尊重し、話を聞くとともに、Pinterestを全社員の求める場所へと発展させるべく、開かれた対話を行うことを約束する」。

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画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

社会的影響のあるスタートアップを立ち上げた創設者からの5つの教訓

編集部注:Shannon Farley(シャノン・ファーレイ)氏は、社会的影響のあるスタートアップのためのテックアクセラレーターであるFast Forward(ファストフォワード)の共同創設者兼エグゼクティブディレクターである。

ヘルスケアから教育、人権にいたるまで、テクノロジーは社会に大きな影響をもたらす可能性を秘めている。世界的なパンデミック、経済不安の増加、人種的不公平に対する暴動が入り組む現在、スケーラブルなソリューションの必要性がかつてないほどに高まっている。しかし、世の中の創設者らが苦労しながらも繰り返し多くの教訓を学んできたのを我々は目の当たりにしてきた。

大規模な影響をより迅速に実現するという精神のもと、世界を変えるためのアイデアをテクノロジー関連の非営利団体へと飛躍させたいと望む読者が心に留めておくべき教訓トップ5をまとめてみた。社会的影響をもたらすスタートアップ立ち上げのための無料ガイド、Tech Nonprofit Playbookから、業界を刷新したテクノロジー系非営利団体の教訓を集めた。

1. 問題を詳しく把握する

あなたには壮大なアイデアがある。どうしても解決したい社会問題があり、世界を変えるテクノロジー主導のソリューションを考えついたかもしれないと思っている。しかし、あなたが変化をもたらしたいと思っているコミュニティを深く理解せずには、その問題を解決することはできない。コミュニティを深く理解しなければ試みは失敗に終わってしまうだろう。コミュニティの状況を自分で完全に理解できていない場合は、理解ができている共同創設者と手を組む必要がある。次に、問題を直接体験した人々に会いに行くこと。ユーザーの立場からの視点を持って人々にインタビューを行い、彼らが抱える問題の本質を理解するための機会を得るべきなのである。

これを実際に実践したUpsolve(アップソルブ)の例を見てほしい。これはアメリカでの税金申告に利用されるTurboTax(ターボタックス)のようなソフトウェアパッケージで、連邦倒産法第7章に基づく倒産処理手続きのために使用されるサービスだ。債務を抱えた低所得のアメリカ人が深刻な危機から立ち直るのを支援するためのものである。ユーザー調査の段階で、共同創設者らは実際に法的援助組織に足を運んで支援を待つ人々が記載された待機リストを求め、また債務訴訟の支援を行う法的援助団体で支援を求めに来ていた人々に名刺を配った。この戦略によりUpsolveは幅広い視点のサンプルを検討し、ユーザーの視点から問題を深く理解できるようになったのだ。このプロセスを決して軽視してはいけない。ユーザー調査は最初に描いた製品アイデアにさらなるインスピレーションを与えてくれるものなのである。

2. ゼロから始めることなく優れた製品の技術を構築する

次は、実用最小限の製品(MVP)をパイロット運用することで製品のアイデアをテストする必要がある。MVPとはユーザーについての学びを、少ない努力で表面化させるための製品の初期バージョンである。MVPは完全に出来上がった製品である必要はない。Upsolveの場合、ユーザーが実際に破産申請するのを助ける物理的なスペースでパイロットが行われた。MVPの小規模なパイロット運用を実行して、仮説を確認、却下、または変更する。MVPを十分な期間試用して、それが実用的なソリューションであると確信できるようになったら、次はベータ版を作成する段階だ

ベータ版製品、またはほぼすぐにリリースできる製品を構築するためには、既存の技術ソリューションを活用して新しいユースケースに対応したい。ゼロから作り上げるべきではない。Upsolveの場合は、オンラインプラグアンドプレイのTypeformを使用している。ウェブサイトやコミュニケーションツールなどのあまり技術的ではない製品から、アプリ開発ツール、データベース、APIなどのより技術的な製品まで、既存の技術構成要素をつなぎ合わせることにより初期費用が削減され、最終的には製品のメンテナンスも容易になる。ソリューションを世界中に公開し、テスト、改良を繰り返し続けながらユーザーのフィードバックを製品に組み込み、ミッションの実現をより確実なものにしていくのだ。

3. 非営利柔道の極意を学ぶ

テクノロジー系非営利団体には、非営利団体ならではユニークなアドバンテージがある。これを我々は非営利柔道と呼ぶことにしている。非営利柔道において重要な戦術は、他の組織、資金提供者、企業との提携を築き、テクノロジー系非営利団体の持続可能性とユーザー獲得を促進するため、相互に有益な関係を構築することである。

十分なサービスを受けられていない何百万人もの若者に、キャリアアドバイスをクラウドソーシングで提供するCareerVillage.orgを見てほしい。創設チームは最初の数年間、ボランティアの募集と資金調達に多くの時間を要していた。しかし、フォーチュン500企業が従業員のための簡単でスケーラブルなボランティアプログラムを探していると知り、それが解決策となった。CareerVillage.orgは、企業従業員のボランティア活動を中心とした持続可能な「サービス提供により収入を得る」収益モデルを構築したのだ。

この非営利柔道は組織の急速な成長の主要な推進力になっている。Tech Nonprofit Playbookは、非営利団体が活用できるより戦略的な利点を掘り下げ、非営利柔道の実例を紹介している。困難な道のりを想定してテクノロジー系非営利の旅に出るのではなく、Tech Nonprofit Playbookが紹介している特殊なチャンスを利用してシナリオを好転させれば良いのだ。

4. パートナーや従業員が組織のあり方を左右する

使命を達成するためには、あなたの大義を信じ、あなたがそこへたどり着くのを助けることができる人々を見つける必要がある

最も重要なのは、技術的エキスパートまたは問題のエキスパートのどちらかで、自分を補完してくれる共同創設者を早い段階で見つけることである。共同創設者はお互いのギャップを埋め、作業を分散させ、チームの強力な基盤を構築してくれる存在である。

次に、事業の構築と拡大をサポートできる有能で使命を重視する人々(実際に存在する!)を採用することが重要だ。雇用のための資金を手に入れたとしても、出来る限り多くの人材を採用すれば良いというわけではない。これは学生向けの無料読書プラットフォーム、CommonLitが苦労して学んだ教訓である。400万ドル(約4億2000万円)の助成金を獲得した後、創設者のMichelle Brown(ミシェル・ブラウン)氏はたった40日間で15人を採用した。しかしブラウン氏はその後、個人を雇うのではなく、チームを雇わなければいけないことに気づく。組織に力を注ぐ個々の人々が、その後の組織のあり方を決定するのだ。賢く採用を行う必要がある。

5. どのように影響を測定するかついて目的意識を持つ

影響こそがテクノロジー系非営利団体の真の目標である。違いを生み出そうとする前に、「誰」「なぜ」、またはサービス提供上の倫理を理解する必要がある。Medic Mobile(メディックモバイル)の創設者Josh Nesbit(ジョッシュ・ネスビット)氏が共有するフレームワークであるサービス提供倫理は、誰を助けたいのか、そしてなぜ彼らが他の誰よりもあなたの助けを必要とするのかを決定することが倫理的な立ち位置を決定し、組織として行うすべてに影響を与えるという概念である。

ネスビット氏がMedic Mobileを設立した当時、同組織は現場の組織と協力して医療ツールを実装していた。その際に、彼はすでに人的および経済的資本を持っていたローカルパートナーにツールを提供していたのである。ネスビット氏はこのフレームワークが彼のモラルを反映したものではないということに気が付く。同氏は医療へのアクセスが最も少ない人々を助けたいと考えていたからだ。こう気付いたことで、同氏は組織に再び焦点を当て、最も必要としている人々にサービスを提供するために製品ビジョンを再定義することができたのだ。それ以来Medic Mobileは、コミュニティの医療従事者の分散型ネットワークによって誰一人取り残さないヘルスケアを効果的に提供できるようにするオープンソースツールを構築している。そして昨年、Medic Mobileは2万7477人の医療従事者のグローバルネットワークをサポートし、コミュニティに1100万件以上のサービスを提供することにより、大きな影響をもたらしたのだ。

組織の成長が進むにつれ、自らの与える影響をどのように測定するかについて目的意識を持つべきである。影響測定は、実際の作業と世界に向けて創造したい価値を連携させることにより組織の構造を決定付けるものだ。これは、提供するサービスがミッションを満たすものであるようにするだけでなく、資金やパートナーシップを通じて取り組みへのサポートを高めるのに役立つ重要な行為なのである。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

Facebookが大統領選挙に向け米国ユーザーに正確な情報を提供する投票情報ハブを開設

Facebookは、2016年の大統領選で誤った情報を広めたという惨憺たる役割を繰り返さないために、いくつかの対策を講じ始めた。今夏の初めに同社は投票情報ハブの立ち上げを発表(Facebookリリース)した。米国民のために選挙情報を集約し、誤情報の蔓延を回避することを目指す。

投票情報ハブは、FacebookとInstagramの両方からアクセスできる。例えば、場所と年齢に基づいて自分の州での投票に関する関連情報を表示される。情報センターでは、州ごとの投票方法の確認、郵送投票のリクエスト、投票関連の期限なども確認できる。

Facebook選挙情報センター(画像クレジット:Facebook)

Facebookはまた、政治家による投稿に検証済みの選挙情報を添付するために使用するラベル(未訳記事)を拡大している。ラベルは今後、FacebookとInstagramのすべてのユーザーの投票関連の投稿に表示される。

他社の選挙前の動きと同様にFacebookは、以前に発表した「投票アラート」機能を公開する予定だ。Facebookの製品管理および社会問題解決を担当するバイスプレジデントを務めるNaomi Gleit(ナオミ・グレイト)氏は同機能に関するブログ投稿で「有権者に影響を与える可能性のある投票プロセスの変更が遅れる可能性があるため、投票アラート機能は選挙が近づくにつれてますます重要になるだろう」と述べた。同社によると、投票通知は政府のアカウントでのみ利用可能で、州や地方の選挙管理者の個人ページでは利用できないという。

同社は、新型コロナウイルスの感染蔓延の真っ只中で州選挙を行うことの難しさを選挙情報ハブの立ち上げの理由に挙げている。同ハブは、同社が以前立ち上げた新型コロナウイルス情報ハブをモデルにしている。なお、新型コロナウイルス情報ハブは当初、ユーザーのFacebookフィードのトップに表示されていたが、今ではウイルスに関連する検索でのみ表示されるようになっている。

選挙の夜の悪夢

Facebookは、選挙情報ハブの立ち上げによって自らが選挙の夜の「真実の権威者」(Axios記事)になる可能性が十分にあり、居心地が悪さも認識しているようだ。2020年の大統領選挙は記録的な数の投票が郵送される前例のないものになる。その結果、選挙結果が遅れたり混乱したりする可能性がある。クリアな結果が得られなければ、陰謀説や日和見主義などの誤った情報がソーシャルプラットフォーム上で爆発する確率が高い。これこそが、ソーシャルネットワークが先手を打って防ごうとしている悪夢のシナリオだ。

「長引く投票プロセスは、選挙結果に不信感を植え付けるために悪用される可能性がある」とグレイトはFacebookの投稿で選挙ツールの詳細を書いている。

同社は米国時間8月12日に米政府関係者と面会し、選挙日前後のプラットフォーム上での誤報に関する懸念事項をどのように処理するかを議論したテック企業9社のうちの1社だ(Wall Street Journal記事)。

この企業グループには現在、Facebook、Google、Reddit、Twitter、Microsoft、Pinterest、Verizon Media、LinkedIn、Wikimedia Foundationが含まれている。同グループのメンバーには、米国の選挙を前にした取り組みについて議論するために以前にも会合を開いていた企業もあるが、米国の選挙に向けて正式に政府関係者と協力する大規模な企業連合は新しい枠組みだ。

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画像クレジット:Diane555 / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)