リークしたS-1書類によるとPalantirは政府の暗号化キー要求と戦う構え

億万長者の投資家であるPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が創立した秘密データ分析のスタートアップ「Palantir(パランティア)」は、同社の暗号化キーを要求する政府の命令に対抗する姿勢であることが、リークした文書からわかった。

TechCrunchは、Palantirが上場に向けて米国当局に提出したS-1書類のリーク情報を入手した。資料に基づき本誌はこれまでにPalantirの財務状況顧客情報および同社自身が認識しているリスク要因(未訳記事)などについて報じた。

そして警察や米国政府を含む政府関係顧客と密接な関係にありながらも、Palantirは自社のデータに対する法的要求がなされた際にどこで線引きするかを表明した。

リークしたS-1申請書類より。

時折、政府機関は当社顧客に関する情報を入手するために当社の協力を要請したり、アクセスや監視を可能にするために当社プラットフォームを改造するよう要求をすることがある。当社の機密およびプライバシーに対する誓約に基づき、警察その他の政府機関による情報提供、暗号化キーの取得、ないしは暗号化の改変あるいは弱体化の要求に対し、我々は法的に戦う可能性がある。

同S-1書類が言及しているのは米国における特に繊細な問題だ。なぜなら現在トランプ政権は、警察当局の要求に基づき繰り返し暗号の弱体化(未訳記事)を試みているところだからだ。警察は、米国のテック企業やインターネット巨人が使っている暗号化は犯罪捜査を困難にしていると主張している。

しかし、Palantirの共同ファウンダーであるPeter Thiel(ピーター・ティエル)氏と政権との緊密な関係(未訳記事)をよそに、暗号化に関するPalantirの立場は、他のシリコンバレーのテック企業と一致しており、強力な暗号化はユーザーと顧客をハッカーやデータ侵害から守るためであるという。

2020年6月に政府は、もし成立すればテック巨人に対してシステムに暗号のバックドアを作ることを強制できるようになる法案2件を提出し、反暗号化の立場を改めて明確にした。

Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)およびTwitter(ツイッター)といったテック企業は、法案に強く反対(Reform Goverment Surveilanceリリース)し、バックドアは「すべての米国人、企業および政府機関を犯罪者や海外敵対者によるサイバー脅威の危険に曝すものである」と訴えた」(TechCrunchの親会社であるVerizon Mediaも同盟に参加している)。

企業の暗号化キーを要求する命令は稀ではあるが前例がないわけではない。

2013年、政府は暗号化メールプロバイダーのLavabitに対し、同サービスの暗号化キーを提出(未訳記事)するよう命じた。その後、長年の憶測どおり、政府がアクセスしたかったのはNSAの密告者であるEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏の所有するLavabitアカウントだったことが確認された(WIRED記事)。

それ以降では、FBIが2016年に訴訟を起こし、サンバーナーディーノ事件の射撃犯が所有する暗号化されたiPhoneを調べるために、特別なバックドアを作るようアップルに要求した。犯人のSyed Rizwan Farook(サイード・リズワン・ファルック)は妻のTashfeen Malik(タシュフィーン・マリク)とともに14名を殺害、22名を負傷させた。FBIはその後ハッカーを雇い(未訳記事)、アップルの助けなしに犯人のiPhoneに侵入した後、訴訟を取り下げた。

Palantirは、同社がこれまでに法的命令を受けたかどうかについてS-1では言及していない。しかし書類は、法廷で法的命令を受けるかどうかに関わらず、「政治、ビジネスおよび評判に関わる悪影響」のリスクと戦うと述べている。

Palantir広報は、本誌のコメント要求に返信しなかった。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Palantir

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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