米国防総省はMSがJEDIクラウド契約を獲得したことを再確認したがアマゾンとの戦いは終わらない

今週は、米国防総省(DoD、Department of Defense)が10年に渡る100億ドル(約1兆600億円)のJEDIクラウド契約(未訳記事)の最終的な勝者を最終的に決定しようとしていることから、多くの動きが見られた。米国時間9月4日、DoDは最終候補であるマイクロソフトとアマゾンの提案(未訳記事)を再度検討した結果、マイクロソフトが契約の勝者であることを改めて表明した(米国防総省リリース)。

「国防総省は、JEDIクラウドの提案の包括的な再評価を完了し、マイクロソフトの提案が引き続き政府にとって最も価値のあるものであると判断しました。JEDIクラウド契約は、国防総省がクラウドコンピューティングサービスの全範囲を利用できるようにする、固定価格、無期限、無数量の契約です」と国防総省は声明の中で述べている。

9月3日の連邦控訴裁判所の判決は、調達プロセスに欠陥があり、元アマゾンの従業員がRFP(Request for Proposal、提案依頼書)の要件を書くのを手伝っていたために利益相反があったというオラクルの主張を否定したことに続くものだ。

米国防総省は、昨年10月にマイクロソフトを選定した後も同社が契約を獲得すべきだと考えていると判断したが、これがこの長い間続いてきた争いの決着とはならない。実際のところ米連邦裁判所は2月に、アマゾンが進めている抗議活動に関する審理を待つ間、このプロジェクトの作業を中止(未訳記事)した。アマゾンは、ワシントンポスト紙を所有しているアマゾンのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が儲かる契約を結ぶのを防ぐために、大統領が調達プロセスに干渉したと考えている。

国防総省は、法的な揉めごとが解決するまでプロジェクトを開始できないことを確認した。「2020年2月13日に連邦請求裁判所が出した仮差止命令により、契約履行はすぐには開始されませんが、国防総省はこの機能を軍人(制服組)に提供し始めることを切望しています」と国防総省は声明で明らかにしている。

マイクロソフトの広報担当者は「プロジェクトの続行が承認され次第、すぐに作業に取り掛かる準備ができている」と述べた。そして「注意深く検討した結果、国防総省が適切な技術と最高の価値を提供したことを確認してくれたことに感謝しています。私たちは、この国に貢献している人々が、この非常に必要とされている技術を利用できるように準備を整えています」とTechCrunchに語った。

一方、本日の午後遅くに公開されたブログ記事の中でアマゾンは、今回の結果に不満を持っていることを明らかにし、調達プロセスの完全性を脅かした大統領の干渉であると断定して法的救済を追求し続けるだろう。ここで彼らはブログ記事をどのように締めくくっているかというと、次のような内容だ。

我々は国防総省の欠陥のある評価に強く同意せず、政府とその選出された指導者が客観的かつ政治的影響から自由な方法で調達を管理することは、我が国にとって非常に重要であると信じていまし。私たちが自分たちに問い続けているのは、米国大統領が国防総省の予算を自分の個人的、政治的な目的を追求するために使うことを許されるべきかどうかということです。抗議行動を通して私たちは、あからさまな政治的干渉や劣った技術が許容される基準になることを許さないことを明確にしてきました。これらの決定は容易なものではなく軽視するものではありませんが、標的となる政治的な取り巻きや架空の是正措置に直面しても引き下がらず、公正で客観的、公平なレビューを追求し続けます。

本日の国防総省の声明は、この長期にわたるドラマの終着点に一歩近づいたように見えるが、裁判所がアマゾンの主張について判決を下すまでは、これで終わりではない。アマゾンが退陣する気がないことは本日のブログ記事からも明らかだ。

画像クレジット:Glowimages / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

Oracleまた敗訴、米連邦高裁は国防省の1兆円のJEDIクラウド契約は合法と判決

Oracleは当初から単一企業による1兆円、向こう10年に渡る国防省クラウドネットワーク(JEDI)の契約先選定プロセスを嫌っていた。Oracleは「この選定プロセスはAmazonをえこひいきするものだ」と聞くものがあろうとなかろうと誰彼構わず主張し続けた。

しかしこの件の訴訟でOracleはまたも敗訴した。8月2日、連邦控訴裁判所は「単一企業を受注先とするこの選定基準は根本的に欠陥があり不当だ」とする Oracle の訴えを退けた。また同裁判所は国防省の募集要項(RFP)作成者に Amazon の元社員が含まれていたことが利益相反にあたるとするOracleの主張も認めなかった。

後者の点について裁判所は「契約担当者に含まれていた(Amazonの)元従業員が利益相反の可能性について適切な評価を行ったかどうかという点について、当裁判所はそのような評価が行われたと判断する」と判示した。

裁判所はさらにOracleは契約に応募するために必要とされる基本的な要件のいくつかを欠いていたとして、同社の主張の一部は訴えの利益がないと判断した。また主張の他の部分についても「入札過程における調達法規に関するいかなる違反も国防省には認められなかった」とした。

今回の控訴は調達契約を白紙に戻そうとするOracle の試みとして3回目、トランプ大統領の介入も含めれば4回目だった。実のところ2018年4月に募集要項が公開される前にOracleのサフラ・カッツCEOが「これはAmazonを不当に利するプロセスだ」と大統領に訴えている。2018年11月には、政府説明責任局(GAO)がOracleの抗議をすべて却下した。翌月、同社は連邦裁判所で1兆円の訴訟を起こしたが、昨年8月に敗訴した。昨日の判決はその判決に対する控訴に対するものだった。

これらの訴訟は全てAmazon に対する不当な優遇があったと主張するものだったが、実際に契約を得たのは Microsoft だった点は注目に値する。このような結果であっても契約は現在も多数の訴訟に悩まされている。Amazonは「契約を失ったのは大統領の干渉が原因であり、本来この契約はAmazonが得るべきものだった」と主張している。

数々の訴訟も含めて、この巨大契約に関連するドラマは一向に終わりそうもない。

画像:Bloomberg / Getty Images

原文へ

滑川海彦@Facebook

AWSがマイクロソフトによるJEDI契約獲得へ異議を提出

先月国防総省が、10年にわたる100億ドル(1兆円超)規模のJEDIクラウド契約入札の勝者として、Microsoft(マイクロソフト)を指名したことは、間違いなくほぼ全員を驚かせたことだろう。誰もが勝者だと考えていたAmazonもそれ以上に驚いたに違いない。米国時間11月14日に同社は、連邦異議裁判所に対して異議を提出する意向だという先行していた報道を肯定した。

これを報じたのはThe Federal Timesである。

声明の中でAmazonの広報担当者は、選択プロセスにバイアスや問題があった可能性を示唆している。「AWSは、米国軍が必要とする重要な技術を提供するための、経験豊富で資格を満たす、比類なき存在です。そしてDoDの近代化の取り組みの支援に対して引き続きコミットしています。また、政府と選挙で選ばれた指導者たちが、政治的影響を受けないやりかたで、客観的に調達を管理することが、我が国にとって重要であると考えています」。

「JEDI評価プロセスの多くの側面には、明らかな欠陥、エラー、紛れもないバイアスが含まれていました。これらの問題を検討し、修正することが重要なのです」とAmazonの広報担当者はTechCrunchに語った。

トランプ大統領が、AmazonのCEOでありワシントンポスト紙の所有者でもある創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に対する軽蔑的な姿勢を隠していないことは、たしかに注目に値する。Microsoftが勝った後にも書いたように「マイクロソフトが勝利しても米国防総省JEDIのサーガは終わらない 」。

例えば、アマゾンは、ジェームズ・マティス元国防長官の著書を論拠にできる。マティス氏は大統領から「100億ドルの契約からベゾスを締め出せ」と命じられたという。彼は拒否したと書いているが、この疑惑がある限り、論争は終わらない。

Oracle(オラクル)もまた、プロセス全体を通じて多くの抗議を提出している。 その中には政府説明責任局に対して提出され、最終的には拒絶されたものも含まれている。Oracleは訴訟も起こしたが、その訴えも棄却されている。こうした抗議のすべては、選定プロセスがアマゾンを贔屓していると主張していたが、最終結果はそうではなかったことを証明したことになる。

大統領は8月に意思決定プロセスに介入し、調達プロセスが何らかの形でAmazonを贔屓していたかどうかを再度調査するように国防長官であるMark T. Esper(マーク・T・エスパー)氏に要求した。そしてホワイトハウスは入札の勝者が決定した週にワシントンポスト紙の定期購読を解約している。

10月についに決定が下され、DODはMicrosoftを選定した。現在、Amazonは連邦裁判所へ異議を申し立てようとしている。JEDIのサーガは、これが終わるまでは本当に終わることはない。

[原文へ]

(翻訳:sako)

オラクル控訴で米国防省1兆円規模のJEDIクラウド入札勝者発表は延期

賞金が100億ドル(約1兆580億円)の場合Oracle(オラクル)の執念深さは見上げたものだ。米国防省が計画しているJEDIクラウドの調達プロセスについて、1年以上にわたってOracleは考えられるかぎりの法的手段を使って抗議を続けてきた 。しかしそのつどプロセスに問題があることの立証に失敗している。先月もOracleの訴えを連邦裁判所は棄却したが、それで諦めるOracleではなかった。

Oracleは米国を代表するコンピューティングサービスの1つだが、自分たちの利益が不当に脅かされていると感じれば泣き寝入りする会社ではない。特に連邦政府の調達が100億ドル規模とあればなおさらだ。米国時間8月26日に発表された訴訟は連邦請求裁判所(Federal Claims Court)の上級裁判官、Eric Bruggink(エリック・ブルッギンク)判事の判決に対する控訴だ。今回、Oracleの主張は1社の総取りとなるようなJEDIの調達プロセスそのものが違法だとしている。

Oracleの主席法律顧問、Dorian Daley(ドリアン・ダレイ)弁護士は声明で次のように述べている。

JEDI入札訴訟において、連邦請求裁判所はJEDI調達プロセスが違法であると判断したにもかかわらず、Oracleが当事者適格性を欠いているという極めて技術的な理由により訴えを棄却した。連邦調達法は、特定の必須の要件を満たしていないかぎり、JEDIのような単一勝者による調達を特に禁止している。

裁判所は判決付属意見で国防省がJEDI調達においてこの必要要件を満たしていないことを明確に判断した。また意見は、調達プロセスに多くの重大な利益相反が存在することも認めている。こうした利益相反は法律に違反し、国民の信頼を損うものだ。前例を形成すべき重大な例として、我々はOracleに当事者適格がないという結論は、法解釈として誤っていると信じる。判決意見自身がいくつもの点でプロセスの違法性を認めており、我々は控訴せざるを得ない。

昨年12月にOracleは連邦政府に対し、100億ドルの訴訟を起こした。この訴えは主にAmazonの元社員であるDeap Ubhi(ディープ・アブヒ)氏の調達プロセスへの関与が利益相反だとするものだった。アブヒ氏は国防省のプロジェクトに参加する前にAmazonで働いており、国防省の調達プロセスのRFP(仕様要件)を起草する委員会で働き、その後Amazonに戻った。国防省はこの問題を2回調査したが、いずれも連邦法の利益相反であった証拠はないと結論した。

先月、裁判所は最終的に国防省の結論に同意し 、Oracleは利益相反ないし利益相反が調達に影響を与えた証拠を示すことができなかったと判断した。 ブルッギンク判事は次のように述べている。

当裁判所はまた次のように結論する。すなわち調達プロセスを検討した国防省職員の判断、「組織的な利益相反は存在せず、個別人物における利益相反は(存在したものの)調達プロセスを損なうような影響は与えず、また恣意的その他合理性を欠くなど法の求める要件に適合しない要素はなかった」という結論に同意する。このため原告の訴えを棄却する。

OracleはJEDI調達のRFP仕様書が公開される前からあらゆる方法で不平を鳴らしてきた。ワシントン・ポスト紙の記事によれば、 2018年4月にOracleのプレジデント、Safra Catz(サフラ・キャッツ)氏はトランプ大統領に会ってJEDI調達の不正を訴えたという。 キャッツ氏はこのプロセスはクラウド事業のマーケットリーダーであるAmazonに不当に有利となっていると主張した。AWSは2位の Microsoftの2倍以上のシェアを誇っている。

その後OracleはGAO(会計検査院)に対しても検査要請を行ったが、GAOはRFP作成プロセスに問題はなかったと結論した。この間国防省は一貫して利益相反を否定し、内部調査でも違法性の証拠は発見されなかったと結論している。

トランプ大統領は先月、マーク・T・エスパー国防長官に「調達プロセスが不当にAWSに有利だ」という主張を再度調べるよう命じた。その調査は現在続いている。国防省は4月にAmazonとMicrosoftの2社をファイナリストとして発表した。8月末までに勝者を指名するはずだったが、抗議、訴訟、調査が続いているためまだ決定できない状況だ。

問題が困難である理由のひとつは調達契約の性格そのものだ。国防省向けクラウドインフラの構築は、10年がかりとなる国家的大事業であり、勝者となったベンダー(ただし契約には他のベンダーを利用できるオプトアウト条項も多数存在する)は100億ドルを独占するだけでなく、連邦政府、州政府が関連するテクノロジー系公共事業の獲得においても極めて有利な立場となる。米国のすべてのテクノロジー企業がこの契約によだれを流したのは不思議ではないが、いまだに激しく抗議を続けているのはOracleだけだ。

JEDI調達の勝者は今月発表されることになっていたが、上述のように国防省の調査及び各種の訴訟が進行中であるため、勝者を発表ができるまでにはまだ時間がかかるだろう。

画像:Getty Images

【Japan編集部追記】GAO(Government Accountability Office)は「政府説明責任局」と直訳されることもあるが、機能は日本の会計検査院に当たる。日本の会計検査院が憲法上の独立行政機関であるのに対しGAOは議会付属機関であり、連邦支出に関して民間からの検査要求も受け付ける。連邦請求裁判所(Federal Claims Court)は連邦政府に対する民事訴訟を管轄する。連邦裁判官のうち65歳以上で有給退職した裁判官が復職して事件を担当する場合、Senior Judgeと呼ばれる。上級裁判官と訳されることが多いがむしろ「年長、高齢」の意味。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウド企業たちを悩ます理由

おそらくこれまでに、国防総省による「勝者総取り」の100億ドル規模の大規模なクラウド契約について耳にしたことがあるだろう。これは別名Joint Enterprise Defense Infrastructure(略称JEDI:ジェダイ)と呼ばれている。

スター・ウォーズを連想させる名前はともかく、この契約は政府の基準に照らしてみても巨大なものだ。ペンタゴンは、単一クラウドベンダーがその組織クラウドを構築することを望んでいる。事の是非はさておき、彼らはそれこそがクラウド戦略に集中しコントロールをするための最適なアプローチであると信じているからだ。

国防総省(DOD)のスポークスマンHeather Babbは、TechCrunchに対して、同省はこのやり方をとることに多くの利点を見ているのだと語った。「単一契約は有利です。なにしろ何よりもセキュリティを改善し、データアクセス性を改善し、そして国防総省がクラウドサービスに対して適応し利用する過程を単純化してくれるからです」と彼女は言う。

この契約のために国防総省がどの企業を選択しようとも、これはコンピューティング基盤とその戦闘組織を、旧来の基盤もある程度取り込みつつ、IoT、人工知能、そしてビッグデータ解析の世界に向けて近代化することなのだ。「このDODクラウド・イニシアチブは、国防総省の情報技術体制の近代化に関わる遥かに大きな動きの一部なのです。この試みの基礎は、現在国防総省内にあるネットワーク、データセンター、そしてクラウドの数を合理化することです」とBabbは語る。

その後の動向を決める

このDODの契約を勝ち取るものは誰でも、政府内での類似のプロジェクトに対して有利な立場をとることが可能になるだろう。結局のところ、軍に対してセキュリティと信頼性で合格することは容易なことではない。そしてもし1つの会社がそれを遂行する能力があると証明できたなら、この先の取引を、安泰なものとすることができるだろう。

しかしBabbが説明するように、それはクラウドを長期的に理解するという行為なのだ。「JEDI Cloudは、DODがエンタープライズクラウドソリューションをどのように取り込むべきかを学ぶ手助けになる、草分け的な取り組みとなるでしょう。そしてデータ駆動型意思決定を可能にし、DODがアプリケーションとデータリソースを最大限に使うことを可能にする重要な最初の1歩となるのです」と彼女は言う。

写真: Mischa Keijser for Getty Images

だが、この単一ベンダー方針は、応札している様々なクラウドベンダーたちが少々取り乱している理由を説明するものだ。ただしAmazonを除いてだが ―― 同社はほとんど何も語らず、一見事態の推移を落ち着いて眺めている。

その他のプレイヤーたちが信じているのは、Amazon がこの入札の主導権を握っているということだ、なぜならAmazonは2013年に政府に対して6億ドル分のクラウド契約を提供し、CIAのためにプライベートクラウドを立ち上げているからだ。当時それは様々な意味で大きな取引だった。何よりもまず、それは情報機関がパブリッククラウドプロバイダーを使った、最初の大規模例だった。そして当然のことながら、当時の金額は印象的で、100億ドルという規模ではなかったものの、良い契約だった。

こんなことを言っても慰めになるかどうかはわからないが、Babbはそのような意見を一蹴する。入札プロセスはオープンで、有利に扱われるベンダーはないと言うのだ。「JEDI Cloudの最終RFP(提案依頼書)はDODのユニークで重要な要求を反映したものです。競争力のある価格設定とセキュリティのベストプラクティスが考慮されます。どのベンダーも事前に選択されてはいません」と彼女は言う。

大声で不満を言う者

ペンタゴンが今後10年間に向けての主要なクラウドベンダーを選ぶ方向に向かう中で、特にOracleは、耳を傾ける者たちに対して、Amazonはこの取引に対して不公平に有利な立場に立っていると不満を言い続けている。そして先月には正式な訴状を提出している。これは入札がまだ始まってもおらず、ペンタゴンが決定を行う遥か前のタイミングだ。

写真: mrdoomits / Getty Images (一部編集)

皮肉なことに、自身の過去のビジネスモデルにもかかわらず、Oracle は何よりもこの取引が、国防総省を長期間にわたって1つのプラットホームにロックインしてしまうことに不満を述べているのだ。またワシントン・ポストのレポートによれば、Oracleは入札プロセスが、この手の取引の調達規則を遵守しているかどうかに対して疑問を呈している。またBloombergによれば、4月には共同CEOのSafra Catzが直接大統領に対して、この取引はAmazonのためにあつらえられていると不満を訴えたと言う。

Microsoftも単一ベンダーのアイデアに満足していない。単一ベンダーに制限してしまうことで、様々な変化が起きるクラウドマーケットの世界の中のその他の企業からのイノベーションを、ペンタゴンは取り入れ損なう可能性があると指摘する。特にそれほどまでに長期にわたる契約について語っているときは尚更だ。

4月にMicrosoftのLeigh Maddenは、同社は競争する準備は整っているが、単一ベンダーアプローチが必ずしも最善の道とは思わないと、TechCrunchに対して語った。「もしDODが単一ベンダーだけを採用する道を行くのなら、私たちは勝つために参加します。しかしそうは言いいながらも、それは私たちが世界で見ているような、80パーセントのお客様がマルチクラウドソリューションを採用している動きとは、対照的なものなのです」と彼は同時に語った。

彼の指摘は妥当だが、90年代のような独自システム(OracleやMicrosoftがその代表だ)に比べて、クラウドは遥かに大きな相互運用性を提供するのにかかかわらず、ペンタゴンは単一ベンダーのアイデアを推し進める決意をしているように見える。

Microsoftもそれ自身の大規模な契約をDODと結んでいるが、その規模はほぼ10億ドルに達する。2016年から続くこの取引はDODの職員のためのWindows10と関連するハードウェアの関するものだが、AmazonがCIAと結んだような純粋なクラウド契約ではない。

また同社は最近、政府向けのAzure Stackをリリースした。これは政府の顧客に対してプライベート版のAzureを、パブリック版と全く同じツールと技術と共にインストールするもので、JEDI入札の際には魅力的なものとなるだろう。

クラウド市場の動向

またAmazonがクラウドインフラストラクチャ市場の最大のシェアを占めているという事実が、ある程度効果を発揮する可能性もある。Synergy Researchの2017年第4四半期データが明らかに示すように、Microsoftは急速に成長してはいるものの、それでも市場規模という意味では、Amazonのまだ3分の1に過ぎない。

このデータが出されて以来、市場は劇的には変化していない。市場シェアだけが決定要因ではないものの、Amazonはこの市場に最初に参入した企業であり、市場での規模という意味では後続の4社を合計したものよりも(Synergyのデータによれば)遥かに大きいのだ。これは、なぜ他のプレイヤーが非常に激しいロビー活動をしており、Amazonを最大の脅威であると考えている理由を説明できるだろう。なにしろ、その凄まじい大きさゆえに、おそらくあらゆる取引で向かい合うことになる最大の脅威だからだ。

最大の不満の声をあげるOracleがが、何年もの間クラウドを無視していたために、乗り遅れていることも考慮しよう。彼らはJEDIプロジェクトを、プライベート版のクラウドビジネスを構築するために使うことのできる、政府の中の足場を確立するチャンスだと考えているのだろう。

10年は10年ではないかもしれない

実際の取引には、複雑な部分と、スポーツ選手のように最初の2年だけが保証された、オプトアウト条項が含まれていることは指摘しておく価値はあるだろう。その後2回の3年のオプションが続き、最後の2年のオプションで契約はクローズする。これが意味することは、もしこれが良くないアイデアだと判明したならば、ペンタゴンは様々な地点で契約を終了できるということだ。

写真:Henrik Sorensen / Getty Images (編集済)

JEDIの「勝者総取り」アプローチにもかかわらず、何が起きようともDODは複数のクラウドベンダーと作業を続けるとBabbは述べている。「DODは複数のクラウドを所有していますし、その運用も続けるつもりです。そしてJEDI Cloudは、DODのクラウド全体戦略の重要なコンポーネントとなるでしょう。私たちの任務の規模は、DODが複数のベンダーから複数のクラウドを調達することを要請するのです」と彼女は言う。

国防総省は8月に最終入札を受け入れ、RFPへの最終締切を10月9日(米国時間)へと延長した。締め切りが再び延長されない限り、この先数週間のうちに、私たちは幸運な会社の名前を耳にすることになるだろう。そしておそらく決定のあかつきには、多くの泣き言が聞こえ、敗者たちからの様々な策が巡らされることになるだろう。

[原文へ]
(翻訳:sako)

画像: Glowimages / Getty Images (編集済)