オープンソース版の登場に対してWhat3Wordsがセキュリティ研究者に法的警告を送付

デジタル・アドレス・システムWhat3Wordsを開発しているイギリスの企業がセキュリティの研究者に法的警告を送り、オープンソースのソフトウェアの共有を他の研究者たちに持ちかけたことは著作権を侵犯していると主張している。

XMissionのシステムズアドミニストレータAaron Toponce氏は、木曜日(米国時間4/29)にWhat3Wordsを代表している法律事務所から、オープンソースの代替システムWhatFreeWordsに関連するツイートの削除を求める書簡を受け取った。その書簡は、彼がそのソフトウェアのコピーを共有した者の身元を同法律事務所に開示し、今後そのソフトウェアを作らないことと、彼が現在保有しているコピーを削除するよう求めている。

その書簡は、要求遵守の日限を5月7日とし、それを過ぎれば「貴殿に対する関連の主張を追求するいかなる資格をも放棄する」、つまり、これ以上あれこれ主張するのをやめて告訴に踏み切る、と言っている。

当のToponce氏は「これは戦う価値のない戦闘だ」とツイートし、本誌には、今後の法的影響が怖いから要求には従った、と語った。削除せよと言っているツイートのリンクをその法律事務所に尋ねたが、答はなかったそうだ。「ツイートによっては、従わないこともありうる。その内容次第だ」、と彼は述べた。


Aaron Toponceに送られてきた法的警告(画像: 本人提供)

英国の企業であるWhat3Wordsは、世界全体を一辺が3メートルの正方形に分割して、そのそれぞれに他と重複しない3語のラベルをつける。それのどこが良いのかというと、緊急時などに現場の正確な地理的座標をいちいち調べて電話するよりは、3つの言葉を共有する方が簡単だからだ。

しかしセキュリティ研究家のAndrew Tierney氏が最近発見したところによると、What3Wordsは、1マイルも離れていない二つの正方形に似た名前をつけることがあるので、人の所在などで混乱を招くことがある。その後の記事でTierney氏は、安全性がきわめて重視される状況でWhat3Wordsを使うのは適切でないと言っている。

欠点はそれだけではない。批評家たちはかなり前から、「救命」を謳っているWhat3Wordsのプロプライエタリなジオコーディング技術は、問題の性質やセキュリティの脆弱性を調べづらくする、と批判してきた。

関連記事: Extra Crunch members get unlimited access to 12M stock images for $99 per year(未訳、有料記事)

What3Wordsがオープンでないことへの懸念も、WhatFreeWordsの開発に導いた動機のひとつだ。そのプロジェクトの現在のWebサイトにはコードがないが、オープンソースバージョンはWhat3Wordsをリバースエンジニアリングして作った、と言っている。そのWebサイトは曰く、「仕組みが分かったので私たちはその実装をJavaScriptとGoで書いた。What3Words社の著作権を冒さないために、彼らのコードはいっさい使っていない。相互運用性のために必要な最小限のデータを含めただけである」。

しかしそのプロジェクトのWebサイトは、いずれにしてもWhat3Wordsの弁護士たちが提出した著作権取り下げ要求の対象になってしまった。コードのコピーのキャッシュやバックアップの所在を示すツイートも、弁護士たちの要求でTwitterにより削除された。

Toponce氏はセキュリティの研究者としてTierneyの研究に協力し、Tierney氏は彼の所見をツイートした。Toponce氏によると、彼はWhatFreeWordsのコードのコピーを他の研究者たちと共有し、What3Wordsに対するTierney氏の当時進行中の研究を助けた。Toponce氏は本誌に、コードの共有を持ちかけたことと、What3Wordsの問題点を見つけたことが合わさって法的警告という結果になったのかもしれない、と言っている。

What3Wordsは、Toponce氏宛の書簡で、WhatFreeWordsには同社の知財が含まれており、同社はそのソフトウェアの「流布を許容できない」と言っている。

しかし、そのコードのコピーはすでにいくつかのWebサイトにあり、Googleで検索できる。そして本誌が見たところによると、Toponce氏が法的警告を公表してから、WhatFreeWordsのコードのリンクのツイートがいくつか登場している。Tierney氏は自分の研究にWhatFreeWordsを利用していないが、ツイートでは、What3Wordsの反応は「今やオンラインで誰にでも簡単に見つかるものに対して法的権利を主張するなんて、常軌を逸している」、と言っている。

本誌はWhat3Wordsに、裁判所がWhatFreeWordsの著作権侵犯を認めたら本当に訴訟をするのか、尋ねてみた。What3WordsのスポークスパーソンMiriam Frank氏は、コメントの複数回の要求に、応じなかった。

関連記事: Talkspace threatened to sue a security researcher over a bug report(未訳)

(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: TechCrunch(スクリーンショット)

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TikTokが特許侵害でライバルのTrillerに提訴される

ソーシャルビデオプラットフォームのTriller(トリラー)は、最大のライバルであるTikTok(ティックトック)と親会社のByteDance(バイトダンス)に対して特許侵害訴訟を起こした。米テキサス州西部地区の連邦地裁への提訴では、TikTokがTrillerの米国特許第9691429号を侵害したと主張している。この特許は「音声トラックと同期する音楽動画を作成するためのシステムと方法」を対象としている。

この特許は、Trillerの共同創業者であるDavid Leiberman(デビッド・リーバーマン)氏とSamuel Rubin(サミュエル・ルービン)氏を発明者として認めている。もともと2015年4月11日に出願され、2017年6月27日に登録された。

この特許は、ある音声トラックが流れているときに複数の動画が再生される場合などに、音声と同期させた動画を作成する方法を記述している。同社によれば、TikTokでは現在、同じ音声トラックに対し複数の動画をつなぎ合わせることができるため(特許による)機能を侵害しているという。

Trillerは訴状で、動画といっしょに再生する単一の音声トラックを選択する点でTikTokがどう機能するかについて説明している。また、2019年12月11日付のTikTok Newsroomブログの投稿についても指摘している。TikTokは新しい「グリーンスクリーンビデオ」効果を紹介した。この投稿では、ユーザーが撮影した動画を背景に流し、曲と同期させる方法の効果について説明している。訴状の中ではこれを侵害的な利用例として提示している。

Trillerは訴状で、2020年7月27日に電子メールでTikTokに侵害の通知が送達されたと述べている。

TikTokは音声トラックに動画を同期するアプリを提供する唯一の会社ではないが、最大の会社だ。アプリストア情報会社のSensor Tower(センサータワー)のデータによると、TikTokアプリの現在のインストール数は米国で1億8900万件を超えているが、Trillerは2300万件超だ。Trillerよりもインストール数が多い競合他社はDubsmash(ダブスマッシュ)のみで、これまでに米国で4150万件ダウンロードされた。米国でのインストール数はLomotif(ロモティフ)が2120万件、Likee(ライキー)が1600万件、Byte(バイト)が250万で、いずれもそこまでの影響力はない。

TrillerはDubsmash、Instagram(Reels機能)、Lomotifなど、他の競合他社に対しても同様に特許訴訟を起こす可能性がある。ただし、個々のアプリのエクスペリエンスの侵害状況を弁護士が詳細に調査するため、提訴は一度に全部ではなく1社ごとに行われる可能性がある。

Dubsmashにコメントを求めたところ、Trillerからは何も受け取っていないと答えた。

「Dubsmashの立ち上げがTrillerのApp StoreとPlay Storeでのサービス開始6カ月前だったことを踏まえると、彼らが訴えるとしても無理があると思う」と、Dubsmashの共同創業者兼社長であるSuchit Dash(スチット・ダッシュ)氏は述べた。TikTokはこれまでのところ、コメントの要請に回答していない。Instagramもコメントしていない。

執筆時点でTrillerによる他の提訴案件はない。

Musical.ly(ByteDanceが買収したTikTokの前身)には、2016年出願、2017年登録の「リップシンクビデオの生成と共有」に関連する特許があるが、この特許については訴状では言及していない。

この訴訟に必要な資金をどう調達するつもりなのかTrillerに問い合わせたところ、同社は「複数の世界最大級の金融機関の支援がある」と回答し、法廷へ持ち込む準備は整っているという。

実際Trillerには、Lowercase Capital(ローワーケースキャピタル)、Carnegie Technologies(カーネギーテクノロジーズ)、映画制作会社のProxima Media(プロキシマメディア)、台湾のFubon Financial Holding Co.(富法金控)、インドネシアのGDP Venture(GDPベンチャー)(The Wall Street Journal記事)が出資している。WSJ(ウォールストリートジャーナル)は2019年にTrillerがベンチャーキャピタルから2800万ドル(約30億円)を調達し、事業が1億3000万ドル(約140億円)で評価されたと報じた。Crunchbaseによると同社は現在までに3750万ドル(約40億円)を調達している。

Trillerによる訴訟のニュースは、The Wrap(ザ・ラップ)とBloomberg Law(ブルームバーグロー)が最初に報じた。

訴訟は、TikTokのアプリが米国で厳しい視線にさらされているタイミングで行われている。

Steven Mnuchin(スティーブン・ムニューシン)財務長官は米国時間7月29日に対米投資委員会がTikTokのアプリを調査中であると認めた(CNBC記事)。同氏の発言はMike Pompeo(マイク・ポンペオ)国務長官の発言に続くものだ。ポンペオ氏は2020年7月初め、米国が国家安全保障上の懸念からTikTokやその他の中国のソーシャルメディアアプリの禁止を検討していると述べた。

禁止されればTrillerにとってはプラスだ。こうした背景を考えれば提訴のタイミングはまったく偶然ではない。

同社はまた、新たな資金調達を計画していると報じられた。Fox Business(フォックスビジネス)は、TikTok禁止が話題になる中、Trillerは2~3億ドル(約210~320億円)を調達する予定だと報じた。

特にTrillerの経営陣は、TikTokがユーザーにTikTokのプラットフォームだけに動画を投稿するようインセンティブを与えていることに驚いている。

「TikTokはインフルエンサーがTrillerに投稿しないよう、実際にはTrillerへの投稿を禁止するために、インフルエンサーファンドの資金からインフルエンサーに金を払っていることを知りショックを受けた」とTrillerのCEOであるMike Lu(マイク・ルー)氏は語った。7月29日の反トラスト法(独占禁止法)の公聴会で明らかになったような大手テック企業に対するネガティブな感情の高まりが利用できると期待して、ルー氏はTikTokの動きが反競争的だと付け加えた。

「それは倫理的でも合法的でもないというのが当社の意見だ」とルー氏は述べた。「もしすべての『200B企業(時価総額2000億ドル=約2兆1000億円以上の企業)』が顧客に金を払って競争相手のスタートアップに行かないよう促すなら、米国の起業家精神は死に絶え、新しい企業は存在できなくなるだろう」。

Triller v TikTok by TechCrunch on Scribd

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

T-MobileとSprintの合併阻止を求める訴訟がニューヨークで審理開始

約2兆8000億円の巨大企業を誕生させるT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併を阻止しようとする訴訟がら米国時間12月9日、マンハッタンの連邦地裁で審理される。原告は13州とコロンビア特別区の司法長官14名で、このグループは当初から合併に反対しており、数カ月前から訴訟を予告していた。

米国カリフォルニア州司法長官のXavier Becerra氏は次のようなコメントをTechchCrunchに寄せた。

「本日、我々は実質的競争と低価格を消費者にもたらすために立ち上がった。我々の電波帯域は公共のものであり、競争者の数を減らすのは間違いだ。この合併はもっとも弱い立場にある関係者、すなわち消費者の利益を損ねるものだ。競争者が減ることは高価格を意味する。われわれ14州の連合は法廷で消費者、米国人全員のために戦う。法は我々の味方であると確信している」。

司法長官グループの主張は「このような合併は米国における当該分野の競争者の数を3社に減らし、これは消費者の利益を損ねる」というものだ。他方、T-MobileとSprint側は「事実はその正反対であり、Verizon(ベライゾン)とAT&Tが5Gネットワーク建設に巨額の費用を投じている現在、合併することで両者と競争する体力が得られる」としている。

この夏、FCC(連邦通信委員会)は合併を承認し、アジット・パイ(Ajit Pai)委員長は8月に「提示された証拠はこの合併が5Gネットワークの構築を加速し、アメリカ人、ことにデジタル・デバイドと呼ばれるハンディキャップに苦しむ遠隔地の人々を助けることを明らかに示している」と述べた。

Wall Street Journalによれば、本日裁判の冒頭陳述があり、3週間程度続くという。SprintのMarcelo Claure(マルセロ・クラレ)会長と、近く退任が予定されているT-MobileのJohn Legere(ジョン・レジェール)CEOが司法長官連合に反駁する証言を行う予定だ。

【編集部注】TechCrunchはVerizonに属するメディアだと。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ウォルマートがソーラーパネル火災でテスラと和解

米スーパーマーケット最大手のWalmart(ウォルマート)は、同社の7店舗で火災を起こしたとされる屋根用ソーラーパネルに関わるTesla(テスラ)の契約違反並びに重大な過失の責任を問う訴訟を取り下げた。

「両社間で和解が成立し却下規定書が法廷に提出された」とウォルマートの広報担当者がメールで伝えた。和解条件は明らかにされていない。TechCrunchは追加情報を両社に要求している。

両社は米国時間11月5日に共同リリースを発行し、ウォルマートが提起した問題が解決したことを発表した。「安全は両社にとって最優先であり、問題への対応が進んでいることから、我々の維持可能エネルギーシステムが安全に再活性化させること両社を共に望んでいる」と声明に書かれていた。

和解はウォルマートがニューヨーク州裁判所に提訴してからわずか3カ月後のことだった。訴訟の標的だったTesla Energy Operationsはクリーンエネルギーと電気自動車のメーカーの一部門であり、以前はSolarCityと呼ばれる会社だった。

訴状が提出された数日後、両社和解に向けて話し合っており、ソーラーパネルの設置サービスは継続すると発表した。

この発表は解決への道筋を示唆したものの、裁判の行方は不透明だった。本日までは。

ウォルマートは、テスラを訴えた理由は長年の重大な過失と業界標準不履行のためだった、と訴状に書いた。ウォルマートはテスラに対して、設置済みの240カ所のソーラーパネルの撤去、およびパネルが原因とされる店舗火災の損害賠償支払いを求めた。訴状には、テスラ製ソーラーパネルが原因とされる同社店舗屋上の火災が複数件挙げられている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オラクル控訴で米国防省1兆円規模のJEDIクラウド入札勝者発表は延期

賞金が100億ドル(約1兆580億円)の場合Oracle(オラクル)の執念深さは見上げたものだ。米国防省が計画しているJEDIクラウドの調達プロセスについて、1年以上にわたってOracleは考えられるかぎりの法的手段を使って抗議を続けてきた 。しかしそのつどプロセスに問題があることの立証に失敗している。先月もOracleの訴えを連邦裁判所は棄却したが、それで諦めるOracleではなかった。

Oracleは米国を代表するコンピューティングサービスの1つだが、自分たちの利益が不当に脅かされていると感じれば泣き寝入りする会社ではない。特に連邦政府の調達が100億ドル規模とあればなおさらだ。米国時間8月26日に発表された訴訟は連邦請求裁判所(Federal Claims Court)の上級裁判官、Eric Bruggink(エリック・ブルッギンク)判事の判決に対する控訴だ。今回、Oracleの主張は1社の総取りとなるようなJEDIの調達プロセスそのものが違法だとしている。

Oracleの主席法律顧問、Dorian Daley(ドリアン・ダレイ)弁護士は声明で次のように述べている。

JEDI入札訴訟において、連邦請求裁判所はJEDI調達プロセスが違法であると判断したにもかかわらず、Oracleが当事者適格性を欠いているという極めて技術的な理由により訴えを棄却した。連邦調達法は、特定の必須の要件を満たしていないかぎり、JEDIのような単一勝者による調達を特に禁止している。

裁判所は判決付属意見で国防省がJEDI調達においてこの必要要件を満たしていないことを明確に判断した。また意見は、調達プロセスに多くの重大な利益相反が存在することも認めている。こうした利益相反は法律に違反し、国民の信頼を損うものだ。前例を形成すべき重大な例として、我々はOracleに当事者適格がないという結論は、法解釈として誤っていると信じる。判決意見自身がいくつもの点でプロセスの違法性を認めており、我々は控訴せざるを得ない。

昨年12月にOracleは連邦政府に対し、100億ドルの訴訟を起こした。この訴えは主にAmazonの元社員であるDeap Ubhi(ディープ・アブヒ)氏の調達プロセスへの関与が利益相反だとするものだった。アブヒ氏は国防省のプロジェクトに参加する前にAmazonで働いており、国防省の調達プロセスのRFP(仕様要件)を起草する委員会で働き、その後Amazonに戻った。国防省はこの問題を2回調査したが、いずれも連邦法の利益相反であった証拠はないと結論した。

先月、裁判所は最終的に国防省の結論に同意し 、Oracleは利益相反ないし利益相反が調達に影響を与えた証拠を示すことができなかったと判断した。 ブルッギンク判事は次のように述べている。

当裁判所はまた次のように結論する。すなわち調達プロセスを検討した国防省職員の判断、「組織的な利益相反は存在せず、個別人物における利益相反は(存在したものの)調達プロセスを損なうような影響は与えず、また恣意的その他合理性を欠くなど法の求める要件に適合しない要素はなかった」という結論に同意する。このため原告の訴えを棄却する。

OracleはJEDI調達のRFP仕様書が公開される前からあらゆる方法で不平を鳴らしてきた。ワシントン・ポスト紙の記事によれば、 2018年4月にOracleのプレジデント、Safra Catz(サフラ・キャッツ)氏はトランプ大統領に会ってJEDI調達の不正を訴えたという。 キャッツ氏はこのプロセスはクラウド事業のマーケットリーダーであるAmazonに不当に有利となっていると主張した。AWSは2位の Microsoftの2倍以上のシェアを誇っている。

その後OracleはGAO(会計検査院)に対しても検査要請を行ったが、GAOはRFP作成プロセスに問題はなかったと結論した。この間国防省は一貫して利益相反を否定し、内部調査でも違法性の証拠は発見されなかったと結論している。

トランプ大統領は先月、マーク・T・エスパー国防長官に「調達プロセスが不当にAWSに有利だ」という主張を再度調べるよう命じた。その調査は現在続いている。国防省は4月にAmazonとMicrosoftの2社をファイナリストとして発表した。8月末までに勝者を指名するはずだったが、抗議、訴訟、調査が続いているためまだ決定できない状況だ。

問題が困難である理由のひとつは調達契約の性格そのものだ。国防省向けクラウドインフラの構築は、10年がかりとなる国家的大事業であり、勝者となったベンダー(ただし契約には他のベンダーを利用できるオプトアウト条項も多数存在する)は100億ドルを独占するだけでなく、連邦政府、州政府が関連するテクノロジー系公共事業の獲得においても極めて有利な立場となる。米国のすべてのテクノロジー企業がこの契約によだれを流したのは不思議ではないが、いまだに激しく抗議を続けているのはOracleだけだ。

JEDI調達の勝者は今月発表されることになっていたが、上述のように国防省の調査及び各種の訴訟が進行中であるため、勝者を発表ができるまでにはまだ時間がかかるだろう。

画像:Getty Images

【Japan編集部追記】GAO(Government Accountability Office)は「政府説明責任局」と直訳されることもあるが、機能は日本の会計検査院に当たる。日本の会計検査院が憲法上の独立行政機関であるのに対しGAOは議会付属機関であり、連邦支出に関して民間からの検査要求も受け付ける。連邦請求裁判所(Federal Claims Court)は連邦政府に対する民事訴訟を管轄する。連邦裁判官のうち65歳以上で有給退職した裁判官が復職して事件を担当する場合、Senior Judgeと呼ばれる。上級裁判官と訳されることが多いがむしろ「年長、高齢」の意味。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「Spotifyはアップル税の負担を誇張している」とアップルが反論

今年3月Spotify(スポティファイ)は、いわゆる「アップル税」およびApp Storeの制約の強い規定について欧州委員会(EC)に訴えた。その後アップルは、同社に対する反トラスト、反競争の主張に反論するウェブページを立ち上げ、 さらに最近CNBCで、アプリ承認プロセスの仕組みを詳しく説明するなどの対抗措置をとってきた。そしてこのたび、Apple(アップル)はECに自社の見解を示し、Spotifyが「アップル税」を支払っているのは有料定期購読者の1%以下に対してだけだ、と訴えた。

このニュースを最初報じたのは、Music Business Worldwide(MBW)およびドイツのサイト、Der Spiegelだった。

具体的には、アップルの提出資料によるとSpotifyが15%の「アプリ税」(収益分配)を払っているのは、同サイトの1億人の有料購読者のわずか0.5%だ。この収益分配の対象になったのは、2014~2016年の期間にSpotifyに入会し、アプリ内購入で定期購読した顧客だけだ。それ以降Spotifyはアプリ内での購読申し込みを中止した。

これはSpotifyのCEOであるDaniel Ek氏が3月に同社ブログに書いた、「アップルはSpotifyや他のデジタルサービスに対して、アップルの決済システム経由で行われた購入金額から「30%」の税を徴収している」という主張とは対照的だ。

またMBWは匿名筋の情報として、Spotifyはアプリ内購入で登録した顧客について、ディスカウントのために通常の15%よりも少なく払っていると報じている。Spotifyは「何も払いたくない」だけだと匿名筋はMBWに言った。

ただし、Spotifyの主張はアップル税に留まらない。

アップルはApp Storeの力を利用して、他の方法でもライバルを不利にしているともSpotifyは言っている。顧客と連絡をとることや、iOSユーザーにメールすることさえ制限している。SpotifyによるとアップルはiOSアプリのアップグレードまで妨害したと言う。3年前のことだ。一方アップルは、Spotifyをほかのデベロッパーと同じように扱っていると言い続けている。

2番目のポイントに関するアップルの反応は、最近のCNBC記事にも書かれている。「Bill」という名前で登場する「長年のアップル社員」は、「アプリのアップデートが拒否されたときSpotifyに電話をした」ときの話を明かした。電話をした理由は、Spotifyがユーザーにメールを送り、App Store以外の場所で直接Spotifyに支払うよう勧めていたためだった。

SpotifyによるEUへの申立て以外に、アップルは米国内でもApp Storeに関する訴訟を抱えている。

5月に米国最高裁判所は、アップルに対するApp Store反トラスト訴訟の継続を許可した。

そして6月には、App Storeの運用に関してアプリデベロッパー2社が、アップルの30%の手数料および価格の下2桁を99セントにしなければならないことを訴えた。

かつてアップルは、Spotifyの申し立てに対して自社ウェブ内で延々と反論した。主張の一部を以下に引用する。

長年App Storeを利用して爆発的にビジネスを拡大してきたSpotifyは、App Storeに一切貢献することなく、エコシステムの恩恵(App Storeの顧客からえられる膨大な売上を含む)をすべて維持しようとしている。さらに彼らは、人々の愛する楽曲を提供する一方で、アーティスト、ミュージシャンや作曲家たには僅かな報酬しか与えず、それらのクリエイターから訴訟される事態にもなっている。

【略】

アップルのやり方は常にパイを広げることにある。新しいマーケットプレイスを作ることで、われわれのビジネスのチャンスを広げるだけでなく、アーティストやクリエイター、あるいは大きなアイデアを持った「クレイジーな人」たちにもチャンスを作っている。それが我々のDNAであり、次の素晴らしいアプリのアイデアを育て、最終的に顧客を喜ばせる正しいモデルである。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米最高裁での反トラスト訴訟でアップル株が下落

米国時間5月13日、合衆国最高裁判所はiPhoneのユーザーグループがApple(アップル)を反トラスト法違反で訴えていた件で、5対4でユーザーに原告資格を認めると決定した。 ユーザーグループはAppleの独占的地位を不当に利用してApp Storeに30%という高額な手数料を設定し、消費者に転嫁していることが反トラスト法に違反するという訴えを起していた。

これに対してAppleは「消費者はアプリをデベロッパーから購入するのでありAppleは仲介者に過ぎない」として訴えの却下を求めていた。つまり個々のアプリの価格を決めているのはデベロッパーであり、消費者にAppleを訴える資格がないという主張だった。最高裁はこの主張を認めず、Appleは200万種類のiPhoneアプリすべてをApp Storeで販売する契約をデベロッパーと結んでおり、販売の都度30%の手数料を得ていると述べた。

iPhoneユーザーに反トラスト法による訴えの原告資格を認める決定にあたって、最高裁は次のような点も指摘している。すなわち、反トラスト法に違反する経済行動によって被害を受けた者は裁判によって被害回復が図られるべきところ、Appleの申し立てを認めてユーザーの訴えを却下するなら、そうした司法的被害救済を妨げることになる。つまり販売業者が独占的地位を利用して不当な手数料を設定、徴収している場合、結果的に高額の手数料を転嫁されているユーザーも反トラスト法の原告資格があるというものだ。上流のデベロッパーだけに原告資格を認め、下流の消費者に資格を認めないなら、反トラストの遵守にあたって抜け穴を作ることになるとして、ブレット・カバノー最高裁判事が執筆した決定は次のように述べている。

Appleの原告資格の線引きの主張には合理性がなく、単に同種の反トラスト法訴訟を逃れようとするゲリマンダー(恣意的な区分け)に過ぎない。もし販売業者が不当な独占的行動により消費者に競争的価格を上回る価格を強いているなら、その販売業者が上流の製造業者ないし販売業者との間にどのような仕入れ契約を結んでいるかは(原告資格を認めるにあたって)無関係である。

iPhoneのユーザーグループは「AppleはiPhoneのアフターマーケット市場においても独占的地位を得ており、消費者は競争的環境であれば決定されたであろう価格よりも高い価格を押し付けられている」とも主張していた。

つまりApp Storeを代替するサービスが存在するのであれば消費者には選択の余地があるが、事実はApp Store以外にiPhoneアプリの購入方法がないという点だ。またiPhoneユーザーグループは「デベロッパーはAppleの要求するコミッションを前提として価格を決定せざるを得なかった」と述べている。

もちろん反トラスト法におけるこの問題についてはすでに多数判例がある。最近の例ではSpotifyがAppleを訴えたケースだ。ウェブ経由で契約すれば月額9.99ドルだが、iOSを経由するとAppleへの手数料が加算されるため月額12.99ドルとなってしまう。こうした結果が生ずるのはAppleの独占的地位の優越性によるものだというSpotifyの主張に対し、EUも反競争的行動の疑いでAppleに対する調査を準備している

有力デベロッパーの中にもApp Storeでの販売を中止するところが出ている。例えばAmazonは、物品、書籍、音楽、ビデオなどのオンライン販売をウェブ経由に振り向けている。Netflixも昨年12月に30%の手数料、いわゆるApple タックスを避けるためにiOSのアプリ内販売を中止した。Forniteの開発元であるEpic Gamesも手数料を嫌ってGoogle Play Storeの利用を避けた

最高裁の今回の決定にあたって少数意見は1977年のIllinois Brick Co. v. Illinois訴訟の判決を前例として、(原告適格があるのは)アプリのデベロッパーであり消費者ではない」と述べた。つまりデベロッパーが手数料を消費者に転嫁すると決定した場合のみ消費者に被害が生じるのであり、Appleは単なる仲介者に過ぎないというものだ。

Appleの株価は6%近く下落している。


【TC Japan編集部追記】原告資格が認められたことにより、実際に反トラスト法違反があったかどうかの実体審理に移ることになる。多数意見を執筆したブレット・カバノー判事はトランプ大統領による任命だが、今回の決定ではApple寄りの保守派に同調せず自ら多数派意見を書いたことで注目を集めている。反トラスト法の議論は簡単にいえば「AがBに販売し、さらにBがCに販売するという連鎖があった場合でも、Bが独占的地位を利用してCに販売したのであればCはBを訴えることができる」というものだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

テスラ死亡事故の原因はオートパイロットとする訴訟を起こされる

オートパイロット作動中のTesla Model Xで高速道路の中央分離帯に衝突して死亡したApple(アップル)のエンジニアであるWalter Huang氏の遺族がTesla(テスラ)を相手取って訴訟を起こした。カリフォルニア州運輸局も訴状に名前を挙げられている。

カリフォルニア州最高裁判所サンタクララ郡支局に提出された不法死亡訴訟は、テスラドライバー支援システムであるオートパイロットの誤動作が、2018年3月23日にHuang氏が死亡した事故の原因だったと主張している。当時38歳だったHuang氏は、国道101号線カリフォルニア州マウンテンビュー付近を2017年型Tesla Model Xで走行中、中央分離帯に衝突して死亡した。

本訴訟は、テスラの運転支援システムであるオートパイロットが車線境界線を誤認識してコンクリート構造物を検出せず、ブレーキの作動を怠り代わりに加速して分離帯に衝突したと主張している。

テスラ広報担当者はコメントを拒んだ。

「Huang夫人が夫を亡くし、2名の子供が父親を亡くしたのは、テスラがオートパイロットソフトウェアを実世界のドライバーでベータテストしたためである」とMinami Tamaki法律事務所のパートナーB. Mark Fong氏が訴状で語った。

その他のテスラに対する訴訟要件には、製品責任、製品設計の欠陥、警告不履行、保証違反、故意および不注意による虚偽の表示、および虚偽の広告がある。カリフォルニア州運輸局も訴訟で指名されており、訴状によるとこれはHuang氏の車両が衝突したコンクリート製分離帯に衝突衝撃緩衝具が設置されていなかったためだ。カリフォルニア交通局は以前現地で起きた事故の後、緩衝具の交換を怠っていた、と原告は主張している。

本訴訟の目的は「半自動運転車を支える技術は路上走行に利用される前に安全が確認され、そのリスクが公衆に対して隠蔽あるいは虚偽表示されないことを確保することにある」と、Walkup、Melodia、Kelly & SchoenbergerのパートナーのDoris Cheng氏が言った。同氏は遺族の代理人でもある。

事故後テスラはブログ記事を2件投稿し、その結果国家運輸安全委員会(NTSB)との論争に発展した。同委員会は事故現場に捜査員を派遣していた。

テスラの3月30日付のブログ記事は、事故当時オートパイロットが作動していたことを認めている。テスラによると、ドライバーはハンドルを握ることを促す警告を、視覚的に数回、音声で1回受け取っており、衝突前の6秒間ハンドル上でドライバーの手は検出されなかった。

こうしたコメントはNTSBの反感を買い、「捜査情報がテスラから公開されたことは遺憾である」旨が示された。NTSBは、委員会による事故調査の当事者が事前の了解なく事故の詳細を公表することを禁じている。

テスラCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、自身の失意とNTSBに対する批判をTwitterを通じて直ちに発信した。事故の3週間後、テスラは事故の責任をHuang氏に帰し、同社の道徳的あるいは法的責任を否定する声明を発表した。

「遺族によると、Huang氏はオートパイロットが完璧ではないことを十分認識しており、具体的には、まさにその場所でオートパイロットが信頼できないことを家族に伝えていたにも関わらず、その場所でオートパイロットを作動させた。事故当日は晴天で前方視界は数百フィート(100〜200m)あったため、この事故が起きた唯一の方法は、Huang氏が路上に注意を払っていなかった場合であり、これは車両から注意を促す警告が複数回発せされていたにも関わらず起きたことである。

NTSBとテスラの関係は、この声明の発表後さらに崩壊した。テスラはNTSBとの協力合意を破棄したと発表した。その後1日とおかず、NTSBは同委員会がテスラを事故捜査の当事者から除外したと発表した。

NTSBの中間報告書は、事故の原因について何ら結論を下していない。しかし、車両が衝突直前の3秒間に62mphから70.8mph(100〜114kmh)へと加速し、国道101号線の走行車線と85号線への出口ランプを分離する舗装された三角地帯に向かって左に移動したことは確認している。

同報告書は、衝突の18分55秒前、テスラ車がハンドルに手を置くことを促す視覚的警告を2回、音声警告を1回与えたことも認めている。警告は衝突の15分以上前に発信された。

Huang氏の両手がハンドルに触れたことが検出されたのは、衝突前の1分間のうち34秒だけだった。衝突前のブレーキあるいは衝突回避ステアリングは検出されなかった、と報告書は書いている。

訴訟名はSz Hua Huang et al v. Tesla Inc., The State of California、訴訟番号 19CV346663。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SnapchatのPRを担当した企業がInstagram上のSpectaclesの宣伝をサボったインフルエンサーを告訴

【抄訳】
もしもSnapchatのPR企業がこの訴訟で勝ったら、インフルエンサーを利用するマーケティングは今後責任が重くなるだろう。Snapchatは、ソーシャルメディアのスターたちが同社のカメラサングラスSpectaclesのv2を、同社の最大のコンペティター(Instagram)の上で宣伝し、人気を盛り上げてくれることを期待していた。なにしろv1は22万台しか売れず、4000万ドルを償却せざるをえなかった。しかしところがSnapは、一般消費者にSpectaclesをクールと思わせたいあまり、やり方がややずさんだったようだ。

Snap Inc.は。同社のPRを担当しているPR Consulting(なんと想像力豊かな社名だろう!)に、Instagramを利用するインフルエンサーマーケティングキャンペーンを委嘱した。PRC社は、テレビの人気コメディGrown-ishに出ているLuka SabbatがKourtney Kardashianと共演しているのを見て、彼を起用した。Sabbatは前金45000ドルをもらい、Spectaclesを着けている写真をInstagramにポストしたらさらに15000ドルもらえることになった。

契約ではSpectaclesを着けた状態でInstagramのフィードへのポスト1回、Storyへのポスト3回、そしてパリとミラノのFashion Weeksへ行ったときも、Spectaclesを着けた状態で写真に撮られること、となっていた。Storyのポストのうち2回は、スワイプするとSpectaclesを買えるリンクがあること。ポストはすべてPRCの事前承認を要すること。それらの効果に関するアナリティクスの数値を送ること。といった契約だった。

しかしSabbatは、Storyは契約3に対し実行1、スワイプ購入リンクは契約2に対し1、事前承認とアナリティクスはゼロ、という実行内容だった。このことを最初に報じたVariety誌のGene Maddausの記事によると、PRCはSabbatに、すでに支払った45000ドルの返金と被害補償45000ドルの支払いを求めて、訴訟を興した。Snap自身は、訴訟に参加していない。

訴状の原文を、この記事の下に埋め込んだ〔この記事の原文で埋め込みを見られます〕。それによると、“Sabbatは不正に金銭を受け取り、PRCに賠償請求の権利が生じた”、とある。Snapは、PRCにキャンペーンを委嘱したことを認め、ファッションブログMan RepellerのファウンダーLeandra Medine Cohenともキャンペーンを契約したことも認めた。そしてこのぼくは、一応礼儀として、Spectaclesを着けたSabbatの顔写真(この記事冒頭)をちょっとPhotoshopした。

【後略】

〔参考記事: Influencer marketing startup Mavrck raises another $5.8M(未訳)〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

マイクロソフト、オープンソース特許ネットワーク(OIN)に加盟、特許6万件を開放

本日(米国時間10/10)Microsoftは、オープンソース特許団体のOpen Invention Network(OIN)に参加したことを発表した。同グループはLinuxを始めとするオープンソースソフトウェアを特許関連訴訟から守ることを目的としている。グループ参加の一環として、ソフトウェアの巨人は特許6万件を含むライブラリーをグループメンバーに開放する。この巨大特許データベースへのアクセスは無制限でロイヤリティフリー。

It is, as ZDNETによると、これは長年積極的に訴訟を起こしてきた同社の過去からの転換を意味している。同社は数々の訴訟に関わり、最近ではAndroidエコシステムの様々な企業を訴えてきた。Microsoftは今回の発表でもそのことを認め、このニュースは新たな出発への兆候と見るべきものだと付け加えた。

MicrosoftがOIN参加を決めたことを驚きと受け取る人たちがいることは知っている」とEVP Erich Andersenがブログに書いた。「Microsoftとオープンソースコミュニティーの間で特許問題に関するに軋轢があったのは周知のことだ。そしてわれわれの進化を見守ってきたその他の人たちには、この発表を当社が顧客や開発者の声に耳を傾け、Linuxを始めとするオープンソースソフトウェアを強く推進していくための必然的な一歩であると理解してもらえることを願っている」

このニュースは、同社がWindows開発とLinux開発の境界をなくし、.NEtやJavaを含め、開発者が両方のオペレーティングシステムのためにプログラム開発することを推進しようという方向性を示すものでもある。

先週Microsoftは、Google、Facebook、Amazonらに続き、パテントトロール対策団体のLOT Networkに参加した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク、TwitterでSECを挑発

木曜日(米国時間10/4)の午後、Tesla CEO Elon Muskは米国証券取引委員会(SEC)を挑発するツイートを発信し、わずか数日前この億万長者起業家に対する証券取引詐欺告発の和解に合意したばかりの相手を怒らせた。

木曜日の午後1時16分(西海岸時刻)に発信されたツイートにはこう書かれていた:

「あのShortseller Enrichment Commission[空売り推進委員会/SEC]は素晴らしい仕事した。名称変更もキマっている」

elon musk trolls sec twitter

SECはコメントを拒んだ。Teslaはコメント要求にまだ応じていない。

Tesla株は4.4%安で引けた後、時間外取引で2.5%下落し、その後わずかに戻した。

その後Muskは謝罪した。ただしそれは嘲りのツイートについてではなかった。それどころか彼は挑発に輪をかけるようにタイプミスについて謝った。、

elon musk twitter sec typo tweet

Muskの支持者たちでさえ一連のツイートを喜ぶ人ばかりではなく、CEOは株価を台無しにしたと責めた。Muskのアドバイスはこうだった:「いまは我慢の時。本物の長期投資家なら心配はいらない」

ほんの数日前、MuskはSECに訴えられた証券詐欺の和解に合意した。それはTeslaとその株主を壊滅させかねない告発だった。9月29日に成立した和解の結果、MuskはTeslaの会長職を辞すとともに罰金2000万ドルを支払うことに合意した。

罰は課されたものの、MuskはCEOの地位を守り、取締役会の席も維持できたことで、これはこれはおいしい取引だったと見られている。MuskはSECの主張を承認も否定もしていない。

Muskは合意形成から45日以内にTeslaの取締役会会長の役職を退かなくてはならない。今後3年間彼は再度選任されることも指名を受けることもできない。社外の会長が指名されることが和解契約で決まっている。

SECによると、Teslaは別途2000万ドルの罰金を支払うことに同意している。Teslaに対する告発と罰金は、情報開示義務の不履行およびMuskのツイートに関連する手続きによるものであるとSECは言った。

訴状の中でSECは、Muskが8月7日に同社を1株あたり420ドルで非上場化するための「資金を確保」したとツイートした際、嘘を言ったと告発している。同委員会はツイートの一週間後に、Teslaに召喚状を送った。その6週間後に訴状が提出された。

告発されたのはMuskおよびTesla取締役会が、SECとの合意を突然撤回した後だった。取締役会は合意を破棄しただけでなく、訴追後もMuskを擁護する大胆な声明を発行した。New York Timesの報道によると、Muskは取締役会に対して最後通告を出し、もし取締役会が合意を強要するなら辞任すると脅したという。

結局和解は成立したが、罰は当初の合意案よりも重くなった。

それでもウォール街はこの合意を好意的ニュースとして扱い、その結果Tesla株は上昇しSECの主張によって生じたそれまでの損失を帳消しにした。

木曜日の一連のコメント後、連邦判事はSECおよびTeslaに対して、裁判所がこの同意判決を承認すべき理由を説明する共同文書を提出するよう求めた。

連邦地方裁判所のAlison Nathan判事は、同意判決が「公正かつ妥当」であるかどうかは地方裁判所が決定すべきであると言い、10月11までに説明文書を提出するよう両者に指示した。

Muskのツイートが、裁判官の命令に対する反応であったかどうかは不明だ。

画像クレジット:Mark Brake / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

オーストラリアでAppleが一部の顧客サービスを断って$6.6Mの罰金刑を食らう

【抄訳】
Appleはオーストラリアの消費者権利団体からの訴訟により、900万オーストラリアドル(660万USドル)の罰金刑を食らった。原告は、以前サードパーティに修理させたデバイスがiOSのアップデートにより使用不能になったときの、Appleの対応を問題にしていた。

公正な競争と消費者保護のための政府機関、オーストラリアの競争と消費者委員会(Australian Competitor and Consumer Commission, ACCC)は、所有者がAppleのiOSオペレーティングシステムのアップデートをダウンロードすると、一部のiPhoneとiPadが動作しなくなるエラー(‘error 53’, 下図)に関する、一連の苦情を調査した。

ACCCによると、Appleは2015年2月から2016年2月にかけて、AppleのアメリカのWebサイトや、オーストラリアの店内スタッフ、それに顧客サービスの電話がそのこと〔使用不能と顧客対応〕を認めた。彼らはerror 53を経験した少なくとも275名のオーストラリアの顧客に、そのデバイスがサードパーティによって修理されていたら救済の対象にならない、と告げた。それが、今回の訴件だ。

画像クレジット: 70023venus2009 Flickrより, CC BY-ND 2.0のライセンスによる

裁判所は、Appleのその態度はオーストラリアの消費者法に違反している、と判決した。

ACCCのSarah Court委員は、声明で次のように述べている: “オーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)では、製品に欠陥があれば顧客は修理または交換、ときには返金の法的権利を有する。Appleの代表者たちは顧客に、自分はサードパーティの修理屋を利用したから自分の欠陥デバイスに関して救済を拒否される、と信じこませようとした”。

“裁判所は、「iPhoneまたはiPadがApple以外の者によって修理されたという事実だけでは、消費者保証の停止や消費者の救済の権利が消滅する結果にはならないし、なりえない」、と宣言した”。

ACCCによると、Apple Australiaは、法的強制力により、スタッフの教育訓練の改善や、保証に関する監査情報とオーストラリア消費者法を同社Webサイト上に載せることを行い、今後のコンプライアンスを確保するためにシステムと手続きを改良することになった。

さらにACCCによると、この判決によって解消した懸念は、Appleが交換用に再生機を提供していた、前に大きなエラーを被った品物を再生機として利用していたという疑念だ。実際にはAppleはそれらの状況において、消費者が要求すれば新しい製品と交換していた。

“iPhoneやiPadを買った人が重要な欠陥に悩まされたら、返金が当然だ。交換を希望する顧客には、再生品でなく新品を渡すべきだ。新品があるかぎりは”、と裁判所は言う。

裁判所はまた、オーストラリアAppleの親会社Apple USにも、子会社がやったことへの責任がある、と論じた。裁判所は、グローバル企業も、その返品に関する方針は各国の(ここではオーストラリアの)消費者法を遵守すべきであり、守らなければACCCのアクション〔==訴訟〕の対象になる、とも主張した。

Appleは昨年12月から今年1月にかけて、あの人為的性能劣化問題で、同様の消費者問題の爆撃を被(こうむ)った。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Airbnbが巨大アパート企業からの訴訟にカリフォルニアで勝訴…Webサイトにコンテンツ責任なし

【抄訳】
カリフォルニアの判事は、Airbnbに対するアパート管理会社Apartment Investment & Management Company(Aimco)の訴えを棄却した。昨年の2月に、約50000件の不動産物件の保有者ないし管理代行者であるAimcoは、Airbnbが、同社の賃貸物件の不法使用を意図的に奨励しているとして同社を訴訟した。

Aimcoはこの訴訟をカリフォルニアとフロリダ両州で起こしており、損害賠償と、同社賃貸物件の不法使用の奨励をAirbnbにさせない裁判所命令を求めていた。Aimcoの訴えの主旨は、AirbnbがAimcoの建物に、“平和な地域社会を維持することに関心のない”、しかも“身元不詳で履歴審査もない”人びとを連れ込んだことにある。

10月にAimcoは、南カリフォルニアの4つの物件におけるAirbnbの操業に対する仮差し止め命令を裁判所に求めた。しかしAirbnbは、カリフォルニアの法律は物件の転貸(また貸し)を禁じていない、と反論した。

Airbnbはさらに、この問題の責任はAmicoの物件のテナント(店(たな)子)とそのゲストにある、と主張した。同社は、Communications Decency Act(通信適正法)が、人びとがWebサイトにポストしたコンテンツに関する法的責任はそのWebサイトの運用者にはない、と定めている条項を挙げて、この訴訟の却下を求めた。

しかしAimcoは、Airbnbは情報コンテンツのプロバイダーであるから、そのサイト上のコンテンツに関して法的責任がある、と主張した。しかし今回カリフォルニアの裁判所は、Airbnbは情報コンテンツのプロバイダーではない、と判定し、Airbnbはコンテンツをホストしているだけであり、それを作ってはいない、とした。

地裁判事Dolly M. Geeは判決文でこう述べている: “この行いは、Airbnbを情報コンテンツのプロバイダーにしない。上述のように、情報コンテンツのプロバイダーの法的定義は、インターネットやそのほかの何らかの対話的コンピューターサービスによって提供される情報の、全体的ないし部分的な作成や開発に責任のある個人や法主体である”。

Airbnbはもちろん、この裁定を歓迎し、次のような声明を発表した:

“弊社と家主とのパートナーシップは、ホームシェアリングが全員にとってウィンウィンの状況であることを明らかにしている。Airbnb Friendly Buildings Programによってテナントは彼らの最大の出費対象〔借りてる部屋〕を有効利用して副収入を作り出し、それが家主にとっても新たな経済的機会を作り出す。このようなパートナーシップが数多く成立していることは大きな喜びであり、弊社は今後とも継続的に、ホームシェアリングに関して前向きの家主からの大いなるご関心をいただき、とくに、歴史に残るほどの大きな負債を抱えている現代のミレニアル世代への、ソリューションを提供していきたい”。

【後略】
〔訳注: フロリダはまだ未決。Aimcoは控訴の構え。この記事からは、(1)Airbnbと家主(Aimco)の当初の契約ないし合意内容、(2)転貸(また貸し)に関する家主(Aimco)と店子(借り手)との当初の契約ないし約束内容、以上二点が不明である。〕

原文末尾に、判決文の全文があります。—

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

QualcommがまたAppleを訴訟、今度はチップの企業秘密コードをIntelと共有したと

QualcommがまたAppleを訴訟し、今度はiPhoneのメーカーがQualcommのコードへの“前例のないアクセス”を悪用してIntelを助けたと主張している、とBloombergが報じた。このニュースは、Appleが、Qualcommが来年早々にも発売予定だった技術なしでiPhoneを設計した、というReutersの報道に信憑性を与えている。

この訴訟は、Appleが契約の終了を守らずにQualcommとIntelの技術者の混在を続け、その間、Intelの技術者がQualcommの技術に関する情報にアクセスした、と主張している。訴状は、Qualcommの企業秘密情報を求めるAppleからのリクエストには、Intelの技術者が配布先として含まれていた、としている。

昨日(米国時間11/1)サンディエゴの裁判所に提出されたその訴えは、今年の早い時期に始まった両者の法的小競り合いに、終結の兆しが見えないことを物語っている。当初はAppleがQualcommに対し弁済額10億ドルの訴訟を起し、Q社が同社となんの関係もない技術に関してA社に課金したとして、ロイヤリティの支払いを停止した。

それから数か月後に、今度はQualcommからの大きな反撃があり、Q社はA社に対し、自社のワイヤレス技術を使っているiPhoneのアメリカと中国における販売の差し止めを求めた。Qualcommはまた、特許侵犯でもAppleを訴えた。

Appleとそのサプライヤーたちからのロイヤリティの支払い停止は、Qualcommの経営に大きなダメージを与えた。昨日Qualcommが発表した決算報告は、利益が前年比で90%落ち込んだものの、売上はアナリストたちの予想を上回った。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

東芝の半導体事業売却、2兆円でBainと合意――コンソーシアムにはAppleも参加、WDは反発

東芝はパソコンやスマートフォンに大量に使われているNANDメモリーの供給者として世界第2位だ。東芝はその将来を決定する重要な要素である半導体チップ事業をめぐる長い物語が終わらせるために大きな一歩を踏み出した。東芝はチップ事業を2兆円(約180億ドル)で売却することでBain Capitalをリーダーとするコンソーシアムと正式に合意した(リンク先はPDF)。 このグループにはAppleも加わっている。

今月初め、東芝の取締役会はアメリカの有力投資ファンドKKR(Kohlberg Kravis Roberts)と日本の公的ファンド2社による買収提案を拒否し、Bainグループを売却先とする基本路線が決定されていた。 今回東芝の取締役会は正式に契約締結に合意した。

Toshibaは原子力関連事業を展開していたWestinghouse事業部が破産したことによる巨額の損失をカバーするため、TMC(Toshiba Memory Corporation 東芝メモリ株式会社)の売却先を熱心に探してきた。損失の穴埋めができない場合、来年、東芝は東京証券取引所への上場を廃止されるおそれがあったからだ。

今回の決定は単に東芝にとってばかりでなく、広くテクノロジー業界一般にとって大きな意味がある。AppleはライバルのSamsungが東芝を巡る問題から利益を得ることを恐れていた。Samsungは世界のシェア40%を占め、メモリーチップでは世界最大の企業となっている。AppleはSamsungの市場支配を許さないために巨額の資金を用意した。報道によればBainはAppleに70億ドルの出資を求めたという。

TMCの売却自体は早くも今年の1月には話題となっていた。しかしGoogle、Amazon、Foxconnなどの有名企業を含む多数の応札者が現れたため、決定にはかなりの時間がかかることとなった。

東芝はBain Capitalをリーダーとするコンソーシアム、PangeaにTMCを売却するが、TMCは東芝の子会社として事業運営を続けることとなる。PangeaコンソーシアムにはBainに加えて、日本の光学機器メーカーHoya、韓国系半導体メーカーのSK Hynix、アメリカからはApple、Kingston、Seagate、Dellがそれぞれ出資する。

東芝本体も3505億円(31億ドル)を再投資する。Bain Capitalが2120億円(18億ドル)、Hoyaが270億円(2億4000万ドル)、SK Hynixが3950億円(35億ドル)、アメリカ企業が合計で4155億円(37億ドル)をそれぞれ出資する。〔PDFによればコンソーシアムはこのほか6000億円を銀行等から借り入れる〕。

コンソーシアムは東芝とHoyaに50%を超える議決権を与えることで合意した。これは日本政府による規制をクリアするための対策だ。また韓国の半導体企業であるSK HynixはTMCの競争力に影響を与える各種知財へのアクセスをファイアウォールで遮断されることになる。

ただし、東芝とコンソーシアムの間で正式な合意がなされたものの、これで売却が決着したわけではない。

まず日本の独占禁止法、証券取引法に基づく承認を得る必要があるし、東芝とWD(Western Digital)の間では訴訟が続いている。

グループのSanDisk事業部を通じてTMCと提携関係にあったWDは、ライバルの半導体メーカーおよびクライアント企業がTMCを所有することはWDの「競争力に悪影響を及ぼす」としている。当初WDはTMC事業の売却に対する拒否権を要求した。後にKKRと組んでTMCの買収を提案したが、不成功に終わっている。東芝とWDはNANDメモリーを製造する3つ合弁事業の処理を巡って法的な争いを続けているが、コンソーシアム側では(法的決着が)「どうであろうと買収は続行される」としている。

東芝では2018年3月までに買収が完了することを望んでいる。これは日本では4月から新事業年度が始まるからだ。東芝としては東京証券取引所から上場廃止の処分を受ける可能性はできる限り排除したいということだろう。

画像: Wiennat Mongkulmann/Flickr UNDER A CC BY-SA 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

一般庶民の日常的法律問題を助けるDoNotPayの訴訟書式チャットボットがついに1000種を超えた

[画像: 駐車券問題の対応]

自作のチャットボットDoNotPayが駐車券争いで役に立ち、一躍話題になった19歳のJoshua Browderはそれ以来、できるだけ多くの、よくある法律的ニーズをできるかぎり自動化して、司法を民主化したいという彼のクェストに、さらに没頭を続けた。その結果Browderは、アメリカのすべての州とイギリスで、これから訴訟を起こす人びとの訴訟文書の作成を助ける、およそ1000種あまりのボットを作ってしまった。

最初のDoNotPayボットは、徐々に新しい機能を加えていくにつれて、何のためにどうやって使うのかわからない、と訴えるユーザーが増えてきた。そこで彼はその路線をやめて、個々の訴訟案件タイプごとのアシスタント機能をできるだけたくさん作り、フルサービスの消費者向け法律ツールとして出直すことにした。

今日ローンチした新しいDoNotPayは、庶民がぶつかるあらゆる法律問題…出産育児休暇を認めないブラック企業、家主地主の契約違反、などなど…で、誰でも訴訟用のトランザクションフォームを書ける。その1000以上あるボットは、自然言語で検索できるから、ユーザーが自分の問題を述べれば、DoNotPayが自動的に関連のアシスタントへ連れて行く。

Browderはこのツールを作るときに、関連書式や法律の地域(州〜国)ごとの違いが膨大で、しかもそれらに対応しなければならないと覚悟した。今のDoNotPayはユーザーの位置を自動的に確認して、その地域に合った適切な情報を提供する。

[世界初のボット弁護士が今や1000種の案件をさばく]
[お困りの問題はなんですか?]
[出産休暇を延長したいんです]
[それはたいへんですね.やり方をお教えしましょう]

ここまで大きくなれば、誰もがVCからの資金や、収益化について考えるだろう。でもBrowderはVCには目もくれず、自分の作品が無料であることにこだわる。彼は今Greylockの社員起業家だから、給料もアドバイスも会社からもらえるのだ。

今後は、結婚、離婚、倒産などもっと面倒な法律処理にも対応したい、と彼は考えている。IBMはDoNotPayに対し、Watsonの利用をタダにしてくれている。ユーザーが自然言語で検索できるために、Watsonが必要なのだ。そんな技術も自分で作りたいが、今のところ彼の関心はほかのところ…訴訟関連とユーザー対策…にある。

今Browderがとくに力を入れているのは、エンゲージメントの増大だ。今のユーザーは数か月に一回ぐらいのペースで利用しているが、利用頻度がもっと増えても平気で処理できるほどの能力を、システムに持たせたい。

それが達成できたら、収益化が視野に入るだろう。Browderは、今でも自分が何をやりたいのかはっきりしていない、というが、一応構想としてあるのは、一部のボットには企業をスポンサーにできる、ということだ。たとえば駐車券問題のボットには、自動車販売店がスポンサーになりたがるかもしれない。

DoNotPay(そんな金払うな!)の語源となった駐車券問題ボットでは、人びとの930万ドルを節約し、37万5000件の紛争を扱った。今や、社会を変えたといっても過言ではない。そのツールは、AIの必要性を人びとが自然に理解できる理想的なケーススタディだ。技術的に革命的なところは、何もなくってもね。

VCたちがIPに私権の鎧を着せて、独創的なアルゴリズムや機械学習の博士号を守ろうとするのは当然だが、でも結局のところは、世界に対するAIのインパクトの多くは、既存の技術をうまく利用する、彼のような熱心な自由人の発想から生まれるのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ネット上の仮想民事法廷FairClaimsが$1.8Mを調達して司法の大衆化に挑戦

2年前にStephen Kaneは、彼の次のビッグアイデアを探していた。弁護士として超大手法律事務所O’Melveny & Myersにいたが、その後、弁護士たちのために判例法を分析するソフトウェア企業Lex Machinaに在籍、その間彼は次にやるべきことを探していた。

そこから生まれたアイデアが、FairClaimsだ。小額裁判になるような軽い訴訟をネット上で解決するサービスで、Kaneはそれを仮想“Judge Judy”(ジュディ判事)*と呼ぶが、良いたとえだ。〔*: Judge Judy, 小額民事裁判をエンタテイメント化したCBSの長寿(1996-)リアリティー番組。〕

小額裁判は法廷への出頭が必要で、おそろしく長期化することもある。そこでロサンゼルスのFairClaimsは、それに代わるものを提供する。

実際の裁判の費用は、州によって違うが75ドルが相場だ。FairClaimsはそれよりやや高い79ドルを払って、問題をプロの調停人に調停してもらったり、仲裁人の前で略式裁判を申し立てたりできる。企業の場合は、250ドルだ。

つまり個人だけでなくAirbnbのような企業は、ゲストとホストの争いを、このような仮想審理で解決する方向へ変わりつつある。

Kaneによると、彼のこのサービスは今や、共有経済に従事している企業の定番的サイトになりつつある。

“レンタカーのTuroはサービス規約にうちの利用を載せている”、と彼は言う。

同社の取り分は、仲裁人が要らない場合で解決額の10-20%だ。仲裁人は、証拠審理のあとで係争を解決した判事である場合が多い。そして、裁決までの時間は通常3週間以下だ(実際に裁判になってしまうと数か月かかることもあり、さらにその後聴聞に回されたりすることもある)。

主張や議論はすべて、調停人、仲裁人、原告、被告らのあいだで、ネット上または電話で行われる。

営業とマーケティングを拡大したい同社は、ロサンゼルスの大物投資家たちから定額転換社債で180万ドルを調達した。

そのラウンドには、Greycroft, Crosslink, それに新顔の投資ファンドFikaらが参加した、とKaneは言っている。

その資金調達は、同社の宣伝機会でもあった、とKaneは考えている。法律サービスを大衆化する、という同社のメッセージが多少は世の中に伝わっただろう、と。

“わが社のミッションは、司法へのアクセスをサービスとして提供することだ”、とKaneは語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トランプにブロックされたTwitterユーザーが憲法(基本的人権)違反で彼を訴訟

今日(米国時間7/11)提出された訴状で、一部のTwitterユーザーが、自分たちをブロックしたとして大統領を訴えている。原告はKnight First Amendment Institute at Columbia University(コロンビア大学憲法修正第一条に関するKnight研究所)となっていて、トランプはユーザーをブロックすることによって言論を抑圧し、“個々の原告の公開フォーラムへの参加に対し、主観に基づく制約を課している”、としている。

この提訴の前に同研究所は、6月6日の書簡で、一部のユーザーをブロックするトランプの決定を非難した。それを継ぐ形の今回の訴訟は、トランプのTwitterアカウントは公開フォーラムの一部であり、ユーザーをブロックすることは修正第一条の権利を侵犯し、憲法違反である、と主張している。

ニューヨーク南部地区連邦裁判所に提出された訴状は、こう訴えている:

“トランプ大統領のTwitterアカウント@realDonaldTrumpは政府に関するニュースと情報の重要なソースになっており、大統領による、あるいは大統領宛の、あるいはまた大統領に関する重要な公開フォーラムである。このフォーラムで、反対論者を抑圧する努力において被告は、大統領や彼の政策を批判したTwitterユーザーを排除し、“ブロック”した。この行いは憲法違反であり、この訴訟はその停止を求めるものである。”

訴訟は、さまざまな場面でトランプの怒りを買った7名のユーザーを代表している。たとえば@aynrandpaulryanと@joepabikeは、彼のローマ法王訪問を揶揄したツイートの後でブロックされ、別の一人は#fakeleader(偽りのリーダー)というハッシュタグで彼を批判してブロックされた。

被告としては、トランプ本人のほかに、ホワイトハウスのコミュニケーションをコントロールしているかのような報道官Sean Spicerと、ホワイトハウスのソーシャルメディアディレクターDaniel Scavinoの名も挙がっている。

一見、大げさで無理な訴件のようにも見えるが、しかしニュースや政策の多くが、コミュニケーションの規範を嬉々として踏みにじるホワイトハウスお気に入りのプラットホームからのみ散布されていることを考えると、必ずしもそうではないだろう。Twitterがホワイトハウスの公式のチャネルであり、大統領が国民に語りかける唯一の方法であることを考慮すると、この申し立ては結局、それほどクレイジーではないのかもしれない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

資金難の公益訴訟をクラウドファンディングするイギリスのCrowdJusticeがアメリカに進出、$2Mのシード資金を獲得

公益訴訟をクラウドファンディングするスタートアップCrowdJusticeが、米国進出に際して200万ドルのシード資金を調達した。

First Round CapitalとVenrockがそのラウンドをリードし、Bessemerおよびこれまでの投資家Kindred Capitalが参加した。同社は、JustGivingの最初の投資家Bela HatvanyとJustGivingの会長Jonathan McKayを支援者として挙げている。

元国連の弁護士Julia Salaskyが2015年にロンドンで立ち上げたCrowdJusticeの事業は、訴訟費用を得ることが困難な事案にKickstarterモデルを持ち込むことだ。より一般的には、そのねらいは、司法にアクセスして社会の変化のために法を利用することを、誰にでもできるようにすることだ。Salaskyによると、今どこよりもそれを必要としているのがアメリカだ、という。

しかもそれは言葉だけではない。CrowdJusticeのファウンダーは12月に実際にニューヨークに引っ越した、と聞いている。実質的に会社を大西洋の向こう側へ移したのだ。イギリスでの操業は、“そこそこやれていた”というのに。

話題になった利用例としては、Brexitに対する“People’s Challenge”〔仮訳: 人間からの異議申し立て〕がある。それは最高裁における勝訴で、EU離脱は議会の議決が必要、とした。また最初のアメリカの事案は、トランプの移民の入国禁止に対する異議申し立てだ。

今日(米国時間5/30)のアメリカでのシード資金調達と時を同じくして、新たな募金キャンペーンが始まった。それは、カナダのスタートアップPirate JoeのファウンダーMike Hallattに対する巨大企業Trader Joeからの訴訟〔“商標盗用”〕で、Hallatの弁護費用を捻出するためだ。

Hallattは車で米加国境を越え、Trader Joeの品物を大量に仕入れ、それに利ざやを付けてバンクーバーの自分の店で売っている。Trader Joeは、カナダに店舗がないにも関わらず、Hallattの事業をやめさせようとして何度も訴訟を試みている。

Salaskyはこう声明している: “法律を誰もが利用できるようにすることが、今ほど重要な時は過去になかった。力のある者もない者も、権利を擁護し守り、あるいは行政の責任を問うことが、できなければならない。CrowdJusticeにおける私たちの目標は、訴訟の準備と資金調達に革命をもたらし、正義へのアクセスに格差をなくし、それを民主化することである。それが、ゴリアテ(巨人)に挑むダビデ(小柄な若者)であっても、あるいは行政を糺す非営利団体であっても、私たちは人びとに法へのアクセスを与えたい”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

アメリカ最高裁、パテント・トロールに打撃――特許権侵害訴訟の提起先を制限

お気の毒だが、30年にわたってアメリカの訴訟制度を巧みに利用してきたパテント・トロールがアッパーカットを喰らった。これまでパテント・トロールは訴訟提起先の裁判所をほぼ自由に選ぶことができた。その結果、特許権保有者に甘いことで悪名高いテキサス州東部連邦裁判所が頻繁に選ばれてきた。しかし今後は特許権侵害訴訟を起こすに当ってそうした振る舞いは許されなくなる。

アメリカ最高裁は、原告は特許権侵害を主張するにあたって、特許権侵害企業が設立された場所または現実に継続して業務を行っている場所あるいは現に特許権が侵害されている場所を管轄する裁判所にのみ訴を起こすことができると全裁判官の一致で決定した。

他社を訴えて金銭的利益を得ることを主たる目的として特許を保有する会社にとってこの決定は打撃となる。

法律の専門家は、今後の多くの特許権侵害訴訟がアメリカ企業多数が登記先としているデラウェア州、テクノロジーのハブであるカリフォルニア州やマサチューセッツ州に移るだろうと考えている。

こうした場所ではトロールに訴えられた企業側が訴訟のための十分な資源を持つだけでなく、その場所自体がテクノロジー企業にとってホーム側だという利点もある。ただしWall Street Journalの記事によれば、訴訟の集中により審理はこれまでより長引くだろうという。このことは特にデラウェア州の裁判所において事実となりそうだ。テキサス州東部地区では驚いたことに最近の全特許訴訟の30%が提起されており、同州の裁判所はこれを処理するために必要な資源を配置している。デラウェア州の特許訴訟は大幅に増加することが予想されるが、同州の裁判所には今のところこの負荷の増大をさばくための準備がない。

Apple、Samsung、Microsoft、Googleは数多くの特許権侵害訴訟に関係しているが、今日の最高裁決定は実はテクノロジー企業とは直接関係ない訴訟に関連するものだった。清涼飲料のフレーバーを提供するTC Heartland LLCと食品・飲料の大手企業、Kraft Heinz Coとの裁判でこの決定が下された。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+