「秀才1000人の信頼ではなく学生2000万人の納得が必要」Mosは急進的なフィンテックスタートアップを目指す

大学に進学する金銭的余裕がなかった人権活動家でMos(モス)の創業者であるAmira Yahyaoui(アミラ・ヤヒアウイ)氏は、学生と奨学金との橋渡しをするプラットフォームを立ち上げたとき、取り組んでいたイノベーションにひと区切りがついたと感じた。2017年の創業以来、Mosはコミュニティ内の40万人以上の学生に対し、1600億ドル(約18兆5000億円)以上になる学資援助プールへの自由なアクセスを提供している。

現在、ヤヒアウイ氏は、自身が直面したもう1つの金融の障壁を壊すことを目指し、Mosをチャレンジャーバンクへと拡大している。これは、Mosが、学生の大学受験や進学を支援するEdTech事業から、同じユーザー層の生活における複雑な要望をサポートするフィンテック事業へと進化したものだ。

「当社は、自分たちが行っていることとその理由について、かなり急進的に考えている」と同氏はいう。「エリート主義でもなく、ごく限られた人たちのためにやっているわけでもない。米国に根ざす銀行になりたいと真剣に考えている」とし、まずは学生を対象に「それを目標としている」と語る。

この目標は多くの投資家の共感を呼び、Mosの最新の資金調達ラウンドへの参加が競われた。今回のシリーズBでは、評価額が2020年5月時点の5000万ドル(約57億7000万円)から4億ドル(約461億円)に引き上げられ、4000万ドル(約46億1000万円)を調達した。ヤヒアウイ氏によると、このラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)の主導のもと、Sequoia(セコイア)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Emerson Collective(エマーソン・コレクティブ)、Plural VC(プルーラルVC)などが24時間以内に集まり、複数の条件規定書を断ることもあったし、プレゼンのスライドも必要なかったという。

Mosの最初のデビットカードには、当座貸越料、遅延損害金、ネットワーク内ATM手数料が不要などいくつかの主な特徴がある。また、Mosの口座を開設するために最低残高も必要ない。

画像クレジット:Mos

「学生はお金をあまり持っていないため、当座貸越や詐欺など、あらゆる不利な条件に直面している」と同氏はいう。確かに、他のフィンテック企業も、学生の多くが卒業後も銀行を変えないことに着目し、脆弱ではあるものの定着性のある顧客層に同様のサービスを提供する機会があると考えているだろう。Stride Funding(ストライド・ファウンディング)LeverEdge(レバーエッジ)は学生ローン業界に参入しており、Thrive Cash(スライブ・キャッシュ)は合格通知に基づいて資金を提供し、学生向けの資金援助ツールであるFrank(フランク)はJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)に買収されたばかりだ。

「JPモルガンをはじめとするすべての銀行は、自分たちの未来が過去とは異なることを認識しているのだろう。銀行は学生との関係を強めようとしているが、学生は既存の銀行経由では奨学金を利用しない」と同氏は述べる。一方、Mosは、2021年までに15億ドル(約1730億円)以上の奨学金を学生に提供してきた。

Mosはこれまで、奨学金を通じて学生の購買力を高めることで、学生との信頼関係を築いてきたが、この関係が他のフィンテック企業との競争に有利に働くとヤヒアウイ氏は考えている。つまり、自分を信頼し、認めてくれる人たちのユーザー基盤を構築し、その人たちに響く言葉で商品やサービスを紹介するというものだ。

「当社は大人になったばかりの顧客にサービスを提供しているが、将来的には顧客が大学を卒業してアパートを借り、家賃を払うようになるため、当社も顧客と一緒に成長していくのだ」と付け加える。

Mosの創業者であるアミラ・ヤヒアウイ氏(写真提供者:Cayce Clifford)

今回のラウンドに参加したラックス・キャピタルのDeena Shakir(ディーナ・シャキール)氏は、銀行事業は常にMosの「ミッシングピース」だったと述べる。もともとMosは、情報公開の他の側面を担ったり、学生に特化した他の金融商品のプラットフォームになったりと、さまざまな方法で拡大できると考えていたという。今では、この最初の数年間に築いたネットワーク効果により、当然のように次のステップに進んでいると同氏は考えている。

「Mosは、金融アクセスや金融包摂の側面から関わるのではなく、学生にとってのメインバンク、クレジットカード、そしてホームとなるユニークな機会を得たと認識している」と同氏はいう。

当初のミッションを超え、このスタートアップの新しい目標は、確かな収益をもたらす可能性がある。Mosはもともと、奨学金へのアクセス料で収益を上げていた。現在、Mosは仲介手数料で収益を上げているが、その知識は口座を開設すれば誰でも無料で得られる。ヤヒアウイ氏は、Mosが以前のビジネスモデルで「数百万ドル(数億円)」の年間収益を得ていたと述べたが、現在の収益については語らなかった。しかし、チャレンジャーバンク路線を追求したことで、有効な市場が爆発的に拡大したといい「当社の時価総額は、以前の10倍になっている」と語る。

将来的にMosは、学生がお金を支払ってアクセスできる商品セットを作り、アドバイザーとのより実践的な相談や特定の銀行機能などを提供する予定だ。

最近のPayPal(ペイパル)の業績からも明らかなように、すべてのフィンテック企業にとって問題となるのは、長期的なユーザーの質だ。Mosは、デビットカード事業を開始してから数カ月後の11月頃に、成長率が大幅に上昇した。競争の激しいフィンテック業界であるため具体的な成長指標については明らかにしていないが、カードの開始後、最初の四半期に10万人以上の学生がMosに口座を開設したことを紹介する。同氏は、この成長によりMosが米国で10番目に大きなネオバンクになったと推定している。

その学生たちが固定客となるのか、それとも大学に通っている間の一時的な顧客なのかはまだわからない。景品や紹介ボーナスには魅力を感じるが、それは同社にとって長期的な利益につながるのだろうか。

Mosの第一期生となった大学生のJulieta Silva(ジュリエッタ・シルバ)さんは、テキサス州の小さな町で育った。彼女が通う500人規模の学校には、大学進学のためのカウンセラーが1人しかいなかったため、進学に関する相談は、ほとんどMosからTikTok(ティックトック)を介して行っていた(実際、Mosのソーシャルメディアプラットフォームのアカウントには、5万2000人以上のフォロワーがいる)。最初にこのプラットフォームに参加したのは2020年8月で、奨学金を申請するためだったが、このプラットフォームは「複雑な銀行システムの簡易版」を目指して成長してきた。現在、ノースイースタン大学の1年生である彼女は、今でもBank of America(バンク・オブ・アメリカ)のカードを使っているが、日々の生活ではMosのカードに頼っている。友達に登録してもらえば、紹介料を得ることもできるという。

「学内で使われているのはまだあまり目にしないが、私がカードを使うたびに[カードについて]聞かれる。だから、ちょっとした特典を全部教えてあげるが、実際に皆の関心を集めるのはMosのファイナンシャルアドバイザーと、学費のための資金援助だ」と彼女は話す。

画像クレジット:Mos

一方、創業者のヤヒアウイ氏は、NFT(非代替性トークン)やしゃれたロゴ(と重さ!)を施したクレジットカードなど、話題性に気を使ってきた。しかし、ベンチャーキャピタルの支援を得て、大衆向けの事業に乗り出すことにした。

「1000人の秀才の信頼が得られればよいと思っていた」と同氏は述べ、そして続けた。「しかし実際には、2000万人の学生を納得させる必要がある」。

画像クレジット:BreakingTheWalls / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

【コラム】創業者として成功に「大学なんて関係ない」というのはシリコンバレーの幻想だ

シリコンバレーは「ドロップアウト(中退)」を礼賛するのが大好きだ。伝統的な教育では、関連性のないことを教えられ、なかなか進歩できず、そして情報が簡単に手に入る世界では、もはやかつてのように学習リソースを提供できないため、自分には向いていないと判断した起業家が、着想を得ると考えられているからだ。

ドロップアウト礼賛の伝説的な支持者は、Thiel Fellows(ティール・フェローズ)プログラムで1年間大学を休学する学生に資金を提供するPeter Thiel(ピーター・ティール)氏から、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やBill Gates(ビル・ゲイツ)氏といった非公式のマスコットまで、大学は卒業しなかったが実際には高度な教育を精力的に擁護する人々である。

私の大学入試に対する考え方は、世界最高峰の大学への入学を目指す何千人もの野心的な学生を国際的に支援し、彼らのキャリアが次にどうなるかを見てきたことから得られたものだ。

相当な資産を持ち、恵まれたコネクションのある家庭に生まれたのでなければ(ドロップアウト礼賛の擁護者の多くはそのような立場だ)、一流大学の学位は、既存の社会経済的環境における機会で、最も強力な武器になる。

シリコンバレーを代表するスタートアップアクセラレーターといえば、言わずと知れたY Combinator(Yコンビネーター)だ。Coinbase(コインベース)、Brex(ブレックス)、DoorDash(ドアダッシュ)、Airbnb(エアビーアンドビー)など、さまざまな分野で数多くのユニコーン企業を輩出することに成功している。若くて野心に溢れた起業家は、新たなユニコーンを生み出すための支援として、シード資金、メンターシップ、ネットワーキングの機会を得たいと望み、Y Combinatorに応募する。

ドロップアウト礼賛を理解するために、私はY Combinatorで実際に成功している人たちを調べてみた。その結果、私はイスから転げ落ちそうになった。私はすでに学位取得の大推薦者だったのだが。

まず、人口統計を見てみよう。ユニコーン企業を生み出したY Combinator出身の創業者は、平均年齢28.1歳で会社を起ち上げた。しかし、消費者向けテクノロジーのユニコーン企業の場合、平均年齢は22.5歳(つまり大学を卒業したばかり)だった。このような企業の創業者は非常に若く、多くの場合未経験者である。となると「なぜ、Y Combinatorはこのような優秀な若者に自信をもって賭けることができるのか?」と疑問に思わざるを得ない。彼らの能力を見分けるシグナルは何なのだろうか?

画像クレジット:Jamie Beaton

その答えは、学位に依るところが大きい。このような共同創業者たちの中で、大学に進学していない人はわずか7.1%。中退者はわずか3.9%で、しかも全員がハーバード、スタンフォード、MITなどの有名校を中退している。つまり、入学資格を得たというだけで、学力の高さを示す強力なシグナルを発しているわけだ。これらの中退者たちは、普通の脱落者ではない。彼らは、世界で最も有名な大学への入学資格を獲得し、高校生活を極めて真剣に過ごしていたのだ。

では、大多数は?ご想像のとおり。創業者の35%がハーバード、スタンフォード、イェール、プリンストン、MIT、カリフォルニア大学バークレー校に進学し、共同創業者の45%がアイビーリーグ、オックスブリッジ、MIT、スタンフォード、カーネギーメロン、USCに進学している。25歳以前に起業した共同創業者のうち、3分の2以上がアイビーリーグ、オックスブリッジ、MIT、スタンフォード、CMU、USCのいずれかに進学している。共同創業者の出身大学はMITが最も多く、次いでスタンフォード、カリフォルニア大学バークレー校となっている。

他の人たちはどこへ進学したのか?インドのユニコーン創業者の大多数は、インドのアイビーリーグであるインド工科大学に進学している。創業者たちは学部卒に留まらない。共同創業者の35.7%が何らかの大学院を修了している。

私はこの現象を説明するために、著書の中で「シグナリング」という言葉を提唱している。これは、ノーベル経済学賞を受賞したGary Becker(ゲイリー・ベッカー)が作った造語だ。本質的に、労働力市場は競争が激しいので、すべての人に実際にどの程度の才能があるのかを把握するにはコストがかかりすぎる。そのため、ベンチャーキャピタルは誰に賭けるべきかを判断するために、簡潔な経験則を用いる必要がある。

エリート大学の学位は、若者が長期間にわたって学業、課外活動、リーダーシップの追求に何千時間も費やし、入学審査委員会から一定の水準にあると見做されたことを意味する。これは、Y Combinatorのようなアクセラレーターにとって、候補者がどれだけ有望であるかを迅速に選別するために必要なシグナルとして機能する。

スタンフォード大学の学部生なら全員がY Combinatorに受かるわけではないが、スタンフォード、MIT、ハーバード出身者の合格率は、一般的な大学やこのレベルの教育を受けずに応募した人たちを圧倒する。

私は、世界トップクラスの投資家から成長資金を調達する際、投資家たちが、ある創業者には「投資できる」、ある創業者には「投資できない」と言っているのをよく耳にした。この定義について調べてみると、創業者の学歴がどれだけ説得力があるかということに関わっていることが多いのだ。この人物は投資対象になりそうか?ファンドの機関投資家は首をかしげるだろうか、それとも支援してくれるだろうか?

ピーター・ティール氏は、おそらく中退ヒステリーの最も声が大きな擁護者の1人だ。だが、彼自身、スタンフォード大学で学士号と法学博士号を取得している。私の調査では、大学中退の道を支持する人の中で、自分自身がエリート教育機関のバッファを持っていない人を見つけることは難しい。

ピーター・ティール氏の個人的なベンチャーファンドであるFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)は、エリート大学教育を受けずに投資家を志す人のためのものであるかのように聞こえる。だが、よく見てみると、その逆であることがわかる。Founders Fundで働く18人の中には、スタンフォード大学学部卒6人、ハーバード大学法学博士1人、スタンフォード大学MBA2人、スタンフォード大学法学博士1人、コーネル大学学部卒、イェール大学学部卒、MIT学部卒、デューク大学学部卒など、18人のエリート学歴者がいるのだ。ある投資家はそれに近い。彼らは「最も中退しそうな学生」という賞を受賞したが、それでもちゃんとMBAを取得した。

最高のアドバイスは、それを与える人がそうやってきたということだ。もし、あなたがユニコーンの創業者になって起業家精神で世界を揺るがしたいと望むなら、最も有効な発射台は一流大学の学位である。

編集部注:本稿の執筆者Jamie Beaton(ジェイミー・ビートン)は「Accepted! Secrets to Gaining Admission to the World’s Topic Universities(合格!世界で話題の大学に入学許可を得るための秘密)」の著者であり、大学入試コンサルティング会社であるCrimson Education(クリムゾン・エデュケーション)のCEO。

画像クレジット:SEAN GLADWELL / Getty Images

原文へ

(文:Jamie Beaton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アカデミアの技術・研究成果の事業化を目指しサムライインキュベートが東北限定「事業化人材発掘大学キャラバン」開催

サムライインキュベートは1月27日、アカデミア発の事業化人材発掘や支援を目的として、東北エリアにある4大学の5カ所を東北エリア限定「事業化人材発掘大学キャラバン」として訪問することを発表した。各大学にて事業アイデアのレクチャー、ワークショップ、相談会を開催する。

東北エリア限定「事業化人材発掘大学キャラバン」開催スケジュール日程

  • 2月28日:新潟県 長岡技術科学大学
  • 3月7日:宮城県 東北大学(青葉山キャンパス)
  • 3月8日:宮城県 東北大学(片平キャンパス)
  • 3月9日:岩手県 岩手大学
  • 3月11日:青森県 弘前大学

同プログラムは、東北大学を主管機関とする「東北地域 大学発ベンチャー共創プラットフォーム」が採択された「JST社会還元加速プログラム(SCORE)事業の一環。イノベーションやスタートアップの支援を行ってきたサムライインキュベートが、東北4大学5エリアを訪問。アカデミアで研究開発に取り組んできた人々を対象に、事業アイデアの考え方レクチャーやワークショップ、個別相談会を実施する。自身の技術や研究成果を「社会実装したいものの方法がわからない」といった悩みなども含め、各々に応じた壁打ち相談が可能という。

サムライインキュベートは、これまでのイノベーションがソフトウェアドリブンによる情報革新だったものに対し、高度化によりデジタルとアナログの融合が求められるようになり、研究開発のシーズを基にした「ディープテック」が今後のイノベーションには不可欠だと考えているという。

また、ディープテックは仕組みを抜本的に変えて課題解決を図るため、研究と試行を積み重ねる必要があると指摘。その際、地方が「事業開発の場」として価値を発揮し、地方でのイノベーションエコシステム拡大を図ることが必要としている。さらに、地方で起業するスタートアップが増えることでイノベーションエコシステムの構築に寄与するため、本質的な社会課題解決を目指すには、地方で研究開発型のスタートアップを起こすことが重要だと捉えているという。

海外への大学出願を支援するシンガポールのCialfoが約46億円を調達

大学への出願は高校生にとって、特に海外留学したい生徒にとって、とても難しい。シンガポールに拠点を置くEdTechのCialfoは、学校情報の収集、カウンセラーと生徒とのコミュニケーションツール、留学生が1つの出願フォームで多くのプログラムを見つけて出願できる「Direct Apply」を備えたプラットフォームで、出願を簡単にしようとしている。

Cialfoは米国時間1月26日、Square Pegと SEEK Investmentsが主導するシリーズBで4000万ドル(約46億円)を調達したと発表した。

このラウンドには、以前に投資していたSIG Global、DLF Ventures、January Capital、Lim Teck Leeも参加した。2021年2月に発表したシリーズAの1500万ドル(約17億2500万円)と合わせて、これまでの調達金額の合計は5500万ドル(約63億2500万円)となった。

Cialfoには現在、シンガポール、インド、米国、中国に170人以上の従業員がいて、世界中の約1000校の大学と提携している。提携大学にはインペリアル・カレッジ・ロンドン、シカゴ大学、スペインのIE大学などが含まれる。

2017年にRohan Pasari(ローハン・パサリ)氏、Stanley Chia(スタンリー・チア)氏、William Hund(ウィリアム・フント)氏がCiafloを創業した。創業チームはTechCrunch宛のメールで、パサリ氏自身が高校生だった頃の体験が創業につながったと述べた。同氏はインドで育ち、在籍していた高校にはキャリアカウンセラーがいなかった。そのため、生徒たちは大学の出願を自分でしなくてはならなかった。

パサリ氏はもともとは米国の4年制大学に進学したかったが、両親には高額な留学費用を工面する余裕がなかった。そこでシンガポールのいくつかの学校に出願し、南洋理工大学(NTU)の全額奨学金を受けた。同氏は在学中に妹や友人数人の大学出願手続きを手伝い、そこから創業のアイデアが心に芽生えた。

はじめはチア氏とともに教育コンサルティング会社を創業し、ピーク時にはおよそ200人の生徒を担当した。しかし両氏はテクノロジーを活用して事業をスケールアップしたかったため、2017年に教育コンサルティング会社を売却し、その資金でCialfoを創業した。

Cialfoの事業はB2Bで、学校にサブスクリプションを販売している。学校のカウンセラーが生徒をプラットフォームに招待し、保護者もこのプラットフォームを利用できる。

チームはTechCrunchに対し「我々のミッションは大学に進学しようとしている100万人の生徒のジャーニーを手助けすることです。これには3つの柱が必要だと考えています。情報へのアクセス、1人ひとりに合わせたサポート、資金です。この3つが一体となって、教育の民主化を実現できます」と述べた。

調達した資金はグローバルでのユーザーベースの拡大と機能の追加に使う予定で、買収の可能性も検討している。

画像クレジット:Moyo Studio / Getty Images

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

コロナ禍での友達同士の出会いを支援するアプリ「Flox」がNYの大学生に人気

新成人の困難に勝るものはないが、ロックダウンの中、人格形成期を過ごした大学生の年齢のZ世代にとって、有意義な友達づくりはさらに難しくなる可能性がある。パンデミック中はコロンビア大学のリモート授業に参加していたJamie Lee(ジェイミー・リー)氏は、この隔離がいかに同級生、特にクラスメイトと一度も顔を合わせることなく通学する2~3年生に影響したかに気づいた。

「ミドルスクールでInstagramをダウンロードしてから、オンラインで常に私自身を個人として表現してきましたが、オンラインでリアルに自己表現するのをとても不安に感じました」と、リー氏はいう。「『それじゃ、どうやってみんなとリアルにつながる方法を探そうか?』という考えを受け入れたかったのです。そして一番リアルな存在である友人と一緒に行うのが最善策だと思いました」。

2020年夏、リー氏はFlox(フロックス)のノーコードのベータ版を立ち上げた。人々が会うのを助けるアプリである。プロフィールを作成してマッチするTinder(ティンダー)、Hinge(ヒンジ) 、Bumble(バンブル)のようなもので、グループとしてサインインしてから他の友人グループとつながるだけでよい。

「利用者からはオンラインで体験したものの中で一番楽しいとのフィードバックをもらいました。私にとってはターニングポイントでした。これはとても本気のものになり得る、これをやるなら今だと思いました」とリー氏はいう。

そうして彼女はアプリに全力を挙げるため、コロンビア大学卒業まであと1年を残して中退した。

画像クレジット:Flox

2021年2月、リー氏と2人のフルタイム勤務のエンジニアは(彼女のチームの範囲では)約250人の利用者を対象にアルファテストを実施し、ニューヨークシティだけで学部生と最近の卒業生にプライベートなベータテストを開発した。これまでに順番待ちの利用者は2万人に達したが、リー氏は2021年11月頃にFloxを順番待ちしている大学生の年齢のニューヨーカーにも公開し始めると述べた。後に他の都市にも拡大する。さらに、FloxはHoneycomb Asset Management (ハニーコムアセットマネジメント)が主導しBBG Ventures(BBGベンチャーズ)とBanana Capital(バナナキャピタル)が参加した120万ドル(約1億3662億円)の資金調達ラウンドを終えた。

「正直なところ、最初のラウンドは驚くほど難しかったです。私はプエルトリコ人であり中国人です。当時21歳で、これに関する経歴もないし、コロンビアも退学しました」とリー氏は述べた。「こういう会話に入る上で、そもそもみなさんから私に関するご意見があるに違いないと思います。ピッチミーティングではもっとZuck(ザック)のようになれと言われました」。

リー氏は彼女自身の年齢層の人々のためにプラットフォームを開発する創設者として、賢いやり方でアプリを市場に出した。利用者にはリアルに感じて欲しいと考えた。そこで、TikTok(ティックトック)利用者でもあるオーディエンスに会い、アプリの販促用の動画を投稿したところ三つの投稿で閲覧数は180万回とバズった。

「トイレにも1人で行けないのに」リー氏はあるTikTokでいう。「なぜ1人で出会いアプリを使っているの?」。

@jamietylerlee

WELCOME TO FLOX. Waitlist early access in bio #startup #entrepreneur #app #friends #dating #fyp #selfimprovement #watchmegrow #tech #foryou

♬ original sound – Jamie Lee

Floxはグループ基準のソーシャルネットワーキングを試みる初のアプリではない。Tinderは友人とグループに参加し、他のグループとマッチする機能を持つTinder Social(ティンダーソーシャル)にこのアイデアを反映していた。しかし2016年の前途多難なスタートのあとたった1年ほどでこの機能は終了した。不注意にも、自身の連絡先からTinderのアカウントを持っている人を特定できたからである。リー氏は、Tinder SocialがうまくいかなかったのはTinderがすでに出会い(ナンパ)アプリとしてのブランドを確立していて、利用者1人がそのプロフィールを持っていると、同じバージョンの自分を友人やデート相手となる可能性がある人に見せることになったからだと考えている。

「個人に焦点を当てることはやめたいと考えています。それはデートを指すからです」とリー氏。「グループのアイデンティティを受け入れたいと思います。そうすればフロックは『アパートメント11』と呼ばれるかもしれません。グループを構成している人々よりも、誰がグループを立ち上げているかを見られます。強調されることを入れ替えているのです」。新たな人に会うことに焦点を置きながら、リー氏はFloxのグループ(フロック)を作る友人同士も近付くことを望んでいる。

Bumbleも出会いアプリとして始まったが、友達を作りビジネスパートナーを見つけるモードもある。リー氏は、Bumble BFF(バンブルBFF)をFloxのインスピレーションとして言及するが、彼女がアプリを使用したとき、ほとんどの人が新しく友達を作るよりもルームメイトを探しているように見えた。

画像クレジット:Flox

「Z世代は最も孤独で、不安で、落ち込んだ世代です。友人が必要な人はとてもたくさんいます」。リー氏は述べた。「しかし、『一対一の友情アプリを使用すること』にともなう社会的スティグマがあります。不運にも、一対一で友達を探すとき、相手や、あなたがBumble BFFを使用していることを知っているかもしれない誰かに、あなたが友人がおらず、希望する立ち位置に自らを置いていないことを示唆することがよくあります。そのため、私達のFloxの目標は、より快適に、安全に、楽しくすること、そして友人探しの裏にある社会的スティグマを取り除くことです」。

このアプリは、人は現在の友人に無視されると、新たな人と会うことを最も心地よく感じるというリー氏の仮説に依存する。しかし集団力学によって安全の層が新たに備わる。Floxは出会いアプリではないが、リー氏は一部の人がその目的でアプリを使用することを知っている。しかし、グループの中の人と出会うことで、他人と一対一で会うことにつきまとうリスクの軽減に役立つ可能性がある。

「2~3年前に住んでいた街で、出会いアプリで散々な目に遭いました。私はその出来事を報告しましたが何も措置が取られず、そのプラットフォームでは守られている感覚を得られませんでした」とリー氏はいう。「2020年、利用者と初めてお話ししたとき、利用者は『出会いアプリで他者に会うのは不安。一対一では安全ではないと感じるから。』と言っていました。そのため、私達はもっと心地よく、安全に人と会えるこの環境を提供したいのです」。

Floxの最近のシードラウンドにより、リー氏はアプリを構築し、利用者をどんどん増やし続けることを願っている。同時に、アプリ体験が既存の利用者にとって肯定的でリアルな物であり続けるよう慎重に進めたいとしている。

画像クレジット:Flox

原文へ

(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

コロナ禍で加速する大学中退をチャットボットで防ぐサービスのEdSightsが約5.6億円を調達

Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)姉妹がEdSightsを創業したとき、2人は道しるべとなるような大きな問いかけを自分たちにした。

「自分の指先でどんなデータでも集められる魔法の杖がある申し分のない世界で、大学生が中退しないようにするために私たちは何を理解すればいいのでしょうか」。クラウディアはそう語る。共同創業者の2人は最初の数年間をかけてデータポイントを理解しようとした。学生を適切なリソースに結びつける手助けをするのか、あるいは心配事を聞いてそれを意思決定者に伝えるのかといったことだ。そして結局、大学生との効果的な関わりとタイムリーなデータ収集の両方ができるサービスとして、チャットボットを活用することにした。

このチャットボットは、コロナ禍におけるもろさから大きな影響を受けた。2020年、EdSightsは学生を引き止める方法を模索する大学に対してこのサービスの販売を開始した。特に、コロナ禍でキャンパスがロックダウンされ、学生が以前よりも孤独になってしまったという事情からだ。

2020年にEdSightsのプロダクトはチャットボットによってそのあり方が明らかになった。学校のマスコットを使ったチャットボットは相手に合わせた質問やメッセージを学生に送信し、学生の最大のストレスは何かを把握する。その後、金銭や食料の支援、警備といった大学のさまざまなリソースにつなげる。EdSightsはコロナ禍で基本的なコミュニケーションができなくなってしまった世界各地の大学にこのサービスを販売した。

米国時間9月27日、EdSightsはAlbum VCが主導するシリーズAで500万ドル(約5億5700万円)を調達したと発表した。Album VCはPodium、Andela、Degreedの初期の投資も主導したVCだ。EdSightsの今回のラウンドには他にLakehouse、Good Friends、CheggのCEOであるDan Rosensweig(ダン・ローゼンズヴァイク)氏、GSV VenturesのDeborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏も参加した。今回の調達で、これまでに発表されているEdSightsの調達額は800万ドル(約8億9100万円)となった。

新たな資金は勢いがある中で調達された。EdSightsは具体的な数字を明らかにしていないが、年間の売上が6倍に成長したと発表している。2020年5月時点の顧客数は16だったが、現在は大学や教育機関など70になっている。創業した姉妹の1人のキャロライナは、同社は「黒字化が目前」でこれ以上従業員を雇用しなくても黒字になるだろうと述べた。同氏は、成長の新たなゴールを考えるとあと1年2カ月で黒字になるだろうと予測している。

画像クレジット:EdSights

EdSightsにとっては、同社が提供する可視化の機能をベースにしてアクションを起こさせることができるかというのが常に課題だ。よく知られているように大学はお役所仕事で新しい取り組みや迅速な行動が妨げられ、このことがEdSightsの投資収益率に悪影響を及ぼす恐れがある。共同創業者の2人は、学生のデータを得ることで大学は学生の需要に応じてリソースを効果的に使い、的外れの別のサービスに費やすコストを削減できると反論する。

キャロライナは「大学はお金の使い方が非効率で、どういうときに非効率な使い方が発生するかを私たちがまさに明らかにしていると思います。これが、データが重要であると私が考える理由です。高等教育を最適化する新たな段階に来ています」と述べた。

しかしEdSightsの計画は相談に乗ることだけではない。最終的には、メンタルヘルスの専門家や金銭面のリソース、就職支援など需要の多いサービスも提供したいと考えている。

キャロライナは「ある程度の規模に達しきちんと理解した後で、教育機関では支援できない分野について我々は何をすればいいでしょうか。何かができる人は他にいるでしょうか。そして私たちにそれができるでしょうか」と述べた。

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)

「黒人のハーバード」と呼ばれる名門ハワード大学がランサムウェア攻撃を受け授業を中止

教育機関を狙うランサムウェア攻撃が活発化している中、最新の被害者となったワシントンD.C.のハワード大学(Howard University)は、米国時間9月7日の授業を中止すると発表した。ハワード大は、カマラ・ハリス米副大統領の母校として知られる全米屈指の名門黒人大学だ。

今回のインシデントは、学生がキャンパスに戻ってきてから数週間後の米国時間9月3日に、同大学のエンタープライズ・テクノロジー・サービス(ETS)が同大学のネットワーク上で「異常なアクティビティ」を検知し、調査のために意図的にシャットダウンした際に発覚した。

「調査と現在までに得られた情報に基づき、本学がランサムウェアによるサイバー攻撃を受けたことが判明しました」と大学側は声明を発表した。攻撃の背後に誰がいるのか、身代金がいくら要求されたのかなど、詳細は明らかにされていないが、これまでのところ、9500人の学部生・大学院生の個人情報への不正アクセスや流出を示唆する証拠はないとしている。

「しかし、我々の調査は継続しており、何が起こったのか、どのような情報がアクセスされたのか、事実を明らかにするために努力を続けています」と声明は述べている。

ハワード大学は、ITチームがランサムウェア攻撃の影響を十分に評価できるようにするため、9月7日の授業を中止し、不可欠なスタッフ以外キャンパスを立ち入り禁止にしている。また、調査中はキャンパス内のWi-Fiも停止するが、クラウドベースのソフトウェアは引き続き利用可能だという。

「これは非常に変動的な状況であり、すべてのセンシティブな個人データ、研究データ、臨床データを保護することが我々の最優先事項です」と大学側は述べている。「我々は、FBIおよびワシントンD.C.市政府と連絡を取り合い、犯罪による暗号化から大学とみなさんの個人データをさらに保護するために、追加の安全対策を導入しています」とも。

しかし大学側は、その改善策は「一晩で解決できるものではなく、長い道のりになるだろう」と警告している。

ハワード大学は、パンデミックが始まって以来、ランサムウェアの被害に遭った多くの教育機関の中で最新の犠牲者だ。FBIのサイバー部門は最近、この種の攻撃を仕掛けるサイバー犯罪者は、遠隔教育への移行が広まっていることから、学校や大学を重点的に狙っていると警告している。2020年、カリフォルニア州立大学では、医学部のサーバー内のデータを暗号化したNetWalkerハッカーグループに114万ドル(約1億2600万円)を支払い、ユタ大学では、ネットワーク攻撃で盗まれたデータの流出を防ぐため、ハッカーに45万7000ドル(約5000万円)を支払っている。

Emsisoftの脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏が先月発表したところによると、ランサムウェア攻撃により、2021年にはこれまでに830の個別の学校を含む58の米国の教育機関や学区が授業の中断を強いられたとのこと。Emsisoftは、2020年には84件のインシデントが1681の個別の学校、短大、大学での学習を中断させたと推定している。

キャロウ氏は7日に「今後数週間で、教育分野のインシデントが大幅に増加すると思われる」とツイートした。

関連記事:ランサムウェアが企業に与える莫大な金銭的被害は身代金だけじゃない

画像クレジット:Howard University

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)