ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

ウクライナ政府がロシア軍の追跡手段をDX、Telegramチャットボットを作成し活用・認証アプリで偽情報をブロック

Thomas Trutschel via Getty Images

ウクライナ政府は、Telegramアプリにチャットボットを作成し、ユーザーがiPhoneを使ってロシア軍が侵入した情報を防衛側に報告できるようにしたと報じられています。

ロシアのウクライナ侵攻の始まりは、Googleマップやアップルのマップで察知されていましたが、今やウクライナ政府が意図的に個人向けテクノロジーを活用する事態にいたっています。

現地メディアのUkrainian Newsによれば、ウクライナのDX(デジタルトランスフォーメーション)省は「eVororog」または「eBopor」(英訳すると「e-Enemy」)など様々なチャットボットを作成したとのことです。これは独立したアプリではないため、ロシアもかつて(国内の)App Storeから野党支援アプリを削除させたように簡単にはいかないというわけです。

このチャットボットはTelegramの@「everog_botチャンネル」になっている—とミハイル・フェドロフ副首相が自らのTelegramチャンネルで説明しています。

フェドロフ氏によれば、他にデータを集める方法もあったかもしれないが、破壊工作員が偽の写真やデマを混ぜる恐れがあると示唆。そこでウクライナ国民であることを認証するため、DX省の無料アプリ「Diya」が使われているそうです。

ユーザーがチャットボットへの投稿を許可されると、目撃したものを正確に詳しく入力するよう求められるとのこと。そこで軍隊を見たか、戦車などの装備を見たかをiPhoneを通じて正確な位置を送信し、可能であれば写真やビデオを添付することになります。

Ukrainian Newsは、このチャットボットがどれほどの効果があるのか、まだ詳しく報じていません。しかしTwitter上では、20万人以上のウクライナ人が「eBopor」を使って1万6000人以上のロシア兵士や4000台もの車両の破壊に繋がったと主張しています。

どちらの陣営であれ人命が失われることは絶対にあってはなりませんが、ハイテクが悲惨な戦火の終結に貢献するよう祈りたいところです。

(Source:Ukrainian News。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaの対話エンジン搭載キャラがDMM GAMESで配信中の恋愛ゲームに登場

AIチャットボット「りんな」を手がけるrinnaの対話エンジン搭載キャラが恋愛ゲーム「プラスリンクス」に登場

AIチャットボット「りんな」を提供するrinnaは2月22日、EXNOA運営・DMM GAMES配信のリアルチャット恋愛ブラウザゲーム「プラスリンクス ~キミと繋がる想い~」において、rinnaが開発した対話エンジンを搭載したAIキャラクター「足繋逢」(あししげく あい)が実装されたと発表した。

プラスリンクス ~キミと繋がる想い~は、街で出会ったヒロイン達とチャットによる自由な会話を通して関係を深めるという恋愛ゲーム。今回追加の足繋逢もそのヒロインの1人となる。彼女は自分の声では話せず、AI登載犬型ロボット「真希奈」を介してコミュニケーションを取るというキャラクター。会話は基本的にAI任せにしており、本人ががんばることもあるとのこと。

rinnaによると、足繋逢は、プラスリンクスが培ったノウハウをAIが学習し生まれたものという。会話のベースは、rinnaが提供するSTC(Style Transfer Conversation)モデルにより即時応答する。STCモデルとは、大規模データから構築した事前学習済みのモデルに、キャラクターの性格や口調を反映した学習データを追加学習させたモデル。

このSTCモデルによる応答文の出力後、表情、記号、ボイス、スタンプなど応答文内容に最適な表現をClassifierモデルが出力する。Classifierモデルとは、ゲーム内のグラフィック表現の演出に関する法則性を学習させた分類モデルとなっている。今回の場合は、STCモデルによるテキストに応じて、AIキャラクターとしての最適な表現を出力する。表情の変化や各種演出は、キャラクターに合わせてカスタマイズ可能で、足繫 逢の性格を再現するのに最適なカスタマイズを実装しているそうだ。

STCモデルとClassifierモデルはRCP(Rinna Character Platform)上で連携しており、AIがプレイヤーの入力に対して即時応答するテキストチャットを可能にしている。これによりプレイヤーは、ゲーム内のキャラクターとリアルタイムでやり取りしているかのような体験を楽しめるという。

今後の展開として、現在rinnaが研究開発中の新しいAIモデルとの併用準備を進めているとのこと。この実装によって、より多彩なチャットのやり取りが可能になるという。単一のキャラクターとチャットを継続していくことで変化するAIモデルの開発も検討しているそうだ。

アプリに音声と動画によるコミュニケーション機能を組み込むVoximplantがベータ版をリリース

ここ数年、音声やビデオのコミュニケーション機能をアプリやサービスに統合するためのサービスが急増している。Twilioや、Googleが開発する自然言語処理(NLP)プラットフォームのDialogflowなどだ。

サンフランシスコを拠点とするVoximplantも同様のサービスを開発し、Avatarプロダクトのベータ版を公開した。同社はこれまでにBaring Vostok Capital Partners、RTP Ventures、Google Launchpad Acceleratorから1010万ドル(約11億6200万円)を調達した。

同社はすぐに使える自然言語処理サービスを提供しており、開発者はこれを利用してアプリに自然言語処理機能を組み込んでスマートIVR(自動音声応答システム)や音声ボット、チャットボットの機能を追加し、インバウンド通話の自動化、FAQ、インタラクティブなアンケート、NPS(ネットプロモータースコア)、コンタクトセンターの自動化などに活用できる。

Voximplantによれば、同社のサービスでは開発者が複雑なバックエンドのロジックを構築する必要はなく、ノーコードのエディターと会話型AIにより、AI搭載ボットを開発してチャットや電話と簡単に統合できるという。

同社はさらに、機械学習に関する部分はすべてプラットフォームが処理するため、開発者は基本的なJavaScriptの知識があれば十分だと説明している。

Voximplantの共同創業者でCEOのAlexey Aylarov(アレクセイ・アイラロフ)氏は発表の中で「次世代のCPaaS(Communications Platform as a Service)はインテリジェントなサービスとプログラミングが簡単なオムニチャネルのコミュニケーション機能を融合したものであり、これを実現することで現在と将来の当社顧客に最大の価値をもたらすと確信しています」と述べている。

画像クレジット:Flashpop / Getty Images

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

アトラシアンが自然言語理解のための独自のAIエンジンを開発するPercept.AIを買収

Atlassian(アトラシアン)は米国時間1月27日、Percept.AI(パーセプトエーアイ)を買収したことを発表した。Percept.AIはY Combinator(ワイ・コンビネーター)の2017年夏のバッチに参加したAI企業で、自然言語理解のための独自のAIエンジンをベースに、自動化されたバーチャルエージェントサポートソリューション(基本的にはチャットボット)を提供する。Atlassianはこのバーチャルエージェント技術を、ITチームが従業員や顧客に対してより良いサービスを提供するためのツールであるJira Service Management(ジラ・サービス・マネジメント)に統合する予定だ。

Crunchbase(クランチベース)によれば、Perceptは今回の買収に先立ちシードラウンドを実施し、Hike Ventures、Builders VC、Cherubic Ventures、Amino Captial、Tribe Capital、Y Combinatorなどから金額非公開の資金を得ていた。両社は、今回の買収の金額的詳細については明らかにしていない。

画像クレジット:Atlassian

AtlassianがJira Service Managementに多大な投資をしていることは間違いない。2020年には、企業のアセット管理を行うMindville(マインドビル)に加えて、Slack(スラック)ファーストのヘルプデスクチケッティングサービスを提供するHalp(ヘルプ)を買収した。また2021年にはAtlassianは、Jira Service Managementを強化するために、ノーコード / ローコードのフォームビルダーであるThinkTilt(シンクティルト)を買収した(これは、近年のJiraエコシステムに関する数多くの買収に続くものだ)。

AtlassianのIT ソリューション製品責任者である Edwin Wong(エドウィン・ウォン)氏は、サービスを拡大するためには買収だけに賭けているわけではないと語った。

「無機質な投資を行うだけではありません。私たちが行ってきたことは有機的に統合されているのです」とウォン氏はいう。「何かを買ってきて接続するだけではなく、もっと考え抜かれた戦略が必要です。何がフィットするかを考え、これまでに作られたものの上に構築して、1つの製品として統一された体験を生み出すのです。ですから『6つの異なるものを用意しました』と差し出して、お客様に『これらをまとめるには何が必要なのだろうか?』と考えていただく必要はありません。私たちが目指しているのは統合された体験を生み出すことなのです」。

画像クレジット:Atlassian

しかし、ITチームは、パンデミックの厳しい影響下でも、これまで以上に優れた顧客サービスを提供しなければならないというプレッシャーにさらされていることは間違いない。いまや企業顧客であっても一般消費者のような体験を求めているからだ。理想的にいけは、Percept.aiのような製品は、サポート質問の大部分を処理しつつユーザーにすばらしい体験を提供し、ITチームがより複雑なタスクに集中できるようにすることができるだろう。

それがJira Service Managementのような製品の目標であり、ウォン氏が述べたように、このサービスは現在、ほぼすべての業界から3万5000以上の顧客を集めている。

ウォン氏は、チームがPerceptに惹かれた理由として、サポートクエリの背後にある多くの文脈を理解できるエンジンの能力を挙げている。エンジンは内容、意図、感情を分析し、ユーザーのプロファイルと組み合わせて、パーソナライズされた応答を提供することができる。バーチャルエージェントが応答の限界に達すると、自動的に人間にインタラクションを移行する。チームは、ノーコードツールを使ってサービスの設定や調整を行うことができるが、これもPerceptがアトラシアンにとって魅力的である機能の1つだ。

今後その技術を、Jira Service Managementの中にネイティブに統合していく予定だ。一方、Atlassianはこのサービスの機能を拡張することも計画している。

「もう少し先を見据えた私たちのより広いビジョンは、あらゆる形態のサポートやサービスデスクのための統一プラットフォームを作ることです。それが私たちの究極の目標なのです」とウォン氏は説明する。「私たちは、そうした拡張が本当にさまざまな種類の製品、さまざまな機能をカバーすると信じています。例えばConfluence(コンフルエンス、JiraのWiki)スペースやそこに書かれた記事の知識を利用して、さまざまな質問に答えることはできないでしょうか?例えばTrello(トレロ、タスク管理)ボードなどの情報を利用することはできないのでしょうか?今回の買収はもちろん、お客様に優れたエクスペリエンスを提供するという、Atlassian全体のより広範な長期的ビジョンの一環なのです」。

今回の買収は短期間で行われたため(ウォン氏によると、両社は2021年末に話を始めたとのこと)、Percept.AIの既存顧客が今後どうなるかはまだわかっていない。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

画像クレジット:Peter Dazeley/Getty Images

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

eコマースのカスタマーサービスで繰り返される作業の自動化をサポートするZowie

Zowieの共同創業者マット・シオレック氏とマヤ・シェーファー氏(画像クレジット:Zowie)

顧客サービスの内容は、ほぼ数種類に限定される。まず返品、そして返金、そして品質管理部門に対する質問だ。これらは、同じ内容が繰り返されることも多く、また、もっと複雑な話題で顧客エンゲージメントを深めるための時間はなかなか得られない。例えば情報をプロダクト部門へつないだり、顧客にとってベストのプロダクトを探す手伝いをするといったことはできていない。

Zowieを創業したMaja Schaefer(マヤ・シェーファー)氏とMatt Ciolek(マット・シオレック)氏は、繰り返されることが多いサービスは自動化できると考えている。同社を興した2019年、2人はプロダクト開発と、顧客調査の仕事をしていたeコマース企業での経験をブレンドしようと考えていた。

CEOのシェーファー氏は「顧客サービスは、既存のソリューションで解決する問題ではないということを私たちは悟りました。それらのソリューションはどれも実装がとても難しいからです。実装には数カ月も必要で、さらにその後、メンテナンスが困難になります」という。

2人は、繰り返し行われる仕事の解決策としてチャットボットをクライアントに提案し、数週間でその構築を任された後、Zowieのアイデアを思いついた。

顧客サービスにAIによるチャットボットを使うやり方は、新しいものではない。2021年1年でも、ForethoughtHeydayCognigyLandbotHeyflowなどが、この分野で資金調達を発表している。

しかし、競合他社の中には、回答などのワークフロー情報をツールに入力する必要があるものもあるとシェーファー氏はいう。その代わり、ZowieのZowie X1テクノロジーは、製品やブランドに特有のリクエストワークフローを最初から自動化する。同社は数分でデータを分析し、Zowieがサポートできるサポートチケットの割合(場合によっては50%)を顧客に伝えることができる。

シェーファー氏は、チャットボットの導入により、エージェント1人あたり1日2時間程度が解放され、チャットボットが回答しない質問を受け付けたり、より複雑な問題を解決したり、より多くのサポートを売上につなげたりすることが可能になると見積もっている。平均して、顧客は最大45%の売上増を実現することが可能だと、彼女はいう。

2020年から2021年にかけて売上が3倍になった同社は、資金調達を目指すことを決め、Gradient Venturesと10xFoundersが主導し、LatticeのCEOであるJack Altman(ジャック・オルトマン)氏、GiessweinのCEOであるMarkus Giesswein(マルクス・ジースバイン)氏、以前の投資家であったInovo Venture Partnersが参加してシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達した。

ZowieはGiessweinを含む約100社の顧客と取引している。彼女は今回の資金を製品開発、マーケティング、販売、米国および北米全域の商業チームの成長に充てたいという。同社の従業員は現在36名で、2022年中にチームを倍増させる計画だ。

Zowieが拡大しようとしている製品機能には、ウェブサイトから電子メール、WhatsAppまで、できるだけ多くのチャネルでの自動化、および営業サイドでカスタマージャーニーをナビゲートできるような機能の実現が含まれている。

Gradient VenturesのジェネラルパートナーであるDarian Shirazi(ダリアン・シーラーズ)氏は、短期間で大きな収益を上げたことと、創業者たちが築いているビジネスに惹かれたこともあり、Zowieを選んだと語る。

「Zowieを見ていて感じた差別化の1つは、ナレッジベースを生成してくれるeコマース向けの初のAIチャットボットであることでした。他は質問に答えるためのナレッジベースを用意しなければならず、そんな時間がない企業もあります。私たちはチャットボットの期待していますが、巨大でバーティカルなeコマース向けにうまくやった人はいませんでした」とシーラーズ氏はいう。

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サブスクなど各種サービスの解約時に抑止・分析を行うチャットボットSmashが8016万円調達、解約抑止率向上を目指す

サブスクリプションサービスなどからの解約を抑止するリテンションボット(解約抑止・分析チャットボット)「Smash」を開発・提供するSmashは1月11日、第三者割当増資による8016万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は博報堂DYベンチャーズ、i-nest capitalの運営するファンド。調達した資金を元に、Smashのさらなる研究・開発を進め、解約抑止率の向上とロイヤルティ強化の実現を加速する。

サブスクリプションサービスや定期通販などでは、ユーザーがサービスへの加入や購入を手軽に行える反面「解約」も気軽に行いやすいという。これにより、企業にとっては解約をいかに抑止しLTV(顧客生涯価値)を高めていくかが課題として挙がっている。

同社のSmashは、各種サービスの解約というタッチポイントでユーザーとコミュニケーションを図り、解約の抑止や分析を行うAIチャットボットによるソリューション。「リアルタイムで空気を読むことによって、デジタルの枠を超え、より人間に近いコミュニケーションを実現」しているという。

2021年3月設立のSmashは、データを活用したマーケティング分析サービスを提供するスタートアップ。サブスクや定期通販の解約から企業の課題を見つけ出し、企業の強みに変えることで、ユーザーのロイヤルティ強化実現を目指している。

 

AWSがチャットボット設計の作業時間を大幅短縮できる新機能を発表

ラスベガスで米国時間12月1日に開催されたAWS re:Inventにおいて、AWSは自動化によってチャットボットのトレーニングとデザインのプロセスを簡略化する新機能、Amazon Lex自動化チャットボットデザイナーのプレビュー版を発表した。

Amazon AIの副社長Swami Sivasubramanian(スワミ・シバスブラマニアン)氏は、同日のAIと機械学習のキーノートで「数週間かかっていたボットの設計を数時間に短縮する新機能、Amazon Lex自動化チャットボットデザイナーを発表できることをうれしく思います」と述べた。

これは、深層学習技術を用いた高度な自然言語理解を活用することで実現している。実際、開発者は過去の通話トランスクリプトを使って設計された基礎的なチャットボットを、わずか数クリックで作成できる、とシバスブラマニアン氏は語った。

「Amazon Lexの自動化されたチャットボットデザイナーは、通常、数時間で1万行のトランスクリプトを分析し、『新しい請求をする』や『請求状況を確認する』などの意図を特定することができます。これらの意図がしっかりと分離されていて、重複していないことを確認してくれるので、試行錯誤する必要がありません」。

この自動化がなければ、非常に手作業的で面倒な開発者の仕事になってしまう、と同氏は指摘する。「チャットボットの組織設計は非常に複雑で、手作業であり、エラーが発生しやすいものです。話し言葉のニュアンスや人間同士のやりとりを理解する必要があり、このような特別な専門知識がないと、開発者はよくあるユーザーの要望や、この問題を解決するために必要な情報などを見つけるために、過去の通話トランスクリプトをすべて念入りに調べるのに何百時間も費やすことになります」。

AIの一般的なユースケースを考えると、確かにチャットボットが思い浮かぶ。新しいコンピューターの注文方法や、生まれたばかりの子どもを会社の健康保険に加入させる方法などの質問に答えるといった、社内用に設計されている場合もあれば、重要な情報を収集して簡単な質問に答え、複雑な質問は人間のカスタマーサービス担当者につなげる顧客サービスのフロントエンドとして機能する場合もある。

より精度の高いチャットボットを簡単に作れるようにするために、多くのスタートアップが取り組んでいるが、Amazonのような企業にとっては、顧客が他のAIや機械学習プロジェクトと合うプラットフォーム上のソリューションを求めているかもしれず、敷居の低いものとなっている。

Amazon Lexの自動化されたチャットビルダーは、本日からプレビューで利用できる。開発者は、プレビュー段階ではこの機能を無料で使用することができるが、一般提供が始まると、ツールがトランスクリプトを分析して意図を特定するのにかかる時間に応じて課金される。

画像クレジット:Amazon

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

バーチャルアシスタントが慢性疾患に関する質問に答える仏Wefight、約13.2億円調達

Wefightはフランスのスタートアップ企業で、慢性疾患に苦しむ人々を支援するために10種類以上のアプリを開発している。基本的なチャットボットのインターフェースを使って、人々は自分の病気について質問し、答えを得ることができる。

同スタートアップはこのたび、Digital Health VenturesとImpact Partners、そして既存の投資家であるInvestir&+とBADGEのビジネスエンジェルから1160万ドル(1000万ユーロ、約13億2000万円)の資金調達を実施した。

Wefightは、慢性疾患ごとに異なるアプリを開発した。それらはすべて、Vikという同じバーチャルアシスタントをベースにしている。現在、うつ病、喘息、複数のタイプのがんなどに関するアプリが10数種類ある。

Vikは基本的に、患者とWefightのコンテンツとの間のインターフェースとして機能する。自然言語処理技術から、Wefightが新しいアプリを作るために活用するフレームワークまで、すべて自社で開発している。

患者が質問をするたびに、このサービスは質問の意味を理解しようとし、知識データベースから関連する情報を見つけ出す。

そして、コンテンツを中継して患者に提供する。コンテンツはプロの薬剤師によって書かれており、できるだけ情報を提供し、中立的な立場であることを心がけている。これにより、必ずしも次の診察日を待たずに、自分が持っている質問のリストを見ていくことができる。

共同設立者兼CEOのBenoit Brouard(ブノワ・ブルワール)氏はこう語った。「Vikは、ケア経路の誰かを置き換えるものではありません。ギャップを埋めるためにあるのです」。

ギャップがあるのは確かなようだ。これまでに、40万人以上の人がこのサービスを利用している。Vikは500万件の回答を配信しているという。Wefightでは今、70人のスタッフが働いている。Wefightは、患者団体とつながることで、新しいユーザーを見つけようとしている。

ビジネスモデルとしては、製薬会社と協力して新しいアプリに資金を提供している。治療法を商業的に成功させるためには、患者が自分の患っている慢性疾患を特定できるようにする必要がある。そして、Vikはトップオブファネルのコンテンツプロバイダーとしての役割を担っている。

「当社は、臨床的惰性(Clinical Inertia)を減らします。臨床ラボが『Vik Asthma』への融資を決定した場合、そのラボは私たちが作成するコンテンツに影響を与えることはありません」とブルワール氏はいう。「そうしたラボ(製薬会社)は、喘息に苦しむ患者さんに呼吸器科医の診察を受けてもらいたいと思っているのです」。

そうすれば、特定の薬を購入する可能性のある患者の数が増える。製薬会社にとっては複雑な販売戦略だが、Vikのような方法は、患者の生活の質を向上させる可能性がある。

10月25日の資金調達により、同社はベルリンに新しいオフィスを構え、他の国への進出を計画している。Wefightは、新しい市場でアプリを発売するたびに、現地の医療従事者を雇用し、現地の患者団体と関係を作る。長いプロセスだが、そうやってWefightは世界中の患者に正しい情報を提供することができるのだ。

画像クレジット:Wefight

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

コロナ禍で加速する大学中退をチャットボットで防ぐサービスのEdSightsが約5.6億円を調達

Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)姉妹がEdSightsを創業したとき、2人は道しるべとなるような大きな問いかけを自分たちにした。

「自分の指先でどんなデータでも集められる魔法の杖がある申し分のない世界で、大学生が中退しないようにするために私たちは何を理解すればいいのでしょうか」。クラウディアはそう語る。共同創業者の2人は最初の数年間をかけてデータポイントを理解しようとした。学生を適切なリソースに結びつける手助けをするのか、あるいは心配事を聞いてそれを意思決定者に伝えるのかといったことだ。そして結局、大学生との効果的な関わりとタイムリーなデータ収集の両方ができるサービスとして、チャットボットを活用することにした。

このチャットボットは、コロナ禍におけるもろさから大きな影響を受けた。2020年、EdSightsは学生を引き止める方法を模索する大学に対してこのサービスの販売を開始した。特に、コロナ禍でキャンパスがロックダウンされ、学生が以前よりも孤独になってしまったという事情からだ。

2020年にEdSightsのプロダクトはチャットボットによってそのあり方が明らかになった。学校のマスコットを使ったチャットボットは相手に合わせた質問やメッセージを学生に送信し、学生の最大のストレスは何かを把握する。その後、金銭や食料の支援、警備といった大学のさまざまなリソースにつなげる。EdSightsはコロナ禍で基本的なコミュニケーションができなくなってしまった世界各地の大学にこのサービスを販売した。

米国時間9月27日、EdSightsはAlbum VCが主導するシリーズAで500万ドル(約5億5700万円)を調達したと発表した。Album VCはPodium、Andela、Degreedの初期の投資も主導したVCだ。EdSightsの今回のラウンドには他にLakehouse、Good Friends、CheggのCEOであるDan Rosensweig(ダン・ローゼンズヴァイク)氏、GSV VenturesのDeborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏も参加した。今回の調達で、これまでに発表されているEdSightsの調達額は800万ドル(約8億9100万円)となった。

新たな資金は勢いがある中で調達された。EdSightsは具体的な数字を明らかにしていないが、年間の売上が6倍に成長したと発表している。2020年5月時点の顧客数は16だったが、現在は大学や教育機関など70になっている。創業した姉妹の1人のキャロライナは、同社は「黒字化が目前」でこれ以上従業員を雇用しなくても黒字になるだろうと述べた。同氏は、成長の新たなゴールを考えるとあと1年2カ月で黒字になるだろうと予測している。

画像クレジット:EdSights

EdSightsにとっては、同社が提供する可視化の機能をベースにしてアクションを起こさせることができるかというのが常に課題だ。よく知られているように大学はお役所仕事で新しい取り組みや迅速な行動が妨げられ、このことがEdSightsの投資収益率に悪影響を及ぼす恐れがある。共同創業者の2人は、学生のデータを得ることで大学は学生の需要に応じてリソースを効果的に使い、的外れの別のサービスに費やすコストを削減できると反論する。

キャロライナは「大学はお金の使い方が非効率で、どういうときに非効率な使い方が発生するかを私たちがまさに明らかにしていると思います。これが、データが重要であると私が考える理由です。高等教育を最適化する新たな段階に来ています」と述べた。

しかしEdSightsの計画は相談に乗ることだけではない。最終的には、メンタルヘルスの専門家や金銭面のリソース、就職支援など需要の多いサービスも提供したいと考えている。

キャロライナは「ある程度の規模に達しきちんと理解した後で、教育機関では支援できない分野について我々は何をすればいいでしょうか。何かができる人は他にいるでしょうか。そして私たちにそれができるでしょうか」と述べた。

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)

チャットボットサービス「BOTCHAN」を運営するwevnalが6億円のシリーズA調達

チャットボットサービス「BOTCHAN」を運営するwevnalが6億円のシリーズA調達

チャットボットサービス「BOTCHAN」を展開するwevnalは9月22日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約6億円の資金調達を発表した。引受先は、ニッセイ・キャピタル、アーキタイプベンチャーズ。

2011年4月設立のwevnalは、デジタルマーケティングを中心に事業を展開。現在SaaS事業への変革期として「BOTCHAN」事業に注力しており、D2C業界を中心に累計500社以上の企業に導入されているという。同社は、BOTCHANをLTVの最大化を実現するためのBX(Brand Experience)プラットフォームと再定義し、調達した資金は、その実現に向けたサービス強化、機能開発、データ整備を行うための人材採用などの強化、事業成長を加速するためのマーケティング強化に活用する。なおLTV(顧客生涯価値)は、1人の顧客が生涯に渡ってどの程度利益をもたらすかを算出した数値のこと。

Zendeskがカスタマーサービス機能向上のためAIオートメーションスタートアップCleverlyを買収

カスタマーサービスの機能をさらに充実させようとしているZendeskは米国時間8月26日、アーリーステージのAIスタートアップであるCleverlyの買収を発表した。

金額などの条件は非公開で、Cleverlyの資金の規模についてもこれまで完全には明らかにされていない。2019年に創業したCleverlyの拠点はポルトガルのリスボンで、同社のサイトによるとEUの研究・イノベーションプログラムであるHorizon 2020から資金提供を受けている。

TechCrunchが2021年1月に掲載したリスボンのスタートアップシーンを紹介する記事の中で、Indico Capital PartnersのパートナーであるStephan Morais(ステファン・モライス)氏がこの地域で最も注目するディープテック企業の1つとしてCleverlyを取り上げた。

関連記事:新型コロナに対抗する投資家たち、ポルトガル投資家にインタビュー(前編)

Cleverlyの製品プラットフォームでは、寄せられたサービスリクエストに自動でタグ付けしてワークフローを分類するトリアージ機能など、AIを活用した機能が提供されている。また、同社がAIによる人間の強化と呼んでいる、カスタマーサービス担当者が問い合わせに対して適切な回答をするのに役立つ支援機能もある。同社のテクノロジーはすでにZendeskの他Salesforceとも統合されている。

ZendeskがCleverlyを買収する理由について、Zendeskの製品担当EVPであるShawna Wolverton(シャウナ・ウルバートン)氏はTechCrunchへのメールで、両社はカスタマーサービスの将来について同じようなビジョンを持っていると記した。

同氏は「CleverlyとZendeskはAIを民主化したいと考えています。両社は企業にデータサイエンティストがいなくてもすぐにAIの活用を始められる実用的なアプリケーションを開発できます」と述べている。

ウルバートン氏は、AIはカスタマーエクスペリエンスのチームが優れたカスタマーサービスを提供するのに役立つという。同氏は、インテリジェントなソフトウェアによって人とAIが緊密に連携し、次世代の優れたカスタマーエクスペリエンスが広く実現するだろうと期待する。

同氏によれば、Cleverlyのチーム全員を2021年8月30日からZendeskに迎えるという。Cleverlyの創業者であるChristina Fonseca(クリスティーナ・フォンセカ)氏は製品担当VPに、Pedro Coelho(ペドロ・コエーリョ)氏は機械学習の主任エンジニアリングリードになる。

Zendeskにはすでに顧客との対話の自動化、サービス担当者の生産性向上、業務の効率アップにAIを活用する機能がある。例えばAnswer Botは顧客の問い合わせに対する答えをZendeskのナレッジベースから引き出すチャットボットだ。ZendeskのContent CuesはAIを利用して自動でサポートチケットを検討することに加え、ユーザーの利便性を高めるためにヘルプセンターのコンテンツをアップデートした方がよいカ所を見つけることもできる。

ウルバートン氏は「Cleverlyと協力することで我々は重要なインサイトを自動化し手作業をさらに減らしワークフローを改善して、サポートチーム全体をもっとハッピーに、もっと生産的にする幅広い機能を提供できるようになるでしょう。我々のチームが動き始めたらさらにニュースをお知らせできると思います」と述べた。

Zendeskの2021年のビジネスは好調で、業績発表によれば第2四半期の売上は前年同期比29%増の3億1820万ドル(約349億7000万円)だった。

関連記事
電話対応をリアルタイムでサポート、カスタマーサービス向け会話型AIを開発するLevel AIが約14.3億円獲得
問い合わせ対応ソフトShelf.ioが過去1年間でARR4倍に、57.7億円という巨額のシリーズBを完了
Facebookが過去最大1000億円でスタートアップのKustomerを買収、カスタマーサービス事業の強化を目指す
画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Sean Michael Kerner、翻訳:Kaori Koyama)

ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」が「りんな」を手がけるrinnaのAI会話エンジン最新版を採用

ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」が「りんな」を手がけるrinnaのAI会話エンジン最新版を採用

rinnaは8月20日、法人向けAIチャットボット開発プラットフォーム製品「Rinna Character Platform」新バージョンが、ソフトバンクロボティクスのヒューマノイドロボット「Pepper」(ペッパー)に採用されたと発表した。

rinnaは、MicrosoftのAI&リサーチ部門でAIチャットボットの研究を行っていたチームがスピンアウトして2020年6月に設立したAI開発企業。ディープラーニング技術を活用し、AIが文脈に応じた会話文を自動生成して人間と自然に会話する「共感チャットモデル」、AIが話し声や歌声で豊かに感情表現することを可能にする「音声合成システム」などの技術を発表してきた。これら技術は、rinnaが運営するLINE上のAIチャットボット「りんな」、法人向けAIチャットボット開発プラットフォーム製品「Rinna Character Platform」に応用されている。

Rinna Character Platformは、会話内容や音声表現をカスタマイズしてキャラクター性を持たせたAIチャットボットを開発可能。2021年春リリースの新バージョンでは、新開発のチャットエンジン「Style Transfer Chat」(STC)を使用することで、大規模会話データから構築した事前学習済みモデルに、作り上げたいキャラクターの性格や口調を反映した少量の会話データを追加学習させるだけで、キャラクター性を反映した自由会話が可能という。

また新バージョンでは、外部サービスと柔軟に連携でき、WebHookフィルターを利用しユーザーが自由に機能を拡張可能。カスタム機能はどのような言語でも開発可能という。カスタム機能とチャットボットのサーバーを分離し、チャットボットの各モジュールを小さくシンプルにすることで、耐障害性とセキュリティも向上させた。

ソフトバンクロボティクスのPepperでは、2019年からRinna Character Platformを採用しているという。同新バージョンの最新チャットモデルの効果により、Pepperの会話機能が向上し、Pepperが提供するサービスの顧客満足度が高まることが期待されるとしている。また、Rinna Character Platformの新しいアーキテクチャによってシステムの導入が容易になるとともに運用効率と耐障害性が向上し、自由会話のAIチャットボットをより低コストで安定したサービスとして提供できるようになるとした。

欧州がリスクベースのAI規制を提案、AIに対する信頼と理解の醸成を目指す

欧州連合(EU)の欧州委員会が、域内市場のリスクの高い人工知能(AI)の利用に関するリスクベースの規制案を公表した。

この案には、中国式の社会信用評価システム、身体的・精神的被害を引き起こす可能性のあるAI対応の行動操作手法など、人々の安全やEU市民の基本的権利にとって危険性の高さが懸念される一部のユースケースを禁止することも含まれている。法執行機関による公共の場での生体認証監視の利用にも制限があるが、非常に広範な免除を設けている。

今回の提案では、AI使用の大部分は(禁止どころか)いかなる規制も受けていない。しかし、いわゆる「高リスク」用途のサブセットについては「ex ante(事前)」および「ex post(事後)」の市場投入という特定の規制要件の対象となる。

また、チャットボットやディープフェイクなど、一部のAIユースケースには透明性も求められている。こうしたケースでは、人工的な操作を行っていることをユーザーに通知することで、潜在的なリスクを軽減できるというのが欧州委員会の見解だ。

この法案は、EUを拠点とする企業や個人だけでなく、EUにAI製品やサービスを販売するすべての企業に適用することを想定しており、EUのデータ保護制度と同様に域外適用となる。

EUの立法者にとって最も重要な目標は、AI利用に対する国民の信頼を醸成し、AI技術の普及を促進することだ。欧州の価値観に沿った「卓越したエコシステム」を開発したいと、欧州委員会の高官は述べている。

「安全で信頼できる人間中心の人工知能の開発およびその利用において、欧州を世界クラスに高めることを目指します」と、欧州委員会のEVP(執行副委員長)であるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は記者会見で提案の採択について語った

「一方で、私たちの規制は、AIの特定の用途に関連する人的リスクおよび社会的リスクに対処するものです。これは信頼を生み出すためです。また、私たちの調整案は、投資とイノベーションを促進するために加盟国が取るべき必要な措置を概説しています。卓越性を確保するためです。これはすべて、欧州全域におけるAIの浸透を強化することを約束するものです」。

この提案では、AI利用の「高リスク」カテゴリー、つまり明確な安全上のリスクをともなうもの、EUの基本的権利(無差別の権利など)に影響を与える恐れのあるものに、義務的な要件が課されている。

最高レベルの使用規制対象となる高リスクAIユースケースの例は、同規制の附属書3に記載されている。欧州委員会は、AIのユースケースの開発とリスクの進化が続く中で、同規制は委任された法令によって拡充する強い権限を持つことになると述べている。

現在までに挙げられている高リスク例は、次のカテゴリーに分類される。

  • 自然人の生体認証およびカテゴリー化
  • クリティカルなインフラストラクチャの管理と運用
  • 教育および職業訓練
  • 雇用、労働者管理、および自営業へのアクセス
  • 必要不可欠な民間サービスおよび公共サービスならびに便益へのアクセスと享受
  • 法執行機関; 移民、亡命、国境統制の管理; 司法および民主的プロセスの運営

AIの軍事利用に関しては、規制は域内市場に特化しているため、適用範囲から除外されている。

リスクの高い用途を有するメーカーは、製品を市場に投入する前に遵守すべき一連の事前義務を負う。これには、AIを訓練するために使用されるデータセットの品質に関するものや、システムの設計だけでなく使用に関する人間による監視のレベル、さらには市販後調査の形式による継続的な事後要件が含まれる。

その他の要件には、コンプライアンスのチェックを可能にし、関連情報をユーザーに提供するためにAIシステムの記録を作成する必要性が含まれる。AIシステムの堅牢性、正確性、セキュリティも規制の対象となる。

欧州委員会の関係者らは、AIの用途の大部分がこの高度に規制されたカテゴリーの範囲外になると示唆している。こうした「低リスク」AIシステムのメーカーは、使用に際して(法的拘束力のない)行動規範の採用を奨励されるだけだ。

特定のAIユースケースの禁止に関する規則に違反した場合の罰則は、世界の年間売上高の最大6%または3000万ユーロ(約39億4000万円)のいずれか大きい方に設定されている。リスクの高い用途に関連する規則違反は4%または2000万ユーロ(約26億3000万円)まで拡大することができる。

執行には各EU加盟国の複数の機関が関与する。提案では、製品安全機関やデータ保護機関などの既存(関連)機関による監視が想定されている。

このことは、各国の機関がAI規則の取り締まりにおいて直面するであろう付加的な作業と技術的な複雑性、そして特定の加盟国において執行上のボトルネックがどのように回避されるかという点を考慮すると、各国の機関に十分なリソースを提供することに当面の課題を提起することになるだろう。(顕著なことに、EU一般データ保護規則[GDPR]も加盟国レベルで監督されており、一律に厳格な施行がなされていないという問題が生じている)。

EU全体のデータベースセットも構築され、域内で実装される高リスクシステムの登録簿を作成する(これは欧州委員会によって管理される)。

欧州人工知能委員会(EAIB)と呼ばれる新しい組織も設立される予定で、GDPRの適用に関するガイダンスを提供する欧州データ保護委員会(European Data Protection Board)に準拠して、規制の一貫した適用をサポートする。

AIの特定の使用に関する規則と歩調を合わせて、本案には、EUの2018年度調整計画の2021年アップデートに基づく、EU加盟国によるAI開発への支援を調整するための措置が盛り込まれている。具体的には、スタートアップや中小企業がAIを駆使したイノベーションを開発・加速するのを支援するための規制用サンドボックスや共同出資による試験・実験施設の設置、中小企業や公的機関がこの分野で競争力を高めるのを支援する「ワンストップショップ」を目的とした欧州デジタルイノベーションハブのネットワークの設立、そして域内で成長するAIを支援するための目標を定めたEU資金提供の見通しなどである。

域内市場委員のThierry Breton(ティエリー・ブレトン)氏は、投資は本案の極めて重要な部分であると述べている。「デジタル・ヨーロッパとホライズン・ヨーロッパのプログラムの下で、年間10億ユーロ(約1300億円)を解放します。それに加えて、今後10年にわたって民間投資とEU全体で年間200億ユーロ(約2兆6300億円)の投資を生み出したいと考えています。これは私たちが『デジタルの10年』と呼んでいるものです」と同氏は今回の記者会見で語った。「私たちはまた、次世代EU[新型コロナウイルス復興基金]におけるデジタル投資の資金として1400億ユーロ(約18兆4000億円)を確保し、その一部をAIに投資したいと考えています」。

AIの規則を形成することは、2019年末に就任したUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)EU委員長にとって重要な優先事項だった。2018年の政策指針「EUのためのAI(Artificial Intelligence for Europe)」に続くホワイトペーパーが2020年発表されている。ベステアー氏は、今回の提案は3年間の取り組みの集大成だと述べた。

ブレトン氏は、企業がAIを適用するためのガイダンスを提供することで、法的な確実性と欧州における優位性がもたらされると提言している。

「信頼【略】望ましい人工知能の開発を可能にするためには、信頼が極めて重要だと考えます」と同氏はいう。「(AIの利用は)信頼でき、安全で、無差別である必要があります。それは間違いなく重要ですが、当然のことながら、その利用がどのように作用するかを正確に理解することも求められます」。

「必要なのは、指導を受けることです。特に新しいテクノロジーにおいては【略】私たちは『これはグリーン、これはダークグリーン、これはおそらく若干オレンジで、これは禁止されている』といったガイドラインを提供する最初の大陸になるでしょう。人工知能の利用を考えているなら、欧州に目を向けてください。何をすべきか、どのようにすべきか、よく理解しているパートナーを得ることができます。さらには、今後10年にわたり地球上で生み出される産業データの量が最も多い大陸に進出することにもなるのです」。

「だからこそこの地を訪れてください。人工知能はデータに関するものですから―私たちはガイドラインを提示します。それを行うためのツールとインフラも備えています」。

本提案の草案が先にリークされたが、これを受けて、公共の場での遠隔生体認証による監視を禁止するなど、計画を強化するよう欧州議会議員から要請があった。

関連記事
EUがAIのリスクベース規則の罰金を全世界年間売上高の最大4%で計画、草案流出で判明
欧州議会議員グループが公共の場での生体認証監視を禁止するAI規制を求める

最終的な提案においては、遠隔生体認証監視を特にリスクの高いAI利用として位置づけており、法執行機関による公の場での利用は原則として禁止されている。

しかし、使用は完全に禁止されているわけではなく、法執行機関が有効な法的根拠と適切な監督の下で使用する場合など、例外的に利用が認められる可能性があることも示唆されている。

脆弱すぎると非難された保護措置

欧州委員会の提案に対する反応には、法執行機関による遠隔生体認証監視(顔認識技術など)の使用についての過度に広範な適用除外に対する批判の他、AIシステムによる差別のリスクに対処する規制措置が十分ではないという懸念が数多くみられた。

刑事司法NGOのFair Trialsは、刑事司法に関連した意義ある保護措置を規制に盛り込むには、抜本的な改善が必要だと指摘した。同NGOの法律・政策担当官であるGriff Ferris(グリフ・フェリス)氏は、声明の中で次のように述べている。「EUの提案は、刑事司法の結果における差別の固定化の防止、推定無罪の保護、そして刑事司法におけるAIの有意義な説明責任の確保という点で、抜本的な改革を必要としています」。

「同法案では、差別に対する保護措置の欠如に加えて、『公共の安全を守る』ための広範な適用除外において刑事司法に関連するわずかな保護措置が完全に損なわれています。この枠組みには、差別を防止し、公正な裁判を受ける権利を保護するための厳格な保護措置と制限が含まれていなければなりません。人々をプロファイリングし、犯罪の危険性を予測しようとするシステムの使用を制限する必要があります」。

欧州自由人権協会(Civil Liberties Union for Europe[Liberties])も、同NGOが主張するような、EU加盟国による不適切なAI利用に対する禁止措置の抜け穴を指摘している。

「犯罪を予測したり、国境管理下にある人々の情動状態をコンピューターに評価させたりするアルゴリズムの使用など、問題のある技術利用が容認されているケースは数多く存在します。いずれも重大な人権上のリスクをもたらし、EUの価値観を脅かすものです」と、上級権利擁護担当官のOrsolya Reich(オルソリヤ・ライヒ)氏は声明で懸念を表明した。「警察が顔認識技術を利用して、私たちの基本的な権利と自由を危険にさらすことについても憂慮しています」。

ドイツ海賊党の欧州議会議員Patrick Breyer(パトリック・ブレイヤー)氏は、この提案は「欧州の価値」を尊重するという主張の基準を満たしていないと警告した。同氏は、先のリーク草案に対して基本的権利の保護が不十分だと訴える書簡に先に署名した40名の議員のうちの1人だ。

「EUが倫理的要件と民主的価値に沿った人工知能の導入を実現する機会をしっかり捕捉しなれけばなりません。残念なことに、欧州委員会の提案は、顔認識システムやその他の大規模監視などによる、ジェンダーの公平性やあらゆるグループの平等な扱いを脅かす危険から私たちを守るものではありません」と、今回の正式な提案に対する声明の中でブレイヤー氏は語った。

「公共の場における生体認証や大規模監視、プロファイリング、行動予測の技術は、私たちの自由を損ない、開かれた社会を脅かすものです。欧州委員会の提案は、公共の場での自動顔認識の高リスクな利用をEU全域に広めることになるでしょう。多くの人々の意思とは相反します。提案されている手続き上の要件は、煙幕にすぎません。これらの技術によって特定のグループの人々を差別し、無数の個人を不当に差別することを容認することはできません」。

欧州のデジタル権利団体Edriも「差別的な監視技術」に関する提案の中にある「憂慮すべきギャップ」を強調した。「この規制は、AIから利益を得る企業の自己規制の範囲が広すぎることを許容しています。この規制の中心は、企業ではなく人であるべきです」と、EdriでAIの上級政策責任者を務めるSarah Chander(サラ・チャンダー)氏は声明で述べている。

Access Nowも初期の反応で同様の懸念を示しており、提案されている禁止条項は「あまりにも限定的」であり、法的枠組みは「社会の進歩と基本的権利を著しく損なう多数のAI利用の開発や配備を阻止するものではない」と指摘している。

一方でこうしたデジタル権利団体は、公的にアクセス可能な高リスクシステムのデータベースが構築されるなどの透明性措置については好意的であり、規制にはいくつかの禁止事項が含まれているという事実を認めている(ただし十分ではない、という考えである)。

消費者権利の統括団体であるBEUCもまた、この提案に対して即座に異議を唱え、委員会の提案は「AIの利用と問題の非常に限られた範囲」を規制することにフォーカスしており、消費者保護の点で脆弱だと非難した。

「欧州委員会は、消費者が日々の生活の中でAIを信頼できるようにすることにもっと注力すべきでした」とBEUCでディレクターを務めるMonique Goyens(モニーク・ゴヤンス) 氏は声明で述べている。「『高リスク』、『中リスク』、『低リスク』にかかわらず、人工知能を利用したあらゆる製品やサービスについて人々の信頼の醸成を図るべきでした。消費者が実行可能な権利を保持するとともに、何か問題が起きた場合の救済策や救済策へのアクセスを確保できるよう、EUはより多くの対策を講じるべきでした」。

機械に関する新しい規則も立法パッケージの一部であり、AIを利用した変更を考慮した安全規則が用意されている(欧州委員会はその中で、機械にAIを統合している企業に対し、この枠組みに準拠するための適合性評価を1度実施することのみを求めている)。

Airbnb、Apple、Facebook、Google、Microsoftなどの大手プラットフォーム企業が加盟する、テック業界のグループDot Europe(旧Edima)は、欧州委員会のAIに関する提案の公表を好意的に受け止めているが、本稿執筆時点ではまだ詳細なコメントを出していない。

スタートアップ権利擁護団体Allied For Startupsは、提案の詳細を検討する時間も必要だとしているが、同団体でEU政策監督官を務めるBenedikt Blomeyer(ベネディクト・ブロマイヤー)氏はスタートアップに負担をかける潜在的なリスクについて警鐘を鳴らしている。「私たちの最初の反応は、適切に行われなければ、スタートアップに課せられる規制上の負担を大幅に増加させる可能性があるということでした」と同氏はいう。「重要な問題は、欧州のスタートアップがAIの潜在的な利益を享受できるようにする一方で、本案の内容がAIがもたらす潜在的なリスクに比例するものかという点です」。

その他のテック系ロビー団体は、AIを包み込む特注のお役所仕事を期待して攻撃に出るのを待っていたわけではないだろうが、ワシントンとブリュッセルに拠点を置くテック政策シンクタンク(Center for Data Innovation)の言葉を借りれば、この規制は「歩き方を学ぶ前に、EUで生まれたばかりのAI産業を踏みにじる」ものだと主張している。

業界団体CCIA(Computer & Communications Industry Association)もまた「開発者やユーザーにとって不必要なお役所仕事」に対して即座に警戒感を示し、規制だけではEUをAIのリーダーにすることはできないと付け加えた。

本提案は、欧州議会、および欧州理事会経由の加盟国による草案に対する見解が必要となる、EUの共同立法プロセスの下での膨大な議論の始まりである。つまり、EUの機関がEU全体のAI規制の最終的な形について合意に達するまでに、大幅な変更が行われることになるだろう。

欧州委員会は、他のEU機関が直ちに関与することを期待し、このプロセスを早急に実施できることを望んでいると述べるにとどまり、法案が採択される時期については明言を避けた。とはいえ、この規制が承認され、施行されるまでには数年かかる可能性がある。

【更新】本レポートは、欧州委員会の提案への反応を加えて更新された。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU人工知能チャットボットディープフェイク透明性GDPR欧州データ保護委員会生体認証顔認証

画像クレジット:DKosig / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

チャットボットアプリの開発をもっと簡単にするツールのBotpressがシリーズAで16.2億円調達

Botpress(ボットプレス)は、カナダ、モントリオールのアーリーステージスタートアップで、デベロッパーが会話ベースアプリを開発するのをもっと簡単にしたいと思っている。タイプしたりクリックやタップをする代わりに、人間が話すことでやり取りできるアプリのことだ。同社は米国時間4月28日、1500万ドル(約16億3000万円)のシリーズAラウンドをDecibelとinovia Capitalのリードで完了したことを発表した。

「私たちは人間レベルのデジタルアシスタント機能を大衆に広めるために、デベロッパーが会話形AIアプリケーションを開発するのに必要なツールを提供しようとしています。【略】これは、従来のグラフィカルユーザーインターフェースの代わりに人間の言語をユーザーインターフェースとして使用するソフトウェアを開発、使用するための新しい方法です」とBotpressの創業者でCEOのSylvain Perron(シルヴァン・ペロン)はいう。

同社は、デベロッパーがこの種のアプリケーションを開発する際の複雑さを取り除くためのオープンソースツールキットを作った。「デベロッパーが私たちを選ぶのは、通常のソフトウェア開発のワークフローを変えることなく会話型AIを作るために必要なツールを提供しているからです」とペロン氏は説明した。

数年前、ペロン氏はボットアプリを作ろうとしたが、助けてくれる適切なガイドを見つけられなかったので、自ずからソリューションを作ろうと決心した。2017年にツールの最初のバージョンを公開して以来、世界で10万以上のデベロッパーがこのオープンソースのツールキットを使っている。その中にはFortune 500企業も数多くある。

関連記事:Moveworksがチャットボットプラットフォームを企業が社内のさまざまな部署にも対応できるように拡張

Decibelで投資責任者を務めるJon Sakoda(ジョン・サコダ)氏は、この会社はそんな大企業の関心を、自分たちがその企業を支援するビジネスへと変えているという。「現在、商用のオープンソースのソリューションは存在しており、多くの会社が有償で利用していますが、多くのオープンソース企業が成功する現状で、クラウド・プロダクトの需要が高まっているのがわかると思います。そして今回の出資によってBotpressは、ターンキークラウド製品の開発に投資できるようになると信じています」とサコダ氏はいう。

Botpressの魅力は、デベロッパーがノートパソコンで1時間以内にボットを作れることだと彼はいう。しかし、クラウドプロダクトを使うことで、開発したボットの展開とスケーリングにまつわる複雑さのレイヤーをもう1つ取り除くことができる。

同社はモントリオールおよびケベックシティにオフィスがあり、現在25名の従業員がいる。今回の資金で、2022年にはチームのサイズを3倍にする計画だ。その際、多様性と包括性が雇用の重要な目標だとペロン氏は話す。

「規模が大きくなる時、間違いなく包括性の高い会社であり続けることが重要だと社内で話し合っています。特にこのスピードで大きくなる時には、容易に非包括的なやり方になりがちなので、私たちにとってそれは常に念頭においている方針であり、正しく遂行していることを確認するために大きな努力をしています」と彼は言った。

会社は初期の段階からリモートで、ケベックシティにオフィスを開いたのはちょうどパンデミックが襲ってきたときだったので、ほとんど使う機会がなかった。ペロン氏は、オフィスに戻れるようになった時にはハイブリッド方式を取るつもりだが、出社するかどうかは従業員に任せると述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:チャットボットBotpress資金調達カナダ

画像クレジット:sesame / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アインシュタインのチャットボットに「声」を与えるAflorithmicのAI音声クローン技術

合成メディアの奇妙な世界から生まれたディープフェイクの一端に、耳を傾けてみてほしい。これはAlbert Einstein(アルバート・アインシュタイン)のデジタル版。有名な科学者の実際の声を録音した音声記録を元に、AIのボイスクローン技術を使って合成された声である。

この「不気味の谷」にいるアインシュタインの音声ディープフェイクを開発したのは、Aflorithmic(アフロリズミック)というスタートアップ企業だ(同社のシードラウンドについては2月に紹介した)。

関連記事:AI駆動でテキストを美しい合成音声として出力するAflorithmicが約1.4億円調達

動画に登場するアインシュタインの「デジタルヒューマン」を生み出したビデオエンジンは、もう1つの合成メディア企業であるUneeQ(ユニーク)が開発したもので、同社はウェブサイトでインタラクティブなチャットボット版を公開している。

Alforithmicによると、この「デジタル・アインシュタイン」は、会話型のソーシャルコマースが間もなく実現することを示すために作られたものだという。つまり、業界関係者が予見的に警告しているように、歴史上の人物を模したディープフェイクが、近いうちにあなたにピザを売ろうとするだろうと、手の込んだかたちで伝えているのだ。

また、このスタートアップは、ずっと前に亡くなった有名な人物にインタラクティブな「生命」を吹き込むことで、教育に役立てる可能性も見出しているという。

この「生命」とは人工的なそれに近いものという意味であり、完全に仮想上のもので、デジタル・アインシュタインの声は純粋な技術によるクローンではない。Alforithmicはチャットボットのボイスモデリングを行うために、俳優の協力を仰いだという(なぜなら、デジタル・アインシュタインが、例えば「ブロックチェーン」のような、生前の本人が夢にも思わなかったような言葉を言うとしたら、どんなふうに言うかを検討するためだ)。それによって、AIによる人工物を超えた存在ができあがる。

「これは、会話型ソーシャルコマースを実現する技術を紹介するための新たなマイルストーンです」と、AlforithmicのCOO(最高執行責任者)であるMatt Lehmann(マット・レーマン)氏は我々に語った。「克服しなければならない技術的な課題だけでなく、解消しなければならない欠陥もまだありますが、全体としては、この技術がどこに向かっているのかを示す良い方法ではないかと、私たちは考えています」。

Alforithmicは、アインシュタインの声をどのように再現したかを説明したブログ記事の中で、チャットボット版の生成に関わる困難な要素の1つに進展があったと書いている。それは、計算知識エンジンから入力されたテキストに対し、APIが応答音声を生成できるようになるまでの応答時間が、当初の12秒から3秒以下に短縮できたというものだ(これを同社では「ニア・リアルタイム」と呼んでいる)。しかし、これでもまだタイムラグがあり、ボットが退屈な存在から免れることはできていない。

一方、人々のデータやイメージを保護する法律は、生きている人間の「デジタルクローン」を作ることに法的および / または倫理的な問題を提示している。少なくとも、先に許可を得て(そしてほとんどの場合、お金を払って)からでなければできない。

もちろん、歴史上の人物は、自分の肖像が物を売るために流用されることの倫理性について厄介な質問をすることはない(今後、意思を持つ本物のクローン人間が誕生すれば話は別だが)。しかし、ライセンス権は適用される可能性があるし、現にアインシュタインの場合は適用されている。

「アインシュタインの権利は、このプロジェクトのパートナーであるHebrew University of Jerusalem(エルサレム・ヘブライ大学)にあります」とレーマン氏は言い、アインシュタインの「声のクローン」のパフォーマンスに、アーティストライセンスの要素が絡んでいることを告白した。「実際には、私たちはアインシュタインの声のクローンを作ったわけではなく、オリジナルの録音や映画から着想を得ています。アインシュタインの声のモデリングに協力してくれた声優は、彼自身がアインシュタインの崇拝者であり、彼の演技はアインシュタインというキャラクターを非常によく表現していると思いました」と、同氏は述べている。

ハイテクの「嘘」の真実は、それ自体が何層も重ねられたケーキのようなものであることがわかる。しかし、ディープフェイクで重要なのは、技術の巧拙ではなく、コンテンツが与える影響であり、それは常に文脈に依存する。どんなに精巧に(あるいは稚拙に)フェイクが作られていたとしても、そこから人々が見聞きしたことにどう反応するかによって、ポジティブなストーリー(創造的・教育的な合成メディア)から、深くネガティブなもの(憂慮すべき、誤解を招くようなディープフェイク)へと、全体的に話が変わってしまう。

「デジタル・アインシュタイン」を担当する2つの団体が拠点を置く欧州では、技術がさらに洗練されるにつれてディープフェイクが情報操作のツールになる可能性への懸念も高まっており、それがAIを規制する動きを後押ししている。

今週初めに草案がリークされた、人工知能の「高リスク」利用法を規制する汎EUの次期立法案には、ディープフェイクを特に対象とした項目が含まれていた。

この計画では、人間との対話を目的としたAIシステムや、画像・音声・映像コンテンツの生成・操作に使用されるAIシステムについて、「調和のとれた透明性ルール」を提案する見通しだ。

つまり、将来的にデジタル・アインシュタインのチャットボット(またはセールストーク)は、偽装を始める前に、自らが人工物であることを明確に宣言する必要がありそうだ。そうすれば、インターネットユーザーが、フェイクと本物を見分けるために、仮想的なフォークト・カンプフ検査を行う必要はなくなる。

しかし、今のところ、この博学な響きを持つデジタル・アインシュタインの対話型チャットボットには、馬脚を現すのに十分なラグがある。製作者も自分たちの作品を、AIを活用したソーシャルコマースのビジョンを他の企業に売り込むためのものであると明示している。

関連記事:

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Aflorithmic不気味の谷ディープフェイクチャットボット

画像クレジット:UneeQ

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Moveworksがチャットボットプラットフォームを企業が社内のさまざまな部署にも対応できるように拡張

2019年末に投資家がMoveworks(ムーブワーカーズ)に7500万ドル(約83億円)もの高額なシリーズB資金を提供したとき、このスタートアップ企業はそれまで、ITヘルプの質問に自動で答えるように調整されたチャットボットを手がけていた。米国時間3月31日、同社はその資金を使って、すべてのビジネスラインで従業員の質問を網羅するようにプラットフォームを拡張したと発表した。

資金調達の時点では、新型コロナウイルス感染症の発生は誰も予想できなかったが、2020年は企業が在宅勤務に移行したこともあり、Moveworksのような自動化されたシステムを導入することがより重要になったと、同社の共同創業者であるBhavin Shah(バビン・シャー)CEOは述べている。

「さまざまな面で悲劇的な年でしたが、そのおかげで、人々のサポートに対するニーズや、スピードとヘルプに対するニーズに、多くのエネルギーが集中しました」と、シャー氏は述べている。社員は通常、Slack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフトチームズ)などのコラボレーションツールの中で、Moveworksのチャットボットにアクセスする。新型コロナウイルスの影響で、自宅で仕事をしながらこれらのツールを利用する時間が増えている。

「この市場に対する関心は明らかに高まっていますが、世界中の企業がSlackやMicrosoft Teamsなどのコラボレーションツールを大規模に導入していることも、その要因となっています」と、同氏は語る。

Moveworksは現在、顧客として100社の大企業と提携しているが、これらの顧客は、人事、財務、施設管理など、さまざまなツールにおいて、従業員の質問に対する答えを自動化する方法を求めていた。シャー氏によれば、このプラットフォームをITだけでなく、組織の他の部分にまで拡大することは計画にあったものの、パンデミックの発生により、さらに拡大する必要性が強調されたという。

同社では、最初の数年間は基盤となる人工知能技術をIT言語用にチューニングすることに取り組んでいたが、当初から拡張性も考慮して構築していたという。「私たちは会話システムを、誰かが(予め質問とその答えを)先回りして考えることを基本にするのでなく、ダイナミックに構築していける方法を学びました。そうでないと、拡張性を持たすことができないからです。それには企業の全リソースを扱うことなど、企業規模のパートナーとなるために必要なことがたくさんありました」と、シャー氏は述べている。

同社はまた、企業がMoveworksのボットを使って従業員と直接コミュニケーションをとり、何らかの行動を起こさせることができる新しいコミュニケーションツールも発表した。シャー氏によると、例えば、企業は通常、従業員にパスワードを更新しなければならないという内容のメールを送るが、このボットはそれを行う時期であることを伝え、そのプロセスを案内するリンクを提供するという。ベータテストでは、電子メールの代わりにボットを使ってアクションを伝えることで、反応に70%の増加が見られたそうだ。

言語を理解するテクノロジーには、さまざまな文化的差異やニュアンスの違いが含まれることを、シャー氏は認識しており、このようなツールを構築するには、多様な人材によるチームが必要だと同氏は考えている。シャー氏によると、同社の人事チームは、顧客ベースと世界全体のニーズを反映したチームを構築するため、少数派の人々とも確実に面接を行えるように一連の権限が与えられているという。

同社はこの9カ月間、10社程の顧客とともにプラットフォームの拡張を行い、質問の種類や関係する部署を問わず、回答の質を向上させるための反復作業を行ってきた。現在、これらのツールは一般に利用可能になっている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Moveworksチャットボット

画像クレジット:sorbetto / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「チャットコマース」と「接客DX」のZealsが総額18億円を調達、株式上場の準備を開始

「おもてなし革命」を掲げ、「チャットコマース」と「接客DX」を展開するZeals(ジールス)は4月1日、第三者割当増資および金融機関からの融資、コミットメントライン契約締結とを合わせて総額18億円の資金調達を発表した。引受先は、Zホールディングス傘下のZ Venture Capital、電通グループ、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND(博報堂DYグループのCVC博報堂DYベンチャーズが運営するファンド)、ジャフコ グループ。またジールスは、株式上場の準備を開始した。

今回調達した資金は、事業領域拡大に伴う投資および全職種における採用活動の強化、プロダクトの開発体制構築、マーケティング活動への投資などにあてる。

「チャットコマース」と「接客DX」のZealsが総額18億円を調達、株式上場の準備を開始

同社は、チャットボットの技術をマーケティングに生かした「チャットコマース」と、チャットボットをビデオ接客ツール・予約システムといった一連の接客サービスと連携させる「接客DX」を展開。これら事業は非接触・非対面でのコミュニケーションが求められる時代に、日本が世界に誇る「おもてなし」をデジタル化することであり、その挑戦を加速すべく資金調達を実施したという。

チャットコマースは、チャットボットと会話しながら商品が購入できるサービスで、導入先は約400社、エンドユーザーはのべ430万人、会話分析データ数は4億5000におよぶという(2021年3月現在)。資産化したデータを活用することで、ユーザーに寄り添ったコミュニケーションを可能とし、顧客のマーケティング戦略に貢献しているとした。

テクノロジーの力で新たな顧客体験と産業モデルの構築を目指す「接客DX」は、無人化や効率化を図るためのツールではなく、AIと人の統合ソリューションという。オンラインでも感動や温かみのある接客体験を実現することを可能とし、旅行業界や自動車業界への導入事例をはじめ、様々な業界から注目を集めているそうだ。

関連記事
LINEトーク上で決済まで完結する“チャットコマース”拡大へ、チャットボット開発のZEALSが3.5億円を調達
会話でニーズを“あっためる”、チャットボット広告のZEALSが4.2億円調達
チャットボットだけではダメ――CRMを加えて新展開のZEALSが約8000万円を調達
メディア向けボット開発運用ツール「BOT TREE for MEDIA」が正式ローンチ

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:資金調達(用語)Zeals(企業)チャットボット(用語)日本(国・地域)

チャットボットスタートアップのHeydayが約5.6億円を調達

米国時間3月10日、カナダのモントリオールを拠点とするHeydayは追加のシードラウンドで650万カナダドル(約5億6000万円)を調達したと発表した。

共同創業者でCEOのSteve Desjarlais(スティーブ・デジャレ)氏は筆者に対し、小売業者が顧客とのオンラインでのやりとりを自動化しパーソナライズできるようにすることを目指していると述べた。共同創業者でCMOのEtienne Merineau(エティエンヌ・メリノー)氏は同社を「オールインワンの統合カスタマーメッセージングプラットフォーム」と表現した。

顧客がFacebookのMessengerやWhatsApp、GoogleのBusiness Messagesからメッセージを送信した場合も、通常のメールを送信した場合も、Heydayではすべて1つのダッシュボードに集約される。その後、カスタマーサービスの案件かセールス関連かをAIが見分けて、可能な場合は自動で基本的な返信をする。

Heydayのチャットボットで注文の最新情報やおすすめ商品を伝え(HeydayはSalesforce、Shopify、Magento、Lightspeed、PrestaShopと統合されている)、その後必要に応じて人間のスタッフに転送することもできる。

カスタマーサービスとセールスを組み合わせたプラットフォームは他にもあるが、メリノー氏はこの2つのカテゴリーは扱いを分けて良いサービス体験が売上につながると考えることが重要だという。

関連記事:eコマース企業の顧客対応を支援するGorgiasが約26億円調達

画像クレジット:Heyday

メリノー氏は「サポートは新規販売だと考えています」と述べた。

デジャレ氏はこう補足する。「我々はチケットIDシステムには強く反対しています。お客様はチケットではありません。私は、一人ひとりのお客様がブランドとの結びつきであり、その結びつきは時間をかけて育て、時間をかけてブランドに価値をもたらすものだと本気で信じています」。

Heydayは2017年に創業し、直近の2四半期で経常収益が2倍になったという。同社の顧客にはフランスのスポーツ用品会社のDecathlon、デンマークのアパレル会社のBestseller、食品ブランドのDannonなどがある。メリノー氏は、同社のプラットフォームは「すぐにバイリンガルで使えて」国際的に大きく成長していると述べた。

同氏は「小売業者が新型コロナ(による変化)は一時的なものだと考えるのは誤りです。前進するブランドの新たなスローガンは『適応か死か』です。ブランドは優れたサービスを提供したいと考えていますが損益も気にします。我々はブランドが一石二鳥の成果をあげられるようサポートします」と説明する

Crunchbaseによると、Heydayは以前に200万カナダドル(約1億7200万円)を調達していた。今回の新しいラウンドでは既存の投資家であるInnovobotとDesjardins Capitalから資金を調達した。メリノー氏は、今回の資金は「米国での事業規模を倍増させて成長する」ために使われると述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:HeydayAI資金調達チャットボット

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

医療機関向けAIチャットボットのBot MDがアジア市場拡大のため5.3億円を調達

医療従事者は時間と闘っている。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の状況ではさらに厳しい。シンガポールに拠点を置くBot MDは、時間の節約に役立つAIベースのチャットボットを提供している。このチャットボットで、医師は病院関係者に電話をかけたりイントラネットにアクセスしたりすることなく、スマートフォンで重要な情報を調べられるようになる。米国時間2月2日、Bot MDはMonk’s Hill Ventureが主導するシリーズAで500万ドル(約5億2500万円)を調達したと発表した。

SeaX、XA Network、SG Innovateのほか、エンジェル投資家のYoh-Chie Lu(ヨーチー・ルー)氏、Jean-Luc Butel(ジャン=リュック・ブテル)氏、Steve Blank(スティーブ・ブランク)氏も支援した。Bot MDはY Combinatorの2018年夏学期に参加していた。

調達した資金はインドネシア、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどアジア太平洋地域での拡大と、コロナ禍における病院や医療機関からの要望に応える機能の追加に使われる。Bot MDのAIアシスタントは現在、英語に対応しているが、2021年後半にはインドネシア語とスペイン語に対応する予定だ。現在はChangi General Hospital、National University Health System、National University Cancer Institute of Singapore、Tan Tock Seng Hospital、Singapore General Hospital、Parkway Radiology、National Kidney Transplant Instituteといった医療機関でおよそ1万3000人の医師がBot MDを利用している。

共同創業者でCEOのDorothea Koh(ドロシア・コー)氏はTechCrunchに対し、Bot MDは一般に複数のシステムに保管されている院内の情報を統合しアクセスしやすくすると説明した。

画像クレジット:Bot MD

Bot MDがなければ、医師は病院関係者に電話をかけてスタッフの状況を聞き、連絡先を教えてもらう必要があるかもしれない。薬の情報が必要なら今度は薬局に電話をかけることになる。最新のガイドラインや臨床のプロトコルを確認する必要がある場合には、院内のイントラネットに接続されているコンピュータを見つけなくてはならないことが多い。

コー氏は「Bot MDの役割は、医師が必要とするコンテンツを365日24時間検索できる単一のインターフェイスに統合することです」という。

たとえばこのコロナ禍で、医療従事者がチャットボットに「体温を記録」と入力すると、その人の情報があらかじめ入力されたフォームが表示される新機能がBot MDに導入された。多くの場合、医療従事者は自分の体温を記録するために1日に2回、所属組織のイントラネットにアクセスしていたが、コー氏によればBot MDでフォームを使えるようになりコンプライアンスが大幅に強化されたという。

Bot MDの導入にかかる時間は統合する情報システムやコンテンツ量によって異なるが、独自の自然言語処理チャットエンジンによりAIのトレーニングは比較的短時間でできるとコー氏は説明する。たとえば最近Bot MDを導入したChangi General Hospitalでは、10日もかからずに利用を開始した。

Bot MDは電子医療記録(EMR)、請求とスケジューリングの統合、アラート、慢性疾患の追跡などの新しい医用アプリをプラットフォームに追加する計画だ。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bot MD資金調達シンガポールチャットボット

画像クレジット:Bot MD

原文へ

(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

ミニアプリ構築のエボラニが2020~2021年度「国内チャットボット・ミニアプリ業界カオスマップ」公開

  1. ミニアプリ構築のエボラニが2020~2021年度「国内チャットボット・ミニアプリ業界カオスマップ」公開

オムニチャネルでの接客自動化とデータ管理を実現する「anybot」(エニーボット)を運営するエボラニは2月2日、チャットボット・ミニアプリサービスを展開する国内企業のカオスマップを作成・公開した。

ミニアプリは、特定アプリを基盤として動くソフトウェアのことで、すでに多くのユーザーが、毎日使う人気アプリの中でミニアプリ機能を利用。ユーザーはAppStoreやGooglePlayから新たなアプリをダウンロードすることなく、ミニアプリを利用できる。

日本でも、LINEなどのスーパーアプリにおいて、企業がアカウントを持てるSNSやチャットアプリ、ユーザー同志がチャットで会話をするアプリなどのミニアプリが提供されている。

チャットボットおよびミニアプリサービス市場は、新型コロナウイルスの広がりによる非接触のコミュニケーションが進んできたこと、多くの企業でDXが戦略の中心になってきたこと、オンライン接客に関連するサービスが開発されてきたことで、急速な発展を遂げているという。

市場の発展に伴い、これらサービスを提供する企業が増加するとともに、一部では淘汰・集約も進んでおり、業界構造や主要企業などが不明確になっていたそうだ。

同社は、利用者が施策を選定する際の参考になるよう、より一層の市場活性化と事業拡大に貢献できればという希望から本カオスマップを作成したとしている。

エボラニのanybotは、電話やメール、SNSやアプリなどのオムニチャネルにおいて、ミニアプリやチャットボットを利用して接客自動化とデータ管理を実現するツール。開発不要でミニアプリ、チャットボット、電話IVR(自動音声応答)などの自動接客ツール構築、収集データを自動で保存・セグメント化したCRMの構築などが可能。LINE、Facebook Messenger、メール、SMS、電話などをまたがったマルチコンタクトにも対応している。

ミニアプリ構築のエボラニが2020~2021年度「国内チャットボット・ミニアプリ業界カオスマップ」公開

関連記事
Appboxoが1億円超を調達、開発者に向けたミニアプリのエコシステム構築を目指す
マイクロソフトが「りんな」を含む中国製チャットボットXiaoiceをスピンアウト
カナダのコーヒーチェーンTim Hortonsが中国展開強化に向けテンセントから資金調達
新型コロナウイルスに関するデマを暴くWhatsApp用チャットボット
Showcase Gigがドコモと資本業務提携「d払い」ミニアプリとの連携でモバイルオーダーの浸透目指す
中国のゴミ分別はテックをフル活用、画像認識やQRコード、ミニアプリで
メッセンジャーアプリで遊べるゲームの開発をサポートするGame Closure、アップルなどからデベロッパーを解放
LINEトーク上で決済まで完結する“チャットコマース”拡大へ、チャットボット開発のZEALSが3.5億円を調達
ミニアプリ構築サービス「Anybot」運営のエボラニがLINEなどから7000万円を調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:エボラニカオスマップ(用語)チャットボット(用語)ミニアプリ日本(国・地域)