Strong Computeは機械学習モデルのトレーニングを「100倍以上高速化」できると主張する

ニューラルネットワークのトレーニングには、市場で最も高速で高価なアクセラレータを使ってさえも、多大な時間がかかる。だから、多くのスタートアップ企業が、ソフトウェアレベルでプロセスを高速化し、学習プロセスにおける現在のボトルネックをいくつか取り除く方法を検討していることも、不思議ではないだろう。オーストラリアのシドニーに拠点を置くスタートアップで、最近Y Combinator(Yコンビネーター)の22年冬クラスに選抜されたStrong Compute(ストロング・コンピュート)は、学習プロセスにおけるこのような非効率性を取り除くことによって、学習プロセスを100倍以上高速化することができると主張している。

「PyTorch(パイトーチ)は美しいし、TensorFlow(テンソルフロー)もそうです。これらのツールキットはすばらしいものですが、そのシンプルさ、そして実装の容易さは、内部において非効率的であるという代償をもたらします」と、Strong ComputeのCEO兼創設者であるBen Sand(ベン・サンド)氏は語る。同氏は以前、AR企業のMeta(メタ)を共同設立した人物だ。もちろん、Facebook(フェイスブック)がその名前を使う前のことである。

一方では、モデル自体を最適化することに注力する企業もあり、Strong Computeも顧客から要望があればそれを行うが、これは「妥協を生む可能性がある」とサンド氏は指摘する。代わりに同氏のチームが重視するのは、モデルの周辺にあるものすべてだ。それは長い時間をかけたデータパイプラインだったり、学習開始前に多くの値を事前計算しておくことだったりする。サンド氏は、同社がデータ拡張のためによく使われるライブラリのいくつかを最適化したことも指摘した。

また、Strong Computeは最近、元Cisco(シスコ)のプリンシパルエンジニアだったRichard Pruss(リチャード・プルス)氏を雇用し、すぐに多くの遅延が発生してしまう学習パイプラインのネットワークボトルネックを除去することに力を注いでいる。もちろん、ハードウェアによって大きく違うので、同社は顧客と協力して、適切なプラットフォームでモデルを実行できるようにもしている。

「Strong Computeは、当社のコアアルゴリズムの訓練を30時間から5分に短縮し、数百テラバイトのデータを訓練しました」と、オンライン顧客向けにカスタム服の作成を専門とするMTailor(Mテイラー)のMiles Penn(マイルス・ペン)CEOは語っている。「ディープラーニングエンジニアは、おそらくこの地球上で最も貴重なリソースです。Strong Computeのおかげで、当社の生産性を10倍以上に向上させることができました。イテレーション(繰り返し)とエクスペリメンテーション(実験)の時間はMLの生産性にとって最も重要な手段であり、私たちはStrong Computeがいなかったらどうしようもありませんでした」。

サンド氏は、大手クラウドプロバイダーのビジネスモデルでは、人々ができるだけ長くマシンを使用することに依存しているため、彼の会社のようなことをする動機は一切ないと主張しており、Y Combinatorのマネージングディレクターを務めるMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏も、この意見に同意している。「Strong Computeの狙いは、クラウドコンピューティングにおける深刻な動機の不均衡です。より早く結果を出すことは、クライアントから評価されても、プロバイダーにとっては利益が減ることになってしまうのです」と、サイベル氏は述べている。

Strong Computeのベン・サンド氏(左)とリチャード・プルス氏(右)

Strong Computeのチームは現在、依然として顧客に最高のサービスを提供しているが、その最適化を統合してもワークフローはあまり変わらないので、開発者はそれほど大きな違いを感じないはずだ。Strong Computeの公約は「開発サイクルを10倍にする」ことであり、将来的には、できる限り多くのプロセスを自動化したいと考えている。

「AI企業は、自社のコアIPと価値がある、顧客、データ、コアアルゴリズムに集中することができ、設定や運用の作業はすべてStrong Computeに任せることができます」と、サンド氏は語る。「これにより、成功に必要な迅速なイテレーションが可能になるだけでなく、確実に開発者が企業にとって付加価値のある仕事だけに集中できるようになります。現在、開発者は複雑なシステム管理作業のML Opsに、最大で作業時間の3分の2も費やしています。これはAI企業では一般的なことですが、開発者にとって専門外であることが多く、社内で行うのは合理的ではありません」。

おまけ:下掲の動画は、TechCrunchのLucas Matney(ルーカス・マトニー)が、サンド氏の以前の会社が開発したMeta 2 ARヘッドセットを2016年に試した時のもの。

画像クレジット:Viaframe / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

年老いた仮想化の巨人CitrixをVistaなどが約1.9兆円で買収、TIBCOと合併してSaaSの大企業に

IT業界では、ハイブリッドな働き方が定着したこの世界で幅広いニーズに対応する「ワンストップショップ」を求める企業の新たな需要に応えるため、さらなる統合が進んでいる。

クラウドコンピューティングへゆっくりと移行を進めている年老いた仮想化の巨人Citrix(シトリックス)は、PE(プライベート・エクイティ)企業のVista Equity Partners(ビスタ・エクイティ・パートナーズ)と、Elliott Investment Management(エリオット・インベストメント・マネジメント)の関連会社であるEvergreen Coast Capital(エバーグリーン・コースト・キャピタル)に、165億ドル(約1兆9000億円)で買収されることになった。Vistaでは、2014年に43億ドル(約4900億円)で買収したTIBCO(ティブコ)と、Citrixを統合することを計画している。全額現金による取引には、Citrixの負債の引き受けも含まれると、両社は述べている。

今回の買収は、Citrixをめぐる長期の憶測の末に行われることになったもので、同社は少なくともこの5カ月間、複数の戦略的な選択肢を検討してきた。2021年12月にはこの憶測も頂点に達し、VistaとElliottが130億ドル(約1兆5000億円)で同社を買収するという報道があった。

現在、Citrixの株はNASDAQで取引されているが、今回の買収により同社は非公開企業となる。同社によると、Citrixの株主は「VistaとEvergreenによる入札の可能性に関する報道がなされる前の最後の取引日 」である2021年12月20日の終値に24%のプレミアムを加えた、1株あたり104ドル(約1万1900円)の現金を受け取ることになるという。なお、Evergreenが今回の買収の前に、すでにCitrixへの投資を行っていたことは注目に値するだろう。

PE企業は、VCと同様に、投資が必要な瞬間のために膨大な資金を抱えている。これに対処するための1つの明白な方法は、リストラや統合を必要としている大規模なテクノロジー企業を買収することだ。

CitrixとTIBCOを統合することで、後者のアナリティクスと前者の仮想化およびクラウドコンピューティングのサービスを、抱き合わせ販売することが可能になる。これは多くのバイヤー、つまり企業が、よりシンプルなサプライヤーとのパートナーシップや、新型コロナウイルス流行の影響を受けてリモート勤務が増えている従業員のためのITサービスに関する財務状況の改善を求めている時期とも合致する。

合併後の会社は、当初から大きなビジネスを展開することになる。CitrixによればFortune(フォーチュン)500社の98%を含む40万社の顧客を持ち、世界100カ国に1億人のユーザーを抱えることになるという。

Citrixの取締役会議長であり、暫定的な最高経営責任者兼社長であるBob Calderoni(ボブ・カルデローニ)氏は「過去30年間にわたり、Citrixは安全なハイブリッドワークの明確なリーダーとしての地位を確立してきました。市場をリードする当社のプラットフォームは、従業員が業務を遂行するために必要なすべてのアプリケーションと情報への安全で信頼性の高いアクセスを、どこでも必要とする場所へ提供します。TIBCOとの統合により、我々はこのプラットフォームとお客様の成果を拡大していきます」と、声明で述べている。「TIBCOと一緒になることで、我々はより大きなスケールで事業を展開することができるようになり、より多くのお客様に幅広いソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションを加速させ、ハイブリッドワークの未来を実現させることが可能になります。我々は非公開会社として、DaaSなどの高成長の機会に投資し、進行中のクラウド移行を加速するための財務的および戦略的な柔軟性を高めることができます」。

VistaとCitrixは、今回の取引の前から何かと縁があった。Citrixは1年前に22億5000万ドル(約2580億円)を支払って、プロジェクト管理プラットフォームのWrike(ライク)をVistaから買収している。また、TIBCOにも売却の噂があったが、Vistaは別の道を選んだようだ。TIBCOをCitrixと組み合わせることで、企業が現代のITをどのように評価し、購入しているかを物語るような、より興味深い資産の使い方ができるかもしれない。

TIBCOのCEOであるDan Streetman(ダン・ストリートマン)氏は「コネクテッド・インテリジェント・アナリティクスのビジネスを展開する上で、今ほど良い時代はありません。業界をリードする当社のソリューションを、Citrixのグローバルな顧客に提供できることに興奮しています」と、声明の中で述べている。「勤務場所は常に変化しており、あらゆる企業が、自社と従業員、そして彼らのエコシステムで利用可能な、ますます膨らむ大量のデータから、より速く、より賢い洞察を得るために、リアルタイムにアクセスできることを必要としています。両社のビジョンの融合にはこれ以上ないほど期待しており、強力なパートナーシップが築けることを楽しみにしています」。

Vistaのフラッグシップ・ファンドの共同責任者であり、シニア・マネージング・ディレクターを務めるMonti Saroya(モンティ・サロヤ)氏は、声明の中で「私たちはCitrixのことを、業界の状況を変えた数多くのカテゴリーを構築・定義してきた真のテクノロジー・パイオニアであると考えてきました」と述べている。「非公開会社として、Citrixはより多くのリソースとサポートを利用できるようになるだけでなく、最新で安全なリモート・ハイブリッド・ワークを支持するトレンドを背景に、長期的な強い追い風を利用して、統合された顧客基盤にサービスを提供し、高成長市場に投資するためのさらなる柔軟性を持つことになるでしょう」。

画像クレジット:Blue Planet Studio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クラウドファウンドリーの今後

今月、Google在籍中に Kubernetes(クバネティス)プロジェクトを共同で立ち上げ、現在VMWare(自身のスタートアップ、Heptioを同社に売却した)のR&D(研究開発)担当副社長を務める Craig McLuckie(クレイグ・マクラッキー)氏が、非営利団体、Cloud Foundry Foundation(クラウド・ファウンドリー・ファウンデーション)の理事会会長に選出された。

同氏は2020年4月から理事長を務めていたVMWareのPaul Fazzone(ポール・ファゾーン)氏を引き継ぐ。2020年以来、Cloud Foundry Foundationではもう1つ幹部の変更があり、Chip Childers(チップ・チルダーズ)氏が8月に辞任し、同氏が務めていたエグゼクティブ・ディレクターの後任は指名されなかった。これで同団体は、新たに結成された技術検討委員会と理事会に重点を置くことになった。すなわち、現在マクラッキー氏は、かつてのエグゼクティブ・ディレクターの役割に最も近い立場
にいることになる。

マクラッキー氏はCNCF(クラウド・ネイティブ・コンピューティング・ファウンデーション)を設立し、そこにKubernetesを寄贈した中心人物であるにも関わらず、Cloud Foundryエコシステム内での活動は必ずしも積極的ではなかった。ただし、どちらのファウンデーションもLinux Foundation(リナックス・ファウンデーション)の傘下にあるため、両団体には重なる部分も少なくない。加えて、近年のCloud Foundryの動きは、中心基盤をKubernetesに移すことと密接に関連しており、Cloud Foundryエコシステムに由来するbuildpacks(ビルドパックス)の考え方がKubernetesエコシステムに影響を与え始めている。異なるコミュニティの間には多くの交流がある。そしてVMWareがPivotal(ピポタル)を買収したことで、グループ間に多くのつながりができた。

マクラッキー氏が私に話したところによると、約6ヶ月前、同氏はCloud Foundryエコシステムでの自身の役割について深く考えるようになり、行動を起こすきっかけになった。

「VMwareがPivotalを買収したとき、私はCloud Foundryエコシステムの中に作られてきたものをしっかりと見直す機会を得ました。そこには多くのクラウド・ネイティブのパターンを生み出すための重要な技術がありました」と同氏は語った。「たとえばKuberetes以前のテクノロジーがあり、アプリケーションの構築、編成、展開に関わる非常に具体的な考えがありました。そして、Pivotalの買収を通じて1つのコミュニティと密接に関われるようになったことが数多くのクラウド・ネイティブ・パターンを生み出す素晴らしい機会となり、一種のコンテナ・パッケージ配信のアイデアを採用したことで、デベロッパーが自身のIDE(統合開発環境)を非常によくコントロールされた生産環境へと変えることを可能にする抽象概念が生まれました」

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現在重要なのは、この2つのテクノロジーを合体させることだと彼は言った。Cloud Foundryのデベロッパー体験を成功させたものは何か、Kubernetesがインフラストラクチャーの抽象概念として何を提供できるか、を見極めることだ。そう考えると、同財団から生まれる最初のプロジェクトの1つが、2022年第1四半期に公開されるKubernetes上の新たなCloud Foundry体験のベータ版であることは驚くに当たらないだろう。いくつかのメーカーがそれぞれの取組みをしてきたが、この新プロジェクトによってVMware、SAP(サップ)、IBM(アイ・ビー・エム)などいくつかの会社が新たな道に向かって集結した。

「つまるところ、毎晩Hacker Newsを熟読し、あらゆるテクノロジーに手を染めているデベロッパーばかりではない、ということです」とマクラッキー氏は言った。「家に帰ってビールを飲んでYouTubeを見たい、という人もたくさんいます。Cloud Foundryは、非常にシンプルですぐに使える体験をたくさん生み出し、アプリケーションを稼働させることに関わる頭痛の多くを緩和します。今回私たちは、彼らがその体験を維持しながら、マルチクラウド環境の標準になりつつある抽象モデルを提供できるようにしました」

しかし、こうした個々のプロジェクトよりも大切なのは、組織が劇的に変化しようとしていることだ。1年前メーカー主導のグループとして始まったものが、デベロッパー一人一人がエコシステムに貢献しやすく、かつてオープンソース・プロジェクトに参加するために必要だった儀式や式典を通過しなくてもよい組織になった。

「これまでは、Cloud Foundryのテクノロジー基盤に関連する特定のプロダクトを開発する組織の商業的関心を推進するための組織でした。そしてどこの財団でもそうであるように、メーカー間には一種の緊張関係が常にありました」と彼は説明した。しかし今後同財団は、3つのことに焦点を当てる。 貢献者のためのコミュニティーをつくる。メーカーのために働く人もそうでない人も対象だ。オープンソース・バージョンのCloud Foundryを利用しているエンドユーザーのサポートを強化する。そして、エコシステムと連携して、メーカーが団結し、協力してCloud Foundryエコシステムから生まれた数多くのクラウド・ネイティブ・テクノロジー(たとえばBuildpack)のコンセプト化や革新を行うことを支援する。

「この組織は、テクノロジーの進化に目を向け、それを消費する組織と、オープンでフェアな方法でそこに貢献している人々、両方に役立つ新しい時代を象徴しています」とマクラッキー氏は言った。

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画像クレジット:anucha sirivisansuwan / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

AWSがKubernetesクラスタを自動的にスケーリングするオープンソースツール「Karpenter」を公開

米国時間11月30日、Amazonはラスベガスで開催されている同社の顧客向けカンファレンスAWS re:Inventで、オープンソースの新しいKubernetesクラスタスケーリングツールであるKarpenter(カーペンター)を発表した。

クラウドコンピューティングの利点の1つは、必要なリソース要求に合わせて自動的にスケーリングできること、と少なくとも理論的にはいわれている。しかし現実には、Kubernetesクラスタの管理担当者は、サービス停止を防ぐために適切な量のリソースがあるかどうを注意深く監視していなければならない。

Karpenterは、そのクラウドコンピューティングの理想を現実にするために開発された。その利点について、AWSのChanny Yun(チャニー・ユン、尹 錫璨)氏は、新機能を紹介するブログを書いている。

「Karpenterは、変化するアプリケーション負荷に応じて適切なサイズのコンピュートリソースを割り当てることで、お客様のアプリケーション利用率とクラスタ効率を改善します。Karpenterは、アプリケーションのニーズを満たすリソースをジャスト・イン・タイムで計算する機能を提供しており、近々クラスタのコンピュートリソースを自動的に最適化してコスト削減、性能改善ができるようになります」とユン氏は述べている。

Karpenterは、Kubernetesの負荷を分析し、リソース制限のために開始できないポッドが必要としているリソースを特定する。次に、クラウドプロバイダーに情報を送り、それに基づいてコンピュートを追加あるいは削除してもらう。

ここで重要なのは、オープンソースツールであるため、KarpenterはAWSクラウドリソースに特化して作られているのではなく、あらゆるクラウドプロバイダーに対して内在するKubernetesクラスタに関する情報を送るのに使えることだ。Karpenterは、Kubernetesの負荷を判定するために、KubernetesのパッケージマネージャーであるHelm(ヘルム)を利用している。Karpenterが対象のプロバイダーでコンピュートリソースを自動的に設定するための許可も必要になる。

Karpenterは、Apache 2.0ライセンスの下で提供されるオープンソースツールで、すでに利用可能だ。

画像クレジット:Ron Miller / TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

量子コンピューティングAWS Braketが量子 / 古典ハイブリッドアルゴリズムのサポートを強化

AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)は2019年に、パートナーであるRigetti(リゲッティ)、IonQ(イオンキュー)、D-Wave(ディーウェーブ)のハードウェアとソフトウェアのツールを自社のクラウドで利用できるようにする量子コンピューティングサービス「Braket(ブラケット)」を開始した。量子コンピューティングの世界がいかに早く進んでいるかを考えると、それから多くのことが変化しているのも当然かもしれない。

とりわけ、古典的なコンピューターを使って量子アルゴリズムを最適化するハイブリッドアルゴリズム(機械学習モデルのトレーニングに似たプロセス)は、開発者にとって標準的なツールとなっている。AWSは米国時間11月29日、このようなハイブリッドアルゴリズムをBraket上で実行するためのサポートの改善を発表した

これまで開発者は、ハイブリッドアルゴリズムを実行するために、古典的なマシン上で最適化アルゴリズムを実行するためのインフラを設定・管理し、それから量子コンピューティングハードウェアとの統合を管理しなければならず、加えて、結果を分析するための監視・可視化ツールも必要だった。

画像クレジット:AWS

しかし、それですべてではない。「もう1つの大きな課題は、(量子処理ユニットは)共有された非弾力的なリソースであり、アクセスのためには他の人と競合するということです」と、AWSのDanilo Poccia(ダニロ・ポッチア)氏は、この日の発表で説明している。「これは、アルゴリズムの実行を遅らせる可能性があります。他の顧客の大規模なワークロードが1つでもあれば、アルゴリズムが停止し、総実行時間が何時間も延びる可能性があります。これは不便なだけでなく、結果の質にも影響します。というのも、現在のQPUは定期的な再キャリブレーションが必要であり、それがハイブリッドアルゴリズムの進捗を無効にする可能性があるからです。最悪の場合、アルゴリズムが失敗し、予算と時間が無駄になります」。

新たに提供される「Amazon Braket Hybrid Jobs(アマゾン・ブラケット・ハイブリッド・ジョブズ)」機能では、開発者が古典的マシンと量子マシンの間のハードウェアおよびソフトウェアの相互作用を処理する完全なマネージドサービスを利用できる。また、開発者は量子処理ユニットへの優先的なアクセス権を得られ、より高い予測性を取得できるようになる。Braketは、必要なリソースを自動的に立ち上げる(ジョブが完了するとシャットダウンする)。開発者は、アルゴリズムにカスタムメトリクスを設定することができ、Amazon CloudWatch(アマゾン・クラウドウォッチ)を使って、ほぼリアルタイムで結果を可視化することができる。

「Braket Hybrid Jobsは、私たちアプリケーション開発者に、ハイブリッド変分アルゴリズムの可能性を顧客とともに探求する機会を与えてくれます」と、QCWare(QCウェア)のエンジニアリング責任者であるVic Putz(ヴィック・パッツ)氏は語っている。「私たちは、Amazon Braketとの統合を拡大できることに興奮しています。独自のアルゴリズムライブラリをカスタムコンテナで実行できるということは、安全な環境で迅速に革新を起こせることを意味しています。Amazon Braketの成熟した運用と、さまざまなタイプの量子ハードウェアへ優先的にアクセスできる利便性は、我々が自信を持ってこの新しい機能を我々のスタックに組み込めることを意味します」。

画像クレジット:krblokhin / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

買収したRed Hatは成長を続けるがIBMの苦戦は続く

IBMは、Arvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏が2020年CEOに昇格して以来、ハイブリッドクラウドやAIにフォーカスして戦略転換を進めてきた。その中心となっているのが、2018年に340億ドル(約3兆8810億円)で買収したソフトウェア会社Red Hat(レッドハット)だ。IBMは米国時間10月20日決算発表を行い財務成績はかなり厳しいものだったが、少なくともRed Hatは勢いよく成長を続けている。

IBMの第4四半期の売上高は176億2000万ドル(約2兆110億円)だったが、CNBCの報道によると、これはアナリスト予想の177億7000万ドル(約2兆280億円)を下回った。明るい話題としては、前年同期比で0.3%という非常に控えめな伸びを示したことが挙げられる。これは大したことではないと思うかもしれないが、過去10年間、ビッグブルー(IBMのニックネーム)は前年の売上高を上回ることはなかった

Red Hatを含むクラウドおよびコグニティブソフトウェア事業の売上高は、2.5%増の56億9000万ドル(約6490億円)となった。決算発表後に行われたアナリストへの説明会で、CFOのJim Kavanaugh(ジム・カバノー)氏は、Red Hatが第3四半期に17%成長したと指摘した。「Red Hatの売上高は、インフラストラクチャアプリケーション開発と新興テクノロジーで2桁の成長を達成しました。また、OpenShiftの経常収益が40%以上増加しました」と同社のコンテナオーケストレーションプラットフォームに言及しながら述べた。

以上が良いニュースだ。悪いニュースは、需要に追いつくためには技術者を雇う必要があり、その人件費はより高額になっていて、収益を抑制していることだ。「競争の激しい労働市場では、人材獲得や定着のためのコスト増などが当社の人件費を圧迫する要因となっていますが、現在の価格にはまだ反映されていません。今後の契約でこの価値を獲得することを期待していますが、収益構造に反映されるまでには時間がかかります」とカバノー氏は述べた。

つまり、Red Hatが問題なのではなく、IBMは自社の中心的企業からもっと収益を上げる方法を見つける必要があるということだ。Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、Red Hatを単にIBMのサービスを販売するだけの存在とするのではなく、真に中立的なプレイヤーであることをハイブリッドクラウド市場に納得させるために、Red Hatをさらに成長させる必要がある、と話す。

「IBMは、企業がRedHatを使用してロックインを回避できるようにして自らをクラウドの『スイス』と位置づけることが完全にできていません。これは有効な提案ですが、世の中のCxOの心を捉えていません」とミューラー氏は述べた。

一方、IBMは2020年発表したように、インフラストラクチャサービス部門を別会社としてスピンアウトしている最中だ。これは、クラウドとAIの戦略に基づいて会社を強固にするための動きと見られているが、来月この手続きが完了すると、バランスシートからその収益を失うことになり、財務的には痛みをともなう。

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その他の主要部門であるグローバルサービス部門は5%減、システム部門は12%減と大幅な減収となった。唯一、グローバルコンサルティングが12%成長したのが救いとなった。

IBMは少しずつ前進しているが、十分ではなく、また迅速でもない。IBMの株価は10月21日の取引終了時に9.56%下落した。株主は明らかにさらなる成果を求めている。Red Hatがリードしている一方で、他の部門は遅れを取り続けていて、投資家は満足していない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Google Cloudがクラウド使用による二酸化炭素排出量を表示する機能を提供へ

Google Cloudは米国時間10月12日、ユーザーにカスタムの二酸化炭素排出量レポートを提供する新しい(そして無料の)機能を発表した。このレポートでは、クラウドの利用によって発生する二酸化炭素の排出量を詳しく説明する。

Google Cloudは以前から、2030年までに二酸化炭素をまったく排出しないエネルギーで稼働させたいと述べてきた。すでにエネルギー使用を再生可能エネルギーの購入とマッチングさせている。しかし、Google Cloudに限らず、今日では実質的にほぼすべての企業が、二酸化炭素排出量の目標を達成する方法を検討している。クラウドコンピューティングの役割を定量化することは非常に困難だが、ここでは企業が社内外でクラウドを利用する際の環境への影響を簡単に報告できるようにすることを目指している。

画像クレジット:Google

「顧客は、このデータを報告だけでなく、内部監査や二酸化炭素削減の取り組みに活用することができます。HSBC、L’Oreal、Atosなどの顧客と協力して構築した二酸化炭素排出量レポートは、顧客が気候変動に関する目標を達成できるよう、新たなレベルの透明性を提供します」と、CTOオフィスでGoogle Cloudの持続可能性のためのデータおよびテクノロジー戦略をリードするJenn Bennett(ジェン・ベネット)氏は話す。「顧客は、プロジェクトごと、製品ごと、地域ごとのクラウドの二酸化炭素排出量を長期的に監視することができ、ITチームやデベロッパーに二酸化炭素排出量の削減に役立つ指標を提供することができます。デジタルインフラの排出量は、実際には環境フットプリントの一部に過ぎませんが、各社が掲げる二酸化炭素削減目標に対する進捗状況を測定するためには、二酸化炭素排出量の計算が必要です」と語る。

画像クレジット:Google

ベネット氏が指摘したように、企業が正確な報告を行うことができれば、自然な流れとして、気候変動への影響を軽減するための提案を行うことが次のステップになる。具体的には、Google Cloudの「Unattended Project Recommender」に二酸化炭素推定値を追加したり「Active Assist Recommender」に持続可能性への影響のカテゴリーを追加したりすることになる。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

Mirantisがクラウドネイティブなデータセンター・アズ・ア・サービス・ソフトウェアを発表

Mirantis(ミランティス)はOpenStackのスタートアップとして始まったクラウドコンピューティングの古参だが、数年前にはコンテナやマイクロサービスやKubernetesといったクラウドネイティブの開発技術への方向転換を開始した。米国時間9月16日、同社が発表したMirantis Flowは、完全な管理をともなうオープンソースのサービス集合で、企業のクラウドネイティブなデータセンター環境の管理を助ける。そのインフラストラクチャはオンプレミスでも、あるいはパブリッククラウドでも、どちらでもよい。

MirantisのCEOで共同創業者のAdrian Ionel(アドリアン・イオネル)氏は「私たちの仕事は顧客に、データセンターやエッジにおけるパブリッククラウドとの相互運用性のある、クラウドツークラウドのエクスペリエンスをお届けすることです」という。

彼の指摘によると、FacebookやNetflix、Appleといった超大手は、ハイブリッドなクラウドネイティブ環境の管理のノウハウを自力で見つけているが、多くの企業はそんな大企業のリソースを欠いている。そこでMirantis Flowは、そういう超大手が持っているものと同じタイプの能力をほどほどの規模の企業に導入することを狙っている。

AmazonやMicrosoft、Googleなど、大きなインフラクラウドのベンダーたちも、まさに同じ問題の解決を目指しているが、しかしイオネル氏によると、それらはあまりオープンでなく、むしろプロプライエタリだ。したがってロックインが生じ、それを今日の大企業は懸命に避けようとしている。

イオネル氏は次のように主張する。「大手のインフラストラクチャベンダーは、ユーザーを彼らのスタックとAPIにロックインします。彼らのベースはオープンソースのスタンダードや技術ではないので、ユーザーは単一のソースにロックインされるが、一方で今日の大企業の多くがマルチクラウド方式で進もうとしています。つまり彼らが欲しいのは、インフラストラクチャの柔軟性です。そこで私たちのやり方では、完全にオープンで柔軟性に富み、ロックインがゼロのオルタナティブを、彼らと同じクラウド体験および同じイノベーションのペースで提供します」。

そのために同社は、オープンソースソリューションのフルスタックを単一のサービスで提供する。そしてイオネル氏は「同じファブリックの一部としてその上に仮想化の層を置く。また、ソフトウェア定義ネットワーキングとソフトウェア定義ストレージ、さらにその上にサービスとしてのDevOpsをともなうCI/CDの技術がある。これによって企業は、ソフトウェア開発のパイプラインの全体を自動化できる」という。

同社はこのサービスを、今日公開したブログ記事で説明している。その主要なサブシステムはMirantis Container CloudとMirantis OpenStack、およびMirantis Kubernetes Engineであり、元々が従来的な仮想マシンのワークロードであれ、あるいはコンテナ化されたワークロードであれ、それをクラウドネイティブのインフラストラクチャへ移行するためのワークロードを、今やすべて利用できる。

VMWareの仮想マシンからこのソリューションへの移行で悩む企業もあると思われるが、しかしIonel氏によると同社は初期の顧客に対して、そういうVMsからMirantisのソリューションへの移行を実装したことがある。彼によると「VMwareのスタンダードからオープンスタンダードへの仮想マシンの変換はものすごく簡単で、どんなアプリケーションやワークロードでも、このインフラストラクチャの上で動かない理由がない。非常に多くの顧客でそれを何度も繰り返し見てきました。今すぐにでも移行したいという人たちにとって、ボトルネックになるようなものは何もありません」。

なお、このソリューションにはハードウェアが含まれていない。それは、フィジカルでもサービスでも自分のハードウェアでよいし、あるいはEquinix(エクイニクス)のようなMirantisのパートナーを使ってもよい。このサービスは月額1万5000ドル(約165万円)もしくは年額18万ドル(約1979万円)で利用でき、Mirantisのソフトウェアスイートの全製品へのアクセスの1000コア/vCPU分のライセンスと、仮想マシンのマイグレーションまたはアプリケーションのオンボーディング20件、そして無制限の24/7サポートが提供される。コントロールプレーンと管理ソフトウェアのライセンスに関しては課金されない。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウド市場の成長を脅かす中国によるテック巨人への弾圧、BATHの中での位置づけは

中国のテック企業が国内の規制当局の監視下に置かれる中、投資家や中国の4大クラウド企業であるBATH(Baidu AI、Alibaba Cloud[アリババクラウド、阿里雲]、Tencent Cloud[テンセントクラウド]、Huawei Cloud[ファーウェイ・クラウド])を含む国内のハイテク企業の間で、懸念やプレッシャーが高まっているとアナリストが報告している。

一連の独占禁止法やインターネット関連規制の取り締まりにもかかわらず、大手クラウド企業4社は着実に成長している。現在の精査は特にクラウド分野に集中しているわけではなく、デジタルトランスフォーメーション、人工知能、スマートインダストリーへの需要が堅調に推移していることから、中国のクラウドインフラ市場規模は、2021年第2四半期に前年比54%増の66億ドル(約7261億円)となった。

それでもなお、Baidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)の3社の株価はこの半年間で18%から30%下落しており、投資家は中国のテック企業に賭けることに慎重になる可能性がある。

「中国のテック企業は、有利な欧米市場へのアクセスが妨げられていたときには特に、常に国内市場に頼ることができました。しかし、過去9カ月間に国内の規制圧力が高まったことで、過去数年間にクラウド事業を大きく成長させてきた企業にとっては、苛立たしい逆風となっています」とCanalysのバイスプレジデント、Alex Smith(アレックス・スミス)氏は語る。

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中国のクラウド市場では、4大クラウド企業がクラウド支出総額の80%を占め、圧倒的な強さを誇っている。Alibaba Cloudは、2021年の第2四半期に33.8%の市場シェアを獲得し、トップランナーの地位を維持している。同じ第2四半期に中国の市場規模の19.3%を占めていたHuaweiは、これまで規制措置を回避してきた存在だ。

CanalysのチーフアナリストであるMatthew Ball(マシュー・ボール)氏はこう語る。「Huaweiはたまたま強力なクラウドビジネスも展開している、インフラとデバイスの会社です。クラウドインフラに関しては、BATだけでなく、BATH企業に注目しています。Huaweiは、特に同社が政府との良好で長期的な関係を持つ公共セクターにおいて、成長を促進するのに強い立場にあります」。

中国の規制当局が自国のテック企業への監視を強化する一方で、弾圧は中国の市場や同国に拠点を置く企業の株式に大打撃を与えている。

中国では、国家安全保障に関わる重要データの保護を目的としたデータセキュリティ法が6月に成立し、9月上旬から施行されている。また、8月下旬には、ByteDance(バイトダンス)、Alibaba Group(アリババグループ)、Tencent、DiDi(ディディ、滴滴出行)などを対象としたアルゴリズム企業の規制に関するガイドライン案が発表された。

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

「黒人のハーバード」と呼ばれる名門ハワード大学がランサムウェア攻撃を受け授業を中止

教育機関を狙うランサムウェア攻撃が活発化している中、最新の被害者となったワシントンD.C.のハワード大学(Howard University)は、米国時間9月7日の授業を中止すると発表した。ハワード大は、カマラ・ハリス米副大統領の母校として知られる全米屈指の名門黒人大学だ。

今回のインシデントは、学生がキャンパスに戻ってきてから数週間後の米国時間9月3日に、同大学のエンタープライズ・テクノロジー・サービス(ETS)が同大学のネットワーク上で「異常なアクティビティ」を検知し、調査のために意図的にシャットダウンした際に発覚した。

「調査と現在までに得られた情報に基づき、本学がランサムウェアによるサイバー攻撃を受けたことが判明しました」と大学側は声明を発表した。攻撃の背後に誰がいるのか、身代金がいくら要求されたのかなど、詳細は明らかにされていないが、これまでのところ、9500人の学部生・大学院生の個人情報への不正アクセスや流出を示唆する証拠はないとしている。

「しかし、我々の調査は継続しており、何が起こったのか、どのような情報がアクセスされたのか、事実を明らかにするために努力を続けています」と声明は述べている。

ハワード大学は、ITチームがランサムウェア攻撃の影響を十分に評価できるようにするため、9月7日の授業を中止し、不可欠なスタッフ以外キャンパスを立ち入り禁止にしている。また、調査中はキャンパス内のWi-Fiも停止するが、クラウドベースのソフトウェアは引き続き利用可能だという。

「これは非常に変動的な状況であり、すべてのセンシティブな個人データ、研究データ、臨床データを保護することが我々の最優先事項です」と大学側は述べている。「我々は、FBIおよびワシントンD.C.市政府と連絡を取り合い、犯罪による暗号化から大学とみなさんの個人データをさらに保護するために、追加の安全対策を導入しています」とも。

しかし大学側は、その改善策は「一晩で解決できるものではなく、長い道のりになるだろう」と警告している。

ハワード大学は、パンデミックが始まって以来、ランサムウェアの被害に遭った多くの教育機関の中で最新の犠牲者だ。FBIのサイバー部門は最近、この種の攻撃を仕掛けるサイバー犯罪者は、遠隔教育への移行が広まっていることから、学校や大学を重点的に狙っていると警告している。2020年、カリフォルニア州立大学では、医学部のサーバー内のデータを暗号化したNetWalkerハッカーグループに114万ドル(約1億2600万円)を支払い、ユタ大学では、ネットワーク攻撃で盗まれたデータの流出を防ぐため、ハッカーに45万7000ドル(約5000万円)を支払っている。

Emsisoftの脅威アナリストであるBrett Callow(ブレット・キャロウ)氏が先月発表したところによると、ランサムウェア攻撃により、2021年にはこれまでに830の個別の学校を含む58の米国の教育機関や学区が授業の中断を強いられたとのこと。Emsisoftは、2020年には84件のインシデントが1681の個別の学校、短大、大学での学習を中断させたと推定している。

キャロウ氏は7日に「今後数週間で、教育分野のインシデントが大幅に増加すると思われる」とツイートした。

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画像クレジット:Howard University

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

クラウドインフラ市場は2021年第2四半期も成長を続け、売上高は約4.6兆円に到達

野球で、高い天井が見込めるなどという。若い選手の伸び代が大いにあるということだ。同じことがクラウドインフラストラクチャの市場にも言えるかもしれない。この市場は成長を続け、今後すぐに成長が鈍る兆候は見えない。主要ベンダーの第2四半期の売上合計は420億ドル(約4兆6000億円)に達し、第1四半期より20億ドル(約2200億円)増加した。

Synergy Researchのレポートによると売上は39%のペースで増えており、4四半期連続で増加している。これまで通りAWSがトップだが、Microsoftが急速に成長しGoogleも勢いを維持している。

AWSは依然として市場の論理をものともせず、前四半期をさらに5ポイント上回る37%の成長を見せた。成熟した市場を持つAWSとしてはすばらしい伸びだ。Amazonのクラウド部門の売上は148億1000万ドル(約1兆6300億円)でランレートは600億ドル(約6兆6000億円)近くに達し、市場シェアは33%でトップを走っている。シェアはここ数年このあたりにとどまっているが、市場規模が大きくなっているので売上も伸び続けている。

Microsoftの成長は51%とさらに急速だ。Microsoftのクラウドインフラストラクチャのデータを確実につきとめるのはいつも難しいが、Synergy Researchによると市場シェアは20%で売上は84億ドル(約9220億円)と、前四半期の78億ドル(約8560億円)から増加している。

GoogleもThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏のリーダーシップのもとでゆっくりと着実に成長を続けている。第2四半期の売上は42億ドル(約4610億円)で54%の増加となった。市場シェアは10%で、Google Cloudのシェアが2桁台のパーセンテージになったのはSynergyが四半期ごとのデータを調査するようになってから初めてだ。前四半期の売上は35億ドル(約3840億円)だった。

画像クレジット:Synergy Research

ビッグ3に続くAlibabaは前四半期と同じくシェア6%と堅調で(ただし発表はまだで近日中の予定)、IBMは前四半期よりも1ポイント落として4%となった。IBMはハイブリッドクラウドマネジメントへと移行する中で純粋なインフラストラクチャとして苦戦しているためだ。

SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、ビッグ3はこの成長を加速するために多額の資金を投じているという。同氏は発表の中で「Amazon、Microsoft、Googleの合計で、四半期あたり通常250億ドル(約2兆7500億円)以上の投資をしており、その多くは340カ所以上のハイパースケールデータセンターの建設や設備のためです」と述べた。

一方、Canalysの分析も同様の数字を示しているが、市場全体の売上をSynergyをやや上回る470億ドル(約5兆1500億円)としている。Canalysの調べによる市場シェアは、Amazonが31%、Microsoftが22%、Googleが8%となっている。

CanalysのアナリストであるBlake Murray(ブレイク・マリー)氏は、クラウドベンダーがその巨大なデータセンターの運営にあたって再生可能エネルギーの利用を増やしていることから、企業の業務がクラウドへと移行している理由の1つは環境に対する持続可能性のゴールを達成するためだと述べている。

マリー氏は発表の中で「クラウドベンダーが利用するベストプラクティスとテクロジーは、業界の他の部分にも今後広がっていくでしょう。一方、顧客は環境に対する責任の一端を果たし持続可能性のゴールを達成するためにクラウドサービスの利用を増やしていくでしょう」と述べた。

企業はデータセンタービジネスから離れてクラウドに移行しているのか、あるいはビッグ3の持続可能性の取り組みに便乗したいのかに関わらず、着実にクラウドに移行している。世界全体でのクラウド利用率は25%との推計もあり、特に米国外では多くの市場が未開拓であることから今後も成長を続ける可能性は高い。

このことはビッグ3や、市場シェアに食い込んで売上を大きく伸ばそうとしているビッグ3より小規模の事業者にとっては良い兆候だ。Synergyのディンスデール氏は「ビッグ3より小規模でターゲットを絞っているクラウドプロバイダにとってはまだ大いにチャンスがありますが、ビッグ3の目の飛び出るような数字から目を離せるほどの状況にはならないでしょう」と述べた。

確かに今のところ、ビッグ3が天井にぶつかるとは考えにくい。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:クラウドストレージクラウドコンピューティングSynergy ResearchAWSMicrosoft AzureGoogle CloudAlibaba Cloud

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

icholakov via Getty Images

アメリカ合衆国統合軍のひとつ、アメリカ北方軍(NORTHCOM)は、Global Information Dominance Experiments(GIDE)と呼ばれるセンサー、AI、クラウドコンピューティングを組み合わせた「未来予測システム」を開発し情報面と意思決定面での優位性を獲得しようとしています。すでに3度目の実験を行っており、司令官いわく「11の戦闘司令部すべてが同じ情報空間で同じ能力を使って協力」して実施したとのこと。

NORTHCOM司令部および北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官グレン・ヴァンヘルク空軍大将によると、このシステムは膨大なデータセットパターン、異常状態、トレンドデータを評価分析して、国防総省に「数日先を見通す能力」を提供することを目指しています。

わかりやすくいえば、映画『マイノリティ・リポート』でピタピタスーツを着て水浸しになっている予知能力者の役割を、AI技術で実現しようとしているわけですが、GIDEは決して10年単位の未来の話ではなく、すぐに利用できるツールの組み合わせで、リアクティブ(反応的)な情報収集からプロアクティブ(積極的)な情報収集環境を構築しているとのこと。

しかも、このシステムは数分とか数時間単位ではなく、数日単位で情勢を把握できるようなるとされています。たとえば何らかの社会的軍事的異変が起こるとして、それが数分後や数時間後なら、軍として対処するにも時間が少なすぎます。しかしもしそれが数日前にわかるのならしっかりと意思決定や戦略を練る余裕もでき、作戦指揮官たるヴァンヘルク大将にとっても部隊配置や大統領を含め各機関のトップと意思統一をはかることができ、大きな”備え”となるはずです。

GIDEシステムは収集する情報として、たとえばある場所に駐車する自動車の数が突然増えただとか、基地に飛行機が集中しはじめたといった、平時とは異なる手がかり、を予測の材料とします。しかしこのシステムだけで「明日どこそこで事件が起こるから」といった具体的な情報がわかるわけではなく、依然として多くの人々が情報を元に頭を使って手立てを考え、実際に動いて備えを講じる必要があります。それでも、テロのような奇襲攻撃を事前に察知できるようになれば、交渉によって戦いを避ける道も探れるかもしれません。それは、非常に価値あるシステムであるはずです。

(Source:U.S.DoD。Via The DriveEngadget日本版より転載)

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群衆カウント技術のセキュアが既存監視カメラで人数計測可能な混雑状況配信サービスをALSOKと共同開発

セキュアは6月14日、綜合警備保障(ALSOK)とライセンス契約を締結し、AI画像解析により混雑度のリアルタイム計測が可能な「SECURE群衆カウントソリューション」(群衆カウント)の技術を提供し、「ALSOK混雑状況配信サービス」の共同開発を行なったと発表した。

セキュアの群衆カウントとは、既存の監視カメラで人物のカウント計測を可能にし、エリアの混雑度を可視化するクラウド型ソリューションだ。

従来のカウントシステムは、専用の人数計測器の設置、あるいは専用の解析サーバーの現地設置といった必要があったため、導入コストが課題となっていた。これに対して群衆カウントでは、先進のAI画像解析技術、および世界最速級Deep Learning推論エンジンをクラウドに実装することで、既存監視カメラの設置角度で人物をカウントすることを実現。サブスクリプションサービスとしての提供を可能とした。

そして今回、群衆カウントの技術をベースにALSOKと共同開発を行い、「ALSOK混雑状況配信サービス」として6月11日よりサービスの提供を開始した。

ALSOK混雑状況配信サービスでは、事務所から総合施設・イベント会場まで小規模から大規模の環境をサポート。撮影映像から人数をカウントし、あらかじめ設定した設定値に従い混雑状況を5段階で配信する。また1カメラあたり最大4エリアまで分割可能となっており、必要な場所を測定することも可能だ。映像解析はクラウド側で実装しており、カメラ映像をセキュアクラウドサーバーに送信することで、サービスを利用可能となる。

なお2020年6月30日から、イベント時最大収容人数約2000人の新宿住友ビル 三角公園において、ALSOK混雑状況配信サービスを利用しイベントの混雑状況モニタリング実証実験を実施中だ。広場に対して検知エリアを複数箇所設定しており、密を検知すると係員に即時アラームを発する。管理担当者は、リアルタイムでの混雑状況の把握と、係員の業務負荷の軽減を評価しているという。

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カテゴリー:セキュリティ
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IBMがクラウドアプリとネットワーク管理のTurbonomicを最大2179億円で買収

米国時間4月29日、IBMは顧客企業に提供する、ネットワークやワークロードを管理するAIベースのサービスを深化させる新たな買収を行った。同社が発表したのは、アプリケーションのパフォーマンス(特にリソース管理)やKubernetes、ネットワークのパフォーマンスを管理するツールを提供しているTurbonomic(ターボノミック)の買収だ。これは、IT運用に、より多くのAIを取り込む(IBMはそれをAIOpsと呼んでいる)という大きな戦略の一環である。

買収の金銭的条件は公表されていないが、PitchBookのデータによれば、Turbonomicは最後に行われた2019年9月の資金調達ラウンドでは10億ドル(約1090億円)近く、正確には9億6300万ドル(約1049億円)と評価されていた。米国時間4月29日の少し早い時間に流されたロイターの記事では、この取引は15億ドル(約1634億円)から20億ドル(約2179億円)と推定されていた。ある関係者によれば、この数字は正確だということだ。

ボストンを拠点とする同社にはGeneral Atlantic、Cisco、Bain、Highland Capital Partners、Red Hatなどが出資していた。もちろん最後のRed Hat(レッドハット)は、現在はIBMの傘下となっているので、理屈の上ではIBMも投資者だったのだ。Red HatとIBMは、通信事業者、エッジ、企業のユースケースに対応した、さまざまなクラウドベースのツールを開発してきた。

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今回の買収は、その動きをさらに拡大するものであり、また、最近のIBMが積極的に取り組んでいる分野でもあるのだ。2020年11月にIBMは、アプリケーションパフォーマンスマネジメントを自社の一員とするために、Instana(インスタナ)を買収したが、今回のTurbonomicの買収はそれを補完するものであり、2つの技術のツールは統合されるだろうとIBMは述べている。

Turbonomicのツールは、オンプレミスやクラウドのワークロード単体に対して有効なだけでなく、通常は複数のクラウド環境にまたがって拡張されるワークロードを含む、ハイブリッドクラウドアーキテクチャにおいて特に有効だ。ハイブリッドクラウドアーキテクチャは、コストや場所、その他の実務的な理由から、人々がより多くのレジリエンスを求めるアーキテクチャかもしれないが、実際のところ、管理が大変であることは間違いがない。Turbonomicのツールは、管理を自動化し、パフォーマンスを分析し、ネットワーク運用エンジニアに対して、利用上の要求を満たすための変更を提案する。

TurbonomicのCEOであるBen Nye(ベン・ナイ)氏は声明の中で「企業はアプリケーションをクロスクラウドで実行する際の規模と複雑さの課題を管理するために、AI駆動のソフトウェアを求めているのです」と述べている。「Turbonomicは、お客様に行動を提示するだけでなく、実際の行動を起こさせることが可能です。IBMとTurbonomicの組み合わせにより、たとえピーク時でも目標とするアプリケーションのレスポンスタイムを継続的に保証することができます」。

IBMにとっては、サーバーを中心としたレガシービジネスから、サービス、特に未来のインフラであるクラウドベースのネットワーク上へのサービスへの移行が進んでいることを示す、また別の兆候だ。

IBM Cloud and Data Platform(IBMクラウドアンドデータプラットフォーム)担当副社長のRob Thomas(ロブ・トーマス)氏は「IBMは、ハイブリッドクラウドとAIの企業として未来を再構築し続けます」と声明の中で述べている。「Turbonomicの買収は、この戦略を推進するために最もインパクトのある投資を行い、お客様がデジタルトランスフォーメーションを推進するための最も革新的な方法を見つけられるようにするという、当社のコミットメントを示すもう1つの例なのです」。

ネットワークとIT運用の世界におけるAIの可能性の大部分は、企業がいかに自動化に頼ることができるようになるかという点にあり、IBMはこの分野にも積極的に取り組んでいる(この技術のまったく異なる応用であるビジネスサービス分野では、同社は2021年4月、イタリアのMyInvenioを買収し、プロセスマイニング技術を自社に導入した)。

一方、自動化によって期待されるのは、運用コストの削減であり、これはハイブリッド・クラウドの展開において、ネットワークのパフォーマンスと可用性を管理するための重要な課題だ。

IBM Automation(IBMオートメーション)のゼネラルマネージャーであるDinesh Nirmal(ディネッシュ・ナーマル)氏は声明の中で「私たちは、AIによる自動化は避けられないものになり、そのことは情報を中心としたすべての仕事の生産性向上に役立つと考えています」と述べている。「だからこそIBMは、ビジネスプロセスとITにまたがるAIを活用した自動化機能を、ワンストップでお客様に提供するための投資を続けているのです。Turbonomicが加わったことで、お客様はハイブリッドクラウドのインフラ全体、そして企業全体で何が起こっているのかを完全に可視化できるようになり、そのことで当社のポートフォリオはさらに大きく前進することになります」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:IBMTurbonomic買収クラウドコンピューティング

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

アプトポッドは3月15日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当および融資による総額約8億円の資金調達を発表した。引受先は、DBJキャピタル、みずほ証券プリンシパルインベストメント、エムスリー、きらぼしキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。借入先は日本政策金融公庫。またエムスリーとは、遠隔医療・ヘルスケア分野への技術において、アプトポッドの技術の適用やサービス開発などを視野に協業を行う。

調達した資金は、以下投資・活動を行い、さらなる成長加速を目指す。

  • 急増するDX需要に向けた対応体制強化
  • 新製品開発などハードウェア事業の強化拡大
  • 遠隔医療・ヘルスケアといった新規分野進出のための研究開発
  • アプトポッドが開発したプロトコルの標準化活動など、自社プラットフォーム技術の啓蒙促進
  • アフターコロナ時代におけるグローバル展開準備

アプトポッドは、自動車分野、建機・重機・農機などの産業機械分野、ロボティクス分野を中心に産業IoTミドルウェア「intdash」(イントダッシュ)を核としたプラットフォーム製品・サービスを展開。intdashは、2018年のリリース以来、製造業を中心に約30社における50以上のDXプロジェクトで採用されているという。

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

今後同社は、5G時代の高度なデータネットワーキングおよびプロセッシングの需要を見据え、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティングなどのあらゆるデータ処理ネットワークを構築するためのプロダクト開発と提供を目指している。

直近では、ハードウェア事業としてエッジコンピューティングブランド「EDGEPLANT」(エッジプラント)をリリースするなど、5G時代のDXに包括的に貢献するための総合的な製品・事業展開を行っている。

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

IoT・M2M関連のアプトポッドが8億円を調達、エムスリーと遠隔医療・ヘルスケア領域の協業も

2006年12月設立のアプトポッドは、産業IoTにおけるファストデータ(高速時系列データ)のスペシャリストとして、IoT・M2Mにおけるセンサー・ハードウェア技術、クラウド技術、グラフィカルなユーザーインターフェイス技術まで、ワンストップのテクノロジーを有するIoTソフトウェア・サービス企業。産業シーンにおける高速で大量なデータの収集、伝送、高度なリアルタイム処理、イベント処理を実現する包括的なフレームワークを提供している。

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カテゴリー:IoT
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好決算にもかかわらずウォール街の怒りを買ったエンタープライズ向け企業のSnowflake

今週、Snowflakeが発表した業績は好調のようで、売上高は前年比で2倍以上に伸びている。

しかし、同社の第4四半期の収益は117%増加し1億9050万ドル(約206億5000万円)となったものの、それはおそらく投資家たちを満足させることはできなかったようだ。なにしろ米国時間3月3日にその発表が行われた後、株価は急落したのだ。

この反応は、2月第4週にSalesforce(セールスフォース)が、好調な業績報告を発表した後にウォール街から受けた反応に似ている。Snowflakeの株価は米国時間3月5日、4%ほどの下落で引けたが、日中みられた最大12%程度の下落からは戻した。

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株価が下落する理由は何だろう。ウォール街の収益報告に対する反応は、ある企業が直近に何をしたかではなく、次に何をするかに着目していることが多い。しかし、Snowflakeの今四半期の収益予想は、アナリストの予想に沿った数字の、1億9500万ドル(約211億4000万円)から2億ドル(約216億8000万円)というもので、再び力強い数字になるように思えた。

良さそうなのだが……?どうやらある特定の企業に関していえば、アナリストの予想に沿っているだけでは、投資家にとっては十分ではないようなのだ。つまり、公表されていた期待を上回っていなかったので、失望を招いたのだろう。期待に応えることが失敗とみなされるほどのものなのかはよくわからないが、目の前の現実はそうなっている。

もちろん、2021年は、現時点まではテック株の価格が下がってきているという事実は押さえておく価値があるだろう。同僚のAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)記者が米国時間3月5日の朝に記事にしたように、その傾向は今週さらに悪化した。テック系の多いNASDAQが過去52週の最高値から11.4%下落していることを考えると、おそらく投資家はすべてに鞭を打っていて、Snowflakeは単にそのとばっちりを受けているだけなのだろう。

SnowflakeのCEOであるFrank Slootman(フランク・スルートマン)氏は、3月第1週の業績説明会で、Snowflakeのポジションは良好であると指摘したが、これは同社がオンプレミスインフラストラクチャのデータ制限を取り除いたという事実によってある程度証明されている。クラウドの良さはリソースが無限であるという点にあり、そのことから同社は、使用可能量ではなく、実消費量の管理を支援するように促されてきた。これはSnowflakeにとって有利に働く進化となった。

「大きなパラダイム変化が起きています。これまでは歴史的にみればオンプレミスのデータセンターでは、ユーザーは容量を管理しなければなりませんでした。それが今では、もはや容量管理ではなく、消費量管理が必要になってきたのです。そしてそれは、全員ではありませんが多くのユーザーにとって、そしてパブリッククラウドを利用しているユーザーにとって新しいことなのです。もちろん私は消費量という概念に馴染んできていました、なぜならそれはインフラストラクチャクラウドにも同じように適用されるからです」とスルートマン氏は業績報告会で述べている。

Snowflake は、期待を管理する必要がある。同社によれば10社以上の顧客がこの先12カ月ベースで、毎月500万ドル(約5億4000万円)以上の支払いを行うのである。どう考えても大金である。また、クラウドへの明らかな移行傾向があるとはいえ、実際に移行されたデータ量が企業のワークロード全体に占める割合はまだ小さい。すなわちSnowflakeには多くの成長機会が残されていることを意味している。

さらにSnowflakeの幹部たちは、顧客が実際に利用開始する前に、データをSnowflakeのデータレイクに移動させるために必要な時間が増えていると指摘している。つまり、新規顧客が開始するのには時間がかかるとしても、顧客がSnowflakeのプラットフォームにデータを移行し続ける限り、時間が経つにつれてより多くの支払いが行われることになる。

では、なぜSnowflakeの四半期の成長率が伸びないのか?まあ、企業がSnowflake位の規模になると、大数の法則が働き始めて、その派手な成長率の数字を維持するのが難しくなる。

私はウォール街の投資家たちに仕事のやり方を教えるためにいるのではないし、彼らに私の仕事のやり方を教えて欲しいとも思っていない。しかし、同社の全体的な財務状況、未開拓のクラウドの可能性、そしてSnowflakeの課金に対するアプローチの特性を見た場合、短期的な投資家の反応に関わらず、同社の見通しを肯定的に捉えずにはいられない。

関連記事:好調な四半期決算にもかかわらずSalesforceの株価は6.3%下落

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Snowflakeクラウドコンピューティング決算発表

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

中小企業のIT部門をクラウド化しシンプルなものにするElectricがシリーズCで42億円を調達

パンデミックの間、企業に特化したスタートアップたちの業績は、好調だったといっても過言ではないだろう。各組織がリモート化に注目し、私たちの働き方が転換する中で、そうした移行を簡素化してくれるテック企業には大きな需要が集まり、急成長が続いている。

実際、そのようなスタートアップの1つが、過去12カ月間だけで6150万ドル(約64億8000万円)を調達した。IT部門のクラウド化を推進するElectricが、4000万ドル(約42億円)のシリーズCラウンドのクローズを発表したのだ。今回のラウンドは、2020年3月に1450万ドル(約15億3000万円)で行われたシリーズBを延長し、2020年5月に行われた01 Advisorsからの700万ドル(約7億4000万円)の追加調達に続くものだ。

このシリーズCラウンドはGreenspring Associatesが主導し、既存の投資家であるBessemer Venture Partners、GGV Capital、01 Advisors、Primary Venture Partnersに加え、Atreides Management、Vintage Investment Partnersといった新規投資家が参加した。

関連記事:IT部門をクラウドから支援するElectricが01 AdvisorsとSlack Fundから7.6億円調達

Electricは、中小企業のITをもっとシンプルにすることをミッションとして2016年に立ち上げられた。Electricのソフトウェアは、各企業が専任のIT部門を立ち上げたり、高額な地域のサービスプロバイダと契約する代わりに、デバイス、ソフトウェアのサブスクリプション、許可などを1人の管理者が行えるようにする。

創業者のRyan Denehy(ライアン・デネヒー)氏によれば、IT部門の仕事の大半は、どんな企業でも、多種多様なソフトウェアプログラムの管理、配布、メンテナンスなのだという。Electricはそうした仕事のほとんどをIT部門に代わって行うのだ。つまり中小企業は、システム全体を心配する代わりに、個別のトラブルシューティングを行うだけでよくなる。

Electricの価格は1ユーザーあたりの月額料金が一律で決まっており、デネヒー氏は2020年1年間で顧客数が2倍以上に増えたと語る。同社は現在、400以上の独立した顧客組織の約2万5000人のユーザーをサポートしていて、Electricの年間経常収益(ARR)は2000万ドル(約21億円)をわずかに下回るレベルに達している。

デネヒー氏が収益の数字を公にするのは初めてだが、そうするには良いタイミングだった。同社は最近、より高価な製品とほぼ同じ機能を含むが、チャット機能にはアクセスできない、より軽量な新製品を発表した。

「肝心な点は、とにかくシンプルに、シンプルに、シンプルにということです」とデネヒー氏はいう。「これは、ハイブリッドワークがこの先も続くことを、みんなが認識しているという事実への対応という側面もあるのです。パンデミックの中で家賃の支払いを止めた人もいましたが、私たちへの支払いが滞ることはありませんでした。そこで2020年夏には、より多くの企業の手に渡り、私たちと一緒に旅を始めていただくためには、どのようなオプションをご用意すれば良いかに焦点を当て始めたのです」。

デネヒー氏によれば、Electric社の顧客の半分弱はテック系のスタートアップだという、これは、同社がテックとメディア中心のエコシステムの中にあるニューヨークで起業したことを考えるとうなずける。その他の業界に進出する手段として、Electric社はITサービスプロバイダのSinu(シヌ)を買収した。同社は法律、会計、非営利企業などのElectricの得意とする分野以外に多くのクライアントを抱えている。

そのときのデネヒー氏の発言は以下のようなものだ。

自力での市場参入は、たとえそれが隣接する市場であっても、非常に時間がかかり、コストもかかる可能性があります。Sinuのチームは、私たちが現在は参入していないものの、おそらくこの先参入すべきだと思われる多くの業界で、すでに顧客を獲得し満足させるというすばらしい仕事をしてきました。私たち2つの会社の組み合わせは、私たちの全国的な拡大戦略に向けてのカンフル剤となります。

Electric自身のチームと顧客基盤の双方の成長に加えて、同社は多様性プログラムや慈善活動の拡大にも投資を行っている。

Electricのチームは現在250名弱の従業員で構成されており、その中で女性が32.5%、非白人が約30%を占めている。また従業員の12%近くが黒人、10%がラテン系だ。

デネヒー氏は、給与支払い合計で数千万ドル(数十億円)におよぶ同社の従業員たちを、彼が世界を変えられる最大の方法の1つだと考えていると語った。

「私たちは、可能な限り最も多様性のある候補者のパイプラインを確保するために、個々の求人に時間をかけています」とデニー氏はいう。「多くの創業者が、応募者がいなかったのだと言い訳をします。しかし実際には、十分に見る努力を怠ったということなのです。私たちは単に、特定の役割にフィットする人物を選ぶのに時間をかけることを選んだだけなのです」。

今回の最新のラウンドの結果、Electricの資金調達総額は1億ドル(約105億1000万円)以上になった。

カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Jordan Crook、翻訳:sako)

クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに

2020年のクラウドインフラ市場は社会を反映した。世界で最もリッチな企業はますますリッチになり、マーケット最下層の企業はますます落ち込んだ。Synergy Research Groupのデータによると、クラウドインフラ市場は2019年の970億ドル(約10兆2400億円)から2020年は1290億ドル(約13兆6100億円)に成長した。

Synergyはまた、クラウドインフラ市場が第4四半期に370億ドル(約3兆9000円)に達し、第3四半期の330億ドル(約3兆4800億円)からアップし、前年同期比でも35%増だったと指摘した。

過去9カ月、筆者はあらゆる創業者たちからパンデミックがデジタルトランスフォーメーションを加速させており、その大部分はクラウドへのシフト促進だと耳にした。こうした数字は創業者たちの言葉を裏づけているようだ。

いつものように、ビッグ3はAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)だ。Alibaba(アリババ)が第4位に定着し、IBMは5位に後退した。しかしMicrosoftはライバルのAmazonよりも急成長していて、2020年末に初めてマーケットシェアが20%に達した。レドモンド拠点のソフトウェア大企業Microsoftのマーケットシェアは2017年から倍になったことを心に留めておいてほしい。これは驚くべき成長スピードだ。一方でGoogleとAlibabaのシェアはそれぞれ9%と6%だった。

画像クレジット:Synergy Research

Amazonはその点で興味深く、Synergyのデータでは4年連続でマーケットシェア33%前後で横ばいを維持しているが、急速に成長しているマーケットにおける3分の1であり、これはこの部門の拡大にともなって同社もパブリッククラウドの売上高を成長させ続けていることを意味する。

AmazonはAWSの第4四半期売上高127億4000万ドル(約1兆3400億円)で2020年を締めくくった。これは前期の116億ドル(約1兆2200億円)から増え、ランレートは初めて500億ドル(約5兆2700億円)を超えた。一方でMicrosoftの数字は決算から解析するのはいつも難しく、370億ドル(約3兆9000億円)の20%を計算すると74億ドル(約7800億円)で、これは前期の59億ドル(約6200億円)から増えている。

Googleは第3四半期の29億8000万ドル(約3200億円)から第4四半期は33億ドル(約3500億円)に増え、Alibabaは同時期16億5000万ドル(約1700億円)から22億2000万ドル(約2300億円)に増えた。

SynergyのプリンシパルアナリストJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、トップ企業は巨大で絶対的なマーケットシェア、それからクラウドプロバイダー間の大きなギャップで自社の周りをしっかりと固めていると話す。「AWSは過去10年大きなサクセスストーリーで、広範囲のIT部門企業との競争激化にかかわらずマーケットでかなり強固な地位をキープしています。これはAmazonとAWSの経営チームにとって、新体制になっても状況は変わらないと思わせるすばらしい証拠です」と同氏は筆者に語った。

ディンスデール氏は、Microsoftが相手としてAWSは相応しいライバルだが、いつかの時点で同社は成長の壁にぶつかる運命にあるとみている。「MicrosoftがAmazonとの差を縮め続けるのはもちろん可能ですが、MicrosoftのAzureが大きくなるにつれ、かなり高い成長率を維持するのは難しくなります。これは大数の法則です」。

一方、クラウドインフラ業界の下位のマーケットシェアは減少し続けている。「マーケットシェアで敗れた企業は小規模クラウドプロバイダーの集まりで、過去16四半期で13ポイントのマーケットシェアを失いました」とSynergyは声明で述べている。

しかし、こうしたプレイヤーにとってすべて負けではないとディンスデール氏は話す。「比較的小規模のプレイヤー(あるいは小さなマーケットシェアを持つ大企業)はニッチな特定マーケット(地理、サービスタイプ、顧客の部門に基づくもの)にフォーカスしたり、あるいは幅広い顧客に広範なクラウドサービスを提供しようと試みることができます。前者の企業は極めてうまく振る舞うことができ、後者の場合はかなり厳しいでしょう」と述べた。

Canalysの数字は少し異なり、クラウドインフラ市場が1420億ドル(約14兆9800億円)で、第4四半期は400億ドル(約4兆2200億円)としたが、各社のマーケットシェアはSynergyのものと同じだったことは記すに値する。

画像クレジット:Canalys

パブリッククラウドの売上高はある時点で意味を失うほどに大きくなったが、それでも世界中のIT支出に占める割合としては比較的小さいままだ。Gartnerの推計によると、世界の2020年のIT支出は3兆6000億ドル(約379兆8300億円)だった。つまり、そこでクラウドインフラマーケットが占める割合は3.85%にすぎないことを意味する。

次のことを少し考えてほしい。IT支出の4%以下が現在、クラウドインフラに向けられ、かなりの成長余地を残していて、数年のうちに何十億ドル(約何千億円)も成長する。

もちろん他のプレイヤーが参入してトップ企業を慌てさせればもっと興味深いものになるが、我々がコンピューティングについて想定している道中に予期せぬ何かやドラマティックなことが起こらない限り、差し当たってこのままトップ企業は猛烈な勢いで我が道を突き進んでいくだろう。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

反クラウド論、プライバシーを保護できていない現在のクラウドアプリ

過去10年間に我々が世界と関わり、対話する方法に大きな変化が見られた。職業別電話帳はすでに細かく説明する必要がある概念であり、そんなことを試みれば我々は年齢を思い知らせることになる。今の世界はスマートフォンとそのアプリの中にある。

我々はGoogle(グーグル)が約束したように「あらゆる情報を指先に」置いた世界のメリットを享受しているが、利便性と引き換えにプライバシーはそのかけらさえ放棄して顧みない。

我々は巨大テクノロジー企業があるときは無謀さで、あるときは計算づくで構築してきた線をまたいでいる。この線はアプリの開発者とアプリストアのさまざまな要求に我々が同意するにつれ、長い時間をかけてできてきた。

個人データを吸い込むブラックホール

SymantecによればAndroidアプリの89%、iOSアプリの39%が個人情報へのアクセスを必要としている。このデータの使用はリスクを孕んでいる。アプリケーションのパフォーマンスを改善させる(フィットネスアプリには各種の個人データが必要だろう)場合もあるが、、広告ターゲティングのためのデモグラフィックデータを得たい場合もある。どちらの場合の我々の個人情報はクラウドサーバーに送られる。

データを得た大企業は、長期にわたって保存されていない、あるいは悪用されていないと主張するだろう。しかしモバイルアプリを使えば、詳細な利用ログが残るのはまぎれもない事実だ。テクノロジー企業はデータが移動中に失われないよう(複数のコピーを)保持している。世界中のサーバーが互いにデータを流し続けるにつれて、我々の個人データはますます遠く離れたサーバーに移っていく。

我々はきちんと規約を読まないまま、アプリの利用条件に同意してしまうのが普通だ。すると私たちのプライベートデータはもはやプライベートではなくなる。データはクラウドの中にあるわけだが、このコンセプトは長年にわたって正確な理解をすりぬけてきた。

まず、クラウドベースのアプリとクラウドコンピューティングの違いを説明する必要がある。企業レベルでのクラウドコンピューティングは、長年に渡って議論が続いたものの、多くの企業にとって安全でコスト効率の高い選択肢であるというのがコンセンサスだ。

2010年の時点でさえMicrosoft(マイクロソフト)は、クラウドベースまたはクラウド関連のプロジェクトに取り組んでいるエンジニアは70%に上り、この数字は1年以内に90%にアップなると予測していた。しかしこれは一般ユーザーが極めて個人的かつプライベートなデータを保存するためにクラウドに頼るようになる前のことだ。

クラウドにかかる雲が混乱を増幅

この問題をさらに複雑にしているのは「プラバシー保護アプリ」だ。こうしたアプリは、その名の通り、スマートフォン上にある他のアプリの活動からプライバシーを保護するためのアプリだということになっている。しかしプライバシーという飾りを剥がしてみれば、プライバシー保護アプリ自体が驚くべきレベルで個人データへのアクセスを要求していることがわかる。「プライバシー保護」という糧語彙リーでなければ、ユーザーは眉をひそめて警戒したに違いない。

秘匿鍵でデータを暗号化する場合を考えてみよう。どんな方式で何段階にもわたって鍵を暗号化したにせよ、最後の鍵、最も重要な鍵は暗号化できない。ここには「Win-Win」のシナリオはない。医師がカルテを読んで病歴以外の個人データを知るのと同様の容易さで、プライバシー保護アプリはユーザーが他のアプリで何を購入したか発見できる。

クラウドは目に見えず、データの提供者である我々が直接アクセスする方法もない。企業は独自のクラウドサーバーを持ち、それぞれが似たようなデータを収集している。しかし我々はなぜこのデータを提供するのかよく考えておかねばならない。見返りに何を得るのか?アプリは生活を楽にしたり、より良いものにしたりするのだろう。しかしこれらは本質的にはサービスだ。クラウド上行われるこのサービス、トランザクションのサービス側こそが問題なのだ。

アプリ開発者は、個人データを保存する必要のないサービス提供の方法を見つけなければならない。これには2つの側面がある。まず第一にユーザーのローカルデバイス内で機能するアルゴリズムを作ることだ。クラウドに吸い上げられ他のデータと混在する方式はリスクが大きい。第二に個人データに関するテクノロジー業界の態度全般を変えねばならない。現在は個人データが無料提供されるサービスのコストを担っている(最終的にはターゲティング広告といった企業マーケティングに利用される)。

個人データの収集と企業マーケティングの統合によって成功してきた既存の巨大データ企業に、この点の変化を求めてもムダだろう。だからこそ、新しい企業のチャレンジに期待する。つまりクラウドにおいてもプライバシーを提供しつつ料金を支払う価値のあるサービスを提供するというチャレンジだ。これにはリスクがあるが、この変化はどうしても必要だ。世の中に無料のものはない。そもそもこの状況に陥ってしまったのは我々が「無料」という看板に釣られてしまったからだともいえる。

プライバシーにかかる雲を吹き払わねばならない

最低限、我々が個人としてできることは、まず健全な警戒心を持つことだ。個人データが世界中に散在するクラウドサーバーへ流れていくことを止めることができないにせよ、不必要に個人データを収集するバカげた構造のアプリの利用を控えることはできる。たとえばゲームアプリは作動するために連絡先へのアクセスを必要とするはずはない。Facebook(フェイスブック)が我々のことを異常によく知っている理由は、カメラアプリをはじめスマートフォン内のほとんどの機能にアクセスできるからだ。銀行口座と連動していれば、Facebookは口座の残高まで知っている。

このデータ収集はアプリとクラウドの双方のレベルで行われる。アプリを使う時の条件をよく考慮する必要がある例の1つだ。アプリにサインインするときに、Facebookのようなソーシャルアカウントを利用すると個人データの収集はいっそう容易なものになる。

クラウドは別に全能の悪魔というわけではないが、個人データの大量収集を可能にするツールであり、また口実としても使われている。

将来はデバイスやアプリが自己完結型となり、ローカルのデバイス内でユーザーが個人情報ををコントロールできるようになる方向に向かうだろう。クラウド上のアプリやデータへのアクセス方法も変化し、サービス提供方法の変更を余儀なくされるような機能が必要となるはずだ。クラウドは公共データストレージ機能に限定される。プライベートデータは本来あるべき場所、つまりユーザーのデバイス上にのみ保存されるのでなければならない。外部に残したデータのプライバシーが失われないよう、我々は一丸となってこの変化を推進しなければなならない。

【Japan編集部】著者のMichael Huth(マイケル・フート)博士はXaynの共同ファウンダーでCTO。インペリアル・カレッジ・ロンドン教授。専門分野はサイバーセキュリティ、暗号化、数学モデリング、機械学習におけるセキュリティとプライバシー。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:プライバシークラウドコンピューティングコラム

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アプリケーションネットワーク企業F5がマルチクラウド管理スタートアップVolterraを519億円で買収

アプリケーションネットワーク企業のF5は米国時間1月7日、マルチクラウド管理スタートアップのVolterra(ボルテラ)を5億ドル(約519億3000万円)で買収すると発表した。その内訳は、現金で4億4000万ドル(約457億円)、未確定のインセンティブ支払で6000万ドル(約62億3000万円)となっている。

Volterraは、2019年にKhosla VenturesやMayfield、そしてM12(マイクロソフトのベンチャー部門)やSamsung Venturesなどの戦略的投資家らから5000万ドル(約52億円)の投資(未訳記事)を受けて登場した。その資金調達時に同社は私に対して以下のような説明を行っていた。

Volterraは、複数のパブリッククラウドやエッジサイトにまたがって展開できる一貫したクラウドネイティブ環境、つまり分散型クラウドプラットフォームの革新を行ってきました。このSaaSベースの提供方式を使い、Volterraは多くの拠点に置かれた製品や、ネットワークやクラウドプロバイダーにまたがって通常はサイロ化されていた幅広いサービスを統合しています。

このソリューションは、セキュリティ、運用、管理の各コンポーネントに対して、単一のビューを与えることができるようにデザインされている。

F5の社長でCEOのFrançois Locoh-Donou(フランソワ・ロコ-ダニュー)氏は、Volterraのエッジソリューションが同社の製品ライン全体を統合できると考えている。彼は声明の中で「私たちは、企業のお客様が直面する複雑なマルチクラウドの現実を解決するEdge 2.0プラットフォームでVolterraを使い、私たちのAdaptive Applications(アダプティブ・アプリケーション)構想を推進致します。当社のプラットフォームは、お客様が最も苦労なさっている部分を解決するSaaSソリューションを提供致します」と述べている。

Volterraの創業者でありCEOのAnkur Singla(アンクルシングラ)氏は、今回の取引を発表した同社のブログ記事に、パンデミックの影響で企業が急速にクラウドにシフトしていた2020年には、このソリューションへのニーズが増える一方だったと書いている。「私たちがVolterraを立ち上げたとき、マルチクラウドやエッジはまだバズワードであり、ベンチャーファンドはまだ具体的なユースケースを探している最中でした。それから3年が経ち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が劇的に風景を変えました。それは、物理的体験のデジタル化を加速させ、私たちの日々の活動をさらにオンラインへと移行させました。これは、グローバルなインターネットトラフィックの大規模な増加を引き起こしている一方で、増加し続ける常用アプリのセキュリティと可用性に影響を与える、新たな攻撃手段を生み出しています」と同氏は書く。

彼はVolterraの能力は、F5シリーズの製品とうまく調和して、これらの問題を解決することに役立つと考えている。2020年のF5は、M&Aという点では目立った動きが無かったが、今回の買収は2019年に行われた、1Shape Security(シェイプ・セキュリティ)の10億ドル(約1039億円)NGINXの6億7000万ドル(約696億円)(未訳記事)といった大型買収に続くものである。

今回の取引は両社の取締役会で承認されており、規制当局の承認を待ち3月末までに完了する見込みだ。

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タグ:F5Volterra買収クラウドコンピューティング

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(翻訳:sako)